07/05/09 20:11:32 g22jQoAE
更級(さらしな)中学、二年五組の教室内に談笑がこだまする。
「お母さんね、ホントに幸せそうなの。あたしが見てる前でも、平気でお義父さんとベタベタしち
ゃってさ。あたしを邪魔者あつかいするんだよ」
セミロングの髪を軽く揺らし、レナが笑った。きりっとした彫りの深い顔立ちに切れ長の瞳。ど
ことなく猫を連想させる美少女だ。丈が短めのスカートから、白い脚がすらりと伸びていた。
スポーツ万能な上に、成績も学年でトップクラス。そしてそれを鼻にかけない明るい性格でクラ
スの人気者だった。
「もう、子供の前でいちゃつくなっての。あたしのほうが見てて恥ずかしいよ」
文句を言いながらも本気で怒っているわけではない。
レナの母親は、彼女が幼いころに夫と死別した。以来、女手ひとつでレナを育ててくれたのだ。
そんな母が女としての幸せを手にしたことは、レナにとっても幸せなことだった。
ただ、子供の前でも平気でのろけてくるのだけは、勘弁して欲しいと思うが。
「よかったわね、三枝(さえぐさ)さん」
クラスメートの栗原美紅(くりはら・みく)が祝福する。
ショートカットにセルフレームの眼鏡をかけた、知性的な美少女だ。ルックスだけでなくスタイ
ルも抜群で、中学二年生にして85センチはあろうかという豊かな乳房。くびれた腰からまろやか
なヒップへと続くボディラインは、成熟した女性のようにグラマラスだった。
「川瀬(かわせ)だってば。今のあたしは川瀬レナ」
つい先日、母親が再婚し、レナの苗字は旧姓の三枝から新しい苗字の川瀬へと変わっていた。
「なかなか今までの癖が抜けなくて」
美紅が苦笑した。
「早く慣れてよね、栗原」
レナがまた笑う。
新しい姓は、幸せの証。
新しい父ができ、新しい家族を作っていくためのしるし。
レナは─幸せだった。
「あ、そういえば、また栗原の下駄箱にラブレターが入ってたよ」
「しつこいのよね、毎日毎日」
美紅がうんざりとした顔をする。
とにかく男子に人気のある少女だった。
アイドルと見まがうほどの美少女なのだから無理のないことだと思う。レナも学年で一、二を争
う美少女だが、美紅ほどの気品はないし人気もない。
もっともレナの場合は、屈託のない性格もあって、女としてよりも友人として見られることが多
い、というのも理由としてあげられるだろうが。