10/10/05 02:27:17 YDnCkNcG0
生 ラクGO家 合点×焦点(灰)
薄暗い話
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
押さえた様に咳込む声を耳が拾う。その所為で目が覚めた訳じゃなかったけれど、重い瞼を持ち上げて、
ぼんやりとした視界の中で一番最初に気付いたのは、隣のベッドが空になっている事だった。
眼鏡、何処に置いたっけ。
手探りでベッドサイドを探って、指先に触れたそれを掛ける。
生活感のないホテルの部屋。真っ暗じゃないのは、カーテンが開けられているからだ。
起き上がりしなのシーツの摺れる音で、士のさんは漸く俺が目を覚ましたのに気付いた様だった。
「起こしたか?」
「んーん、勝手に起きた」
「ごめん」
「勝手に起きたっつうに」
窓際に設えられている、二脚のソファーと低いテーブル。その内の一つに腰掛けて、士のさんは
窓の外に広がる夜景を眺めながら煙草を吸っていた。横顔が何処となく寂しそうな気配を漂わせている。
また……なんかに捕まってんのかな。見てるこっちが身体に悪いんじゃないかと心配になる程考え込む癖を持ってる
士のさんは、時折眠れなくなるらしい。不眠と呼ぶ程頻繁ではなく、本当に時々らしいけれど。
「寝られなかったの?」
「そういう訳でもないんだけどな」
じゃぁどういう訳? なんて訊くのは野暮かな。
多分、思考をぐるぐるさせている内に寝そびれたんだろう。悩み事は一つじゃなくて、複合で襲ってくる。
症状が重なった風邪みたいに。だからって俺を起こす訳にもいかず、電気も点けずに独りでぼんやりしてたのかな。
馬鹿だな、起こせばいいのに。