三雲岳人作品でエロパロat EROPARO
三雲岳人作品でエロパロ - 暇つぶし2ch277:絶対封印プラグイン 第3回-A
08/02/08 22:25:27 An6tiquO
 
『智春。やっぱ、風邪?』
 満月にもうあと二、三日という感じの月明かりに照らされた夜道で、僕と並んで鳴桜邸への帰路をたどりながら、操緒が訊いてきた。
「んー……どうかな」
 僕の答えは、頼りない。本当に、よく分からないのだ。頭がぼうっとして、体がふわふわした感じはあるが、頭痛も喉の痛みもないし、洟も咳も出ない。それに、いつぞやの風邪のときと違って、操緒も普通に出てるし。
『ふーん。ま、でも、良かったじゃん。ニアちゃんに勘弁してもらえたんだし』
「そうだな」
 僕は苦笑する。有り体に言えば、アニアには叩き出されたも同然なのだった。本を探しにいけば書棚の間でぼうっと突っ立っているし、お茶を出せばアニアが読んでる本の上にぶちまけるし、話しかけられても全て生返事とくれば、まあ致し方ないだろう。
 その挙げ句に、あやうく、激怒したアニアに運気のことごとくを吸い取られようとした時に、嵩月が「あー……夏目くん、風邪かも……」と取りなしてくれたのだった。
 アニアもこれには拍子抜けしたらしく、「病気か。だったら、早く言え。病人に徹夜させるほど、私も人でなしではない。さっさと帰るがよい」と、あっさり放免してくれた。
 本来ならアニアも一緒に鳴桜邸に戻るべきだったろうが、本人がすっかりやる気なので、図書館に残してきた。アニアがあの図書館で夜なべ仕事をするのは、これが初めてというわけでもないし。
 そのために今や、ベッドをはじめとした色々な家財道具が運び込まれていて、一晩や二晩過ごすのには何の不便もない。まあ、お風呂だけはさすがに付いていないが、それは、最初にみんなで夕食を取りに出たときに、さっさと銭湯で済ませてきたし。
 それに、生徒会関係者をはじめ演操者がごろごろいる洛高に、たとえ夜中だろうと忍び込んで悪さをしようなんて輩はまずいないから、むしろ、鳴桜邸にいるよりも安全で快適かもしれない。まあ、せめて短時間でも、暖かくして睡眠を取ってくれるように祈るばかりだ。
 嵩月は、僕と一緒に引き上げた。僕を鳴桜邸まで送ると言ってくれたが、こっちもそこまで体調が悪いわけじゃないので、せっかくだけどお断りした。いくら強力な悪魔だといっても、こんな夜遅くに鳴桜邸から自宅まで女の子を一人で歩かせたくない。
 嵩月はそれでも少し渋ったのだが、操緒が「だいじょうぶだって。あたしもいるし」と受け合ったので、諦めてくれた。なんか、僕より操緒のセリフで納得してくれるというのが、微妙な感じではあったが。
 嵩月の自宅の門前で別れ際に、「……夏目くん。お大事に」と真剣な面持ちで言ってくれたのは、本当に有り難かった。とにかく、僕の周りときたら最近、人の迷惑も考えないような人間ばかりだから、こういう素直な善意はとても心にしみる。
 ほのぼのと嵩月の控えめな笑顔を思い出していたら、肩の上から冷たい声がした。
『智春。鼻の下伸びてる』
「んなこと、ないだろ」
 思わず鼻の下をこすりたくなるのを懸命にこらえて、操緒を見上げる。
『ふーん? どーせ、嵩月さんのことでも思い出してたんでしょ』
「う……」

278:絶対封印プラグイン 第3回-B
08/02/08 22:26:30 An6tiquO
 
 こいつは、ほんとに時々、こっちの心が読めるんじゃないかと思う。言葉に詰まった僕を見て、操緒は半眼になり、
『スケベ』
「別にそんなんじゃ……」
『さっきのコンビニでも、やらしい雑誌見てたし』
「いや、あれは……」
 しかし、それは事実なのだった。自分でも、どうかしてたと思う。ちょっと買い物に立ち寄ったコンビニで、ふと気付いたら、十八歳未満お断りのスペースで大人の雑誌に手を伸ばしていた。操緒の鋭い制止の声がなかったら、そのまま手にとっていたに違いない。
 普段なら、それはもちろん興味がないと言えば嘘になるが、操緒もいることだし、そんなことはしない。だが、その雑誌の表紙の上で、ストレートセミロングで長身の美女が黒い下着姿で微笑んでいるのを見たとき、僕はふらふらと惹き付けられてしまったのだった。
 何がなんだったのか、自分でもよく分からない。
『やっぱ、ヘンだよ。今日の智春』
 僕の首に操緒の腕が回されて、思わず身を固くした。実際に締め上げられたりするおそれはないとはいえ、気持ちのいいものではない。と思ったら、僕の頬に自分のそれをすり寄せるようにして、操緒が背後から顔を寄せてきた。
『こーんなに可愛い女の子がすぐ側にいるのに。それじゃ不満?』
「操緒……」
 どうしたんだ、こいつ。いつもなら、険悪な罵声が飛んでくるところなのに、僕の耳のそばで聞こえたのは、やけにしっとりした囁きだった。新手の嫌がらせかと警戒しながら横目で見やると、何というか……妙に、頬が上気していて、表情が柔らかい。
「ヘンなのは、そっちだろ」
『え』
 僕に言われて、びっくりしたような顔になる。自分じゃ、気付いていなかったのか。慌てて僕から離れて、
『あ……あれ……? え、と……あたし?』
 何度か瞬きし、首をかしげた。僕はため息をついて、
「なんか、二人ともおかしいな。今日は」
『うん……そうかも』
 図書館でぼんやりしていたのは、僕だけではなかった。操緒までもが、気付くとあらぬ方を見ていたり、何度も呼びかけても答えなかったりしていたのだった。アニアが早々に諦めてくれた理由には、そのことも含まれていたかもしれない。
「……今日は、さっさと寝た方がいいかもな」
『そだね』
 といっても、もう十分に遅いのだが。とりあえず鳴桜邸の門構えが見えてきたところで呟いた僕に向かって、操緒も頷いた。それから、
『ん?』
 不意に空中に浮かび上がり、手びさしをしながら鳴桜邸の方角を見る。
「どうした?」
 訊いた僕に、操緒は戸惑った顔で声を潜めて、教えてくれた。
『灯りがついてる』

279:絶対封印プラグイン 第4回-A
08/02/08 22:27:35 An6tiquO
 
「ほんとだ……」
 鳴桜邸の門をくぐったところで、僕と操緒は足を止めて、誰もいないはずの建物の二階の窓から漏れる灯りを眺めた。それも、よりにもよって、
『あれって……智春の部屋じゃん』
「……だよな」
 間違いない。東南の角部屋だ。
「何だろうな」
 言いながらも、実はあまり狼狽えてはいなかった。慣れたくはないが、前例がないわけではない。嵩月に始まり、朱浬さんとか真日和とかこないだの友原さんとかいう家出少女とか、この屋敷には招かざる客が勝手に入り込んでいることが多いのだ。
『どーする?』
「そりゃ……確かめるしかないだろ。ここ以外に、帰るとこないんだし」
 願わくは、あまり物騒な輩ではありませんように。僕は物音をさせないように玄関に歩み寄り、鍵を開け、中に入った。ええと、玄関の鍵が閉まっていたということは、相手は窓とか地下とかから入り込んだということか。
 そのまま、忍び足で廊下をわたり、階段を昇る。古い家だから床がどうしても軋むので、ゆっくりとしか進めない。電灯を点けることもしなかったが、自分の部屋までなら慣れたものなので問題ない。
 ようやく自分の部屋の前にたどりつき、そこで一息つく。
『見てこよっか?』
 操緒が囁く。
『天井のとこからちょっと覗くくらいなら、向こうにも気付かれないかもよ?』
「いや……」
 僕はかぶりを振った。相手が分からない以上、ここは慎重に行こう。扉にそっと耳を寄せて、室内の様子を窺う。しばらくは、自分の鼓動の音の方が大きくて何も聞き取れなかったが、そのうちに段々と耳が澄んできた。
 かすかに、何かがこすれる音。衣擦れだろうか。続いて、
「……ふっ……」
 聞こえてきたのは、どう考えても、人間の吐息だった。僕と操緒は顔を見合わせる。再び扉に耳を付けると、今度はもっと鮮明に聞こえた。
「は……ふ……ふぅ……は、あ……あ、ん……は」
 声音からすると、どうやら女の人らしい。どことなく聞き覚えがあるような気がしたが、しかしこれは。
『何やってんだろ』
 呟いた操緒の声にも、ねっとりとしたものがまとわりついていた。確かにこれは……悩ましすぎる。一体、人の部屋で何をやってるんだ。まさか、どこぞのカップルでもしけこんでよろしくやってるんじゃあるまいな。
 それでも相手の様子から、どうやら室外へはあまり注意を払っていなさそうだと見当をつけた僕は、そうっと扉を開き、おそるおそる中を覗き込んだ。何も反応が返ってこないことを確かめると、室内へ体を滑り込ませ、まずベッドの上に目をやった。
 案の定、そこにいた。一人だけだ。やっぱり、女性だった。ベッドにうつぶせになり、今やはっきりと荒くなった息づかいとともに、体を小刻みに動かしている。これじゃ、まるで。

280:絶対封印プラグイン 第4回-B
08/02/08 22:28:40 An6tiquO
 
『な……なにしてんのよっ!』
 想定外の情景に言葉を失った僕の代わりに、操緒が大きく叫んだ。その声に、女性の動きが止まり、ややあってから、のろのろと顔を上げてこちらを見る。
 その顔には、見覚えがあった。だが、あまりの意外さに、僕は凍り付いた。
「……朱浬さん……?」
 いや、ある意味では、そこにいても不思議のない人ではあった。朱浬さんは、どうもこの家を自分のセカンドハウスとでも思っているふしがあって、よく勝手に入り込んでは、僕のワイシャツ一枚というきわどい恰好で、ぶらぶらしていたりするのだ。
 そう、まさに、今もそんな恰好だった。ベッドの上で肘をついて上体を起こした朱浬さんは、やはりワイシャツ一枚で、だがいつもと違って、そのボタンは半ば以上が外されて滑らかな胸の谷間を垣間見せていた。さすがにここまで無防備な姿は、見たことがない。
「え……」
 朱浬さんは当初、誰が入ってきたのか分からなかったらしい。徐々にその瞳が焦点を結び、僕と操緒の姿を認めたのか、やおらベッドの上で飛び上がった。ワイシャツの裾がめくれ上がり、すらりと伸びた素足の根元のショーツまで丸見えになる。
「ト……トモハルくん? な……なんでっ……」
 いや、自分の家に帰ってきただけなのに、なんだってそこまで意外そうな顔でそんなことを言われなければならないんですか。
「いや……なんで、って訊きたいのはこっちで……一体、何して……」
「だ……だって……どうして……トモハルくん、今日は帰ってこないって……」
「それは……いやその、人が留守にしてるからってですね」
 言いながら、いわく言い難い違和感と既視感を覚える。その正体を確かめたくて、朱浬さんの顔をまじまじと凝視した。どことなく、気弱っぽくて頼りなげで、優しくて柔らかい表情。これは……朱浬さんじゃない。まさか。しかし。まさか。
「紫浬、さん……?」
「あ……」
 一瞬、あっけに取られたように目を見開いたあと、黒崎紫浬さんは、心の底から嬉しそうな笑顔をひらめかせた。
「トモハル、くん」
 その弾んだ声を聞いたときだと思う。僕の中で、スイッチが入ったのは。今日の午後からずっと、もやもやと体内でわだかまっていたものが、はっきりと形を成したのは。
『ト……智春っ?』
 操緒の慌てた声がどこか遠くに聞こえた時には、僕はベッドのすぐ側まで近寄って、紫浬さんを見下ろしていた。僕は……何をしてるんだ。
「トモハルくん……」
 紫浬さんの声にも、いくらかの怯えが混じる。ベッドの上で後ずさりして壁に背をつけ、小さくいやいやをしてみせる。
「だめ……トモハルくん……だめ、です……」
 いや、紫浬さん。そんなに熱っぽく潤んだ眼差しを投げかけながら、そんなに期待で震える声で囁くなんて、こっちを誘ってるとしか受け取れません。貴女も、そのつもりなんでしょう? 僕と……同じなんでしょう?
 僕はベッドの上に膝をつき、紫浬さんを壁際に追いつめる。そのおとがいに指をかけると、紫浬さんの唇がわずかにおののき、軽く開かれるのが見えた。僕は……ああ、もう何もかもが、どうでもいい。目の前の相手とひとつになること以外に、何も考えられない。
『智春っ……何して』
 操緒の悲鳴のような叫びは、僕が紫浬さんに唇を重ねると同時に、断ち切られた。

281:絶対封印プラグイン 第5回-A
08/02/08 22:29:50 An6tiquO
 
 お世辞にも、上手いキスとは言えなかったと思う。そりゃ、こっちは(露崎だとか鳳島氷羽子との件は数えずに)初めてだし、紫浬さんにしたって、ぎこちないものだった。それでも、お互いを求める荒々しさだけを頼りに、僕たちは相手の唇をむさぼり合った。
「ふ……あ……」
 ちょっとだけ二人の唇が離れる都度、かすかに漏れる紫浬さんの甘い吐息が、お互いの動きをいっそう加熱させる。何度も何度も、一番ぴったりと隙間なく相手と触れ合える位置を求めて、僕たちは息継ぐ間もなくキスを続けた。
 さすがに息が切れるまで、どれくらい経っただろう。荒い呼吸を繰り返しながら、それでも至近距離で目線を合わせたままの僕たちに、横合いから、操緒が倒れ込むようにしなだれかかってきた。
『は……あ……なん、なのお、これえ……』
 そちらに目をやると、操緒も息を切らし、頬を紅潮させ、熱に浮かされたような瞳をしている。どういう仕組みなのか、服の胸元までが少しはだけていて、実に扇情的だった。
「操緒……」
 これは……おかしい。紫浬さん、いや朱浬さんも……操緒も……僕も……何を、してるんだ。こんな……こんなことは……あるはずがない。
 僕の脳裏に浮かんだ疑問は、しかし、
「……トモハルくん。よそ見は、ダメ」
 紫浬さんが僕の顔に両手をかけて自分に向き直させた途端に、どこかへ霧散してしまう。
「ね」
 たしなめるように小首を傾げるなり、今度は紫浬さんから挑んできた。
『はあっ……』
 操緒の喘ぎが聞こえたような気もしたが、構っていられない。紫浬さんの舌が、最初はおずおずと、でもすぐに大胆な動きで、僕の中に入ってくる。唇の裏や歯をなぞってくれる。背筋がぞくぞくするような快感を覚えながら、僕も舌を動かした。
「ふ、うっ……」
 互いの舌の先端が触れ合った瞬間、紫浬さんの体が大きく震え、その息が僕の口に吹き込まれた。さらに、闇雲に舌を絡め合ううちに、僕の舌が紫浬さんの舌の裏側をかすった時、紫浬さんの背筋が軽くのけ反る。
「は、あ」
 予想外の感覚に少し驚いたのか、やや身を引き気味にした紫浬さんを僕は逃さず、そのポイントを責め立て続けた。最初は受け身のまま体をくねらせていた紫浬さんも、やがて積極的に、同じようなやり方で反撃し始める。だめだ。気持ちよすぎる。
『あ、あんっ……だめ、そんなっ……』
 僕が快感に陶然となるのと同時に、操緒の感極まった声が聞こえた。もしかして、僕と感覚がシンクロしてるのか? 一体、どういうわけだ?
 だが、そんな思考も長くは続かない。僕と紫浬さんは、操緒の途切れ途切れの嬌声を背景に、酸欠気味でぼんやりとなりながらも、ひたすらにお互いの口腔と舌を犯し続けた。
 そのうちに、紫浬さんの動きがやや緩慢になり、耐えきれないような吐息が漏れ始める。そろそろ、僕も限界かもしれない。最後のあがきとばかり、紫浬さんの顔を思いっきり引き寄せると、舌全体で紫浬さんの舌を裏側から舐めあげ、吸い立てた。
「っ……!」
 紫浬さんの全身が、一瞬硬直するなり痙攣した。僕は、ぎりぎりまで紫浬さんの舌と反応を堪能してから、唇を離す。
「は……ああああっ」
 紫浬さんは深い深い吐息とともに、脱力した上半身を僕に預けた。
 しばらく、二人とも息を静めるのに精一杯で、何もできず何も喋れなかった。いつの間にか、上着をはだけさせられてシャツだけになった僕の胸の中で、紫浬さんの体がどこまでも熱く柔らかい。
『智春お……』
 操緒が、とろけそうな表情と声で、僕の眼前に現れた。

282:絶対封印プラグイン 第5回-B
08/02/08 22:30:58 An6tiquO
 
『あたし、ヘン……あたし……』
「ああ……でも、いい、だろ……?」
『うん……』
 理性のかけらもないやり取りだったが、操緒は頷いてくれた。そうか。なら、このまま。
「紫浬さん……」
 紫浬さんの耳にそっと囁くと、その肢体が軽くわなないた。僕の胸に手をついて少し体を離すと、耳まで真っ赤になった顔を見せてくれる。
「トモハルくん……もう、わたし」
 そこで、いきなり僕を仰向けに突き倒す。不意打ちに抵抗すらできずベッドに倒れ込んだ僕の上で、紫浬さんは馬乗りになった。僕の顔の両側に手をついて、おおいかぶさってくる。
「ゆ……」
 呼びかけようとした僕を、微笑みで黙らせると、完全に僕と抱き合うところまで体を重ねる。不思議と、ふだんなら感じるはずの怪力も体の重さも、苦にならない。なんだか、僕の体の中からそれを跳ね返すに足るだけのエネルギーが湧き上がってくるようだった。
 紫浬さんは、僕の上で深い深い吐息をついた。ノーブラの胸が僕の胸の上でつぶれてやわやわとうごめき、そのしなやかな手が僕の脇腹から背中を撫でる。それらの感触全てに、僕も頭がどうにかなりそうだった。僕の肩におとがいを乗せると、耳元で囁いてくる。
「もう、わたし……がまん、できません。だって、ぜんぶ、あれの……せいですから……仕方ない、ですよね? トモハルくんだって……」
「あれ、って……?」
 首筋に感じる紫浬さんの息づかいに我を失いそうになりながら、かろうじて訊ねる。紫浬さんは僕の耳から首に軽い口づけを繰り返しつつ、一言だけ呟いた。
「共鳴……器」
「あ……」
 あれか。レゾネータ。紫浬さんは、僕の顔に頬をこすりつけ、唇で僕の顎をなぞり、細い指先で僕のシャツのボタンを器用に探り当てて外しながら、続ける。その間も、僕の胸の上のふくらみと腹の上の柔らかい盛り上がりとが、微妙にうごめいて僕を刺激していた。
「トモハルくんも、もう分かるでしょ……あれは、機巧魔神同士を……その通じ合う部分を増幅して……魔力がぐるぐる回って強め合って……でも、こんな……こんなふうに響き合うなんて……ああ、でも」
 共鳴。機巧魔神同士の。そう言われてみれば、僕は演操者で、操緒は射影体で、紫浬さんの体には機巧魔神の技術が使われていて、しかしそれが、どうして……?
 いやだが、確かに、この体の底から揺るがされるような衝動は、《黑鐵》を呼び出すときのそれに通じている。紫浬さんと……共鳴し合う相手と、どこまでもひとつになって融け合ってしまいたいという、抗いがたい切望が、僕の裡で渦巻き、荒れ狂っている。
 ああ。僕も分かっていた、のかもしれない。あの午後の化学準備室で、朱浬さんと目を合わせたときから。僕と操緒と、朱浬……紫浬さんが、離れていられたりするはずがないってことを。コンビニで見かけた雑誌の表紙モデルも、思えば、朱浬さんに少し似ていた。
 呆然と横たわる僕は、ふいに胴体に冷たい空気を感じて、視線を下ろした。紫浬さんがいつの間にか、僕のシャツを左右にはだけさせ、Tシャツを胸のところまでまくりあげてしまっていた。悪戯っぽい、でもどことなく怨ずるような目つきで僕を眺めながら、
「ふふ……トモハルくんが……悪いんですよ? あんなの……起動しちゃって。トモハルくんのシャツとベッドで……それだけでがまんするつもりだったのに……いきなり帰ってきて……あんなふうに呼ぶから……あんなキスするから……だから、わたしだって」
 その声の甘やかすぎる響きにくらくらし始めた僕の胸から脇腹を、紫浬さんは、さも愛おしげに指でなぞった。
「う……」
『ひゃっ……』
 うめき声を上げたのは、僕だけではない。操緒もまた、僕と同じ快感を共有したらしかった。それを見て、紫浬さんが目を細める。
「ふふ……可愛い。トモハルくんも。操緒さんも」

283:名無しさん@ピンキー
08/02/08 22:32:14 An6tiquO
今回はここまで。次回は紫浬さんタチ篇+朱浬さんネコ篇。

284:名無しさん@ピンキー
08/02/08 22:44:36 1+1Pj6aA
GJ!
続き全裸で待ってます!

285:名無しさん@ピンキー
08/02/08 22:59:09 Onb4Cs3a
じゃあ俺は全裸どころか皮剥いて待ってる!

286:名無しさん@ピンキー
08/02/08 23:20:47 MUoDGkQR
GJ!!!
全裸でおったてながら待ってる

287:名無しさん@ピンキー
08/02/10 02:42:58 MJnij+Yg
俺はガマン汁垂れ流しながら続きを待つ!

288:名無しさん@ピンキー
08/02/11 21:11:39 2wKML7zW
「はい、トモハル」

突然、朱浬さんに部室に呼ばれたかと思うと謎の物体を手渡された。
今僕の手の中にあるこれはゴムのような透明な容器であり、中には透明な液体が入っている。
経験上このパターンは何かしら悪魔にかかわることで、更にまた佐伯兄と一悶着が起こる。間違いない。
既に(と言うより呼び出された時点でだが)覚悟を決めた僕は朱浬さんを見つめて何をすればいいのかと聞くことにする。
「えー…コレは何で僕は何をすればいいんですか?」
僕の後ろに漂う自称守護霊の操緒もやはり諦観の境地に達しているらしく、ただ疲れたため息を吐き出すのみである。
もはや単なる雑用係と言うべき立場であるのに文句を言わさせないのは朱浬さんが相応の"暴力"と"魅力"を持っているからだろうか?
そんな考えを持っていた僕に返ってきた答えは意外なものであった。
「ん?コレはローション。あと別に何もする必要はないけど」
『………絶対嘘』
操緒の限りない疑惑の目線を軽く受け止め、僕にコレの説明をした。
「うーん、トモハルには関係あるけど別になにしろって事では無いわ。奏っちゃんに渡すか大事に保管しておくかどちらかしておけばいいわ」
「…でもローションって事はあの、つまり化粧水ですよね。コレは何か特別なヤツですか?」
どうやら特に貴重品でも無いのはぞんざいな扱い方をしているのでわかったし面倒事に巻き込まれる心配もあまりなさそうだ。
しかし、僕の発言を聞くや否や朱浬さんはその紅唇を楽しげに歪ませて僕をしっとりと見回した。
「あの…?」
「訂正するわ。奏っちゃんに渡しなさい。それもなるべく早くにね」
目が狐のように弧を描くような笑い方を表現した。
操緒はどうやらとても嫌な予感がしたらしく
『智っ!用事は済んだんだから戻るわよ!』
強引に用事を切り上げてしまった。
あわただしく去る僕達の背中を見送った後、朱浬さんが笑顔で
「がんばって頂戴、トモハル」

と誰しれず呟いたのは当人以外は知るはずも無かった。

289:名無しさん@ピンキー
08/02/11 21:13:52 2wKML7zW
>>288

一方の僕はと言えば教室に戻り、嵩月に例の物を渡し終えた所だった。
「これは……」
「朱浬さんが嵩月に渡せって……どうかした?何だか表情が暗いけど」
だいたいペットボトル程度のソレを手に、嵩月は眉をハの字にしてなにやら困っている。
とするとやはり何か変な物では無いのか?コレ。
その様子に操緒も興味津々とばかりに覗くがやはりただの透明な液体である。
水のようにも見えるがよく見ればほんの少し粘性があるようにも見える。
そんな僕と操緒の視線に気づかずに嵩月は手渡されたままの格好で「あの…」だの「…その、」だの呟くのみだ。
心無し顔が赤く染まってるようにも見えるがただの光の加減だろう。むしろ化粧水を渡されて照れるような理由が無い。
とりあえずこのまま立っていてもしょうがないので席に戻ろうとした僕の制服の袖が掴まれた。

「私の家に来て下さい!!」

……教室が静まった。
校内有数の美少女が大声であまり冴えない男を家に誘う姿を見れば納得できる現象であろう。
その中心に居た僕と嵩月。
嵩月は顔をうつむかせて僕の袖を軽く焦げ臭くなるまで握り締めているだけだが、僕はそうはいかない。
「……………」
「……………」
『…………』
クラスメイトの大半が僕を睨む中、特に佐伯妹と杏、操緒の目線が痛かった。
杏はびっくりしたような顔をすると僕を居ないかのように無視し始め、佐伯は口を「シ・ネ・ヘ・ン・タ・イ」なんて動かす。
操緒はむしろ笑顔だがそれが怖い。
そんな中、嵩月は僕の返事を待っている。
無論ここで波風を立てない選択ができるならそれがいい。だが朱浬さんの指示の延長線にこの嵩月の行動があるのだ。
災いの種というのは放っておけばすぐに芽がでて成長するものなのである。
ならば、何かが起きる前に手を打てればそれが最上だ。
僕は物理的な殺傷力を持ちかねない視線に晒されながらその申し出を受託した。

290:名無しさん@ピンキー
08/02/11 21:14:32 2wKML7zW
>>289

『変態』
かくして、表面上は何事もなく平穏な毎日に分類されるであろう1日が
『なに鼻の下伸ばしてるの?馬鹿みたいだよ?』
…1日が、ようやく1/4も終わり、約束通り僕は嵩月の家へ
『やっぱ胸に釣られたんだね。あーあ、ニアちゃん悲しむだろうなー』
……嵩月の家へ、
『佐伯さんも恨みがましい目で見てたしあれは夜道に後ろからブスッて刺すね』
…………………
『何?どうかした?』
何故かずっと不機嫌…いや、表面上はいつも通りの操緒はずっと帰り道から愚痴(?)を僕の耳元で独り言のように話していた。
おかげであの化粧水は何だったのか?とかやっぱ佐伯妹が睨んでたから悪魔に関係するものだろうか?などといった思考も途中で寸断された。
それを止めるように言ってみたが『独り言を言ってるだけだし』と言って聞く耳を持ちやしない。
なので、止めさせる事を諦めて延々続く自称独り言をBGM代わりに嵩月の家へとたどり着いたのだ。
「…ぉじゃましまーす」
そして奇跡的に誰にも会わずに例の純日本家屋!とでもいった建物へと着き、中でなにが起こるのかと心配が伺える情けない声で挨拶をした。
『…誰もいないのかな?』
しかし返ってくる声は無く、暗い闇がそこに在るばかりであった。
これでは仕方がないな、と安心半分不安も半分で肩の力を抜き、帰ろうかと踵を返そうとしたその時。
「…お待ちしておりました」
しっとりと、どこか艶を感じさせる嵩月の声が闇の奥から聴こえた。

291:名無しさん@ピンキー
08/02/11 21:17:26 2wKML7zW
こんな先の読める展開だけど続く。
あと1/4じゃなくて3/4だったわホント馬鹿な奴だ
もう一回投下で完成なんで無視でも生暖かい目で見るのでもどっちでもいいんでこのスレを少し借りさせてもらう

292:名無しさん@ピンキー
08/02/11 21:29:52 X+ZyaF7Z
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 嵩月!嵩月!
 ⊂彡

293:名無しさん@ピンキー
08/02/12 20:31:55 7jCdrB9M
GJ!
少しなんて言わずにどれだけでも使ってください。

294:名無しさん@ピンキー
08/02/13 00:01:17 tAGEF9Fu
GJ
ワッフルして続きを待ってる

295:名無しさん@ピンキー
08/02/13 11:08:16 uh9F2moW
これは?携帯だけだけど
URLリンク(courseagain.com)

296:名無しさん@ピンキー
08/02/15 15:18:06 iXM7OtZl
智春&操緒×紫浬&朱浬の続き。紫浬さんタチ篇+朱浬さんネコ篇。
早いとこ突っ込めバカ野郎。という人は、スルーヨロ。

297:絶対封印プラグイン 第6回-A
08/02/15 15:19:40 iXM7OtZl
 
 そのセリフに、紫浬さんと過ごした短い日々のことを思い出す。そういえば、大人し目な話し方と表情のわりに、大胆でSっ気のある振る舞いをするひとだった。
「ほんとに、可愛い、です……」
 言いながら、僕の乳首に舌を這わせてくる。うおっ。
『あん……はあっ』
 僕は何とかこらえたというのに、操緒は僕の横で身をよじり、あられもない声を上げた。《黑鐵》とじかにつながっている分だけ、僕よりも共鳴効果が強くて深いのかもしれない。それを見た紫浬さんは、うっとりと笑った。
「ふふ……ここが、気持ちいいんですね? 操緒さんも……トモハルくんも」
「あ……」
『や……ああっ……やんっ、やっ……だめえっ』
 紫浬さんは容赦なく、舌でくすぐり、舐め、唇全体で吸い立ててくる。女の子に責められてだらしなく喘ぐのだけは避けたくて、僕は懸命に歯を食いしばるのだが、いかんせんそのすぐ横から、抑えきれない風情の嬌声が響いてくるとあっては、努力の甲斐もない。
 何とか体を起こして、一方的に握られた主導権のいくらかでも取り戻したいのだが、体の自由がうまく利かなかった。もしかすると、操緒が僕以上に、紫浬さんの愛撫にすっかり酔ってしまっていたからかもしれない。
『あ……はあっ、は、あ、んんっ……しゅ、朱浬……さん……ま、待って……』
「あら」
 操緒がそれでも試みる、言葉だけの空しい抵抗は、紫浬さんの嗜虐心をいっそう煽っただけらしく、
「操緒さんは、わたしをちゃんと呼んでくれないんですか……? だめですよ。そんなの」
『で、でもっ』
「これでも……?」
 言うなり、白い歯を使って甘噛みされた。さらに、両手で、もう片方の乳首をいじりながら、脇腹から背中をさすってくる。
「ううっ……く……」
『ふ、あ、あう、ああっ、あ、ふ、ん、く、くうっ、あ、あ、は、はうっ』
 ひとしきり、唇と舌と指で好き放題に操緒と僕を弄んでから、紫浬さんは上気した美貌を少し持ち上げて、上目遣いに微笑む。
「操緒さん? さあ」
『は……あ……ゆ……ゆか、紫浬、さん……』
「はい。よくできました」
「くうっ」
『う、は、はあんっ……』
 今度は操緒だけでなく、僕も一緒に高い声を上げてのけ反った。紫浬さんが、僕の股間に手を這わせたからだ。ここまでのところで、もうすでに十分以上にいきり立っていたそこは、紫浬さんの微妙なタッチに、一段と膨れあがったように思えた。
「ああ、すごい……」
 紫浬さんの声も、さっきよりも明らかに情欲に濡れていた。操緒と僕の反応に、向こうもあらためて火がついたらしい。潤んだ瞳で僕の目を覗き込み、
「すごいですよ……トモハルくん……」

298:絶対封印プラグイン 第6回-B
08/02/15 15:20:49 iXM7OtZl
 
「ゆ、紫浬さん……」
「ふふ……うれしい。わたしで感じてくれてるんですね。これから、もっともっと、よくしてあげますから」
 鋭い金属音がして、不意に僕の下半身から衣服の感触が消えた。
「え……」
 ぼうっとしながら紫浬さんを見ると、少し舌を出しながら、
「ごめんなさい……ベルトとかチャックとか、面倒だから……」
 言い訳のように呟くその右手の先に、一瞬だけ銀光が閃いて、消えた。いや……そういう使い方もあるのか。この際、どうでもいいが。
「ふうん……」
 紫浬さんは、むき出しになった僕のそれをしげしげと見る。あのう、それはちょっと恥ずかしいのですが。
「こうなるんですか……この間とは、ずいぶん」
 そうなのだ。このひとは、あろうことか僕の一物を見て触ったことがある。あれは、風邪で抵抗力の弱った僕の下の世話を強引にしてくれた時だった。考えてみると、今もあの時の状況と、そう変わらないような気もする。
「ふふふ。なんか、もう出てますよ」
 紫浬さんは、その細い指を、僕の先端に滑らせた。しみ出していたものをすくい取り、敏感な箇所に塗り広げる。
「おっ……」
『は、あ、ああっ、あ、あ』
 僕と操緒が、同時に腰を跳ね上げる。だめだ。もう、保たない。紫浬さんも初めてで興味津々だったのか、遠慮なく掌全体で包み込むようにしていじってきたから、ひとたまりもなかった。
「う、お……」
『や、だ、だめ……っ』
 一瞬、意識の全てが吹っ飛ぶ。こらえていたものが全て、勢いよく噴き出すのだけが分かった。それから大きく息を吐き、吸って、薄目を開けた視界の中で、紫浬さんはさすがに少しびっくりした顔をしていたが、すぐに婉然と微笑んだ。
「うふふ……いっぱい、出ましたね……」
「は、はあ…」
 こちらは、満足な返事をするだけの余裕もない。横を見ると、操緒に至ってはようやく硬直が解けて、ぐったりと横たわるところだった。
『ふ、あ、は、はあ……ん』
 僕の耳のすぐ横で、とろけきった吐息を漏らす。スタイルのよい肢体が全体に紅潮してひくひくと震え、焦点の合わない目が僕をぼんやりと見つめていた。そのあまりに扇情的な姿に、僕の背筋がぞくりとなり、腰の奥にあらためて熱が宿る。
「あ……トモハルくん。また」
 紫浬さんが、からかうような喜ぶような声を出した。
 そう。僕は復活していた。体の奥から、とめどもない活力が湧いてきて、あっという間に僕の体を満たす。これは……レゾネータによる魔力循環と増幅の結果ということなのか? 呆然とする僕の目の前で、紫浬さんが、いきなりぶるっと体を揺すった。
「あ……そんな……わたしにも……これが……共鳴……?」
 紫浬さんはしばらく、その感覚をとっくりと味わうように軽く目を閉じていたが、やがて、僕に向かってあでやかな笑顔を開かせた。
「まだまだですよ……トモハルくん。わたしもさっき一回……ね、ですから、これでやっと、おあいこです。もっともっと……気持ちよくしてあげますから」

299:絶対封印プラグイン 第7回-A
08/02/15 15:21:54 iXM7OtZl
 
「ゆ……紫浬さん」
 僕は体を起こそうとしたが、果たせない。もしかして、操緒が脱力しきっているのがこちらにもフィードバックされているせいなのだろうか。紫浬さんは、全てわきまえているかのような余裕の笑みを見せ、
「大丈夫ですよ……やさしくしますから」
 えーと、そのセリフを言う立場は逆だと思うのですが。突っ込みを入れようかと思ったが、紫浬さんはそんないとまなど与えてくれない。再び、僕のそれに触れる。
「うっ……」
 再び襲ってくる快感に、僕の全身が打ち震えたが、
『は…あ、あああっ』
 操緒は、もっと目覚ましい反応を見せた。死人が息を吹き返したかのように、体を跳ね上がらせる。
『だめっだめっそんなっ……あたしっ……そ、そんな、すぐ……だ、だめえ……』
「ふふふ……女の子は、いくらでも、よくなっちゃえるんですよ。だから、ね?」
 紫浬さんは、すっかりいじめっ子モードに入ってしまったらしい。僕と操緒の反応を確かめながら、全体をしごき、筋をなぞり、先端をさすり、根元をやわやわと揉みほぐしてくる。さすがに手つきはぎこちないが、かえってそれが微妙なタッチを生んで、気持ちいい。
「こう……こうかしら? あら、これでこう……ふうん……ああ……」
 言葉面だけ聞けばけっこう冷静なようだが、自分の行為で自らも興奮しきっているらしく、声音は蜜が滴り落ちんばかりに甘い。僕はその言葉と愛撫の前に、射精を我慢するだけで手一杯だった。操緒はといえば、
『や、や、そ、そこ、だめ、だめ、あ、は、やあっ、あ、あう、ふ、は、い、いや、いやいやいや、そ、それ、あ、はう、お、や、やあっ』
 紫浬さんの指使いの一つ一つに敏感に応え、スレンダーな裸体をのたうち回らせている。快感の波にうち寄せられ引きずられる、そのリズムが僕と同調していて、否応なくお互いを高めていく効果があった。
「ふふ……トモハルくんも、操緒さんも、スゴいです……」
 紫浬さんも、だんだん余裕がなくなってきたらしい。手つきから容赦がなくなり、有無を言わさずに僕と操緒を追いつめ始めた。
『や……や……あ……は……だ……だめ……だ……め……』
 操緒は、もはや途切れ途切れに声を漏らすことしかできない。僕も、限界だった。紫浬さんの手の動きに合わせて腰が動くのを、止められない。紫浬さんが、全てをしぼりだそうとでもするかのように激しくしごいた瞬間、僕は耐えきれずに、ふたたび放った。

300:絶対封印プラグイン 第7回-B
08/02/15 15:22:56 iXM7OtZl
 
『は……く……ううっ』
 同時に、操緒のうめくような声がする。だが紫浬さんは、そこで僕たちを解放してくれず、
「だめ……もっと……もっと……わたし、も……」
 熱に浮かされたような声を出しながら、僕をしごき続けた。
「う、わ……」
 驚いたことに、今し方一回終わったばかりだというのに、軽い射精感が僕を襲う。それも繰り返し。これは……一種の拷問だ。だが、共鳴し増幅された魔力のおかげか、何とか持ちこたえる。
 操緒は、声すら立てられないようだった。僕にもそちらの様子を確かめる余裕などなかったが、お互いの感覚共有が進んでいるせいか、繰り返し絶頂に押し上げられて、きつく強張らせて反っくり返った体を、小刻みに痙攣させているのが、気配で感じられる。
 どれだけそうしていたのか、そのうちに力つきて一旦ぐったりとなり、そこでようやく声を出せるようになったらしく
『や……は、だめ……もう、だめ……ゆるして……』
 息も絶え絶えに懇願するのが聞こえた。僕と操緒の反応が鈍くなったことに気付いたのか、紫浬さんもとりあえず手を止めてくれる。だが、声はやや不満げで、
「もう……まだ、ですよ……わたしも……よくなりたいのに」
 僕が荒い息を整えようとしながら、そちらを見ると、紫浬さんは片手を僕に添えながら、もう片手を自分のシャツの裾の中に潜り込ませていた。その手と腰が、微妙に動いている。たまらなく、色っぽい。
「ゆ……紫浬さん……」
 頭をもたげてみると、意外に簡単に動いた。さっきより、体に力が戻っている。どういうことだ? 頭を振った僕をどう見て取ったのか、紫浬さんは再びゆるゆると、硬さを保ったままの僕をさすり始めた。
「うふ……また……」
 いやに熱っぽい視線で、僕のあそこを凝視する。まさか。そんな、精液まみれのそれを。ありえない、と思う僕の目の前で、紫浬さんは、かすかに頬笑みながら、それにそっと口づけた。その接点から響く感覚が、僕をまたもやのけ反らせる。と同時に、
『は、はああんっ!』
 横合いから、操緒の甲高い声がほとばしった。必死な声で、
『や……だ、だめっ、だめっ! 今はほんとにだめっ、それだめっ、だめだめだめええっ!』
 そう叫んだが、そんな弱みを見せてしまえば、紫浬さんが簡単に許してくれるわけがない。
「うふふ」
 含み笑いとともに、紫浬さんは、舌の先で僕の先端をちろり、と舐めた。

301:絶対封印プラグイン 第8回-A
08/02/15 15:23:59 iXM7OtZl
 
「うおっ」
『あ、お……んっ、は』
 指とは全く異なる、柔らかくて暖かくて繊細な刺激に、僕も操緒も、ほとんどうなり声のような喘ぎを放つ。そんな僕たちの耳に、紫浬さんのうっとりした声が流れ込んできた。
「ああ……すっぱあい……うふふ」
「ゆ、紫浬、さん……」
 最初の一撃のあと、少し間が空いたので、紫浬さんの方を見る。紫浬さんほどの整った美貌が、真っ赤に上気して妖艶きわまりない微笑を浮かべ、僕のそれに寄り添っている様は、この上なく僕の劣情をそそり立てた。つい、腕を上げて紫浬さんの耳のあたりを撫でる。
「んんっ……」
 紫浬さんはむずがるような声を出し、それから、少しだけ咎めるような表情を僕に向けたが、目が疑いようもなく笑っていた。
「トモハルくんたら……まだ足りないんですね……えっち」
 いや、休みなく責め立ててくれてるのはそちらなんですが。僕が苦笑いした瞬間、紫浬さんが僕のものを口に含み、舌をそっと這わせてきた。
『は……ん……』
 それだけで、操緒は軽く達したのかもしれない。しばらくせっぱ詰まった呼吸音だけがしていたが、紫浬さんの唇と舌の動きが激しくなるにつれ、
『は、や、はあっ……や、や、そこ、いや、いやいややあっ……や、は、あんっあっあっあっ……だめ、だめ、いや、だめえ……だ、……め、……だ……は……あ……あ、あ、また、あ、もう、あ、だめ、いや、だめ、もう、も……う……ん、ん、は』
 少しずつ悲鳴のオクターブを上げていっては途切れ、また元に戻るという繰り返しを続けた。もちろん、僕も同じように翻弄され続けていて、操緒のように間断なく頂点を極めるわけではなかったが、ほぼそれに近い状態だった。
 紫浬さんの舌使いが妙にツボを心得ているとか、共鳴現象のおかげで体力気分ともに盛り上がっているというのもあったが、そもそも、紫浬さんが僕のものに口でしてくれているという状況そのものが、僕をたまらなく興奮させる。
「ゆ……ゆか……り、さん……もう……」
「んー?」
 僕と目を合わせた紫浬さんは、そっと僕から唇を離す。
「なあに? トモハルくん」
「い、いや……だから……」
 なんでやめるんだ、そこで。同じように責めから解放された操緒の荒い呼吸音の中で、僕は不意に勘づいた。紫浬さん、まさか。
「なんですか……?」
 紫浬さんは触れるか触れないかのタッチで、僕の裏筋を撫でる。操緒が『は……っ』と身をよじるのが感じられた。僕も、その一撫でだけで、こちらには交渉の余地などなくなったことを悟る。
「ゆ、紫浬さん……」
 それでも何とか言葉にせず、目だけで訴えてみたが、紫浬さんは素知らぬふうに、
「なにか、言いたいことがあるんですか……?」
 ゆっくりと、僕のそれをなぞるようにして舌を上下させながら、訊いてくる。く……くそっ。なにが、Sっ気だ。ドSじゃないか。いつの間にか、また朱浬さんになってしまったとかいうんじゃないだろうな。

302:絶対封印プラグイン 第8回-B
08/02/15 15:25:02 iXM7OtZl
 
「で、ですから……」
「ですから?」
 指と舌で僕を生殺しの状態に保ちながら、よくもそんな無邪気な声が出せるものだ。女は、魔物だ。僕は、全面的に降伏せざるをえない。
「つ、続けて……」
「なにを?」
 なおも言いながら、僕の先端を舌裏でくるりと一周する。操緒が『はお……うっ』と鳴き、僕もその一撃に思わず達してしまいそうになったが、最後の瞬間に紫浬さんに根元を強く握りしめられて果たせなかった。アンタ、いつそんな技を覚えたんだ。
「なにを、ですか……?」
 だめ押しで訊かれて、けれど、こっちには暫く応える余裕なんてない。深呼吸を繰り返すのだけで精一杯だ。そんな僕を見て、紫浬さんは妖しく頬笑む。
「言ってくれないと、わからないです……」
「で、ですから……続けて……僕の……」
「僕の?」
 僕にためらいなど持たせないためか、指と舌で全体をつつうっと撫で上げる。おおっ。
「ぼ、僕の……ペ、ペニス……最後まで、続けて……ください……お願い、します」
「ふふ。……ほんとはもうちょっと、ですけど……トモハルくん、可愛いですから、許してあげますね」
 そんなことを言って、紫浬さんも限界だったんだと思う。待ちかねたように思い切り、僕の一物を頬張った。
『あっ、ああああっ……は、あ、や、や、や……は……や……もう……ヘンに……な、っちゃ、う……や……も、も……う、だ……だ……めえ……』
 とたんに、操緒のソプラノが響き渡る。それも、紫浬さんが情け容赦なく吸い立てなぶってくるうちに、沈黙した。呼吸音すら聞こえないが、僕の方もそれを気遣うことなどできない。目をきつく閉じ、紫浬さんの頭をつかまえると、僕の股間に押しつけた。
「!……っ」
 紫浬さんから驚きが如実に伝わってくるが、離したりしない。紫浬さんもすぐに、動きを再開し、それも、より一層加速させた。ああ。もう、ダメだ。
「う……くうっ」
 僕の腰が跳ね上がり、そこで凝固する。委細構わず、僕は暖かく湿った中に包まれて、全てを解き放った。それも、三回くらいは波があったと思う。
『ん……あ……は……はあ、はああああっ……』
 我に返ったのは、操緒の感極まった後の深いため息を聞いたときだった。少し手の力が緩んだせいか、紫浬さんが急に体をもぎ離すようにして上体を跳ね上げ、それから僕の上に倒れ込んでくる。
「う……げ、げほっ……か……あっ」
 背を丸めて、咳き込んでいた。それを見て、少し背筋が冷える。僕は、何をしたんだ。

303:絶対封印プラグイン 第9回-A
08/02/15 15:26:23 iXM7OtZl
 
「あ……す、すみません……大丈夫……ですか……?」
 紫浬さんは、口元に手を当てながら、僕を睨んだ。目に、うっすら涙がにじんでいる。真剣に恨みがましい口調と目つきで、
「ひ……ひどいです……け、けほっ……トモハルくん……」
「い、いや……すみません。夢中で……でも、紫浬さんが……」
「わたしが?」
「いや、何でもないです……すみませんでした」
 体を起こし、紫浬さんを覗き込む。おや。案外にすんなりと体が動く。
「本当に……大丈夫ですか?」
「だいぶ……飲んじゃいました……もう……」
 本当に、申し訳ないことをした。決して美味しいもんじゃない、というか、はっきり言うと、不味いだろうに。お詫びのつもりで、紫浬さんの頭を軽く撫でると、紫浬さんは僕の胸に顔を擦りつけてから、僕を見上げてくる。
「もう……責任、取ってくださいね?」
「えーと……」
 ちょっと怖いことを言われた気がする。あのう、責任といっても、いろいろあるのですが。などと考えていると、紫浬さんが背伸びをして僕に顔を近づけてくる。僕は、僕が放出したものにまみれたその口元に、こちらからキスをした。
 まあ……何というか、ヘンな匂いと味だった。自分でもそう感じるんだから、他人にこんなことは二度と頼めないなあ、と思う。せめてもの罪滅ぼしのつもりで、できるだけ、紫浬さんの唇や口の中のそれを、舐め取ってあげた。
「ん……ふ」
 紫浬さんの体が軽く震え、僕から顔を少し離す。有り難いことに、恥ずかしそうな頬笑みを浮かべてくれていて、こちらもほっとする。
「もう……トモハルくんたら」
「紫浬さん……」
「わたしに……わたしったら、あんなこと……ほんとに……もう」
 ああ、ちくしょう。反則的に、可愛い。僕の中で、何かがむくりと頭をもたげた。またか。あの罰当たりなプラグインの影響がどこまで続くのか、良く分からなかったが、今はそれに身を委ねるしかないのか。
「紫浬さん」
「は……はい?」
 急に真面目な声を出した僕に、少し戸惑った感じの紫浬さんを、僕は横向きざまに押し倒した。ベッドの上で体を入れ替えるようにして、紫浬さんの上にのしかかる。半ば意外なことに、紫浬さんも目立った抵抗をせず、ぐったりとしどけなくベッドに横たわった。
「トモハル……くん……?」
「紫浬さん……いいですか……?」
 紫浬さんは、言葉では答えなかった。ただ、恥ずかしそうに目を細め、僕の首に腕を回してくる。
『ト……智春お……?』
 そんな僕たちを、操緒が横から覗き込んできた。ようやっと、忘我の境地から復活してきたらしい。艶やかな髪がほつれて肌にこびりつき、全身が桃色に染まって、これが操緒かと思うくらいに、色っぽかった。

304:絶対封印プラグイン 第9回-B
08/02/15 15:27:37 iXM7OtZl
 
『まだ、するの……?』
「操緒さん……その……」
 紫浬さんが目を伏せ、腰をもじもじさせる。あの、済みませんが、こっちと下半身が触れ合った状態でそういうことをされると、正直辛抱たまらんのですが。
「わたし……まだ……」
 その上に、こっちの理性を吹き飛ばしてしまいそうな呟きを漏らしてくれる。思わず僕も頷いてしまい、
「操緒……僕も、ガマンできない」
『ふーん』
 操緒はジト目で睨み付けてくるが、その表情にも悦楽の余韻がそこかしこに色濃く残っていて、迫力に欠ける。そうするうちに、操緒は、ふっ、と息を吐いて少し肩をすくめた。
『止まんないんだよね……あれのせいなら……仕方ない、ってことにしといたげる』
「ごめんな」
 僕が、一応済まなさそうに微笑ってみせると、操緒はそっぽを向いたが、頬から耳にかけてが赤く染まっていた。こいつも、こんなに可愛かっただろうか。プラグインの影響だかなんだか知らないが、今日はいろんなものが日頃と違って見える。
 僕は、あらためて紫浬さんに目を落とした。一分の隙もなく整った美貌。おっとりとした笑顔。熱っぽく潤んだ黒い瞳に、紅潮した滑らかな頬。細い首筋。繊細な鎖骨の曲線。半ば以上はだけたワイシャツを持ち上げるふくらみの先端が、はっきりと尖っている。
 僕はその光景に息を呑みながら、少し震える指でゆっくりと、ワイシャツの残るボタンを外していった。紫浬さんはその間なすがままになっていたが、ボタンを外し終わった僕が肩口からシャツを引き下ろすと、少し背中を浮かせて袖から腕を抜いてくれた。
 綺麗だった。いつぞや、ちらりとだけ見た時にもそう思ったが、今こうしてゆっくりと眺めていると、感動すら覚える。すらりとして、それでいて女性的な曲線に満ちた肢体。程良く豊かで形のよい胸。しみ一つなく最上質の白磁を思わせる肌。全てが神々しかった。
「や……」
 僕の視線に耐えきれなかったのか、紫浬さんが少し体を捩る。
「トモハルくん……」
 誘うように名を呼ばれて、僕は紫浬さんの胸元に顔を近づけた。細い鎖骨に、そっと口づける。
「あんっ……」
 紫浬さんの吐息に力を得て、肩先へと唇をすべらせた。と、そこにうっすらとした線のようなものを見た気がして、僕は自分の動きをいっそう優しくした。
 そうなのだ。このひとの体の半分は機械……というか、兵器なのだ。最近は当たり前にすら思っていた事実が、この時だけは、僕の心に突き刺さった。嬉々として膨大な火力を振り回すこのひとが、その裏でどんな想いを抱えているのか、僕は、何も知らない。
 あの飛行機事故で致命傷を負った体を黒科学で繕ってまでして、《白銀》の副葬処女となった双子を救い出す術を求めて。なのに哀しみも苦悩も決して表に出さず、自分のことすら偽って、いつもおっとりと余裕な顔で笑って。どうしようもなく悪戯好きで傍迷惑で。
 ああ。僕はこのひとを知っている。黒崎紫浬でもあり、黒崎朱浬でもある、このひとを。だが、僕が知っているこのひとは、ままならない世界に向かって精一杯突っ張った挙げ句に、ある名前を高らかに告げるのだ。僕にも、その名前でこのひとを呼べと言うのだ。
「……トモハルくん?」
 僕の動きが鈍くなったためか、やや不安げな声がした。機械の部分を前にして、僕がためらったとでも思ったのだろうか。見損なわないでほしい。僕は顔を上げてその双眸を覗き込み、囁いた。
「……綺麗ですよ。朱浬さん」

305:絶対封印プラグイン 第10回-A
08/02/15 15:28:51 iXM7OtZl
 
 反応は、速やかだった。瞳が揺れたかと思うと大きく見開かれ、うっとりとした笑みが薄れ、僕の首に回された手がゆるむ。
「え……」
 この上なく戸惑ったその表情に向かって、僕はもう一度、その名を呼んだ。
「朱浬さん」
「ええっ……ト……トモハル……くんっ……な……なに……」
「何って……僕の知ってる朱浬さんは……朱浬さん……ですから」
「あ……」
 何か言おうとしたらしいが言葉にならず、しばらく口を開けたり閉じたりした後、見る見るうちに耳まで真っ赤になると、いきなり胸を腕でかばい、こちらに背中を向けた。えーと……どうしたんだ、一体。
「や……やあっ……トモハルっ……見ないでっ」
「え、ええと……」
 つい今し方までの態度との落差に、僕は呆然とせざるを得ない。
「あの……朱浬さん?」
「あ……や、あたし……あたしっ」
 僕の呼びかけに、一層背を丸めて、縮こまる。これは、もしかして。
「……恥ずかしいんですか?」
 耳の側で小声で訊いてみる。ぴくりと震えた体が、何よりも返事になっていた。なんてことだ。紫浬さんでいる間は、あれだけ大胆に振る舞った人が、いつもの名前で呼ばれた瞬間に我に返ってしまったらしい。しかしそれにしたって、
「朱浬さん……だって、いつも僕の前じゃ……」
 素肌にしろ下着にしろ普通に見せたり触らせたり、恥じらいなど微塵も感じさせたことがないというのに、これは一体どういう風の吹き回しなんだ。
「そ、それは……違っ……あ、あたし……あんな……こんな……」
 それでも、身も世もなく体を竦ませる朱浬さんは、ひどく新鮮で可愛かった。この人は、こんなところがあったのか。
『へええ……』
 隣から操緒の声がして振り向くと、そっちもかなり驚いた顔をしていた。僕と目を合わせると、だが、にやりと笑ってみせる。
『これはこれは……』
 何か、よからぬことを考えてるんじゃあるまいな。ちょっと不安になりながら、
「朱浬さん」
 僕が再び耳に囁くと、朱浬さんはびくっとした。そのまま無理にでも体を開かせてしまいたいという、自分の中で荒れ狂う衝動に必死に耐えながら、訊いてみる。
「……嫌、ですか……?」
 朱浬さんは、答えない。綺麗な黒髪が顔にかかって、どんな表情をしているのかも良く分からない。僕は、そっとため息をついた。ここで引き返せるかどうか自信など全くなかったが、朱浬さんがどうしても嫌だというなら、努力はしてみよう。
「……嫌なら……」
「……じゃ、ない」
 ごくごく小さな、呟きだった。

306:絶対封印プラグイン 第10回-B
08/02/15 15:30:05 iXM7OtZl
 
「はい……?」
「じゃない、けど……あたしも……だけど……」
 朱浬さんらしからぬ弱々しい声音に、それ以上何かを言わせるのは、酷だと思った。だから、僕は唇を朱浬さんの首筋へ移した。僕の吐息がかかるだけで感じるらしく、時折ぴくりと反応し、軽い喘ぎ声を漏らしてくれる。
 お互いの間の共鳴現象は、まだ僕たちを解放してくれていないのだった。それでも、一気に朱浬さんの肉体を蹂躙してしまいたくなる自分を辛うじてコントロールしながら、ゆるやかに愛撫を続けるうちに、
「は……あうっ」
 朱浬さんが鮮烈な反応を示したのは、僕の唇が肩胛骨のあたりをなぞったときだった。丸くなっていた背中がきれいにのけ反る。僕は、同じところに舌を這わせた。
「そ……そこ、だめえぇっ……どうして……生身じゃ……ないのにいっ、うん、んっ、あ、は、あ」
 違う。生身ではないから、機巧魔神の部分だからこそ、感じるのだ。僕や操緒と、《黑鐵》と、響きあうのだ。ああ。これ以上自分を抑えるのは、僕にとっても無理だ。
「朱浬さん」
 僕は、朱浬さんの肩をつかむと、やや強引にその体を仰向かせた。朱浬さんも抗いかけたが、僕の力の方が強い。朱浬さんの心理的な変化を抜きにしても、さっきまでと物理的な力関係が逆になってしまっているのは、どういうわけなんだ。
 朱浬さんは、少し眉をひそめながら、それでも僕を真っ直ぐに見た。
「トモハル……」
「すみません……僕も……もう限界です」
『そうですよ……朱浬さん? 智春が、可哀想ですよ』
 横合いから、操緒も朱浬さんを覗き込む。
『大丈夫……よくしてあげますから。あたしもついてますって』
 その口調にやや不穏なものを感じはしたが、僕は朱浬さんから視線を外さなかった。
「お願いします……このままだと」
「うん……」
 朱浬さんは軽く目を閉じて、熱くてかぐわしい息を吐いた。
「あたしも……ダメ、みたい。トモハル……こんなの……でも……」
「……すみません」
 朱浬さんは、かぶりを振った。
「謝らないでよ……そんなこと、しないで。トモハルは……あたしのこと……嫌いじゃ、ないでしょ?」
 好きか、とは朱浬さんは訊かなかった。僕も、そう訊かれたら、どう答えたらいいか分からなかった。逃げかもしれないが、今の僕たちの間柄には、朱浬さんが口にしたような微妙な表現がぴったりだと思う。だから、僕は答えを迷わなかった。
「嫌いじゃないですよ。もちろん」
「ん……なら、いい」
 朱浬さんは、少しだけ唇を尖らせ気味にして、微笑んだ。僕はそこに向かって、自分の唇を寄せる。紫浬さんと交わしたのとは全然違う、軽くて、それでいて熱い口づけだった。

307:絶対封印プラグイン 第11回-A
08/02/15 15:31:14 iXM7OtZl
 
「んっ……」
 キスを終えた後も、朱浬さんの表情は何かを堪えるように、妙に固かった。やはり嫌なのか、と少し迷った僕の横に、操緒が顔を出す。
『ふふ……朱浬さん。可愛い』
「操緒……?」
『いーのいーの。智春は続けてっ』
 言われるままに、僕は朱浬さんの顎の線をそっとなぞり、柔らかそうな耳へ唇を近づけた。耳にかかる艶やかな黒髪を指でそっとかき分け、真珠みたいに色づく耳たぶをそっと撫でてあげる。
「っ……」
 くすぐったいのか、朱浬さんが肩を竦ませた。僕はできるだけ優しく、その耳孔のあたりに舌を触れさせる。
「……っふ……っ」
 途端に、朱浬さんが僕から逃げるようにして首筋をそらせた。僕の眼前にさらけ出された、血管さえ透けて見えそうにきめ細かな皮膚が、目に鮮やかだった。特に香水など付けてはいない筈が、えもいわれぬ芳香がにわかに立ち上ってきて、僕の嗅覚を痺れさせる。
 頭がくらくらしながらも、僕は乱暴にならない程度に朱浬さんの頭に手を添え、その耳朶と首筋へ軽い口づけを繰り返した。キスマークは……やっぱり、まずいんだろうな。それでも、そんな微かなタッチにも朱浬さんは時折反応して、体を震わせる。
 そして、僕が耳元から首筋へ移ろうとして、耳と生え際の間あたりに舌を滑らせたときだった。
「んっ……く、はっ……」
 朱浬さんが首を大きくのけ反らせ、堪えきれなかったかのような吐息を漏らした。僕の拙い愛撫でも感じてくれているらしい。それが嬉しくて、再び同じところを唇と舌でくすぐってあげる。
「は、あっ……あ、ん……や、あ……んんっ」
 今度は、艶めいた声が上がった。いったん顔を上げて、朱浬さんの表情を覗き込むと、僕とは反対側に反らせた顔は見事に紅潮し、片手の人差し指を唇の間に噛み締めている。どうも紫浬さんとは違って、朱浬さんはあまり大胆に振る舞えないひとらしい。
「朱浬さん……」
 耳に囁くと、僕の息がかかるだけで感じるのか、いっそうきつく目を閉じた。
『うふふ。朱浬さんたら。びんかーん』
 操緒が嬉しそうに言う。
『これは、やりがいがありそうだわー』
 何をするつもりだ、お前。僕が軽く睨むと、操緒は含み笑いで応え、さっ次、と僕に指示した。言われなくたって、続けるさ。しかしこれは……レゾネータの影響で、全身が感じ易くなっているとしか思えない。でなければ、僕の稚拙な愛撫にこうも反応しないだろう。
 僕はあらためて、朱浬さんの首筋から肩先へ唇を走らせた。ところどころで鋭い反応を示すポイントを、できるだけ丁寧にケアしてみる。その都度、朱浬さんは呼気を荒くしたが、声を上げるのだけは、どうやら我慢しているらしかった。
 だが、その忍耐も、僕が鎖骨の端から、すっきりと絶妙な曲線を描く肩へと移動したとき、破られた。
「く、は、あ……あ、あ、や……やあっ、や……」

308:絶対封印プラグイン 第11回-B
08/02/15 15:32:20 iXM7OtZl
 
 単に、二の腕に唇を這わせただけなのだが、朱浬さんは大きく身を捩らせる。そうか。さっきの肩胛骨と同じで、このあたりは機巧魔神の部分なのだ。
 僕が、すらりとした腕の背中側を掌と指でなで下ろし、血管の透ける肘の内側や細い指とその間を舌でくすぐってゆくと、朱浬さんは必死に声だけはこらえながら、背中をのけ反らせて体をくねらせた。その痴態はあまりに美しく、僕の理性をじわじわと蚕食する。
 ひとわたり腕への愛撫を終えたあたりで、操緒が朱浬さんの顔を覗き込んだ。
『ふふっ。朱浬さん、頑張っちゃって。かわいーい。でも、ムダだよ?』
 操緒の声と同時に、僕は浬さんの腕を上へ持ち上げると、白い腋の下が露わになった。
『わ……きれいにしてある』
 操緒が感心したような声を上げる。腋毛の処理のことだろうか。ぼんやりと考えながら、僕はその柔らかい肉の上に舌を滑らせた。
「あ……やあっ」
 朱浬さんが悲鳴を上げ、腕を下ろそうとする。僕が腕を押さえつけているために、それができないと悟ると、体を横向きにして、僕から逃れようとした。構わずに、僕は腋の下の柔肌を舌でくすぐり、胸筋の付け根のあたりを唇で吸い立てる。
「ん……んんっ……く、は……や……や……ん、あ……や、あ……」
 朱浬さんはそれでも、手の甲を口に押し当ててまで、声を必死に押し殺そうとしていた。やっぱり、恥ずかしいのだろう。しかし、こんなところで感じるものなのか。我ながら、どうやってこんなことを思いついたのか不思議だった。その疑問が氷解したのは、
『朱浬さんも粘るねー……でも、ムダだって言ったでしょ。女の子の感じるとこなんて、分かってるんだから』
 操緒がそう含み笑いしながら言うとともに、自分が朱浬さんの腋の下から乳房に唇を移したときだった。どうやら、操緒に導かれているらしい。操緒が僕を乗っ取って操っているというわけではなく、僕と操緒が一体になってしまっている感じだった。
 朱浬さんの胸は、豊かに丸く張りつめ、その頂点で乳首が真っ直ぐに上を向いていた。これって、興奮して充血してるってことだよな。なんだか感動すら覚えながら、その下側の付け根あたりから頂点に向かって、唇と舌で軽く撫で上げる。
「ふ……あっ」
 朱浬さんの体が跳ねた。構わず、両脇から全体を柔らかく揉みほぐすようにしながら、乳首の上にすっぽりと唇をかぶせる。かすかにおののく乳頭にゆっくりと舌を這わせた。
「う、あ……や、や……や……は……ん、く……うぅっ……い……や……あ、ふ」
 朱浬さんは、苦悶するように首を左右に打ち振り上体をあちこちへくねらせながら、途切れ途切れの嬌声を漏らす。何というか、大げさに喘がれるよりも、よっぽどこっちの腰の奥底に響いてくる気がした。
 そのまま何かに突き動かされるように、僕はいっそう、弾力に富んだふくらみを揉みしだき、乳首を吸い立てながら甘噛みしてみた。その瞬間、朱浬さんの背中が僕を持ち上げるようにしてそっくり返り、
「……っ、は……あ、だ……だめ、そ、ん……な、や、いや、だめ、だめ……え……えぇぇっ……っ」
 か細い悲鳴が次第に消え入り、そのままの姿勢でしばらく凝固していたかと思うと、不意に脱力してベッドの上へと崩れ落ちた。これって、もしかして。
『あらー。もう?』
 操緒が、胸を大きく上下させるので精一杯な風情の朱浬さんに寄り添うようにして横たわり、囁いた。
『まだまだ序の口なのになー。さっきは、ずいぶんよくしてくれたもんね……お返しだよ。いっぱい、喜んでね』

309:絶対封印プラグイン 第12回-A
08/02/15 15:33:43 iXM7OtZl
 
 そう言う操緒の声に込められた情念はちょっと怖かったが、僕は敢えて逆らわないことにした。僕一人なら、ぎこちない愛撫の果てに途方に暮れてしまったのかもしれないのだし、こんな成り行きでも朱浬さんを大事に扱ってあげられるなら、なんだって構わない。
 僕は、愛撫の対象を乳房から脇腹へ移した。肋骨さえ透けて見えそうなくらいに贅肉のひとかけらもない肌を舐め、撫で、くすぐり、吸う間も、朱浬さんは声を立てず、ただ絶えず背をのけ反らせ、体をよじって快感に耐えていた。
 しかしそれにしても不思議なのは、本来ならこの人が本気になれば、僕を吹っ飛ばすくらいは簡単な筈なのだ。それがさっきから、せいぜいが腕で力無く僕を遠ざけようとするくらいで、それも僕の動きの前にあっさり抵抗力を失うばかりなのは、どういう訳なのか。
 訝しく思いつつも、僕はさらにその下へ移動し、へそのあたりをしきりにくすぐって朱浬さんの身体を震わせたあと、ショーツのすぐ上の腰骨の上に唇を当てた。
「あ……は、あっ」
 そこで、朱浬さんが声をほとばしらせた。なるほど、ここか。口を少し開いて広めに吸い立ててあげながら、舌で撫で上げる。
「ふ、や、あっ、あ、あ、だ、だめ、や」
 朱浬さんの腰がうねるが、僕はがっちりと掴まえて離さなかった。反対側の腰骨のあたりも同じように愛撫してあげてから、ようやく一息入れる。
「は、はあっ……は……ふ……」
 朱浬さんも胸を大きく上下させ、荒い呼吸を繰り返す。操緒がその顔を覗き込んで、にんまりと笑った。
『んーん、いい感じ……次は、このきれいな脚かな。腕であんなに喜んでくれたんだから、こっちも、いっぱい可愛がったげるね』
「あ、やあ……」
 朱浬さんが少し頭をもたげ、哀願するような視線をこちらに寄越したが、操緒も僕も斟酌などせずに、長くて美しい太腿へと舌を滑らせた。
「んくう……う、は、あ……は、や、やっ……や、あ、あ……ふ、あ……」
 身をくねらせる朱浬さんの動きに合わせながら、とても機械とは思えないほど柔らかくて暖くて感じやすい脚を伝い、膝のお皿をひとしきりくすぐり、足の甲にそっと口づけたときだった。
「は……あ、あうっ、あ」
 朱浬さんが、高らかな悲鳴とともに、腰を浮かせた。
『ふーん……こんなとこも、なんだ』
 僕の横で、操緒の熱に浮かされたような声がする。僕は足の甲からさらに、足の指の股へ舌を差し入れた。そこでの朱浬さんの反応は、さらに鮮烈だった。
「あ、や、やあっ、あ、は、だめそこっ、だめえっ……な、なんで、は、あ、そ……ん……なあっ、とこ、でえっ……ふ、や、だめ……だ……め……い、や……」
 自分で責めておきながら言うのも何だが、意外なところが弱いんだなあと感心しながら、続けて指を一本ずつ吸い立て、その間を舌でくすぐる。朱浬さんはそのうちに声さえ出なくなったようで、ただベッドの上で左右に美しい肢体をのたうち回らせていた。
 ようやく僕(と、たぶん操緒)が朱浬さんを解放したとき、朱浬さんはただぐったりと横たわり、荒い呼吸を繰り返すだけだった。もしかすると、軽く達していたのかもしれない。
「……ふ……ふ、は……は……あ……」
『朱浬さん、どう……? こっからが、ヤマよ?』
「あ……」
 操緒のねっとりした声にも、訝しげな瞳でこっちを見るのが、やっとらしい。それもすぐに、僕が、モデル並にすらりと長くて美しい脚を伝って戻っていきながら、膝の内側の柔らかい部分や内股の張りつめた肌に舌を這わせると、朦朧と閉じられてしまった。

310:絶対封印プラグイン 第12回-B
08/02/15 15:35:04 iXM7OtZl
 
 僕は朱浬さんの腰のあたりまで来たところでいったん体を起こし、その脚の間に体を差し入れると、その充実した腰の両側に手をつき、あらためて朱浬さんを見下ろした。滑らかで紅潮した裸身が、前戯による快楽の余韻に浸って息づき、かすかにうねっている。
 高校生ばなれした、どころか日本人ばなれしたスタイルの麗しい肢体が、僕と操緒による愛撫と、内側から突き上げてくるものとの板挟みになって震え悶えるその姿は、凶悪なまでに蠱惑的だった。
 我ながら、ここまでよく冷静さを失わずにきたと思う。我を失って朱浬さんを傷付けることだけを、僕は怖れていた。ここから先も、何とか持ちこたえられるといいのだが。
「朱浬さん……?」
 僕の問いかけに、朱浬さんはうっすらと目を開け、僕の姿を捉えた。僕は、能う限り安心させるような笑みを浮かべてみせて、
「いきますよ……?」
「あ……や、ん……」
 承諾なのか拒絶なのか判然としない弱々しい声が聞こえたが、僕はそのまま朱浬さんのすらりと伸びた脚を持ち上げ、押し開いた。ショーツに覆われた恥部が、僕の眼前に広がる。その真ん中には大きくしみが広がっていた。女の人が濡れるというのは、こういうことか。
「やっ……そんな……見ない……で」
 少し意識がはっきりしてきたらしい朱浬さんが頭を少しもたげて抗議するが、
「朱浬さんだって……人のをさんざん……でしょ」
 僕が言い返すと、真っ赤になって顔をそらした。
「だって……あれは……」
 紫浬さんがしたことだ、とでも? そんな言い訳が通用するとでも思ってるのか。僕は容赦なく、ショーツの上から、その中心を指で縦になぞった。
「ふ、あんっ」
 朱浬さんがのけぞる。濡れたショーツが、その下にある割れ目にぴったりと張り付いて、頭がくらくらするような眺めだった。その中に、一箇所だけ少し膨らんだところが目に付いたので、指の頭で撫でてみる。途端に、朱浬さんの腰が跳ね上がった。
「や、あ、やあっ……や、そこは」
『んー? なに、かな?』
 からかうような操緒の声に、朱浬さんが唇を食いしばる気配がする。僕は気にせず、さらにその突起を指でなぶり続けた。
「あ、や……や、は、い、い、いや、や、は……あ、や、は、んんっ……く、う、や、や、やあ、あ、んん、ん、や、は、や……あっ、あ、あ、あ……や、いや、いや、も、や、は、や、あ……ん、く、あ、ふ、あ、や……あぁっ……」
 朱浬さんは僕の頭を手で押しやろうとしたが、僕が頭を振って避けると、しまいにはシーツを掴んできつく絞り立てるようにねじった。僕が適当なところで一旦手を止めると、ずっとブリッジ状態だった背中が、どすんとベッドの上に落ちる。
「はっ……ふっ、は……は……や……トモハル……は……あ……そんなに、したら……あ……あたし」
 荒い息の下から、切れ切れに恨み言が聞こえてくるが、その声音は、どう控えめに見ても色っぽすぎた。
『んふふ。まだまだだよ。ね、朱浬さん?』
 操緒の声を合図にして、僕はショーツに手をかけた。
「あ……」
 朱浬さんは抗うような声を上げたが、僕が内股から膝のお皿にかけて舌を這わると嬌声を上げて腰を左右によじり、そのおかげで、何とかショーツを腰から長い肢に沿って抜き取れた。朱浬さんが軽く閉じようとした両脚を、あらためて左右に押し開く。
「やあっ……」
 朱浬さんが顔を横へそらす。僕はため息をつくようにして、言った。
「……きれいですよ。朱浬さん」

311:絶対封印プラグイン 第13回-A
08/02/15 15:36:33 iXM7OtZl
 
 それは掛け値なしの本音だった。
 柔らかい陰毛が茂る頂の下に、きらきらと光る粘液にまみれて、小刻みにひくつく襞とピンク色の粘膜が息づいていた。ただ、女の人のあそこを、あまりまじまじと見つめているのも男としてどうかという気がして、視線を上へ戻したところで、朱浬さんと視線が合う。
 朱浬さんの眼差しは怖いくらいに真剣で、僕を釘付けにした。
「……ほんとに?」
「はい」
「……気持ち、悪くない? 怖く、ない? あたしなんか……こんな半分機械の」
「朱浬さん……」
 僕は体を前に進め、朱浬さんの顔を正面から覗き込んだ。
「とっても、綺麗です。いつだって、そう思ってました」
 言動がアレだから、いくら外見が魅力的でも普段は到底そんな気を起こしたりしないが、それでも朱浬さんの美しさには、ことある毎に感嘆するのだ。嘘は言ってない。そのつもりだ。僕が目に力を籠めると、朱浬さんはけむるように微笑った。
「そ……ありがと。ありがとね。トモハル」
 そう呟くように言うと、僕の下でわずかに体を揺すった。
「ん……あたし……も……なんか……」
『ふふっ。朱浬さんも、ようやく盛り上がってきたねっ。これからが本番だからね』
 操緒の口振りすら、何となく優しげだった。僕は再び、朱浬さんの首筋から鎖骨、乳房、お腹を唇でたどり、朱浬さんの最も大事なところへ舞い戻る。
『さ、智春っ』
 操緒が促すのに乗って、割れ目の上の方に顔を出している小さな膨らみに、そっと口づけた。少し、ぴりりとする。
「ふ……はあ、あんっ」
 朱浬さんの肢体が跳ねた。両手で割れ目を押し広げると、突起が根元から露わになり、下の口に少し溜まっていた粘液がとろりとこぼれ落ちる。なるほど、豆だの真珠だのという形容は言い得て妙だなと思いながら、クリトリスを唇全体で包み込んだ。
「あ、や、だめっ、だめだめだめだめだめええっ」
 まだ目立った刺激も与えていないというのに、朱浬さんはあられもない声を上げながら、腰から上を左右に打ち振る。それと共に、僕の中でも抗いがたい何かが膨れあがる。くそっ……落ち着け。いつまでも、あんなプラグインに好きに振り回されてなるものか。
 僕は慎重に、唇に含んだものに舌を添えた。かすめるようにして、撫でてみる。その瞬間、
「はっ……や、だ、い……い、い……」
 朱浬さんが甲高い一声とともに全身を強ばらせた。少ししてから、腰ががくがくと揺れる。そこから目に見えない回路を伝って、朱浬さんから僕に、何かが渦巻き流れ込んでくる。これが……また、共鳴しているのか。
『うふふ……いいでしょ? まだまだ……あたしと同じになってね』
 操緒が言うと同時に、僕の舌が踊る。どこまでが僕の動きで、どこからが操緒によるものなのか、もはやよく分からない。操緒と僕もすでに、分かちがたく融け合ってしまっているのかもしれなかった。
「や……あ、ふ、くう、は……そ、そんな、や……は、や、あう…ま、待って……」
『んー? あたしもそう言ったよねー? ふふふ』

312:絶対封印プラグイン 第13回-B
08/02/15 15:37:53 iXM7OtZl
 
 操緒は容赦がない。レゾネータのせいで多少たががはずれてしまっているにしても、女は怖い。僕は、気を抜くと霞の彼方に消えてしまいそうな理性をつなぎ止めるのに一生懸命になりながら、朱浬さんに悦楽を与え続けた。
「う、は、あ……や、や、は、や、あ、あ、ま、また、また、い、あ、い……は……」
 僕の舌の動きに翻弄され続けた挙げ句に、再び朱浬さんの全身が硬直し、次いで痙攣する。ちょっと、やりすぎじゃないか、操緒?
『まだまだ……今度はね』
 僕は、朱浬さんの中から湧き出たものを自分の指にまぶすと、そのままゆっくり、中指を朱浬さんの中へ沈めていった。
「は……ん、ああっ」
 ぐったりとなっていた朱浬さんが息を吹き返す。僕が、ちょうどクリトリスの裏側あたりの中を指の腹で撫でながら、クリトリスを舌でなぶり始めると、
「だ、だめっ! それ、だめだめだめ、だ……めええっ」
 それまでにないくらい激しく腰がのたうち、せっぱ詰まった声を放った。あまりに動くものだから、うまく狙いをしぼりきれなくなったが、偶然、僕の舌がぬるりとクリトリスの上で滑った拍子に、なんだか、くるりと何かが剥けた。
「は……い……いやあっ」
 朱浬さんの動きが一瞬止まる。腰が高く持ち上がり、おかげで僕はその下に腕を入れて固定し、完全に露出したクリトリスと中への刺激を続けることができた。指も一本から二本に増やしたところ、朱浬さんの中が収縮しうごめく感触が如実に伝わってくる。
「っ……っ……は……っ……んっ……や……や、め……も……も、もう……っ……ま……っ…またっ……や……お……お、あ……っはっ……は、ふ、い、い……や……も……ゆ……ゆる……や……やあ……お、あ、は、ふ……あ……っ……っ……っ……、……」
 逃れようもない朱浬さんを、何度絶頂へ押し上げたのだろう。呼吸音すら聞こえなくなってから結構な時間があって、さすがに気になった僕が口と手を離すと、朱浬さんの腰が音を立ててベッドの上へなだれ落ちた。
「は……はっ、はっ、ふ、は、はあっ……ふ……は、はあ……」
 激しく上下する朱浬さんの胸は真っ赤に染まり、その頂で屹立する乳首がとんでもなく淫らに映る。
『ふふ……どうだった、朱浬さん? 満足した?』
 自らも何かスイッチが入ったのか、操緒が頬を上気させ、何かに濡れた声で訊ねても、朱浬さんは一言も答えない。ただ、荒い呼吸を繰り返すだけだった。
「操緒……やりすぎじゃないか」
『んー』
 操緒は僕にぞくりとするような流し目をくれて、微笑む。どうでもいいけど、なんか性格変わってないか、お前。
『大丈夫だよ、これくらい……智春は、優しいなあ』
「いや、でも……」
『ふーん。じゃ、次行こうか』
「……ああ」
 そうだな。僕も、そろそろ我慢の限界だ。頷いた僕を見た操緒はふと神妙な顔つきになって、
『嬉しい? 朱浬さんとこうなって』
「……それどころじゃないよ。もう、一杯一杯だ」
 正直に言ってみたら、
『ふーん。どうだか』
 ジト目で返された。いや、ほんとなんだって。

313:名無しさん@ピンキー
08/02/15 15:39:06 iXM7OtZl
今回はここまで。次回は朱浬さん本番篇+後始末篇。

314:名無しさん@ピンキー
08/02/16 03:25:19 OZOaULLS
GJ!
紫浬さんエロいよ紫浬さん

315:名無しさん@ピンキー
08/02/16 05:20:13 Oql7STgq
GJ!
朱浬さんエロいよ朱浬さん


316:名無しさん@ピンキー
08/02/18 21:17:17 G5/1NRnO
エロエロだー

317:名無しさん@ピンキー
08/02/21 04:08:45 p0vMHj0I
一番マロいのって誰だろうな?と思いながら星ゅ

318:名無しさん@ピンキー
08/02/21 23:48:24 tySGQiaz
>>317
そりゃもちろん、主人公をして「胸より尻が好き」と言わしめた酒屋の娘じゃまいか。

智春&操緒×紫浬&朱浬の最終分。朱浬さん本番篇+後始末篇。

319:絶対封印プラグイン 第14回-A
08/02/21 23:49:49 tySGQiaz
 
 実際、体が重い。朱浬さんへの愛撫を始めた時と比べて、明らかに身体を動かしづらかった。
 その原因も、そろそろ心当たりがあった。朱浬さんが達するたびに、僕の中へ流れ込んでくるものが、そこで凝り溜まって、僕の動きを鈍くしている。膨大な活力が体の中で行き所もなく、轟々と渦巻いている感じだった。
 なるほど……そういうからくりか。レゾネータの影響下で、快感の頂点を極めた方が放出し、相手がそれを吸収する形で、魔力の循環と増幅が行われているのだ。吸収ばかりが続くと、蓄積された魔力を扱いかねて、再放出するまで体が機能しなくなるのだろう。
 最初にキスで達したのは紫浬さんだった。それに、僕たちが来る前からかなり盛り上がっていたようだから、そこから結構な魔力が僕に流れ込んで、僕の自由を奪ったのだろう。むろん、最初に疑ったように、操緒と僕の共感作用も一役買ったに違いない。
 そこからは、僕が達し続けることで紫浬さんに増幅された魔力が流れ込み、ついには僕と操緒のなすがままになるしかなくなったのだと思う。そして今、朱浬さんの中で増幅され還流してきた魔力が、再び僕の中でわだかまり、放出されるのを待ちわびていた。
 いや……くだくだと理屈など考えている場合ではない。このまま時間が経てば、僕自身が自分を制御できなくなる。そうなれば、朱浬さんや操緒にどんな結果をもたらすか、知れたものではない。つくづく、ろくでもないプラグインだ。くそっ。
 それでも、どうしたらこの状況から脱出できるか皆目見当もつかないまま、僕たちはひたすら突き進むしかないのだった。
「朱浬、さん……」
 まだ息が荒い朱浬さんの顔を覗き込む。朱浬さんも、まだ返事ができる様子ではなかったが、ぼんやりとした瞳で僕の顔を捉えはしたようだった。
「……いいですか……?」
 問うたのは、もちろん、偽善だ。朱浬さんがどう答えようが、僕は行き着くところまで行き着くつもりだった。だが……それでも、訊くのが最低限の礼儀だと、思ったのだ。
 朱浬さんは、しばらく何を訊かれたのか、よく分かっていなかったのだと思う。それでも、僕がじりじりとした思いで見つめるうちに、かすかに頷いてくれた、ような気がした。
「じゃあ……いきます」
 それでも、この状態からいきなり挿入というのも乱暴な気がして、僕は右手を朱浬さんの秘所にあてがうと指でクリトリスと入り口をなぶり、左手と口で丸く固く盛り上がった乳房を愛撫した。
「ふ……んんっ……」
 朱浬さんが軽く反応する。胸の上にある僕の頭にそっと朱浬さんの両手が添えられ、仰向かされた。潤みきった瞳が、僕を見つめる。
「ト……トモハル……焦らさ、ない、で……ん、く、はっ」
「朱浬……さん」
「あたし……大丈夫だから……はあっ……だ、だから」
「……はい」
 確かに、そこは十分に濡れそぼっていて、わずかに開いてさえいた。僕は自分のものを右手で誘導しながら入り口にあてると、そこからゆっくりと中へ押し込んでいった。朱浬さんの中が、とてつもない熱さと柔らかさで、僕を包み込む。
『は……ん……はあっ……あ、あたし……?』
 操緒が陶然とした声を出し、少しびっくりした顔で僕を見る。ああ。僕が気持ちいいからには、お前も感じるはずだろ。
「ん……く……っ」
 あるところまで進むと、朱浬さんが、きれいな顎をのけ反らせた。痛いのかと思って、それ以上の前進を止める。しばらく、お互いの荒い呼吸だけが混じり合う中、僕たちは凍り付いたように動かなかった。

320:絶対封印プラグイン 第14回-B
08/02/21 23:50:55 tySGQiaz
 
「だ……大丈夫ですか?」
 朱浬さんは眉を寄せながら、それでも微笑む。
「……お願い」
 それで、僕は一気に奥へ進んだ。どうせなら、一瞬で済む方がいいと思って。
「んあっ」
 朱浬さんが顔をしかめる。同時に襲ってきた締め付けに促された軽い射精感を、ようやく堪えた僕は、軽く呻いた。操緒の『はん……っ!』という切ない喘ぎが腰に響いたが、何とか持ちこたえる。
「あ……」
 朱浬さんのため息が聞こえたので、僕もゆっくりと息を吐きながら、訊ねる。
「朱浬さん……?」
 朱浬さんは、驚いたことに、ふふ、と笑った。
「なんか、妙な感じ……痛い、かと、思ったんだけど……ふわふわしてて……悪く、ない、わ……あれのおかげって、ことかしら……」
「そ……うですか」
 朱浬さんが喋るたび、微妙な振動が伝わってきて、それだけで僕を限界へと揺さぶってくる。僕が我慢しているのを朱浬さんはどう取ったのか、
「トモハルは……大丈夫……?」
 なんだか、朱浬さんらしくない気遣いだった。いや、これも朱浬さんなのか。
「大丈夫……じゃ、ないです。気持ちよすぎ……です……朱浬さんの、中」
 僕が呻くように言うと、朱浬さんは、目を丸くした。それから、軽く吹き出す。いや、今の笑うとこですか? 僕はいたって真剣なんですが。
「トモハル……もう……バカね」
『ね……』
 そんな僕たちに、熱に浮かされたような操緒の声がかけられる。恨めしそうな響きがあった。
『いい加減……動くか止めるか……あたし、これじゃ……』
 朱浬さんは目だけで笑い、言ってくれた。
「動いて……いいよ。トモハル」
「はい……」
 許可をくれて、助かった。でなければ、勝手に腰が動き出していたところだ。
「いきます……ね」
 一応予告はすると、一突き、入れてみた。
「あ……はっ」
『はうっ……は、あ』
 微妙に異なる二つの喘ぎ声が、僕の耳朶を同時に打つ。まるで二人の女の子と同時にイタしているような感じで、これは、結構やばいシチュエーションだと思う。癖になったらどうしようか、などと、しょうもない考えが一瞬だけ浮かんで消えた。

321:絶対封印プラグイン 第15回-A
08/02/21 23:52:03 tySGQiaz
 
 それでも、最初は焦るまいと努めたのだった。初めての朱浬さんが痛くないはずはないと思ったし、それに正直言えば、あまり早くに射精してしまって早漏と言われたくないという見栄も、確かにあった。だが、
「ト……トモハル」
 何回も往復を繰り返さないうちに、朱浬さんが切なげな声で訴えかけてくる。
「あたし……このままじゃ……ダメ……もっと……」
 そうか。僕と同じなのか。体の中で、もはや制御しきれない何かが狂い回り、これを鎮めるためには、我を忘れるしかないらしい。くそっ。もう……どうとでもなれ。
「は……はい」
 僕の返事も、息絶え絶えだった。上体を起こし、朱浬さんの腰をがっちりと掴むと、後は全てを擲って、腰の動きに没頭した。
「あ、は、や……ト、トモ……はげし……や、や、あ……んん……んっ……く、はっ、は、あ、や……やあっ、あ、あん……あ、ひ、は……んんっ……ん、は、……っ」
『は……ト……トモぉっ……あ、い、いい、や、い、や、あ、は、だ、だめ、だめだめだめ、あ、あた、あたし、も、もう、い、や、や、い、いい、や、い、あ、はうっ』
 朱浬さんはそれでも拳を口に当てて抑え気味に、操緒は堪えきれない風に絶え間なく甲高く、それぞれが響かせる嬌声が僕の理性を犯していく。肉体だけでなく、魔力も精神も全てがないまぜになって、僕はあっという間に達しそうになり……大事なことに気付いた。
 このまま中に出したら……それは、さすがにまずい。くそっ、でもゴムを付けるような余裕なんて、この状況じゃなかったんだ。だからといって、もう今更止められない。僕は我ながら超絶的な精神力を発揮し、朱浬さんの中から自分を引き抜こうとした。
 できなかった。朱浬さんの長い脚が、僕の腰の後ろに回って抱え込んでいた。
「しゅっ……しゅり……」
 それ以上言う余裕はとてもなかったが、朱浬さんは僕の言いたいことを分かっていたと思う。数秒間くらいだけ、僕の目をしっかりと捉えて、
「んっ……は……あ、あた……だ、だい、じょう……ぶ、だ……か、らぁ……っ」
 そう言い放つなり、再び首をのけ反らせてしまい、僕に反問する暇を与えてくれなかった。
 いや、その機会があったとしても、僕に何を訊けたろう。その瞬間に朱浬さんの瞳に浮かんだ昏いものを見てしまった以上、朱浬さんが自ら話してくれる以上のことを僕が尋ねたりできる筈がない。僕にできることはといえば、朱浬さんの望むとおりにするだけだ。
「う……くううっ」
『や……だめ、トモ、だめ……えぇっ……』
 ついに、その時が来た。朱浬さんの腰を押さえ込み、一番深いところまで僕を押し込むと、そこで全てを解き放つ。操緒が同様に絶頂を迎えて、空中にぐったりと横たわるのが横目に見えた。次いで、僕も朱浬さんの上に倒れかかり、慌てて両手をベッドにつく。
「あ……」
 朱浬さんは、目を閉じて脈打つ僕の全てを迎え入れていた。僕の中で荒れ狂っていたものが、朱浬さんに向かってどくどくと流れ出していく。
「熱い……トモハルの……あ……あ、あ、あ……な、なに……これ、なに……?」
 ああ。それは、僕から朱浬さんに流れ込む魔力だ。朱浬さんは僕の下で思い切りのけ反り、もはや抑えることのできない悲鳴をあられもなく放った。

322:絶対封印プラグイン 第15回-B
08/02/21 23:53:13 tySGQiaz
 
「あ、きゃ、は、お、や、やだ、な、なに、は、や、いや、これ、は、あ、だ、だめ、な、なんか、くる、き、きちゃ、う、や、いや、や……や……あ……は、あ、く……う……っ」
 歯を食いしばり、喉に筋を浮かせながら、胸を真っ赤に染め上げて、達する。その結果、一度精を放って衰えかけた僕を、その中に残ったものまでも絞りだそうとするかのように、朱浬さんが柔らかくしかし強力に締め付けてきた。
「く……」
 僕が全身を固くしたのは、それに耐えようとしただけでない。朱浬さんからの魔力のバックドラフトが来ると思ったからで、それはすぐに予想どおりにやって来た。
「あ……ぐ」
『ふあっ!?』
 操緒が跳ね起きる。こちらも白い裸身を真っ赤に染めて波打たせながら、
『は、はお、こ、な、なに、ト、トモ、あたし、トモ、だめ、だ、め、ト……トモぉっ』
 僕に応じる余力などない。朱浬さんから押し寄せてくる激流を、そのまま叩きつけ返してやりたいという衝動をねじ伏せるので手一杯だった。そんなことをしたら、無限ループだ。何が起こるか分からない。
 何とか乗り切れたのは、僥倖以外の何物でもなかった。これ以上は無理だ、と思った瞬間に、運良く圧力が少し減っただけだった。二度目は……たぶん、ない。それに、今は大人しくしているものが、再び僕を中から喰い破ろうとするのは、時間の問題だった。
 くそっ……僕にどうしろって、いうんだ。何か、手はないのか。絶望にかられ全力を使い果たして倒れ込んだ僕は、けれど柔らかく受け止められた。顔を上げると、朱浬さんの艶やかなまでに淫蕩な表情があって、ただ、その瞳には強い決意の光があった。
「は……あ、トモ……ハル……ダメ……ふ……ひとり……で、ん、がんばんない、で……よ」
「しゅ……」
 朱浬さんは汗びっしょりの美しい額に黒髪を張り付かせ、荒い息を繰り返しながらも、全て分かっている、とでも言いたげな微笑を口許に刻んだ。
「ね……あたしだって……いっしょに……ね……? ふたり、なら……きっと……それに、どうなったって、あたし……いい……から」
「で、でも……」
『三……人……でしょうがあ……あたし……も、いる……ん、ですから……ね』
 操緒もぐったりとなりながら、僕と朱浬さんの間に割り込んでくる。さすがに疲労の翳が濃い貌に、じつに操緒らしい不敵な笑みが浮かんでいた。それを見た朱浬さんも、笑みを大きくする。
「そう……ね。操緒ちゃんも……いるよね」
「僕は……」
 それでも躊躇う僕に、朱浬さんは片目をつむってみせた。
「トモハル……あたしを、誰だと、思ってんの……部長代理、命令だかんね……?」
『だいじょうぶ、だよ……あたしが、ついてる、よ……』
 僕は目を閉じた。ちくしょう。なんだって僕には、いつだって、誰かを傷付けるような選択肢しか残されていないんだ。そしてなんだって、僕が傷付ける人たちが、あたかもそれを自ら望んだことであるかのように、胸を張るんだ。ちくしょう。
 逡巡は、そんなに時間を要しなかった。決断を下すことに、慣れたのかもしれない。だが、この胸の疼きに慣れることは、絶対にないだろう。そんなこと、あってたまるか。
「……知らないからな」
 僕が呟くと、朱浬さんがおっとりとした笑顔で頷き、操緒が僕に頬を擦り寄せた。

323:絶対封印プラグイン 第16回-A
08/02/21 23:54:41 tySGQiaz
 
 とはいえ、それはそれなりにいい場面だったと思うのだが、そんな空気をぶちこわすかのように、
「あたし……後ろ向こうか……?」
 言うに事欠いて、朱浬さんがとんでもないことを言い出した。
「は……?」
 一瞬、自分たちが置かれている状況のことさえ忘れて、朱浬さんの顔をまじまじと見る。それはその、いわゆる、バックスタイルというもののご提案でしょうか。
 僕の視線の前で、朱浬さんはみるみる頬を染めたが、同時に、いかにも朱浬さんらしく悪戯っぽい輝きを瞳に宿らせてもいた。
「だって……あたしの顔が見えない方が、トモハルだって……遠慮なく……じゃない?」
「いや、それは……」
「トモハルだって……興味あるでしょ?」
 その質問は、主語が間違ってやしませんか? いやそりゃ、興味がないといえば嘘になりますが、しかしこの状況でそういう話はですね。
『いいんじゃない。この際、ヤれることはヤったら?』
 操緒が笑顔で言う。誓って言うが、あの笑顔は笑ってない。ここで状況に流されたら、絶対にあとで何かしっぺ返しがある。やっぱり、断ろう。正常位で何の問題もないじゃないか。そう決めた僕の目の前で、朱浬さんは、さっさとベッドの上で四つん這いになった。
「さ……トモハル。ぐずぐずしてたら……」
 絶対、楽しんでるだろアンタ。さっきまでのあの恥じらいは何処へ行ったんだ。こっちは、そんな余裕なんてこれっぽっちもないってのに。ああ。いいだろう。どうせ、僕も冷静を保つのはそろそろ限界だ。こうなったら、思い切りケダモノになってやろうじゃないか。
 僕が朱浬さんににじり寄り、そのお尻の肉をつかむと、朱浬さんは「あんっ……」と艶っぽい声を立てた。
「朱浬さん……その、も少し、腰を落として……」
「こう……?」
 朱浬さんくらいに脚が長くてスタイルがいいと、かなり脚を開いてもらわないと僕が挿入できない。それでも実際にその恰好をしてもらうと、目の前にあそこからお尻の穴までが剥き出しに開陳されて、いまさらだが鼻血が出そうになった。
「んっ……そんな、見ないでよ……」
 僕が固まっていると、朱浬さんは恥ずかしげに、そのくせ僕を誘うかのように腰を捩った。ああ、もう、ほんとにどうなっても知らないからな。操緒の何となく冷たい視線を頬に感じながら、僕は、ずっと勃起したままだった一物を、朱浬さんの中に突き入れた。
「んっ……く、は、あっ……」
『は、ひゃ、あ、ああんっ』
 再び、嬌声が二重サラウンドで響き渡る。最初の一差しだけで放出してしまいそうになった僕は、そこで暫く波が引くのを待った。朱浬さんの中は相変わらず熱くて柔らかくて、僕のそれはおろか全身を溶かしてしまいそうだった。
「ト……トモハル……?」
 朱浬さんが首を後ろへねじ曲げ、訝しげな視線を投げてよこす。そろそろ、動いてもいいか。僕は遠慮なく、最初からスパートをかけた。
「あ、は……や、トモ、ハルぅっ……や、……あ……は、ひ、ん……あん、あ……は」
『んんっ、く、は、あ、いい、いいよ、ト、トモ、い、いい、い、や、だめ、や、は』
 朱浬さんは最初こそ両手を突っ張っていたが、ほどなくあっけなく上半身が倒れ込み、尻を高く突き出した恰好でシーツをくしゃくしゃにしながらのたうつ。操緒もどういうわけか、そんな朱浬さんの横で同じような姿勢になって、スマートな肢体をくねらせていた。
 だめだ。こんな刺激的な痴態を見せられて、冷静でなんかいられない。さっきから僕の中で今にも零れ出そうになっていたものは、あっさりと、なけなしの自制心を決壊させた。

324:絶対封印プラグイン 第16回-B
08/02/21 23:55:59 tySGQiaz
 
「お……おおっ」
『あ、ひゃ、も、もう……だ、だめ、い……いい……っ……だ……め……っ』
「は……や、は、あ、あ……んん、ん、んっ……あ……き……きてっ……」
 朱浬さんの腰を押しつぶすようにして、その中にありったけのものを注ぎ込む。朱浬さんが次に来るのを待ち受けているらしく、その背筋が強張るのが感じられた。
「あ……は……はあ……は、あ、や、く、くる、くる、くる、きちゃう、ト、トモハ、ルぅっ」
 腰を勢いよく僕に向かって突き出した朱浬さんの声には、さすがにいつもの余裕がなく、僕は思わずその両手と僕の両手を合わせ、指を絡めて握りしめた。少しでも、朱浬さんの力になることを願って。朱浬さんも、僕の手を痛いくらいに握り返してくる。
「ん、は、や、くる、や、きちゃう、いや、いやいやいや、や、やあっ……や……っ……や、は、や……く……く……る……うぅぅっ……」
 朱浬さんの腰ががくがくと痙攣し、その中が僕を痛いほどに締め付ける。それから、ゆるやかに力を失って腰砕けになり、完全にベッドの上へ俯せに崩れ落ちた。僕もそれにひきずられるようにして朱浬さんの上にのしかかる。
 さあ、次は僕の番か。どこまで続くのか、どこまでこちらが保つのか分からないが、力の及ぶ限り、朱浬さんと操緒を見捨てることだけはするまい。
 それは、津波のようにひたひたと、しかし圧倒的な圧力をもって、僕を襲った。気が遠くさえなりそうなのを、ようやくのことで耐える。
『や……はあ、あ……や……だ、だめえ……っ』
 操緒もぎりぎりのところで踏みとどまっているようだが、長くは保つまい。僕はやけ半分で、あっという間に回復した僕のそれを、朱浬さんの中で再び律動させる。しっくりくるよう、朱浬さんの片脚を持ち上げ、僕の腰全体を差し入れるようにして奥へと進んだ。
「あ、は、ああんっ」
 つっぷしていた朱浬さんが激烈な反応を示した。海老ぞりになって、高らかに声を上げる。
「だ、だめっ、いや、だめっ、そ、そこ、そんな、とこ、突いたら、あ、ふ、深い、深い、お、奥、奥、だめ、奥、だめ、そんな、だめ、もう、だめ、くる、きちゃう、くる、あたしぃっ……あ……た……し……いぃっ……く……お、は……あ……は……っ……」
『あ、はう、や、だめ、だめ、トモ、だめ、トモ、やだ、あたし、もう、やだ、やだ、やだやだやだ、トモ、い、いや、はっ、いや、いやいやいやいやあっ……もう……だめ……だめ、だめっ、は、だめ、だめ、は、やああっ……や……い……い……ぅっ』
 今度は、僕が放つ前に、朱浬さんが先に絶頂を迎えた。なぜか操緒も、それに同調したような気がする。これは想定してなかった。ただでさえ一杯一杯だったところに、二人からさらに何かが押し寄せ、なす術もない僕のどこかで寄せ返し、二人を再び弄び、そして僕へ。
「あ……はっ、ま、またっ……ま……た……あぁっ……ふ、あ、や、や……も……う……あた……しいぃぃっ……い……ふ、や、ト、トモ……トモ、ハルうぅっ……う、く、は……あ……だ、だめ……もう……や、だめ、また、き……きちゃ、……あ……っ……っ……あ」
『い……い、や、ト……トモ、トモ、トモおぉっ……っ……い……あ、は、や、やあ……ま……また……なのおおっ……お、は、あ……あっ……や、は、や……や……あ、また、また、トモ、トモトモト……モお……お……っ……あ……は……だめ……も、だめ……あ、は』
 息も絶え絶えになりながら、頂点をきわめ、そこから少し下りては、さらにより高みへと押し上げられる。それが、何度繰り返されたろう。もはやどうしようもなく流れに全てを委ねていた僕のどこかで、唐突に、ぷつり、と全てが切れた。
「あ……?」
 訳も分からず、だが、それまで体内に満ち満ちて荒れ狂っていたものがあっさりと消え失せ、完全に虚脱した僕は、朱浬さんと操緒の上に倒れ込んだ。二人とも、ぴくりとも動かない。もしかすると、すでに意識を失っていたのかもしれない。
「な……」
 僕も、指一本動かせない。急激な睡魔に襲われて意識を失う寸前、だが僕は、見た。
 ベッドの横で、オレンジ色の光の粒が舞っていた。それは徐々に収束し、やがて音叉の形に凝固すると、ことん、と床の上に落ちた。
「な……なんなんだよ……それ……」
 呟いて、そこまでが限界だった。僕の意識は、否応なく深淵の中へと引きずり込まれていった。

325:絶対封印プラグイン 第17回-A
08/02/21 23:57:18 tySGQiaz
 
 夢、だったと思う。
 ひどく安らぐ夢だった。何かこの上なく暖かくて柔らかいものに包まれて、髪を優しく撫でる繊細な指と、ときおり額や瞼や頬に触れる湿った吐息とに導かれるようにして、僕はまどろんでいた。もしかすると、小さい頃の母親の記憶だったのかもしれない。
 今の僕には、そうして寄り添ってくれる眠ってくれるひとなど、いない。いないはずだ。だから、それは夢だった。そう思う。

 目が醒めると、独りだった。朱浬さんがいないのは直ぐに得心がいったが、操緒も見当たらない。まあ確かに、側にいてもらっても、どんな顔をして相手すればいいのか分からないから、ある意味で気は楽だったが。
 朱浬さんが去る時にでも僕にかけていってくれたと思われる毛布をはぐと、ベッドの上には荒淫の跡が明らかだった。僕たちの体液でぐちゃぐちゃになり、乱暴な扱いに耐えかねてそこかしこに裂け目さえ出来ている。その中に赤黒い染みを認めて、僕は頭を垂れた。
 ……やっぱり、責任は何かの形で取らないといけないんだろうな。当分は朱浬さんの我が儘に素直に従うとして、命まで落とすような羽目にならないといいんだが。
 時計を見るとすでに昼過ぎで、これは完全にサボリになりそうだった。どのみち、腰のあたりが妙に軽く、全身が虚脱感に覆われ筋肉痛に襲われているとあっては、学校まで辿り着けそうもない。階下に下りられるかどうかすら、微妙に思えた。
「……くそっ」
 頭を振って、昨夜のことを思い出す。何があったのか、細部はいくらかぼけていたが、ほぼ思い出すことができた。だが妙なことに、それが自分の身にあったことだという実感だけがきれいさっぱりなかった。どこか遠い他人事を見ているようだった。
 朱浬さんと操緒に対して抱いていたはずの、あれだけ狂おしく抗い難かった情欲も切なさも、今は、全く実体を伴わない形骸だけの記憶にすぎない。もしかして、クルスティナを喪った加賀篝の胸中も、こんな感じだったんだろうか。
 ……まあ、今回はそれでいいんだろう。あんなのをこれからも引きずっていたら、いろいろなところに顔向けできなくなるような真似をしでかしてしまいそうだ。大体、あれは全てあのとんでもないプラグインのせいで、僕にはそんなつもりはなかったんだ。
「……と」
 そこで、思い出した。おそるおそる、床の上を見る。二度と見たくないものが、そこに転がっていた。銀色の、音叉型をした、プラグイン。レゾネータ。くそっ、やっぱり夢じゃなかったのか。最後に見たあれは。
「なんなんだよ……」
 僕は呻いて、ベッドの上に倒れ込んだ。

 といって、そのままもう一度意識を失うという贅沢は、僕には許されていなかった。
 放課後には徹夜明けのアニアが帰ってくるだろうし、それ以外にも勝手に遠慮なく押し掛けてくる連中が多いから、それまでには一切の証拠を湮滅しておく必要がある。朱浬さんも、僕より先に目を覚ましたんだったら、少しは片づけていってくれればいいのに。
 ほとんど這いずり回るようにして、部屋の中から汚れた衣服やシーツをかき集め、階下まで這い下りて洗濯機の中にぶち込み、ついでにシャワーをいつもの三倍は時間をかけて浴び、再び二階に這い上がって部屋の中を片づけ、もうそれだけで、三回位は死ねた。
 まさか、昨晩の報いってこたないよな? 僕は被害者だぞ。
 例のプラグインは、仕方がないから、分厚い工作用手袋をはめてつまみあげ、布で厚く巻いて紐で縛り、手近な箱に入れてガムテープで念入りにぐるぐる巻きにしてから、鍵のかかる引き出しに放り込んだ。
 本来ならコンクリ詰めにして深海の底にでも沈めてやりたいところだが、今はそういう訳にもいかない。そのうちに、八伎さんにでも事情を伏せて頼み込んでみようか。
 そこまで何とかかんとかやりおおせて、真っさらなシーツを敷き直したベッドに倒れ伏した瞬間だった。玄関のインターホンが、例の間延びした音を鳴らした。

326:絶対封印プラグイン 第17回-B
08/02/21 23:58:37 tySGQiaz
 
「く……なんだ?」
 せっかくこれで一休みできるかと思ったところだったのに。窓の方へ首を伸ばすと、
「智春ー?」
 聞き慣れた声がした。樋口か。だったら居留守を使うか、と思わなくもなかったが、
「夏目っ。いるんでしょっ。連絡もなしに休むって、どういうことよっ」
 佐伯妹の声までがして、僕は顔をしかめた。ここでやり過ごしても、あとで面倒なことになりそうだ。仕方ない。のろのろと体を起こし、腰の曲がった年寄りみたいな恰好で壁に手をつきながら、そろそろと階下へ向かった。
 その間も、頻繁にインターホンが鳴らされる。いやだから、ちょっと待ってくれ。そんなに早く動けないんだって。ようやく階段を降りきったところで、玄関の扉の向こうから樋口と佐伯妹の会話が流れてきた。
「やっぱ、いないんじゃねーの?」
「でも、だって……水無神さんも学校に来てないのよ。奏も杏も何も知らないって言うし。携帯にも出ないし、メールにも返事来ないし」
 あー……携帯、マナーモードにしたきりで、着信確認なんてしてなかったな。
「これって、もしかして何かあったんじゃないの……?」
 珍しいことに、佐伯妹の声はどことなく不安げだった。それにひきかえ、
「いや、智春のこったから、なんかまたしょうもないトラブルじゃねーの? そろそろ、本気でオカルト絡みの事件とか起きねーかなあ」
 樋口の声はどことなく浮き浮きしていた。そりゃ、佐伯妹と二人きりでここまで来たのだ。さぞ嬉しかろう。かてて加えて、
「バ……バカっ。ロクでもないこと言うんじゃないのっ」
 すかさず佐伯妹に罵られていたからには、幸せ倍増だろう。良かったな、樋口。
「それが心配なんじゃないのっ。夏目えっ?」
「は……はい、いますってば」
 言ってはみたが、声が弱々しいのと、まだ距離があるので、表に届きはしない。君たち、もうちょっと待ってくれ。もうすぐだから。
「何だったら、入ってみるか?」
 樋口が脳天気に言い、
「え……いいの?」
 佐伯妹が戸惑った声を出した。ところがすぐに続いて、
「そ……そうね。仕方ないかも。な、夏目のこと、確認しないとね」
 僕は天を仰いだ。佐伯妹は、僕の知り合いの中では数少ない常識人だと思っていたのだが。人の家に、勝手に押し入らないでほしい。
「お……おい、だから、いるんだって」
 ようやく玄関に到達し、そこに敷かれたマットの上によろよろと一歩を踏み出した僕の足は、だがそのまま床を踏み抜いてしまい、ふわっ、と下へ沈んだ。
「う……わあああっ!?」
 さすがに大きな悲鳴を上げる。無我夢中で広げた腕が何とかひっかかってくれて、僕は肩の上からだけを床の上に出した状態で宙づりになった。
「な……夏目っ?」
 僕の悲鳴を聞きつけたのか、玄関のドアが開いて、佐伯妹と樋口が飛び込んでくる。そういえば、昨晩、中に入った時に音を立てるのがいやで、鍵をかけずにおいたのだった。二人とも、僕の姿が目に入ったのか、玄関で凍り付いたように立ち尽くす。
「な……夏目……? 何やってんの……?」
 そう言う佐伯妹のスカートが少し風に揺れて、僕の位置からだと、細い脚の奥にあるものがともすると拝めそうな感じですらあって、その僕の視線の行方に気付いた佐伯妹は、顔を真っ赤にして柳眉をきりきりと逆立てて。いや、これはその、わざとじゃないんだ。
「な……つめえええっ! この、スケベっ、バカっ、変態っ!」
 投げつけられた学生鞄が額にクリーンヒットした僕は、それ以上自分を支えていられずに、ずるりと地下室へ落下した。

327:絶対封印プラグイン 第18回-A
08/02/21 23:59:53 tySGQiaz
 
 いや、ひどい目にあった。幸い、樋口が物置部屋にある地下室-冥王邸への入り口を知っていたから、そこから降りてきてもらって、身動きすらままならない僕を救い出してリビングに落ち着くまでに、結構な時間がかかった。
 しかもその間ずっと、樋口は「そのやつれようはまさか、ほんとに幽霊憑きに……?」とか嬉々として騒いでるし、佐伯妹は佐伯妹で「一体あんた、何したのよ? 水無神さんもいないみたいだし」とか痛いところを突いてくるし、ああもう、いい加減にしてくれ。
 ちなみに、僕が床を踏み抜いた理由は、冥王邸の中を見るだけで一目瞭然だった。地下室の床や壁、天井までが満遍なく、ゆっくりと火に炙られたかのように黒焦げており、中でも玄関のあたりの天井(一階からすれば床)がひときわ脆くなってしまっていたのだった。
 樋口はそれを見て、絶対何かオカルト現象があったに違いないと興奮していたが、僕には考える気力もなかった。確かにこの間までは何ともなかったはずなのだが、この屋敷で起こる正体不明なことを逐一気に留めていたら、気の休まる暇がなくなる。
 それでも玄関の床に穴が開いているのだけは不都合だから、体が動くようになったら修繕しなければなるまい。僕はリビングのソファにだらしなく横たわりながら、深い深いため息をついた。
「大丈夫、夏目?」
 そんな僕の前のテーブルにお茶を置きながら、佐伯妹が訊いてくる。
「あの、さっきは……」
「ああ、それはいいんだ。何でもない。いろいろやってもらって、ごめん」
「そ、そう……?」
 エプロンをした佐伯妹は、お盆を胸の前に抱えた恰好で、僕の向かい側に腰を下ろす。その横で、思いがけず佐伯妹の家庭的な姿を目にしたからか、樋口がだらしなく頬を緩ませていた。
「でも、ほんと、何があったの」
「いや……単なる風邪なんだけど……だいぶ抜けたんだけどさ、節々が痛くて」
 思いつきの言い訳だったが、僕の体調に関して言えば、事実がひとつまみかふたつまみくらいはまぶされていたから、それなりに信憑性はあったと思う。現に、佐伯妹も樋口もそれなりに納得したみたいだった。
「じゃあ、寝てないと。こういうとき、一人暮らしって大変じゃない? 薬とか、飲んだ?」
「ああ……それは大丈夫。ありがとな」
 こういうとき、佐伯妹の世話好きな性格は、多少面倒ではあるけど有り難いと思う。こんなに怒りっぽくなけりゃ、こいつももっとモテるのにな。
「な……なによ」
 僕に見られているのが気に入らないのか、佐伯妹がそっぽを向いたので、僕も苦笑して目を伏せた。
「連絡できなくて、ごめん。柱谷やん、何か言ってたか?」
「またか、っつってたよ。後で説明しにいきゃいーんじゃないの?」
 樋口が言う。そうか。学校の教師にまでそうやってスルーされるのは、有り難いと言うべきか情けないと言うべきか。佐伯妹が僕をたしなめるように、
「ほんとよ。電話くらいしなさい。わたし……じゃなくても、誰か友だちに、杏とか奏に伝言したっていいんだから。二人とも、何も知らないって言うし。でも、変なの。杏は部活があるけど、奏は一緒に来ると思って誘ったのに、断られたのよね」
 そこで、佐伯妹が僕の方を探るように見た。

328:絶対封印プラグイン 第18回-B
08/02/22 00:01:04 0LQofFjX
 
「なんか、真っ赤になってたわよ。逃げるように居なくなっちゃったし。あんた……また、何かしたんじゃないでしょうね? 水無神さんもいないし。夏目?」
「嵩月のことなんて、知らないよ……」
 あやうく、操緒のことならともかく、と言いかけて口を噤んだ。危ない危ない。そんな僕を佐伯妹はさも不審そうな目つきで睨んでいたが、そのうちにため息をつき、あらためてリビングの中を見回した。
「でも……身の回りのことをしてくれる人がいないって、こういう時大変よね。晩ご飯とか。ええと、夏目……もし、何だったら、その」
「ああ……」
 そうか。そのことがあったか。
「悪いけど……杏に連絡とってもらえないかな。お願いすれば、あそこん家から何か差し入れてくれると思う。……って、なんだよ」
「別に」
 佐伯妹は少し膨れっ面で横を向く。何なんだ、一体。

 アニアが戻ってきたのは、夕陽がそろそろ落ちようかという頃だった。残念ながら、徹夜した上に授業まですっぽかして調べた結果は芳しくなかったらしく、極めて不機嫌だった。まあ、あんな代物の正体を突き止められても、こっちが困るけど。
 そうするうちに、杏が差し入れの食事を持って現れて、鳴桜邸では時ならぬ賑やかな夕食会が催されることになった。どうでもいいけど、なんだって樋口や佐伯妹まで居残るんだ。そう訊いてみたら、佐伯妹が何故だか顔を赤くして、
「……病気のクラスメイトをほっといて帰れるわけないじゃないの。あんたが寝るのを見届けたら、帰るわよ」
 まあ……有り難い話なんだろうな。疲れるけど。
 いや、素直に、ここは感謝しよう。樋口に佐伯妹、杏、アニアがいる食卓は騒がしくて楽しくて、おかげで、その間だけは色んなことを忘れていられた。一巡目であれ二巡目であれ、こんな風に、屈託なく穏やかに過ごせる時間だけだったらいいのに、と心から思う。
 そして、それでも僕に気を遣ってくれたのか、早めに引き上げることにした友人たちを送り出して、僕はようやく束の間の平穏を手に入れた。どうせ長続きはしないんだろうが、休めるうちは休んでおくさ。
 その夜は、溶けるようにして眠った。夢なんて見なかった。

 僕が学校に復帰したのは、その翌週になってからだ。いくら若いといっても、さすがに半日や一日であのダメージから回復はしない。週末心おきなくゆっくり休んで、ようやく登校できるだけの体力と気力を取り戻した。
 その間、アニアはずっと疑わしげに僕の言動を監視し、時にはあからさまに詰問してきたが、風邪だからってことで押し通した。レゾネータに関しては、いくら調べても情報が出てこないらしく、そのうちに段々興味も薄れつつあるようで、とりあえず安堵する。
 操緒は、再登校日の前の日曜日の夜、そろそろ僕が不安になり始めた頃に、復活した。ただ、少なくとも一週間の間、操緒を見ることを僕は禁じられた。「なんでだよ」と訊いたら、「エロい目で見られたくないっ見たら絶交っ」と一刀両断だった。
 まあ、その方が有り難いのかもしれない。僕にしても、操緒とどんな顔で接したらいいのか、まだ良く分からなかった。
 久し振りの学校も、特に変わったことはなかった。嵩月の表情が何だかいつもより固い気はしたが、平素から決して愛想のいい子じゃない。操緒も、ずっと、うまく僕の視界から外れたところで漂っていてくれてたから、それほど気を遣わなくても済んだ。
 昼休みになったところで、何だか知らないが佐伯妹が「あんたやっぱ何かしたんでしょっ。水無神さん、あんた見るたび赤くなってにやついてるし、奏の方は妙にあんたに突っけんどんだしっ。さあきりきり吐けっ」とか絡んできたが、そんなの僕が知るか。
 そんなことより、僕には大事な用事があった。授業が終わるなり、嵩月と一緒の班だった掃除当番をすっぽかして、化学準備室へ向かう。そこにいるはずの人に会いに。

329:絶対封印プラグイン 第19回-A
08/02/22 00:02:08 0LQofFjX
 
 たぶん、僕が来るのを予期してたと思う。でなければ、こんなに当たり前に、いつものおっとりとした笑顔で迎えてくれたりはしないだろう。
「トモハル、おひさしぶりじゃない。体は、大丈夫なの。風邪って聞いたけど」
 何を白々しい。僕が睨み付けるのを全く意に介する様子もなく、朱浬さんは首をかしげて、
「何か、用?」
「こないだのこと、ですけど」
「忘れなさい」
「は」
 朱浬さんがにこやかな表情で腕を一振りすると、がしゃこん、と何かが何かに装填される音がした。僕のこめかみを、冷や汗が一筋流れ落ちていく。
「何もなかったの。そうよね?」
「いや、そりゃ……こっちだって忘れたいですよ」
「なんですって?」
 僕がぼやくように言うと、朱浬さんの瞳がすっと細まり、赤い光を放った。ええと、たった今、忘れろって言ったのは、そっちですよね? 一体、どっちなんです。
 まあしかし、お互いに話題にしたくないことであるのは、確かだった。僕の用件も、どちらかというと別のことだ。
「あのそれより……あのプラグインですけど。僕のところに置いていかれても」
「ああ、あれ」
 朱浬さんは平然と答えた。
「トモハルが持ってて」
「え……ええっ」
 それは、困る。あんなものを、僕にどうしろというんだ。だが朱浬さんは、僕がなぜ困惑しているのか理解に苦しむとでも言いたげな様子で、訊き返してきた。
「それ以外に、何かいい考えでもあるのかしら?」
「いや、王立科学狂会に返すとか……」
「あんなもんを、あんなキチガイどもの好きにさせろっての? 大丈夫よ。どっかに消えてなくなっちゃいましたすいません、って報告済みだから」
 それでいいのか。いやそりゃあ、アニアという証人もいたから、王立科学狂会としては信じるしかないのかもしれないけど。
「それじゃ……生徒会のどれかに預けるとか。僕が持ってるより、厳重に管理できるじゃないですか」
「ふーん」
 朱浬さんが面白そうな声音になり、だがどことなく真剣な目つきで、
「トモハル……もしかして瑤や倉澤六夏とも、あんなことになりたいのかしら?」
「やめてくださいよ。僕にだって、相手を選ぶ権利くらいあります」
 あんまりな言い草じゃないか。僕がよっぽどげんなりした顔をしたせいか、朱浬さんはくすくす笑い出した。なんか、妙に楽しそうだ。僕は何とか、逃げ口上を考えだそうと知恵を絞った。
「あんなもの、僕じゃ管理できませんよ。制御だって。こないだは、たまたま何とか」
「ああ、あれ? あれは、狙いどおりかな」
「はあ?」

330:絶対封印プラグイン 第19回-B
08/02/22 00:03:14 tySGQiaz
 
 意外なセリフに瞬きする僕に向かって、朱浬さんは得々と、
「だって、あんなデバイスで、無限ループした時の安全装置が組み込まれてないわけないじゃない。どっかで、ヒューズが飛ぶかブレーカーが落ちるかすると思ったんだけど、そのとおりだったわ」
「はあ……あの、そんな見込みがあったんなら、先に言っといてくださいよ」
 あの場での僕の悲壮な決意が、莫迦らしく思えてくるじゃないか。恨めしそうに言った僕に対して、朱浬さんはごくごくしれっと、
「まー、あん時はあたしもそんな余裕なくって。……誰かさんのせいで」
 そんな怨ずるように流し目をくれながら言われたって、僕だってあの時は無我夢中だったんだ。大体、この一件の発端は朱浬さんだったんだし、そんなにあのプラグインの扱いに自信があるなら、朱浬さんが引き受ければいいじゃないか。
「じゃあ、朱浬さんが」
 僕がそう言った時だった。朱浬さんが狼狽えた表情になり、声から余裕が消えた。
「あたしっ? あたしは、だめ。だめだから」
「な……どうしてですか」
「だってあたしが……あたしにあんなもん持たせて、女の子に恥かかせるつもり? やっぱ、ああいうのは男から……」
 何を言っているのか、支離滅裂だった。頬がそこはかとなく赤いし、視線はどこかを彷徨ってるし、最後のあたりは口の中にもごもごと消えてしまうし、いかにも朱浬さんらしくない。その挙げ句に、いやにきっぱりと笑顔で、
「というわけで、あたしはだめだから」
 いやそれ、説明になってません。だが、あの笑顔の前では、僕が何を言っても無駄だろう。僕は肩を落として大きなため息をついた。対照的に朱浬さんは元気よく、
「ま、というわけで、やむなくトモハルに預けとくけど。もし、二度とあんなもの使おうなんて気を起こしたら……分かってるわね? 一度目は事故で済ませてあげるけど、二度目は、あたしも……本気になるからね?」
 言い終わりは、やけに声が低くてドスが利いていた。人にあんなものを押しつけておいて、何かあった時の責任までおっかぶせる気ですか。言われなくても、あんなろくでもないものにこれ以上関わるつもりなど、毛頭ない。自分から平和な日常を乱すなんて論外だ。
 それに、あんなのを使ってまで女の子とヤりたがる男だと思われるのも心外だ。いくら何でも、僕を見損ないすぎだと思う。僕は憮然として、
「そんなことしませんって……ちょっとは信用してくださいよ」
 そう言った瞬間、朱浬さんは妙に無表情になった。すうっと僕に近づいてきたかと思うと、僕の二の腕に激痛が走る。
「てッ!」
 慌てて視線をそちらへやると、朱浬さんの細い指が僕の腕の肉を念入りにもう一度ひねり上げてから引っ込むところだった。あやうく涙が出そうになるほどの痛さだった。
「な、なにするんですか……」
 僕の抗議にも、朱浬さんは呆れたような見下げ果てたような目でこちらを見るばかりだった。いったい、何だっていうんだ。そんなに機嫌を損ねるようなことを言ったか?
 しかしそれにしても、いくらレゾネータの媒介があったとはいえ、この人と僕が共鳴したということ自体、今でも信じがたい。紫浬さんは「通じ合う部分を増幅して」と言ったが、あんなことになるような何が、僕と朱浬さんに共通してあったというのか。
 そりゃ僕から見れば、朱浬さんは中身はともかく魅力的な美人のお姉さんだし、くらっとくることだってないではないが、朱浬さんにとって僕など、ただのからかい甲斐のある後輩にすぎないだろうに。
「ふふーん?」
 僕の困惑した様子を見ていた朱浬さんの表情は、けれど不意にふっと和らいだ。
「ま、いっか。……トモハルだもんねえ。じゃあ、よろしくね」
「え……あの」
 踵を返した朱浬さんの後ろで僕が言葉を失ったのは、振り返る直前の朱浬さんの顔に、なんというか、あまり見慣れないものを見てしまったせいだ。それは、はにかみというものにとてもよく似ていたのだが、しかしまさか朱浬さんが。
 凝然として立ち尽くす僕を置き去りにして、朱浬さんが化学準備室の扉に手をかけ、からりと開く。その向こうに、人影があった。
「……嵩月」


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