11/01/14 00:35:30 FmrmtizCP
リンゴはジョンの耳元にそっと唇を近づけた。ジョンはその後に続くリンゴの言葉を聞き終えると、彼を見つめ返した。
「リッチ……」
リンゴは相変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。しかし、ジョンはその瞳に浮かんでいる光を見て、どこかを鋭く突かれたように顔を歪めた。
「リッチ、済まない。俺は……」
「ああ、分かってる」
リンゴは変わらずジョンの瞳を見据えたまま静かにうなずいた。
「でも、このままじゃ、お前のほうだってどうにもならない。ただ傷つけ合うだけだ。それぐらいなら、いっそ」
「俺だって……それは、願ってもないことだ。そうなるのが良いに決まってるんだ。でも、知っての通り、俺は我が侭な男なんだ。
いざ、そういうことになったら、俺のほうが……」
「いいや、そうでもないだろう。お前は分かってる奴だよ……ジョニー。むしろ俺のほうがよほどタチが悪いさ。
だからこんなふうに取引を持ちかけているのさ」
リンゴはジョンの頬を優しく撫でていた。
「でも俺は、それで耐えられるかどうか分からない。また……」
「その時は、どんなでも、この俺が引き受けるさ。お前の嫉妬でも、憤りでも、なんでも……そして、まさにこういったことでもね」
ジョンの瞳は潤み始めていた。
「でも、リッチ、それじゃ……」
「少しずつ……少しずつでいいんだ。お前と……あいつの心に、収まりが付くまでは……でも、いつかは、あいつは俺のところに」
ジョンはリンゴの瞳を見つめ返しながら、両の手をリンゴの頬に添えていた。そして唇を静かに動かした。
「分かった。頼むよ。リッチ。これからも……」
「決まりだな。これで。……さあ、好きにしな……ジョニー」
リンゴはジョンの肩に両腕を回すと、その顔をジョンの目の前に近づけ、そっと目を閉じた。
ジョンはしばらくの間リンゴの顔を見つめていたが、やがて静かにリンゴを抱き寄せると、もう一度、深い口付けを交わし合った。
_________
The End