09/10/16 06:37:57 mX9yT+Y5
…むかしむかし、ある村の近くにの、童子の兄妹が住んでおったそうじゃ。ただのう、童子とゆうて
もの、人ではないんじゃ。鬼の兄妹じゃったんじゃ…
O県中南部。水田と休耕地との合間に新興住宅地が散在する、ごく典型的な地方の郊外に今なお残る、
とりあえずは寂れていない程度の一小神社。その一角に佇む、苔むした御影の石碑が往時の、人と人外
とが相克しつつも共生していた頃の伝説を今に伝えている。
冒頭にもあったように、童子と言えども人外であるからして、たかが農民風情が乏しい知恵と力を
絞ったところで被害が軽減されるはずもなく、村の衆はただ鬼童子兄妹の気紛れ─主に兄の─に翻弄
される日々を送っていた。その外見は黙って立っておればそこらの子供と変わりがない、いやむしろ
麗しい位であったと当時の文献は畏れと妬みを込めて綴っている。