07/04/01 23:22:20 KID5cgAv
ノートを拾ってからの4ヶ月、マキはいつも僕の傍にいた。生意気で、言う事を聞かなくて、
どこでも構わず小便を垂れ流すマキ。だけど可愛い妹分だったマキ。僕がノートで世間を混乱
させるたびにマキは手を叩いて笑い、一緒に喜んでくれた。本当はその陰で自分の生命が削ら
れ続けていたというのに。
びくん、と華奢な体が痙攣した。たいらな胸が苦しそうに上下している。
マキ、しっかりしろマキ。なんとかならないのか?
「……おしっこ……」
いや、これ以上ないぐらい派手に漏らしてるだろお前。
「ノートを……拾った人間のおしっこを……飲めば……」
わかった、待ってろよ。僕は慌ててズボンのジッパーをさげた。
……。
……参ったな、出ないぞ。あの変態女じゃあるまいし、自分の部屋でいきなり放尿するのは
さすがに抵抗がある。第一、僕は健康診断の検尿でもなかなか尿を提出できなくて苦労する
タイプだぞ。ちなみに蛋白質+で二回ばかり再検査したけど、それはそれ。
ノートを自分に使うか?いや、それじゃプラマイゼロだ。意味がない。
(えぇい、なるようになれ!)
部屋に転がしてあったコーラを景気づけにがぶ飲みすると、僕は目を瞑りマキの唇めがけて
膀胱の中身を思いきりぶち撒けた。
じょぼじょぼじょぼ……あれ?
溢れ落ちる水音に違和感をおぼえ、怖る怖る目を開く。悪戯っぽい微笑を浮かべた少女の顔
をすり抜けて、僕の尿はシーツを濡らしていた。透過自在のおもらし神・マキがぴょこんと
ベッドの上に跳ねる。
「お兄ちゃん、人間界ではこれエイプリルフールって……あれ、お兄ちゃん泣いてるの?」
「うるさい、これは目から漏れた尿だっ」
僕が放り投げたペットボトルは、マキの身体を透過してむなしく壁にぶつかった。
「ったく、どうすんだよこの布団!」
「えー、おもらし界では普通だよぅ。うふふ、お兄ちゃんの匂いがするー」
帰れ、もう故郷に帰れ疫病神。
こうして、四月一日の夜は騒々しくふけていくのだった。(終)