10/09/30 16:49:08 v113Y4vs0
>>210
亀ですいません
続き待ってます!
301:たぶん全部気圧のせい 後編 1/6
10/10/01 00:57:25 cMp3EJKG0
難局シェフ。半生注意。ぬるいエロあり。
新やん×仁志村編。
>>210-215のつづきです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ここ、ドーム藤基地にはお世辞にも快適とは言い難い、4畳程の個人用居住ユニットがある。
ドアの上方に外気導入口が付いているものの、閉塞感は否めない。
一人でも息苦しいのに、二人でいたらすぐに窒息してしまいそうだ。
仁志村の部屋と寸分違わぬ窓のない室内に、個性の欠如した狭いベッドと、小さな机に椅子が一脚。
壁に貼られた見知らぬパンクバンドのポスターと、机に積まれている難しそうな本が辛うじて部屋の主を彷彿とさせている。
その当人は、仁志村を呼びつけておきながら、先程から落ち着かない様子でベッドに座ったり立ったりを繰り返している。
「で、新やんの右手の代わりをすればいいのかな」
壁に寄り掛かっていた仁志村は、極力事務的に話を切り出した。
新やんは背筋をピンと伸ばし、ずれた眼鏡の隙間から上目遣いに仁志村を見た。
「・・・はい。あの、口とかは選べたりしないんですか」
「却下します」
「・・・ですよね。それじゃあ、密着させてください」
「密着?」
「なんか、離れてると気が削がれるというか、寂しい感じがしちゃうんで」
そう言いながらベッドから立ち上がると、躊躇うことなく仁志村の腕を引き寄せた。
反射的に押し返そうとしたが、新やんの腕はびくともしない。
華奢に見えて基地の誰よりも腕相撲が強かった事を思い出した。
おどおどしたり、開き直ったり。今日の新やんは本当に忙しない。
百歩譲って大人しく抱き込まれた仁志村は、新やんの肩に少し仰のいた状態で顎をのせる格好になった。
体温の高い新やんのTシャツから仄かに汗とタバコの匂いがする。
「このままするの?」
「おねがいします。あ、コントロール得意なんで大丈夫です」
「・・・そう」
302:たぶん全部気圧のせい 後編 2/6
10/10/01 00:59:24 cMp3EJKG0
「あの、俺も触っていいですか」
「だめ」
「ですよね」
にべもない仁志村に、新やんはわざとらしく大きなため息をついた。
きっと今頃、BARフクダは隊員で賑わっている。彼らが居住棟に戻る前に、ここから出なくてはならない。
仁志村はポスターに焦点を合わせ、手探りで新やんが履いているジャージの紐を解いた。
腰から落ちたジャージを、片手で器用にずり下ろした下着ごと足を振って脱ぎ捨てると、新やんは言葉通り密着してきた。
仁志村のチノパン越しに暖かく、既に硬くなったものの感触が生々しく伝わってくる。
覚悟を決めてきたはずなのに、顔が熱くなる。
顔を見られずに済むこの体勢で助かったのは、仁志村の方かもしれない。
「もう少し離れてくれないとできないよ」
「あ、そうでした」
慌てて新やんが腰を引いた。
仁志村は慎重に深呼吸をしてから手を伸ばし、立ち上がり掛けた新やん自身をそっと手に包み込む。
下から上へゆっくりと動かすと、あっという間に硬さを増し、滲み出した体液が指を濡らした。
先端から溢れるそれを、手のひらに塗り広げるように丸みに沿って滑らせる。
そのまま撫で下ろし、幾分滑らかになった動作を再開する。
徐々に浅くなる新やんの呼吸につられそうになった仁志村は、慌てて深く息を吸いこんだ。
―自分が興奮してどうする。
ふいに俯いた新やんの熱い息が耳元に掛かって、仁志村は堪らず首を竦めた。
「・・ちょっと新やん、」
「すいません」
謝りながら、その首筋に捩じ込む強引さで新やんが顔を埋めてくる。
背中に回る腕がきつくなって、身じろぎすら封じられてしまう。
眼鏡のフレームが当たって痛い。
それよりもぞくぞくと背筋を這い上がる感覚を退けたい一心で、仁志村は新やんの背中を叩いた。
「痛いって」
新やんは首筋を死守しようとする仁志村の後頭部を鷲掴みにして無理やり仰のけさせた。
「い、た・・」
掠れた声を漏らす仁志村に構うことなく、露になった首に新やんがゆっくりと口付けた。
仁志村の肩がびくんと揺れる。
首の付け根から耳の裏側まで時間を掛けて辿っていく湿った唇に、膝が震えてしまう。
303:たぶん全部気圧のせい 後編 3/6
10/10/01 01:01:38 cMp3EJKG0
仁志村は必死に理性を保とうとしていた。完全に新やんのペースに呑まれている。
「仁志村さん、もっと強く」
仁志村の耳元で、新やんが低く囁く。
言われるまま、先程よりきつめに握り込んだ仁志村の手の中で反発するように膨張し、さらに硬度が上がった。
早く済ませないと巻き込まれてしまう。
そう思った矢先、新やんの口腔が仁志村の耳を覆った。
「・・っ」
鼓膜を刺激する唾液が立てる音と、耳を這う舌の動きに息を詰める。
逃れようと身を捩るが、新やんの腕は全く弛まない。
耳の奥に、容赦なくぬめる舌が侵入する。
「にい、やん・・ちょっと待っ・・!」
全身に鳥肌が起つ。立っていられない―。
崩れかける仁志村を新やんが壁に押し付けて支えた。鼻先が触れる距離から呼吸の乱れた仁志村を覗き込む。
「他の人でも来てくれました?」
今まで見た事がない新やんの顔にどきりとする。
甘さのない、欲望のみに支配された、まるで―雄の目そのものだ、と仁志村は思った。
「それとも、モトさんだから、知られたくなかった?」
「・・・や、め・・」
「ね、仁志村さん」
荒い息を縫って新やんが名を呼ぶ。用を為さなくなった仁志村の手のひらに、新やんが自身を擦り付ける。
卑猥な濡れた音と、その感触。
仁志村は居た堪れず、きつく目を閉じた。
「その表情。すげー興奮する」
新やんの指が仁志村の下唇をゆっくりとなぞる。
「仁志村さん、目を開けてよ」
包帯に巻かれた手が頬に触れた。
仁志村は濡れた目を開く。開いてしまってから後悔する。間近に迫る新やんの目。
「キスしてもいい?」
熱さすら感じるその眼差しに、仁志村は何も答えられなかった。
息苦しくて自然に開いた仁志村の唇に、新やんが傾けた顔を近づける。
仁志村は目を閉じる事もできず、その一部始終をスローモーションのように見ていた。
唇に新やんの熱い息が触れる。
304:たぶん全部気圧のせい 後編 4/6
10/10/01 01:02:50 cMp3EJKG0
無意識に仁志村の指先が痙攣し、手のひらを犯す新やんへ爪が当たった。
「あ」
新やんが間の抜けた声を発して、仁志村から離れた。
「・・・・・」
「す、すみません・・・出ちゃった・・」
抑揚のおかしくなった新やんの声。
唐突に解放された仁志村は、状況が飲み込めないままぼんやりと自分を見下ろす。
生暖かく粘性の高い液体が、仁志村の手のひらとチノパンをべったりと汚していた。
我に返った仁志村は、喉に痞えていた息を大きく吐き出した。
まだ心臓がばくばくしている。
久しぶりすぎてコントロールできなかったあぁ、と大袈裟に頭を抱えている新やんを尻目に、無言のまま微かに震える手を拭う。
盛大に汚れたチノパンを脱いで新やんに押し付け、脱ぎ捨てられていた青いジャージに足を通した。
「あ、それ俺のジャージ」
新やんの目を軽くにらむと、慌てて俯く。
「それ、洗って返してね」
「はい、すいません・・・」
仁志村にも責任があるような気もするが、この際棚上げすることにした。
「あの、それ裾引きずってるんですけど」
「気にしない」
「いや、裾が削れちゃうし・・・仁志村さん、意外とケツでかいすね」
「ほっといてくれ」
ジャージの紐を結ぼうとしてポケットに何か入っているのに気付いた。何気なく取り出したモノに仁志村は目を疑った。
小さなプラパッケージの中に見覚えのあるゴム製の。
「・・・なんでコンドームなんか持ってんの」
頭を掻きながらばつが悪そうに新やんが顔を歪める。
「ドクタ.ーに貰ったんで」
「・・・は?」
「頼んでみたら?ってドクタ.ーが」
「・・・」
305:たぶん全部気圧のせい 後編 5/6
10/10/01 01:05:05 cMp3EJKG0
ドクタ.ーが。頼んでみたらって。
それはつまり“仁志村<いくら”と言う事か。
暫く複雑な心境でコンドームを弄んでいた仁志村は、無表情のまま新やんを見据えた。
Tシャツの裾を片手で延ばして立ち竦んでいた新やんが身構える。
「新やん、これ、使っちゃおうか」
「ええっ、まじですかっ」
「やっぱりやめた」
「ええぇ・・」
仁志村さんだってちょっとその気になってたくせに、ともごもご聞こえてくる小さな声は黙殺する。
「何か履いたら?」
慌ててトランクスを身に付けながら新やんはおずおずと口を開く。
「あの、仁志村さん。なんか、色々、すみません・・・。でも」
そこで、照れくさそうなくしゃくしゃの笑顔を見せた。
「すっげーよかったです」
随分酷い扱いをされた気がしなくもないが、仁志村は笑顔に弱かった。
まあいいか、と思ってしまったことを悟られないように不機嫌な振りを通すことにした。
*****
「仁志村くん。このさっぱりしたメニュー、なに」
食卓の反対側から隊.長が消え入りそうな声で問う。
性欲増大の原因は低気圧ではなく、ボリュームたっぷりの食事の所為ではないかと思い至り、
個人的な反省もあって、なんちゃって精進料理にしたのだった。
「えー、今、日本は夏真っ盛りですので季節感を演出してみました!」
「だからって難局で素麺て・・・・また何かあった、仁志村さん?」
比良さんが怪訝そうに仁志村に視線を投げる。その反対側で、もじゃもじゃの髭の間から主.任がボソボソと不平を漏らした。
「肉類が皆無やないですか」
「ハンバーグがあるよ」
「でもこれ豆腐、だよね」
「肉です。れっきとした畑の肉ですから」
仁志村の静かなる気迫にドクタ.ーが口を噤む。
306:たぶん全部気圧のせい 後編 6/6
10/10/01 01:06:42 cMp3EJKG0
「なんだか物足りないよぉ。麺はさぁ、やっぱりこう黄色くて、縮れていて・・・」
「隊.長、ラーメンの食いすぎはよくないです」
「難局ではいくら食べても太らないよ、仁志村さん」
「他の人はね。凡はバターの分まだ消費できてないよね」
いつもと様子の違う仁志村に隊員達は目配せしあい、いつもより和気藹々と会話をしながら食事を始めた。
新やんは黙々と蓮根入りの豆腐ハンバーグを口に詰め込んでいる。
モトさんを伺い見ると、眉間に皺を寄せながらも、白だしに潜らせた素麺を口に運んでいた。
「お、ゆず胡椒だ」
モトさんの機嫌のいいときの声のトーンに仁志村は嬉しくなった。
「ごま油風味の揚げ茄子も一緒にどうぞ」
「お、サンキュ」
喧騒にまぎれてドクタ.ーが隣の席から小さな声で囁く。
「仁志村君何か怒ってる?」
「新やん、ドクタ.ーから貰ったイイモノ持ってたよ」
「え、まさかしちゃったの」
無反応で素麺を啜る仁志村に、珍しくドクタ.ーが慌てた素振りを見せる。
「え、え、ホントに?」
「してないよ」
「だよね、びっくりしたー」
なんだそれ。自分でけしかけておいて。
暫く不機嫌を装おうとしていた仁志村は、馬鹿馬鹿しくなって笑い出した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
初めは上手くいかないこともあるよね。次はガンバレ新やん。
コメ下さった方、どうもありがとうございました。
帰国時期の逆算間違えたけどキニシナイ!(4→7ぐらい・・?)
貴重なスペースありがとうございました。
307:風と木の名無しさん
10/10/01 01:35:40 xwpe0zo+0
>>306
流されまいとする仁志村さんがエロくて禿げました
長編お疲れ様でした!
308:風と木の名無しさん
10/10/01 02:50:00 iQzxiIFyO
これほんっとに色鮮やかに
みんなの顔が浮かぶよおおうい、
ありがたやありがたや…
待ってたかいがありました、
お疲れ様&ありがとうございました!
309:風と木の名無しさん
10/10/01 08:23:14 eMFi3eRb0
>>306
待ってました!素晴らしい
310:風と木の名無しさん
10/10/01 08:28:03 j7zeK9Lz0
>>306
映画の最後の食事シーンはコレだった気がしてきた。
そうか、それで仁志村さんジャージはいてたのか。
311:出立前夜1
10/10/01 22:39:38 2bT0gc9sO
一応ナマモノ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
目が覚めたら、彼がいた。
「来てたのか」
あいかわらずの仏頂面というか、渋い表情。
どんな顔をしていいか分からない、といったところか。
「いつからいた?起こせばよかったのに」
「気持ちよさそうに寝てたら、起こせないよ」
ふっと和らいだ表情に、自分までも優しい気分になれる。
「思ったより、大丈夫そうでよかったよ。安心してフランスに行ける」
「あぁ、いよいよだったっけな。忘れてた」
312:出立前夜2
10/10/01 22:40:20 2bT0gc9sO
この世界にいる者なら誰でも憧れる、世界的な権威のあるコンテスト。
彼は数年前にも挑戦していて、あと一歩のところで栄光を逃していた。
「俺、絶対勝つから」
「うん」
「だから、おみやげはトロフィーだ」
「期待していいんだろうな」
「勿論」
まだ痛む左腕を伸ばす。
驚いた彼が、慌てた表情になる。
「手ぇ出せ。左手」
「痛いんじゃないの?」
「ちょっとなら平気。点滴入ってる右よりマシだ」
313:出立前夜3
10/10/01 22:41:03 2bT0gc9sO
強がってはみたものの、やはり痛いものは痛い。
だが、痛みを押してでも彼に勇気を与えたかった。
彼の左手が自分の左手に重なったのを見て、そっと手を閉じる。
「俺の分まで、大暴れしてこい。お前なら絶対に勝てるから」
「頑張るよ」
「無事に帰ってこいよ」
「……」
さっきまで和んだ顔をしていたのに、今度は泣きそうな顔。
俺の前では忙しいヤツだ。
「泣くな。勝ってから泣けよ」
「……そうだな」
また元の仏頂面。
意識しないと、表情が固まってしまうクセはなかなか抜けないらしい。
314:出立前夜4
10/10/01 22:41:42 2bT0gc9sO
「帰ってきたら、また来るから」
「あぁ」
ぎこちなく笑って出て行った彼は、出たところで泣いているだろう。
俺が何も言わなくとも、大舞台に強い彼なら何の問題もない。
だからいつもの調子で、いつもの励まし。
それが彼の不安を取り除く、唯一の方法。
「頑張れよ…」
彼の手のぬくもりと若干の痛みが残る左手を見ながら、俺はまた眠りについた。
315:出立前夜・終
10/10/01 22:42:40 2bT0gc9sO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
携帯からなので、ぶつ切り申し訳ない。
今の『俺』は多分ここまでの状態ではなかろうし、
『彼』も忙しくて行ってはないはず。
『俺』の1日でも早い復活と『彼』の凱旋を祈るばかり。
316:胡蝶の褥2 1/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:21:59 7gTzgPet0
敬語の用法を間違えまくったことに気付いて泣きたくなった>>265の続きです。
銀河天使2で将/軍×摂/政、侯/爵もいます。誘い受け、媚薬要素・エロあり。
後半はちょっと無理矢理系です。捏造設定満載につき注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
咥えるのに邪魔なのか、ジュニエヴルは流れ落ちる自身の髪を掻き上げ、耳にかける。
手と指に付着したカルバドゥスの体液が、その艶やかな長髪に纏わり付くのも構わずに。
その光景を見て、壁際で杯を傾けていたベネディクタインはおもむろに立ち上がった。
床板の軋む音が耳に入り、ジュニエヴルの意識が口中の肉欲から逸れる。
何、と言葉なく問うてくる視線には答えず、ベネディクタインは、床に伏したジュニエヴルの
傍らに膝を付いた。
怪訝そうな青年の眼差しを受けながら、しどけなく乱れ散っている髪の一房をそっと手に
取る。さらりと、かすかに鳴る音色が耳に心地良い。
指の間をなんの抵抗もなく滑り落ちていく毛筋の手触りを堪能し、美しい髪だと、率直に
思った。癖もなく真っ直ぐに伸び、床上に波模様を描くそれは、淡い縹色と相まって流れ行く
清水を連想させる。
まやかしの流水を掬い上げようとするかのように、ベネディクタインは幾度も繰り返し、掌に
毛髪を滑らせる。そんな彼の行動を、ジュニエヴルは遠回しな誘いと受け取った。音を立てて
肉棒に吸い付く合間に、傍らの老人へ流し目を送る。
「ん、っ……キミも混ざるかい、ベネディクタイン? そんなところでただ見ていたって、つまらない
だろう?」
「くくっ……折角のお誘いだが、遠慮しておこう。我輩はこちらだけで十分だ」
黙々と髪を梳くベネディクタインをしばし見つめ、ジュニエヴルは一端性器から口を離した。
唾液と先走りの混ざり合った液体が唇から垂れ落ち、美麗な面を卑猥に穢す。
「ふぅん……なら、あの話はやっぱりただの噂かな? それとも、男には欲情しないだけ?」
自身の唾液で濡れた剛直をつつきながら、青年は意味深な言葉を呟いた。不審に思った
ベネディクタインが片眉を上げると、彼は笑いを堪えるかのように俯き、くつくつと肩を震わせる。
そして一瞬の後、弾けるように笑声を響かせた。
317:胡蝶の褥2 2/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:23:37 7gTzgPet0
「キミが妾を囲ってるって話だよ! 妾宅に通われるなんて、侯爵殿はお歳の割に随分お盛んの
ようだって、下世話な笑い話! アッハハハ!」
甲高く哄笑しながら、ジュニエヴルは手にしていた肉樹の先端を爪先で引っ掻く。全く唐突に
与えられた強い刺激に、カルバドゥスは驚くよりも早く絶頂の証をぶちまけていた。白く粘ついた
液体が勢いよく噴き上がり、辺りのものを手当たり次第に汚していく。綺麗に磨かれた床板を、
纏ったままの衣服を、そして、高らかに笑い続けている青年の細面を。
「フフッ……出しちゃったねぇ、カルバドゥス」
未だ放出を続けている性器に頬をすり寄せ、ジュニエヴルは陶然と目を細めた。上気して朱に
色付いた肌が、見る間に濁った白に染まっていく。唇にまで伝い落ちてきた一筋を見せ付ける
かのように舌で拭い、彼はくすくすと忍び笑いを漏らした。
「久しぶりなのかな……キミの精液、濃くてどろどろしてて……とっても、おいしいよ……」
うっとりと呟かれた言葉が終わるか終わらないかのうちに、白濁に塗れた肉棒が温かい粘膜に
包まれる。音を立てる程の強さで吸い上げられて、カルバドゥスは堪らずに低く呻いた。
尿道の奥にわだかまる精液をも、全て啜り上げようとするかのようなその行為が、先程果てた
ばかりの場所に再度熱を集めていく。竿に纏わり付いた残滓を存分に味わい尽したジュニエヴルが
ようやく顔を上げた時には、カルバドゥスの性器は完全に硬度を取り戻し、力強く脈打っていた。
「アハハハ! ねぇ、見えるかい? キミの、出したばっかりなのにまた大きくなってるよ?」
ぴくぴくと震える一物を撫で、ジュニエヴルは軽薄に笑う。それは紛れもない、冷笑。
「でも……ちょーっと、元気過ぎるんじゃないの? 童貞じゃないんだからさぁ……」
「いやはや……どうやら、将軍殿は随分と御無沙汰のようですな。この速さにこの反応の良さ……
まるで、自慰を覚えたばかりの童のようだ」
「な、何ぃ!?」
明らかな揶揄を含んだ二人の言葉に、体中の血が一瞬にして沸騰した。浅黒い皮膚が
傍目にも分かる程に紅潮し、射精後の倦怠感もどこかへけし飛ぶ。
「きッ……貴様ら言わせておけ、ば―ッ?!」
反射的に飛び起きようとした体はしかし、不意に訪れた快感にあっけなく弛緩してしまった。
318:胡蝶の褥2 3/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:25:22 7gTzgPet0
「やだなぁ、そんなに怖い顔しないでよ。ちょっとした冗談なんだから」
舌先で肉棒を玩び、ジュニエヴルは悪びれもせずに言ってのける。薄ら笑いを張り付けた
その美顔を殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、くすぐるような舌の動きは悔しいことに
ひどく甘美で、腰から広がり行く快感に上手く拳を握ることができない。
「いや、お若いようで何より。全く、羨ましい限りですな」
しわがれた声が、あからさまな侮蔑を投げ付ける。嘲弄を隠そうともせず、ベネディクタインは
口元を笑みの形に歪め、カルバドゥスを見下ろした。
―こンの……! 若造と爺の分際でぇぇぇ……ッ!
爆発寸前の怒りに、屈強な肉体がわなわなと震える。今にも咆哮を上げて暴れ出しそうな
男に目を眇め、さすがにやり過ぎたかなと、ジュニエヴルは内心で呟いた。
ここで下手に刺激して手なり足なり出されると最悪命に関わるので、さてどう言って丸め込もうかと
肉竿を頬張ったまま算段する。
舌で舐め上げる透明な体液に白い色が混ざる頃には、考えは粗方定まっていた。
「ねえ、カルバドゥス?」
陰茎から口を離し、ジュニエヴルは手慣れた様子でしなを作る。持って生まれた美貌の上手な
扱い方を、この年若い摂政はとうの昔に心得ていた。
じろりと睨め付けてくるのを真正面から見つめ返して、顰めっ面にそっと顔を寄せる。無防備を
装った指の先に、しっかりと急所を捕らえておきながら。
「ごめんね、ちょっと言い過ぎちゃった。そんなに怒ると思わなかったんだ……ねぇ、許してくれない?」
吐息の混じり合うような距離で、ことさらに甘ったるい声色で媚びる。引き結ばれた厚ぼったい
唇からは、強い酒の匂いがした。自分の吐く息はきっと、青臭い精の匂いがするのだろう。
おかしく思えて笑うと、きつく顰められていた眉がぴくっと震えた。
「三人で過ごす、折角の夜なんだもの……つまんないことは忘れてさ。楽しもうよ、ね?」
解け始めた眉間の皺を舌でなぞり、駄目押しに指の腹でカルバドゥス自身を撫でさする。
小さく跳ねるそこに、衣類越しに自分の昂ぶりを押し付けた。先端が下着に擦れて、図らずも
甘い声が漏れる。
319:胡蝶の褥2 4/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:31:42 7gTzgPet0
「ほら……ボクももう、正直言うと辛いんだぁ……だからさ、怒ってないで続きしようよ……
お詫びって言ったらなんだけど、何かリクエストがあるなら聞いてあげるよ?」
「……ほう。それは真ですかな、摂政殿?」
鼻先に吊るされた餌をまるで怪しむことなく、獲物はあっさりとそれに食い付いてきた。溶け
消えた憤怒の代わりに好色な笑みを浮かべるカルバドゥスに、心中でほくそ笑む。
「うん、もちろん。ボクとキミの仲だもの、遠慮なんかしないでなんでも言ってよ。ああ、でも……
痛いのはナシね」
ちゃんと、気持ち良くしてよ? ―逞しい体に身を寄せて、耳元で囁く。ごくりと、太い
喉が音を鳴らすのが聞こえた。
あまりにも思い通りの反応をしてくれる男の単純さに口元を綻ばせ、ふと思い出した
ジュニエヴルは、沈黙を続ける同席者を振り返る。
「キミはどうする? ベネディクタイン。またボクの髪でも触って遊ぶかい?」
「いやいや、我輩のことならお気になさらず。酒の肴代わりに、こちらでこの子と拝見して
おりますのでな」
節くれだった指で愛蛇の体を撫で、ベネディクタインは皺の深い顔に笑みを刻んだ。
白い鱗を愛しげになぜている老人からは、色情を覚えている様子は欠片も感じられず、
ジュニエヴルは少し拍子抜けしてしまう。単に男色に興味がないだけなのか、それともやはり、
誰しも老いには勝てないということなのか。そういえば、先刻の問いも結局うやむやになったままだ。
興味を引かれて尋ねてみようとしたジュニエヴルの顎を太い指が捕らえ、強引に顔の向きを
戻される。
「いけませんなぁ、摂政殿。よそ見はご法度と、先程も仰ったはずでは?」
細い腰を撫で回すように抱き込みながら、カルバドゥスはにたにたと品のない笑みを浮かべる。
大きな掌が臀部を掴み上げてきて、不意打ちに背が思い切り震えた。
320:胡蝶の褥2 5/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:32:34 7gTzgPet0
「あっ、ふ、く、ぁんっ……カル、バ、ドゥス……っ」
柔肉を揉みしだく手付きに、自然息が弾む。服越しに施される愛撫は穏やかなものだが、
長いこと熱を持て余していた体はそれだけでも十分過ぎる程感じてしまう。四肢から一気に
力が抜け、倒れ込むようにして厚い胸板に顔を埋めた。
「カルバドゥス、っ……それ、いい……もっとぉ……」
自身の腕の中で身を震わせる青年を見下ろし、カルバドゥスは喉奥で笑った。ねだる声に
応えて指先に力を込めてやれば、細い体はさらにその先を期待してわななく。
こちらの企みになど、気付きもしないで。
口角を持ち上げ、双丘を撫でていた手を静かに離した。無意識の反応か、それとも
挑発しているのか、色っぽい溜息が胸をくすぐる。
弛緩しきっている体を強引に引っ張り起こすと、ジュニエヴルがのろのろと顔を上げた。唐突に
愛撫の手を止められてもどかしいのか、潤んだ瞳でこちらを見つめてくるのが堪らない。
もっともっと、徹底的に嬲り尽してやりたくなる。
「ジュニエヴル殿」
きっちりと着込まれたままの服の襟元をはだいてやりながら、普段は滅多に口にしないその
名前を呼んだ。ふるりと、青年の長い睫毛がかすかに震える。
「そういえば、失言の詫びにワシの頼みを聞いて下さるとか……そのお言葉に甘えて、一つ
お願いしたいことがあるのですが……よろしいですかな?」
さらけ出された雪肌に指を這わせ、舌舐めずりをした男の目付きは― まさしく、獣の
それだった。
321:胡蝶の褥2 6/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:33:54 7gTzgPet0
果実を握り潰すような音と共に、悲鳴染みた嬌声が室内に響き渡る。
「ぁっ、っ……は、ぅ……く、ぁんっ……」
騎上位の格好で真下から肉棒を咥え込まされ、ジュニエヴルは喘ぐように息を弾ませた。
快楽とも苦痛とも分からない衝撃に体が震え、体勢を保てずにふらふらとよろめく。
そのまま倒れ込んでしまうかと思ったが、上体が傾いた瞬間、乱暴に腕―後ろ手に
纏められ、裂いた服の布地で縛り付けられている両腕だ―を引き上げられた。
「おおっと……いや、これは申し訳ない。ワシとしたことが、少々性急に過ぎましたなぁ……
お怪我はありませんか? ジュニエヴル殿」
苦しげに肩を上下させている青年に、カルバドゥスは厳つい顔に似つかわしくない猫撫で声で
尋ねかける。しかし、火照った裸体を見上げるその目には、相手を労わる色など欠片も
存在しなかった。あるのはただ、無抵抗な獲物をいたぶることへの喜悦と興奮のみ。
だがジュニエヴルには、自分の痴態を眺めてにやついている男の顔は見えなかった。
いや顔だけではなく、足の下に跨いでいる屈強な肉体も、快感に上気した己の裸身も、
どこかで自分達を見ているのであろう老侯の姿も、今の彼は何一つ見ることができない。
何故ならその漆黒の双眸は、巻き付けられた帯状の布で覆い隠されているのだから。
目隠しと、両腕の拘束― それが、カルバドゥスがジュニエヴルに申し出た“頼み”の
内容だった。
「ジュニエヴル殿? 聞いておられますかな? まだ、気をやってしまうには早過ぎますぞ……
くっくっく」
汗と涙に濡れた頬を指の腹で撫ぜ、黙り込んだままのジュニエヴルに返答を促す。ただ
それだけの刺激にも感じ入って喘いでしまう彼に、答える余裕などあるはずもないと分かっていたが、
カルバドゥスは執拗に言葉での返答を求めた。
そうすることで自身の上で震えている青年を嬲り、加虐の愉悦に浸る為に。
322:胡蝶の褥2 7/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:37:30 7gTzgPet0
「はて、困りましたな。お返事を頂けないとなると……これは、お身体に直接お尋ねする他
ありませんか」
「ひ、ぁあ……ッ!」
押し広げられた蕾の縁をなぞられて、力の抜けていた体がたちまち跳ね上がった。同時に
咥え込ませている肉棒が締め付けられ、心地の良い快感を覚える。肉体的な悦びと精神的な
満足感、双方に口角を吊り上げながら、充血して膨らんだそこを揉み込むように刺激し続けた。
「どうやら傷は付いていないご様子……いやぁ、安心しました。まだまだこれからという時に、
御身に何かあってはワシも堪りませんのでな」
「はぁ、っ、く、あんっ、カルバ、ドゥスッ……あッ、あぁー……!」
何かを懇願するように、自身を犯す男の名を呼ぶ甲高い声が、中途で途切れる。
一瞬の空白を置いて、張りつめていたジュニエヴルのそれが爆ぜた。粘度の薄まり始めた
体液が飛び散り、彼自身を、そして彼の真下に横たわる男の体をも汚していく。
がくがくと痙攣を続ける体から手を離してやると、支えを失った痩身は今度こそ前のめりに
倒れ伏した。
「おやおや……また果ててしまわれたのですか? これはまた随分とお早いことで……ああ、
いや。これは失礼、ハッハッハッハッハ!」
先刻の意趣返しにと、カルバドゥスは嘲りも露わに声を出して笑う。
振動が体内を犯す肉棒から伝わったのか、ジュニエヴルがまた掠れた声を漏らす。前戯の
段階で既に幾度となく絶頂を迎えさせられた体―ここに来る以前のことも考えれば、その
回数はさらに増えるのかもしれない―は熱く、両目を覆う布地は、溢れ出した涙を吸って
しとどに濡れそぼっていた。浅く速く繰り返される呼吸音は、今にも途絶えてしまいそうな程に
苦しげで―だからこそ。
「勝手に休まれては困りますな、ジュニエヴル殿」
髪を掴み上げ、胸元に伏せられていた顔を上向かせる。苦痛に呻く短い声が、荒い呼吸の
合間に零された。ぐったりしていた四肢が痛みに反応して緊張し、貫いた場所が収縮する。
「ワシは先程申したはず。まだまだ、これからだと……最後まで、お付き合い頂きますぞ」
切れ切れに息を吐く唇が、何かを言おうとかすかに震える、その言葉が音になるよりも早く、
ジュニエヴルの体を無理矢理起こした。
323:胡蝶の褥2 8/8 ◆QgjEYcxl4Mc2
10/10/02 03:40:02 7gTzgPet0
力のまるで入っていない、人形のようなその肉体を、腰に添えた手で楽々と支える。深く
男を咥え込む体勢を強要された彼は、哀願するように弱弱しく頭を振ったが― その体の
中心は早くも熱を持って上向き、いかにも物欲しげにふるふるとわなないていた。
飲まされたと言う薬のせいか、それとも単にこの身体が淫らなだけか。嗜虐的に笑いながら、
肉付きの薄い腰をしっかりと掌で掴み、そのままゆっくりと持ち上げる。
先端ぎりぎりの位置まで一度引き抜き、そして一息に、突き下ろした。
「あ、―ッ! あっ、っ、は、っく……ぁ、ぁん!」
真下からの強烈な衝撃に、痩せた体が踊るように身悶える。ぎゅっときつく窄まった後孔の
動きに逆らうように、ことさら荒々しく狭くなる中を犯した。
繰り返す律動の、それは幾度目のことだったか。一際強い力で最奥を抉った刹那、
仰け反った喉から声にならない悲鳴が上がる。
腹に降り注ぐ熱いものを感じながら、千切り取られんばかりの締め付けにカルバドゥスも
また果てた。
「っ、ぁ、……はっ、ぁ……っ、はぁ……ッ」
絶頂の余韻も冷めやらぬ中、体内で熱の弾ける感触にジュニエヴルの体が震える。
ずっと呼吸を苛んでいた衝撃がようやく止み、やっとの思いで息を継ごうとしたその瞬間―
出し抜けに下から突き上げられて、彼は悲鳴も上げられぬまま身をしならせた。
「んっ、く、ぁ、あんっ! はっ、ぁぁあ!」
もはや、頭を振る余力もなく。揺すり上げられるままに喘ぐしかできない哀れな青年を
見上げ、カルバドゥスが凶悪に笑う。
「くくく……そぉら、気絶するにはまだ早いぞ! 散々侮辱してくれた礼だ! 最後の
最後まで……楽しませてもらうぞ、若造!」
注がれた体液が泡立ち、しぶきが散る程の勢いで、柔らかな蕾が繰り返し抉り込まれる。
柔肉を蹂躙する音と、掠れた涙声が混ざり合う空間で― 蠢く二つの肉体を、紅い瞳が
じっと見つめていた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
本当は“殿”とかもおかしいのかもしれないけど、原作準拠を言い訳に押し通す。
スペースありがとうございます。続きはまた後日に。
324:風と木の名無しさん
10/10/02 06:24:30 faS6bq5e0
>>315
あああああああこれはもしや…
泣いた・゚・(つД`)・゚・
ありがとうございます!
仏国での健闘、いや栄冠を
そして少しでも早く回復と復帰を祈っております
325:風と木の名無しさん
10/10/02 08:44:10 n51Snf/QO
>>315
うわあああ本番前にこのお二人の話が読めるとは…
同じくかの地での栄冠を、そして無事回復・復帰されることを祈ってます。
326:風と木の名無しさん
10/10/02 08:51:35 n51Snf/QO
すみません、あげてしまった…
327:風と木の名無しさん
10/10/02 10:53:01 LAIzgabP0
>>301
ありがとー。待ってました。
新やんが鬼畜になるのかと思ってたら、新やんらしさがあって良かったです。
二氏村さん、相変わらず抱きたくなる人だなあ。
328:捏造戴国物語
10/10/02 10:54:29 Tw0d/jPc0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
驍宗×泰麒です。
なんかもういろいろすみません。死にネタ注意。
2王に仕えて前王への想いと現王の狭間で…って話が書きたかった。
329:捏造戴国物語 1/5
10/10/02 10:55:34 Tw0d/jPc0
弘始10年春、8年に渡る戴極国の暗黒時代は終わりを迎えた。
失踪していた泰麒が諸国の援助により帰還して、2年目のことである。
内乱の渦中にあって深く病んだ泰麒は、再び蓬山まで運ばれ、今度は病のみならず角の治癒を許された。
全ての力を取り戻した麒麟と、玉座に還った王。
その後300年以上にわたり、戴極国は小乱はあれど、平和な時代が続いた。
かの大乱は遠い昔話となり、民は潤い、朝は整い、何も問題なかった。
だが、治世350年を祝う大祭が晴れやかに行われたその年の秋、
だれも予想もしていなかった事態が起きた。
「王気が―王気が……!」
常になく狼狽し、蒼白になった泰麒が正寝を飛び出し、衣服も改めずに
外殿に駆け込んできたのは早朝、まだ日も昇らぬ時刻であった。
「台輔!どうぞ落ち着いて下さい、一体どうなさったのです!?」
只ならぬ麒麟の様子に、正寝から追いかけてきた下官達が駆け寄ると、
血の気の失せた腕が取りすがってくる。
「驍宗様はどちらに行かれたのですか!?」
下官は困惑した。
「―失礼ながら、台輔に分からぬでは私共には……」
それは、麒麟には王の居場所が分かる等という一般論ではなかった。
王が即位した翌年より、泰麒は仁重殿ではなく王と同じ正寝で寝起きするようになってたが、
かの大乱の後、王と麒麟の関係は公私ともより密になった。
―要するに、おなじ臥室で寝ることも少なくない程の仲となっていたのである。
330:捏造戴国物語 2/5
10/10/02 10:56:18 Tw0d/jPc0
下官の言葉に、泰麒は激昂する。
「分からないから訊いているんです!どこか遠くに―王宮の外に、起たれたはずです。
だったら、だれも気づかないなんてことは―」
穏やかな顔以外見たことのない麒麟の豹変ぶりに、縋りつかれた下官が救いを求めて
集まってきた官達を見回した時だった。
麒麟と変わらぬ程に血相を変えた官が数人、駆けこんできた。二声宮の官達だ。
泰麒の姿を認めると、その中の1人が足元に転がりこむように駆け寄ってきて叩頭する。
叩頭するなり、官は絞められた鶏のような声で叫んだ。
「―禅譲にございます!!白雉が―白雉が落ちました!」
その場の全員が凍りついた。
張りつめた長い長い沈黙。
だれもが言葉もなく立ち尽くす中、泰麒が悲鳴に似た声で呟いた。
「嘘です…そんなことは……」
ありえない、そう言いかけて泰麒は絶句した。
叩頭している男に続いて駆けつけた官が、白いものを抱えていた。
あの大乱の際、8年間生き埋めにされても生きていた白雉。
王の死以外では殺せない鳥。
それが、官の腕の中で死んでいた。
泰麒はその場に崩れ落ちた。周囲の官が慌てて支えた腕の中、泰麒は呆然と呟いた。
「何故……僕は―王は、道を失ってなどいない……」
331:捏造戴国物語 3/5
10/10/02 10:57:10 Tw0d/jPc0
白圭宮が混乱の只中にあった。
冢宰と六官長が額を集め、この変異にどのように対するかを協議していた。
本来なら宰輔である泰麒もその場にいなければならないのだが、とてもそんな協議に
立ち会えるような状態ではなかった。
勝手な決定はせぬと冢宰に宥められ、泰麒は臥室に逆戻りさせられていた。
(―本当は、分かっていた。)
外の混乱が嘘のように静まり返った臥室の仲、天井を眺めながら泰麒はぼんやり考える。
今朝は、途方もない喪失感で目覚めたのだ。
特に何かの夢を見たわけではなかった。なのに、酷い動悸がして、凍える様な寒気と寂寥感を感じた。
なぜだろうと考え、今夜は王と同衾しなかった。その寂しさのせいだと自分に言い聞かる。
それでも不安が鎮まらないので、慌てて王気を探った。
だが、いくら探っても王気が感じられない。驍宗様の気配がない。
その瞬間、感情では理解したくなくても、本能が嫌と言うほど教えてくれたのだ。
―王は失われたと。
昨夜、王の臥室に行かなかったのは、王がそれを拒んだからだ。
強く拒まれたわけではない。ただ、まだ決済すべき書がある、先に休めと言われただけ。
それは決して珍しいことではなかったから、無理をせぬよう言葉を残して、大人しく引き下がった。
(―あの時、考えてみれば、驍宗様の様子は少しおかしかった。)
退出する間際、王はわざわざ呼び止めて、接吻をしてくれたのだ。
332:捏造戴国物語 4/5
10/10/02 10:58:11 Tw0d/jPc0
『どうされたのですか、驍宗様?』
くすくす笑って泰麒は問いかけた。珍しい、と思った。
『何少し、そなたと別れ難くてな』
そう言った驍宗の声は暗くはなかった。
だから、胸に抱かれたままで、その顔は見えなくとも、泰麒は不審を感じなかった。
『驍宗様は随分お腹が空いていらっしゃるようですね。
僕で良ければいつでも餌になりますが、明日どなたに恨まれましょうか?』
胸に抱かれたまま、卓上に積まれた書の山に目を遣り泰麒は訊いた。
『琅燦に一緒に怒られてくれるか?』
琅燦は王にも麒麟にも容赦がない。
一度など、これに印を押してからにせよと、書を持って寝所にまで入ってきた。
笑い含みの主の声に、泰麒は笑って言った。
『それは……怖いなぁ』
―そして、笑顔で促されるまま、王の居室を出た。
無論、王に真実求められたなら、琅燦の叱責など怖くは無かった。
毎晩だって王の傍にいたかったが、自分の我儘のために王の仕事を邪魔してはならない。
そんな勇気など、身体の関係を持って以来一度もなかった。
―でも。
(あのまま抱かれていれば、打ち明けて下さっただろうか?
―考え直してくださっただろうか?)
333:捏造戴国物語 5/5
10/10/02 11:01:54 Tw0d/jPc0
悲嘆に枕を抱いた時だった。枕の下に、乾いた感触を感じた。
引き出すと、それは手紙だった。
震える手で、畳まれた手紙を開く。
慕わしい文字が並んでいた。だが、その内容に呼吸が止まる。
『暗い衝動が最近、心に浮かんでどうにも抑えられぬ。
愚行を実行に移す前に、禅譲を決めた。
そなたとこの国を道連れにはできぬ。
新王を選定し、これまで同様、新しい朝の要となれ』
これはいつ置かれたものだろう。
きっと、昨夜自分が臥室に入った時には、もうあったはず。
―眠る前に、この手紙に気づいていれば、せめて諫めることができた。
その事実に、泰麒は呆然となった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
うわ―驍宗様ひでぇ(棒読み)。
続きます。
334:風と木の名無しさん
10/10/02 12:00:33 olwC7Sso0
おおおおおお!!
雰囲気が素晴らしい!続き待ってます!
335:光さす日まで 1/6
10/10/03 01:45:16 7folkYVBO
浄化ー。マス×盾…?思いきり過去捏造。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
三神がその噂を聞いたのは、一度や二度ではなかった。
夜の街に、時折ものすごい男が現れるのだという。
男といっても二十歳前くらいの少年で、暴力沙汰を起こしたりするわけではなく、
一見地味な風貌ながら、関わった相手が例外なく、まるで魅入られたように夢中になるというもっぱらの噂だった。
名前はもちろん、どこに住んでいるのか何をして暮らしているのか、知る者は誰もおらず、
ふらりとやってきてはその場で知り合う男とどこかに消え、
朝にはろくに話もせずに去り、一度関係した男とは二度と寝ないともいう。
三神には確信があった。あいつだ。あいつに違いない。
凄惨極まる縁で知り合い、息子とはいわないまでも、親類の子供を思うような気持ちで
見守ってきた、あの悲しい生い立ちを背負った少年に違いない。
三神は仕事柄少しずつ情報を集め、ますますその確信を深めていった。
三神は最近まで彼が暮らしていた施設に彼が入所してから足繁く通い、
彼が自ら背負い込んでいる重荷を少しでも手放すよう、心を砕いてきたつもりだった。
彼は自らを普通ではない、まともではないと言い切り、三神の手を取ろうとはけしてしなかった。
その時強引に手を取り、無理矢理にでも光の当たる場所に連れて行き、
闇に向かおうとする彼の心を彼が望まずとも救うべきだったのかもしれない。
三神は自分の臆病さを嫌悪した。
336:光さす日まで 2/6
10/10/03 01:47:14 7folkYVBO
仕事を早めに切り上げた三神は彼がよく現れるというクラブに向かった。
もちろん、初日に彼に会えるとは思っていない。
三神は培われた根気を総動員して、必ず彼にたどり着くつもりでいた。
暗く、うるさく、秒単位で空気が濁っていくような店内。それに顔を背けるほど三神は潔癖ではない。
スーツ姿で棒立ちの三神は明らかに異分子であり、客にぶつかられては無遠慮に睨まれるが
逆に黙って一瞥をくれるだけで相手はすぐに去っていく。
こういうことにだけ鼻が利くんだなと呆れながら、三神は店内をくまなく見回した。
その時。見慣れた背中がたちの悪さを隠しきれない男に伴われて部屋の隅へ消えていくのが目に入った。
白いTシャツにジーンズ。こんな店には不釣り合いの無頓着な服装。きょうび珍しい程の撫で肩。
三神の視界から、すべてのものが消え、すべての騒音が遠ざかる。
三神は客という名の障害物をかき分け、その背中を追った。
救わねば。今救わねば取り返しのつかないことになる。三神は彼が消えたトイレに駆け込んだ。
三神の目に最初に映ったのは、ピアスをした男の耳と、男の首に腕を回して男と舌を絡め合う彼だった。
337:光さす日まで 3/6
10/10/03 01:49:21 7folkYVBO
彼は、まるで三神が来ることがわかっていたかのように視線だけを三神にやり、
よりいっそう猥褻な音を立てて男とキスを続ける。
男はすでに興奮状態なのか、彼のTシャツに手を潜り込ませていた。
三神は男の襟首を掴んで、引きはがすように乱暴に後ろに引いた。
邪魔が入った男は当然のように激昂し何かを喚きながら殴りかかろうとする。
ああ、うるさい。三神は口の中で小さく呟きながら、男の顔の真ん中に拳をめり込ませる。
男が鼻血を噴き出しながらくずおれていく様を、彼は唇を光らせたまま眺めていた。
三神に、カズと呼ばれた彼は三神の運転する車の助手席に黙って座っている。
笑えばかわいくなりそうなその顔からは、今は何の感情も読み取れない。
「いつからだ」
三神が前方を見据えたままおもむろに尋ねる。
「尋問?」
「質問だ。いつからあんなことをしている」
「さあ。いつからかな。覚えてない。いつの間にかこうなっていた」
声変わりは迎えているが、彼…盾の声は、高いのに深い、独特のものだった。
盾はゆるりと車窓に目をやり、どこに連れて行く気?と呟いた。
「俺のうちだ。どうせ…誰もいない」
三神は盾がそれを嫌がるのではないかと思ったが、盾はふうん、と言っただけだった。
そして三神の横顔を上目遣いで見つめ、
「僕のこと、好きにしてくれてかまわないよ」
と囁き、身を乗り出して三上の耳たぶを軽く噛んだ。
338:光さす日まで 4/6
10/10/03 01:51:42 7folkYVBO
三神の家は何もなく、生活感が微塵もないものだった。三神にとって自宅は寝に帰る場所でしかなった。
そんな空間にすら盾は所在なさげに立ち尽くしている。
三神以上に盾は、家庭という要素をその身に持っていなかったのだ。
「風呂に入りたかったら入ってもいいぞ」
「風呂場でするの?別に僕はどこでもいいけど」
男と二人きりになる=セックスなのかと、三神の心は暗くなる。
「俺は別にお前と寝たいわけじゃない」
素っ気なく背を向ける三神に盾は小さく笑うと
「そうなの?僕は三神さんとしたいけどなあ」
と呑気にも聞こえる口振りで答えた。
三神が思わず振り向くと、盾は三神のすぐそばまで来ていて、
三神の後頭部に手をやるとその薄い唇を自分のそれで塞いだ。
盾は三神の口内を舌で存分に犯してからゆっくり唇を離す。
「ねえ、してよ三神さん。今まで試したかったこと、全部僕にしてくれていいから。
爪を剥がしてもいい。目を潰してもいい。毒を飲ませてもいいよ。
犬になって這い回れと言ったらそうする。足の指だって舐めるよ。
三神さんがしたいこと、全部僕にしてよ」
急に饒舌になった盾の体の奥から匂い立つ冷たく暗い色香に、三神はわずかに怯んだ。
これは、並みの男では太刀打ちできないだろう。三神でさえ、理性がぐらつく。
339:光さす日まで 5/6
10/10/03 01:53:23 7folkYVBO
「…カズ。やめろ。自分を大事にしろ。ちゃんと普通の暮らしをしろ」
「普通?」
盾の表情が一瞬だけ泣きそうに歪む。
「あなたがそれを言うのか。普通の人は悪いことをすれば罰を受ける。
だけど僕は罰を受けなかった。僕は普通じゃないんだ。
普通じゃない僕はどうすればいい?僕は壊されたい。誰からも大切にされたくない」
三神は盾を抱き締めた。盾は身をよじったが、それさえ押さえつけて耳元で囁いた。
「わかった。だったら俺がお前を壊す。お前に大切な相手ができるまで
俺のことしか考えられなくなるようにしてやる」
三神は覚悟を決めて、盾をベッドに引っ張り込んだ。
盾の全身に赤い痕が散る。至る所に口付けた三神は、盾のそれを口にしていた。
盾の声は高く低く響き、笑っているのか泣いているのかわからない顔になっていた。
限界まで攻めた後口からはなし、今度は後ろを指でしつこくなぶる。
盾は三神を急かし、叫びながらねだる。三神は盾の脚を割るとその身をねじ込んだ。
痛みに盾は陶然となり、三神を締め付ける。三神は顔をしかめてやり過ごしながら
盾をセックス漬けにすると決めたはいいが、自分が溺れそうになっていることに小さく苦笑した。
340:光さす日まで 6/6
10/10/03 01:55:06 7folkYVBO
「結局あの日三神さんは3回でしたね」
特製苺ミルクをストローで飲みながら、盾は謎めいた笑みを浮かべる。
「…カズは7回か」
三神も常にない、少し意地の悪い笑顔になる。
「ちょっと、いったい何の話だよ。そういや今日は記念日みたいなものか、って言ったきり2人とも黙るし」
駆動が横で面白くなさそうに口を尖らせる。
「ん?ああ、こっちの話」
盾は大人びた優しい笑みを駆動に向ける。
三神はそれを見やりながら、ああ、カズにも大切な相手ができたのだなあと
わずかな寂しさと感慨深さに顔を綻ばせた。
盾に巣くう闇は余りに深く重いが、この小僧ならやり遂げてくれるに違いない。
慕ってはくれたが、愛してはもらえなかった自分には結局できなかった、
盾の心に灯をともす大役を果たしてくれるだろう。
「おい、小僧」
わざと厳めしい顔つきで駆動をじろりと見る。駆動の顔がわずかに引きつる。
「カズは本気出すとすごいぞ。お前なんか気を失うだろうな」
意味がわからずぽかんとする駆動と目を白黒させる盾。
こんな2人を見守って生きることができればどんなにいいだろう。
三神は一瞬だけ強くそう思った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ああ、変な話になった。私は盾×鑑識なのでマスターは保護者感覚なのです。
341:捏造戴国物語2 1/4
10/10/03 09:36:24 uv7p0i5u0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
驍宗×泰麒、続きです。エロなし、ひたすら暗いです。
勝手に戴の宝重をどこでもドアに設定してしまいました。
「少しは、落ち着かれましたでしょうか?」
冢宰がそう言って泰麒の元を訪ねてきたのは、夕刻の事。
「……落ち着けるわけがありません」
言ったものの、すっかり冷静になっている自分に気づく。
自分はもはや驍宗のものではなく、まだ見ぬ新王のためのもの。
―だから、驍宗のことを想う心すら失っていくのだろうか。
麒麟の表情のない貌と、棘のある言葉に、冢宰は痛ましげに言葉を継ぐ。
「台輔。ご心痛は察するに余りますが、至急、瑞州州侯の座を何某かにお譲りの上、
蓬山に御戻りください」
泰麒はしばらく、冢宰の顔を凝視してから、言った。
「……その必要はないでしょう。冬至には戴に最も近い令艮門が開きますが、
それでもたった二月弱の間にどれだけの昇山者が集まりましょう?
蓬山で昇山者を待つ必要はありません。僕が自分で探します」
驍宗のように一度目の昇山者に王がいるとは限らない。
戴の冬は厳しい。王がいなければ国は荒れる。
王を失った国が何事もなく、無事に冬を越せるとは思えなかった。
可能であれば、本格的な冬を待たずに新王が立つことが望ましい。
―そんなことを考えられる程、冷静さを取り戻している自分が悲しい。
だが、冢宰は首を横に振った。
「無論、その件も理由ではございますが、先刻、蓬山から青鳥がございました。
至急、蓬山に御戻りくださいと。玄君より大事なお話があるとのことです」
342:捏造戴国物語2 2/4
10/10/03 09:36:55 uv7p0i5u0
転変し、雲海の上を全力で駆けること数刻、たどり着いた蓬山は夜だった。
凌雲山の頂に着くと、例によって玉葉、そして数名の女仙が待っていた。
獣形を解いた泰麒に衣服の世話した女仙達が引くのと入れ違いに、玉葉が口を開く。
「転変してまでとは、ご足労をおかけしたの、泰麒」
泰麒は玉葉を睨みつける。
「知っておられたなら、どうしてきちんと諫めて下さらなかったのですか!!
いえ―なぜ禅譲をお許しになったのですか!!」
青鳥が蓬山から白圭宮まで着くのに、少なくとも4日はかかる。
今朝青鳥を放ったのなら、その日のうちに届くはずがないのだ。
―今朝、王だけでなく、宝重が王宮から消えていたという。
驍宗は宝重を使って蓬山に行ったのだ。
宝重を使えば一瞬で蓬山と白圭宮を行き来できる。であれば、禅譲の前に、
人知れず驍宗が蓬山を何度か訪れていても不思議はない。
―その時に、何とか諫めてくれていれば。
激した泰麒に対し、玉葉は冷静だった。
「妾が止めて改める泰王でもあるまい。それに、妾には禅譲は妨げる権はない。
泰麒なら考え直すかと思って青鳥を飛ばしたが、間に合わなかったようだの」
泰麒が息をついた。―分かっている。
この人は所詮、天の代理。この人に何か主体的な行動を求めても無駄なのだ。
「……驍宗様に会わせて下さい。お連れして帰ります」
343:捏造戴国物語2 3/4
10/10/03 09:37:45 uv7p0i5u0
玉葉は眉を上げる。
「そなたが?」
「冢宰には話を通しています。ここまで来て、置いて帰るなどできません。
幸いなことに、僕にも宝重は使えますので、それほど体調を崩すこともないでしょう」
「……分かった。ついて来られるが良い。宝重と共にお返ししよう」
案内されたのは雲海の下、雲梯宮の一室だった。
扉のない堂の中央に、白い石造りの棺が置かれているのが回廊から見えた。
(―驍宗様。)
駆け寄りたかった。だが、堂に入った瞬間、死臭に思わず足が止まる。
―近づきたくない。怖い。
主なのに。唯一無二の主だった方なのに。
今すぐこの場を逃げ出したい程の嫌悪を感じる自分が悔しい。
足を止めてしまった自分に、玉葉が気遣わしげな目を向けるのが疎ましい。
その視線と、近づくなという己の本能の声を何とか無視して、棺の傍まで寄る。
白い棺の中で、白い袍を着た主が眠っていた。穏やかな顔に、少し安堵する。
「驍宗様は……苦しんで亡くなったのでしょうか?」
主の顔を見たまま呟くように訊くと、玉葉が答えた。
「禅譲の場合、いろいろな場合があるが、驍宗殿は安らかに亡くなったようじゃ。
国を乱さず長く統治されておられたので、天もせめてもの慈悲を下されたのだろう」
(苦しい最期で無かったのなら、これで良かったのかもしれない。)
国を治め続けることは、苦痛を伴う。多くの王が百年と保たずに失道するのがその証拠だ。
その苦痛から、苦しみなく解放されるなら、それで良かったのかもしれない。
自分が死んで王が死ぬ場合には、病に大いに苦しんで死ぬと聞いた。
―失道の病の苦しみは、麒麟も王も同じだと。
344:捏造戴国物語2 4/4
10/10/03 09:41:40 uv7p0i5u0
震える手で主の頬に触れてみた。ただただ冷たい。
あんなに温かかったのに。
遠い昔の冬の日、露台で抱き上げてくれた主の頬に手を遣った、幼い記憶が蘇る。
あの時の温かさが戻ることはもうない。そう思うと初めて涙がこぼれた。
「驍宗様、戴へ帰りましょう。……僕が、お連れしますから」
言って泰麒は、主の唇に最後の接吻を零した。
大葬が執り行われたのは、2日後のことだった。
だが、泰麒は葬儀には出席できなかった。
穢れを忌む麒麟は出席しないのが習わしであったのは元より、
体調を崩したことを理由に、黄医が臥室を出ることを許さなかったからである。
『台輔には今しばらく、ご休息が必要です』
そう黄医は言ったが、臥室を出られない程の不調ではない。
独り臥室に伏しながら、泰麒は苦く笑う。
だいぶマシになったが、この宮の者は皆、過保護だ。
数少ない例外だった琅燦でさえ、いつもの毒舌が無いという。
戴は今、突然の名君の死に、白圭宮だけでなく鴻基だけでなく九州全ての民が悲しみに沈んでいる。
だが、いつまでも沈んではいられない。
蓬山を去る際、葬儀が終わり次第蓬山に戻るよう言った玉葉に、泰麒は言い捨てた。
『そんな暇はありません。豊かな国を豊かなまま新王に引き継げと、
そう驍宗様は僕に仰ったのです。時間を惜しんでなどいられません』
そう、時間を惜しんではいられない。
葬儀が終わり次第、宮を出よう、と泰麒は決意した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
次はエロくするつもりです。
345:風と木の名無しさん
10/10/03 16:17:25 b2c1fnLk0
>>341
続きキター!お待ちしておりました
読み応えがあります。泰麒…健気だな…
次楽しみに待っています
346:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 1/8)
10/10/03 20:06:51 uv7p0i5u0
続けてすみません。重いのの反動で、唐突に軽いエロが書きたくなった。驍宗×泰麒です。
注)泰麒も驍宗様も天然で変態です。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
とある日本の貴金属買取店。
「あの、これを売りたいのですが」
そう言って店に入ってきたのは、中華風の着物のような奇妙な服を来た、長髪の少年。
「君、未成年じゃないの?」
店員の男は訊いたが、これでも49歳です、と少年はにっこり笑う。
「嘘をつくな、どう見ても二十歳になってないだろ。
―帰りなさい。子供の相手をしてる暇はないんだ」
男が手を振ると、少年は困ったような顔で抗議する。
「そんな、ものを見るだけ見てくれても良いじゃないですか」
そう言って、少年は勝手に椅子に座ってしまい、帰る気配がない。
男は溜息をついて、もう一度少年の身なりを確かめる。
良く見れば、少年は奇抜な服を着ているが、その布地は絹のようだし、細密な刺繍がされており、
袖口に縫いとめられているものは黒真珠のようだ。本物なら数百万は下らないだろう。
もしかしてすごい客かもしれない。男は少し少年に興味を持った。
「……なんだい、売りたいものって」
「これです」
そう言って、少年は小さな巾着袋を差し出す。
受け取った袋は見た目に反しずっしり重い。開けると、掌に載るような小さな
金色の丸い玉が1つ入っていた。
347:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 2/8)
10/10/03 20:08:15 uv7p0i5u0
「お、おい、これは……」
重量からして間違いない。男は背に冷たい汗が滴るのを感じた。
「少し不純物が混じってるかもしれませんが、純金です。500gちょっとあります」
「こんなもの、子供がなんで持ってるんだ!」
「だから僕は子供じゃありません。ちょっと若く見えるかもしれませんけど。
―どうしても現金がいるので、売りたいのです。100万くらいでどうでしょう?」
随分安い価格提示に、男の心が動く。本物なら、かなり美味しい話だ。
「……本物だって確かめられたら、買い取ってもいいぞ」
「ホントですか!良かった」
男はすぐさま店の奥の鑑定士に声をかける。
そうして、間違いなく本物であることを確認してから、男は少年に代金を渡した。
「良かった。これで目立たない服装ができる」
軍資金が出来た泰麒はさっそくユニ●ロに行って適当なTシャツとジーンズを購入し、
ごくラフな服装に着替えていた。換金では役立ったが、あちらの服は悪目立ちしすぎる。
「まずは図書館かな……」
本は借りられないが、必要な本をじっくり探す分には良いだろう。
泰麒は大きな県立図書館に足を向けた。
東北とか、北欧とか、寒い地方の産業で参考になるものが無いだろうか。
あるいは、文州のようなツンドラ気候でも可能な畜産業は無いか。
せっせと参考になりそうな本を探しては気になったタイトルとISBNコードをメモする。
ざっとリストができると、どんどん別の棚を漁っていく。
「景王が大使館がどうのと言っていたし、福祉関係や国際関係の本も探してみよう」
そうやって見ているうちに、あっという間に百冊以上のリストが出来上がった。
リストを手に、今度は本屋に向う。カウンターに行くと、泰麒は店員ににっこり話しかけた。
「在庫があるものだけで良いので、この一覧にある本を買いたいのですが―」
348:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 3/8)
10/10/03 20:09:15 uv7p0i5u0
翌日。
白圭宮には、泰麒の戦利品を目当てに延麒がお忍びで訪れていた。
「なんだ泰麒。本ばっかり買ってきたのか?真面目だなあ」
段ボール4箱分の本の山に、延麒は呆れたように声を上げた。
泰麒は苦笑する。
「1箱は景王へのお土産です。あちらの制度についてもっと
勉強しておけばよかったと仰っていたので。でも、本以外もあるんですよ」
泰麒は笑って、ビニール袋を手渡す。
「はい、延台輔にお土産です。安物ですけど、蓬莱の服です」
「おお、あんがと。さすが、気が効くな」
「それから、これは驍宗様へのお土産です」
綺麗に包装されてリボンをかけられた大きな箱を泰麒は愛しそうに撫でる。
「中身は何なんだ?」
「……秘密です」
何やら頬を染めて恥ずかしげな笑みを浮かべる泰麒に、延麒はこれ以上の
詮索はしないことにした。泰王と泰麒の関係は、なんとなく延麒も把握している。
泰麒は延麒の反応を気にした風もなく、さらにサンタクロースのような大きな袋を
どこからともなく(※傲濫が隠形したまま持っていた)引き出して卓に置く。
「あと、お菓子もいっぱい買ってきました。
驍宗さまと李斎に声をかけてきますから、一緒に食べましょう?」
349:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 4/8)
10/10/03 20:10:06 uv7p0i5u0
「蒿里、蓬莱はどうであった?」
そう泰麒の主が訊いてきたのは、夜、臥室の中でのこと。
この日の朝帰ってきた泰麒だが、朝は朝儀で、昼もなんやかやで主は忙しく、
残念ながらこの時間まで落ち着いて話す事が出来なかったのである。
「はい、三十余年も経つと、やはりかなり変わっていました。
見たことのない製品や技術も沢山ありました。当分はそうそう国を空けられませんが、
また機を見て行かせて頂いても宜しいでしょうか?戴を良くする参考になるやもしれません」
今回の旅のもう1つの目的は、家族の三十三回忌に、せめて墓に花でも手向けてくること
だったのだが、無論、泰麒はそんなことを敢えて主に言うつもりはない。
少し憂いを帯びた麒麟の顔に、驍宗は泰麒の髪を優しく梳いて言った。
「ああ。だが、延台輔のように、断りなく国を空けてくれるなよ。道中何があるか分からぬ」
「はい、分かっております。―ところで、驍宗様。驍宗様にお土産があるのですが」
泰麒はにこりと微笑んで、臥室の隅に置いておいた大きな箱を取り出す。
「私に?―空けてみて良いか?」
「……はい。すごく恥ずかしいのですけど、驍宗様に喜んで頂きたくて」
見れば、先刻まで落ち着いているように見えた泰麒の顔が、真っ赤に染まっている。
いったい何をくれるというのか、驍宗は期待に震える指で掛け紐を解き、箱を空けた。
数瞬の沈黙。
「……蒿里、これは何だ?」
驍宗には、中身の正体が皆目見当もつかなかった。
「あの……こちらでいうところの、張り型のようなものと、媚薬です」
絶句した驍宗に、泰麒は耳まで真っ赤になって蚊の鳴くような声で説明する。
350:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 5/8)
10/10/03 20:12:39 uv7p0i5u0
「あの……驍宗様。僕は、痛いのは、驍宗様のためなら、それは別に構わないのですけど。
でも、驍宗様は僕が痛がると、とてもすまなそうな顔をされますし……だから、
ちゃんと気持ちよくならないとと思って……」
言うなり、泰麒はガラガラと箱の中身を布団の上にひっくり返す。
「これは、電池といって、張り型の動力です。それで、この桃色の小さい張り型が、
ローターといって、入れたり当てたりすると振動で気持ち良くなるものだそうです。
それからこの太さが違うこの3つは、動く張り型で、細いのから順に使うと、
切れたりせずにうまく慣らすことが出来るみたいです。あと、これは効くかどうか
良く分からないのですけど、媚薬で、興奮して快感を高める薬だそうです」
機器のスイッチを入れつつ、泰麒は一息で説明して息を吐いた。
布団の上には、うねうねブルブルと踊る機器。
黙ったままの主を見上げると、驍宗はわなわなと震えていた。
「蒿里……こんなものをお前、向こうにいた時から使っていたのか?」
「まさか!……今回、初めてお店に行ったんです。それで、痛くないようにするには
どうしたら良いでしょうかと相談したら、これを選んでくれたんです」
どれだけ恥ずかしく、大変な思いをしたか思い出して、泰麒は遠い目をする。
当然のことながら、年齢は疑われるし、僕のご主人様へのプレゼントで、と言ったら、
何やら恐ろしい拷問器具をいっぱい並べられるしで、日本にはこんな恐ろしい世界が
あったのかと背筋が凍る思いをしたのだ。
―だが、これも主には言わない方が良いだろう。
無言のままじっと自分の顔を見ている主に、泰麒は恐る恐る訊いた。
「あの、驍宗様、ご不快でしたか?」
「……蒿里、本当にこれを使っていいのか?」
「勿論です。だって、驍宗さまに使って頂くために買ってきたんですから」
ぷっつん。
微笑した麒麟の顔に、驍宗は理性の糸が切れる音を聞いた。
「……どうなっても知らぬぞ」
351:風と木の名無しさん
10/10/03 20:13:05 Si+/SOWRO
>>341
続きwktk
352:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 6/8)
10/10/03 20:14:56 uv7p0i5u0
「驍宗様ッ…まだっ…まだ、ですか……ッ?」
泰麒は布団を強く掴み、身悶えしながら問う。
白い肌は全身すっかり桃色に染まり、快楽の涙にすっかり濡れた頬には、鋼の髪が張り付いている。
身体の中の卑猥な動きに合わせて震える身体は、もう限界に近いようだが、
機械にイかされるわけにはいかぬと思っているのか、必死に耐えている様がいじらしく、楽しい。
驍宗は圧でずり落ちてきたそれを、麒麟の秘所に再び深く押し込めた。
「ひッ……ぁあぁ―ッ!!」
強い刺激に目の前が白くなりかけた麒麟の雄を、驍宗は強く掴んで射精を止めてやる。
少し痛いだろうが、イってしまった方がこの麒麟には辛いことを、驍宗は知っていた。
麒麟はとろんとした目で驍宗を見上げて強請る。
「ぁあッ……早く…驍宗様っ……出ちゃう…出ちゃいます……!」
「まだ2本目だぞ蒿里。もう1本使って解さねば、また痛い思いをするのであろう?」
「でも……ッ!」
駄々をこねるように首を振る麒麟に、驍宗は笑む。
「お前がそんなに言うなら、次を入れてみよう」
驍宗は先刻押し込んだばかりのバイブを抜くと、1まわり太い3本目のスイッチを入れ、
一息に突き入れた。
353:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 7/8)
10/10/03 20:16:33 uv7p0i5u0
抵抗もなくするりと最奥まで納まったそれが、泰麒の中で暴れ回る。
「―!?ぁッ!…待…、驍、宗様っ、ス、イッチ…止め…っ!!」
最強状態でいきなり入れられたその刺激はあまりにも強くて、イキたくてもイケない
強い快楽に、泰麒は痙攣しながら身を捩るしかない。
「蒿里、すいっちとはなんだ?」
真顔で聞かれて、泰麒は気が遠くなるのを感じた。
―ああ、通じてない。電源、もだめ?どう言えば…
混乱した泰麒は叫んだ。もう機械はいい。主が欲しい。
「ッあ!も…驍、宗様ぁ…機械じゃなくて…様が……が欲しいです」
「蒿里、ちゃんといってくれぬと、どうすればよいか分からぬ」
うまく言えないのがもどかしい。泰麒は驍宗の雄を掴んで言った。
「いッ…入れて…ください!!」
驍宗は真っ赤に染まった泰麒の頬に、接吻をして笑った。
「良い子だ」
平静を装ってはいるが、己の麒麟の初めて見る痴態に、
すでに驍宗の雄ははち切れんばかりになっていた。
驍宗は泰麒の中で暴れ回っていた機械を抜くと、味わうようにゆっくりと、その身体に己を埋めた。
354:戴国振興計画(戴国捏造物語外伝 8/8)
10/10/03 20:17:55 uv7p0i5u0
一刻後。臥室の中には甘く気だるい空気が漂っていた。
泰麒は安堵していた。今日は痛くなかった。主の心配そうな顔を見ずに済んだ。
代わりに激しい快楽に翻弄されて、随分な痴態を演じてしまった気がするが、
それも大いに主を喜ばせたようなので、無論恥ずかしくはあるのだが、とてもホッとしていた。
充実した疲れに、そのまま眠りに落ちようとした時、驍宗が話しかけてきた。
「なあ、蒿里」
「……なんですか、驍宗様」
「この機械を戴の特産として輸出できれば、大きな利益が出ると思わんか?」
「……そうでしょうか?」
疑わしげに泰麒は返したが、主は確信を持っているようだった。力強く頷いて言う。
「……売れる。絶対に売れる。明日琅燦に訊いてみよう」
驍宗がそう言うなら、そうかもしれない。泰麒は微笑して言った。
「そうですね」
―驍宗の言葉通り、後にそれは戴の裏の特産品となったのだが、
それはまた別の話。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
琅燦なら作れる!
355:風と木の名無しさん
10/10/03 20:43:44 coZi8ryB0
>>341
戴話沢山ありがとうございました!
寒い国はそっち産業がいいよなっ!出来る!出来るよ!範に負けない産業国に!
356:風と木の名無しさん
10/10/03 22:02:37 I842ufKSO
>>315
目から汗が止まらなくなったんだぜ・゜・(ノД`)・゜・。
今年の某レースからこの2人が気になっていたのですごく嬉しいです
「俺」さんの回復と復帰を祈りつつ、「彼」さんの仏国での活躍に期待してます
357:風と木の名無しさん
10/10/03 23:03:33 MnCrTRus0
>>341
落ちに噴いたwwwwww
どこまでも王様だなあwww
358:初夏の匂い1/7
10/10/03 23:24:33 /bwMhM8FO
初夏の匂い
オリジナル。
電車待ちの人ら。
ずっとイチャイチャしてるだけ。
真枝視点
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス。
「ケイ」
ベッドの中心を陣取り、ブランケットを頭から被って丸まって眠る圭介の肩を揺する。
小さく呻いて、余計に丸くなる様子は本当に猫そっくり。
違うところは大きさくらいか。
セミダブルのベッドを独り占めして、幸せそうに寛ぎ始めた身体を再度揺する。
「圭介、遅刻する」
『風呂明日。帰って着替えたりしたいし、7時に起こして』
いつも予定より30分以上前から起こしてはいるが、毎度時間通りに起きれた試しはない。
「ケイ、10時から仕事だろ。着替えに帰るじか…」
ブランケットの中から伸びてきた手が腕を掴めば、有無を言わさず腕の中へと引きずり込まれる。
抱きしめられるのを慌てて胸板へと手をつき、辛うじて逃れて距離をとる。
ベッドへと座り込んだ際、ギシリと軋んだスプリングの音に、昨夜の情事がフラッシュバックする。
『そう、もっと見せて。見られんの、…大好きでしょ?』
背中をなぞる舌、尿道へと見えなくなる寸前まで回されながら入れられる綿棒、身じろげばリンと高い音を立てる鈴付き
359:初夏の匂い2/7
10/10/03 23:28:26 /bwMhM8FO
の首輪、黒い尻尾がついた細いけれども長いバイブ。
そしてバイブの横から無理やりねじ込まれた圭介の太いペニス。
ベッドの向かいに置かれた姿見には、尿道へと白い棒を抜き差しされながら、悦んで腰を揺らす自分の姿。
「ケイ…ッ」
初夏の爽やかな風が背中を撫でる刺激に、はっとして昨夜の記憶を奥へと沈める。
「…ン、ちょっ…、圭介!」
いつの間にか腰へと回されていた圭介の両腕。
ブランケットの中で圭介の左手が尻を撫で、右手が下着ごとスウェットを下げる。
「痛かった?」
ブランケットの中からようやく上げられる顔。
今時の若い子らしい、細く整えられた眉、厚めの唇。
何時もはキツそうな吊り目気味の眼も、寝起きの今はなりを潜めて年相応に見えなくもない。
ただ、尻を揉む手や、ペニスを摘んで裏筋を一舐めする様子はいただけない。
「は…ッ、ケ…スケ」
震える声を隠そうと、手の甲を口へと当て息を詰める。
丹念に尿道の先をくじる舌。
今更気にするくらいなら、昨日止めてくれれば良かったのに。
たっぷりと舌を絡めては、少し唇を離してわざと音を立てながら吸い上げられる唾液。
「…ケイ、時間…遅れる」
尻を揉むことから孔を探るように動きを変えた手首に、力の入らない手を添え首を振る。
昨日の夜に十分解されたそこは、圭介の指程度なら容易く飲み込み、痺れる甘さを脳へと送る。
逃げればギシギシと揺れるベッド。甘ったるいフェラに、昨夜の記憶。
初夏の日差しだけが涼やかに部屋を明るく照らして、
360:初夏の匂い3/7
10/10/03 23:32:32 /bwMhM8FO
あまりのコントラストに目眩がする。
「ここから行く」
巨大尺取虫がもぞもぞと暴れたかと思えば、脱ぎ捨てられるハーフパンツとタンクトップ。
ブランケットの中へと引きずり込まれて、濃厚にキスされ、後から焦らされながら入れられて。
「や……、ケイスケ…、バック…ヤだ」
コンドームもなく、濡らさずに入れる圭介のペニスは痛い。
ましてやバックから突き入れられれば、二発目ならともかく一発目には快楽よりも痛みが先立つ。
「痛いのも、恥ずかしいのも大好きでしょ?」
膝を開かせながら腿へと這う骨ばった指。
教えた癖に。
圭介以外でイケない体にした癖に。
「…ぁっ…、ケ…スケ、深ッ…」
くんと押し上げられる腰、硬いペニスにチカチカと目の前に星が散る。
シーツを掻いて逃げようとしても、肩と腰を押さえられて動けない。
「…スゲェイイ」
掠れた甘い声と共に首筋を舐める舌。
乳首を摘んで引っ張る指に、濡れた声が上がって枕を咬む。
ドロリと濁る思考。
痛かった事が気持ち良い。
ヌチヌチと重く湿った音を上げる結合部。
抜かれれば淋しさに締め付け、入れられるのは痛みに目眩。
けど欲しいのも何時だってこの痛み。
動物が交尾するのような体位に、頭の芯が熱くなる。
こんな体位でも感じる浅ましさに、込み上げる吐き気すら気持ち良くて、ただただ全てが恐ろしい。
「圭介…、ヤだ。…おかしい」
気が狂うくらい気持ち良くって、幸せで、倒錯的で、破滅的。
こんな姿を誰かに見られたら、今の生活は一瞬で終わる。
361:初夏の匂い4/7
10/10/03 23:37:13 /bwMhM8FO
いくら相手が成人しているとはいえ、一回り近く年下の青年との異常な性行。背徳的過ぎて、他人がもし同じ事をしていたら、心底軽蔑する。
それなのに気持ち良さの中心にはいつも圭介がいて、圭介も気持ち良くなってくれれば中に出して貰える。それが嬉しいだとか、せめて性別が違うならだとか、自分が抱く方なら、まだ幾つもの言い訳が出来るのに。
「顔見せて」
圭介の手が優しく頭を撫で、背中にキスされる。
枕から顔を上げられずに頭を振れば、膝ごと抱えられて腹の上へと乗せられて。
繋がったままで回される痛みに、上擦った声が上がる。
やめてやめて、意識が飛ぶから。
圭介を気持ち良くする前に、一人でイッてしまうから。
「可愛すぎ」
うっとりと細められた目で、圭介が囁きかけてくる。
息継ぎより早く擦られる内壁、キスで唇を塞がれうまく出来ない呼吸。
再びベッドに押し倒されて、激しく揺すられ、中で出されて。
自分が何時イッたかは知らない。
「だから拗ねんなって」
朝の圭介よりも更に丸くなって毛布に隠る。
慌ただしい朝の出発の合間、圭介が寝室へ戻ってきては機嫌を確かめる。
無理だと泣いて縋らせた癖に、昨夜に続いて朝から2度。
「帰ったらちゃんと座薬入れてあげるからさ」
抱き締めていたクッションを投げつける。
誰のせいだと思ってるんだ。
何でこんなにデリカシーのない男に惚れたんだ。
情けなくって涙が出る。
しばらく反応もなく、そろそろ立ち去るかと思った頃、ベッドを軋ませ、背後から抱き締められる身体。
362:初夏の匂い5/7
10/10/03 23:39:15 /bwMhM8FO
「…怒った?」
いかにも心配そうな声。
こんな時だけ殊勝に反省した素振り。
背後から、項や首筋へ点々と着けられる唇。
「…セーブ出来なくてごめんなさい」
甘えてくっついて、背中からぎゅうぎゅうと抱き締めて、待ての姿勢。
触れ合った場所から伝わる熱が、言葉に嘘偽りがないと気持ちを伝える。
「帰ってきたら、お腹に優しいご飯作るから、鍵開けてね?」
鍵くらい持っている癖に。
「…泣かれると本当に困るんだって」
機嫌を取る様に肩口へと埋められる顔。
仕方なしに許そうかと振り返る間際、
「もっと泣かせたくなるだろ」
ガツンと音がするくらい鳩尾へと肘を入れて、呻いている圭介をベッドから蹴り出す。
思えば随分と手癖も足癖も悪くなった。
偏に圭介からの影響か、元々素質があったのか。
玄関に向かって人差し指を水平に指し示して、短く告げる。
「仕事だ変態」
異論の声を上げる圭介を、冷ややかに見据えて再び無言で玄関を指差す。
犬の躾と同じで、甘やかしたらつけあがる。
それは犬、もとい圭介にも良くない。
せめて遅刻癖くらいをなくしてやるのが、年長者としての務めだ。
ベッドの周りを鼻を鳴らしてウロウロする圭介に、改めて玄関を指差して出勤を促す。
ふてくされた様に唇を尖らせて顔を寄せるのを、軽く睨んで見つめ返す。
「…にゃあ」
わざとらしい鳴き真似とニヤつく目に、カッと全身の血が逆流する。
あまりの事に、池の鯉さながら口を開閉するだけで、それに続く言葉が出ない。
363:初夏の匂い6/6
10/10/03 23:52:38 /bwMhM8FO
言わせたのは自分だろう、誰の趣味だ、変態。
何でも良いから反論すべき場面に、とっさに言葉が口から出ない。
固まってしまって動けない隙にキスで唇を塞がれ、二度三度と角度を変えて口付けられる。
思えばこの唇には随分騙されてきた。
いつまでもキスをしてくる圭介に、終わらせる為にも一度こちらから唇を押し付け返して頬を叩く。
「遅刻する」
何のために早く起こしたのか。
不服さを表しながらも渋々出て行く圭介を玄関まで見送り、再び重い腰を引きずりながらリビングに戻ってソファへと腰掛ける。
開けた窓から爽やかな風が家の中を抜ける。
昼から暑くなりそうな、爽やかながらも熱を孕んだ微風。
マンションの窓から見える、高い空へ沸き立ち始めた入道雲。
久々に味わう一人の時間。
数ヶ月前には考えた事もないほど騒々しい生活。
今更一人に戻れるとは思わないが、騒々しさごと受け入れるには独りが長すぎた。
幸せとはこんなにうるさかったのだろうか。
手元にある携帯のメールを見ながら、ぼんやりと父が生きていた当時のこと、母の事を思う。
母も今の恋人とは、こんな思いで家族になる事を考えたのか。
父が死んで、息子も手が放れて、寂しかったのだろうか。
ここ数年の母は、幸せだったのだろうか。
逡巡の末、こちらからはかけた事のない番号をリダイヤルする。
数度のコールの後、同年代のようにも聞こえる若い声。
「……祐一です。………いや、母に用ではなく………はい。その、……今度、酒でも…飲みに行きませんか。とうさん」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンガオオクリシマシタ!
ナンバリング間違えました_| ̄|○
ごめんなさい。
364:続・じゃじゃ馬ならし 前編 1/9
10/10/04 09:11:33 EPDpbx76O
>>285の続きで、20年位前の時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。エロありです
元作品が古いのにも関わらず、前回投下の際は反応いただけて嬉しかったです。
ありがとうございました。
またもや長いので、分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
道に迷っているうちに夜は更けた。
一夜の宿を求めて林の中に見つけた観音堂に、ふたりは入り込んだ。
月は明るく障子から光が差し込み、明かりを点けずとも目は利いた。
古いが大事にされているお堂らしく、幾つかのお供え物のうちに酒もあった。
観音様に手を合わせてから拝借して回し飲み、冷えた身体を暖めた。
中で火を炊く訳にいかないので、酒を手に入れたことはふたりに取って至極幸いだった。
ささやかな酒宴の後、離れて壁際に座った九慈真之介に、八坂兵四郎は声をかけた。
「仙石、なんで壁際に行くんだ。こっちで寝たほうが、隙間風が来ないぞ」
「いや、俺はここでいい」
壁にもたれて愛刀を抱いた真之介は、目をつぶって答えた。
「しかし、せっかく暖まったというのに……風邪をひくぞ」
「いいったらいいんだ、ほっといてくれ。寒くても、おぬしの側にいるよりましだ」
「ん?どうしてだ」
「……また手ごめにされちゃ、かなわんからな」
片目を開けて睨むように見つめ、真之介は不機嫌そうに告げた。
以前蛇に怯えたところを付け込まれ、悪戯心を起こした兵四郎に抱かれてしまったことを根に持っていた。
365:続・じゃじゃ馬ならし 前編 2/9
10/10/04 09:13:32 EPDpbx76O
「手ごめとは、ひどいなあ」
「ひどいたぁなんだ、ひどいのは、殿様だ!どう考えても、手ごめだろうが。俺に、あ、あんなことを……」
のんきな口調の兵四郎に憤った真之介は、段々小声になり、顔を真っ赤に染めた。
あの時兵四郎から受けた辱めを、まざまざと思い出したからだ。
「俺は、手ごめにしたつもりはないぞ。おぬしが蛇を怖がって、身体も冷やしていたから、ほぐして暖めてやりたかったのだ」
「て、てめぇ、ぬけぬけと……!」
「本当だからしかたない。まあ確かに、ちょっとやりすぎてしまったがな」
「ちょっとじゃないだろう、ちょっとじゃ!……もういい!言い争いなど、くだらん。俺は寝るっ」
あくまでものらくらと悪気のない兵四郎に呆れ、真之介はそっぽを向いて再び目を閉じた。
へそを曲げた真之介に、平四郎は苦笑した。
そして、あの夜のことを思い返した。
やんわりねっとりと撫でていじるとたちまち真之介の身体は熱くなり、妙なる嬌声を上げて身悶えた。
そんな彼を、心からかわいらしく思った。
そうするとたがが外れたように止まらなくなり、最後まで情を交わしてしまった。
無理をさせたことはすまなく思ったが、本当に手ごめにしたなどという気はなかった。
恐怖に震えて自分に縋り付く真之介の冷たい肌を、芯から暖めてやりたかったのだ。
真之介もまたあの時の自分の恥態を思い返し、さらに赤くなっていた。
幾ら蛇に怯えすくんでいたとはいえ、まともに抗うこともせず、友だと思っていた男に抱かれた。
色恋は不得手な上に、金が無いから滅多に女も買えない真之介には、久々の睦み合いだった。
366:続・じゃじゃ馬ならし 前編 3/9
10/10/04 09:16:30 EPDpbx76O
兵四郎は終始優しく、じっくりと丁寧な愛撫を施した。
女にも触れられたことのない場所をいじられ、あげくにとんでもない物を入れられた。
真之介はうろたえ兵四郎をなじりつつも、深い快楽に取り込まれた。
そんな自分が信じられなくて、たまらなく恥ずかしかった。
「なあ、仙石」
「……」
「仙石、こっちへ来い」
兵四郎の声は気遣いを含んでいたが、微妙な気まずさに真之介は無視を決め込んだ。
「真之介、こっちへおいで」
「……ガキみたいに呼ぶなっ」
あだ名ではなく名前を呼ばれて、思わず目を閉じたまま怒鳴った。
抱かれた時に兵四郎が、低く甘い声で名前を呼んできたことを思い出した。
その時と同じ、優しさに満ちた口調であることに、真之介は動揺した。
ふいに、背中に温もりを感じた。
驚いて顔を向けると、兵四郎が寄り添うように座っていた。
咄嗟に壁伝いに身体をずらし、真之介は叫んだ。
「なんだっ、殿様!何してる」
「何って、おぬしが来ないから、俺が来たんだ」
追うようにまた身体をくっつけて、兵四郎がとぼけて言った。
「別に、来なくていい」
「だが、こうしてくっついたほうが温かいだろう」
「い、いらん世話だ!こら、寄るなったら」
「なんだ、つれないなあ。仙石、そう言うな」
くっついては離れてを繰り返し、やがて角に行き着いた。
目の前が板壁になり、真之介ははっと後ろを向いた。
すると、抱えた刀ごと兵四郎に抱きすくめられた。
367:続・じゃじゃ馬ならし 前編 4/9
10/10/04 09:20:11 EPDpbx76O
「と、と、殿様!?なっ、何しやがる」
「仙石、蛇だ」
「……嘘つけ!その手に乗るかっ」
「はは、ばれたか」
当たり前だ、とぼやきながらも真之介は暗いお堂の中を見渡し、何もいないことを確かめた。
そして腕から逃れようと、兵四郎の胸を押して身をよじった。
「殿様、なんだ、なんのつもりだっ」
「うん、また温めてやろうと思ったんだがおぬし、けっこう温かいな」
「酒のおかげだ。余計な心配しなくていいから、あっちで寝ろ、殿様!」
「そうか。だが俺は、少し寒い」
「知るか!酒飲め」
もがくのを押さえながら兵四郎は真之介の身体を撫で、耳元に囁いてねだった。
「酒はもうなくなった。だから仙石、おぬしの熱を分けてくれ」
「いやだ、駄目だ。やらん、絶対にやらん」
触れんばかりに唇を寄せ、耳元に囁く甘い声音に、真之介はぞくんと身体を震わせた。
がっしりと腕を回した兵四郎は、真之介を捉えて離さない。
兵四郎の身体もまた熱くなっていて、包み込まれるような心地良さに、真之介はしばし抵抗を忘れた。
「仙石、胸がせわしく鳴ってるな」
「……おぬしが、おかしな真似をするからだ。もうあったまったろう、離せ、殿様」
「いや、朝までこうしていたいな」
「ふ、ふざけるなっ。なんで俺が、おぬしと……うわ、ま、待て、んんっ!」
兵四郎は笑って、喚きかけた唇に唇を合わせて塞いだ。
ふいを突かれて口を吸われ、真之介は焦った。
肩を強く抱き、頭を壁に押し付けるようにして真之介の動きを封じ、兵四郎は舌を差し入れ、酒の香りのする口内を味わった。
巧みになぶられ暴かれる口づけにぼうっとなっていた真之介は、唇を解かれてやっと我に返った。
368:続・じゃじゃ馬ならし 前編 5/9
10/10/04 09:21:58 EPDpbx76O
「きっ、貴様!悪ふざけも大概にしろ」
「いやいや、ふざけてるつもりはないぞ」
「じゃあ、なんでだ。この間といい、なんで俺に、こんな真似をしやがる」
「おぬしが、かわいいからだ」
「……ば!ばっ、馬鹿野郎!」
目を見つめて真っ直ぐ言ってのけた兵四郎に、真之介はうろたえた。
「前もそんなことを抜かして、俺のことを好きにしやがったが……それが本気なら、よっぽどの物好きか、頭がおかしい奴だぞ」
「そうか?思ったことをそのまま言ってるだけだが。まあ、物好きでも変わり者でもかまわんさ。俺はお前がかわいい」
「……まだ言うか」
「ああ、言うとも。仙石はかわいい。だから、仙石が欲しい」
「ばっ……!!」
また怒鳴りかけた真之介は、言葉を止めた。
わずかに高い目線で自分を見下ろす黒い眼は少し細められ、薄闇の中でも不思議にきらきらと光を纏い、唇は弧を描いて微笑みを浮かべていた。
穏やかで慈愛に満ちた兵四郎の表情に思わず見入ってしまい、真之介の胸はますます高鳴った。
呆けた隙に、兵四郎はまた口づけた。
真之介はびくりと身体を揺らし、抗うように兵四郎の肩を掴んで押したが、なぜかうまく力が入らない。
兵四郎はふたり分の刀を横に置き、唇を重ねたまま真之介にのしかかり、ゆっくりと押し倒した。
熱い舌で上顎や歯列を念入りになぞられ、翻弄される真之介は喉を鳴らして涙を浮かべた。
息苦しそうに呻く口内を、兵四郎は飽かず執拗に貪った。
真之介の手からは段々と力が抜け、弱々しく兵四郎の背中に腕を回した。
兵四郎は笑って、やっと離した唇を首筋に押し当て這わせた。
369:続・じゃじゃ馬ならし 前編 6/9
10/10/04 09:24:54 EPDpbx76O
袷に手をかけて開くと、浅黒い肌は赤味を帯び、鍛えられた胸はなだらかに波を打っていた。
首筋から喉元を舌でなぶりながら、兵四郎は両手を着物に差し入れ、胸や腹、腰や背中を丁寧に撫で回した。
「あ、あ……との、さまっ、ま、て、待てっ……」
「大丈夫だ、仙石。前よりも優しくしてやるから」
「い、いい!優しくなんか、しなくていいから……は、離せ、離して……んっ」
「いや、もう無理だ。真之介、お前を抱くぞ。心配するな、全て俺に任せろ」
「ば、かっ……殿様!あっ、う、あぁっ、やめ……」
尖った乳首を含みねぶられ、袴の上から中心をさわさわと撫でられると、真之介の悪態は止まり、覚えのある快感に気を乱された。
悩ましく身をよじる真之介を愛しく思い、兵四郎はますます愛撫する舌と手を動かした。
袴と下帯を取り去り、震える真之介自身をそっと握り込むと、途端に身体が跳ねた。
鮮やかな反応に微笑み、兵四郎はそそり立つ愛らしいものをいきなり口に入れた。
熱く濡れた感触にすっぽり包まれ、真之介は驚き戸惑った。
「う、あっ……!と、殿様……よせっ、馬鹿、なんてこと、あ、ふぅっ……」
「ん、お前のここが、あまりにも美味そうでな。実際、美味いぞ」
うろたえた真之介に、唇を離した兵四郎はしれっと答えた。喋ると先端に息がかかり、真之介はそれにすらびくびくと感じた。
「……馬鹿っ!し、しばらく、ふ、風呂、入って、ねえぞっ……あ、あっ」
「そうか、まあ俺も二日前に入ったきりだ。気にするな」
またも顔を股間に埋めた兵四郎に、真之介はしつこく怒鳴った。
370:続・じゃじゃ馬ならし 前編 7/9
10/10/04 09:26:32 EPDpbx76O
「殿様!やめ、やめろったら!う、き、汚ねえ、だろうが……ふぁっ、あ……」
「大丈夫だ。俺は、お前の味が好きだ」
「あ、味なんて、言う、なっ……あぁっ、ん、ふぅ、んっ……」
兵四郎はくわえ込んだ真之介を丁寧にしゃぶった。
鈴口を舌先でくりくりとくすぐり、幹や裏筋を丹念に舐め上げ、同時に右手で袋を揉みほぐした。
頬をすぼめてじゅぷじゅぷと出し入れすると、真之介は首を振って切なく鳴いた。
滅多にされない口淫に翻弄され、頭に血が上った真之介は荒い呼吸を繰り返した。
「はあっ、あっ、ん、くっうんっ、との……さま、あっ、やだ、だ、駄目……だっ」
「ん、仙石、いいぞ出しても。お前のなら、飲んでやる」
「い、いや、だっ……!馬鹿っ、だ、出す、もんかっ……あうっ」
「そうか?意地を張らなくていいのにな。ほれ、こんなに露が出てるぞ」
兵四郎は先走りを指で掬い、ぺろりと舐めた。
たまらなく淫らな行為を施され、真之介はますます赤くなった。
「……殿様っ!馬鹿、やろ……っ」
「じゃあ、こっちを使うか。痛まんよう、柔らかくしてやるからな」
「う、ふあっ、うわ、や、やめ……あぁ!」
兵四郎はまた露を掬い中指に塗り込めて、真之介の後ろにその指先を潜らせた。
探るようにわずかにうごめかせると、まだ狭い入り口はきゅうっとすぼまり、指を締め付けた。
「仙石、ひくひくしてるぞ。かわいいな」
「……こ、このっ、助平!へ、変なもん、いっ、入れんな、あぁっ……!」
「ふふ、まだ指だけだ。変な物はまだ、入れんよ」
「あっ、く……ぅ!はぁ、あ、との、さ……うあっ」
371:続・じゃじゃ馬ならし 前編 8/9
10/10/04 09:28:57 EPDpbx76O
兵四郎は一旦指を抜き、以前と同じように軟膏をたっぷり塗り付けた。
そして中指をあてがうと、止めようと腕に絡む真之介の手をものともせず、慎重にぐっと中に差し込んだ。
「あーっ!うぁ、や、やめろ、との、さまっ……!はっ、あ、あ……」
「もう入った。前より、入りやすかったな。動かすぞ」
「ひ、ああっ!や……だ、い、やだっ……殿様、と、のさ……ふぁっ」
軟膏が滑りを助け、指はちゅくちゅくと音を立ててまだごく狭い中を擦った。
兵四郎はふと思い付き、腰に締めたままの真之介の帯を空いた手で解いた。
纏った着物の前が開き、真之介の胸から平らな腹、そして息づく中心があらわになった。
青白い月明かりの中で、指を動かす度にしなやかに肢体が揺らめき、のけ反ってわななく様が見て取れた。
たまらぬ眺めに、兵四郎は引き締まった腰の線を唇でなぞり、指を増やした。
前よりもすんなりと入っていき、更に増やした指も後ろの口は貪欲に飲み込んだ。
「もう、三本くわえてるぞ。この前より、馴染むのが早いな」
「うっ、うる、せえ……っ!あぁ、あ、あっ、ふ……あ!」
「ん、ここか。ここが、感じるか?どうだ、仙石」
「う、あっ!あ、や……ひぃ、あぁっ、とのさ、ま……んあ、ああっ」
床に爪を立て、操られるままに悲鳴を上げる真之介の艶姿を見下ろして、兵四郎は熱くたぎるものを身の内に感じた。
372:続・じゃじゃ馬ならし 前編 9/9
10/10/04 09:30:37 EPDpbx76O
突いてやりながら、喘ぐ唇に吸い寄せられるように重ねかけると、真之介は兵四郎の顎を掴み口づけを阻んだ。
「な、なんだ、仙石。どうして止める」
「と、殿様……俺の、舐めたろ」
「それが、どうした」
「その口で吸われるなんざ、ご、ごめんだ……っ!」
「細かいことを気にするな。別に構わんじゃないか」
「いやだ、ぜ、絶っ対に、いやだ!」
兵四郎は苦笑しつつなおも唇を近付けたが、その顎を押さえた真之介は、顔を逸らして頑なに拒んだ。
大して身なりを気にしない癖に、意外に潔癖なところがある真之介に兵四郎は驚いた。
無理矢理にして本気で怒らせては、段取りが台無しになる。
だが高揚した身体は真之介の口を吸いたがっている。
どうしたものかと顔を上げると、祭壇の前に置かれた酒瓶が目に入った。
「仙石、ちょっと待っていろ」
「あ……っ!ふぁっ、とっ、殿様……!?」
指を引き抜き、兵四郎は立ち上がって真之介から離れた。
火照った身体を急に放り出され、真之介は驚き身悶えた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
またもやエロばっかりですみません。
全て仙石がかわいいせいなのさ……!
373:風と木の名無しさん
10/10/04 13:00:49 BptN+6QS0
>>364
若き日のシティーホール工事さんが目に浮かびますw
この調子で、「続続・じゃじゃ馬ならし」
「また又・じゃじゃ馬ならし」「新・じゃじゃ馬ならし」
なんてのも期待w
374:風と木の名無しさん
10/10/04 20:26:00 8mw7NqrlO
>>358
おぉ……。まさか電車待ちの続編が読めるとは……ありがとうございます!
今回も、めちゃくちゃ萌えました!
375:脱出0/2
10/10/05 01:13:48 cCh3cGyM0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| とあるゲームが元ネタ気付いても他言無用で
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 何気にネタバレしてるが気にしない
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ダッシュツシスギテうpヌシがコワレタ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
376:脱出1/2
10/10/05 01:15:41 cCh3cGyM0
「WELCOME…っと」
カチリと音がして、目の前の不思議な仕組みの木でできたカバの置物が口を開けた。
カバの口の中には一本の鍵が置かれている。
「よし、これが出口の鍵だな」
鍵を取りくるりと踵を反す。目の前の出入り口の扉を開ければ脱出完了。
最近はテレビでも知られてきた脱出ゲームだけど、流行る前から脱出ゲームに慣れていた自分には、テレビでは物凄く物足りないと、この部屋の主でもあるあいつに常々呟いていた。
そしてある日、あいつが僕にメールを送ってきた。
-大きな窓のある部屋に引っ越したから、遊びにおいで-
森が近くにある郊外の静かなログハウス。
『全部の仕掛けが解けるかな?』
そう言って、あいつはテラスの脇に車を止めて、脱出ゲーム用に改造した部屋の中に僕を閉じ込めた。
閉じ込められるのは何も初めてじゃない。
あいつの他にも、同じ様にリアル脱出ゲーム好きな人が何人もいて、その人たちに招かれては僕は部屋の謎を解いて脱出する。
極力部屋を汚さず、物を壊さず。スマートに脱出する。それが僕のポリシーだ。
そして、少し考えたけど、無事にこの部屋を脱出する事ができそうだ。と、そこでふと手に持った鍵を眺める。
「GETCOIN…?」
細い鍵の胴体に彫られている文字を見つけた。
もしかして、と思い再びカバの置物の前に立って仕掛けを動かすと、カバは再び口を開け、今度は金色のコインを出した。
「おめでとう、コインも見つけたね」
パチパチという拍手が聞こえて振り返ると、あいつが部屋の入り口に立っている。
「さぁ、テラスでアフタヌーンティでも如何かな?」
と、あいつがテラスを指すと、先程までは何も無かったテーブルにお茶の準備がされていた。
377:脱出2/2
10/10/05 01:17:37 cCh3cGyM0
いつの間にか辺りも暗くなってきて、あいつがついでにとディナーもご馳走してくれた。
外は寒くなってきたからと、昼間脱出した部屋に移動して、座り心地の良いソファーで飲みたかったワインを飲んでいたら、隣に座ったあいつの手が、僕の頬を撫でて顔を寄せてきた。
自然に僕は目を閉じて、あいつからのキスを受ける。
ワイン味のキスを繰り返しながら、あいつは僕の太腿に手を乗せてきた。
「全部の仕掛けを解いた御褒美」
太腿の手が、ズボン越しに股間を撫で回す。ああ、と声を上げると嬉しそうにあいつは、股間を揉みしだく。
「久しぶりだからもう勃起してきたね」
言葉にされて、僕はぎゅっと目を閉じた。
かわいいな、と囁かれながらズボンの前を暴かれ、下着の中に手を入れられた。
あいつのひやりとした手が、僕のペニスを掴んで直に扱き始める。僕は久しぶりに他人からされる感覚に頭を振った。
「あっ…いや…」
「嫌じゃないね、もうカチカチになって先走りも漏らしてる」
腰を浮かさせられて、ズボンも下着も足首まで引き下ろされる。その間も、あいつは厭らしい言葉で僕を煽った。
「こっちも触って?」
僕の手を取り、あいつの股間に導かれる。
膨らんだズボンの前に、僕の手は自然と膨らみを撫で、その下のあいつのペニスを思い出して唇を舌で濡らした。
「厭らしい顔」
僕があいつのペニスをズボンから引き出し、同じ様に扱くと、あいつは嬉しそうに言った。
378:脱出3/2
10/10/05 01:19:24 cCh3cGyM0
「一緒にイこう」
体を横に向け、お互いに荒い息を吐きながらペニスを扱き擦り付けあう。
ビクンと跳ねる程強い刺激に、あいつも声を上げる。
「あ、ああっ…イきそう、イく、ああ、あ、イく、イク!」
「イ、いく…イク…あ、ああ、ん、んん!」
ほぼ同時に僕とあいつはイった。
お互いの服が汚れたけど、僕の手の中のペニスはまだ熱く反り返っていて、イった余韻で体はすこしだるいけど、僕はあいつのペニスを頬張った。
「あ、おい!」
あいつの慌てた声が聞こえるけど、僕は構わずに亀頭をしゃぶりはじめる。
「御褒美をくれるんだろ?」
あいつを見上げながら問いかけると、あいつは満足そうに頷いた。
「いっぱいシてあげよう」
僕はフェラを止め、あいつの膝の上に登る。尻の間に宛がわれた熱に貫かれて、僕は何度も声を上げた。
-君がこの部屋から脱出できなければ、君を独り占めできたのにね-
間に囁かれたあいつの声が、酷く落ち着いていたのは、多分気のせいじゃない。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 色んな意味ではみ出ました
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
379:夜の中 1/5
10/10/05 02:27:17 YDnCkNcG0
生 ラクGO家 合点×焦点(灰)
薄暗い話
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
押さえた様に咳込む声を耳が拾う。その所為で目が覚めた訳じゃなかったけれど、重い瞼を持ち上げて、
ぼんやりとした視界の中で一番最初に気付いたのは、隣のベッドが空になっている事だった。
眼鏡、何処に置いたっけ。
手探りでベッドサイドを探って、指先に触れたそれを掛ける。
生活感のないホテルの部屋。真っ暗じゃないのは、カーテンが開けられているからだ。
起き上がりしなのシーツの摺れる音で、士のさんは漸く俺が目を覚ましたのに気付いた様だった。
「起こしたか?」
「んーん、勝手に起きた」
「ごめん」
「勝手に起きたっつうに」
窓際に設えられている、二脚のソファーと低いテーブル。その内の一つに腰掛けて、士のさんは
窓の外に広がる夜景を眺めながら煙草を吸っていた。横顔が何処となく寂しそうな気配を漂わせている。
また……なんかに捕まってんのかな。見てるこっちが身体に悪いんじゃないかと心配になる程考え込む癖を持ってる
士のさんは、時折眠れなくなるらしい。不眠と呼ぶ程頻繁ではなく、本当に時々らしいけれど。
「寝られなかったの?」
「そういう訳でもないんだけどな」
じゃぁどういう訳? なんて訊くのは野暮かな。
多分、思考をぐるぐるさせている内に寝そびれたんだろう。悩み事は一つじゃなくて、複合で襲ってくる。
症状が重なった風邪みたいに。だからって俺を起こす訳にもいかず、電気も点けずに独りでぼんやりしてたのかな。
馬鹿だな、起こせばいいのに。
380:夜の中 2/5
10/10/05 02:27:52 YDnCkNcG0
この人らしい妙な気遣いがおかしくて、ちょっと切なくて、感情が綯い交ぜになった微妙な笑いが零れた。
耳聡く聞きつけた士のさんが不思議そうに俺を見る。
「何?」
「いや、ちょっとね」
「変な奴」
「あんたに言われるとは光栄だな」
「俺が変だとでも」
「きついの分かってて壇士一門を選ぶマゾなんだから変でしょ」
「それもそうか」
「納得すんのかよ」
咽喉の奥で笑う士のさんの指先で煙草が静かに燃えている。
手応えがあるのかないのか今ひとつ図れない会話に、傍に行っていいのかも図れずに少し迷う。志のさんの纏う雰囲気が
拒絶してんのか触れて欲しがってんのか分からなかった。
起こしてくれりゃ良かったのに、と方向の違う八つ当たりをしたくなる。
そしたら、俺の事必要としてくれたんだなって分かるじゃん。普段分かり易い癖に、こういう時だけ読めないんだ。
考え事をしてたいんだったら、このまま大人しく寝直すけどさぁ。
窓の外は水槽の底を覗き込む様な深い夜。正確な時間は分からない。でも散々飲んだくれてそろそろ寝るかって
話になった時には完全に日付は越えていたけれど、空の感じからいっても、夜明けはまだ遠そうだった。
階層の高いこの部屋の分厚い窓硝子を通して入ってくる外の音はなくて、室内は静寂に保たれている。
士のさんを一人で置いて寝ちゃうのか、俺は。
つい先刻まで寝てたってのはこの際棚上げだ。この寂しい気配の中に志のさんを置き去りにするのは、何となく嫌だった。
「士のさん」
呼び掛けて、次の言葉が見つからない。士のさんはそんな俺を数秒の間黙って見つめてから、煙草を灰皿に
押し付けて揉み消すと小さく言った。
381:夜の中 3/5
10/10/05 02:28:27 YDnCkNcG0
「こっち、おいでよ」
「ん」
ほっとしながらベッドから降りる。つっかけたスリッパをぺたぺた言わせながら士のさんの横を通って
対面に向かおうとすると、手を引かれた。
見上げてくる目が無言でねだってくるけれど、自分から乗っかってやるのは気恥ずかしいから、何っと視線で返す。
士のさんはもう片方の手でぽんぽんっと自分の太腿を叩いた。やっぱり乗れってか。
人恋しかった癖にねだり下手さも、俺を起こしも出来ない気弱な優しさも、困った事にいとおしい。
惚れた方が負けだと口の中だけで呟いて、言いなりになるのは癪なんだけどって表情を作って膝の上に
横座りに乗った。腰に回った手がそっと抱き寄せてくる。
「これで良かった?」
「うん。ありがとな」
「あんたさぁ、甘えるんだったら最初から起こせよ」
「でもなぁ、お前、気持ち良さそうに寝てたし。見てて憎らしくなる位にさ」
「人の寝顔まじまじ見てんじゃねぇよ」
「見るだろ、そりゃ」
「だから見るなって」
あー、これって端から聞いたら完全に睦言のレベルだよな。俺、膝の上に乗っかっちゃってるし。
もたれちゃってるし。でも違うんだよねぇ。弱々しいシグナルを必死に拾う。
「見るってば。翔ちゃんさぁ……死んだみたいに寝てるし」
言いながら士のさんは僅かに唇を尖らせた。
馬鹿な想像してんじゃねぇよ……とは笑い飛ばせない。この人は置いてかれた人だから。
言ってから、しまったと士のさんは目を伏せる。晒すつもりがなかった言葉を聞かなかったフリは
してあげられなかった。
大体さー、士のっちが悪いんだよ。捨てられた犬みたいな顔すんだもん。だたでさえデフォルトが疲れてる人だし、
ちょっと考え込んで目を伏せただけで、何かに憂いてるみたいに見えるし。実際寂しくなっちゃってるみたいだし。
382:夜の中 4/5
10/10/05 02:28:59 YDnCkNcG0
手のかかるおっさんだな、ほんと。
いつもなら撫で付けられてる前髪が今は軽く降りているから、指先でそれを払って額に唇で触れる。立ってりゃ
俺の方が十センチとちょっと背が低いけど、この体勢なら頭ごと抱いてあげられる。
髪を抱きながら、こめかみに、瞼に。ゆっくりと触れていくと、士のさんがぼそりと呟いた。
「……お前に優しくされんのに慣れてないから、ドキドキするわ」
「やめようか?」
「いや、やめないでよ」
「だったら喧嘩売んなよ」
目を眇めて顔を覗きこんだら、ごめんって笑う。軽く上げられた顎。唇が合わさるまでの数センチ。夜の中に
閉じ込められても、俺も士のさんも素直じゃない。駆け引きというには足りない間は、どちらから仕掛けるのかの
探り合いだ。
そんな事しても何の意味もないのにね。手の内というならば、とっくに晒してしまっている。
だったらこの何秒かも勿体無くて、自分から唇を重ねた。
啄ばんで、啄ばまれて、徐々に時間をかけていく。お互いの薄い皮膚が同じ体温になるまで、ゆっくり、ゆっくり。
腰に回ってる士のさんの手に少しだけ力が入る。逃げないよ。俺だってこうしていた。混ざり合う体温の中に、
士のさんの不安も溶けちゃえばいいのに。臆病で不器用なこの人は、心の中にある憂慮を曝け出せやしない。
人当たりの良いフリをしてるのにね。今俺の前で少し泣きそうな顔になったのは、この人が俺を自分のテリトリーに
入れているからだ。だからね、いいよ。あんたの気の済むまでこうしてる。離れない、傍に居る。口に出しては
言わないけれど、伝わってるって知っている。朝になりゃ、きっと何もなかった顔をして笑うんだろう士のさんが
預けてくれた弱い部分を、出来るだけ優しく抱いてやりたい。
掠れた声で士のさんが言った。
「俺……何でお前とこうなれたんだろう、って、時々考えるよ」
「それって良い意味? 悪い意味?」
「俺には良い意味。お前にゃ……どっちだろうな」
383:夜の中 5/5
10/10/05 02:29:30 YDnCkNcG0
以前、高座の上で冗談めかして言われた言葉がある。『翔ちゃんの婚期が遅れているのが私の所為だというのは、
分かっているんですけれど』。そりゃそうだよね。でもあんたの所為じゃないんだけどな。
余計なもの背負い込んでんじゃないよ。馬鹿だな。俺が決めたんだよ。反論は山程湧いたけれど、
どれもこの人にぶつけても仕方がないものだ。言った所で背負ったものは軽くならない。
必要なのは反論じゃない。
こつりと額をぶつけて目を覗き込んだ。夜の闇を溶かし込んだみたいな真っ黒な目には俺だけが映っている。
「好きだよ、あんたのそういらないものまで自分のみたいに考え込んで早死にしそうな所も含めて」
「後半余計だろ」
「だからまぁ勝手に考え込んでくれてていいんだけど、後悔する日がきたら自分でやるから、あんたは
手出ししないでよ」
「……うん」
「士のさん、すきだよ」
これ以上余計な事を言わせない様にと、もう一度口づける。
落語の世界なら望めば烏が鳴いて夜明けを連れて来てくれるんだろうけど、分厚い窓硝子はその声を通さない。
カラスカァでは夜が明けない。烏に押し付ける気もなかったけどさ。
淡いままのキスを繰り返しながら、この時間をたゆたう。切なくても、寂しくても、士のさんとなら構わない。
だから二人、夜の、中。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
合点の発言は本当に言ってた。
普段の仲良しっぷりには本当にnrnrしてしまう。けしからんもっとやってください。
384:続・じゃじゃ馬ならし 後編 1/8
10/10/05 08:54:41 //U3ZXmhO
>>372の続き、20年位前の時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。エロありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
兵四郎は酒瓶を手に取り、耳元で振った。
かすかに水音がしたので、口を付けて傾けた。
わずかに残っていた酒が流れ込み、口内を隈なく濯いでから飲み込んだ。
空の瓶を置いて戻り、荒く息をつき横たわる真之介の身体と頬を、優しく撫でた。
暖かい掌の心地良さに、真之介はほうっと甘い吐息を漏らした。
「仙石、まだ少し酒があった。口を濯いで消毒したから、いいだろう?」
「……本当か」
「本当だ。ほら、匂いがするだろ」
吹き掛けられた息には、確かに強い酒の香りがした。
「お前の味はもうしない。なあ、だからいいだろう、仙石」
「だ、だから、味とか、言うなっ」
「吸ってもいいか?」
「……勝手にしろっ」
許された兵四郎は真之介の顔を両手で包み、嬉しそうに口づけてきた。
同時に広がった酒の味と、絡められた甘い舌にくらくらとしながら、真之介は兵四郎の口づけに応えた。
兵四郎はねっとりとしつこく丁寧に口内をなぶり味わいながら、両手を真之介の脚にかけて大きく開かせた。
かたわらに放っていた真之介の袴を丸めて、腰の下に差し入れ浮かせた。
名残惜し気に唇を離し自分の袴を下げて、痛い程たぎった高ぶりを取り出した。
入り口をつつくと、真之介は身をよじった。
兵四郎は笑って、軟膏を自身に塗り付けた。
385:続・じゃじゃ馬ならし 後編 2/8
10/10/05 08:56:09 //U3ZXmhO
「真之介、俺が欲しいか」
「……っ、く、くだらんこと、聞くなっ」
「ふふ、そうは言っても、こっちは素直だぞ。いい子だな、今、入れてやる」
「ばっ、ば……かっ!う、あっ!は、あ、あああぁっ……!」
淫らにうごめく口を指で押し広げ、兵四郎はぐぐっ、と突き入れた。
灼熱の杭はじわじわと侵入し、真之介はその熱さと太さをまざまざと感じた。
「はあっ、ん、ああっ、との、殿様……ふ、あ、あっ」
「真之介、相変わらず熱いな。ぴたりと吸い付くようで、気持ちがいいぞ」
「くぅ、うるっ、せえ……!ひ、あぁ!うっく、あ……ふぅっ」
両脚を肩に担ぎ、深く繋がったままで、兵四郎は罵倒する唇をまた塞いだ。
手は胸や担いだ太股を摩り、馴染むまであらゆる場所に愛撫を与えて慰めた。
やがて内壁は兵四郎に纏わり付き、締め上げ始めた。
真之介の変化にほくそ笑み、兵四郎は緩やかに抜き差しを始めた。
「あっ、ま、待て……うあっ、はぁ、あぁ……はぁあっ」
「真之介、気持ちいいか?俺はもう、とろけそうだ」
「ふぅ、く、あっ、との、さ、ま……あっ、あ、ひぁ、あっ!」
くぷりくぷりと音を立てて突かれる度、真之介は細かく高いよがり声を上げた。
力が入らない手の指に指を絡めて床に縫い付け、兵四郎は上から突き刺すように真之介を甘く責めた。
小刻みに腰を動かしながら、震える唇や首筋を吸い舌を這わせた。
爛れるような悦びに涙を浮かべた真之介はもっと快楽を欲しがって、兵四郎の動きに合わせて疼く秘所に力を込め締め付けた。
386:続・じゃじゃ馬ならし 後編 3/8
10/10/05 08:57:12 //U3ZXmhO
「ああ、真之介、なんて具合がいいんだ。極楽に、いるみたいだ……ふうっ」
「あ、ひっ、あふぅっ、殿様、も、もっと……あっ、んあ、は、んんっ」
「真之介、兵四郎だ。兵四郎と、呼んでくれ」
「あぁ……あっ、へ、へい、し、兵四郎っ……んっ、へいし、ろ……」
「もっとだ、もっと呼んでくれ、真之介……!」
早められた突き上げにがくがくと身体を揺さぶられ、恍惚となった真之介はひたすらよがって鳴いた。
頭には霞がかかったように何も考えられず、耳元で告げられた兵四郎の願いに素直に答えた。
名前を呼ばれて喜びに溢れた兵四郎は、ますます優しく激しく真之介を貪り快感を与えた。
「ふぁあっ、あぁ、へ、兵四郎……も、うっ、もう……あうっ」
「んっ、真之介、出そうか?」
「あっ……で、るっ、もう、出る……あぁ!」
「わかった。お前の手ぬぐいを、借りるぞ」
「うぁっ、あ、くぅあっ、あ、ああぁー……っ!」
「う、しん、のすけ……!」
兵四郎が前を手ぬぐいで包むと同時に、真之介はその中に欲を放った。
急激にきつく締め上げられた兵四郎は低く呻き、抜く間もなく真之介の中で達してしまった。
最奥に叩き付けられた兵四郎の熱いほとばしりを感じ、真之介はびくびくと身体を跳ねさせた。
肩から脚を下ろした兵四郎は、真之介の残滓を拭き取り、衝撃にぶるぶると震える身体を繋がったまま抱きすくめた。
「あ……あっ、はぁ、はっ、うぅ……」
「真之介……大丈夫か?」
「と、殿様……よくも、な、中で、だっ、出しやがったなっ……」
「うん、咄嗟に抜くことが出来なかった。許せ。だがそれもこれも、お前があまりにも絶妙に締め付けるからだ」