08/11/11 15:15:37 ELEPBpz9
妹のブラザーコンプレックスは、年々ひどくなっていくようだった。
両親は、僕が構いすぎるからだ、と笑うのだが、こればかりはどうしようもない。
親子ほどに年齢の離れている妹に頼まれると、大抵のことには嫌とは言えない。
「ピーマンを食べて」
「お買い物に連れていって」
「大きくなったら結婚して!」
さすがに最後の願いを聞き入れることはできないのだが、おかげで僕は長年のピーマン嫌いを克服してしまった。
いつものように、妹に見送られて仕事に出かける。
そして、いつもとは違って、玄関に立った僕に妹が駆け寄る。
まるで、跳び箱の踏み切り板にそうするように、僕の足に飛び乗って。
いってらっしゃい、と言いながら、大きく背伸びをする。
昔は届かなかったのに、ずいぶんと背が伸びたものだな、と場違いな感心をして。
それが、僕のファーストキスだった。