08/03/09 03:31:38 TxLX3Uy4
間違いなく需要の無いブツを投下してみます。
多分反響は無いです(確信)
――片想い。
そう、この想いは紛れも無い片想い。
絶対に成就しないと思い知らされた、あの体育館での告白騒動。
平静を装ってはいたけれど、内心では驚愕なんて言葉で言い表せないくらいで。
だから、私はとても、辛かった。
「……うん。明日、一緒にお買い物にでも行きましょう? 私に話すだけでも、何か楽になるかもしれないから」
「ありがと……奈々子。迷惑掛けちゃってごめん」
クラスメイトで親友の香椎奈々子に、電話で泣きついてしまうくらいに。
「気にしないで。私たち、親友じゃない」
その優しい言葉が、とてもありがたかった。
電話を切ってから、流した汗を落とす為にお風呂に入った。
もう十二時を回っているから、家族は全員入り終えている。湯船のお湯は少しだけ汚れが浮いていた。多分、お父さんだろう。普段なら文句の一つでも言いたいところだけど、今日はそんな気になれなかった。
私にとって、北村祐作という人は特別な人だった。
ギャルの真似事しか出来ない自分を、素直に受け止めてくれた。私そのものを見てくれた。他に理由は無い。奈々子は単純だと言っていたけど、それでも良かった。
だって、好きだから。
自然と目で追う回数も増えた。まるおは沢山の人に慕われているから、自分だけが独占出来る時間はとても少ない。それでも自分の方を向いて、自分だけを意識して喋ってくれている僅かな瞬間だけで、代えがたい幸福感に包まれた。
それはきっと、恋の魔力なのだと思う。そして、日々の幸福が強ければ強いほど、反動も大きい。
「はぁ…………」
お湯を肩に掛けながら、溜息を吐く。
すみれ先輩が凄い人だというのは知っていた。まるおがその先輩を慕っていることも。
「私じゃ、敵わないのかな」
決して、スタイルが悪いほうだとは思わない。むしろバランスが取れているし、出るところも出ている。少なくとも、去年まるおが告白した逢坂さんよりは。
それでも、すみれ先輩には到底及ばない。スタイルも、成績も、運動神経も。そして多分、人としての度量も何もかも。
「やだなあ。全部悪い方に考えちゃう」
これ以上湯船に浸かっていても、きっと良い事なんて無い。それよりも早く寝て、明日に備えよう。
奈々子と一緒に買い物に行くのはいつもの事だけど。それでも、いつもより明日を待望する気持ちが強かった。
翌日。
待ち合わせに使うスドバの店内で、私は奈々子を待っていた。
愛飲しているラテを片手に、もう片方の手で携帯を耳に固定。
「おっかしいなあ……」
電波が届かないという定番の台詞に不信感を募らせる。時間には正確な奈々子が、もう二十分も遅刻している。おまけに電話は入らない。
まさか……いや、有り得ない訳ではない。もしかしたら途中で事故に遭ったのかもしれない。どうする、探しに行くべきか? 奈々子が通る道は全て把握しているから、擦れ違う可能性も殆ど無い。
よし、行こう!
そう結論を出し、力強く立ち上がろうとしたところで、
「……木原?」
ドスの効いた渋い声が、背後から突然襲い掛かってきた。