10/09/05 00:27:04 Q2gwbvi5
暗黒戦争終結後、カシムはようやく家族が待つタリスへ帰ります。
その手には、苦労して買い求めた、粗末な服が握られていました。
「リーン、よろこんでくれるかな・・・あいつならきっと似合うだろうな」
そんなことを考えながら、タリスへの道を急いだのです。
しかし、家に帰ったときには、すでに何もかも遅かったことがわかります。
リーンは、病気の母や幼い兄弟たちのために、自らを奴隷商人に売ったのです。
カシムからの仕送りが途絶えたとき、もはや彼女には、他になすべき方法がなかったのでしょう。
カシムは半狂乱になって妹を探し求めます。
ワーレンの薄汚い酒場で、妹の変わり果てた姿を見つけたのは、寒い冬の日の事でした。
身も心もボロボロになって、リーンは冷たい床の上に寝かされていました。
カシムは彼女を力一杯抱きしめて、泣きながら何度も何度も、詫びました。
リーンは優しく微笑んで、そして最後に、一言だけ言い残して息絶えたのです。