07/01/28 17:41:19 S6KryxLS
はたして五分もすると夏海は教室に戻って来たが、目は泣き腫らし、顔もくしゃ
くしゃだった。それを見咎めた彼女の級友が事情を聞いたが、夏海は無理に
笑顔を作って何でもないと答えていた。ちょっと転んでとか、そういう風に級友
の質問をいなしていたが、それを聞いて裕美子は何故か心のうちで笑いがこみ
上げてきて仕方が無かった。
翌日も裕美子は昼食後に屋上で喫煙をしていた。教室を出る時、夏海にそっと
耳打ちをして後からついて来いと言ってある。昼食を摂っていた夏海の顔は青
ざめ、昨日の事を思い出させるのか肩を震わせていた。
屋上の扉が開き、夏海がやって来る。今日も空は青く、裕美子の機嫌同様、好
天であった。
「来たか」
「あの・・・何か用?」
「まあ、こっちへ来なよ」
夏海を手招きし、二本目のタバコに火をつける裕美子。ライターをしまう時、ちょ
っとタバコを勧めてみたが、夏海は横に首を振った。
「昨日は悪かったな」
裕美子が言うと夏海は怪訝そうな顔をした。あんな酷い事をしておいてとでも
言いたそうだったが、さすがに黙り込むだけである。
「写真のメモリー、消しといたから、勘弁してくれよ」
「え・・・?」
「見るか?ほら」
裕美子は携帯電話を放り投げ、夏海に渡してやった。ファイルを開けると、夏海
の映った画像はどこにも無くて、裕美子の友人と思しき男女のショットしか残って
いない。