10/08/26 17:29:38 6weBVV29
>>412
最初は…下着を身につけていないことが心許なくて切なくて、今にも泣いてしまいそうだったのです。
後姿で知られてしまわないかと心配になったり、裾から吹き込む風にむき出しの……その、…アレを、撫でられたり…。
裾の長い和服ですらそうなのです。地下鉄の長い階段を下りる時など…特に、風が吹き上がってまいりますから…。
喩えるならばジェットコースターを降りた直後、とでも言いましょうか。
足元がフラフラして生きた心地がしなくて、もう絶対乗るまいとその時は固く誓うのに、身体のどこかに…浮遊感が残るのです。
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私の自室には壁に埋め込まれた大きな姿見があります。背丈は私より高く幅もゆったりとして、縁を精緻な彫刻や飾りで彩ったものです。
年月を経て色艶を増したその鏡は、御伽噺やファンタジー小説に出てくる魔法の鏡のようなある種の独特の雰囲気を持っています。
その鏡の前で私は、自分の肩に水色の着物を掛けました。
私の足元には帯やら腰紐やらなんやらと、和装に必要な道具が散らばっています。
……その中には薄桃色の長襦袢や和装下着もありました。
私は今、一糸纏わぬ素肌に、直接水色の着物を掛けているのです。
私の華奢な(…あえて言葉を良くしましたが、つまり、女としてまだつまらない身体と言う事なのです、が)
稜線にそって着物のが凹凸を描きます。
緋色の絨毯の上に着物の裾がまるで花びらのように広がって、だらりと開いた前袷から私のお臍が覗いていました。
(……私…なんていう顔をして…)
鏡の中には私に良く似た別の女が映っていました。苦しそうに顰めた眉、今にも泣き出してしまいそうな瞳には透明の膜が張っています。
赤く上気した頬に薄く開いた唇。……その唇がどうしてだかしっとりと濡れていたことに、私は気が付いていました。
吐息が齎す湿度は、鏡の中の女をいやらしく変えていきます。瞳に張った涙も何を思っての涙なのか…今の私には分りませんでした。
震える手が両方の襟を掴んで、前袷を左右に割り広げます。
ごくり、と咽喉が鳴るのが分りました。
見えない力で視線を固定されたよう。私は馬鹿みたいに鏡を覗き込みながら、着物の下の自分の身体を見つめました。
縮こまっていた両手を思い切って伸ばしていくと、腰に浮いた骨が見えます。
影を作るほど浮いた鎖骨に、同級生のそれより幾分薄い乳房。人並み程度に張りだした腰と、極薄い下生え。
いつもと変わらない、何の面白みも無い私の身体がそこにありました。
クラスメイトなどは『音禰には余計な脂肪が無いね』と言いますが…私は自分の身体がもっと丸みを帯びていればいいと常々思うのです。
そう、乳房などもっとはちきれるように丸く、歩くたびに腰周りが魅惑的に震えるような…。薄い身体は私の劣等感を煽ります。
……少し、悲しくなってきました。このような身体では折角ご命令を頂いても、満足していただけるとは思えません。
ですから私は、少し体制を変えることに致しました。