モララーのビデオ棚in801板60at 801
モララーのビデオ棚in801板60 - 暇つぶし2ch148:風と木の名無しさん
10/09/20 12:34:48 /rwwTRsi0
【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】
スレリンク(mitemite板)l50

創作発表板に全年齢向けのスレができたようなので、一応、お知らせしてみる。

エロ成分低めの作品はここに投下しても良いかも。

149:浄化 1/3
10/09/20 16:36:59 fACRvBBsO
ドラマ浄化 マス鑑だけど盾もいます。3人で7話目 
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

1.

彼に出会って、自分の人生に違う風が吹いてきた。
駆動は最初、そう考えていただけなのに。
起きている時間のほとんどを彼のことを考えて過ごし、眠っている間に彼の夢を見ることを願って体を横たえる。
 
仕事に行けば当たり前のように彼は手の届くところにいて、触れてみたいと思う気持ちが強くなるのを止められない。
偶然に手が触れてしまった時、すぐに手をひっこめないでいてくれたという、そのほんの数秒の出来事に、駆動は震えた。
小さな希望が心の中で爆弾になるのに時間はかからなかった。
その抱え込んだ爆弾を胸の奥からつかみ出して見せずにはいられない。
薄暗い倉庫でささやくように話をする彼を見つめながら、駆動はついに言葉にしてしまった。

「初めてのときは盾さんがいい」

散々心の中で逡巡して出た言葉だったけれど、そこに至る紆余曲折はわかるはずもなく。
駆動の突然の告白に、彼はまぶしそうな目をしたまま黙っていた。

「あ、次に誰かに行くからその前にって言う意味じゃなくて、もちろん盾さんが最初で…最後っていう…」
「ダメだよ」
「え?」

ちょっと息を吸ってからうつむいた彼が、それでも駆動に十分聞こえるように言った。

「それは出来ない」

彼からのはっきりした拒絶に「盾さんのことあきらめないから…」と返したつもりが、それは掠れて声にならなかった。


150:浄化 2/3
10/09/20 16:46:43 fACRvBBsO
2.
見上はその長身を折りたたみ、カウンター越しに彼の顔を覗き込んだ。
久しぶりのキスをせがむかのようなそのしぐさに、彼は心得てストローを唇から離し、唇に残ったミルクをチロリと舐めとる。
一瞬見せた舌先が、了解のサインに思えた。
いいですよ、僕もそんな気分です、と。
「じゃあ時間を作ってやらなきゃな。悶々としてミスでもされちゃかなわん」
見上が思いやったとき、その当の本人は柄にもなく遠慮して、店の扉の向こうに佇むばかりだった。
==========
「盾さんとずっとこうしたかった」
思いがけず抱きしめられた心地よさと幸福感に酔ったようになって、駆動は身体を擦り付ける。
「ダメだなんて言わないでよ」店の外の薄暗く狭い路地で、駆動にしたいようにさせて、彼は微笑んでいるだけだ。
じれったいと思っているうちに、唇が頭におりてきたのがわかった。
彼は駆動のつむじにキスしてささやいた。
「ね、マスターにしてもらおっか?」
はっとして駆動は顔を上げ、彼を見あげた。
突然、駆動は気付く。
熱を持っているのは自分だけだということを。
すぐにまた抱きしめられたので、確かめようと覗き込んだ彼の瞳が見えなくなった。
「ダメ…なんだ」
肩口に額を擦り付ける駆動の頭を抱え込んで、彼はつぶやいた。
次の瞬間、おいでと繋がれた手を振りほどく理由を駆動は持たなかった。
==========
背中の傷を見られることに躊躇はなかった。
なのにマスターは、脱ぎ捨てたシャツを拾って駆動の背中からそっと掛ける。
なんだか彼に売り飛ばされたような思いがしていたのに、引き渡された相手に優しくされると、泣きそうな気分になる。
だから駆動は言った。
「盾さんも、一緒にいてよ」

151:浄化 2B/3
10/09/20 16:53:58 fACRvBBsO
2B.
最初の衝撃は通り越し、身体の奥で受ける見上の熱の快感に耐え切れなくなる。
立っていられなくなって、くうん、と鼻の奥で声を出すと、彼の手の平が頭の後ろをそっと包み込んで自分の胸に引き寄せた。
心の中でふくらんだ思いが行き場を失くし、駆動の身体を駆け巡る全身の血が逆流を始める。駆動の髪に指を絡めながら、彼は見上を見つめ続けた。
背中から駆動を蹂躙するのに忙しい見上も、彼から視線をはずさない。
その強い視線にまっすぐ応えながら、彼は引き締めた自分の唇をゆっくりと舐めた。
それを合図にしたように、見上が盾の唇を求める。
猫がミルクを舐めるような音をわざと立てながら、彼は見上と舌を絡ませた。
みるみるうちに上気して、赤味を帯びていく彼の胸元に駆動は頬を擦り付ける。
「盾さん、盾さん…盾さん…盾さん、盾さん…」
見上は長い腕を伸ばし、駆動の身体を間に挟んだまま、ぐいと彼の腰を抱き寄せた。
自分の高まりが上を向いたままで彼の腹に押し付けられた瞬間、駆動はうめき声を上げて自らを解放する。
2、3度震えてからのけぞるように駆動が見上の胸にもたれかかったのを機に、彼はそっと身体を離して見上に引き渡す。
喉元まで飛び散った駆動の精がゆっくりと流れていくのを、彼は気にもしなかった。
唇は濡れて光り、首筋には見上の唇が残した跡がくっきりとその色を主張している。
見上にまだ身体を揺すぶられながら、駆動は驚くほど艶やかになった彼の顔を、いつまでもうっとりと見ていた。

152:浄化 3/3
10/09/20 17:00:31 fACRvBBsO
3

本当のところ、マスターは俺の身体を使って盾さんとやってる気分だったんだろうなと駆動は思った。
けれど、不思議と惨めな気持ちにはならなかった。

『最後までちゅーしてくれなかったけど、ずっと抱きしめてくれてたのは盾さんなんだから』
#それに感情はさて置き、見上との行為がたまらなくよかったことにも、駆動は気がついていた。

さっきまでの出来事を夢のように思い出しながら、駆動は照れてちょっと笑った。
それからすぐに、やばい、また泣きそうとうつむく。
ラーメン屋のカウンターなのに、一人でアップダウンしている駆動を気にかける様子もなく、彼は食べ続けている。

「俺は、盾さんに救われた」

思い切って駆動が声にすると、彼はいつものほほえみ顔で「のびちゃうよ」とだけ言った。
そのおだやかな横顔にほっとして、駆動は鼻を「すん」と鳴らした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
盾さんは天使だからね。E・Dにしてごめんよ


153:風と木の名無しさん
10/09/20 22:16:03 LFq9QmQb0
>146
GJです!えもお疲れでした!その曲切ない・・・!

154:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 1/9
10/09/20 22:18:04 xmiOPaQC0
キャシアス+シーフォンという試み。
相手が賢者の弟子なら、同じフィールドなので真っ向から楯突くけど
全く別のジャンルなら違った方向からのアプローチもありえるかなと。
シーフォンの病気全開で17世+魔将フラグな表現があるのでご注意下さい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

遺跡の最下層に位置する大廃墟の中心、更にその地下。
四つの秘石によって進入を許されたその墓所には、
単に瘴気と呼ぶことすら憚られるような濃く暗いもので満ち満ちていた。
息をするだけでも肺に圧力が掛けられているような感覚に何とか抗いながら、
キャシアスたちは注意深く歩を進めていった。
手元に掲げた玻.璃.瓶の光が、青白く、凄味を持って
通路の宝飾や壁画を照らし出している。
明るい陽の元で見れば美しいかもしれないそれは、
今はただおぞましい空気の一部分でしかない。

「キャシアスさま、ご注意なさって下さい。
 この空気……まるで、感覚が狂わされてるみたいです。
 あちこちに色んな気配があって……」
「空間そのものが、魔力を保持して循環させる力場になってるみてぇだな。
 おそらく、この墓所全体が何かの呪術的な装置なんだ。……胸糞悪ぃ」

そう言う二人の顔も、光加減のためか別の理由のためか、どことなく青白く見えた。
襲ってくる魔物も見た事がないものが多い。
地上のそれよりもずっと手ごわい闇の塊のようなものを切り捨てながら、彼らは更に進んだ。
玄室と移動用の通路を交互に行き来しながら、三つ目の短い階段を下りる。

そのフロアの壁や天井は、上層よりも更に多くの壁画と碑文で埋め尽くされていた。
長い廊下には神話の風景が所狭しと描かれている。
しかし細かい装飾やレリーフたちは、いかにも何かの仕掛けが含まれていそうではある。

155:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 2/9
10/09/20 22:19:41 xmiOPaQC0
用心しながら廊下を進むうち、ふとキャシアスは後ろから聞こえる足音が
遅れがちになってきていることに気がついた。
振り向くと、すぐそばのフランの背後から更に数メートルの距離をおいて
シーフォンが壁に手を付いている。
パーティに付いてきてはいるようだが、その歩みは普段より遅い。
どうしたのかと尋ねるとシーフォンはすぐに壁から手を離し
「なんでもねぇよ」と言った。
しかし壁から離した手は頭痛のときのように彼のこめかみへと向かい、
顔色も心なしかさっきより悪いようだ。

「あまり離れない方がいいですよ。はぐれたりしたら大変ですから」
「うるさい。わかってる」

(鈍感な奴が幸せだってことは、死者まみれの宮殿で嫌というほど思い知ったからな)

ガンガン痛む頭と、呼吸をするたびに吐き気を増してくる胸を押さえながら
シーフォンはすり足で二人の後を追った。

少し行くと、高い天井を持った大広間へと出た。半円状の暗い天井に星図らしきものが書き込まれている。
星座を作る点と線たちは、キャシアスたちは夜空に見た事がないものばかりだった。
どこか別の土地の夜空なのだろうか。あるいはこの墓所に眠る者たちが生きていた時代の。

「……ちょっと待て」

注意してそこを通り抜けようとしたとき、最後尾のシーフォンが前の二人を呼び止めた。

「何か書かれてる。単なる神話じゃないな……」

中ほどの壁にはめられた石版と、そこに刻まれた碑文にシーフォンが見入っていた。
彼は振り向きもせず、無言のまま右手を後方に伸ばす。
キャシアスがその手のひらに玻.璃.瓶を乗せてやると、
シーフォンはそれを碑文へと近づけてますます真剣な眼差しを注いだ。

156:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 3/9
10/09/20 22:21:31 xmiOPaQC0
「『四つの秘石、および輝きのイーテリオについて』……。
 伝承?いや、予言の類か……『大河流域世界の統治者にして…」

手にした玻.璃.瓶で碑文を照らしながら、シーフォンはゆっくりとそれを読み上げていった。
淀んだ魔力が充満したこの場所で、まるで詠唱のような不思議な響きを持ったその言葉は
連ねられるたびに何かの術式が発動してしまいそうな不安を後の二人に与える。
その二人が背後から見守る視線を気にも留めずシーフォンは一文字一文字を解読していった。

「『……時により形を変える。そして帝国の永続を願う呪文が刻まれている。
 これらには大いなる…』…ん、……
 ダメだな。削れてて読めない部分がある。
 『大いなる……が宿り、所持する者を…永久の……
 ああクソ、こっからが肝心だってのに!」

碑文は、その中ほどの部分がまだらに削れ、文字の形を失っていて
知識の問題ではなく物理的に読み取る事が不可能になっていた。
シーフォンは悪態をつきながらその壁を軽く殴る。

「ん、最後の方はまだ読めるか。
 『……時来れば、四つの秘石を再び得る者が現れ、
 四重の守護を破りタイタスの前に至る。
 その者が』、……『タイタスに等しき者であるがゆえに』
 ……これで終わりだ」
「……どういう、意味でしょうか…」
「…………」

碑文の意味を図りかね、不安そうにしているフランには応えず
シーフォンは黙ったままその壁を睨みつけるようにして考え込んでいた。

「…………ふん。さあな。だが、この傷……」

シーフォンの指が碑文の中ほどに刻まれた傷をなぞる。

157:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 4/9
10/09/20 22:23:13 xmiOPaQC0
「ただの風化じゃない。墓所の年代や碑文の古さから見ると、この傷は新しすぎる。
 しかも跡が鋭利だ。意図的に削られたとしか思えない」
「え?だって……」

フランの言わんとする所は、キャシアスにもすぐに理解できた。
この墓所は、今まさにキャシアスたちがその『四重の守護』を破って入って来た所だ。
それより以前にこの碑文を削り取ったものがいる?この封印された墓所の中で?
考えたくはないが、嫌な想像はどうしてもある一箇所に辿りつくしかない。

「ハッ、こんな半分魔界になりかけてるような場所だ。
 何がいたっておかしくはねえだろうよ。魔物以外にもな」

シーフォンは恐ろしい事をいとも簡単に言い放つと、
それまでかぶりつくように見入っていた碑文からぱっと体を離した。

「お前らが考えてたってどうしようもねえだろ。さっさと先に行こうぜ」

つうと、こめかみから頬へ伝った脂汗をシーフォンはローブの袖でぬぐった。
あの碑文を読んでいる途中から、頭痛に加えて
頭の中で鐘を鳴らされているような耳鳴りが繰り返された。
しかしここで引き返せるわけはない。
その耳鳴りに混じって、シーフォンには聞こえたのだった。

158:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 5/9
10/09/20 22:24:34 xmiOPaQC0
この場の濃い瘴気が、さながら水が雷を通すようにして
地下深くの意識を伝えた。
高い魔力を持つシーフォンだけがその断片に気づいた。
その意識は、自分たちにだけ向けられたものではなく、
ずっと昔からこの空間に満ちていたものだったのだ。
何千年もの間ただ一人の意識がここを埋め尽くしていた。
そしてそれは、呼んでいるのだった。
キャシアス。
確かにそう聞こえた。
おぞましいほどに低く、文字通り地の底から響く音でありながら
その声は歓喜にうち震えているようだった。
シーフォンの中で、いくつもの疑問が一気に瓦解する。
始祖帝は、彼にもっとも似た者をこうして呼んでいるのだ。

目の前に立つ騎士を睨むようにして見つめる。
あの貴族の坊ちゃんほどではないが、常に矢面に立ち、
他人を守ろうとするキャシアスの行動にシーフォンはほとほと嫌気が差していた。
普段はそうやって善人ヅラしてても、いざ自分の命が危ないとなったらケツ捲って逃げ出すんだろうが。
貴族や騎士なぞどれも同じだ。
だが、なぜか。以外に結構ちょっとだけ、つるんでいる間は楽しかったりしたのだ。
しかしそれももう終わりだとシーフォンは心中で決意を新たにする。

「ち、ちょっと待って下さい。シーフォンさん、顔色が真っ青ですよ!?」
「……なんでもないって言ってるだろ。このランプのせいだ」
「そんなんじゃ……!」

フランの反論が終わらないうちに、シーフォンの身体がぐらりと前にかしいだ。
慌ててキャシアスがそれを抱きとめる。
細い身体は驚くほど体温が低く、軽かった。

159:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 6/9
10/09/20 22:26:28 xmiOPaQC0
「……ああ畜生、そうだよ、最悪の気分だ!つうかよくこの瘴気の中で平然としてられるなお前ら!?」
「いえ、その……。危ない感じはしますけども、気分が悪くなったりは……」
「これだから脳筋は……うぷっ…やべえ、マジ吐きそう…」

シーフォンは最後の力を搾り出すように呻くと、
開き直ったのかぐったりとキャシアスの肩にもたれかかった。
ともあれ、一人がこんな状態では奥へ進めそうもない。
キャシアスの支えがないと今にも地面に倒れこんでしまいそうなシーフォンは、
歩く事も難しそうだ。

キャシアスは、背負っていた道具の入ったバックパックをフランに預けると
ろくに抵抗もせずされるがままのシーフォンを無言でおぶった。

「う」

背に乗せられたことに気が付いて、流石にシーフォンはわずかに身じろいだが
それ以外に選択肢もないとすぐに気づくと大人しくなった。
キャシアスとしては、肩に担ぐ形が片手も開くため抱えやすくはあったのだが、
体調が悪い状態で頭を下にするのはよくないだろうと
これでも気を使った結果なのである。

「キャシアスさま、警戒は私に任せてください」

よいしょと荷物を背負って来た道を引き返し始めたフランに、
キャシアスも背中の低い体温を気にしながら頷いてその後を歩いていった。

「……ぅう………」

160:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 7/9
10/09/20 22:28:28 xmiOPaQC0
キャシアスの背に揺られながら、ぐるぐると混濁する意識に抗ってシーフォンは思っていた。
いずれ、いや、もうすぐ。
この『タイタスに等しい者』が始祖帝の元に辿りつくだろう。
四つの秘石を持ち、孤児として拾われ、数々の化け物を打ち倒したこの男が。
それこそが少し前まで疑問と思っていた仕掛けだ。
タイタスの霊魂と相対した時、こいつは始祖帝そのものになる。
そして、歴代のどの皇帝にもなかった圧倒的な力でもって帝国を再建するだろう。
知らず、シーフォンは強くキャシアスの肩を握っていた。

(―連れて行け)

縋る腕も、蚊の鳴くような声も、瘴気にうなされての事だと思ってキャシアスは気にも留めない。
フランと共に周囲に気を配りながら墓所の出口を目指している。
シーフォンは暗い視界の中でその横顔を盗み見た。

もはや始祖の力は、望んでも詮無いことだ。
その正当な後継者が目の前にいるからだ。
しかし、ひとつの目的が潰えても、すぐさま他の最適な行動に移ることにシーフォンは慣れていた。
この場合は、つまり。


何とか強敵に出会うこともなく墓所から脱し、遺跡そのものから出てくる頃には
シーフォンの体調もあらかた回復していた。

「……もういい。一人で歩ける。さっさと下ろせ馬鹿」

161:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 8/9
10/09/20 22:29:41 xmiOPaQC0
いつもの言い草で、しかし声は弱々しくシーフォンが言った。
本当ならば宿まで運んでも構わないのだけれど、
そうすると後ろから焦がされる危険性が多いにあるため
キャシアスは大人しく町外れで彼を背中から下ろした。
しかし、すとんと音がしたことを確認し、振り向こうとしたキャシアスの上腕を
いまだシーフォンが掴んだままでいた。
無理に振り向けないこともないが、シーフォンがそれを望んでいないのが
なぜかその指から伝わってくる。

「……連れて行けよ」

唐突に呟かれた言葉の意味が分からず、キャシアスは思わず聞き返した。

「僕をだ。そのときが来れば分かる。せいぜい、役に立ってやるから」

腕を掴んだまま離さずにいるシーフォンは、その言葉こそ普段の乱暴なものだったが
声の色にはどこか必死さが滲み、強張っていた。
どんな表情をしているかは分からないが、細い指にも不必要な力が入っている。
その様子に、単なる探索のメンバー組みのことではないのだろうと察する事は
キャシアスにも可能だった。しかし何を意味しているのかまでは読み取れない。
疑問を問いかけようとしたところで、シーフォンは今まで掴んでいた腕を離し
とん、と軽くキャシアスの背中を押しやった。
その反動を利用して背を向け、宿に向かって歩き始める。
キャシアスは慌てて振り向いたが、
ぶかぶかのローブに包まれた背中に、なぜか声をかけることもはばかられて
キャシアスとフランはそのまま彼が角を曲がって見えなくなるまで見送った。

162:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 9/9
10/09/20 22:31:01 xmiOPaQC0
そうだ。
皇帝そのものになれないなら、その腹心になればいい。
幸いあいつはお人よしで、その上魔力の面はからきしだ。
必ず僕が必要になる。
いや、必要とさせてみせる。

陽が落ちて冷たい風の吹いてきた町外れで、
シーフォンはばさりと音を立てて闇色の外套を羽織る。
それは彼がいつの間にか荷物の中から抜き取っていた、魔将の外衣だった。

もう後には引けない。
元より赤みの強かった瞳を、ますます血のように赤く光らせ、シーフォンはぎゅっと拳を握った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
せっかくの腕力スキル、お姫様抱っこに使いたかったけど
ダンジョンの中では無理がありすぎて諦めました。無念。

163:風と木の名無しさん
10/09/21 09:07:35 Z1Jv0NhvO
>>149
切な萌えな投下ありがとう!

164:風と木の名無しさん
10/09/21 09:47:23 VyNS1+HRO
>>131ラストは悲しいけど、けして嫌な悲しさではなく切なくてしみました
素敵なお話ありがとうございました

>>141ハム式カップリングキターー
柄崎は社長をどうするのかとハラハラ
誘い受俺様社長にも期待してます!
そしていつか、滑丑の成人バージョンもお願いします!

165:風と木の名無しさん
10/09/21 09:52:27 VyNS1+HRO
さげ忘れました
申し訳ない

166:風と木の名無しさん
10/09/21 10:54:10 4r8QUf7aO
>>125
おもしろかった!
もっと読みたいと思ってしまった

167:風と木の名無しさん
10/09/21 11:23:15 htAdhlLB0
>>125
切なくて可愛くてきれい
なんといったらいいか分からないけど
温かい気持ちになりました

168:風と木の名無しさん
10/09/21 11:57:41 OSGb12vu0
>>154
GJです!
読み応えあってすごく面白かったー!!
言動がすごく僕様っぽくて萌えたよ、萌えた!

17世ルートは夢がいっぱいだね

169:風と木の名無しさん
10/09/21 22:28:26 NHHZEwtpO
>>141
神め…!姐さんの作品に萌えたぎりました!
柄丑のエロが読みたくて仕方なかったので嬉しすぎてTryMeを斉唱する勢いです…!
続き楽しみにしてます!ハチミツとワインかぶって全裸で待機!

170:ストレス時代9/1
10/09/22 04:31:54 oYgN+hkO0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某フィルムタイプ薬品のCMに感動したんだって
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  第二段は州取 英二だね
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |ト メ  タ" イ  ン    | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | | \         /   | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |     (・∀・)      | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

ストレス時代に救世主がやってきたよ!そんなヘタレなアイツが主人公のオハナシだよ!
とりあえずはEROなしの導入編だよ!若干トイレ描写が粘着質だよ!
(だってそれが彼のいいところだもんね!)
※全体的に予想以上の長さになってしまったので、中断を入れさせていただきます。

171:ストレス時代2/9
10/09/22 04:33:01 oYgN+hkO0
山のように積まれた書類を持って、止田は廊下を歩いていた。赤い絨毯を一歩踏みしめる毎にそれは不安定に揺れる。
「止田さん、持ちましょうか?」
「あっ、わっ、わわッ」
突然声を掛けられ動揺し止田が思わず足を止めると、書類はぐらりと円を描いて揺れた。
それをとどめようと踊るように足を動かした結果、案の定の転倒をし、書類は止田の頭の上へ崩落する。
バサバサ、と豪快な音を立てて乱舞するそれを、止田は呆然と見上げていた。
止田の視界の端には、ベージュの膝丈スカートと、ベストの裾が見える。
「ご、ごめんなさい!私が突然声かけたから、ビックリさせちゃいましたよね。ごめんなさい!」
言いながら膝を折り、大下美由紀は慌てて書類を拾い始める。
大下の姿を見て、止田は我に返り、書類へと手を伸ばした。
「あっ、いや、別に大下さんのせいではないです。すみません」
顔も上げずに言い、黙々と拾い始める。
「おお!止田、ご苦労なこったな!」
通りすがりに笑いながら声を掛けるだけの無情な先輩からの激励を受けながら、しばらく二人で廊下を占拠して拾い続けた。


172:ストレス時代3/9
10/09/22 04:33:45 oYgN+hkO0
おもむろに大下が口を開いた。
「止田さん、今回の発表、機密事項が多いみたいですね。社運がかかってるって聞いたけど……」
「あ……はい……なんか、いきなり重役任されて」
はは、と空笑いをしながら、書類に目をやる。そこには企業機密がびっしりと書き込まれ、様々なプランが書き起こされている。大下が言った“社運”がまさにそこにあった。
社運が廊下に散らばっているのに、それを拾おうともせず去っていく仲間が多いことに止田は胸が痛んだ。
そもそも、その散らばっているものが“社運”だと彼らが知る筈もないのだが。
「こんなの、うまくいきっこないんですけどね」
また自嘲するように小さく笑った止田を、大下は励ましも応援もしなかった。ただ、無言で書類を拾い続けていた。

国内大手の製薬会社“大蝶製薬株式会社”に入社し、止田和史は3年になる。
大蝶製薬株式会社は、社長の岩谷進をトップに、斬新なアイディアで改進を続けるトップ企業だ。
止田はその巨大企業の中、営業職で現場を経験し、6ヶ月前に企画部へ異動になった。
友人達からは「ペコペコしなくていいなんて、良かったな」と羨ましがられ、一般的には昇進と言われている道だったが、
止田にとっては常に上司の監視下にある事のほうがよっぽどのストレスだ。
大下美由紀は入社4年目の先輩で、何かと止田を見てくれているが、これも監視のひとつだと止田は感じていた。

173:ストレス時代4/9
10/09/22 04:34:36 oYgN+hkO0
(おなかいたい)
大下に手伝ってもらい広い集めた書類は、欠損がないことを確認して、またナンバー順にまとめ直さないといけない。
今度は落とさないようにとダンボール2個に詰めたそれを台車に乗せて、企画部へ戻るため廊下を歩く。
(おなかいたい……)
下腹部がギュリ、と音を立て、冷や汗が出た。あぁ、またいつものストレス性の下痢だ、と止田はため息を吐いた。
台車を廊下の端に寄せ、トイレへ入る。個室へ入ると鍵をかけた。
いつものようにトランクスを脱いで便器へ座ると、すぐさま極度の緩い状態の便が出た。
下腹部はまるでつま先で踏まれているかのように痛んだ。内臓が動いているのが自分でも解り、吐き気をもよおす。
「うぇ」
思わず声を出して上体を倒す。冷や汗が頬を伝い、膝に落ちた。
(俺はなんでこんな体質なのに、こんなデカい事やらされてんだろ)
しばらく個室でもんもんと考えながら、同時に用を足す。ひととおり出し切って尻を拭き、流した後、またトランクスとスラックスを上げた。
不快な匂いとサウナ状態になった個室から出ると、トイレ内の空気はやたらと爽やかに感じた。


174:ストレス時代5/9
10/09/22 04:35:46 oYgN+hkO0
トイレから出て、また台車を押して歩く。正面から大下が歩いてくるのが見えて、止田は会釈をした。
大下が駆け足で近寄ってくる。先ほどとは打って変わった笑顔だった。
「あ、ダンボールに入れたんですね。ナイスアイディア!」
「ホントだぁ!こんな量を持ってたなんて、無謀ですよ、止田さん!」
大下の後ろからひょっこりと顔を出しているのは、止田と同期の沢村香奈だ。入社4年目の大下にいつもくっついていて、子分のような状態である。
おそらく大下からこの件に関して一通りの話しは聞いているのだろう、まるで書類の散らばり具合を知っているかのような顔をしている。
「そうですね、無謀でした。じゃぁ、ちょっと企画部戻るんで」
書類の散乱で精神的にも疲れ、下痢で体力も使いきり、クタクタだった止田は早々にそこを後にした。
残された二人は顔を見合わせ、小さく笑っていた。


175:ストレス時代6/9
10/09/22 05:03:55 oYgN+hkO0
午後6時。退社の時間になり、終礼が行われる。皆一様に伸びをしたり、身なりを整えたりと自由に動いているが、止田は違った。
一切の事など関係ないようにパソコンに向かっている。
窓際で沈む夕陽を背にしながら、部長の福島が止田に向かってまるめた紙を投げた。コツン。
「ぃてッ」
「おい、お前業務違反だから」
福島はため息を吐きながらジャケットに袖を通している。中年太りが始まったその体を、上等なジャケットはスマートなラインで包み込んだ。
止田が申し訳なさそうに会釈をしながら、情けない顔で笑う。
「あ、すみません。でも、まだ発表の書類が出来上がってな」
「ふざけんなおい。残業代なんか出ねーぞ」
止田の言葉を遮って、福島は現実をぶつけたが、止田はそれでも変わらない表情で会釈をしている。
「あの、本当、これだけはやらないと、心配で仕方が」
「お前自分の仕事が遅いだけだろうが。1時間でカタつけて出ろ。1時間したら電源落とすからな。管理にそう言っとくから」
「え……」
困ったように固まる止田の横を、福島が通り過ぎる。誰よりも先に部署を後にするその姿と、固まる止田の姿を、部署の人間達は交互に見比べていた。

176:ストレス時代7/9
10/09/22 05:04:44 oYgN+hkO0
午後6時42分。もう部署には止田以外誰もいなくなっていた。
大下と沢村はやたらと残ろうとしていたが、する事もないのか早々に帰っていった。
かち、かち、と時計の針の音がする。止田はじっとパソコンの画面を見ている。
その時、ピピピピピピ……と地味な携帯のメール受信音が響いた。
止田が携帯を手に取り、受信メールを確認する。

FROM:サチ
件名:今日どんな?
内容:
おしゴト、お疲れ様!
今日こそは会えるかなぁ?
ってか会ぃたぃょー(><)!
あたしマヂでッッッッ
おいしいご飯作るょ?

ため息を吐いて、止田は携帯を閉じた。冗談はやめてくれ、と頭に浮かんだ。
仕事に追われて帰れない。食事もそこまで食べたくない。緊張して眠れない。
しかし、彼女は帰宅を猛烈に催促し、自宅への立ち寄りを強制し、食事へのコメントを求め、最終的には体を求めてくる。
疲れているなどという言葉は、どんなに言っても理解してくれない。
それをこなす器用さを、止田は持ち合わせていなかった。
(どうしてこうなっちゃうんだろう。6年も付き合ったのに)
止田は窓に目をやった。そこにはガラスに反射して自分を見つめ返す姿があった。
弱々しく、情けない、眉の下がったその表情を見て尚更悲しくなる。

177:ストレス時代8/9
10/09/22 05:07:46 oYgN+hkO0
その時だった。バチン!と音がして、全ての電源が落ちた。
「あ…………あぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
止田の絶叫が暗い部署にこだまする。
避難誘導のライトがぼんやりと部屋を照らし、窓の外は他の高層ビルのオフィスから漏れる光できらきらとしている。……が、そんな事は止田にとってどうでも良かった。
「データ!データが!あぁぁ!データ!!!」
(やばい、おなかいたい!)
「データを!そうだ、管理だ!」
(おなかが――ッ!!)
頭と体が別々の動きをしている。
慌てて立ち上がり、オフィスのデスクの隙間を縫って歩く。時折他の人のデスク横に詰まれた書類に蹴躓きながらも、視線は前方しか見えていない。
企画部を出た瞬間、何かにぶつかった。
「ゎぶッ!」
顔を抑えながら数歩後ずさると、止田はゆっくりと目を開けた。避難誘導のライトで、足元と廊下の所々に緑色のライトが光っている。
そのライトに照らし出され、目の前にはぼんやりと人影が見えた。自分よりも背が高い、その雰囲気からして男のようだった。
「すっ、すみません!」
慌てて言う止田に対して反応するように、人影は何度か首をかしげている。おそらく、止田をしげしげと眺めているのだろう。
「もう終業から1時間経っていますが……何をしているんですか」
低い声が、波のように廊下に浸透した。凛と張り詰めていながら、相手に有無を言わせぬ響きがあった。聞いたことのない声に、止田は少々たじろぐ。
「あっ、あの……まだ、企画が出来上がってなかったので、少し残っていました」
「叫び声が聞こえたから来てみたんですが」
その言葉に、止田の胸には若干の安堵が生まれた。何かしらの事件を察知して来たということは、警備員だろう。
「あっ、す、すみません!僕です!突然電源落とされて、データが消えちゃったもんで」
先ほどより少しフランクに話しをしてみるが、相手は黙ったままだった。
ぎゅるるるる……止田の腹が、まるで地底の唸り声のように鳴って体を震わせた。
(やばい!おなかが限界だ!)
「あのっ、すみません、ちょっと急ぐんで!!」
止田は腹に手をやり、男に会釈をしながら歩き始めた。視線はトイレ、ただ一点を見つめている。
立ち尽くす男を迂回して、先ほどの威勢はどこへいったのかという勢いで弱々しくトイレへ入っていった。

178:ストレス時代9/9
10/09/22 05:21:42 oYgN+hkO0
毎度の事ながら、腹を下しやすい己を呪うしかない。止田は手をハンカチで拭きながらトイレを出ると、廊下が明るい事に気付いた。
慌てて企画部へ戻ると、そこもきちんと電気が点いていた。そして、自分のパソコンは落ちる寸前の状態のまま、無事に立ち上がっていた。
ホッと胸を撫で下ろし、すぐさま保存をする。
(きっとさっきの警備員さんが、管理に連絡してくれたんだ……!)
「警備員さん、ありがとう!」
「誰が警備員さんですか?」
止田がハッとして振り返ったそこには、30代後半と思われる男が立っていた。
髪は黒く整っているが、緩くパーマがかかっていた。濃紺のスーツを着こなし、腕を組み、鋭い目付きで止田を見詰めている。
止田は一瞬で相手を観察した。
見たことのない男だったが、その声は先ほどぶつかった相手だと容易に想像が出来た。あわてて止田が言い訳をする。
「あの、すみません、さっき姿がよく見えなくて警備員さんだと思ってしまっていました」
「警備員ではないですが、警備員みたいなもんですね」
男がゆっくりと近づいてくる。止田は無意識にディスプレイの画面を隠した。男は苦笑しながらも、歩みを止めない。
「今さら隠したって無駄ですよ。何故パソコンが立ち上がってたのか、疑問ではないですか?」
言われて止田の顔色が変わった。
たしかに男の言う通りだった。電源が落とされた強制終了の状態でパソコンを再度立ち上げても、普通はIDやパスワードを求めてくる。
止田のIDとパスワードを入れなければ、ログインすらできないはずだった。
そしてそのIDとパスワードは個人で管理されており、止田以外は知らない情報だ。
近寄る男に、止田は慌てて定規を手に取り、男に向けて構えた。
「あなた、何なんですか!」
「警備員ですよ」
「勝手に俺のパソコンを立ち上げたりするなんて、警備員のはずがない!」
「おや、貴方が言ったんじゃないですか。私を警備員だと」
止田は後ろ手でパソコンの電源ボタンを長押しし、強制的に電源を切った。男が驚いた表情をすると、止田は鞄を鷲掴みにして駆け出した。
「警備員さんーッ!不審者ですー!」
廊下に響き渡る声で叫びながら、止田が姿を消す。
男は、射抜くような視線で止田の席を見下ろしていた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

179:風と木の名無しさん
10/09/22 22:30:30 9ncqY4PZO
とめださん頑張ってつとめだIN

180:風と木の名無しさん
10/09/22 23:15:30 CoZgNTm40
続きwktk

181:風と木の名無しさん
10/09/23 02:33:04 WbuqPJBB0
>>170
ちょwwwまさかのトメダサンktkr
続きお待ちしております!

182:植/物/系/人的エロス 1/6
10/09/23 03:24:46 IMUwiZ+t0
宇忠イヌ作戦 マノレコ×モヅャット的な何か
花粉発言にほとばしる萌えを止められなかった…

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

なんとなく夜中に腹が減って、
冷蔵庫の中になんかなかったかな、とキッチンへ来た俺は、
リビングに怪しい発光体を発見した!
何かがぼんやり光っている! 何だ!?
あ、普通にテレビだった!
いや待て、テレビの前に誰かいるぞ! 誰だ!?
あ、普通にモヅャットだった!

っていうか、

「……おい、こんな夜中に電気もつけないで何見てんだ?」
「うわあああ!!」

相当集中して画面を覗き込んでいたのだろう、
俺の存在に全く気付いていなかったらしいモヅャットが
奇声を発しながら勢いよく顔を上げた。
「な、何ですか!?」
「いや、それはこっちのセリフだ。コソコソ何してんだよ?」
言いながらテレビ画面に目をやった俺はさらに首をひねることになる。
そこに映し出されていたのは、
どうやら遥か昔の地球のテレビ番組の一場面のようだが…
「何だこれ?」

183:植/物/系/人的エロス 2/6
10/09/23 03:25:32 IMUwiZ+t0
なんかこう…森というか山というかそんなのが…もやーっとけぶって……
「おいモヅャット、この映像なんなんだ?」
「これはその、別に大したあれじゃないんです!
このあたりを整頓してたら出てきて、そう、本当に偶然発見して、
けっして私の個人的な趣味とかそんなんじゃ……」
涙目になりながらモヅャットが俺に訴えかけてくる。
どうしてそんなに必死なんだ! なんかこわい!
そのとき天才的な俺の頭脳にひらめきが走った。
「これはもしかすると…」
モヅャットが不安げな目で俺を見つめている。
「『花粉症』とかいうやつの関連映像じゃないのか?」
ごくり、とモヅャットがつばを飲み込む音が聞えた。図星のようだ。
「太古の地球人はたしか大量に飛散した花粉によるアレルギー症状に
悩まされていたと聞いたことがあるような気がするぞ。
おそらくこれはその花粉が大量に飛散している様を捉えた映像……
そして植/物/系/人であるお前が
そんな映像を人目を忍んで見ている理由はただひとつ……」
青ざめた顔のモヅャットが目を見開き、俺の言葉を遮ろうとするかのように
首を小さく横に振った。
俺は元大海賊の名に恥じぬとってもとっても悪い笑みを浮かべて、
暗闇に響き渡る通りの良い声でこう言った。

「―エロスだな!!」
「あああああああああー!!!」

184:植/物/系/人的エロス 3/6
10/09/23 03:26:19 IMUwiZ+t0
ヅャットは耳をふさいでソファに倒れこみ、じたばたと足を動かした。
手の間からちらちら見える耳がありえないほど真っ赤だ! 照れていやがる!
「そうかーそうだよなあおまえら植/物/系/人にとっては
花粉飛びまくり映像なんてもうえらいエロ動画だもんなー!
あははははは!!」
あまりの滑稽さに俺もソファに崩れ落ち腹をかかえて笑った。
モヅャットはというと、ひとしきりじたばたし終えて力尽きたのか、
ソファの背もたれに顔をうずめて脱力し、
ぐすんぐすんと肩を震わせ始めた。どうやら泣いているらしい。
なんせこのくそ真面目な公務員モヅャットが
夜中にこっそりAV見てるところを現行犯逮捕されたわけだから、
その恥辱屈辱たるや想像するに面白い。
いつも俺のスケベハッスルぶりを冷徹な目で見やがって、ざまあみろである。
とはいえちょっと可哀想でもあるかな、と
俺はあやすようにモヅャットの肩をぽんぽんと叩いた。
「ま、男は誰しもスケベなもんだ。ドンマイ☆
ほらほら気をとりなおして続きをみようじゃないかモヅャットくん!」
と、画面に目をやると、相変わらず花粉大量飛散映像が流れている。
どうやら数秒の映像をエンドレスリピートしているようだ。
何が偶然見つけただよお前! 熱烈スケベ編集済みじゃねえか!
そう思いっきり突っ込んでやりたい気持ちを抑える優しい俺。
が、モヅャットはソファから顔をこっちにむけたはいいものの、
完全にボロ泣きである。
スケベのくせになに泣いてんだ! なんかムカついた。
こうなったらお前を再度マヌケ極まるムラムラあはーん状態に叩き込んで
指差して笑ってやるぜ!

185:植/物/系/人的エロス 4/6
10/09/23 03:26:59 IMUwiZ+t0
俺は両手でモヅャットの顔を引き寄せると、
涙で張り付いている髪と葉っぱをわっさりかき上げ両サイドにはらい、
良好な視界を確保させた上で無理矢理テレビ画面に向けさせた。
モヅャットの首がぐきりと音を立て、なんとも言いようのない悲鳴が聞えたが
まあ気にしない。そんなことよりも。
「ほーらご覧なさいモヅャットさん、花粉がばっふばっふ飛んでるよー。
まさにザ・淫ら! どうだ感想を言ってみろ!」
「いたたた! ちょ、やめてくださいよ…!」
「なあ、どうなんだよ? 植/物/系/人的にはこれ、どんな風にエロいの?」
「どんな風って……」
「こんなに花粉が飛びまくってさ、もう受粉しまくりだろ?」
びくん、とモヅャットの体が一瞬大きく震えたのが分かった。「受粉」という言葉に
反応したらしい。
ていうか何だそりゃ!? 植/物/系/人のエロつぼってよく分かんねー!
と思いつつも、俺はモヅャットの耳元で囁き続ける。
「あんなにメチャクチャに受粉しまくったら、
もう何がなんだか分かんなくなっちまいそうだな?」
「……マ、マノレコ、やめてください…。映像を止めて…」
「何言ってんだよ、ほんとは見たいんだろ?」
モヅャットの視線はさっきからずっとテレビ画面に注がれたまま動かない。
最初は強い抵抗を無理矢理抑え込んでいた俺の手も、
今はモヅャットの顔の顎あたりにそっと添えられているだけだ。
「見ろよ、すげー花粉まみれ…」
「……や…」
液晶画面の光に照らし出されたモヅャットの顔は見たこともないほど紅潮していて、
呼吸はどんどん浅く、短くなっていく。
しっかり欲情してるな。俺は思わずニヤリと悪党笑いを浮かべてしまう。
いいぞいいぞ、俺の前でもっとみっともない姿をさらせ!

186:植/物/系/人的エロス 5/6
10/09/23 03:28:10 IMUwiZ+t0
「やっぱあんだけ花粉出したら気持ちいいのか?」
もっと耳に唇を寄せて囁いた。
んん、とモヅャットが目を伏せて、喉の奥でうめき声を押し殺す。
「ちゃんと見ろって、な?」
俺はくいっとモヅャットの顎を持ち上げて、俯いた顔を再び画面に向けさせた。
モヅャットの目は潤みきっていて、
もう映像を見ていなくても欲情を止められない段階に達しているようだった。
こいつのこんな表情初めて見た! 愉快すぎてゾクゾクする。
顎に添えていた指先を、そのままモヅャットの喉へゆっくり滑らせる。
厚い唇から、堪えきれないといったように吐息が漏れた。
「ほら、受粉してる。メチャクチャになってるぜ……」
「……ん、マノレコ…、もう、ほんとに……ぁ、あっ!」
ぐっと目を閉じてモヅャットの体が痙攣した。
「ん? もう何だよ…? って、ぎゃああああ!!」
と思った瞬間、もふっという音と共に俺の視界が盛大に霞んだ!
何だこりゃ!? しかもけむっ! すごいけむい!!
「げほっ! ごほっ……」
手で顔の周りを仰ぎながら、聡明な俺は迅速に事態を把握した。
花粉だ! 花粉出ちゃったこいつ!
つまりイッちゃったわけだ!
つーかイッちゃって花粉出るってお前…! 再び笑いがこみ上げる。
ああ指差して笑ってやりたい!!
が、花粉のもやが晴れるにしたがって俺の笑いは次第に引っ込んでいった。
モヅャットが乱れた息のままぐったりとソファにもたれかかっている。
蕩けた目の縁は赤く染まり、
まだ少し震えている肩が呼吸に合わせて上下している。
何だ? 男がイッた直後の姿って、こんなにエロかったっけ?

187:植/物/系/人的エロス 6/6
10/09/23 03:35:50 IMUwiZ+t0
「……ぁ、マノレコ…、あ、わああ!!」
やがて正気を取り戻したらしいモヅャットがすごい勢いでキョドり始めた。
俺のことを見るなり目を見開いて、頭から爪先までゆっくりと見回したあと、
また俺の目を見て「すみません! すみません!!」と
土下座せんばかりの勢いで謝りだしたのだ。
「え? な、何だよ? イッたとこ見られたくらいでそんな気にすんなよ」
「いや、だからその…ほんとすみません!!
ああどうしよう…! マノレコの全身に私の花粉をぶっかけてしまった…!!」
ぶっかけって…。あ、植/物/系/人にとってはそういうことなのか。
多分すっげー失礼なことをしたと思ってんだろうけど、
こちらとしては全然ピンとこねーぞ。たかだか花粉だし。
それよりもなんだ。
俺としては、さっきからこいつがやたらエロい感じに見えてることのほうが
問題なんだ。
たしかに俺はどスケベだけど、変態じゃなかったはずなのに。
そうか、宇宙船生活が長いからたまってるんだな。きっとそうだ。
「とりあえず、気にしなくていいって」
「気にしますよ! ああ…すみません、もう何ていって謝ったら……」
「うんモヅャット君、俺いますごく良いことを思いついた」
「え?」
「太古の地球にはこんな言葉がある。『目には目を』……
つまりやられたらやりかえせという意味なんだけどね」
「……ええ」
俺はモヅャットを抱き寄せると、
ボリューム満点の後ろ髪に手を差し込んで俺に向き合わせ、こう言った。

「今度は俺の花粉をお前にぶっかけるってことだよ!!」

多分、俺は今すっごい悪い顔で笑っている。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ありがとうございました!

188:風と木の名無しさん
10/09/23 03:50:02 Ldn3fUUv0
>>182
元ネタ知らないけど萌えましたw
空中散布イイヨー

189:風と木の名無しさん
10/09/23 08:55:07 pf1j0nA60
まさかの宇宙イヌー!!萌えたぜ

190:風と木の名無しさん
10/09/23 11:05:58 jb5HhcxbO
>>182
エロ親父マノレコに萌えワロタw
宇宙大`読めるとは!GJ!

191:風と木の名無しさん
10/09/23 11:56:33 p9j492mDO
>>182
この二人の話が読めるとは!
GJGJ!同じく盛大に萌えワロタw

192:怪物と私 1/3
10/09/24 00:34:28 8uVOZZ/1O
conteの王様コンテストで不覚にも萌えたので、Pスの怪牛勿とイ白爵様でどうぞ

台詞等が違う可能性が高いですが見逃して戴ければ幸いです
あと初投稿なので文の拙さもついでに見逃して戴きたいです


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


私は今、原宿に来ている。
こんな薄汚い人間が集まる下界くんだりまでどうしてこの私が来なければいけないのか。

「すみません、イケメソイ白爵様…」

こいつだ。
こいつのせいだ。
私の屋敷で働く怪牛勿で、いつも同じ服しか着ないくせにお洒落をしたがって私と出掛けたがるのだ。


しかし原宿に来て1時間、あれだけ来たがっていたのに来たのにクレープを片手にしょんぼりしている。

「なんだ、食べきれないのか?」
「はい…」
「だから食べきれるのかと聞いたんだろう!」

クレープ屋だ、クレープ屋だと嬉しそうな顔をするものだからつい買ってしまったが、結局は残ったこのクレープだって私が食べる羽目になるのだ。

「もう食べられないのなら私によこせ!」

193:怪物と私 2/3
10/09/24 00:36:45 8uVOZZ/1O

少し語気を荒げてしまったためか、怪牛勿は下を向く。

「すみませんイケメソイ白爵様」
「謝るな」
「せっかく私のような怪牛勿を、好奇の目を忍んで連れ出して下さったのに」
「気にするな、興が冷めるわ」
「イ白爵様…」


そうこうしているうちに裸フォーレについた。

「ほら、着いたぞ」
「あの」
「何だ?」
「お金が…」
「3万やったろう!」
「賽銭箱に入れてしまいました」

3万も賽銭に使う願いなどあるはずないだろう。
私はこのままお前と暮らしていきたいと、たった5円の賽銭で神に願ったのに。

194:怪物と私 3/3
10/09/24 00:37:21 8uVOZZ/1O
「…屋敷に帰ったら狼の世話をちゃんとするか?」
「します」
「いつも以上に働くか?」
「はい」
「今回だけはジーンズを買ってやるからな。今回だけだぞ」

怪牛勿は私を伴い、嬉しそうに裸フォーレへと入ってジーンズを買った。

「で、お前。そのジーンズはいつ履くんだ?いつもこうやって買い物に連れて来てやってもまた今日のこの服を着るのだろう」
「だってこの服はイ白爵様が私に初めて下さった服なので…」
「それでは私がお前の為に金を注ぎ込んでもドブに捨てているようなものではないか」

私は大きく息を吸った。

「いいか、そのジーンズは絶対に似合うから私の前で必ず履け!前買ってやった服も着ろ!!絶対だぞ」
「え?」
「だから買ってやった服は絶対に着ろって言ってるんだ何度も言わせるな恥ずかしい!ついでにこれからずっと、毎日の私の服も選べ!わかったな!!!」

私の言葉が聞き取れた瞬間怪牛勿の目は潤み、微笑んで出会ってから初めて大きな声ではいと言った。


まったく、世話のかかるやつだ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
キャラとストーリーが破綻してしまい、大変申し訳ございません

195:風と木の名無しさん
10/09/24 00:55:27 qXZ9J+i8O
>>192
神よ、ありがとう…!
平和(要英訳)のネタが邪な目でしか見れなくて悶々としていたのです!
まさか棚に投下されるとは!
ツンデレな伯爵に胸が高鳴るっ

196:風と木の名無しさん
10/09/24 00:58:18 YBAuQN5r0
>>192
まさかこの2人の話が読めるとは
ちょうど同じ番組見て萌えてたところです

197:風と木の名無しさん
10/09/24 01:05:43 +r1nvFWu0
>>192
GJ!
かわいい二人をありがとう

198:コーヒーを一緒に・・・2 1/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:24:05 X58NEJuU0
 闇金ウシジマくんで戌亥×社長前提の柄崎×社長です。小悪魔(魔王様)誘い受け、
媚薬物です。ツンデレ気味。>>141の続きになります。レスして頂いたた方、ありが
とうございました 成人滑丑の釣り針に釣られそうですw

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 「お待たせしました」
 丑嶋が座っているソファの前にあるテーブルにコーヒーが入ったカップが置かれた。
 眼鏡を外したままだった丑嶋はコーヒーを持ってきてくれた柄崎を一瞥する。
 丑嶋は数度瞬きをし、眼鏡をかけると白いマグカップの取っ手に手を掛けた。長い
指が白い取っ手に絡まる。そんな何気ない光景さえも、もし万が一にでもあの薬が効
いたらと想像をすると淫靡な行動に見えてくるから不思議だ。
 本当に眠くて判断力が鈍っているのか、柄崎が何か良からぬことを企んでいるとは
思ってもいないのか、それともただ単にコーヒー自体が自宅の物だから疑う余地もない
のか、丑嶋は何も躊躇することなくカップを唇に近づけた。
 あと15センチ、あと10センチ、もう少しだけ、と柄崎が固唾を呑んで見守る中、つい
に丑嶋の唇に白磁がピタリと付いた。
 「や・・・、やっぱり駄目だ!社長、そのコーヒー飲まないで下さい!」
 柄崎はこれまでの人生で一番とも言える素早さで丑嶋の持っているマグカップを掴んだ。
 「わっ!」
 丑嶋がまだ持っているカップを勢いよく掴んで引っ張ったものだから、急に予期せぬ
力が加わったことにより丑嶋の手がグラつき、中のコーヒーが少し柄崎の膝の上に零れて
しまった。 
 「あちっ!」
 先ほどまでコーヒーメーカーで保温されていた中身は予想外に熱かった。

199:コーヒーを一緒に・・・2 2/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:25:52 X58NEJuU0
 「おい、急に何だ?!」
 幸い丑嶋はコーヒーを被らなかったが、下手をすれば丑嶋だって火傷をしたかも知れ
ないのだ。あまりに不可解な行動をする柄崎に声を荒げる。
 「すっ、済みません、本当に済みません」
 柄崎は完全に混乱している。
 半分涙目になっている柄崎を「危ないだろ」と叱り飛ばすことも出来ず、丑嶋は手近
にあったティッシュボックスから無造作に大量のティッシュを出し、柄崎の膝を優しく
叩くようにコーヒーを拭いてくれた。
 一人で慌て、一人で場を乱し、まさに空回りを演じきった柄崎は、擦って余分な染み
を広げないように拭いてくれている丑嶋に今すぐ土下座で謝りたくなる。
 丑嶋はティッシュで柄崎のズボンに滲みたコーヒーを拭き取ると、続いては床に零れた
分を手早く拭き始めた。
 屈んで床を拭く丑嶋を柄崎はオロオロと眺める。柄崎は立っていて、丑嶋は床に屈ん
でいるので、ポロシャツの襟首からはうなじが見える。あの風俗店の店長にも負けない
玉の肌だが、そんなことで鼻の下を伸ばせる余裕はない。
 「社長、俺がやります」
 「いいよ。もう終わる」 
 せめて、と思った柄崎だったが、丑嶋の声は冷たい。
 冷静になれば、丑嶋の声色はつねに冷たいのだと思えるのだが、今の柄崎にとっては
拒絶されているようだ。
 もうこれ以上ここにはいられない、と帰ろうと思うと、床を拭き終わった丑嶋は柄崎の
心中を察したのか、ティッシュを捨てて柄崎のほうに向き直った。
 「柄崎」
 「はい・・・」
 丑嶋は柄崎の目を見ながらテーブルの上に置いたカップの片方を指で弾いた。
 「お前がこっちを飲め」

200:コーヒーを一緒に・・・2 3/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:26:41 X58NEJuU0
 顔を上げ、丑嶋が指で弾いているカップをみた柄崎は一気に青ざめた。丑嶋が「飲め」
と言っているカップは、もう片一方のカップに比べると明らかに中身が少なく、白い
カップの表面にはコーヒーが垂れた筋がついている。つまり、先程、柄崎が丑嶋に飲ませる
為に用意した媚薬入りのカップの方だ。
 媚薬の真偽は危うい。でも考えてみれば、このコーヒーに混入した媚薬をくれた店長は
以前から妙に誠実な所がある。だとすれば、本物の媚薬かもしれない。
 もし本物だとしたら、丑嶋に飲ませる分にはこの上ない幸運だ。だが、自分が飲んだら
危険だ。
 柄崎は最早にっちもさっちもいかなくなり、顔色は真っ青だというのに額からは大粒の
汗を流すという真逆の状態を器用にこなす。
 丑嶋は今にも気絶してしまいそうな柄崎をただジッと見つめる。よく視線が突き刺さると
いう比喩があるが、まさに柄崎の心の中の罪悪感には丑嶋の強い視線が突き刺さった状態だ。
 もういっそのこと、本当に土下座して誤ってしまおうか。だが、土下座したところで「飲
め」と言う命令は覆らないだろう。柄崎は深呼吸すると、床に座った。そして、恐る恐る
わざわざご丁寧に自分の前に移動された媚薬入りコーヒーのカップを手に取った。
 けれど、手が強張って動かない。
 ギクシャクと出来の悪いからくり人形のように動く柄崎を見かね、丑嶋が珍しく穏やか
で優しい声を出す。
 「なあ、柄崎。飲めないのか?何でだ?」
 「それは、ですね・・・。そのォ・・・」
 「もしかして、何か入れたか?」
 「う・・・・・・。はい」
 優しい猫なで声がかえって怖く、柄崎は洗いざらい白状してしまい、このコーヒーがどの
ように危険なものかを説明して許してもらおうと腹を決めた。

201:コーヒーを一緒に・・・2 4/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:27:34 X58NEJuU0
 一旦手の中のカップをテーブルに置き、胸ポケットに入れておいた媚薬の小瓶を丑嶋に
差し出す。
 「これを入れたのか。ふーん、中身は?」
 丑嶋は差し出された小瓶を受け取り、マジマジと見てみる。
 「中身は今日回収に行った風俗店で貰った、所謂、なんと言いますか、媚薬らしいです」
 媚薬、と言われて、丑嶋は天を仰ぐように上を見た。店長に小瓶を貰った時の柄崎と同然、
日常では聞きなれない媚薬という言葉を考え込んでいるようだ。
 続いて瓶のふたを開け、匂いを嗅ぎ始めた。すると、すぐ合点が言ったというような顔に
なり、一瞬眉を顰めた。
 「媚薬?これが?」
 丑嶋は再びカップを持つと、柄崎の手の中に握らせ、残酷極まりないこと結論を口にした。
 「媚薬、か。あっそ。良いから飲めよ」
 完全に身体窮まった柄崎は、ついにカップに口をつけ、心を無心にして一気にコーヒーを
飲み干した。
 コーヒーは砂糖もミルクも入っていないブラックの筈なのに、何故か甘ったるく感じた。
匂いはコーヒーだが、どことなく他の食品の匂いもしたような気がしたが、果たして何の
匂いかは分からなかった。
 カップの底には何も残らない程丁寧に飲みつくし、丑嶋に見せるようにカップをテーブル
に置いた。
 「飲みました・・・」
 すっかり空になったカップを覗き込むと、従順な柄崎に気を良くし、珍しく丑嶋が笑顔を
見せてくれる。
 「よし」
 にっこり、とか花の咲くような、とか表現することを憚られるニヒルな強面の笑顔だが、
それだけでも柄崎には十分だった。もし柄崎が犬だったら、千切れんばかりに尻尾を振って
いることだろう。

202:コーヒーを一緒に・・・2 5/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:28:17 X58NEJuU0
 しかし、褒められたところで、薬を無断で使用しようとした罪悪感はまだあり、丑嶋の笑
顔を直視できない。柄崎は首を曲げ、顔を背ける。
 ぎこちない態度の柄崎に対し、丑嶋は笑顔を崩さずに立ち上がる。丑嶋が動いたことで、
柄崎の鼻腔にコーヒーとは別の香りが届いた。キツイ匂いでもないのに、何故か胸焼けする
ような甘い桃の香り。戌亥との秘められた情事の証拠。憎くて、羨ましくて堪らないのに、
丑嶋が衣服にではなく素肌に纏わせた香りだと思うと、それだけで興奮を煽る。すっかり
忘れていた筈なのに、今のタイミングで突然強く感じるようになったのか。
 柄崎が再び丑嶋のいる方を向くと、丑嶋は柄崎のほぼ横に床に座り、柄崎の顔を覗き込
んでいた。
 「・・・!」
 叫び、飛び退き、誤魔化すように笑って済ます。醜い嫉妬と、猛る欲望を悟られないた
めにすべき行動が脳裏に浮かぶ。だが、ただ浮かんだだけだった。
 あどけない可愛さなど微塵もない丑嶋の笑顔に魅入られ、柄崎はぬめる様な色欲が足の
爪先からヘソにかけて昇って来るのを感じた。下半身全体がジンとし、体が重たく感じる。
 柄崎の理性と倫理と丑嶋に対する純粋な忠誠心が熱を増す下腹部に懸命に叱責を繰り返す。
 けれど、心なしかいつもよりも勃起の速度が速いような気がする。やはり、あの媚薬は
本物だったのだろうか。
 だとすれば、これ以上丑嶋の傍にいたら不味いではないか。もう柄崎自身の中では、丑嶋に
対する自分の気持ちが単なる尊敬の念ではなく、年々と蓄積してきた恋心だということは
自明だ。それに、戌亥に対するモヤモヤとした感情が嫉妬だと言う事も自明だ。
 ならば、このまま丑嶋の傍にいては、いつ感情が爆発してもおかしくないのだ。ましてや、
媚薬が効果を表し始めている今ならば尚更だ。
 いざとなれば、丑嶋に力で劣る柄崎が丑嶋を力づくでどうこう出来ることはないのだから
良いのだが、そんなことになって、丑嶋に軽蔑されるのが一番怖かった。なのに、下半身に
集まった血流は一気に性器に流れ込み、硬度を強めていく。そんな最低な自分に嫌気がさし、
落ち込んでしまう。

203:コーヒーを一緒に・・・2 6/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:28:55 X58NEJuU0
 丑嶋の方から近づいて来たならば、柄崎が離れれば良いだけだ。柄崎は媚薬を盛ろうと
したことを謝り、何とか丑嶋の許しを得て自宅に帰ろうと思った。
 しかし、柄崎が口を開く前に、丑嶋の長くて無骨な指が柄崎の手に重ねられ、離すまいと
指を絡めてきたものだから驚いた。
 「う、丑嶋!あっ、間違えた、社長っ!何して・・・」
 みっともないほど声が裏返り、握られた手には大量の汗が滲んできた。それに比べ、丑嶋の
手は冷たく、スベスベとしている。やはり、予想通りのキメ細かい肌だった。
 「柄崎、お前さ、俺に媚薬を飲ませてセックスするつもりだったんだろ?やりたきゃ、やって
みるか?」
 丑嶋は柄崎の手を撫でながら穏やかな声で物騒な事を言い出した。突然何を言い出のだろう
か。柄崎は媚薬のせいで幻聴が聞こえたのかと思った。
 「社長、本当に今日はこんなことして、どれだけ謝っても許されないかもしれませんけど、
すみませんでした。俺、もうここらでお暇します」
 「このまま帰るなんて、お前は馬鹿か?」
 甘美な幻聴に勃起した性器がビクリと跳ねる。だが、これは単なる幻聴なのだから。誘惑
されて、のってはならない。だが、幻聴は未だ止まない。 
 「やりたいなら、やってみろよ。つーか、やれよ」
 柄崎は丑嶋の口の動きを見る。口の動きと、丑嶋の言葉は共通している。どうやら、幻聴
ではないようだ。だからと言って、相手は丑嶋だ。そこらでナンパした奴や、キャバ嬢や、
風俗従業者ではないのだ。お言葉に甘えて、はい、いただきます、といける訳無いではないか。
 けれど、さらりとぶつけられた甘美な誘いの言葉を避けきれず、真正面から喰らってしまっ
た柄崎はもうフラフラだ。それに、媚薬のせいかもしれないが、先程から心臓が早鐘を打ち、
呼吸は苦しくなるほど浅くなってきている。 
「しかしですね、この件に関しましては全て俺が悪かったんですし、いくら何でも、その気
のない社長をどうにかするのは・・・」

204:コーヒーを一緒に・・・2 7/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:31:12 X58NEJuU0
 柄崎は言い訳の言葉を紡ごうとしたが、ふいに重ね合わせられていた丑嶋の手が移動し、
胡坐をかいている柄崎の股の間に来たので、ついに押し黙ってしまう。直接触られたのでは
ないのに、腰を前に突き出せば熱くなった性器の先端が触れてしまいそうな場所に丑嶋の手
があるというだけで、根深くある倫理感、罪悪感などの多くの想いの中から、「誘われるが
ままにセックスしたい」という肉欲だけが他を押しのけて前に出てくる。
 しかし、しかし、と柄崎の頭の中では壊れた蓄音器のように言い訳が零れる。やりたくて
仕方がないのに、どうしても前に踏み出せない。もしかしたら、丑嶋はこのような逼迫した
状態を利用して、柄崎の忠誠心を試しているのかもしれない。普通ならそんなことは考えにも
及ばないのだが、丑嶋はそれぐらいのことを平気でやってのける冷静な男だ。
 第一、先ほど言い訳したように、媚薬という卑怯な手がばれてしまった今や、冷静な男、
丑嶋を抱く理由などなくなってしまったのだから。嘘か誠か分からない口先だけの誘いの
言葉に釣られ、丑嶋に「この程度の男か」と低く見られるのは悲しすぎる。どうにかした
いのに、どうしたら良いのかは出口が分からなかった。  
 
 柄崎が混乱で顔を真っ赤に紅潮させ、目をキョトキョトとする柄崎に対し、丑嶋は半分
呆れていた。本物か偽物かなんて丑嶋にとっては最早どうでもいいことだが、媚薬まで盛
ろうとしたくせに柄崎は手を出してこない。
 確かに、正直に言えば、最初は柄崎とセックスしようなんて考えは持っていなかった。
柄崎はあくまで部下だったからだ。かなり以前から柄崎が自分に対して恋心を抱いていた
のは感じていたが、自分から餌を与えてやる気になんてなれなかったのだ。
 しかし、いざ柄崎が媚薬を使おうとした事を知ってしまったら、卑怯な手を使われるの
は嫌だが、そんなに追い詰められるほど求めていてくれたのか、とおかしなことに嬉しく
なってしまった自分がいた。調子に乗るから、絶対に言ってやらないが。

205:コーヒーを一緒に・・・2 8/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:32:36 X58NEJuU0
 丑嶋は柄崎の性器が勃起しきっているのを気がついている。今の柄崎は、ギリギリまで
水を注がれたコップと同じだ。愛情、肉欲などの愛しい気持ちは許容量寸前まで溜まり、
表面張力でかろうじて気持ちを溢れさせないように耐え抜いている。角砂糖の一つでも
落としてやれば。きっと水は溢れかえる。でも、与える角砂糖は甘く、解けにくく、重い
物でなくてはならない。
 可哀想な程追い詰められた柄崎を鼻で笑い、傍らに置いておいた媚薬の小瓶を手に取った。
中身はあと半分。溢さないように蓋を開けると、甘い匂いがしてくる。
 丑嶋は蓋の開いた小瓶を親指と人差し指で摘まむと、下を向いてウンウン唸っている柄崎
の額を瓶の底で小突いた。
 「・・・っ!何ですか?」
 柄崎はやっと顔を上げた。混乱のせいで眼には生理的な涙が滲んでいる。涙と爆発せん
ばかりの肉欲との戦いで眼は霞んでいる。
 霞む視界には丑嶋が媚薬の入った小瓶をぶら下げている。何をしているのだ、と首を捻る
と、何と丑嶋は媚薬の入った小瓶に口をつけ、あろうことか中身を呑み込んでしまったでは
ないか。
 「えっ?」
 柄崎の目の前に空になった小瓶が置かれた。中身は当然ながら、小瓶から丑嶋の体内へと
注がれた。飲んだ直前だから、恐らくまだ食道あたりだろうが、飲んでしまったのは間違い
ない。
 何て事をするんだ、と柄崎は唖然とするやら、丑嶋の体を心配するやらで、呼吸さえも
忘れて丑嶋を見つめた。
 厚い唇に少し付いた媚薬の残滓が数滴光っている。色艶の良い唇に付いた媚薬を改めて見て
みると、媚薬は薄こげ茶色だったのに気が付いた。
 呆けている柄崎に丑嶋の視線が合わさる。丑嶋は空になって邪魔になった小瓶を手で払うと、
胡坐をかいて座っている柄崎の足を跨いできた。

206:コーヒーを一緒に・・・2 9/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:33:28 X58NEJuU0
 至近距離で丑嶋に触れ、柄崎は逃げようとする。ちょうど股の上に丑嶋がいる為、尻の谷間
に勃起した性器が当たる体制になってしまうのだ。不味い。もう完全に不味い。媚薬と、刺激
的すぎる体制にこれだけで射精してしまいそうに興奮してしまう。
 ところが、丑嶋が上に乗っているので思うように逃げれない。ただ肩を左右に振り、少しだけ
だが床につけた脚をバタつかせることしか出来ない。
 丑嶋は往生際の悪い柄崎の両頬を両手で挟むと、鼻と鼻が触れ合いそうな距離に自分の顔を
近づける。最早、首を曲げて視線を反らすことも敵わない。かと言って、目をつぶってしまう
には勿体無いと感じる程に丑嶋の眼は穏やかだった。
 ついに丑嶋に捕らわれてしまった柄崎は何か気の利いた言葉を言わねば、と思う。だが声帯は
音を出す方法を忘れ、代りに湿り気を帯びた吐息が漏れ、すぐ近くにある丑嶋の唇にかかった。
 丑嶋の唇についていた媚薬の残滓は柄崎の吐息に揺れ、数滴の粒は一粒にまとまって唇から滴り
落ちようとしている。柄崎は今にも滴り落ちそうな水滴を舌で舐め、たった一滴だが味わいながら
飲みこんだ。
 「やっとその気になったか。この小心者」
 丑嶋が楽しそうに言う。柄崎は反論せず、言葉を紡ぐ丑嶋の唇に舌を這わせた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
 柄崎、へタレ脱却?まだ終わりませんが、続きはいずれ。お目汚し失礼しました。貴重なスペース
をお借りし、ありがとうございました。

207:風と木の名無しさん
10/09/24 02:45:35 fKrqYAVaO
>>198
生殺しすぎます姐さん!
まさに社長を目の前にお預けくらう柄崎の気持ちをリアルに味わわせて頂けて嬉しいやら焦れったいやら…

続きを首長でお待ちしてますm(_ _)m

208:風と木の名無しさん
10/09/24 04:41:55 VRUBUabZO
>>206
ちょっ…!マウンティングポジションな社長にときめいてたら
寸止め…だと…
浴槽に突っ張り棒して続きを待ってますよ~!

209:風と木の名無しさん
10/09/24 14:40:29 43l9/FPDO
>>192
ツンデレイ白爵サマktkr
生放送で萌え録画で萌え、姐さんの投下で3度萌えたよ
ありがとう!!!


210:たぶん全部気圧のせい 前編 1/6
10/09/25 20:04:05 lCoPsCGF0
難局のコックさん改め、シェフ。半生注意です。

ドクタ.ー×仁志村 後、新やん×仁志村。
前者を新やんが見てしまったその後。ぬるいエロがあります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「仁志村君、楽しいことしない?」
「え、なに?どんな?」

満面の笑みを浮かべて厨房へやってきたドクタ.ーに、うきうき聞き返してしまったのがそもそもの始まりだった。

太陽が姿を見せなくなって2ヶ月。
ドーム藤基地周辺は連日マイナス70℃を記録する夜の世界に支配されている。
のんびり穏やかマイペースの仁志村も、正直かなり滅入っていた。
計画的に仕入れたラーメンを盗み食いされたり、こっそりバターをかじる人間が現れたり。
話すたびにちょっとだけ緊張してしまう、雪氷の研究者であるモトさんには、「飯を食うために南極にきてるんじゃない」
とまで言われてしまった。
悪気はないのだろうが、これにはかなり傷ついた。
仁志村はその飯を作る為に、富士山よりも高く、ウイルスさえ死滅するこの白銀の砂漠にいるのだから。

そんなわけで、仁志村はまんまとドクタ.ーの毒牙に掛かった。
ドクタ.ーの言う“楽しいこと”は、仁志村の予想を遥かに超えたものだった。

「大丈夫、俺、医者だからね。なんかあったらすぐ治療するし。人体のスペシャリストだよ、仁志村君」
「はあ。・・・え、治療?」
「人間、性欲は持ち続けないと。それから何よりね、他人に触れること。これは一番大切。自己処理は勿体無い」
「いや、あの」
「じゃ、試してみようか」
「え、あの、ちょっと、・・・・あっ」

211:たぶん全部気圧のせい 前編 2/6
10/09/25 20:05:39 lCoPsCGF0

・・・・毒牙というほど、悪くはなかった。むしろすっきりしてしまった。
良くも悪くも、仁志村は環境に馴染むのが上手い。
14,000キロの彼方にいる家族の顔を想うと、とんでもないことになってしまったような気がしないでもない。

そして数ヶ月振りの夜明けが訪れてすぐ、悲劇は起こった。
ドクタ.ーと“楽しいこと”をしているところを新やんに見つかってしまった。
口止め料として強請されたいくら入りおにぎりは、不渡りとなった。(おそらくドクタ.ーの所為で)

仁志村は再び気が滅入った。

***

医療棟にあるドクタ.ーの診療室は厨房と違い、きちんと閉まるドアがある。

果たして、ドクタ.ーは全く懲りていなかった。
仁志村もなんだかんだで結局乗ってしまった。

消毒用とも飲用ともつかないアルコールの匂いが漂う室内は、仁志村の荒い息遣いと、体液が交じり合う濡れた音で満ちている。
毎夜ドクタ.ーがマスターに変身する“BARフクダ”のソファ席兼診察台の上、
執拗なほど長い口付けの合間に、仁志村は必死に空気を掻き集めていた。

「仁志村君、慣れて来たじゃない」
上から覗き込まれる笑みを含んだ視線に耐えかねて、仁志村は無言で目を伏せた。
身体の奥できつく擦れる異物の感覚が鮮明になる。
ドクタ.ーの動きに合わせ、下腹部に広がる痺れがより強くなって、眩暈がする。

「随分気持ちよさそうだねぇ」
・・・この人は本当にイイ趣味をしている。

思わず手をあげ顔を覆った仁志村の手首を、ドクタ.ーは笑いながら強引に診察台に押し付ける。
そのまま強く突き上げられて、仁志村は掠れた悲鳴をあげた。

212:たぶん全部気圧のせい 前編 3/6
10/09/25 20:06:30 lCoPsCGF0
背筋に強い痺れが生まれる。
―もう少し。
喘ぎながら、そのまま上り詰める熱を逃そうとすると、図ったかのようにドクタ.ーが動きを緩めた。
駆け上がる快感を引き止められ、取り残されたような浮遊感に不安になって、仁志村は眉を寄せ薄く目を開けた。
ドクタ.ーの肩越しに天井の照明がぼやけて見える。

初めの頃は喉元まで圧迫されるような異物感がひどく、苦しいだけで全く楽しくなかった。
今でも異物感はある。しかし、回を重ねるごとに仁志村の身体に馴染んで、確実に気持ちが良くなっている。
こういう快楽があるんだなぁと、元来淡白な仁志村は他人事のように思う。
平時でさえ淡白だったのに、ドクタ.ーの手を取ってしまうのはなぜなのだろう。
人恋しいから?命に係るほどの寒さ故の本能?(明後日方向なのは置いておいて)
それとも気圧が低い所為なのか。そんなわけはないな、それはむしろ逆じゃないのか。
けれども仁志村は、閉ざされたこの場所で8人の隊員が次々に発情期を迎える様を想像してしまった。
滑稽すぎて、逆に恐ろしかった。

「ほら仁志村君、集中して」
「ふ・・・・あ・・」
挿入の角度が変わり、奥まで突き上げられた身体がたわむ。
診察台が仁志村の下で軋んだ音を立てる。
ドクタ.ーは顔を反らす仁志村の顎を強い力で押さえつけ、酸素を求め開いたままの口腔へ舌を差し入れた。
絡まる舌の動きに混ざり合った唾液が仁志村の喉を塞ぐ。
「ん・・・っ・・」
ただでさえ息苦しいのに、呼吸まで奪われたら本当に死んでしまう。
ドクタ.ーの胸を上手く力が入らない腕でなんとか押し退け、首筋を這い上がる甘い痺れと苦痛に苛まれながら、仁志村は濡れた目を上げた。
「ドクタ.ー、もう・・・」
「もう無理?」
ドクタ.ーは薄く笑いながら、言葉なく首を縦に振る仁志村の腫れた唇を柔らかく噛むと、体勢を変えた。
仁志村の腰がその予感にひくりと反応する。
焦らされることなく与えられる快楽に、すぐに何も考えられなくなった。

213:たぶん全部気圧のせい 前編 4/6
10/09/25 20:08:05 lCoPsCGF0
****

レンズ越しのきつい眼差しが先程からずっと仁志村に向けられている。
右手を怪我した新やんは、モトさんのサポートに付く事ができなかった。
厨房で出来る事もないのだが、先程から作業台に肘をついた姿勢で居座っている。

―やりにくい。

仁志村は針の筵に座っているような気分で、数日前のドクタ.ーとの会話を思い出していた。

『ドクタ.ー、新やんと何か話した?』
渡されたウエットティッシュで情事の残滓を拭いながら仁志村はドクタ.ーを伺う。
もともとこれが聞きたくて、診療室に足を運んだのだった。
『うん、俺を脅すのは百万年早いって事で、いくらは没収しといた』
『それで』
『それだけ』
ドクタ.ーはそっけなくそう言うと、火を点けたばかりのタバコを目を細めて不味そうに吸った。
『それだけって・・・あと4ヶ月もあるのに』
さすがに気まずい。
ここでの生活はまだまだ続く。それなのに、“口止め料”を取り上げた上に、何のフォローもしていないなんて。
ドクタ.ーはどこか寂しげに笑った。
『4ヶ月も、か。前にも言ったけどさ、俺はあと数年ここにてもいいな』

「仁志村さーん、聞いても良いですか」
のんびりと響いた新やんの声に、仁志村は飛び上がりそうになった。
「・・・・なに」
「前、オレが凍傷になったとき、モトさんのサポートに代わりに入ってくれたでしょ。モトさんとどんな話してたんですか?」
「どんな話って・・・・削りだした長細い氷・・・コアだっけ?それの値段とか・・かな」
万が一落したら弁償しろ、と脅された気もする。
「ふうん」
「なんで」

214:たぶん全部気圧のせい 前編 5/6
10/09/25 20:08:56 lCoPsCGF0
「モトさん、結構キツイとこあって、俺、割と落ち込むんですよねー」
「うん」
「いや、すげーいい人なんです。大好きなんですけど、ウチの教授より全然イケてるし」
仁志村も異論はなかった。モトさんはすごくいい人だし、楽しい人だとも思う。
気難しい所が多々あって、機嫌が読みにくいことも沢山あるけれども。
自身の仕事に対する姿勢は、畑違いの仁志村から見ていても格好良い。
生活サポートチームとして同じ隊にいることが誇らしく感じる程に。

「で、モトさんとも、あんなことしてるんですか」
油断していた仁志村は、危うく持っていた包丁を落しかけた。無意識に瞬きの回数が多くなる。
「・・・あんなことってなにかな」
「イチャイチャ、とか。キスしたりと」
「してません」
新やんが仁志村のほうへ身を乗り出す。
「じゃ、ドクタ.ーとだけ?」
「黙秘します」
「俺とは嫌ですか」
「え?」
さらに新やんは仁志村に近づいた。
「俺ともしてください」
仁志村は笑い飛ばそうとしたが、新やんの思い詰めた様な表情を見て諦めた。
新やんはつい最近遠距離恋愛の恋人に振られたばかりだった。
相手の元に駆けつけられないもどかしさを、吹き荒ぶ雪嵐の中で必死にやり過ごしていたのを知っている。
仁志村は少し心配になってしまった。
「自棄はよくないよ、新やん」
「自棄じゃないです。だってオレがモヤモヤしちゃったの、仁志村さんの所為ですよ。あんなやらしい顔してるから」
「・・・インマルサットの鶯嬢はどうしたの」
「それはまた別の話で。つーか先の話で。だから、」
「減るからだめ」
「むしろ減らしましょうよ!」
「やだよ」

215:たぶん全部気圧のせい 前編 6/6
10/09/25 20:10:48 lCoPsCGF0
「おねがいします!」
「はいはい、食事中あぐらかかないようになったらね」
「もうかきません!ぜったい」
「・・・新やん、何言ってるかわかってるの?」
“自分を棚にあげて”、とはっきり顔に書いて新やんはむっと押し黙った。
眩しい程白い包帯が巻かれた右手を仁志村に差し出す。
「わかってます。だって手が不自由なんですよ、仁志村さん」
「反対があるでしょうが」
「いや、俺はこっちって決めてるんで」
「しらないよ。さ、向こうでビデオでも見ておいでよ」
仁志村は一方的に話を切り上げ、調理作業に戻った。
その場で立ち尽くす新やんが視界の隅に入ったが、無視を決め込んだ。

「モトさんに、言っちゃおうかな」

今度こそ高い金属音を響かせて包丁が床に落下した。
どうしてモトさんなんだ。
驚きすぎて包丁を拾うことも出来ず、仁志村は暫く真正面から新やんを見つめてしまった。
新やんは不貞腐れた子供のような顔をして仁志村を睨んでいる。
「冗談、だよね」
新やんは一瞬目を逸らした後、何かを振り切ったような鋭い視線を仁志村へ向けた。
「冗談かもしれないし、冗談じゃないかもしれません」
仁志村の心臓がぎゅっと音を立てて収縮した。
「口止め料はきっちり頂きます。ご存知の通り俺、今、手負いのケモノですから」
やっぱり自棄じゃないか。
可愛い弟分のようだった新やんの豹変振りに、仁志村は文字通り開いた口が塞がらなかった。
気圧か。気圧だな。きっとそうだ。難局の低気圧はきっと何か違うんだ。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

10レスいってしまうので、ここで中断します。後編につづく。
貴重なスペースありがとうございました。

216:風と木の名無しさん
10/09/26 00:20:18 2WXTFfNH0
>>215
いよ!待ってました!!!
そして続きも待ってますとも!!!

217:風と木の名無しさん
10/09/26 00:38:28 wNZyqtVTO
待ってました2イヤン!


218:風と木の名無しさん
10/09/26 19:25:47 M0re7NH00
URLリンク(ranobe.sakura.ne.jp)

219:風と木の名無しさん
10/09/26 21:32:45 KH/4rHaz0
>>215
まってまーす

220:ヘンリ-とうわさばなし 1/18
10/09/26 22:49:05 DIJoTG/P0
ちょいとスペースをお借りします。

きか○し。ト-マス 擬人化(機関車→機関士)エロ有。
4×3に4←6絡み。6好きな方はスルー推奨でお願いいたします。

以前こちらに投下しました「ゴードンとヘンリーと腕の中のホシ」の引き続き
といっても、前の読んでなくても読めますが。だいぶマイ設定入ってます。
少々長いので2分割で。エロは後半にて。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

噂話はとにもかくにも時間も場所も選ばずに、いつも不躾に舞い込んで来る。
人が集まれば集まっただけいろんなネタがあるわけだけど、中には特にそういったものに好かれてしまう人がいたりする。
彼がそこにいるだけで、彼の名前が出るだけで、新しい噂が次から次へと飛び出してくる。
僕の恋人は今日もまた、噂話の真ん中にいた。

221:ヘンリ-とうわさばなし 2/18
10/09/26 22:50:04 DIJoTG/P0
「なぁヘンリ-、知っているかい? タンク機関車の機関士で一番可愛いって評判のあの子が、ゴ-ドンに告白したらしい」
ジェ-ムスはワクワクが止まらないといった表情で、僕の肩を叩いて言う。
「噂は聞いているけど、タンク機の機関士って女の子はロージーしかいないよね。あの子なの?」
「六号機の子だよ」
「六号って……パーシ-? まさか。男の子だろ」
「そうなんだ。モテるのは相変わらずだけど、まさか男まで落としちゃうなんて、一体どこまで罪作りなんだろうね?」
ジェ-ムスはゴ-ドンと僕の関係を知らない。
ゴ-ドンと僕が男同士でありながら恋人として付き合っていることを知っているのは、年長者のトビ-とその夫人のへンリエッタだけ。
僕らが付き合うきっかけになった出来事に、トビ-が少し関わっていたからだ。
男同士の社内恋愛なんて隠して当然のものだし、何よりゴ-ドンの人気ぶりを考えると、とてもじゃないけど公言するわけにはいかない。
いつも一緒にいる僕らは表向き親友ということになっていて、今のところはそれでなんとか済んでいる。特に噂にされたこともない。
勤務中は仲良くするよりも鼻息荒く言い争っている事の方が多いから、当然の流れなんだろうけど。
「よくもこう毎日、新しい相手との噂が立つもんだよね。でも告白しちゃったなんてのは初めてだろ」
「うん。面と向かって言った子は初めてだね。男の子も……初かな」
「君も寂しくなるんじゃないか? 親友に恋人なんか出来ちゃったら、居心地悪いよねぇ」
「そんな事ないけどね。四六時中一緒ってわけじゃないんだし」
そっけない事を言っておく。食い下がって怪しまれると面倒だし。
「それにまだ、ゴ-ドンが付き合うって返事をするとは……」
OKなんてするはずがないのは判っている。彼には既に僕という恋人が居るんだから。
「いーや、するさ。可愛いからなぁ」
「確かに可愛いけど、それだけでOKするとは思えないな」
「性格もそれなりでしょ。僕ほどじゃないけどね」
よく言うよ、この自惚れやさん。

222:ヘンリ-とうわさばなし 3/18
10/09/26 22:51:49 DIJoTG/P0
「なるようにしかならないよ。僕らが口を出すことじゃない」
「まぁね。でも見てなよ。明日には、溶けちゃうくらいくっ付きあっているかもしれないよ?」
「他人事だと思って……」
意地悪そうににんまり笑うジェ-ムスに呆れた視線を送って、次の仕事のために機関庫へ向かう。
ジェ-ムスはあとを追いかけてきて、まだこの話題を引きずろうとした。ちょっと、しつこいなぁ。
「なんでも、みんなの前で堂々と『好きです。僕と付き合ってください!』って大声で言っちゃったらしいよ」
「だからこんなに噂されているのか」
今回は特に、ソド-鉄道の関係者でこの噂を知らないのはトップ八ム・八ット卿くらいのものじゃないかと思うくらいに、広がりまくっている。
『噂話が広まるのはゴ-ドンの急行より速い』なんて誰かが言っていたけど、ここまで来ると笑い事じゃない。本当にその通りだ。
「そうなんだよ。それでその時、ゴ-ドンがまんざらでもないって顔していたって言うから!」
「……へぇ」
あくまでも噂だ。見てもいないのに、気にすることなんかない。
「あれ、噂をすればだ。それもふたり一緒だぜ」
線路を何本も挟んだ向こうにある建物から、ゴ-ドンとパーシ-が出てきた。
ゴ-ドンは僕らに気付くと、いつもと変わらない様子で手を上げて合図をくれる。ジェ-ムスも僕もそれに手を振って応えた。
ゴ-ドンの後ろで、パーシ-も手を振っている。小さい身体をめいいっぱい、大きく使って。僕から見ても十二分に可愛いパーシ-。悔しいけど二人、絵になるなぁ。
「一便追加になった。帰るのが少し遅くなるぞ」
相当な距離があるにもかかわらず、ゴ-ドンがよく通る声で言う。僕も頑張って声を出した。
「わかった。先に帰って待ってるよ」
もう一度手を振りあって了解したことを確認しあう僕らを見て、ジェ-ムスが僕を肘でつついて言った。

223:ヘンリ-とうわさばなし 4/18
10/09/26 22:53:27 DIJoTG/P0
「でも、一番怪しいのは君なんだよね」
「怪しいって、なにが?」
「実は付き合ってんの? ゴ-ドンと」
「外出なんかに付き合う事は多いよ」
「その付き合うじゃないよ。君がゴ-ドンの恋人なんじゃないの?」
「何処から出てくるんだ、そんな話」
「夕飯はいつも一緒なんだろ。しかも君が作ってるって」
「ひとり分より二人分作るほうが効率がいいんだよ。無駄がなくて安上がりだし」
「そうじゃなくて。なんでわざわざ手料理なのかって事」
「僕の健康管理のためだよ。へンリエッタから自炊を勧められてね。ゴ-ドンが一緒なのはさっきの理由。それだけさ」
「そう? だったら、あの二人がくっついても、ほんとうに寂しくないんだね?」
「……寂しくないよ」
「強がっちゃって」
ジェ-ムスは呆れたように言って僕の肩を叩くと、彼の真っ赤な愛車のほうに走って行った。
その後姿を見送りながら、ため息をつく。
そうだ、強がりだ。
ゴ-ドンの事は信じている。誰に告白されようと、彼が浮つくなんてありえない。
男が男を好きなるって、そしてその想いを伝え合うなんて、生半可な覚悟では出来はしない。それを乗り越えた僕らだもの、多少の事で揺らぎはしない。
でも、誰かと噂になるたびに、誰かと二人だけで居る姿を見るたびに、モヤモヤする。
無駄なヤキモチで生まれる疲労感と、妬いた自分に対する嫌悪感。わずか一瞬の疑心に対する罪悪感。
自分の中にこんなにねちっこくて湿った部分があるなんて、彼の恋人になる前には知りもしなかった。ひどく女々しい性格に、ほんとうに嫌気がさす。
一体いつまで、これからいくつの噂に、悩まされ続ける事になるんだろう。

224:ヘンリ-とうわさばなし 5/18
10/09/26 22:55:00 DIJoTG/P0
今日の仕事は定時で終わり。愛車の点検をして、いつものようにしっかり磨き上げる。それから日報を書いて提出。
着替えを済ませてから宿舎の自室に帰る前に、駅前の商店街でお買い物をする。
ジェ-ムスにも説明したとおり、最近は自分の健康管理のために、自炊をすることにしている。
新婚気分を味わっているわけでは、決してなくて。
ゴ-ドンと僕が付き合いだした頃の事。愛車の不調のストレスと整備疲れがたまった僕は、食事が全く喉を通らなくなった。
食べない日が何日か続くと、このまま何も食べなくても生きていけるんじゃないかと思うようになるんだ。
水分さえ取っていれば動けてしまうから、お腹も空かないし、食への欲望が全く出なくなる。
でもそれから、頻繁に貧血を起こすようになった。そして、ついに倒れた。
それを助けてくれたのがゴ-ドンとトビ-で、そのときのある出来事をきっかけに僕らは恋人になった。
後日事情を知ったへンリエッタから勧められて、彼女の助力を受けながら自炊を始めた。
無理せずに食べられる量を、毎日きちんと摂る。独りだと不精してしまうからと、ゴ-ドンが付き合ってくれた。
それからは、夜行や早朝便なんかで時間が合わないとき以外は、毎日僕の手料理。
始めてみると意外と料理が楽しくて、食べてくれる人がいるのも嬉しくて、驚くほどの成果を挙げた。
気付けばレパートリーもかなり豊富になったし、彼の好みも完全に把握した。
長い絶食でガリガリに痩せていた身体も今ではだいぶふっくらして、お腹周りがちょっと心配になってくるほど。
顔見知りになった商店街の人たちにすすめられたら、あっという間に買い物籠は旬のお野菜や新鮮なお魚で一杯になる。
今日は安くて良いものが沢山手に入った。気分がいいから、ゴ-ドンの大好きなものを沢山作ってあげよう。


225:ヘンリ-とうわさばなし 6/18
10/09/26 22:57:13 DIJoTG/P0
夕飯の準備はばっちり。お風呂も済ませて、ベッドを整える。
男の単身部屋に似つかわしくないダブルのベッドに洗いたてのシーツを被せて、枕をふたつ並べて置いた。
一緒に眠る機会が増えたから、成人の男二人でシングルベッドはさすがに辛いって、二人で買ったダブルのベッド。
みんなにバレないように運び入れるのに苦労したんだ。独り住まいでこの大きさは、あまりにも不自然だから。
でも実は、この上で肌を重ねたことはまだ数えるほどしかない。
この宿舎の壁は結構薄くて、隣の部屋に音が漏れてしまうことが時々ある。
普通の会話なら漏れはしないけど、どうやら僕は事の最中の声がわりと高くて大きいようだから、きっと確実に聞こえてしまう。
僕の部屋の両隣はジェ-ムスとゴ-ドン。問題はジェ-ムスだ。噂好きの彼に聞かれてしまうと、色々困る。
それはゴ-ドンだって同じ考えのはずで、だから今まで、みんなが仕事に出かけている日中や、ジェ-ムスが夜勤の日以外の行為は避けてきた。
寄り添って眠るだけの愛の巣。それでも、独りじゃないならいい。
仕事の都合で離れて眠らなくてはならないとき、広い広いベッドの上で独りぽつんと眠るのは、孤独でとても辛い。
一度だけ、独りは嫌だって、離れて眠るのは寂しいと言って駄々をこねたことがある。
次の日に、彼は大きなくまさんのぬいぐるみを抱えて帰ってきた。抱えるものがあれば少しはマシだろうって。
それでもやだって泣いた僕を優しく抱いてくれたけど、彼が本当に困っていたから、それからはわがまま言わずに独りに耐えた。
寂しくなったらくまさんを抱っこ。それがこの部屋で過ごす時の癖。
自分の部屋なのに独りで居られないなんて……変な癖ついちゃったな。
ふと時計を確認する。
「遅いな……ゴ-ドン」
増えた仕事が一便だけなら、もう帰ってもいいはずなんだけど。また追加があったのかな。
もう少し独りで待たなくてはならないらしい。今日もいつものようにくまさんを抱きかかえて、だだっ広いベッドに独り転がった。

226:ヘンリ-とうわさばなし 7/18
10/09/26 22:59:56 DIJoTG/P0
しんとした静けさが耳に痛い。自分の心臓の音だけがやたらと大きく響く。
どくん、どくん、どくん……心臓ってこんなに大きな音を立てて動くものだったっけ?張り裂けそうなくらい大きな音。
一定のリズムを乱すことなく刻まれるその音に集中すると、指先がピリピリとしてきた。
身体の奥の奥の、真ん中の部分が握りつぶされるようにきゅっと傷む。
ここのところ体調はいいはずなのに、ご飯もちゃんと食べているのに、また貧血?
おかしいな。なんなんだろ?落ち着かなくちゃと思って深呼吸をしたら、息を吐くと同時に涙が溢れた。
寂しいからって、泣くか、普通?男だろ。
もうすぐゴ-ドンが来てくれるんだから。追加の仕事を終わらせて、お腹空いたって言いながら。それまでの我慢。
大丈夫。独りじゃない。この子がいる。ゴ-ドンがくれた、くまさんがいる。
いつからだろう、この子の存在に頼り始めたのは。この布と綿の塊が、唯一、縋りつけるもの。
いつまで、この子に頼らなくちゃならないの?
ゴ-ドンの気持ち次第では……これからも、ずっと?もし彼が、パーシ-を受け入れてしまったら……。
ありえないことだと判っていても、恐ろしいくらい不安になる。だってもう完全に、心も身体も離れられなくなってしまっているから。
早く会いたい。早く触れたい。この冷たいぬいぐるみじゃなくて、暖かいゴ-ドンに。
どくん、どくん……
僕の中で鳴り続ける鼓動、その音だけを残して、次第に他の感覚がなくなっていく。
意識が朦朧としてきた。痛みもなくなった。
どくん、どくん、どくん……かちゃ……どくん、どくん
ただひたすら事務的に刻まれていく音に、違うものが混ざる。なんだろう?
どくん、どくん……ぱたん……どくん、どくん
まただ。あぁもう邪魔しないで。
ゴ-ドンが来てくれるまで、くまさんと二人で待っていなきゃならないんだから。うるさくしないでよ。
腕の中で何かが動いた。するりとすり抜けようとする感覚に気付いて、手を伸ばして縋りつく。
やめて、逃げないで。……盗らないで。捕まえようともがくけど、手応えがない。
なんで居なくなるの?なんで置いていくの?独りにしないでよ……!

227:ヘンリ-とうわさばなし 8/18
10/09/26 23:02:13 DIJoTG/P0
襲ってくる喪失感から逃げ出したくて、夢中で手探りした。何度掴んでも空を切るだけ。探しても探しても見つからない。
絶望に似た感情が沸きあがってきた。怖い……独りは怖い。
いやだ!助けて、ゴ-ドン!捨てないで……置いていかないで。帰ってきて……!
「うぁあああああぁああ!!」
うるさい、誰の声?僕?叫びたくなんかないのに、叫んでいるの?やめて、止まれ、止まって……!
突然、身体が強い力でぐっと包み込まれた。直後に聞こえた声に、意識を揺さぶられる。
「……リー! 起きろ! 目を覚ませ、ヘンリ-!!」
「あ……」
一気に、失っていた全ての感覚を取り戻した。指先の痺れも、胸の痛みも、頬を伝う涙の感触も。
そして、腕の中から消えた存在と、換わりに僕を包み込んだ腕の暖かさを認識する。
「………」
声が出ない。身体が震える。心臓の音は、もう聞こえない。
「ヘンリ-、もう心配ない。俺だ、ゴ-ドンだ。わかるな?」
「……ゴ-ドン……」
「あぁ、俺だ。……今帰った。遅くなってすまない」
「……」
確かに、ゴ-ドンだ。彼の事を確認した途端、どっと疲労感に襲われた。肩口に顔を埋めて、身体の全てを彼に任せる。
「もう大丈夫だ。何処にも行かない」
「……?」
「だから泣かないでくれ。捨てたりなんかするもんか……!」
身体が痛いくらいに力強く、抱きしめられた。ゴ-ドンの声が震えている。何があったんだろう。
かろうじて動かせる左腕をゴ-ドンの背中に回して、掌でぽんぽんとする。
「……どうしたの?」
「お前がうなされていた。泣いていたんだ」
「僕が?」
「寂しかったんだろう。ごめんな」
「……うん」

228:ヘンリ-とうわさばなし 9/18
10/09/26 23:04:25 DIJoTG/P0
肩越しに見えた枕元にくまさんが居た。投げ出されたようにおかしな姿勢で転がっている。
なんであんなところに?くまさんのほうに伸ばせる限り手を伸ばすと、ゴ-ドンが声を荒げて僕の腕を乱暴に掴んだ。
「! あんなものの相手をするな!」
不意に腕を曲げられて肩に痛みが走る。
「痛っ」
「っ、すまん! ……もうあれに触らないでくれ」
「どうして?」
「お前があれを抱いているところを見たくない」
「君がくれたんだよ」
「そうだ。だが、ここまであれに依存するとは思わなかった」
「依存なんかじゃ……」
そりゃぁ、頼りにはしているけど。君がいない間、慰めてくれるから。
そもそも、君が早く帰ってきてくれれば寂しい思いすることなんてないんだけどね。
なんでこんなに遅かったんだろう?追加が一便だけならもっと早かったはず。
「ねぇ……追加の仕事って何だったの?」
「……クロバンズゲートからナップフォードまでの定期便だ」
それは多分、十八時にクロバンズゲートを出る普通客車便のこと。スカ-ロイたちの鉱山鉄道との連絡便で、その区間限定の便としてはそれが最終になる。
でも、それを牽いて今の時間?時計の短針は、もうとっくに十の数字を超えている。
聞かなきゃよかった。ため息をつきながら、頭をゴ-ドンの肩口に戻す。
腕、離してくれないかな。握られた部分が痺れてきた。さっきからずっとピリピリしている指先も加えて痛みを増してきたみたいで、少し辛い。
「……パーシ-のところに寄っていた」
「!」
全身から血の気が引いた。とっさに両耳を手で塞ごうとしたら、握ったままの腕がまた強く引かれる。
ありったけの力で逆らうけど、ゴ-ドンに敵うわけはない。たやすく引き剥がされた。
腕が痛くて、胸の奥が握りつぶされるような圧迫感に襲われる。止まりかけていた涙がまた溢れ出してきて、どうしようもない。



[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
今半分、止められる前に中断します。続きは、後ほど。

229:風と木の名無しさん
10/09/26 23:24:12 YMedNfF90
支援

230:風と木の名無しさん
10/09/26 23:30:02 snNe9PME0
>>220

うわああああ続きが気になるうううう
全裸でお待ちしてますのでどうか風邪引く前に続きを……!

231:風と木の名無しさん
10/09/26 23:48:03 11cenOQE0
>>215
既に萌え死にそう…おまちしています

232:風と木の名無しさん
10/09/27 00:18:36 MbXwbAoIO
なんなんだこの焦らせ祭りはww

233:ヘンリ-とうわさばなし 10/18
10/09/27 01:12:55 EypgH9Dp0
日付が変わったので改めまして、>>220-228の続き行きます。
支援と米ありがとうございます。よろしくお願いします。
読み返して気付いた……エロ少なっ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「聞いてくれ」
「聞きたくない!」
「聞いてもらわなくちゃ困る」
「困らないよ! 言い訳なんか聞きたくない!」
「言い訳じゃない」
「パーシ-の所に寄って遅くなったんだよね、わかったから、わかってるから! 離してよ」
「寄る必要があったんだ、どうしても」
「寄っちゃ駄目だなんて、言ってない」
「だったら聞け!」
「やだ……聞きたくないよ……」
「話をしてきた。断ったんだ、付き合えないと」
「! ……どうして」
「どうしてって……俺にはお前がいるじゃないか」
「……パーシ-は、いい子だよ。僕なんかより、ずっと……」
「そうだな。お前みたいに泣いたりせず、真剣に話を聞いてくれた」
「……」
「あいつの場合はな、勘違いだ」
「……勘違い?」
「憧れと恋心を混同してしまっていた。話し合ったらわかった。納得してくれたよ」
「憧れていただけ……ってこと?」
「そうだ。心や身体を求められたわけじゃない」
「……最悪だ、僕」
「まったくだ。ぽろぽろ泣きやがって。俺を疑ってんのか?」
「疑ってなんかないよ! 信じてる! ……ただ……」
「ただ?」
「噂が多すぎて……イライラする。辛いんだ」

234:赦される為の罰 1/4
10/09/27 01:13:39 qhuXS7sYO
浄化ー。盾×駆動。ぬるいエロばっか。両方とも座位。前半は対面です。3話以降、6話前です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

駆動の頬を伝うそれが汗なのか涙なのか、触れたところでわかるわけもないのに、
盾は思わず紅潮した駆動の頬に右手を滑らせた。
駆動は潤みきった眼差しを盾に向けると、甘えるように頬をこすりつけた。
「んぅ……」
鼻にかかった甘い声と吐息を隠すこともせず、駆動は盾の膝の上で腰をくねらせる。
盾は冷静な視線に時折快感を走らせながら、駆動の痴態を見つめていた。

制裁を終えた後、駆動はいつも盾を求めてきた。
何かに突き動かされるように性急に口付け、それをしなければ
死んでしまうとでも言わんばかりに切実な様子の駆動を盾は拒まなかった。
「あぁっ、あぁっ、すげ、いいっ…」
盾の肩に爪を食い込ませ、駆動の薄いからだがのけぞる。
盾は呼吸を読んで下から突き上げてやる。駆動の声に泣きが混じりだし、限界だと伝えてくる。
盾は躊躇うことなく駆動のそれに手を伸ばし、促してやりながら
先端部に親指の爪を立てた。
その瞬間、駆動は目を見開き、直後にかすれて艶めいた悲鳴をあげながら達した。
上体を倒し、盾に体重を預け、目を閉じて荒い息をつく。
盾が耳元に口付けると、それに反応してひくりとからだを痙攣させた。

235:ヘンリ-とうわさばなし 11/18
10/09/27 01:14:22 EypgH9Dp0
「聞くたびにこうなのか」
「今回は、特別、だけど……」
「まったく……身が持たないぞ。少し割り切れ」
「……うん」
「相手には困らない俺様が、何故お前を選んだのか……少し考えろ」
「…………」
「自分の魅力に自覚はないのか」
ゴ-ドンは明らかな呆れ顔。今思えば彼が僕の何処を好きになったのか、聞いた事が無い。
最初に繋がったのは身体から。いきなり強引に奪われて、その時は本気で殺意すら覚えた。
でもその後、心から僕の全てを欲していたのだと聞かされたら、意外なほどすんなりと彼の行為を受け入れてしまった。
なにより僕もゴ-ドンの事が好きだったから、好きな人から本気で求められれば、拒絶する事は叶わなかった。
それに乗じて彼を自分のものにしてしまおうと、我ながら随分無茶な理由で言いくるめて、この関係になだれ込んだんだ。
全てが都合よく上手く進みすぎたせいで、好きになったきっかけや相手に求めているもの、それらを語り合う事のないまま、今に至る。
ひとつだけ、彼を惹き付けているのが確実なものといえば……
「……身体?」
「否定はしないが……」
力強い腕に支えられて、僕の身体が横に寝かされる。枕の上にきちんと置かれた頭の横に、くまさんが転がっていた。
僕が手を伸ばすより早くゴ-ドンの手がくまさんを鷲掴みに持ち上げて、ベッド脇のサイドボードに背をこちらに向けて座らせた。
そっぽ向かせたりして、これからする事を見られないように……って、ぬいぐるみ相手に?
僕を気遣ってそうしたのだろうけど、時折垣間見えるゴ-ドンの幼さがとても可愛く思えて、つい笑いがこぼれる。
「……なにがおかしい」
「見られるのが恥ずかしいの?」
「そんなんじゃない。独り占めしたいんだ。見られるのも気に食わん」
「ぬいぐるみじゃないか。……君って意外と可愛いところあるよね、ゴ-ドン?」
「言ってろ」
身体全体に、慎重にふわりと重みが掛けられる。彼の唇と僕の唇が触れそうになった瞬間、ふと、大事な事を思い出した。
「ごはん! 食べる?」
「! ……なんだいきなり」
「晩御飯だよ。まだなんだろ?」
「後でいい。先にお前を食べたい」
「遅くなるよ」
「欲しいんだ。今すぐ」

236:風と木の名無しさん
10/09/27 01:18:36 EypgH9Dp0
あ、かぶってるんで、自分は後からまた改めます。
>>234さん、どうぞ

237:風と木の名無しさん
10/09/27 01:19:26 qhuXS7sYO
わー、間が悪いな私。待ちますね。

238:赦される為の罰 2/4
10/09/27 01:26:42 qhuXS7sYO
普段ならそこで盾も達し、からだを離していつもの2人に戻るのだが、今日は様子が違った。

盾はいつもは無意識に触れずにいる、駆動の背に貼り付いた傷痕に手を伸ばした。
事後の疲れでうっとり目を閉じていた駆動は反射的に離れようとする。
「なっ…にすんだよ」
盾の意図がつかめず、困惑したひどく気弱な声を上げた。
「君は、罰を受けたいんだろう。制裁を終えると必死に俺を求めてくる。
まるで自分の罪を知る者に傷つけられようとするかのように」
駆動は盾の囁くような、男性にしては線の細い声に急所を突かれたように黙り込む。
「ちが……、俺、そんなつもりじゃ……」
おどおどと子供のように怯えたまなざしに、盾は
『ああ、彼はいつも父親にこんな顔をしていたのか』
と胸の奥を痛ませた。だがそれは一切表情に出さず、温度のない視線を駆動に当てる。
駆動から目をそらさぬまま、盾は駆動の傷痕にじわじわと爪を立てた。

239:赦される為の罰 3/4
10/09/27 01:28:56 qhuXS7sYO
ひび割れ、くもった鏡にさえ、駆動の泣き顔はしっかり写り込んでいた。
盾は駆動を背後から犯しながら、そのほっそりした手で駆動の髪を掴み、
鏡の中を見るよう駆動に要求した。
「な…んで、んな、ひでえことすんだよ…」
「ひどい?君が望んだことだろう?お望み通り、
徹底的に俺が君を傷つけてやる」
「そんな、こと、俺、いつ言ったよ…?あ、くるし……」
駆動は快感と苦痛と恐怖に混乱し、そこから逃れようと身をよじった。
「弱くて、無力で、惨めな情けない自分。どんな気がする。今こんな目に遭わされて」
盾は吐息一つ乱さず、追い詰めるように駆動を苛んだ。
「わっ、かんねえ、よ。も、やだ…やめてくれよ…」
突かれるごとに声を漏らしつつ、駆動は震える声で訴えた。
「そんな自分は嫌いか?駆動…」
髪から手を離し、背中の傷痕を撫でながら盾が囁きかける。
駆動は涙を両目からポトポトこぼし、いやいやをするように首を振った。
「でもね、駆動。俺は君が好きだよ。君を裁くのは俺だ。俺だけが君を傷付ける。
君は気が済むまで泣けばいい。どんなに泣いても、俺は君を笑わない」
恐怖にこわばっていた駆動の表情が、みるみる和らぎ、紛れもない快感に彩られ始めた。
そして絶え間ない嬌声がこぼれ出す。
それから2人は無言で快楽を追い始めた。

240:赦される為の罰 4/4
10/09/27 01:31:12 qhuXS7sYO
「あー、腰いてえ…」
鑑識部屋で駆動に恨みがましい視線を向けられても、
盾はいつもの調子でマグカップを口元に運んでいる。
「んー?もうそんなトシなの駆動くん。若いのに大変だねえ…」
「若くないのにムチャする誰かさんのせいなんだけど。ね、責任とってくんない?」
「責任?どうやって?」
カップを口元で止めて盾はキョトンとした顔をする。
おっさんのくせに可愛いなんてずるい、と駆動は心の中で毒づきながら、盾の耳元に口を寄せた。
「明日、盾さん家に泊めてよ」
何を言われるやらと内心ビクビクしていた盾は、その可愛い要求に微笑み「そんなことならお安い御用だよ」
と請け合いコーヒーをすすった。
駆動はニカッと笑い、今度は俺が盾さんいじめる番ねと告げた。
盾の口からコントのオチのように、コーヒーが霧状に吹き出された。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すみません、ベタな展開+オチで。しかも間が悪くて。

241:ヘンリ-とうわさばなし 12/18
10/09/27 03:49:47 EypgH9Dp0
再び改めまして。>>235の続き参ります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「仕方ないなぁ……晩御飯を入れるスペース、ちゃんと残しておいてよね」
「心配するな。いくら食っても食い足りないよ」
ゴ-ドンが笑った。僕の頬を撫でながら、唇を重ねてくる。
大きくて強いゴ-ドンも、唇はとても柔らかくて暖かい。その暖かさが心地よくて、全身に安堵感が広がった。
帰ってきてくれたんだ。僕のところに。そう思うと、やっと、ゴ-ドンに触れることが出来ている実感がわいた。
二人を隔てる邪魔な服がゴ-ドンの巧みな手捌きで抜き取られると、触れ合う素肌の感触が気持ちよくて、少しだけ身体を動かして肌と肌を摩り合わせた。
お互いの胸に二ヶ所ずつ、小さく硬くあたる部分がくすぐったくて少し恥ずかしい。
それに気付いたゴ-ドンが、僕の胸に掌を当てて硬い部分を転がした。チリっと痺れに似た痛みが身体を貫いて、小さく声が漏れる。
いつのまにやら僕の身体は感度が上がって、完全に食べ頃になっている。
彼の唇は僕の耳に移り、舌先で耳に軽く触れながら、熱い吐息混じりに囁きかけてきた。
「もう気持ちよくなってきたのか」
「……うん」
「自分で魅力だと言うだけのことはあるな。いやらしい身体だ」
「いやらしいのが嫌いなら、食べなくてもいいんだよ」
「好き嫌いはしないんだ」
「明日のごはんはホワイトアスパラのフルコースだね」
「……緑のにしてくれ」
「白いのも、美味しいのに……んっ」
ゴ-ドンの手が胸からわき腹へ、更に下へと降りていき、妙に熱っぽい足の間に滑り込む。
僕が間違いなく男なのだと主張するそこに手が触れると、さっきよりも更に強い衝撃が走った。
既に緊張しきったそこを解きほぐすようにやさしく摩られる。摩られれば摩られるほど、かえってガチガチに凝り固まっていく。
容赦なく襲い掛かってくる快感に必死に抗うけれど、不意に胸の上で硬くなっているところを啄ばまれて、一気に堰が切れてしまった。
「んっ! ……ぅあ……っ!」
この部屋ではご法度の喘ぎ声。
一瞬だけ、隣室のジェ-ムスの存在が頭をよぎる。今日の彼は夜勤ではない。多分、部屋に居る。
でも一度声を出してしまったら、もう止められない。止める気になんてならない。


242:ヘンリ-とうわさばなし 13/18
10/09/27 03:50:39 EypgH9Dp0
声は美味しく食べてもらうための調味料だから、出来るだけ色濃いほうがいい。
ゴ-ドンの手や舌の動きに合わせて、身体が敏感に反応する。彼が触れる場所全てが気持ちよくて、全身が熱い。
「あんっ……あっ、はぅ……んっ」
足の間に鈍い痛みが走って、直後に更に強い快感が、お腹の底からじわりじわりと湧き上がってくる。
くちゅくちゅとソースをかき混ぜるのに似た音と、ちゅっちゅっと吸い上げるような音が室内に響いて鼓膜をくすぐった。
頭の中が真っ白になって、あっという間に何が何だかわからなくなる。
「あっ、あっ……んっ、ぁっ!」
足の間はとても熱い。けれど、急激に寒気を感じた。またあの恐ろしい感覚が戻ってきた。強烈な孤独感に胸が締め付けられてひどく痛む。
ゴ-ドンに触れられている、その感触は確かにあるのに、実感がひどく薄い。温もりを求めて伸ばした腕が、虚しく空を切った。また、何も掴めない。
「ゴ-ドンっ! ……どこ? ……ごーどん……!」
力が抜けてベッドに落ちかけた腕が、途中で受け止められた。
「ここだ、大丈夫。……離さない。何処にも行かない」
ふわりと身体を包み込む確かな温もりを感じて、胸の痛みが和らぐ。同時に、涙がどっとあふれ出してきた。
「……ゴ-ドン、よかった。ゴ-ドン!」
「ずっと側に居る。だから泣くな」
声がとても優しくて、言葉が発せられる度に耳に当たる吐息が熱い。
「ずっと、ずっと一緒だ。ヘンリ-」
「うんっ……うん、ゴ-ドンっ! 一緒、に……んっ……うぁっ」
引き裂かれるような異物感が、お腹のそこのほうから身体の中へと突き進んできた。
一緒どころじゃない、溶け合って同化するようなこの感じ。迫り上がってくる鈍い快感に、頭の中がかきまわされていく。
もう二度と離れないようにゴ-ドンの身体に必死で縋りつきながら、夢中で彼の名前を呼んだ。
「はっ……んっ、ゴ-ドン、ゴード……ンっ! あんっ、あっ……ゴー……ド、ン」
「くっ……ぅっ……ヘンリ-……っ!」
呼び返してくれるゴ-ドンの声も、段々荒くなってくる。
小刻みに激しく突き上げられる振動とゴ-ドンの吐く息のリズム、僕を呼ぶ声と僕の声が不思議と調和して、ぼんやりした頭の中に気持ちよく響いた。
「ヘンリ-……ヘンリ-!」

243:ヘンリ-とうわさばなし 14/18
10/09/27 03:51:58 EypgH9Dp0
「はっ、はっ……あんっ、ゴー……ドンっ! あぁっ、うぁ、あっ……んっ!あっ、あぁぁっ!!」
一段と強い刺激が、頭の先からつま先までを一気に駆け抜ける。
雷に貫かれたような、強い衝撃。それを最後に、僕の意識は完全に途絶えてしまった。


今日もゴ-ドンはいつもどおり。快調に急行をすっ飛ばし、時間通りに駅に着く。
そして僕は、少し遅れる。
「ヘンリ-! また遅れやがって! 何度やったら気が済むんだ、お前は!」
「うっるさいなぁ……。支線が遅れてきたんだよ、これでも随分取り戻したんだから感謝してよね!」
「支線の遅れくらいお前のところで全部取り戻せ! でかい機関車に乗っているんだ、そのくらい出来なくてどうする!?」
「でかいとかでかくないとか関係ないだろ! 安全運転が基本なんだよ!」
「安全かつ時間通り、それが基本だ! それをお前ときたら……」
恒例の口げんかに、駅員と車掌たちは肩をすくめて苦笑い。助手たちはハラハラしながら、お互いの機関士をなだめにかかる。
「鈍行は一区間分の走行距離が短いから、速度が出せないんだ。そう簡単には縮まらないよ!」
「お前に出来ないだけだろうが。俺様を見習って精進するんだな!」
「あぁぁもう! ……そうだね、そうするよ! ぜーんぶ、君の言うとおりです。ハイ」
これ以上言っても無駄。こんなときは大抵、僕が折れて言い合いは終了。
わかったらいいんだ、と言わんばかりの笑みを浮かべて頷くゴ-ドンに生ぬるい視線をちらりとだけ向けて、機関室内の作業に戻る。
僕なんかよりゴ-ドンのほうがずっとずっと腕がいいのは確かだけど、こう毎回やられっぱなしだとさすがに頭に来る。
それに誰かさんのせいで、朝からずっと腰が重いんだ。レバーを握るたび、ブレーキをかけるたびに、身体が悲鳴を上げていた。
「あれが先輩に向かって吐く台詞!? っとにわがままなんだから!」
「俺がいつわがままを言った?」
僕の真後ろで声がする。
いつの間に?ゴ-ドンが、機関室のドアの前に立っていた。
「いつもだろ! 俺様俺様、急行急行って……すっとばせばいいってもんじゃないんだよ」
「生憎すっ飛ばすしか能がないんだ。こんな風にな」
ゴ-ドンが機関室に乗り込んできて、僕の腕を掴む。
やばい、言い過ぎたかな。


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