09/07/27 14:58:20 IAnB6syr
あれは、いつだっただろうか。
アスカに初めてキスを誘われたとき、そのままつい抱きしめてしまったあのとき。
もう本当に、それは大昔のことのように思えて。
あの頃の僕たちと今の僕たちは、まるで別人のようになってしまっていて。
あれから、僕たちの日常は、すっかり姿を変えた。
昼間の、みんなが見ている公の場にいる僕たちと、夜の、ミサトさんの目を盗んでは愛を交わす僕たち。
その二重生活に軋みが出てきていることは、とっくにわかっていた。
アスカには僕なんかが釣り合うはずもない、って。
こんな逃げてばかりの男といたら、アスカはダメになる、って。
だから、もう、潮時だった。
「ねえアスカ、もう終りにしようと思うんだ、こういう関係。」
コトを終えてベッドに二人、横たわりながら、天井を見つめながら、僕はいつしかこう呟いていた。
片手で撫でるアスカの金髪は柔らかくて、つやつやしていて。
いとおしくて。
いい匂いがして。
だけど、いつまでもこうしてはいられないって、そう思えてしまって。
「…私が、嫌いになったの?
シンジも私を捨てるの、ママみたいに?
私は、もうシンジの傍にいちゃいけないの?」
アスカは、昼間の気の強さが嘘のように、小さな子供のように、そう言って。
その声のか弱さに、一瞬続けることをためらったけれど、だけど僕はそれを言わないといけない、そう思って。