08/01/13 02:41:04 jXwUk8sw
『女と少女』
青空に僅かに朱が入りまじって鴇色を雲に映す。少女のあとを
精悍な面構えの黒ずくめの男が従って歩いていた。
鍵を穴に差し込んで闇が口をあけた。部屋のカーテンは
閉め切れられていて、籠っていた暖気が戸口にまで流れている。
レイはうしろに立っていたゲンドウを招き入れようとした
振り向きざまの所作をさえぎられた。
「レイ」
名を呼ぶ声にこめられたゲンドウの情動がレイをやさしく包んだ。
「いやっ」
「レイ」
小さなくても行為を拒んでしまった発話がこぼれたことに、
レイはひどくおどろいて真空状態になって。
ゲンドウに抱きつかれたまま、エントランスに引き摺り込まれ
慌てて頭をふってもがいていた。