07/01/29 15:39:24 Izd+vpd0
>>21
そのままその腕で頭を抱えるようにして俯く。
「そうか……そういうことか……」
マルチェロが乾いたように笑いながらその場に座り込み、剣を床に置いた。
ゼシカはダメージを余り受けていなかった筈の男から濃い血の匂いを感じ不振に思い傍に駆け寄る。
考えてみればはじめから、そう、船に乗り込んでからずっと、血の匂いはしていた。
「ちょっと、診せて!」
ゼシカは乱暴に左手でマルチェロのたぶんきっとおそらくチャームポイントであろう額を押さえつけ
半ば無理矢理に顔を上げさせた。勢いがありすぎて馬乗りに近い状態になる。
右手で強引に男の身につけている法衣の襟元についている留め具を外そうと試みる。
「…っ!……発情期の猫のようだな」
その反動でへりに頭を打ち付けながらもマルチェロは悪態を忘れない。
が、それはゼシカを腹立たせる効果はなく、むしろ彼女には何かのサインにすら思えた。
開かれた両の眼と眼が合う。
「あなたも、発情期だなんて言葉ククールみたいよ?」
揶揄には揶揄でと、ハンムラビ法典を思い出させる様な答え方をしながらゼシカは男の服を開いた。
肉が裂けていた。新しい血が滲んでは焼かれた皮膚の傷痕をつたい法衣にそれが吸い込まれていく。
「……薬も、効かないのだ……おそらく、魔王の呪いかなにかだろう」
フン、とでも言いたげに顔を背けマルチェロが白状する様に思い当たる可能性を言葉にする。
「あなた達に敗れた後だ。薬草を煎じても血が止まらないので
己で皮膚を焼いて止血をしようと思ったのだがそれでも止まらない。
まあ仕様がない…しばらく休めば治るかと思いベットを拝借したが
日が経っても一向に傷が癒えぬ。妙だとは思っていたが…」
そう語り、呼吸を整えるとゼシカの手を払い退け衣服を整えた。
「……神は相応の罰を私に授けたのか。赦されることはない、罪が癒えてはならないと……」
「話がややこしくなるから悲観的な独白は心の中で喋って頂戴」
このままマルチェロの語りが法皇就任の演説ばりに仰々しく
尊大な立ち振る舞いになってはかなわないとゼシカは男の言葉を牽制した。
そして放棄したいくらいの不可解な謎を整理するように考える。
「……魔王は、倒したのよ?トロデ王、ミーティア姫の呪いはしばらくして解けた」