06/04/27 17:57:54 e1wZ5s1P
ハミルトンは手早く着替えを終え、立ち上がると、いつものように何も言わずに部屋を去ろうとする。
だが、今日は違った。
思い出したように梨々の元に戻ってくると、囁くように言った。
「梨々、話があるんだ」
「……はい」
梨々は、まだ精液のしたたる虚ろな顔で、僅かに期待しながら返答した。
父は何を言ってくれるんだろう、と。
しかし、ハミルトンが口を開く前にそれは伝わってきてしまった。
それは人を騙すための算段だった。
「――――という段取りだ、分かったか?」
ハミルトンは梨々の意思を問わない。ただ理解だけを求めていた。
「…………」
選択権などなかった。
梨々はこの男の元でしか生きていけなかった。
それでも梨々は思い巡らした。
何か自分にも出来ることがあるのではないか、と。
だけど、結局何も見つけることができなかった。
長い沈黙の後、梨々は頷いた。