10/03/11 00:15:13 0AKDzwm/
3
立ち直ったのは、嵩月の方が先だった。
「あっ、あの・・・・・・夏目くんじゃなきゃ、だめなんですか?」
アニアが相手なので他の女生徒より控えめだけど、嵩月は僕の事になるとハッキリと拒絶をするようになっている。
「うむ。これには色々と理由があるのだが・・・・・・」
アニアの答えはこうだ。
「まずひとつ。今、演操者は何人居ると思う?」
逆に、問い掛けられた。僕らは指を折って数えてみるけど・・・・・・
「私が知る限り、4人だ。
まずは智春、お前だな。次に、お前の義妹の和葉、元・第2生徒会長の倉澤六夏、そしてGDの亜鉛華の演操者。
この4人だ」
とりあえず僕もその4人が出てきて、そこで止まったんだけど・・・・・・ホントにそれだけなのか?
そんな僕の疑問にアニアは
「他にも居るかもしれん。だが、私の接触する範囲にいるのは、この4人だけなんだ。
なぜ私の接触する範囲かというと、私が契約しなければいけないからだ。
見ず知らずの相手だと、鳳島氷羽子の二の舞になるからな」
そうだった。演奏者なら誰でもいいって訳じゃないんだった。愛情に限った事じゃなく、嫌悪や憎悪といった負の感情でもいい。「好き」の反対は「嫌い」じゃなく、「無関心」だ。
「あっ・・・・・・」
そこで嵩月が何かに気がついた。そして、困った顔をする。
「奏は気がついたか。
そう。さらにもうひとつ。
男性はお前だけなんだ、智春」
部屋の温度が一気に上がった・・・・・・いや、僕の気持ち的には下がってるんだけど、なぜか暑い。
最初に座った時より、嵩月が心持ち僕に寄り添ってきている。しかも、全身に陽炎を浮かべて・・・・・・怒ってますか?嵩月さん?
僕のせいじゃない、と声を大にして言いたい・・・・・・
「そして何より、一番大事な部分なのだが・・・・・・
私は、どうも智春が好きなようなんだ」
この状態でその爆弾発言か!?アニア。しかも、何だそれ・・・・・・自分の気持ちのクセに、「どうも」とか「ようなんだ」とかって。
オカシイだろ、それ。いっつも自身満々でムダにエラソーなのに、その自信の無さは何なんだ!
「お前、言うに事欠いて『どうも』とか『ようなんだ』って、何だよ、それ。
なんか、告白されたっぽいけど、ぜんぜん嬉しくないよ・・・・・・」
しかも、隣では「うーーー」と嵩月が唸ってるし。部屋の中の温度が急上昇して、暑いよ、ココ。
それなのに、アニアは涼しい顔をして
「落ち着け、奏」
と、文字通り熱くなった嵩月を窘めている。お前はこの状態で暑くないのかっ!
「夏目くんは、渡しませんっ!」
あのー、嵩月さん。落ち着いてください・・・・・・。
『結構、やきもち焼きだよねえ、嵩月さんって』
「はっ!・・・・・・ごめん、なさい」
ナイスだ、操緒。
操緒のボソッとした呟きで、嵩月が落ち着きを取り戻してくれた。それでもまだ警戒してるのか、ゆらゆらと陽炎が立ってるけど。
『相手、ニアちゃんだよ。そんなに警戒しなくても大丈夫だって』
操緒は操緒で、相変わらずあっけらかんとしているし。
「まあな。普段は家族なんだ、智春は。私にはもう、本当の家族も・・・故郷すら無いしな」
アニアの言葉に、ようやく嵩月も落ち着いてくれた。
アニアの故郷であるクラウゼンブルヒ領は、非在化してしまっていてすでに無いそうだ。もちろん、その時にソメシェル家も非在化してしまっている。
僕らは後から話を聞いただけだけど、嵩月はアニアが故郷へ連絡しようとしているその場に居合わせていたらしいから。
「だから、私にとって家族とは、もうこの鳴桜邸で暮らすみんなと、奏。お前も私は家族だと思っている。
日本に来て、ここで暮らした時間と・・・・・・一巡目の世界での5年間が私のすべてなんだ」
アニアが訥々と語り始める。
続く
日付が変わったので、第3話を投下。エロにはまだ遠い・・・OTL