竹宮ゆゆこ作品でエロパロ 2皿目at EROPARO
竹宮ゆゆこ作品でエロパロ 2皿目 - 暇つぶし2ch278: ◆vq1Y7O/amI
07/08/19 02:11:11 DIqLv/Tz
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪」
 シャワーの音に交って聞こえてくるのは、泰子の鼻歌。楽しそうな彼女の様子に、なんとなく大河の気持ち
も盛り上がる。時計を見て、まだもうしばらくは竜児が買い物から帰らないだろうと計算して、座布団の下
から彼女は隠した雑誌を取り出す。
 ずらずらと並ぶそれは、どれもこれも求人誌。
 大河は、片っ端からそれをめくって、いいバイトがないか、と探す。
「うーん、あんまりいいのがないなぁ……」
 思わず口にするのは、不満の声。数冊並んだ雑誌の中には、やたらと分厚いものもあるにはあって、確かに
求人の数は揃っているのだが、どれもこれも彼女の望む条件には程遠い。
 そもそも、高校生可というものが少ない。勤務時間が平日の昼間、というのが多いのだ。大河達の通う
高校は、一応、アルバイト可ということになっているが、さすがに授業をサボって働くことまでは許して
くれないだろう。
 さらに言えば、この地域での求人の数が少ない。元々、小さな街なのだ。需要と供給がアンバランスに
なっていることは否めない。
 とはいえ、大河としては、あまり遠くに行く気にはなれなかった。
「へぇー。席に座って話してるだけで一時間五千円、能力次第で一万越えだって……ねぇ。高校生でも可、
か……」
 胡散臭そうに読み上げながらも、一瞬、大河の目に逡巡が生れた。が、その所在地がひどく遠かったこと
もあって、断念する。
 ペラペラと次々にページを捲っていった彼女は、やがて溜息を付いて雑誌を鞄にしまいこんだ。
 ゴロンと畳の上に寝転んで、天井を見上げる。

 働こう。そう思ったのは、学園祭の直後だった。

 あの夜。
 ひとりで、生きていく。
 そう決めた。

 チクリ、チクリと記憶が胸の奥をついばんでくる。痛いけれど、泣きたくなるほどではなくて。だけど無視
出来るほどではなくて。

 学園祭。あれほど楽しみにしていたのに、父親は来なかった。
 直接のメールすら寄越さずに、竜児を通じて彼女はそれを知った。
 ああ。やっぱり。
 不安が現実になった時、悲しさは振り切れた。
 どうして期待してしまったんだろう。来る筈ないのに。ただの気まぐれだったのに。
 拒絶していたのは、それを知っていたから。

 誰かのせいには、したくなかった。
 形としては、確かに、竜児の言葉に負けたことになっている。
 けれど、あの時、本当は誰よりも駆け寄りたかったのは、自分自身だということもわかっていた。
 だって、裏切られた過去を彼に話さなかったのは自分だったから。あの時、それを話していれば、何かが
違っていたはずだ。
 話さなかった理由は、大河自身にもわからない。竜児の滅多に見せない弱い部分を見たからかもしれ
ない。彼の『父親』への思いを守りたかったのかもしれない。
 あるいは全部が言い訳なのかもしれない。ただ自分の為だけだった、そういう風に感じもする。
 どんなに傷付けられても、大河の記憶の底には、楽しかった頃の思い出がこびりついている。母と……
今の父の妻ではなく大河を産んだ実の母と、父と大河の三人で、幸せだった頃の。
 もしかしたらそれは、表向きだけの幸せで、裏では冷え切っていたのかもしれないけれど、それでも。
 大河は幸せだと感じていたのだ。
 だから、彼女は父親を拒絶し切ることが出来なかった。もしかしたら、本当にもしかしたら、今度こそ
本当で。
 そう思ったからこそ、思ってしまったからこそ、駆け戻った。

 結果として、やはりまた大河は裏切られたのだけれど。


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