10/08/25 20:02:22 2FdMY2d30
___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ | </LトJ_几l_几! in 801板
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
|[][][]._\______ ____________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| / |/ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |[]_||
|[][][][][][][]//|| | ̄∧_∧ |[][][][][][][][].|| |  ̄
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |
|[][][][][][][][]_|| / ( つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板59
スレリンク(801板)
ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
URLリンク(morara.kazeki.net)
2:風と木の名無しさん
10/08/25 20:04:17 2FdMY2d30
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★
1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。
(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」~「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4) 一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。
※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
相談・議論等は避難所の掲示板で
URLリンク(s.z-z.jp)
■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
3:風と木の名無しさん
10/08/25 20:04:57 2FdMY2d30
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
| いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
| | [][] PAUSE | . |
∧_∧ | | | . |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | | | . |
| |,, ( つ◇ | | | . |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4:風と木の名無しさん
10/08/25 20:05:37 2FdMY2d30
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
テンプレ1
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| モララーのビデオを見るモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| きっと楽しんでもらえるよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
5:風と木の名無しさん
10/08/25 20:06:06 2FdMY2d30
テンプレ2
_________
|┌────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^───────
└───│たまにはみんなと一緒に見るよ
└────────
_________
|┌────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────┘
6:風と木の名無しさん
10/08/25 20:06:37 2FdMY2d30
テンプレ3
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < みんなで
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < ワイワイ
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ~
| | / , | (・∀・; )、 < 見るからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < この体勢は
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ~
| | / , | (・∀・; )、 < 無理があるからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ
7:風と木の名無しさん
10/08/25 20:07:13 2FdMY2d30
テンプレ4
携帯用区切りAA
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中略
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
中略
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
8:風と木の名無しさん
10/08/25 20:07:41 2FdMY2d30
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
|
| ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
| ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
| ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
| ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
| ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
| ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
| ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
\___ _____________________
|/
∧_∧
_ ( ・∀・ )
|l8|と つ◎
 ̄ | | |
(__)_)
|\
/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 媒体も
| 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
| 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
9:風と木の名無しさん
10/08/25 20:08:21 2FdMY2d30
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| じゃ、そろそろ楽しもうか。
|[][][]__\______ _________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | |/
|[][][][][][][]//|| | ∧_∧
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
|[][][][][][][][]_||/ ( )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
(__)_)
10:風と木の名無しさん
10/08/25 23:51:52 /7gIfvyU0
スレ立て乙です!
前スレ461
禿げ萌えました。ありがとう!
スペインモード恐ろしいw
11:風と木の名無しさん
10/08/26 22:40:27 lfMb78CSO
スレ立てお疲れ様です
携帯から失礼します
前スレ落としたあげく新スレも立てられず
本当に申し訳ありませんでした
>>1さんをはじめ皆さんにご迷惑をおかけしてしまい
大変反省しております
今後気をつけてます
後日改めて規制が解除されてから投下し直すので
次の方どうぞお使いください
本当にすみませんでした
12:風と木の名無しさん
10/08/27 00:47:04 AQUoEcVy0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ドラマ 浄化ーの話です。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 主人公とツンデレ部下。夜の宿泊所です。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
初投稿なので、いろいろと不備があったらゴメンナサイ。
13:お前は俺のイライラの元 1/8
10/08/27 00:49:59 AQUoEcVy0
35歳で警部補ともなれば、同期の奴らに比べて出世競争に一歩
先んじているものだ。
有能をもって鳴る殺人課の降旗さんも、未だ警部補。
同期での集まりでもいささか鼻が高い俺である。
・・・しかし、ここにきて、キャリアでもないのに、とんでもなく
出世している奴がいる。
盾和良、階級は警部。無網の極みのくせに俺の上司。
今、俺の隣でいちごオーレを飲んでいる男である。
「だいたい、何でお前が今日ここで泊まりなんだよ。」
そう、ここは県警内のホール兼宿泊部屋。
本来明日5時から出張の俺一人が広い宿泊部屋を独占できる
予定だった。
だのになぜ、盾がいる。
「俺んちさ、昨日ガス湯沸かし器が故障しちゃってさ、風呂に
入れないんだよ。ホテルに泊まるのお金かかるし、ここならタダだし。
何よりギリギリまで寝てられるし。
あっクル巣がいるなら起こしてもらえるし。」
「県警をホテル代わりに使うなーーっ!俺は目覚まし代わりか!」
いいじゃないそのくらい、と口をとんがらせるぼけ上司。
「だいたいお前、独身だろうが。警部のくせに金ケチるなっ!」
「硬いこと言わないで。そうかー、クル巣も泊まりか。なんだか
修学旅行みたいだな。」
「気色悪いこと言うなっ!」
14:お前は俺のイライラの元 2/8
10/08/27 00:51:24 AQUoEcVy0
こっちの気分お構いなしに盾は、Tシャツとジャージに着替えると
枕投げしそうな中学生みたいなわくわくした目で俺を見ている。
いや、ひまわりの種を見つけたハムスターみたいな目だ。
一瞬撫で回したくなったが、ハッとして俺は手を引っ込めた。
あぶねーーーっ!
「クル巣―、守衛さんが来るのは3時だから悪さするならその時間は
避けろよ。」
悪さって何だ、悪さって。
「それから、トイレ行くときの照明は足元のスイッチの方が近いからね。」
うぜっうぜっ
「クル巣、いびきとか歯軋りとかする方?」
「わからん。」
「俺がいびきかいても許せな。」
「うんにゃ、絞める。」イライライライラ
「あっ、クル巣がヤバい寝言言っても俺、バラさないからね。」
「早く寝ろーーーーっ!」キレたのは俺のせいじゃない。
でも、盾はクスクス笑いながらほざきやがった。
「クル巣―よくないよ。いつもイライラしてさ。」
だれがイライラさせてるっちゅーんじゃ。
「ほら、甘いもの取ってさ。」
盾は、いつも持っているデカいエコバックを不器用に漁りながら言った。
「はい、いちごオーレ!」
「お前は小学生かーーっ!」
「ぴぎゃーーーーっ!(じたばた)」
俺は上司の首を思いっきり絞めた。
15:お前は俺のイライラの元 3/8
10/08/27 00:52:18 AQUoEcVy0
「だいたいこの前の健康診断、捜査一課でお前だけだ。
40前で、悪玉コレステロール値で引っかかったの!
せめてブラックコーヒーとか茶にだなーーーっ!」
「だって・・・コーヒーとかお茶はおしっこ近くなっちゃうし・・・。」
じじいか、お前は・・・。
「あっ、クル巣、小腹空いてない?俺少し食べ物持ってきたんだけど。」
そういえば少し・・・。まあ、少し食べてやってもいいか。
あいかわらず、ダサいエコバックをまさぐり、盾はなにやら取り出した。
「ほら、チョコレートポッキー。」
脱力・・・。大の男がどうしておやつ持ち歩いてるのか・・・。
「えっ?気に入らない?じゃあいちごみるく?甘納豆?」
味覚がガキなのか、年寄りなのか・・・。
っつーか、そのエコバッグ、そんもん入れてるのか。
「ポッキー・・・。」かろうじて俺はまだ「マシ」なのを選んだ。
「そうだよな。男はやっぱりポッキーだよな。」
わけわからん・・・。
って、おいっそんな変な開け方したらっ!!
案の定、ポッキーは盾周辺一帯に散らばった。
ポカンとして、何が起こったのか理解できない盾。
目が点になったまま動かない。
こいつ・・・どこまでどんくさい・・・。
ポテトチップスの袋でやっちまう奴はたまに見るが、ポッキーの
中袋開けるのに、どうやったらそこまで散乱させられるのか。
16:お前は俺のイライラの元 4/8
10/08/27 00:54:50 AQUoEcVy0
もたもたと後始末する盾をひとしきり手伝ったあと、
俺はポッキーを食べる気力は既になく・・・。
ドッと疲れた。
「もう寝る。」無視だ無視。こっちばっかりペースを乱される。
俺は毛布を引っかぶった。
「いいか、俺より3つ以上近い布団で寝たら殺す。イビキかいたら
締める。話しかけたらその場で銃殺。わかったな。」
「乱暴だなー、クル巣くんはー。だから捜査も雑になるんだよ。」
えっ?グサッ
「だいたい怒りっぽくて猪突猛進だから、推理が早すぎるんだよ。
そりゃ勘も当たってるかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。
常に捜査にはいろいろな可にょうひぇーほ・・・じたばた」
「こーのーくーちーがー言うかーーーっ!!!」俺の両手の人差し指が
盾の口を思いっきり広げる。
「ごみぇんなひゃい、ひょーひににょりしゅぎまひひゃー。」
ひたすら土下座する盾。思いっきり痛いところつきやがって。
17:お前は俺のイライラの元 5/8
10/08/27 00:55:41 AQUoEcVy0
「あのさ・・・。クル巣、最近、うっすらと思うんだけど・・」
今度は何だ。
「ひょっとして、クル巣、俺のこと・・・嫌ってる?」
「・・・へ・・・?」
何言ってんだ、この鈍トンカチは・・・。
「うっすら」とじゃなく「思いっきし」嫌いオーラ出してる
だろーか。それを最近まで気づかなかったのかぁ????
「今頃気がつきやがったのか。てめーは。
そうだ、でーーーっキライだ。お前なんかよ。」ざまあ見ろ
「やっぱりそうだったのか・・・」
盾は一瞬小さく頷いたあと
「良かったーーーー。」とそれはそれは満面の笑顔と大きな声で
伸びをした。
え・・・・?ズキッ?<良かった・・?>
今、一瞬俺の心、ハートブレーク???
「うんうん、そうか。スッキリした。さあ、寝よ寝よ。」
相変わらずニコニコして床に入ろうとした盾の毛布を剥ぐ俺。
「ちょーーー待てーーーっ!」
「何だよ~。人がおとなしく寝ようとしたら、勝手だなあ、クル巣は。」
「お前、良かったって何だよ、良かったって。」
「だってー、すっきりするでしょ。」
「スッキリって・・・スッキリって・・・、おまえなー。」
18:お前は俺のイライラの元 6/8
10/08/27 00:56:32 AQUoEcVy0
頭の中がクエスチョンマークで支配されている俺に
さわやかに盾が言った。
「いやあ、クル巣が俺のこと嫌ってるとかそうじゃないのか、
どっちなんだって悩むと、こう心がモヤモヤしちゃってさ。
でも、答えはどうでもどっちかはっきりすると、心のつっかえが
無くなるってーかさ。」
「はっきり・・・すっきり・・・??」
そんなもんなのか・・?お前にとって俺って。
「そうそう、告白前より玉砕したほうがスッキリして、一歩が
踏み出せるってーか、よく寝れるってーか。そういう感じ?」
おまえは、ねるとん(←若干思考が古い)やってる高校生か・・・。
「ともあれ、クル巣の気持ち聞けて、心のモヤモヤが解けたっ
てーか。」
「・・・お前なー、人にキライだって言われて傷つかないのかよ。」
俺は、自分のことを棚にあげて問いただす。
えっ?という顔をしたあと、盾は妙に優しい目で俺を見る。
何だろう、一瞬よぎるこの不安・・・。
そしてそのまま視線を暗闇に移す。
いつもの小動物のキョトキョトした視線じゃない。
「俺はいいよ・・・」微笑む。
そして宙に向かってつぶやくように言う。
「だいたい俺、そういうガラじゃないし。
人に好かれたり愛されたりするような価値ないし。」
達観しているような、優しい響きで、同時に氷のようにしんと
冷えた声。
19:お前は俺のイライラの元 7/8
10/08/27 00:57:43 AQUoEcVy0
「・・・・・・。」
どこかとてつもない迫力を感じさせる盾のつぶやきに、
つい無言になってしまった俺。
盾はハッとしたような顔をしたあと、我に戻ったのか、また
いつもの小動物の目に戻った。
「でもさ、俺はクル巣のこと結構好きだな。」
今度は半月目の明るい笑顔。
「え・・・・?」一瞬俺はどぎまぎと。
「なんたってクル巣は、俺の停職明けにいちごオーレ
おごってくれたしさー。」
安っっっっ!
「クル巣はさ、見た目は出世欲強そうだし、実際強いし。
でも本質はすごい正義漢なんだよな。」
「おいっ」ほめてんのかケナしてんのか。
「一生懸命生きてる人が、悪い奴に踏み潰されるの
見て見ぬ振りができないというか。案外、面倒見いいし、
だから土屋たちがついてくるってーか。」
「・・・・」なんだか照れる。
「時々査定なんか無視して上に突っかかるし。まあ相手は9割方
俺だけど」
まさか、査定に入れてやがるのか・・・。
「クル巣はまっとうだよな。こんなに長く刑事やってるのに
まっとうで純粋な正義感持ってる・・・。」
俺、一瞬なんだか幸せな気分になってないか?気のせいか。
そんな俺に盾は、とびきりの笑顔で言った。
「やっぱりクル巣は出世できないなぁ・・・」
俺の両コブシは盾のこめかみにぐりぐりめり込んだ。
20:お前は俺のイライラの元 8/8
10/08/27 00:58:41 AQUoEcVy0
ひとしきり、俺の制裁を受けた後
「痛っーーー!もう、すぐ拳に訴えるう。」
小動物はまた口とんがらせる。
「まあ、俺に好かれてもクル巣は迷惑だろうけどな。」
盾は笑った。
ホントにこいつは小悪魔だ。
天然の小悪魔。
悪気もなく俺を振り回す。俺はイライラしっぱなしだ。
小動物みたいな目しやがって、小動物みたいな目しやがって
俺がいないと何もできない小動物の・・・。
でも何故だろう。
こいつの瞳、切れ長の目の中の大きな瞳が、ときどき闇より暗い光
を放っているように見えるのは・・・。
闇より深い漆黒の瞳。怖くほど悲しいまなざし。
ほんの一瞬だけ、気のせいかもしれないが。
「迷惑じゃねーよ・・・。」俺はつぶやく。
「うーん・・・え?何?」盾は寝たまま眠そうな目で尋ねる。
不機嫌な顔で俺はもう一度言い放つ。
「迷惑じゃないって言ってんだよっ。お前に好かれても。
だから、自分のこと価値がないなんて言うな。」
盾はクスクスと笑いだした。
「やっぱりクル巣は出世できないなあ。」
そして俺の両こぶしは盾の・・・・・。
21:風と木の名無しさん
10/08/27 01:00:13 AQUoEcVy0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オソマツサマデシター | | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
22:台ふきんどうしよう 1/7
10/08/27 01:06:04 mq5/JUOgO
スレ立て乙です。
つい最近DVDを借りて滾ってしまいました。
難局のコックさん。
半生注意です。ぬるいエロ有。医者×コックさん。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
今日のドクタ.ーの舌は、朝食に作った白和えの味がする。
甘いな。
やっぱり甘すぎたかな。
息も継げないほどの激しさで唇を貪られながら、仁志村はもう少し甘さ控えめに作ろう、とぼんやり考えていた。
ドクタ.ーは北海道出身だから、きっと甘めの味付けが好みなのだろう。
比良さんが残した白和えもすべて平らげていたっけ。
朝食を済ませ、6人が作業の為に外に出かけてすぐ。
生理現象が伴う起き抜けの早朝ならまだしも、腹が満たされ落ち着くはずのこの時間がもっとも慌しい。
「だって、今しかないでしょ。夜じゃばれちゃうし。早朝はほら、仁志村君がいそがしいじゃない、飯の支度でさ」
どうやらドクタ.ーは「盛りの週」に入っているようで、3日連続で誘われてしまった。
・・・・・・誘いに乗る自分も自分なのだが。
穏やかで賑やかな日々の中、性欲を忘れかけていたような気がする。
二人目が生まれてから、ますます“家族風味”が増した。
すっかりご無沙汰だったはずなのに、14000キロメートル離れた現在、氷に閉ざされたこの場所で、
妙にはっきりと、妻の丸みのある腰のラインや、水を含んだしっとりとした肌の質感が思い出される。
懐かしい、生臭く甘い、女性の匂い。
23:台ふきんどうしよう 2/7
10/08/27 01:08:17 mq5/JUOgO
どちらかと言えば髭の薄い仁志村は、頬を擦る強い髭の感触に現実に引き戻された。
今密着しているのは、柔らかな女性のそれではなく、濃厚な雄の匂いを放つ鍛えられた肉体だった。
ここは南の最果て。氷はあるが水はなし。水はつくらなくてはならない貴重なモノなのだ。
身体を洗う為、満足に湯水を使えるわけもなく。
湿度が低いとは言え、リビングスペースはいつだって、8人揃えば運動部の部室のように、香ばしい。
仕事柄嗅覚の鋭い仁志村には全てが3割増で感じられる。
仁志村の小さい後頭部をがっちりと固定して、口腔内を問答無用で蹂躙している男からは、タバコと、消毒用アルコールも微かに漂う。
ああ、息が苦しい。
背筋が痺れ切って、頭がぼうっとしてきた頃、味わうようにゆっくりと唇を舐め上げて、ドクタ.ーはやっと仁志村を解放した。
息が上がっているのは仁志村だけだった。
-54度の雪原の彼方へ、半裸で自転車を駆る男とは、身体の出来が違うのか。
無言で身体の向きを換えられ、窓側に押し付けられる。
首に吸い付く濡れた感触に、仁志村は小さく声を上げた。
24:台ふきんどうしよう 3/7
10/08/27 01:10:10 mq5/JUOgO
目の前の窓の四方には、霜がびっしりとこびりついている。
強化ガラスの向こうはどこまでも青く、どこまでも白い。
遠くに、オレンジや紫の蛍光色の動く塊が見える。
仁志村は無意識にその数を数えている。1、2、3、4、5・・・・・6。
総員屋外活動中。目視確認完了。
ドクタ.ーとこんな事になってしまってることが誰かにばれたら、ちょっと面倒だなと思う。
隊.長だったら、毎日の献立にラーメンを強要されるかも。
主.任にはサボタージュの片棒を担がされるかもしれない。
凡には、夜食の追加か。比良さんは見て見ぬ振りをしてくれそうだ。
モトさんは・・・・・・・・軽蔑した目でみるのだろうか。
神経質そうな大きな目が険しく歪む様を想像して、少し落ち込んだ。
ふいに背中へ、硬い感触が強くこすり付けられ、体温が一気に上昇するような錯覚に陥る。
同性に欲情されている、とはっきり意識することにまだ慣れない。
いや、慣れるべきではないような。
ドクタ.ーの乾いた手が、いつのまにか下着の中に侵入し、仁志村自身をつかみ出した。
直接擦れて痛みが走る。
刺激が強すぎる。
辛くて身を捩ると、耳元でドクタ.ーが小さく笑った。
「痛い?じゃ、濡らしてみよっか」
仁志村自身の匂いが付いた大きな手で口を覆われる。
舐めろ、と言う事か。
至近距離でこちらの顔をのぞきこんでいる。
医者ってサディストだな。
仁志村は目を閉じて、必死に舌を使った。
25:台ふきんどうしよう 4/7
10/08/27 01:11:32 mq5/JUOgO
顔中が自分の唾液でべたべたになって、情けない気分になったのもつかの間。
濡れたドクタ.ーの手が仁志村を扱き始めて、恥ずかしいほど、上ずった声を上げてしまった。
「声出せばいいよ。誰もいないし、聞かせてよ」
唇をかみ締めた仁志村の耳元でドクタ.ーが囁く。
その吐息が下腹部に響いて、仁志村は震えた。
ドクタ.ーはすごく上手い。
密かに自分の左手が一番だと思っていたので、正直驚いた。
どんどん追い上げられて、なんだかもう、どうでもよくなってくる。
滲む窓の外。
青い空、白い大地。
そして。
「あ」
「ん?」
潤んだ視界に動く蛍光点が5つしかない。
2回数えたが、やはり一人いない。
「一人足りない、ちゅ、中止・・・」
「仁志村君、いまやめてどうするの、これ。仕舞えないよ」
「ちょ、」
「ほら、早く。もういけるでしょ」
「ん、あ・・・」
頑健な身体に背後から拘束されたまま、容赦なく、煽られる。
ああ、また今日もドクタ.ーに連れて行かれてしまう。
26:台ふきんどうしよう 5/7
10/08/27 01:12:53 mq5/JUOgO
「あ、あ・・」
ドクタ.ーの肩に反らした後頭部を擦り付けて、飲み込まれそうな快楽に耐える。
「仁志村君」
低い声で我に返る。
余韻に浸っている場合ではなかった。
どうやら最年少メンバーの新やんがドクタ.ーを探しているようだ。
声が近づいている。この厨房に。
後始末もそこそこに、慌てて身支度をした。
ドクタ.ーが台ふきんで手を拭っている所に、とうとう新やんの長身が現れた。
オレンジ色の防寒具のまま、顔を上気させている。
「あ、いた。 あれ、仁志村さん、どうしたんですか。顔すげー赤い」
「蒸気に噴かれたんだって。軽いやけどだな。ちょっと外でてれば落ち着くよ」
「ダイジョブすか」
強い目に直視されて、仁志村はあわてて首を縦に振った。
「あ、うん。大丈夫。」
「それより新やんどうした、また凍傷か」
眉間に皺を寄せながら眼鏡をかけるドクタ.ーに、
ここちょっと切っちゃって、と新やんは袖を窮屈そうに捲り上げる。
27:台ふきんどうしよう 6/7
10/08/27 01:14:15 mq5/JUOgO
「あーあ、こんなにざっくりやっちゃって。はい、処置室直行。
じゃ、またあとでね、仁志村君。午後の増水の時間終了したら、こっち来てね様子見るから」
新やんの背中を押しながら、振り返って、ドクタ.ーはカッと目を見開いた。
“次、オレの番ね”
無声で唇が動き、そのままドアからフレームアウト。
そういえば、ドクタ.ーのアレ、白衣で隠せたのだろうか。
ドクタ.ーが手を拭った台ふきんを睨みながら、ぼんやりそんな事を考えていると、
二人が消えたドアからひょこ、と新やんが顔をのぞかせて、仁志村の度肝を抜いた。
「仁志村さん、今日の昼、何ですか」
「えっ、あー・・・おにぎりと豚汁。納豆入った卵焼き付き」
「今日の当たりはなんすか」
「今日もいくらだよ」
「っしゃ!それ、今日は俺に当ててもらえますよね?」
「え」
意志の強そうな整った顔がにやりと歪む。
「口止め料」
・・・・・・・・・見られてた。
「匂いで分かりますよ。それにその、今の仁志村さんの顔。エロすぎます」
ウインクして見せ、新やんはさわやかに厨房を出て行った。
再び新やんが消えたドアを呆然と眺めながら、仁志村は口をぱくぱくさせるしかなかった。
よりによって、新やんにおにぎりの八百長をさせられるとは。
数日前に遠距離恋愛に破れ身も世もなく泣いていた若者は、あっという間に逞しく成長してしまったようだった。
28:台ふきんどうしよう 7/7
10/08/27 01:16:34 mq5/JUOgO
数時間後。
隊員が黙々と豚汁を啜り、せわしなくおにぎりを口に運ぶダイニングでの光景。
新やんに当たるはずのいくら入りおにぎりはなぜかドクタ.ーに渡り、新やんは不機嫌そうに納豆入りの卵焼きを掻っ込んでいた。
ドクタ.ーと新やんの間に一体何があったのか。
知らぬが仏、だな。
仁志村は考えないように、そっと目を伏せ、梅入りのおにぎりを頬張った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
“オレの番”では仁志村、なかされるんだろうなぁ。。フフフ。
貴重なスペースありがとうございました。
29:風と木の名無しさん
10/08/27 01:37:45 AQUoEcVy0
うっわーーー。難局シェフ。超うれしい。
二氏村さんの色っぽいこと。とっても素敵でした。
姐さん、ぜひぜひ二位やん編、っつーかお父さん編とか凡ちゃん編とかも
ヨロシク!
30:風と木の名無しさん
10/08/27 19:20:34 hcc1TFL20
>>12
キターーーーーーーーーーー!!!!
ありがとうありがとうありがとう
毎日ツン×盾を待ち続けてた!!!
無邪気だけどどこか淋しそうな盾さんカワイセツナス…
クルたんどうか後ろから抱きしめて眠ってやってくれ~~~
31:風と木の名無しさん
10/08/27 23:58:40 SxDvd9ZeO
>>12>>22
浄化ー難局とまさかの境まつりじゃまいか。
ありがとうありがとう!
とくに難局は仁井やんバージョンは是非とも続きを…
32:聖黒1/7
10/08/28 22:28:17 Oj/JeRk40
柴田/よ/し/きさんの小説 「聖/なる/黒/夜」 龍×練 一緒に旅行へ行く二人。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
1
ガタン、ガタンと単調な音を立てて電車が線路の上を走る。
僅かに開けた窓から、初夏の爽やかな風が流れ込んできた。時折かすかに響く振動が心地よい。
これは俺の心臓の音だ、と練は思う。あの夜、線路の上で確かに俺は死んでいたのだ。
そう、誠一がその逞しい腕の中にこの身を拾い上げてくれるまで、俺はいつ来るとも知らぬ始発の振動を待ち続けていたのだ。
ガタン、ガタンと一定のリズムを刻む電車の音に耳を貸しながら、自分の左胸に意識を集中させる。
トク、トク、トクとまるで電車の音に呼応するかのように左胸が脈を打つのを感じる。
静かに、しかし力強くそれは鳴り続けていた。
旅行に行きたい、と言い出したのは練だった。
仕事が、と渋る龍太郎にほぼ無理やり電車のチケットを握らせた。
しかしいざ行くとなると、積極的になったのは龍太郎の方だった。
どこから仕入れてきたのか、温泉街の地図を広げ
「どこから回ろうか、」
などと計画に余念がなかった。
大の大人が、まるで子供のようにはしゃぐ様が可笑しく、そしてとても愛おしく思えた。
飲み物を買いにいく、と席を立った同行者の帰りが遅いことに焦れて練は目を閉じた。
別段眠くも無いが、このまま眠ったふりをしてしまおう。
眠ってしまった俺を見てあいつはどんな顔をするだろうか。
途方にくれた男の顔を想像して練は小さく微笑んだ。
それは自分を待たせた恋人に対する、ささやかな意趣返しでもあった。
33:聖黒2/7
10/08/28 22:29:45 Oj/JeRk40
2
「練」
耳をくすぐるような声がしてすっと薄目を開くと、視界の端に見慣れた龍太郎の革靴の先が見えた。
「練、寝たのか」
尚も聞こえないふりを続けると諦めたのか、かすかな溜息と共に龍太郎が腰を下ろす気配がした。
もう少し、もう少しだけ寝たふりをしていようと、練は内心でほくそ笑む。
龍太郎は買ってきた缶コーヒーのプルタブを開け、パラパラと雑誌を捲ったり足を組み替えたり、どうにも落ち着かない様子だったが、しばらくするとふっと静かになった。
予期せずして訪れた不気味なほどの静寂に、どことなく気まずさを覚え、目を開けようとした練は、ふいに強い視線を感じて戸惑った。
―龍太郎がこちらを見ている。じっとりと粘りつくような視線を感じる。
まるで体の奥底まで見透かされるような感覚におちいる。目を開かずとも分かる。
俺はこの感覚を知っている。ベッドの中で快楽に溺れる俺を見る時、あいつはこんな目で俺を見る。
焼け付くような視線に体の芯が熱くなるのを感じた練は、甘い痺れを振り払うかのようにがばっと身を起こした。
34:聖黒3/7
10/08/28 22:31:11 Oj/JeRk40
3
「ごめん、寝てた」
我ながらわざとらしいと内心苦笑いをしながら、練は大きく伸びをした。
龍太郎はというと、先程の熱っぽい視線など微塵も感じさせないような穏やかな笑みで
「もうすぐ着くぞ」
と言って、すっかり温くなった缶コーヒーを練の手に押し付けた。
「何してたんだよ」
「えっ?」
「俺が寝てる間」
先程の視線が気になり、それとなく龍太郎に問いかけた。
彼は驚いたようにしばらく瞬きをした後、
「別に何も」
と言ってのけた。あいかわらず嘘がつけない男だ。
「本当に?」
「ああ」
それ以上追求する気にもなれず、練は黙った。彼が何でもない、と言うのであればそれでいい。
電車内にはいささか不似合いの、官能的な視線の意味を推し量るのを止め、練は窓の外に目を向けた。
飛ぶように流れていた景色が、次第にゆっくりと速度を落としていく。
「着いたな」
どうやら目的地である温泉地に到着したらしい。終点ということもあり、乗客はまばらである。
他の乗客に混じって二人は駅のホームに降り立った。
35:聖黒4/7
10/08/28 22:32:15 Oj/JeRk40
4
宿に入った二人は荷解きも早々に浴衣に着替え、風呂へ向かった。
まだ日も高いせいか、風呂場に人影はなかった。
脱衣所で服を脱ぎながら練が「あ」と小さく声を上げた。
忘れ物でもしたのかと怪訝に思って振り返ると、練が真っ赤な顔をして俯いている。
「どうかしたのか」
「いや、その・・・何でもない」
そんな真っ赤な顔をして何でもないはずがないだろうと、練の視線の先を追った龍太郎はあるものに気がついた。
真っ白な練の胸元に散る、赤い花弁。それは他ならぬ龍太郎がつけた情事の印でもあった。
「お前のせいだからな、こんなの人に見られたらどうするんだよ」
気恥ずかしさからか、練は龍太郎と目も合わそうとせず、早口にまくし立てた。
その細い肩をぐっと抱き寄せてしまい衝動に駆られながら、
「部屋に戻ろうか」
とだけ告げると、真っ赤になった練がこくんと頷いた。
36:聖黒5/7
10/08/28 22:33:26 Oj/JeRk40
5
部屋に戻ると帯を解くのももどかしいとばかりに、龍太郎が練の唇を塞いだ。
そのまま獣のように互いの舌を貪りあう。
「っふ・・・う」
じん、と下半身に熱が溜まるような感覚がする。熱い。キスだけでは足りない。
もっと熱いのが欲しい。もっとぐちゃぐちゃにして欲しい。
待ちきれず、練は舌を絡めたまま胡坐をかいた龍太郎の膝の上に乗り上げた。
自分で浴衣の前をはだけてみせ、龍太郎の眼前にさらけ出す。
「ね、ここ」
練は胸を突き出すようにしてねだった。
淡い色をした二つの突起は固く立ち上がり、淫靡な色香を匂わせていた。
じゅっと湿った音がして、龍太郎がそこを舐めあげる。
「ん・・・んっ、あんっ」
じんわりと熱を帯びた愛撫を与えられ、高い声が漏れる。
恥かしい、と思う間も無く今度はそこを指で撫で上げられる。節くれだった指が乳首を摘む。
ぴりっとした痛みが駆け抜け、練はびくりと身を震わせた。
そのまま指でこね回され、再びそれを口に含まれる。
「やっ・・・それ、だめっ・・・ん・・・っ」
ぐちゅぐちゅと濡れた音が響き、耳を塞いでしまいたくなる。
やるせない感覚に身を震わせた練は、すでに反応しきっている自分自身を龍太郎の腿にこすり付けるようにして、更なる快感を求めた。
37:聖黒6/7
10/08/28 22:36:56 Oj/JeRk40
6
「もう少し我慢できないのか」
「・・・できなっ、もう、りゅう・・・龍っ」
練が龍太郎の名を呼んだ瞬間、龍太郎が小さく息を詰めた。
浴衣の裾がはだけ、露になった龍太郎の雄に指を這わせた練は、その先走りを掬い取る。
そのまま粘ついた液体を指になじませ、その指を自分の秘所にあてがう。
ぬぷん、と何の抵抗もなく指が入る。
「あんっ・・・も・・・ね、はやく・・・」
普段練のそこを慣らすのは龍太郎の指だ。あの、節くれ立った男らしい指で練の中をかき回す。
自分の中を擦る、龍太郎の指の感覚を思い出しながら練の官能に火がついていく。
内壁を擦るようにかき回す。気持ちがいい。
まるで龍太郎の前で自慰をしているような倒錯におちいる。
「お前な、そう俺を煽るな」
龍太郎が尚も行為を続けようとする練の指を止めさせ、代わりにもっと熱くて硬いものをそこにおし当てる。
そのまま、ずんっと奥まで貫かれる。
「ひゃ・・・あ・・んっ、きもち・・・い・・っ」
頭の中が真っ白になる。抗えない快楽の渦に落ちていく。龍太郎が律動を早める。
「龍、龍っ・・・」
龍太郎の腰に白い足を絡ませながら、必死に龍太郎の名前を呼ぶ。
快感に押し流されるのを恐れるように。最愛の人がそこにいるのを確かめるかのように。
「練っ・・・」
「・・・っあ、ああっ・・・!」
愛しい人の声が自分の名を呼ぶのを聞きながら練は絶頂に達し、意識の底に沈んだ。
38:聖黒7/7
10/08/28 22:39:55 Oj/JeRk40
7
明け方近く、目を覚ました練は隣に眠る龍太郎に目を向けた。
精悍な横顔を見詰めていると、ふいに龍太郎が目を開け
「お前さ、」
と口を開いた。
「お前、睫毛長いよな。今日、電車の中で寝てるお前見て思ったんだ」
「何だ、やっぱりあんた、俺のこと見てたんじゃん」
「ん?お前、寝てただろ。あの時」
「あ・・・」
危うく自分の狸寝入りがばれそうになり、練は口を噤んだ。
ふっと龍太郎が笑う気配がして、隣から伸びてきた腕に頭を引き寄せられる。
髪の毛をわしゃわしゃとかき回され、練はその力強い腕に抱きしめられた。
「やっぱり、可愛いよ、お前」
「・・・馬鹿じゃないの」
耳に吹き込まれた甘いささやきに首筋まで赤くしながら、練はその幸福の中に身を委ねた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最近読んでどうにも萌えすぎて恐れ多くも初投下させて頂きました
本編、続きでないかなー
39:そんな気
10/08/29 01:21:09 M4SWrmPRO
無屋主と慨家主
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ソッキョウノジサクジエンガ オオクリシマース!
40:そんな気 1/2
10/08/29 01:23:30 M4SWrmPRO
程よい温度に調整されていたバスから降りると、蒸し暑い外気が瞬時に身体を包む。
だが若干涼しく思えた風に、季節の終わりが近付いていることを感じた。
ホテルに入ると、負けたこともあって、気だるそうな「おつかれさま」がロビーに響く。
それぞれがエレベーターに向かう中、きょろきょろと視線を巡らし、自販機の前で水を買っている
その男を見つけた。歩み寄って「お疲れ」と声をかけると「あ、お疲れ様です」とこちらを見下ろして
返事をするだけで、くるりと背を向けてエレベーターへ向かった。
複数あるエレベーターはすべて上がってしまった後だったので、彼の隣に並んで自分も待つことにした。
いつもなら軽い口調で話しかけてくる彼だが、今日は話しかけない。
理由のひとつは、負けたこと。
でも、もうひとつ理由がある、はず。
それはまるでアクシデントのような一瞬の出来事。
「なあ、アレ何だったんだよ」
隣を見ずに聞いてみる。返事がないのでちらりと横目で窺うが、彼は飄々とした表情のまま。
腹立たしかった。こっちは振り回されるばかりだ。
指で自分の唇を摘んだ。
あまりに衝撃だったのか、感触が生々しく残っている。
終了後、ロッカーで背後から声をかけられ、振り向いた一瞬だった。
41:そんな気 2/2
10/08/29 01:26:10 M4SWrmPRO
「あんな人がいる所で、変な冗談・・・」
「人がおらんかったら冗談になりませんよ。どうせ誰も見てませんて」
開き直ったような答えに、大きくため息をついた。
せっかく今日は久々に当たりが出たのに、何でこんな罰ゲームを受けなきゃならないんだ。
エレベーターがなかなか降りて来ないイライラも相まって無言になると、
彼は「久々に出るから、緊張した」と呟いた。
「お待たせしてすみませんねー」
「ホンマですよ。でも嬉しかった」
話をしているうちに、顔が自然と笑ってしまう。
やっぱり彼のことを憎めない、と気を緩ませた直後だった。
「せやし、そういう気になってしもたんですよ」
目の前の扉が開いた。
一瞬間を置いて「へ?」と彼に顔を向けると、彼は笑いを堪えた表情でエレベーターに乗った。
後に続いて自分も乗り込むと、先ほどの「人がいないと冗談にならない」の言葉が頭をよぎった。
あの時と同じように、肩を掴まれ振り返る。
エレベーターのドアが閉まった。
42:そんな気(終)
10/08/29 01:27:12 M4SWrmPRO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ヒサビサノジサクジエンデシタ!
43:どろぼうのはじまり 1/8
10/08/29 03:28:00 oyQZKO9OO
半生注意の浄化ー。
クル×盾メイン。ナツ×盾、盾×缶、も臭わせつつ。
とは言え、エロはぬるく、明るい話ではありません。
7話のスキマで時間その他捏造しています。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )マツリチュウノジサクジエンガ オオクリシマース!
ふにゃふにゃと笑うようになったのはいつ頃からだろう。
出逢った頃は、“ふにゃ”程度だったように思う。
あいつが、いなくなってからか。
久留須は苦々しく、組み敷いた男を見下ろした。
照明は薄暗く、顔を反らせている為、その表情はよく分からない。
鎧のように、愚者の仮面を身に着けてしまった。
盾はただでさえ本心が透けない男だったが更に見え難くなって、もともと短気な久留須は必要以上に絡むようになった。
それ以外にどんな方法がある?
どんどん遠くなっていってしまうのに。
44:どろぼうのはじまり 2/8
10/08/29 03:29:24 oyQZKO9OO
―数時間前。
珍しく、定時に上がれた。まるで糸の切れた風船のような班長に代わり、実質1課を回している久留須にとって、これは奇跡と言ってもいい。
暫く放置していた愛車のメンテナンスにでも寄ろうか、と考えながら向かったエントランスに小柄な男がぽつんと佇んでいた。
最近べったり寄り添っている、アロハを着た調子のいい野良猫の姿はない。
ぞっとするほど実兄に性質が似ていると評判の、新人女の姿もなかった。
ひとり、ガラスの外に視線を投げ、ぼんやりしている。
笑っていなくても、表情は読みにくい。
近づく久留須に気が付いて、盾はゆっくり顔を向けた。
「よ、おつかれ」
「・・・なにやってんだ」
フラフラしやがって。
盾はふにゃ、と笑い、
「久留須を待ってた」
と言った。
面食らった久留須は、眩暈を覚える。
胸が、ざわつく。
「背中、痛いんですけどぉ。・・・・責任とって湿布とか、貼ってもらおうかと思って待ってたんだ」
盾の顔からすう、と笑みが消える。
驚くほど印象が変わるその表情。
笑わない盾の目は、冷たい色をしている。
45:どろぼうのはじまり 3/8
10/08/29 03:33:03 oyQZKO9OO
久留須の部屋は相変わらずきっちりと整頓されていた。
最近は着替えに戻る程度だろうに、一体いつ片付けているのか。
大切そうにディスプレイされたCDや、使い込まれたエスプレッソマシン。
艶やかで清潔な床。
久留須らしいな、と盾は思った。
それに比べ、盾の部屋は必要最低限のものしかない。
あの日から、余計なものは持たないと決めた。
みんな、捨ててしまった。
その事を、久留須はしらない。
「ビールしかないぞ」
「あ、おかまいなく」
盾は受け取ったビールのロング缶をそのままテーブルの上に置いた。
久留須はジュースを飲まない。
まして、苺なんとかなど買い置きがあるはずもない。
盾に構わず、久留須はプルトップを引き上げ、冷えたビールを喉へ流し込む。
車のメンテナンスはもう、諦めた。
「鑑識のチビと、こそこそ何やってんだ?」
「工藤は、ああ見えて優秀なんだよ」
「危なっかしい。あいつらは地面を這いずり回るのが仕事だろ。あんまり調子に乗らせるな」
「うーん」
「だいたい、」
「はぁああ」
わざとらしく、大きなため息をつく盾に、久留須は気を削がれてしまう。
46:どろぼうのはじまり 4/8
10/08/29 03:34:54 oyQZKO9OO
「・・・なんだよ」
「うん、なんかやっぱり背中痛いなぁって思って」
むっとして、久留須が立ち上がる。
女じゃあるまいし。あの程度で男の背中が傷つくわけがない。
「ほら、湿布」
一体いつの湿布なのか。キャビネから見つけ出した湿布を箱ごと盾に押し付ける。
盾は瞬きをしながら、箱の説明書きに目を落した。
貼る気などないくせに。
久留須は、自分のビールを飲み干し、無断で盾に渡した缶に手を伸ばす。
「あのさ、貼ってくれる?」
「・・・・」
久留須は無表情に、飲みかけの、汗をかいたビールの缶を見つめている。
「久留須、」
「本気か」
久留須は盾の言葉を遮った。
こんな、茶番はごめんだ。
問われたその真意を、盾は知っている。
「うっそだよぉ、って言ったらどうする?」
「しね」
「ひい」
「お前、人をからかうのも、」
「本気だよ」
久留須は信じられない思いで、まっすぐ自分を見つめる盾を見つめ返した。
今頃になって。盾から誘われるなんて。
47:どろぼうのはじまり 5/8
10/08/29 03:36:10 oyQZKO9OO
*****
盾を抱いた事は前にもある。
同期の実矢木ががいなくなってすぐだった。
きっかけは何だったのかよく覚えていない。酷く酔っていたような気がする。
何度か寝て、その内自然消滅した。
意外なのか、予想通りなのか、盾は抱かれる事に慣れていた。
それについて盾は何も言わなかったが、何故か相手は実矢木だとすぐに分かった。
その頃、付き合っていた久留須の恋人は、セックスに貪欲で(そこが魅力だった)、膣以外でも交わったことがあった。
だから、方法を知っていた。
セックスにおいて、体調の変わりやすい女性との見えない壁は厚い。
その点、同性は分かりやすい。
どの程度の強さで、どこをどう触れられれば気持ちが良いのか。手に取るようにわかる。
そして、抱かれる度、必ず盾は乖離する。
目の前にいるのに、中身がない。
快楽に溺れやすいのに、しっとりと潤むその目は久留須を見ていない。
イライラして、つい、手荒く扱ってしまう。
その時向けられる、“ああ、久留須か”というような、目。
―畜生。
あの野良猫とはどうしているのか。
抱いているのか、その逆か。
盾は工藤を“見て”いるのだろうか。
いや、見てないのだろう。
工藤が盾を追う、視線の温度。
あれは、久留須と同じものだ。
48:どろぼうのはじまり 6/8
10/08/29 03:37:44 oyQZKO9OO
*****
股関節に掛かる重量が盾を苛む。
この重さは知っている。
盾の身体は記憶している、実矢木として。
久留須と実矢木は背格好が酷似している。
だから、時々混乱してしまう。
今がいつなのか。
自分の上に居るのは誰なのか。
―ナツキ?
舌を噛みそうなほど、激しく揺さぶられて、思い出す。
―久留須。
視線が重なる、獰猛な久留須の目は昏い。
そうして、滅茶苦茶に追い詰められる。手加減は全くない。
こんな風に夢中で盾を抱く男は他にいない。
実矢木とは違う。
その違いに。
興奮する。
最低だ、と盾は思う。
「カズ」
乱れた呼吸の合間に久留須が盾を呼んだ。
盾は肩で大きく息をしながら、薄く目を開く。
「・・・・懐かしい。随分ひさしぶりだなぁ、久留須に、その呼び方されるの」
49:どろぼうのはじまり 7/8
10/08/29 03:41:47 oyQZKO9OO
久留須がいて、サエコがいて、実矢木がいた。
皆一緒、と言うわけではなかったけれど、あの頃は楽しかったな。
盾だけがすでに汚れていたのに、仲間ができたような気がしていた。
いまは、もう取り返しが付かない程、盾の手は黒く染まってしまった。
「カズ」
探るように、覗き込む久留須の視線が辛い。
粗暴なようでこの男は勘が鋭い。
おそらく、盾の内側に巣食う闇に気付いている。
「くるっぺ・・・」
荒い息の中、盾が呟いた。
久留須は、ぽかんと口を開けて、まじまじと盾を見た。
くつくつと身体を揺すって盾が笑い出す。その振動が繋がったままの久留須に深く響く。
「昔、所轄で“くるっぺ”って呼ばれてたよねぇ、ウケる・・・」
「おまえ・・・」
「しつこく呼んでたら久留須、怒ってさ、今度言ったら殴るぞって言いながら、俺殴られた気がする」
「・・・」
「今度って言ったのに、あ」
久留須が盾の最も弱いところを乱暴に扱い、盾の声が途切れる。
また、意識が混濁する。
今、この瞬間久留須は盾だけをみている。
その快楽は、盾をさらなる高みへと追い上げる。
自分は工藤をきちんと抱いてやれているだろうか。
盾はこんな風に、工藤を抱けない。
必死に縋り付いて、求めているのに、本当に欲しいものを与えられていない。
50:どろぼうのはじまり 8/8
10/08/29 03:43:20 oyQZKO9OO
常より呂律の甘い、鼻に掛かった声がよみがえる。
『ねぇ、盾さん、俺は怖くないよ。あんたとなら・・・だから、』
だから?
工藤が望む望まないにかかわらず、自分の横に引きずり堕したのは、盾だ。
その自覚は、ある。
その責任はいつかとらなければならない。
せめて、これ以上工藤が傷つかないうちに。
盾は酩酊するように、神隠しの模倣犯を想う。
あれは、誰だ。もう一人の自分ではないのか。
麻酔銃を向けるその一瞬、自分は何を考えている?
まるで擬似処刑ではないか。
根本にある衝動まで違うと、言い切れるのか。
「カズ、ここにいろよ。どこにも行くな」
遠くに、久留須の声がする。
聞こえない振りをして、盾は応えなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書いてて、盾×缶に楽しみを見出してしまった。
また貴重なスペース、いただきました。
あ、難局の感想下さった方、ありがとうございました。うれしい。
難局から浄化から、ラッシュ人生から苦非男まで萌え散らかし中。
回収できたものから吐き出させていただきました。
51:風と木の名無しさん
10/08/29 18:01:04 5F9XdZwKO
>>32
こんなところで読めるとは思わなかった…!
いちゃ甘な二人ゴチでした。
52:風と木の名無しさん
10/08/30 00:13:01 kfZDux7J0
>>38
久しぶりに麻練堪能しました!
53:20年が過ぎても 1/2
10/08/30 00:23:27 SmbxeTBmO
※半生注意
家送検の女シリーズ10・第7話の修復家→天才画家
TVドラマスレに触発されて勢いだけで書いてしまいました
ネタバレありです
修復家の自白調書取ってる最中とお考え下さい
|> START ピッ◇⊂(・∀・ ) ジサクジエンガ ミジカク オオクリシマース!
―はい…はい、秋津が背中を向けた時、近くにあった木槌で殴りました
マキの話を聞いて、カッとなって―いえ、回数は覚えていません、頭が真っ白で
動機?動機ですか?それは勿論、マキのことに決まっているじゃないですか
20年も経っているのに今頃真実を明るみにするだなんて…
刑事さん、20年経つと人の記憶は薄れるんです。私もマキとの思い出が、遠い日になっています
…あっ、でもあの百合の絵は違った。20年前と同じ衝撃を私に与えました
動機は…マキのことだけじゃなく、あの絵を守りたかったんだと思います
秋津は、私が依頼を拒んだらきっと…いえ、必ず私に失望したでしょう
そしてあの絵を持って警察に行ったでしょう…警察に渡ったら、絵がどんな扱い方をされるかは目に見えていた!
―すいません、つい興奮してしまって。私が捕まった時点であの絵がどうなるか分かっています
あの絵は、もう二度と人の目に触れることはない…秋津と私と、運命を共にしたと思えば惜しくはありません
私には百合を消すことは出来ない。今でも同じ気持ちですたとえその下にマキを殺した証拠があったとしても、です
嗚呼、私はあの絵とあの絵を描き上げた才能を嫉ましく思っていたのに、同時に愛してもいたんです…!
54:20年が過ぎても 2/2
10/08/30 00:27:57 SmbxeTBmO
―えっ?マキよりもですか?そう聞こえた?まさか、そんなはずは…
…いや、刑事さん、私は彼のことを―そうか、守りたかったのかもしれません
20年経ってもまったく秋津は変わっていなかった。学生時代と同じ、自尊心が強くて人を見下していて…才能に溢れていた
もしも彼の罪が暴かれたとしたら、もう絵は描けなくなる
人殺しの画家…奴にカラバッジオと同じ汚名を着せたくなかった。ずっと、これからも、私が憧れた画家でいて欲しかった
だから…殺しました…天才画家と呼ばれた彼を守るために…私のために…
―そうか、私は彼の絵も才能も愛していましたが、それ以上に彼自身を愛していたんだ…
人殺しでも私から恋人や夢や人生を奪っても、そんなことはどうでも良いぐらいに秋津のことを私は…!
20年も経っているのに、どうして今頃…どうしてこの手で秋津を殺した後に気付いてしまったんだ!
この気持ちにもっと早く気付いていれば、彼を殺すことはなかったのにっ!
秋津―許してくれ…きっと、お前の才能に初めて触れた時から…20年以上前から、ずっと…!
―あぁ、すみません、取り乱して。ええ、今落ち着きます…
彼が死んだ後は無我夢中で、どうやって死体を運んだのかもよく覚えていません
絵に付いた血痕も必死で消していました。頭では何も考えられなかったのに、体は勝手に動いていて―
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) イジョウ ジサクジエンデシタ!
中の人に缶コーヒーのCMで萌えていたところへ燃料を投下されました
サクライ脚本恐るべし…!
55:風と木の名無しさん
10/08/30 20:12:09 Y1tpyAmb0
>>53
まさか仮想権ネタを拝めるとは…
あの2人は妙に濃密な空気を纏ってたよね
ゴチでした
56:風と木の名無しさん
10/09/02 15:40:27 b9py81JM0
>>43
禿 萌 え た ! !
男にだらしない盾えろカワイス
あっちこっちでイケメソたぶらかしまくりでけしからんハァハァ=3
57:風と木の名無しさん
10/09/08 11:41:22 bpllfb050
| ドラマ 浄化ーの話です。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 主人公の殺された親友の独白です。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
58:刹那・・・1/3
10/09/08 11:48:39 bpllfb050
ドラマ 浄化ーより
主人公の殺された親友の死ぬ直前の独白です。菜月→盾で
ナイフで刺された直後です。
801スレのカキコに萌えましたので設定お借りします
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ちくしょう・・・、左腹部裂傷か。
相手はプロだ。刺した後ギリギリと捻りながらナイフを上に
ずり上げた。
顔を見た俺のショックなんか、意に介すこともなく冷静に・・・。
ぱっくり開いた傷から、ポンプみたいに血液が流れ出ている。
これは持つまい。
不思議だ。痛みよりも恐ろしく思考がクリアになっていくのを感じる。
事件のことや、過去のことや、いろいろなことが走馬灯のように・・・。
ああ・・・これが死ぬってことか。
これが・・・・・。
やっと真相に辿りついたというのに。くやしいな。
やっと腐った警察の闇に・・・。
伊津都さん・・・、あとは頼みます。
飛鳥、泣くんだろうな。「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」って
あいつドジだから大丈夫かな。
いや、きっとあいつには助けてくれる人が現れるか。かわいい俺の妹。
それと、父さん・・・母さん・・・
59:刹那・・・2/3
10/09/08 11:49:42 bpllfb050
いや、もういい・・・。
今思い出すのは、盾、おまえの細い首筋だ。
お前がイクときのあの顔だ・・・。
俺の上で、激しくゆすぶられながら、背を逸らし自らも腰を振る
あいつの姿だ。
紅潮した頬に、切なそうに繭を寄せて。泣きそうな顔して。
きつい内部は俺を痛いほど、締め付けやがって・・・・。
こんな時に、俺って・・。笑っちゃうよな。
盾・・・お前、俺を刺したのがだれかわかったら激しく動揺する
だろうな・・・。
お前、どんなに傷つくだろうな・・・。
なあ、盾、お前・・・いつも微笑んでたな・・・。
仮面みたいにさ。
でも・・俺には・・お前がいつも泣いているように・・見えた。
微笑んでいても・・・決して心を許さない・・・。
その目は闇しか見つめていない・・・
でも、俺知ってるよ・・・・・。
その裏にどれほど深く・・豊かで激しい感情を秘めているか。
お前はいつも泣いてる・・。
どれほどの怒りを抱えてきたのか。
どれほど悲しみを抱えてきたのか。
どれほどの慟哭を・・・・。
60:刹那・・・3/4
10/09/08 11:52:15 bpllfb050
くそっ、やっぱり頭の中が朦朧としてきた・・・。
血が足りない・・・。
今のうちに、この手についた血で、俺を刺した男の名を・・・
不思議だな・・・。浮かぶのは、なぜかお前の泣いた顔だ・・・。
お前・・・一度も俺の前で泣いたこと・・なかったのに・・な。
大きな瞳から・・・子供のように涙を流すお前だ・・・。
盾、ありきたりだが、お前・・・もっと自分を大切にしろ。
自分のこと・・・・、罪人かなにかのように思ってないか?
お前は、決して自分を許さない・・・。
何故・・?何故・・?何故・・?
俺の・・・胸に顔を埋めて眠る・・お前の髪を撫でながら・・・
俺は・・・いつも思ってた・・
もっと・・・自分を・・愛せ
ダイイングメッセージ
早く・・・イニシャルだけでも・・・。
お前なら、すぐに気づくだろう・・きっと、お前なら・・
でも・・その人に気づいたら・・・お前・・
61:刹那・・・4/4
10/09/08 11:53:07 bpllfb050
「菜月・・・、菜月・・・菜月・・・、俺のこと・・・」
いつか、俺に抱かれたとき・・・。
・・・絶頂のあとの・・気だるい時間の中・・・
お前は・・何度も・・小さな・・擦れた声で・・・俺の名を呼んだな・・・
いつも・・俺かの視線を・・意識的にそらしていたお前が・・・
知ってるよ・・・・。
「菜月・・・俺のこと嫌うな・・・」
そう言いたかったんだろう・・・。
嫌うもんか・・・。
愛してる・・・愛してる・・・もう一度・・お前・・抱きたい・・
ふっ・・こんなときに、・・・、俺・・
でも、愛してる・・・こんなにも・・。
だから・・もう、泣くな・・・。
・・・自分を・・・傷つける・・のは・・・もうやめろ・・・
傷つくな・・・・。
闇が来る・・・・でも・・
でも・・お前には・・・残さない・・・。
お前は・・・知らない・・・方がいい・・・・。
愛してる・・・・・盾・・・・。
62:風と木の名無しさん
10/09/08 11:56:11 bpllfb050
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すみません。途中で書き込めなくなって、3話→4話になってしまいました。
63:0/2
10/09/10 01:39:31 ZUuEEEU80
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 数レスお借りします。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 生注意。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
名前は出しませんがわかる人はわかるかも。
64:1/2
10/09/10 01:41:04 ZUuEEEU80
小さいな、と。ふとした時に思う。
肩を組む時。抱きしめる時。キスをする時。抱き合う時。
元々この子こんなにちっさかったけ。ソファに座って、隣同士。
身体と同様に小さい彼の手を弄りながら呟くと、お前がでかくなったんだろがと何の可愛げもなく返された。
今みたいに俺にされるがまま抵抗もしない癖にそんな乱暴な口をきく彼を、時々愚かだと思う。
「あんたひょろひょろだったじゃん昔」
「そう?」
「初めて見た時こいつもうすぐ倒れんじゃねぇかと思ったもん」
「…そうだっけ」
確かに身体は強い方ではなかったけれど、そんな風に思われてたんだ。
子供の頃から一緒で、仕事仲間で、遊び友達で、たぶん、恋人。
「…恋人繋ぎー」
「…馬鹿かよ」
嬉しそうだけどね。顔が赤いのは気のせいじゃないはず。
素直じゃないのは昔っから。彼の考えてる事なんて、大体知ってたよ。
彼が俺に向ける視線は特別。それって多分ほとんど出会った当初からだった。
それなのに何年経っても天邪鬼な態度を取る彼は、愚かで愛しい。
65:2/2
10/09/10 01:42:21 ZUuEEEU80
わざと指の間をくすぐるように指を滑らすと、短く息を漏らすのが聞こえた。
悪態ばっかついてくる彼を黙らすのは簡単で、ちょっとでもそういう触れ方をしてやればいい。
頭がよくて、なかなか人に正体を見せない彼だけれど、俺にとってみれば分かりやすいことこの上ない。
それこそ何年一緒に居るんだっつー話で。
だってほら、もう大人しい。
ある意味動物を扱うより簡単だなんて言ったら、こいつは怒るだろうな。
代わりに頭をわしゃわしゃと撫でてやったら、弱い力で押しのけられた。
聞こえるか聞こえないかの声で、うざいってさ。怖い怖い。
そっとその薄い肩を押すと、何の抵抗もなく倒れる身体。
どっちかって言うとお前の方が貧弱そうだよね、今。鉄分足りてなさそうだってさ。
「白過ぎんじゃない、ちょっと」
「…それ今言うの?」
前髪が彼の額に触れるくらいの距離で言うと、あからさまに面倒くさそうな顔をされた。
「たまには外出ろよ」
「知るかよ」
今度久しぶりに野球にでも誘ってやろうか。きっと尻尾振って付いてくる。
そんな事を考えながら、その生意気な口を塞いだ。
66:風と木の名無しさん
10/09/10 01:44:02 ZUuEEEU80
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
チッスで黙らせるなんて男前すぎるぜ…。>本尊
67:風と木の名無しさん
10/09/10 23:26:03 w8WOW/hx0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| オリジで後輩×先輩。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 女装足コキアナニーマスターの変態祭り。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヘンタイダー
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
68:1/6
10/09/10 23:26:46 w8WOW/hx0
「どうっすか先輩!」
「おお椚田相変わらず素晴しい美脚だ。しかも最強の女子校生制服に黒のタイツなんてもうニッチなあれで俺のどれを狙い撃ちじゃないか」
ちゃぶ台に行儀悪く右足を乗せ、妙な決めポーズを取っている好青年がこの部屋の主、椚田右だ。右と書いてすすむと読む。そのお世辞にも似合っているとは言えない女装した成人男子に
惜しみない賛辞を能面のように無表情で送っている端正な顔立ちの青年が榎木優二、椚田の会社の先輩で指導係だ。
勿論彼らとてしらふでやっている訳ではない。椚田の資格試験の勉強会だったのがいつの間にか二人ともうっかり摂取したアルコールでほろ酔い気分になってしまっているのだ。
「ところで椚田、なんでそんな頓狂な格好をしているんだ」
「それはっすねぇ」
急に抑えた声になり、榎木はベッドに座った椚田に少し体を寄せる。
「ほら、前回のあれがあったじゃないっすか」
さぁっ、榎木は自分の血の気が引く音を聞いた上に、胃に氷をぶち込まれた気分になった。
あれ、というのは酔いに任せて榎木が椚田に強要した行為だ。今の今まで忘れたみたいにおくびにも出さなかったくせに、コスプレして持ち出すとは。目眩をなんとか抑え、榎木は先を促した。
69:2/6
10/09/10 23:27:13 w8WOW/hx0
「それで、おれ色々考えたんすけど、先輩は足フェチじゃないですか」
「反論の余地もない」
「でも先輩は女の子が好きでしょう?でもおれは先輩の理想の足の持ち主でしょ、ところがおれは男。」
「……それでたどり着いた結論が女装と」
まさにしょんぼり、といった具合で椚田は視線を落とす。
「今のちょっときゅんときたな」
「まじっすか!」
うん、と榎木は素直に頷いてみせる。美脚に性別もくそもあるか、それよりこんな変態の自分の事で一生懸命悩むなんて、可愛いじゃないか。榎木の思考は概ねそんな感じだった。
「そんないつもの無表情で言われても…」
「…わかった」
榎木は椚田の頭を抱えて軽くキスをした。
「せ、せんぱ」
「お前は可愛いな。女子高生マジックか、俺が思ってたよりお前の事好きなのかな」
「そういう葛藤は心の中でしてください…」
70:3/6
10/09/10 23:27:51 w8WOW/hx0
「あ、ぁっはぁ、ン!…いい、気持ちいいよ、くぬぎ、だぁ……」
「せんぱ、おれ、おれどんくらいの力いれたら…」
「もっとして…ァっ!そこ、うぁ…タマんとこ、きもち……ん!くぅ…」
ごくり、部屋中に響き渡りそうな音を立てて椚田は生唾を飲み込んだ。前回酔った榎木に足コキをお願いされた時は驚きが先行して、ろくに状況の把握ができなかったが、今は違う。
仕事ができて、頼りになる、人形みたいにきれいで性の匂いなんて全くしない憧れの先輩が自分の足に縋り付いて悦がっているのだ。
「あ、ぁ、だめ…イく、くぬぎだ、イキそう…」
「いいっすよ、おれの足で、イって下さい」
抑えた声と共に黒いタイツに白濁液が広がる。
「ぁ、ハッ…汚れちゃった…」
「いいっすよせんぱ、ぅわっ!何すんですか!」
足裏の生暖かく湿った感覚に驚いて椚田は左足を引っ込めようとしたが、榎木に阻まれて叶わなかった。恍惚とした顔で足の裏を舐められていたのだ。
「せ、先輩、駄目…、きたないよ…」
椚田の言葉も耳に入らない様子で榎木は指の間まで丹念にタイツ越しに舐めなわしている。ふと目が合い、なぜか椚田は思わず目を逸らした。
「くぬぎだ、勃ってる…」
榎木は椚田の脹ら脛に這わせていた手をそっと太ももの内側につたわせた。
「はは、すげーエロい…」
「そ、」
71:4/6
10/09/10 23:28:25 w8WOW/hx0
そんな事はない、と椚田は自分の足を好き勝手に愛撫している榎木に反論しようとしたが、目に入ったのは紺色のスカートの不自然な盛り上がりと嬉しそうにうっとりと笑う榎木で、声を失った。
確かに、これまで見た中で一番卑猥な光景だった。
「うわ……わ!」
自分の反応に戸惑っている間に、榎木の悪戯な手がタイツ越しの椚田の中心を撫でた。
「…なあ、あのさぁ、これ入れていい?」
「は?え…な、どこにっすか」
「もうさぁ、ここまでしちゃってるし…ぶっちゃけちゃうけどさ、俺アナニー好きでさあ、拡張してたら本物も入れてみたくなってたっていうか、
いや誰でもいいって訳じゃないけど、こんなお前見ちゃったらお前の、その、すげーほしい…なと思っちゃって」
突然の思ってもみない告白に、椚田はぽかんと口を開けてしまった。
「なん、凄いっすね」
馬鹿みたいな返事をしてしまう。それもそうだ、尊敬する先輩が自分のペニス―しかもスカートの下の―を握りながら目を逸らして恥じらっているのだから。目眩がした。
「お、おれよく分かんないっすよ……」
72:5/6
10/09/10 23:29:10 w8WOW/hx0
なんてことだ、混乱した頭で椚田は思う。今までの一番エロい光景記録がどんどん更新されていく。
自分は女装で、押し倒されていて、シャツだけの榎木が跨がっていて、挿入しているのは自分で、状況を把握しようとすればするほど倒錯的で興奮する。
「…っはぁ、う、せんぱ、ぁ、い」
「ふあっ、熱ぅ…んっ、くぬぎだ、きもちい…」
予想以上の快感で喘いでいた榎木だが、蕩けた頭の片隅でふと心配になった。乱れきった可愛い後輩の顔を覗き込む。
「なぁっ、これ、和姦?」
「…へ?」
「だからぁ、はぁっ、ん、おまえも…ちゃんと気持ちいい?」
「え」
間の抜けた返事を返す椚田に痺れを切らし、榎木は椚田の胸に手を伸ばす。
「気持ちいい?」
「そんなとこ、うわっ…な、なにしてっ」
湿った感覚が椚田の乳首に広がる。未知の感覚に身体中がぞわぞわした。
「ぁ、はっ…こら、抜ける…」
「あ、あ、何、だめ、だめですって、そんなしたらおれっ…」
シャツの上から乳首を舐られ、限界に近いペニスはいっそう締め付けられて、椚田は射精したい、その一心で気も狂わんばかりだった。でも言わなければ。ひとかけらの理性が促す。
73:6/6
10/09/10 23:29:40 w8WOW/hx0
「どうして泣くんだ」
「だって、そんな事、言われたら、あ!…おれ、バカみてぇじゃないっすか、こんな、こんなにして、好きに…好きに決まってるじゃないですか!」
「!っあ、ぁア…ぁああ!」
「ひ、も…ぅあ、んっ…」
先に達した榎木につられるように椚田もすぐに絶頂を迎えた。力なく榎木が倒れ込む。抱き合うかたちになり、二人で荒い息を整える。
「っはぁ、どうしよう…」
「…何がっすか」
「すげー気持ちよかった…嬉しい。ん、何固まってんだ?」
「…イエ、それでもいーんです、おれ……」
挙動不審な椚田に、榎木なりに考えに考えて、どうやら椚田は自分のオモチャでもいいと思ったのではないだろうか、という結論に達した。
馬鹿なやつだ。自分はさっきの告白でまだ動悸が収まらないというのに。こんな自分の事で精一杯で鈍い自分のどこに惚れたのか。確かに、涙がでそうだ。
榎木は少し笑って、言った。
「ばぁか、お前が俺の事愛してくれて嬉しいってこと!」
74:風と木の名無しさん
10/09/10 23:30:48 w8WOW/hx0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | | 衝動的に書いた。はい、変態は私です。
| | | | ∧_∧ オソマツサマデス
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
75:風と木の名無しさん
10/09/10 23:49:21 HGuCbfsP0
>>67
(; ゚∀゚)=3ハァハァ
GJ! GJ! 変態バンザイ
76:風と木の名無しさん
10/09/11 00:48:23 QKaRcv49O
>>67
801の夜明けやーw
77:風と木の名無しさん
10/09/11 01:32:49 nr1mNnByO
>>67
アナニーからガチにいっちゃう男子の時代がついに来たか…
好みど真ん中すぎる ナイス変態ありがとう!
78:風と木の名無しさん
10/09/11 22:26:20 unVhXprr0
アナニーいいな
もっと広まれアナニーの輪
79:天葬 1/7
10/09/12 23:29:15 4W4GcSgFO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
激団親幹線「バソユウキ」から殺し屋と復讐鬼。
激団特番を見ていたら萌えが再燃&以前書きかけだったものを見つけたので投下。
切り立った崖の先から臨む朝の海は、穏やかに静かだった。
水平線から昇り始めた陽の光を受け、波が白く煌めき、その上を海鳥が飛んでゆく。
そんな移り変わってゆく風景をどれくらい眺めていたか。
佐治は不意に強く吹いた風に髪を煽られ、それを片手で押さえた。
そしてそれをきっかけにスッと後方に視線を流す。
見やった背後にあったのは、うずくまる一人の男の背中だった。
夜明け前、ここに辿り着いた時から微動だにしていないようにも見えるそれは、
いつもの教主の白い衣装では無く、忍び用の黒衣を身にまとっている。
その後ろ姿に滲むのは怒りか悲しみか。
理解できないまま見つめ続ける彼―怒門の前にはその時、ただ土を盛った上に
目印のような石が置かれただけの、簡素な墓があった。
80:天葬 2/7
10/09/12 23:32:02 4W4GcSgFO
都に近づく旅の途上、その土地に足を踏み入れる前から怒門の様子は少しおかしかった。
言うなれば落ち着きがない。しかしそのくせ土地の者の中には殊更積極的に入っていく。
そしてそんな中で耳に入ってきたのは、昔、この土地にいた青年のお伽噺のような話だった。
青年は年の頃衛兵として都へ上がり、そこでとある媛君に見染められた。
結婚の約束をし、その箔付けのように海の向こうの国への留学も決まり、すべては順風満帆。
しかしそんな夢のような話は長くは続かなかった。
青年はこの国には戻ってこなかった。
留学した国で、許嫁の媛君の兄を殺した咎で処刑されたらしい。
どうしてそうなったのか。事情は知らされず、訳も分からず、ただそれでも青年の父はそんな息子の
身の潔白を信じ続けた。
きっと何かの間違いだ。息子はそんな不忠を働くような男ではない。
頑なに、ひたすら。
青年もその父親も人の好い者達だったから、事情が知れても周囲の人間が冷たく当たる事は
無かったが、それでもどうしても余所余所しくなっていく雰囲気をその父親は肌で感じ取っていたようだった。
徐々に孤立し、口を利かなくなり、食も細った。
そんな父親のもとに、ある日都からの使いが来た。
立派な武人の身なりをしたその使いは、父親にかつての息子の許嫁だった媛君の婚儀を伝えた。
この国の大王が媛君を妃にと望んだらしい。
自分達にとってはまるで雲の上のような話。
しかし父親には例え相手が雲の上の存在であろうと、その行為は息子を信じる心に対する
裏切りになったようだ。
武人が来た翌日、その父親は……死んだ。
『自害だったようですけどね。詳しい様子はわしらにはわかりませんでした。
知らせを聞いたその媛様の家中の方々が、片づけのすべてを取り仕切ったので。
ただその中に例のご武人は見かけましたね。彼らはその父親をこの林を抜けた先にある
海の見える崖に埋葬したようです。そしてわしらには、その場所に無闇に近づかぬようにと。
だから、どうぞ気をつけて下さい教主様。下手に近づけば、どんなお咎めを受けるかわからない』
81:天葬 3/7
10/09/12 23:38:41 4W4GcSgFO
語られた言葉に固まっていた、あの時の怒門の背中。
その夜、宿坊から一人抜け出そうとするその行く手に立った時、彼は自分をただ無言で
見つめてくるだけだった。
おそらくは説明や言い訳を口にする余裕も無かったのだろう。だから、
『一緒に行くよ』
と、自分は言った。
『僕は君の護衛だからね』
それに返される彼の声は、あの時やはり無かった。
82:天葬 4/7
10/09/12 23:43:41 4W4GcSgFO
「父上との話はまだ終わらないかい?」
夜が明け、空も白んじてきた。
こっそり抜け出てきた宿坊も、自分達の姿が見えないとなれば騒ぎが起こるかもしれない。
そんな理屈を胸に発した佐治の声に、その時怒門はビクッと肩を震わせたようだった。それでも、
「……話などしてしていない…」
ややして、ポツリと落とされた呟き。それに佐治は少しだけ安堵の息を吐き出した。
「ならば何を?」
「俺に出来る事と言えば、ただ謝る事だけだ。」
ひっそりと返される、その声にはどうする事も出来ない無常感が滲んでいる。
さもありなん、どれだけ悔いようが悲しもうが、もはや取り返しがつかない事と言うものはある。
彼の父親の死は、まさにそれであった。
「君の事を最期まで信じていたようだね。そう考えると君と父上はやはり似ていたんだろうか?」
自分は血の繋がりなどまるで信じてはいないけれど、
「何故そう思う?」
「だって、驚くほどに頑固じゃないか。」
サラリと告げてやった、その言葉に怒門が膝を突いたままハッと振り返ってくる。
その視線に向け、佐治はこの時ほのかに微笑んで見せた。
しかしその笑みの下でこうも思う。
だからこそ、その強固なまでに張りつめた心の糸は、切れてしまえばこれ以上なく脆い。
自分以外にも息子の無実を信じていてくれたと思っていた唯一の者の裏切り。
下手に希望など持つから突き落とされる。
それは自分にはただ愚かな所業としか思えなかった。けれど、
「君の父上をここに埋葬したのは、やはり君の許嫁の手の者かい?」
今はそれを口にはせず、違う言葉を操る。ただ事実を確認するように。
しかしそれにこの時、怒門の表情にはサッと苦い影が走った。
「あぁ、京鐘家の手の者だろうな。美琴の婚儀の前に忌まわしい過去はすべて闇に葬り去りたかったんだろう。だから人里離れたこんな場所に…」
語尾が掻き消える、しかしその言葉尻を捕らえて佐治はこの時ふと周囲に視線を巡らせた。
眼前に広く海の広がる、ここは寂寥とも閑静とも取れる場所。
しかし佐治は、この時もそれについての言及を避けた。その代わり、
膝まづく怒門の肩越しに見やる簡素な墓。
「人の体を、地に埋めるから想いが歪む。」
そしてボソリと告げたその言葉に、怒門は瞬間ふと眉をひそめてきたようだった。
83:天葬 5/7
10/09/12 23:46:54 4W4GcSgFO
「佐治?」
いぶかしむ様に名を呼ばれ、口元にもう一度笑みが浮かべる。そして、
「大陸ではね、」
場に不似合いな涼しげな声が、この時唇から零れた。
「大きな都では知らないけど、そこから一歩外れれば野晒しの死など珍しい事じゃない。
山に川に、そして荒地では人の骸を鳥が食う。けれどそれはただ痛ましいだけの事ではなくて
食われた体は鳥の血肉となり、天に舞う。だから鳥の葬いは天の葬いとも言われている。」
「…………」
「君が望むなら叶えてあげようか?」
笑みを消さぬまま、佐治はそう言ってスッと着物の襟の合わせから懐を探った。
そして呆然と口を閉ざし続ける怒門の目の前に取り出してやったのは、竹で出来た小さな笛だった。
「鳥笛だよ。鳥を呼び寄せるのに使う。昔は連絡用に使っていた事もあったけど、ここ数年は
無用の長物だった。それでも吹けば何とかなるかもしれないよ。」
まあ、その手の鳥がこの辺りにいるかどうかも問題ではあるけれど。
そう言葉をつけ足し、佐治はこの時まるで子供が遊ぶような軽やかさで笛に唇を近づけようとする。しかし、
「…待てっ…」
瞬間、それを叫ぶような激しさで押し留めてくる声。
視線をゆらりと傾ける。と、そこには片手を前方に差し出し自分を必死に止めようとする怒門の姿があった。
だからそれを瞳に映したまま、佐治はゆっくりとその手を下へおろす。
するとそれに怒門は一瞬緊張の解けた表情を見せ、そのまま地面に両手を突いた。
うつむくのに合わせ、彼の長い白い髪が肩から滑り落ちる。
そしてその隙間からやがて聞こえてきた音。それはどうやら彼の失笑じみた声のようだった。
前のめりだった体が起こされ、ドサリと地面に座り込む。そして、
「慣習の違いだな。」
一言天を仰ぐようにそう呟くと、怒門は次の瞬間佐治にまっすぐな目を向けてきた。
84:天葬 6/7
10/09/12 23:50:07 4W4GcSgFO
「すまない。だが、止めておこう。おまえの申し出を受ける為には、俺はこの墓を暴かなければならなくなる。
その結果、俺の気持ちは少しは軽くなるかもしれないが、父にしてみれば静かな眠りを妨げられる
二重の親不孝になるだけだろう。」
「…………」
「すまない。」
怒門は繰り返し言った。そして、
「でも……ありがとうな。」
こんな言葉まで口にした。
言われた瞬間、佐治の目がわずかに見開かれる。
まさか礼を言われるとは思わなかった。それどころか、
「しかし、なんなら俺が死んだ時は佐治に頼むか。すべてを無に帰し、空を舞えるのならそれもいい。
もっとも……そんな綺麗な終わり方を俺が望んでいいのかはわからないが。」
穏やかな笑みの中に微かな自嘲を含ませて、そう視線を落とした怒門に、この時佐治はなんとも
例えようのない感情が胸に湧き上がるのを覚えた。
それはひどくもやもやと形を成さない……だから、深い考えのないまま滑る言葉が口をつく。
「君は……僕より先に死ぬつもりかい?」
珍しく不快に近い感情が滲む声に、目の前今度は怒門の方が驚いたような表情を見せた。
「いや…そう言うつもりで言った訳じゃないんだが……でも、そうなるのか。」
言っている途中で気付いた様に最後がひどく小声になる、そんな怒門に佐治の理由の無い苛立ちは増す。
「何故?」
だからジリッと足を踏み出しながらそう声の調子を強めれば、しかしそんな佐治の胸の内など
まるで気がつかないように、怒門はこの時困ったような笑みをその目元に浮かべながら告げてきた。
「何故って、おまえの方が俺より年若いじゃないか。」
「………」
「それにおまえの方が俺より強い。」
きっぱりと言い切られた、その言に佐治は一瞬返す言葉を失ってしまう。
それは、そうだが。そして自分は確かに、自分の死に方など考えた事も無いけれど。でも……
「なんだか嫌だな……」
心底苦々しげにポツリと零した、そんな佐治の呟きに、怒門はこの時尚も笑ったようだった。
「なら、先に死にたいのか?」
「それも御免だ。」
85:天葬 7/7
10/09/12 23:52:03 4W4GcSgFO
少しからかうように言われ、即座に返す。と、それに怒門は佐治は我儘だなと続けてきた。
我儘、そうなのだろうか?よくわからない。けれど、
先に死なれるのはつまらない。
先に死ぬのもつまらない。
ならば、それを避ける為には……
不意に目の前煌めく光が見えた気がした。
交じりあう剣戟が放つ一瞬の光。
それは過去の記憶か、それとも……未来の予見か――
その中に同じ命の長さを求める可能性を探れば…それは…
相討ち――
「心中くらいか。」
沈みかけていた思考に割り入る様に、その時不意に耳に飛び込んできた言葉。
それに佐治がハッと顔を上げると、視線の先にはやはりこちらを穏やかに見つめてくる怒門の瞳があった。
その唇が動く。
「一緒に死のうと思ったら、それくらいしかないだろう。」
「………」
「まぁ、戯言だな。すまん。」
黙り込む佐治の先回りをするようにそう告げ、怒門はその時座り込んでいた場所からゆっくりと立ち上がる。
着物についた土を払い、その手も叩く。そして、
「帰ろう。」
彼はそう言うと、すっとその手を佐治に向け差しのべてきた。
86:天葬 8/7
10/09/12 23:55:38 4W4GcSgFO
宿坊へと戻る道すがら、気を取り直したように見えても、まだ怒門の口数は少なかった。それでも、
「おまえが一緒に来てくれてよかった。」
時折、前を行く彼の肩越しに零される呟き。
「でなければ俺は笑う事はおろか、こうして立ち上がって歩く事も出来なかっただろう。」
ボソリと言われ、そうなのかと思う。
と、同時に先程までの事を思い出しもする。ああやって笑っていたのも無理をしていたのかと。
ならばそのやせ我慢が愚かしいにもひどく可愛らしくて、
やはり天にも地にもこの男はやれない――
再び可笑しそうな笑みを取り戻しながら歩く速度を速め、少しだけ彼との距離を縮める。
そんな佐治の手の中でその時、不要となった鳥の笛がキリリと軋む音を立てていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
久しぶりで手間取り+ナンバリングもミスりました。すみません。
早くゲキツネ公開にならんかな。
87:風と木の名無しさん
10/09/13 01:12:40 9LN4Cd5nO
>>79寝る前に覗いて良かった!ありがとうありがとう。
教主様も殺し屋も二人の関係も愛おしいよ。
88:風と木の名無しさん
10/09/13 02:33:22 ZSASJAUg0
>>66
深夜時代のごほうびわしゃわしゃを思い出しました。
89:風と木の名無しさん
10/09/13 23:44:53 jkaoRExx0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 某ゲ仁ソ麺話です。生注意。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| エロなしヤマなしオチなし。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
90:きみとねむる 1/3
10/09/13 23:46:47 jkaoRExx0
ピンポン、とインターホンが鳴る。
受話器を取ると、予想通りの声が聞こえてきた。
「健太郎、来たよー」
「今開ける」
ボタンを押してロックを解除する。部屋に着くまであと2~3分といったところだろうか。
少し時間を持て余していると、またピンポン、とベルが鳴った。
玄関のドアを開け、「おう」と客人を招き入れる。
「ごめんな、いきなり呼びつけちゃって」
「別にいいよー、今日暇だったし。台本できたんでしょ?」
「あらかたね。ファックスとかでも良かったんだけど、ちょっと実際読んでみて欲しいとこがあったから」
「珍しいねぇ健太郎にしては。そゆのあんまりないのに。」
「うん、ただ直したいとこが出てきたからちょっと待っててもらっていい?」
「わかった」
肩桐は慣れた様子で仕事場のソファベッドを倒し、ごろんと寝転がった。
子林もそれをさして気にすることなくパソコンへ向かう。
「あのさあ賢太郎、こないだやついがさ」
「たろうの幼稚園でさ」
「今度の芝居がね」
「はははっ」
「そーか」
「んー…」
容赦なく投げかけられる言葉を、容赦なく適当に投げ返す。
子林はキーを叩くのに没頭していた。
面白いセリフ、面白い動きと間、頭の中でカチカチと音を立てて建ちあがる世界。
どれだけの時間が経っただろうか。子林はようやく手を止めて伸びをした。
91:きみとねむる 2/3
10/09/13 23:49:02 jkaoRExx0
「あー終わったー。お待たせ仁」
振り返ると肩桐は寝入ってしまっていた。時計を見ると3時間近く経っていたのだから仕方がないかもしれない。
ソファベッドの周りにはいつの間に買ってきたのか食べかけのポテトチップスやらコーヒー牛乳やらが点在し、
ベッドの上には開きっぱなしの携帯ゲーム機と漫画が放ってあった。その中心で眼鏡も外さず眠る肩桐を見て、子林はため息をついた。
「汚ぇなー…」
食べ残しを片付け、漫画と携帯ゲーム機を閉じてテーブルに置いておく。床に置いてあるコンビニの袋を覗くと、もうひとつ汗をかいたコーヒー牛乳のパックが入っていた。
これは多分自分にだろう、とあたりをつけてコーヒー牛乳を啜る。疲れた頭に甘さがじんわりと痺れた。
「ぬるいし…」
気の抜けた顔で眠り続ける相方を見ていると、子林にも眠気が襲ってきた。
「ベッドで寝やがって」
自分が床で寝るのは癪だ。なるべく肩桐を隅に追いやってからソファベッドに横になる。さすがにベッドが軋んだ。
「眼鏡くらい外せよ」
肩桐の眼鏡を外して床に置いた。長年見てきた顔が、結構近くにあった。自分にはない天性の面白さ。素直さ。したたかさ。
コンビを組んで、何度コイツになりたいと思ったか知れない。しかしもしそんなことを口に出せば、肩桐は「何で?健太郎の方がすごいじゃん。俺なんてなんもできないよ」と事もなげに返すだろう。
それが自分が持てない強さだと、子林は羨むような、妬むような気持ちの広がりをじんわりと感じる。
でも、と子林は思う。肩桐の面白さを一番分かっているのは自分で、その面白さを一番引き出せるのも自分だ、それだけは間違いないのだ、と。
今まで数え切れないほど繰り返してきた自問自答をまた辿り、子林は眠りに落ちてゆく。
92:きみとねむる 3/3
10/09/13 23:50:42 jkaoRExx0
肩桐が目を覚ましたとき、もう時計は夜中の1時を回っていた。
薄目で腕時計を確認し、寝入ってしまったことを知る。煌々と明るい蛍光灯の光が目に突き刺さるようだった。
「うわ、1時って夜中じゃん…もう電車ない…」
ふと気付くと、目の前の随分近い位置に子林の顔があった。
「何で健太郎も寝てんの…」
寝すぎでぼうっと痛む頭のまま、肩桐はその見慣れた顔を眺めた。
自分には想像もつかない世界が、この頭の中に広がっているのだ。自分が逆立ちしてもでてこないようなアイデア。何でもこなす器用さ。ストイックさ。
こんなに近くにいるのに、コンビを組んでいるのに自分はただ心の底から感心することしかできない。無力さがいつも嫌になる。
でも、と肩桐は思う。子林が相方に選んだのは自分で、そこには何かしらの意味が必ずあるのだ、と。
こんなに眉間に皺を寄せて眠るコイツを、誰かが守ってやらなきゃならない。きっとそれが自分の役割のひとつだ。
左手で子林の額に触れる。少し顔を歪めたあと、子林はいくぶん安らかな顔で寝息を立て始めた。
それを確認すると、肩桐はそっと電灯を消し再びベッドに滑り込む。
「おやすみ」
雨の気配と共に、夜が静かに更けていった。
93:風と木の名無しさん
10/09/13 23:52:53 jkaoRExx0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ おしまい。読んでくれてありがとう!
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
94:風と木の名無しさん
10/09/13 23:59:27 CvHDhax/0
>>93
ちょうど今飢えてて避難所を覗いてきたところで凄いナイスタイミングでした!
癒されたよー
95:風と木の名無しさん
10/09/14 01:13:26 gSUhWmpcO
>>93
ふたりの感情が素朴でイイ!
萌えましたありがとう
96:Living Dead Lovers 1/7
10/09/14 23:57:46 T2eentl90
藤/崎/竜版の屍/鬼で徹×夏野です
「もしも夏野が屍鬼達の幹部になっていたら」という捏造if設定なので苦手な方はご注意ください
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
人ならざる者屍鬼の集落、外場村は頂点に兼正の沙子を頂き、僅かな人狼に統率される3つの集団に
分けられる。
倉橋佳枝率いる屍鬼として起き上がったばかりの者を教育する山入、辰巳率いる屍鬼としての生活に
慣れた者が起居する外場村、そして結城夏野率いる都会班である。
都会班は屍鬼ばかりで獲物となる人間がいない村から自動車道で都会へ屍鬼を送り、狩りを采配する。
また自分で狩りを行えない仲間のために餌である人間を都会から間引いてくる役割も担っていた。
深更、村に都会班が帰ってくる。村中で遠征した屍鬼達を降ろすと、バンは山入へと分け入っていった。
「お疲れ様!辰巳が結城くんのこと待っているよ!」
バンを待ち構えていた佳枝は、降り立った夏野に声をかけるとテキパキと教育係の屍鬼達に指図して、
家畜をトラックで移送するごとくバンから人間達を引き摺り下ろしては檻へと連れて行かせる。
夏野は無言で頷くと、バンを運転していた傍らの武藤徹を見上げた。
徹は唇を噛み、連れて行かれる人間達をじっと見つめている。
「行こう、徹ちゃん」
すっと脚を運ぶ夏野に遅れまいと、徹は慌てて夏野の一歩後ろを付いて行った。
――ほら、あれが結城夏野だよ
――私を攫うよう指示したのも彼なのね
――傍らの青年は武藤徹といって、結城さんの子飼いだ
――人狼だから、ヒトを襲わなくても俺達のように飢えないのさ。同じ化け物なのに
――その辺で止めときなよ。兼正や人狼に逆らったり目をつけられたりしたら・・・
集落を横切る夏野達を、屍鬼の畏怖の視線と囁きが追いかける。人狼として身体能力や五感が発達した
夏野でなくとも、その囁きは徹にも聞き取れた。
徹は声を振り切るようにただ前を行く夏野の足元を見つめたまま歩いた。
「や!お帰り。今夜もご苦労様」
徹と夏野が外場で住処としている家には、辰巳が既にきていてリビングで待っていた。
夏野は辰巳に一瞥を投げると、対面のソファーに腰を下ろす。
97:Living Dead Lovers 2/7
10/09/14 23:59:17 T2eentl90
時に冷酷な一面を露わにする辰巳を徹は苦手としていて、人狼同士の会合の際には給仕だけして
奥に引っ込んでいるのが常だった。
「俺、コーヒー用意してきます」
「ああいいよ、それより今日は武藤くんも座ってくれ」
にこにこと促され、仕方なく徹は夏野を伺うとそろりと夏野の隣に座った。
「で?用件は?」
「沙子がきみのことを褒めていたよ。『よく働いてくれている』って」
「どうも」
徹は無愛想な夏野に辰巳が機嫌を損ねないか、はらはらと忙しなく二人を見やる
「ただね、きみが間引いてくる人間なんだけどね―どうして少年がいないんだい?」
ひたりと辰巳は夏野を見据え、夏野は微塵も揺るがずその視線を受け止めた。
「そう、きみや武藤くんのような年代の若い子がいない。これはどういうことかな」
「どうもなにも。たまたま運よく俺達に間引かれなかっただけだろう」
「それだけかい?僕はもしや結城くんが手心を加えているのかと思ってね」
にたりと笑う辰巳を、夏野は睨めつけた。空気がピンと張り詰める。
「…何が言いたい」
「屍鬼に殺され、屍鬼となった武藤くん。そして飢えと家族と親友の命を天秤にかけ、
家族を取った親友の武藤くんに襲われて人狼として蘇生した結城くん。
今なおその事で苦しむ武藤君のために、きみのような年頃の少年をわざと見逃しているとしたら、
これはいただけないね」
辰巳はぐっと身を乗り出すと、獰猛な狼が生餌を嬲るように夏野を注視する。
「家族が起き上がらなかった屍鬼は、気に入った相手がいればそういう者同士で連れ添う。
でもきみが屍鬼となる餌を間引いてこないと、可哀想にあぶれる者も出てくる。
…中にはヒトを襲わずに済み、幸運にもパートナーの人狼の血で生き永らえている仲間に妬みを
募らせる屍鬼も出てくるかもね」
ぴくりと夏野の肩が揺れ、徹は俯いていた面をはっと上げる。
「人間でありながら屍鬼になった人狼の血なら、人間の血と同じように屍鬼の飢えを満たせる。
その上人狼だから回復力もある。
ヒトを襲いたくない殺したくないって思っている覚悟がない屍鬼からすれば、その屍鬼も、
血を与える人狼も憎しみの対象だろうね」
辰巳はじっくりと夏野と徹の反応を味わうと、身を引いた。
98:Living Dead Lovers 3/7
10/09/15 00:00:42 T2eentl90
「や!そんな人狼と子飼いの屍鬼なんていないだろうけど、そんな噂が外場に広まらないように
頑張ってくれというのが沙子と俺の考えだ。
じゃ、これで俺は失敬するよ」
辰巳がひらりと手を振って出て行ったリビングには重苦しい沈黙だけが蹲っていた。
「夏野…」
ふうっと夏野は力を抜くと、徹に寄りかかった。
腕の中の肢体は青年への過渡期の薄い体のままで、自分では死と共に失った呼吸と温もりが哀しく、
愛しく、そっと抱きとめた。
「徹ちゃんが初めて俺を襲ったときも、こんな風に優しく抱きしめてくれたよな」
背中を支える腕の優しさも、その腕の冷たさも覚えている。そして『獲物』として自分を覗き込んだ
冷えた瞳も。
手を指し伸ばすと、徹ちゃんは自分から頬を寄せてきた。
「夏野を襲いたくなかった。人の生き血を啜らなければ生きられない自分が嫌だった。
でもあの時、清水が夏野を襲おうとしたとき、思ったんだ。
清水は夏野を襲うことを受け入れていた。夏野を襲うことを躊躇する人間らしい苦しみはなかった。
俺はその苦しみを、誰にも譲りたくなかったんだ。たとえその苦しみを未来永劫抱えることになっても」
まるで石を飲み込んで苦しくてたまらないように眉を寄せる徹ちゃん。
人だった頃の徹ちゃんは、こんな風に苦しげではなかった。
当たり前だ。俺達は人外の化け物になったのだから。
「俺は、徹ちゃんを殺した屍鬼が憎い。俺を殺した徹ちゃんが憎い」
徹はぐっと顎を噛み締め、夏野の憎悪を受け止める。
「徹ちゃんが俺を襲った苦しみを抱え続けて、苦しくても辛くても生きるっていうのなら、
生きたいとは思わないけど、俺も生きるよ。
俺は俺と徹ちゃんを奪った屍鬼への怒りと憎しみを抱えてな。
…矛盾してるよな。
屍鬼を憎んでいるのに、都会班を采配して、徹ちゃんを許せないのに中途半端な間引きでその苦しみを
和らげようとして、けっきょくこの村に帰るしかないんだ」
「夏野」
夏野は蘇生してから、「夏野」と下の名前で呼んでも怒らなくなった。きっと、そういうことなのだろう。
「村に捕らわれるのは御免だけど、徹ちゃんにならいいよ」
夏野は身を起こすと、シャツを脱ぎ捨てた。
健康的な生き血を前に、ぞろりと牙が伸びるような感覚を覚える。
99:Living Dead Lovers 4/7
10/09/15 00:02:08 T2eentl90
「食えよ」
徹は屍鬼としての本能に身を任せ、夏野を押し倒した。
ぶつりと張りのある肌を牙で噛み破ると、さらりと甘味のある血液が口いっぱいに広がる。
牙の毒がもたらす軽い酩酊感で夏野の瞳が揺らぐのが綺麗だと思った。
ひとしきり喉を鳴らして貪ると、牙を引き抜く。
飢えが満たされた満足感に一息つくと、見る間に噛み痕は塞がった。
「満足した?」
「まだ。…今度はこっち」
伸び上がって甘えるように鼻先をすり合わせると、夏野の唇が誘うように開いた。
「んぅ……ふっ…んんッ」
舌を絡め合い吸い上げると、ぞくぞくと背筋を快感が駆け巡り腰の奥に重く溜まっていく。
夏野が己の血で徹を養うようになったときから、ごく自然に徹の食事の後に抱き合うようになった。
生き血を啜るという化け物の行為の後にセックスをするのは、精神までは化け物になったわけではない、
人と同じ精神の在り様を―誰かを愛して心と体を繋げたいという想いをこの空虚な入れ物に
宿し続けていると表したかったのかもしれない。
牙で舌を軽く噛むと、夏野が抗議するように髪を引っ張る。
「牙で舌噛むのは止めろよ!毒が苦くて嫌なんだよ」
「ごめん。つい。でもさ…」
「でも何?」
徹はカチャカチャと金具を鳴らして夏野の下衣を取り去ると、勃ち上がりかけているものを撫で上げた。
「こっち噛まれるのは好きだよね」
「な、馬鹿!そんなわけあるか、あっ」
ぐっと喉の奥まで咥えこむと、冷たい口内に迎えられた夏野のものがびくりと震えた。
屍鬼は肺呼吸がないから、思う存分咥えて愛してやることができる。徹はじゅぶじゅぶと唾液を
絡めながら、竿を舌と唇で扱き育てていく。
「ぁ、あはぁ……とぉる、ちゃん……」
紅い粘膜を曝け出した先端を、舌先でぐりぐりと抉るように差し込んでやれば先走りがどんどん溢れてくる。
「も、でそぅ…!」
限界だと夏野の太腿が引きつる様に痙攣し、忙しなく腹筋が上下する。
「いいよ我慢しなくて」
徹はじゅぷっとペニスを解放すると、チクリと小さく牙を立てた。
「ぅわ、ああああああッ」
100:Living Dead Lovers 5/7
10/09/15 00:03:30 T2eentl90
小さな痛みの後に甘い疼きが腰の奥で爆発し、夏野は勢いよく達した。
「大丈夫?」
達した余韻で情欲に弛緩したまま、夏野は忙しない呼気を鎮めようとする。
「…大、丈夫だから、ジェル…取って来て」
「待ってて」
ちゅっと軽いリップノイズを立ててフレンチキスを落とすと、夏野は照れてぷいっと顔を背けてしまった。
賢いけど気難しい猫のようで、徹は忍び笑いを堪えながらジェルを取りに立った。
後孔が乾いたままだと動き辛く、何より夏野を傷つけてしまう。
人狼なので血が流れてもすぐに治り、血は潤滑油の役割を果たしてくれない。
徹は夏野とのセックスを苦痛だけで染め上げたくなかった。
「お待たせ」
「別に」
衣服をすべて脱ぎ去ると徹は夏野に覆いかぶさった。太腿に口付けながらそっと軽く押すと、
夏野がそろりと脚を開いていく。
その様が「徹ちゃんが押すから脚を広げられるだけで、けして俺から脚を広げるなんてまねはしてないぞ」
と言っているようで、
徹は思わずくすりと笑みを滲ませてしまう。
「何だよ笑ったりして」
「いーや別に。夏野は可愛いなぁと思って」
「ふざけたこと言ってんなよ」
つり上がった目尻をキスで宥めつつ、手の平に取ったジェルを指に絡めてそっと夏野に沈めていく。
暖かい夏野の中が異物感と徹の冷たい体温にきゅうっと収縮する。
屍鬼には寒暖など関係ないが、人間でありながら屍鬼である人狼は体温があり、
人間よりは耐性があるとはいえ多少は寒暖を感じる。
こりこりと前立腺を刺激すれば夏野の肌は上気し、暖かい涙が流れていく。
それなのにこの死んだ体はいつまでも冷たいままだ。
「ごめんな。俺、いくら夏野が暖めてくれても冷たいままで」
申し訳なさにそっと涙を拭うと、夏野は柔らかく笑い徹を抱き寄せて幼子にするように額に口付ける。
「いいよ。俺が何度でも徹ちゃんを抱きしめるから。徹ちゃんはただ俺の体温を感じてくれるだけでいい」
鼻の奥がつんとして、夏野に抱き着いて遮二無二泣き叫んで謝りたくなる。
「殺してごめん。飢えに負けてごめん」と。
101:Living Dead Lovers 6/7
10/09/15 00:05:33 T2eentl90
でもそんなことはできない。夏野は根底では今でも屍鬼も、己を殺した徹も許していないからだ。
だから徹は腕の中の存在をただ大切に、大切に、抱きしめた。
「はぁッ……ん、そろそろ、いい、よ」
「うん」
ぐっと体重を乗せて腰を突き出すと、ぬぷっと呑みこまれていく。
「ん、う、あ、んあっ」
「夏野」
夏野の呼吸を促すように、髪や頬を愛撫する。
「う、あ、とおる、ちゃんっ」
「うん、俺だよ」
「ああっ…あん…ぅあっ」
夏野の息が整ってきたところで、ゆっくりと引き抜いては大きく腰を突きこむ。
冷たい杭がペースを徐々に上げて夏野を追い込んでいく。
熱を持たない徹のものが突き上げるたび、腰が熱く重く痺れていく。
「夏野っ…夏野っ」
縋るように名前を呼ばれると、胸の奥に飲み込んだ硬く凍った怒りが絆されていく。
まるで自分達がただの人間の恋人同士みたいだと勘違いできそうで、夏野は徹を掻き抱いた。
「徹ちゃんに抱かれてイったときの感覚って、死んでいく感覚に似ている」
荒くなった呼吸と火照った体が落ち着いた頃には、夏野はうとうととまどろんでいた。
徹は先を促すように乱れた髪を梳いてやる。
「血を吸われる快感が終わると、手足が無くなったみたいに体が重くなって世界が真っ暗になっていくんだ。
そしてどこまでも落ちていく。俺は徹ちゃんに抱かれる度に、人だった頃の最後の夜を繰り返すんだ…」
「…夏野?」
覗き込むと、寝付いてしまっていた。こうして見る寝顔は人間だった頃とちっとも変わっていない。
自分はかつて飢えに負け、夏野以外にも人を殺め、罪を犯した。
夏野が血を与えてくれるから、今は飢えることもなく人を殺さずに済んでいるだけだ。
いつか夏野がその胸に抱える屍鬼への怒りと憎しみが溢れたら、そのときはどこまでも夏野に着いて行こう。
そしてこの手で殺した夏野に、今度こそ死なせてもらうのだ。
(でも、それまではずっとそばにいるよ)
徹は眠る夏野の掌にそっと冷たいキスを捧げた。