06/02/18 00:38:54 D9b8cGro
わざと茶化した口調で秀康が言うと、茜は微笑んだ。
こうして支えてもらわなければ、自分を囲む四方の手詰まりに浅慮を起こして
どうなっていたか知れない。恐らく、使命も何もかもを投げ出して、
最も愚かしい状態に身を堕してしまっただろう。
「ありがとな、アオ兄ィ」
心の底からの謝辞だった。でも胸の隅が針の先で刺したようにちくりと痛む。
こうして全部背負い込むアオ兄ぃは、一体誰が支えてやれるんだろう。
そして茜は己が右手の刀を持ち上げ、きゅっと唇を引き結んだ。
その手にあるのは柳生の伝家の宝刀であり、敬愛する祖父のかつての愛刀であり、
今は茜の誇りそのものだった。
鋼の輝きの刀のように、自分の心も腕も鍛え直せば強くなるはずだ。
決して、もう二度と手放すことはしない。
「―――――絶対に宗矩に勝つ。そして、自分に克つんだ」
自分に刻み込むために強く独白する。全ての決着はこの刀でつける。
柳生に生まれながらその血脈に背いたもの、従ったもの。同族の血を持って禍根を雪ぐ。
決別のとき、これで、この名で全てを終わらせるのが相応しい。
そしてまた同族としてのせめてもの餞。
やがて繚乱と咲き乱れる壮絶なる桜の下、誂えた様な舞台の上で、
少女は半ば狂える男と対峙する。
「柳生制剛流抜刀、柳生十兵衛茜。一族の義命によって貴様を討つ。
罷り通るぞ・・・宗叔父!!」
死闘の始まりを告げるべく、箍の緩んだ哄笑と、
火花と共に斬り結ぶ剣戟の音が高らかに重なった。
終
長々と個人的な萌えのダダ漏らしを書き込み、多少なりと
喜んでもらえたようで、
スレの皆さん本当にありがとうございました。