モララーのビデオ棚in801板57at 801
モララーのビデオ棚in801板57 - 暇つぶし2ch283:僕の金色の 7/7
10/04/16 17:38:40 VNAwLLxG0
 でも、おじいさんはその看板に気が付いていないようでした。
「この辺に住んでいる人じゃないのかな?」
踏切の真ん中が高くなっていて、向こうから階段が見えないのもやっかいです。
「誰か階段だって教えてあげて! 電車が通り終わったら僕は遮断機を上げな
くてはならないんだ!」

 左右から時間差で通過していた電車がどちらも通り過ぎ、遮断機が上がった
ので、おじいさんは踏切を渡り始めました。そして真ん中を過ぎたあたりで、
やっと反対側が階段であることに気づきました。おじいさんはあわてて元いた
方に戻ろうとしましたが、この3号踏切は幅が1mも無いのです。
 おじいさんは車椅子の向きを変えようとしますが、今にも脱輪しそうです。
3号に次の電車が近づいているとの信号が届きました。もう少ししたら警報機
を鳴らさなければなりません。
「誰か! 誰か! 気が付いて!」
自分が人と話せないことを、今日ほど呪った事はありませんでした。

 おじいさんは結局、たまたま通りがかった近所の主婦達に助けられました。
反対側に脱出できた頃には、警報機が鳴り始めていました。主婦達はおじいさ
んに声をかけながら、この踏切はホント危ないのよと口々に言いました。
「前に○○さんの娘さんが自転車で通ろうとして階段で転んでね……」
「うちの娘はベビーカーで……」
彼女達は過去にこの踏切で起きたトラブルの例を挙げていき、3号はそれを
悲しい気持ちで聞いていました。

 直後、電車が轟音とともに通り過ぎて主婦達の声はかき消され、3号の耳に
「また町会で言おうと思うのよ……」
という断片的な言葉だけが残ったのでした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

284:世紀の邂逅 1/3
10/04/16 20:47:57 mlhCLfQhO
ナマ、というか干物で丸クス×円ゲルス。



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



 1844年8月末、パリ。
 ヴァノー街のとある家で、2人の青年が対面していた。
 2人とも背が高くがっしりしていたが、同時に対象的であった。

「…私は、またあなたにお会いできるのを楽しみにしていましたよ。マ/ル/ク/ス博士」
 シルクハットにステッキという粋ないでたちの若者が、いくぶん頬を染めて手を差し伸べた。
 背が高く、肩幅が広く、痩せた若者は、意思と知性、温厚と鋭い観察力をたたえた顔をしていた。
 一度見たら、決して忘れられないような、そんな男だった。
「会いたいと思っていたのは君だけじゃないですよ、エ/ン/ゲ/ル/スさん」
 その家の主でもある黒髪の若い男は、差し出された手を強く握りしめた。
 肩幅の広い、ずんぐりとした印象のある彼は、深みをたたえた黒い瞳の率直で快活な眼差しをもっていた。
 それは人をひきつけずにはおられない目だった。
「君の『国民経済学批判大綱』を読みましたよ。あれは近年稀にみる、天才的な論文ですね。『ブルジョア経済の一切の矛盾は私的所有によって引き起こされる』というあなたの発見、これはまだ誰も述べていないことですよ」
 2人は小さなテーブルに向かい合って座った。
「それは褒めすぎですよ。私の到達したところは、あなたがこれに関わっていたなら、あなたはきっと、私よりもずっと早くに到達していたでしょう」
 エ/ン/ゲ/ル/スの細い端正な顔は、出会ったばかりの、けれど尊敬する友人からの率直な賛辞に紅潮していた。


285:世紀の邂逅 2/3
10/04/16 20:50:41 mlhCLfQhO


 2人とも、手紙や論文で互いを知っていたために、まるで長い間の知り合いのような心地だった。
「今になって、2年前に君がケルンに訪ねてきたときの、僕の不調法が悔やまれます。
あのとき君がこれほどの知性と才能をもっていると知っていたら!」
「その話はなしですよ、マ/ル/ク/ス博士。私だって不遜なところがありました」
 2人は顔を見合わせるとにこりと笑った。
 2年前、ドイツのケルンで『ライン新聞』の編集長だったマ/ル/ク/スのもとを、イギリスへ赴く前のエ/ン/ゲ/ル/スが訪ねたが、そのときの邂逅は不首尾に終わっていた。
「フリードリヒ、君の2年間の成果を聞かせてください。産業革命のあったあの国で、そしてブルジョワ社会の最も進んだ国で、君が何を見てきたのかを。
ケルンでもパリでも、海を越えた隣国の話は伝わってきていますよ。明日にもプロレタリアートが革命を起こすんじゃないかと、皆噂しているんですよ」
 マ/ル/ク/スが促すと、エ/ン/ゲ/ル/スは少し驚いたように目を見開き、それからにっこりとした。
「ええ、そうですね……実はそれに関して、論文を書こうかと準備しているところです。僕の故郷のヴッパータールでも見てきたことですが、プロレタリアートはまったくひどい状況に置かれているんです。
だからわたしは、イギリス人に向かって、見事な罪状目録を作ってやるつもりなんです。イギリスのブルジョアジーの殺人や強盗、その他ありとあらゆる大量の罪状を全世界に向けて告発するのです」
 エ/ン/ゲ/ル/スは熱をこめて語った。マ/ル/ク/スは力強く頷いた。


286:世紀の邂逅 3/3
10/04/16 20:52:37 mlhCLfQhO


「その点で、僕たち2人はまったく同じ結論にたどり着いた」
 マ/ル/ク/スがエ/ン/ゲ/ル/スのほうへ身を乗り出した。
「プロレタリアートこそが、この世界と人類を変革する偉大な使命を担っている。君も、そう確信しているんですね、フリードリヒ」
「もちろんですよ、カール。プロレタリアートの勝利を、私は信じて疑いません」
 エ/ン/ゲ/ル/スが応じると、マ/ル/ク/スは嬉しそうに頷いた。
「われわれは共同作業ができますよ、フレッド。われわれの至った結論に攻撃を加えてくる連中、プロレタリアートを搾取する彼らを敵に回した、人類史的にも偉大な事業にとりかかるのです」
「まったく同感ですよ。…カール、僕は、あなたのような親友をずっと探していましたよ」
「僕こそ、君のような素晴らしい友が欲しかった」
 言い合って、2人のドイツ人の若者は陽気な笑い声を立てた。
「ワインを開けましょう。今日は記念すべき日ですよ」
 マ/ル/ク/スが言った。
「すべてのブルジョアジーにとって、もっとも恐ろしい敵が手を取り合ったんですからね!」
 エ/ン/ゲ/ル/スが高らかに応じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
マイナーで萌えててすみません…orz
頭いい人が天然でいちゃついてるのが好きです。
あと、直訳したような文章で書くのが楽しいです。

287:風と木の名無しさん
10/04/17 01:50:48 z4Y2pQcqO
そんなことより頭いい人に聞きたいんだが、スタヴローギンの見る幻ってなんなのよ
チホンには正体が一つの雑多なものと言いつつ、文書ではマトリョーシャになってる
マトリョーシャと鬱陶しい小悪魔どもが元々同じ存在だったってことか?

288:風と木の名無しさん
10/04/17 01:51:29 z4Y2pQcqO
誤爆死んできます

289:風と木の名無しさん
10/04/18 01:21:54 22jpzYcB0
>>243
遅ればせながらGJ!
姐さんの本編と専スレの行間補完力パネエっす。
側にいて欲しい、お側にいたい、それだけの望みすらはかない。
せつなすぎるよ先生。

290:生 親愛の赤 0/5
10/04/18 01:32:31 WWQx7z5XO
なまもの。完全捏造です。ダメな方はスルーしてください。
数年前の話です、捏造120%なのでもうパラレルみたいなものだと思っていただければ…

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


291:生 親愛の赤 1/5
10/04/18 01:34:11 WWQx7z5XO
彼は世界に愛されていた。選ばれた者とそうでない者がいたとすれば、彼は前者だ。
才能があるというだけでは役に立たないこの世界を、圧倒的な実力と素晴らしい成績を示すことで黙らせて、あの場所で咲き誇る姿が好きだった。
悠然と笑う彼のわずかな表情の違いさえも判る距離で、彼が見つめるその先にいられることが誇りだった。
彼は世界に愛されすぎてしまった。

ぺたんと胸と胸をつけて、彼の左手で俺の右手を掴んで指を絡ませて、鼻と鼻を擦り合わせて。
彼の普段の振る舞いから、体温は低いものだと勝手に思っていたものだから、熱い素肌がすこし意外だった。
乾いた唇を開いて甘ったるい空気を吐き出しながら、彼は笑っていた。
それはどこかよそよそしさを感じさせるもので、彼の焦燥を汲み取るには十分だった。
彼が彼でいられなくなるようなことが起きているのだ、認めたくなんてないのだけれど。

292:生 親愛の赤 2/5
10/04/18 01:35:10 WWQx7z5XO
暗い廊下の突き当たりで告げられた短い言葉を思い出す。なぜこんな話になったかなどもう忘れてしまった。そんなものはどうだってよかった。
おおきな背中をちいさく丸めるようにして、ぎゅっと両手を握りしめて、しかし視線だけは揺るがず強くこちらに向けられていて。
弱った姿で自分に助けを求めた彼の手を振り払うことができなかった時点で未来は決まっていたのかもしれない。
そのときの彼の瞳の熱さも吐息の色も、きっと自分は生涯忘れはしないだろう。それだけを覚えていれば十分だ。

彼があまりに情熱的で魅力的で煽情的ですらあったので、誤解してもいいと思えた。
彼は本気なのだと思い込んでもいいのではないかと。

液状にとろけた彼が覆いかぶさってきて、身体のすべてを包まれた。ぜんぶそのまま吸収されてしまったいま、自分のすべては彼のなかだ。
そして同時に、彼の身体を毛細血管のように支配しているのは自分だ。
目が合えば彼の考えていることがわかるし、彼が自分にどうしてほしいのかがわかる。こんなときまでわかりたくはなかった。
彼の想いにこたえてやりたいと考えることは、自分にとって当然のことで、それに抗う術など持ち合わせていなかった。


293:生 親愛の赤 3/5
10/04/18 01:36:06 WWQx7z5XO
だいじょうぶ。そう言って彼がにやりと笑えば、たいていのことはなんとかなるのだから不思議だ。
動揺もなにも表には出さず綺麗に笑うものだから信じてしまう。そうしていくつもの逆境を切り抜けてきたのだから、
大丈夫と彼が言うならば大丈夫だ。そう、この世界を支配する彼が大丈夫だと言っている。
彼が自分のことを見てきたと言う時間と同じだけの時間、自分は彼を見つめていた。信頼している、なんて簡単に言えるはずもない。
彼に全権を委ねている、捧げている、どんな言葉も陳腐で役に立たない。「へいきですか」
指先で彼がそろりと顔に触れてきて、慈しんでいるかのような仕種で頬を撫でている。
そんなに平気ではない顔をしていただろうか。声を出そうとすると余計な感情まで溢れてしまいそうだ。
表現することができなかったから、せめてもの想いで彼の細い身体を抱きしめてやった。頷いてやることで伝わるとわかっている。
だいじょうぶ。自分が彼を安心させてやらなくてはならない。


294:生 親愛の赤 4/5
10/04/18 01:38:29 WWQx7z5XO
***

圧迫感に気付いて目を覚ますと、彼の長くしなやかな腕が肩に回っていた。頭をまるごと抱え込まれていることに気付き、
必要以上の負荷をかけている彼の身体と腕が心配でたまらなくなった。どれだけのひとがその腕を好きでいるのか、
どれだけおれがその腕を愛しているのか、わからないわけがないくせに。だから本当はこんなこともするつもりはなかったのだ。
こちらの想いなど知らず、かれは静かな呼吸で眠り続けている。どんな苦痛も消えてゆくような、穏やかで揺らぐことない表情のままで。
少なくとも、悪夢にうなされているようには見えない表情に、心から安堵した。

見上げた先にある顔はまるで気に入ったぬいぐるみを手放さない子供の顔だった。
ぎゅっと締めつけられたその中から、それなりの労力と時間を費やして彼を起こさぬよう抜け出す。
緩みきった幼稚な顔にキスをしてやりたい。無意識に浮かんできた不用意な気持ちを、再生してこないように細かく切り刻んで捨ててやる。
愛しいなど、そんな身勝手な想いを抱いてはいけない。世界に愛されている彼を、自分の所有物にしてはいけない。


295:生 親愛の赤 5/5 おわり
10/04/18 01:40:03 WWQx7z5XO
彼が今日のことを後悔するようなことがなければいい。できることならいますぐ忘れてくれたらいい。
夢から醒めたあとは、なにもなかったことにして昨日までと同じ顔で笑ってくれればいい。
明日も、明後日も、どちらかがこの世界を去ったあとも、
ふたりで違う世界を生きることになったあとも、この先何年何十年先も、死ぬまでずっと。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


いつもありがとうございます。

296:花冷え1/10
10/04/18 20:33:45 b2+UlytTO
オリジナル。
酔っ払ってヤっちゃう若気の至り。
年下攻。
オチが汚いです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス。


 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。

 バイトの飲み会終了後。
 飲み足りないと、新しいガンプラを買ったという噂を確かめに、上司でもあり駅から家が近いという理由だけで吉川さんの家に転がり込んだ。
 無駄に広い3LDK。
 一人暮らしには贅沢すぎやしないかと、散々冷やかして、嫌がる家主を無視してエロ本検索をかけたが、埃のない部屋同様に身綺麗なもので、至極ノーマルな雑誌が数冊。
 DVDも字幕のない何語かわからない暗いものが出てきたくらいだ。
 一人暮らしだとエロネタ溜め放題という将来の夢と希望と期待を返せこの堅物め。
 オレと渡辺は後頭部を一発ずつ殴られる。
 大人しく飲む、騒がない、寝場所だけ貸して欲しいと泣きついた結果、半ば強引に押し掛けただけの後輩を労るような優しさはない。
 チキショー。
 ちょっと先に生まれて、社員だからって横暴だ。
 冷蔵庫の中には、ワインとウィスキーくらいしかなくて、飲み慣れないオレはウィスキーの一杯目でアウト。
 調子に乗って飲んだ渡辺は、現在トイレでゲロと頭痛とランデブー。
 ははははは。ざまぁ見ろ。
 何だかフワフワして楽しい。
 支離滅裂な鼻歌に、嫌そうな表情の吉川さん。
 いつものトレードマークの眉間に皺は、今日も絶好調に3本がっつり。
「まま、そんな深刻な顔してても、ウザいし」
 部屋にあったウィスキーの蓋を開ける。

297:花冷え2/10
10/04/18 20:36:38 b2+UlytTO
新しい瓶だが気にしない。
 何か吉川さんはわめいていたが、開けちまったもんは仕方なかろう?
 金玉の小さい男だ。
 あれ?ケツの穴だっけ?
 チンコ?
 ま、どっちでもいいや。
 とにかく小さい。
背だってオレより10cmは小さい。
威張っているからデカく見えていたが、実際には170と少しらしい。
190くらいあるのかと思ってた。
 なんだかんだで、オレが手酌で5杯ほどグラスにウィスキーを注いでやった頃、吉川が突然キレた。
「お前らタク出してやるから帰れ!」
オレと渡辺のケツが蹴られる。
 うっわ、暴力。
 月曜日に上にチクってやる。
 コートと渡辺を抱えて、追い出された部屋のドアを蹴る。
 一発後頭部を殴り倒され、盛大に渡辺ごとぶっとばされる。
 え?何この文系引きこもりっぽい癖に無駄な力持ち。
 SEだから理系か?
 廊下を連行されながらマンションから出される。
 真夜中ムードの田舎道。
 もともとここに来たのだって、終電を諦めたからだ。
「おい、無ぇよ。こんな電車止まってる時間にタクシー駅なんか来てねぇし。」
「ある。」
 断言か。
 足取りはしっかりしているが、目が据わっている。
 相当酔っているな。

298:花冷え3/10
10/04/18 20:41:28 b2+UlytTO
 早足で人の腕を引く吉川の腕を払う。
 急に止まった勢いで、渡辺を背負っていたオレもこけかけるが、なんとか持ちこたえて両足をしっかり地に立てる。 
オレ、超カッコイイ!
 いかん、酔ってる。
 目が回る。
「・・・・・・・・」
 背中に負った渡辺が、何か呻く。
 あーだか、うーだかそんな感じだ。
「どうした、渡辺?」
 背中から地面へ下ろし、頬を数回叩く。
 吉川も気になったのか、渡辺の背中をさする。
「吐くか?少し先に公園があったぞ」
 表面だけはマトモになったのか、酔っぱらっていてもそこだけ正常なのか、はたまた別な何かなのか、吉川が今は正常だ。
「・・・変質者・・・」
 は?
 地面に座り込んだ渡辺の、まっすぐ指指す方向へ目を向ける。
 子供の落書きのような絵と、変質者注意の看板。
 夜間でもハッキリ見えるようにと気遣いか、夜目にも痛い蛍光イエロー。
 渡辺は、ごそごそとカーキ色のアーミッシュコートを広げて、「変質者じゃーーーーーーーーー!!!!!!!」と叫ぶや否や、公園の植え込みに突撃し、ピクリとも動かなくなった。
 ポカンと置いてけぼりのオレ。
 同じくポカンとする吉川。
 え?
 え?
 どいうい

299:花冷え4/10
10/04/18 20:46:39 b2+UlytTO
※最後の行訂正:どういう事ですか?
 ネタですか?
 全力で置いてけぼりですよ。
「・・・木元くん、・・・僕にはサッパリついていけなんだけど、今時の若い子はこんなもんなんか」
 遠い目をして吉川が呟く。
 いやいや、同じ大学生で、学部も同じではありますが、オレにだってサッパリですよ。
「全然着いてけません。オレにもサッパリ。」
 惚けたように道に座り込み頷きあう。
 そら解らんよな、と妙な連帯感を共有しつつ、重い腰を上げる。
 思いの外、遠くまで走り抜けた渡辺の背中をさする。
 全く反応無し。
 むしろ心地よさそうに寝息を立てて、完全にあっちの世界。
 どうしようもない状況を報告しようと振り返れば、吉川が一人でコートの前を広げて得意げな笑み。
 アルコール以外の頭痛で、目の前がクラクラする。
 ああ、もうどうしてこんなにアホばっかりか。
 本気で泣きたい。
 オレは今、世界で一番味方が少ない危険地帯へ突入したのか。
 得意げな酔っぱらいとの距離を詰める。
「アンタ、何やってんですか。」
 薄い春物のコートを広げ、千鳥足と酔拳と足して割らずとも結局グダグダなままの、どうしようもない足取りで細い小道へ消えてゆく。
 手の施しようのない酔っ払いが増えた。
 今日はもうこれなんて厄日?
 金を持っているのは吉川なので、しょうがなく追いかける。
 普段マトモな振りして、どんだけ駄目な大人だ。
「吉川・・・、もう諦めてマンション帰るぞ。」
 やっとこさ追いついた細い小道、吉川の右腕を掴んで持ち上げる。

300:花冷え5/10
10/04/18 20:54:44 b2+UlytTO
 少しはしゃっきりするかと思いきや、全くそんな事はなし。
 地面にしゃがみこんだまま、寝転がる。
 お前、髪の毛とかドロドロだろ。
 ほんとに社会人かよ。
「起きろよ。」
 何度か肩を揺すぶる。
 眠そうに目を擦った後、片手で自分のコートを広げ、先ほども聞いた言葉を繰り返す。
「変質者。」
「知ってる。」
 べちんと一発頭を叩く。
 恨めしそうに呻いて、なにやらごそごそと探る仕草。
「変質者だ。」
 喉元近くまでシャツをまくりあげ、肋の浮いた胸元を見せつける。
「オイ、・・・」
 ゴクリと喉が鳴る。
 薄暗い街灯。
 夜にくっきりとそこだけ白く光って、呼吸まで吸い込むような生命力。
 突然突きつけられた生々しさに、息が止まる。
「よ・・・」
 所詮酔っ払いだ。
 正常じゃないんだ。
 酒のせいだ。
 頭の中で100くらい言い訳をして、吉川係長の前に座り込む。
 なぁ、酔ってんだろ?
 さらりとした薄い手触りのコート。襟を掴んで顔を寄せる。
「酔ってる?」
 鼻先同士が触れそうな距離。
 お互いの酒臭い息も、今なら許せる。
「酔ってるだろ?」
 黙って肩を震わせて笑う吉川の唇を塞ぐ。
 酔ってなきゃ許さないだろ?
「・・・酔ってる」

301:花冷え6/10
10/04/18 20:57:25 b2+UlytTO
 わずかに首を傾げるようにして、押し返される唇。
 頬を撫でて首筋へと回る指。
 自然とかけられてくる体の重み。
 冷えた夜中の風とは違う、熱いくらいの体温。
 ああ、オレも相当酔ってる。
 なんで男なんかに手を出してんだよ。 ましてや直接の上司だ。
 これから仕事やり辛ぇだろ、どう考えても。
 薄く目を開け、現実の世界を確認。
 今キスしている相手は吉川係長。
 吉川係長はバイト先のちょっとエラい人。
 しかも仕事の鬼だ。
 ペアだってよく組まされる。
 そして男だ。
 目を覚ませオレ。
 俯き加減のせいで、薄く伏せられた瞼から陰を落とす長い睫。
 スーツではなく私服のせいでいくらか若く見える顔。
 濡れた唇を舐める薄い舌先の赤さ。
 再び頭が酔っぱらう。
 乱暴に抱き寄せ、膝を抱えあげる。
 最初に僅かに抗っただけで、くったりと力の抜けた体。
 抵抗がないことに半分苛立ちながら、無理矢理に服をはぎ取る。
 アンタ酔っ払ってりゃ誰でもいいのか。
 さすがに少しは抵抗が強くなったが、本気で今の状況を変えるのには弱すぎる。
 キスを繰り返しながら、吉川の腹を手のひらで撫でる。
 明日から仕事増やされてもいい。
 残業や掃除も理由つけて逃げないし。
「・・・あ」
 ジーンズのチャックに手をかけた時、さすがに吉川の手が胸を押す。
 それを無視して下着の中へと指を入れる。
 ふにゃりと硬さの欠片もないペニス。
 指で扱けば酔っ払いは僅かな抵抗で肩を押すが、唇を離す事無く舌は絡めたまま。
 抵抗よりも煽られていると強く感じる。

302:花冷え7/10
10/04/18 21:01:24 b2+UlytTO
 酔うと性格変わりすぎだろ?
 自分もジーパンのチャックを下ろし、硬くなって先走りで濡れたペニスを握る。
 鈴口近くに溜まった先走りを指へと塗り付け、その指を吉川の唇に塗り付ける。
 オレの唇の代わりに当てがわれた指。
 その指に絡んだ粘つきが、何か知ってんのか吉川?
 離れた唇を追って寂しげに寄せられた眉も、唇の代わりが与えられればすぐに元へと戻り。
 くちゅくちゅと音を立て、人差し指と中指へと唾液を絡める吉川の口から指を抜き、なんども己のペニスと唇を往復させる。
 指を抜く時も、目を瞑ったまま物欲しげに薄く開けられた唇と、そこから覗く赤い舌先。
 ドクンと胸が強く鼓動を繰り返す。
 滅茶苦茶にしてやりたくなって、吉川の下着を剥ぎ取り、膝を右手で抱え左手で尻を割開く。
 なにも考える時間を与えず、強引に尻穴へとペニスを突っ込む。
 悲鳴地味た声を出し、逃げようとする吉川の口を逆手で塞ぐ。
 強張った体がペニスを締め付け、一瞬でもって行かれそうな程気持ち良い。
 騎乗位で貫かれた吉川も、尻から血を流しながら勃起してるとかどんだけマゾだ?
 我慢出ず、強引に尻穴へとペニスを突っ込む。
 悲鳴地味た声を出し、逃

303:花冷え8/8
10/04/18 21:08:16 b2+UlytTO
※最後の行訂正:悲鳴地味た声を出し、逃げようとする吉川の口を逆手で塞ぐ。
 強張った体がペニスを締め付け、一瞬でもって行かれそうな程気持ち良い。
 騎乗位で貫かれた吉川も、尻から血を流しながら勃起してるとかどんだけマゾだ?
 そのまま腰を抱いて、貪る様にガツガツと上下に揺する。
 どこに突っ込んでいるのかとか、男同士だとか、これは強姦だとか、最後にちらっと浮かんだ仕事だとか。
 気が付いたら吉川の両脚がオレの腰へと周り、自分から尻を擦り付けてきて。
 イキそうだと、目を眇めて耐えている間際、頭上で小さなうめき声が聞こえたと同時、酒臭い物が勢いよく音を立てて胸元へ。
 ちょ、おま、ちょーーーーーーーーー!!!!!!!


 ゴホゴホと噎せる吉川を担ぎ、一目散に公園の便所へ向かって走る。
 その間にもあふれるゲロ、体中を伝う固形物のイヤな感触、今更暴れる吉川、色々な意味で止まらない頭痛、悪臭、つられてこみ上げる吐き気。


何でこんな事になったのか。
 何を間違えたのか。 解っていることはただ一つ。
「最悪だ。」




 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。
 ただ一つわかった事は、オレはかなり年上で、手に。
 ほんと、明日からどうしよう。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

304:花冷え8/8の下7行目以降訂正
10/04/18 21:13:43 b2+UlytTO
 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。
 ただ一つわかった事は、オレはかなり年上で、仕事では鬼の、どうみてもかわいくないオッサンの、吉川係長へ突っ込んだという事だけだ。
 できれば一生縁がないまま終わりたかったが、男とヤッてしまった。
 全然好みじゃないし、男なんかまっぴらゴメンだと思ってたのに、勃った。
 しかも出した。
 ゲロ塗れの相手に。
 ほんと、明日からどうしよう。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


間違えまくってすみません。

305:風と木の名無しさん
10/04/19 01:53:37 LeGmh4iK0
>>290
なまものって注意があるけどヒントくらい書いてくださいませんでしょうか?
読んでも何のジャンルなのか全くわかりません
>いつもありがとうございます。
ということは続きものでしょうか?

306:風と木の名無しさん
10/04/19 09:49:05 B3B4kblM0
>>305
290の人は2008年から「~の赤」って題名のシリーズで
時々作品を投下してくれる人ですよ
今回で6作目だと思います
自分も全く元ネタがわからないので
もうオリジナルとして楽しませてもらってます

307:僕の金色の(2) 1/6
10/04/19 11:39:32 h4SAwe7m0
オリジナル鉄道もの半擬人化。エロ無しです。バッドエンド注意。
>>283からの続きです。今回で終わりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 数年が経ちました。金色の車両と3号はすっかり打ち解け、何でも話せる間
柄になっていました。

 金色の車両の話は愚痴ばかりではなくなっていました。終点の観光地の雄大
な景色について話したり、変な乗客を乗せた時の話を面白おかしく語ったりも
しました。各駅停車がノロノロ詰まっていても、腹が立つことも無くなりまし
た。3号の手前の信号が赤くないと、がっかりしている自分に気が付きました。

 彼は時々、沿線に咲く花の花びらをとらえて3号に届けました。桜、ツツジ、
あじさい、コスモス。小さな野の花の時もあります。
「俺は花なんかに興味は無いが、お前が動けないから持ってきてやったんだ。
お客様の為に、たくさん咲いているところをゆっくり走るんだ。これはあくま
でもそのついでだから」
金色の車両はいつもそう言うのでした。

 3号は金色の車両の話を楽しみにしていました。彼の為に話を聞いてあげて
いたつもりが、いつのまにか聞くことが自分の楽しみになっていたのです。停
止信号の時しかゆっくり話せないことが物足りないくらいでした。もっと彼の
話を聞いていたいと思いました。
 そしてそれ以上に、朝日や夕焼けの中、太陽の光をいっぱい浴びながら走っ
てくる金色の車両が相変わらず好きでした。

「キミは本当に綺麗だ」
ある日3号は、これまでずっと心の中だけで思ってきたことを、思い切って口
に出してみました。
「…………。当たり前だろう? 俺は特別なんだから」
一瞬の沈黙の後、金色の車両はさも当然のように答えました。いつもと違って
何故か3号から目を逸らして答えていましたが。

308:僕の金色の(2) 2/6
10/04/19 11:46:01 h4SAwe7m0
 数日後の夜、その日最後の往復仕事を終えた金色の車両が、車庫に向かって
珍しく徐行運転で走り抜けていきました。
 昼間見ると金色や白金に見える彼の身体は、夜間に線路を照らす白い照明の
中では銀色に浮かび上がります。何しろ彼は、その鉄道会社の看板車両でもあ
りましたから、いつだってピカピカに磨きあげられていました。そのピカピカ
の銀色ボディに沿線で灯る信号機やネオンの色とりどりの光が反射して、それ
はそれは幻想的な雰囲気を醸し出していたのです。

 うっとりと銀色の虹になった彼を眺めていた3号の耳に、
「お・や・す・み……、さ・ん・ご・う……」
という声が響いてきました。
「えっ?」
いつもいばっている彼の、今までに聞いたこともないような優しい声。3号の
中に何かあたたかいものが広がっていきます。
「おやすみなさい……」

 幸せそうに答えた3号から少し離れたところで、数人の男性達がなにやら話
をしていました。彼らは残業している公務員と会社員でした。区役所とか県庁
とかそういうところの職員と、3号や金色の車両が所属している鉄道会社の社
員と、ゼネコンの社員です。

 その日以来、3号の周りにはやたら人が多く来るようになりました。最初は、
双眼鏡のようなものを持った人と、何かの図面を広げた人がきました。次にい
つも3号を渡っている近所の住民さんが集まったりしました。その後に、ヘル
メットをかぶった人達が大きなトラックとともにたくさんやってきました。
 彼らは3号から少し離れたところにある線路際の空き地に穴を掘り、鉄の杭
を打ち込み、コンクリートを流しました。3号は自分の仕事をしながら、毎日
横目でその様子を眺めていました。
「何を作っているんだろう?」

309:僕の金色の(2) 3/6
10/04/19 12:05:48 h4SAwe7m0
 工事は昼も夜も続きました。線路を挟んだ両側で作られていたものが線路の
上空に伸びはじめ、数ヵ月後には左右の建物が線路の上で繋がりました。両側
には屋根とスロープの付いた階段と、大きなエレベーターがありました。

 ヘルメットをかぶった人達がいなくなり少し静かになった頃、役所と鉄道会
社と近所の人達が、新しくできた建物のところに集まりました。人々はエレベ
ーターに乗ってこの新しい橋に登り、そのまま線路の反対側に渡っていきまし
た。みんな嬉しそうでした。
 3号を渡ってくれる人はとても少なくなりました。開かずの踏切になってし
まう朝のラッシュの時間帯には、3号の周りには全く人がいなくなりました。

 数日後、3号のところに鉄道会社の人達がきました。3号の身体に手をかけ
てグラグラと揺すってみたりしています。
「結構キテるなぁ。来月のいつだっけ?」
「14日ですね。すぐは無理なんでとりあえず止めるって」
 3号は自分がこれからどうなるのか悟りました。いやきっと以前から、あの
橋ができた時から、何が起きるのか本当は分かっていたのかもしれません。

 朝、赤信号で止まった金色の車両は、いつも通り3号に話しかけてきます。
3号も、何事も無いかのように普通にそれに答えます。
「そういえばな、新しく出来たあの橋の野郎、なんか感じ悪いんだよ」
「……そうなんだ」
「ここじゃなくて、1つ前の信号で止められるとあいつの前になるだろ?
だからこないだ一応挨拶してやったんだけど、あいつ無視しやがった。この俺
の方から挨拶してやったっていうのに! 腹立つよなぁ」
「……そうなんだ」
「……? どうしたんだよ? お前最近なんかぼーっとしてないか?」
「そんなことないよ。踏切がぼーっとしていたら、通る人の命に関わるもの」
「そりゃそうだけど……」
 信号が変わり、いつも通りの尻切れトンボな会話を残して金色の車両は走り
出しました。

310:僕の金色の(2) 4/6
10/04/19 12:09:48 h4SAwe7m0
 何日経っても3号は、金色の車両に本当のことを言えませんでした。目の前
を金色の車両が通過するたびに、胸が張り裂けそうになりました。いつも饒舌
な金色の車両も、何故か3号を問い詰めることはできませんでした。お互いに
心にわだかまりを抱えたまま、日々が過ぎていきました。

 某月14日。今朝も金色の彼は3号の前で止まりました。いつものように話
しかけられ、いつものように答えているつもりでした。
「……3号?」
「あ、うん、聞いてるよ」
「それならいいけど……。変わったから行くよ。またな」
「うん。またね」
 動き出した金色の車両は朝日を受けて白金の光を放ち、その光は3号のぼや
けた視界いっぱいに広がりました。涙で波打つ光の中を遠ざかっていく彼の姿
は、溜息が出るくらい美しく思えました。3号は、金色の彼が走り去っていっ
た線路をいつまでもいつまでも見つめ続けていました。誰にも気づかれないよ
うに、赤いシグナルを濡らしながら。

 最終電車が車庫に帰っていった後、3号のところにヘルメットをかぶった人
達がやってきました。いよいよなんだなと、3号は思いました。
 さよなら、僕の金色の……。

 静かに、役目を終えた3号踏切の電源が落とされました。間違って誰かが通
っては危険ですから両側にバリケードが築かれ、『使用禁止』の看板が立てら
れました。
 踏切として動けなくなった後も薄っすらと3号の意識は残っていて、淡々と
作業をする工事の人々の声を、ただぼんやりと聞いていました。

311:僕の金色の(2) 5/6
10/04/19 12:13:11 h4SAwe7m0
 次の日の朝。すぅと目の前に車両が止まる気配がしました。彼なのだと音と
振動で分かりました。けれどももう、あの光り輝くプラチナの、3号が大好き
な美しい彼の姿を見ることはできませんでした。3号の赤いシグナルにはカバ
ーがかけられていたからです。

「よう」
いつもの通り金色の車両は3号に話しかけましたが、3号から答えは返ってき
ませんでした。
「おい、3号?」
 彼には、何がどうなったのか分かりませんでした。今まで一度だって3号が
自分を無視したことなどありません。それなのに、自分が来たというのに、こ
こにいるというのに、3号はカンともスンとも言わないのです。
「俺が通ってるのに、どうしてカンカンやらないんだ? 誰か渡ったら危ない
だろう? お前はいつも人間を気にしていたじゃないか」
 金色の車両は3号を見ました。いつもならウザイくらいに点滅している赤い
シグナルが見えません。他の踏切より少し甲高い、3号独特の警報機の音も聞
こえません。人が通る道の左右は、良く分からない板でふさがれています。
「3号……」

 3号の薄れゆく意識の中に、金色の車両の声が響いていました。
 さよならって言いたくなくて、最期までただキミの話を聞き続けていたくて、
こうなってしまうことをどうしても言えなかった。ごめんなさい……。毎日本
当に楽しかった。キミに会えて幸せだった。ありがとう。大好きだよ。
 彼に伝えたかったけれど、3号にはもう、それを伝えるすべは残されていま
せんでした。

312:僕の金色の(2) 6/6
10/04/19 12:20:08 h4SAwe7m0
 金色の車両はそれでも毎日3号に話しかけ続けました。もう答えは返ってこ
ないのだと分かっていても、話しかけずにはいられませんでした。思えば3号
から最初に声をかけられて以来ずっと、金色の車両はほとんど一方的に3号に
向かってしゃべり続けてきたのでした。一方的に話しているという状況だけな
ら前と同じなのに、今はどうしてこんなに悲しいのでしょう。
 彼は、とりとめの無い話に耳を傾け続けてくれた、そして美しいと褒めてく
れた3号に、自分がどれだけ甘えていたのか、どれだけ支えられていたのか思
い知ったのでした。ちっぽけで優しい踏切が、自分にとってどれだけ大きな存
在だったのかを。

「おい3号。今日俺は団体のお客様を乗せるんだ。終点の山では紅葉が見ごろ
なんだ。毎年言ってるけど、山が燃えているように赤くなるんだぞ。新しい観
光スポットもできて、とんでもなく混んでるんだ。俺が運ぶお客様で駅がいっ
ぱいになるくらいで、いつもより1往復多く走らなきゃならないんだ。それく
らい忙しいんだ。
 だからお前に、いつものアレをとってきてやるのは、少し……、少しだけ、遅
くなっちゃうかもしれないんだよ。でもそれまで、それまでは、ここにいろよ。
わざわざとってきてやるんだからな……」

 数日後、3号の全面撤去作業が始まりました。地面に埋められている黄色と
黒の身体が掘り起こされ、今にも引き抜かれようとしています。遠くから風に
のって優しいメロディが聞こえ、地面から心地よい振動が伝わってきます。
 その時、3号のシグナルにかぶせられていたカバーの片方が、重機のアーム
にひっかかって外れました。現れた真っ赤なシグナルの上に、真っ青な空と、
白い雲と、すぐ傍を走っていく金色の車両が映りました。

 金色の車体の鼻先を、静かに水がつたいました。天気雨と思った運転士はワ
イパーのスイッチを入れましたが、何故かワイパーは少し動いただけで止まり、
代わりに一枚の真っ赤な紅葉の葉が空に舞い上がって、3号のシグナルの上に
ふわりと降りたのでした。


313:風と木の名無しさん
10/04/19 12:22:26 h4SAwe7m0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

314:風と木の名無しさん
10/04/19 12:36:17 DlPGVZgIO
>>313
GJ。
きゅんきゅんしながら、リアルタイム更新見ていました。
切な萌え良かったです。

315:風と木の名無しさん
10/04/19 14:25:38 n7NnYBNdO
>>313
3号…°・(ノД`)・°・
良い物読ませてもらいました!

316:風と木の名無しさん
10/04/19 16:48:32 KKEV2y5w0
>>313
未読だったので>>277から一気に読んで、途中からもう目の前がぼやけたよ
切な萌えありがとう

317:風と木の名無しさん
10/04/19 19:38:18 7tYsEsxZ0
失礼します。
ローカルルールの追加のお知らせです。

5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
 また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

この件に関するご意見ご質問等は会議室にて。
URLリンク(s.z-z.jp)
皆様よろしくお願い申し上げます。

318:Absolute Zero 0/5
10/04/21 18:20:54 GsWqJ+iz0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  KOF01より、中ボス×ラスボス
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  公式小説とは矛盾するかも
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ソシテ オソイウケギミ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


319:Absolute Zero 1/5
10/04/21 18:21:39 GsWqJ+iz0
玉座から差し出される白い手に、音もなく触れる。
初めは指先で。続いて包み込む掌で、次には接吻する唇で。
委ねられた手の重みと、肌理の整った皮膚の滑らかさが伝わる。
しかし、何度触れてみても、体温だけは感じられない。

神の座を求め、科学技術による強化を重ねても、生身の人間だ。
血の通った肉体は、相応の温かさを持っているはずだった。
だが、男には何故か、それを感じ取れたためしがない。
薄い皮膚に触れるたび、感じるのはその奥底の冷たさ。
人の形をした身体に、人のものとは思えぬほど静謐な何かが。
しんと冷え切った何かがあるように、男はいつも感じていた。

男がその不可思議な温度を知った契機は、ひとえに総帥の命による。
否、より正確に言えば、彼は組織内で正式に認められた総帥ではなく
実権だけを影から手にした、表向きは一幹部にすぎなかった。

彼が実父たる当時の総帥を消し、組織の全権を一手に掌握した時。
その事実を知らされたのは男を含め、数人の幹部だけであった。
本来そう呼ばれるべき人物を失った今、総帥の座は空席であったが
何故か男は、その子息を―簒奪者にすぎぬはずの人間を
新たな総帥、ひいては自らの主と、ごく自然に認識していた。
仕えるべき相手は彼ひとりと、最初から定められていたかのように。
彼に忠誠を誓い、およそ現実的とは思えぬその志に従うことも
少なくとも男にとっては、至極当然の流れであった。

だが、そうした鋼の如き意志、あるいは忠誠心をもってしても
即座には受け入れることのできなかった指示が一つだけある。
男が未だ忘れることの叶わぬ、全ての契機となった命。

320:Absolute Zero 2/5
10/04/21 18:22:10 GsWqJ+iz0
作戦への指示を与えるのと同じほどの重さで、あるいは軽さで。
眼前で跪く男に対し、要は当然のことのように総帥は命じたのだ。
傍に来て、自分を―有体に言い表すなら、抱くようにと。
実のところ男は、その時の総帥の言葉をはっきりとは覚えていない。
言葉遣いよりも内容そのものの方が、それだけ衝撃的であったのだ。

ともあれ、男はまず当惑し、次には堅く拒んだ。
今や己にとって、否、組織全体にとって絶対の存在。
私情など、いかにして抱けよう。まして欲望など。
それは幾億の命を奪うよりも、なお罪深い所業に思われた。

しかし、逃れようとする男を、総帥は許さなかった。
か細くも見える指で、砕けよとばかりに男の顎を捕らえ。
真紅色の瞳で、射抜くように見据えながら、ただ一言。
―神たる私に、禁忌などあると思うのか。
厳かな、正しく託宣と呼ぶに相応しいその響きに。
それきり男は、抗うことを止めた。
己が欲望を抱こうと抱くまいと、そんなことは問題ではない。
命ぜられたなら、理由など考えず、従わねばならないのだ。
それほどに総帥の存在は、男にとって絶対のものであった。

事実、その遣り取りの直後、男は再び痛感することになる。
主の望みの前には、己の意思など何ら意味を持たぬのだと。
自らが理性と思い込んでいたものは、全くの無力であった。
触れれば身体は自ずと熱を持ち、汗が伝い、呼吸は乱れた。
まるで思考よりも先に、肉体が彼に恭順を示すかのように。

321:Absolute Zero 3/5
10/04/21 18:22:46 GsWqJ+iz0
その様に満足したのか、以降も総帥は男に同様の命を下した。
上辺だけを見れば、主導権を握っているのは男の側であったろう。
しかしその実、優位に立っていると感じたことなど一瞬とてない。
あくまで上に立つのは総帥の側であり、男はそれを拒めぬだけのこと。
いかなる理由によってか求められるのに、ただ応えるだけであった。
己の肉欲も、交わすべき情も、自覚している余裕すらない。
自ら口にすることこそなかったものの、おそらくは総帥もまた。
身体と共に重なるべきものが、およそ二人の間には欠落していた。

もっとも、忘我の淵で一瞬、閃くように何かを感じることはあった。
褥の上に広がる金の髪、焦点を失い視線を彷徨わせる瞳。
あるいは低く掠れる声、抜けるような白い肌に差す鮮やかな朱。
そうした光景が、突き上げるかの如く、不意に心を動かすのだ。
しかし、男はそれを表に出さなかった。必死にそう、努めてきた。
美しさを称える睦言、甘やかな抱擁、あるいは眼差しの一つさえ。
世俗の男女が行うようなそれらは、主の望むところではなく
むしろ、神たらんとする身への冒涜でしかないように思われたのだ。

しかし総帥は、それすらも許そうとしなかった。
男が視線を逸らそうとすれば、鮮やかな紅の瞳はたちまちにそれを悟る。
ほんの刹那であっても、見抜かれずに済んだためしなどなかった。
もっとも、見抜いたところで、整った面差しが怒りの色を宿すことはない。
ただ、戦いなど知らぬかのような細い手が、男の黒みがかった頬に沿い
無造作な、しかし有無を言わさぬ力で己の方に向き直らせるだけである。

強引に視線を合わせられ、男は直視せざるを得なくなる。
総帥の姿を。そして、それを目にして己の内に湧き上がった何かを。
先刻までは閃きのようであったその感覚は、続けばまるで烈日の光だ。
視界から、意識から、他の全てをかき消す、眩しいほどの衝動。

322:Absolute Zero 4/5
10/04/21 18:23:24 GsWqJ+iz0
身も心も逃げ場を失った男を、総帥はその手を伸ばし引き寄せる。
招き寄せるのでも、ましてや抱き寄せるのでもない。
刈り込まれた白い髪を掴み、まるで玩具でも扱うように引き寄せるのだ。
そして、口付ける。
退こうとする男の頭を捕らえ、歯列を割って、深く。
拒む術など、もとより男の側には存在しない。
喉の奥で上げる微かな呻きすら、呼吸ごと飲み込まれてしまう。
互いの舌が別の生き物のように絡み、繋がり合った箇所がぎちりと軋む。
しなやかな白い脚は、容赦のない力で腰を挟み込み、擦り寄せてくる。

額から頬へ、そして顎の先へ。黒い肌を、透明な汗の雫が伝う。
やがて白い肌の上に落ちるそれを、男はどこか他人事のように見ていた。
熱い、のだろう。
皮膚で、あるいはそれ以外の箇所で、交わり触れている全てが。
だが、男にはその熱が、当然あるべきそれが感じられない。
神経を刺激しているはずのそれが、意識にまで届かない。
届くのはただ、皮膚を透き血を凍らせるような、冷え切った静謐。
間近で生じている、濡れた音すらもかき消してしまうほどの。
息を継ぐ間もなく、五感に注ぎ込まれるそれだけが全てとなる。

耳の痛くなるような静謐の後、互いの全身に張り詰めていた力が緩む。
その時に何を思うのか、総帥は決まって微笑んだ。
瞳の深い赤はわずかにその光を弱め、色の薄い唇は形良く弧を描く。
どこを見ているともしれぬその表情は、一分の屈託もなく美しい。
男の心など意にも介さぬ一方、それを隠し通すことは決して許さない。
人らしい感情など滅多に表さない、時に背筋が凍るほど整った相貌が
男を捕らえ弄ぶこの瞬間だけ、唯一満ち足りた様子を見せる。
その姿を目にするたび、男は痛烈に思い知らされるのだ。

これは、情交などではない。
神が人に対し、気紛れに与える、試練なのだと。

323:Absolute Zero 5/5
10/04/21 18:28:02 GsWqJ+iz0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |   世界に1人くらい、だいしゅきホールドな
 | | □ STOP.       | |   イグニス様がいたっていいじゃない
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
連投規制ひっかかった、そしてナンバリングがおかしかったorz
これで終わりです。読んでくれた方、ありがとう。

324:風と木の名無しさん
10/04/21 22:04:38 NIubDAamO
>>295
もしかして商売道具の色がお揃いの二人ですか?

325:風と木の名無しさん
10/04/22 01:08:43 lArZz1090
>>324
投下者さんへの質問は、保管サイトの感想板での方が良いかもしれない
URLリンク(s.z-z.jp)
でも姐さんの言葉でピンときたwありがとう

326:風と木の名無しさん
10/04/25 18:04:54 ZywIlU3z0
生モノ注意

タイガードラマ製作スタッフ&中の人の捏造ギャグです。
チーフD→竹地中の人というか、
チーフDは竹地中の人を美しく撮ることに命をかけています。
ちょっと竹地中の人の出演映画ネタバレもあるので注意。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

327:恐るべき監督たち(1/3)
10/04/25 18:06:25 ZywIlU3z0

O共「えー、これからディレクター会議を行いまーす」
W鍋・M奈辺「うぃーす」
O共「では、まず『O盛君のうなじをいかにセクシーに撮るか』ということについて、
D同士の見解を一致させておきたいと思います」
M奈辺「・・・・・・」
W鍋「他に話し合うことあると思うんですけど」
O共「もちろん。これは話し合いのとっかかりだよ」
M奈辺「ははは、そりゃそうですよね」
O共「そう。大事なのはうなじだけじゃないんだよ。O盛君のいいところっていうのはね、手、目、腰のライン・・・」
W鍋・M奈辺「・・・・・・」
O共「つまり全身・・・そう、全体だ。映像作品とは全体の調和によって、初めて価値が高まるものだからね」
W鍋「前半は意味わかんないけど、後半の意見には賛成です」
O共「そう。だからこそ、O盛君の撮り方について、意見を一致させておくべきなんだよ。
でないと、竹地の描かれ方に、我々の解釈の相違がそのまま反映されてしまう。
O盛君は製作者の心の鏡のような存在だからね。彼をいかに撮るかで、その人間の本心がわかるんだよ」
M奈辺「じゃあ、O共さんの本心って・・・・」
W鍋「しーっ」

328:恐るべき監督たち(2/3)
10/04/25 18:07:07 ZywIlU3z0

W鍋「とにかくさぁ、バンバーンと派手に行こうよ派手に」
O共「O盛君の出てた映画あったじゃない・・・・笑う景観ってやつ・・・・」
M奈辺「うーん、あんまり騒がしくしすぎるのもよくないでしょ」
W鍋「でも、幕末なんだから騒がしいもんだろ?」
O共「・・・・O盛君の撃たれるシーンあったんだよね・・・・俺なら、俺ならもっと色っぽく撮ったのに・・・・」
M奈辺「けど、対象はお茶の間なんですから」
W鍋「だからって、毒にも薬にもならない画じゃつまんないじゃないか」
O共「しかも、後輩から殴られるシーンもあったんだ。そういうのもさ、もっとこう・・・・」
M奈辺「やっぱり、フツーの演出が一番だと思います」
W鍋「でも、どの層を基準にした普通なんだよ」
O共「しかも、M佐湖君と一緒にヤクザに殺されそうになり、そこから絆が生まれるというおいしい設定が・・・・
その設定が完全に死んでいたんだよ! ああああ!」
W鍋・M奈辺「(泣いてる・・・!)」


カメラ「W鍋さーん、ちょっとこれ見てくださいよ」
W鍋「ん? どうした」
カメラ「なんかこう、竹地のセクシーショットが撮れたんですけど」
W鍋「あー、これは・・・・・・セクシーだな。なめらかだ。半開きだ。まさに光と影の奇跡だな・・・」
カメラ「で、どうしましょう。本編にはちょっと使えるかどうか微妙っすけど・・・」
W鍋「こういうのはな、持ち主に返すんだよ。O共さーん、O共さーん、いい画取れましたよー」
カメラ「持ち主なんだ・・・・・・」

329:恐るべき監督たち(3/3)
10/04/25 18:08:16 ZywIlU3z0

O共「こ、これは・・・」
W鍋「まー、本編にはちょっと使えなそうな画なんですけど」
O共「・・・・・・・・・」
W鍋「ああ、・・・まずかったですか? すいません、勝手にO盛さんのセクシーを撮っちゃって」
O共「・・・・・・・・・」
W鍋「うん、わかってます。こういうのは、O共さんの求めるセクシーじゃないんですよね。
どちらかというとO共さんの求めるセクシーってのは、ストイックというか、
追い詰められた中に発揮される何かであって・・・・」
O共「(ガッ!と手を握る)」
W鍋「!?」
O共「素晴らしい映像だ・・・・ついに君も・・・・この領域に」
W鍋「(うわぁ・・・仲間になったと思われたくないな・・・・)」



W鍋「なんか向こう盛り上がってるね」
M奈辺「O盛さんが砂糖君にポッキーを両端から食べるゲームをけしかけてるらしいです」
W鍋「ふーん、和むねえ」
M奈辺「なんか砂糖君も熱くなってるらしいですよ」
W鍋「そりゃまあ、O盛君に舌入れられそうになったら必死になるわな」
M奈辺「いえ、それがフラン使ってやってるせいで、どちらがチョコのついてる端からはじめるかについてのバトルが・・・」
W鍋「譲れよ。O盛が」

330:恐るべき監督たち(3/3)
10/04/25 18:08:43 ZywIlU3z0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

331:風と木の名無しさん
10/04/25 22:08:31 /z9Zdb9y0
これは酷い

332:風と木の名無しさん
10/04/25 23:40:52 AjzDbz86O
よしよし、携帯小説HPに帰ろうね……

333:風と木の名無しさん
10/04/26 00:08:05 q6RHMdoU0
>>326
超どストライク!
監督sの掛け合いにニヤつきながら楽しませて頂きました

334:風と木の名無しさん
10/04/26 00:22:21 +qKJH+3R0
>>326
これが小説…だと…?
酷すぎる

335:風と木の名無しさん
10/04/26 00:31:51 2lex2dgY0
>>326
わいわい会話してる情景が目に浮かぶようでした
チーフDの強すぎる思い入れ、イイです!

336:風と木の名無しさん
10/04/26 00:41:29 /Je6gXNjP
>>317
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

337:風と木の名無しさん
10/04/26 01:08:59 FFrZI4lXO
作品はけなされるし
感想は保管庫へ追っ払われるし
最悪だなここ

338:笛と猫 1/6
10/04/26 02:03:46 SBSewMxT0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマから三條×武智。描写は少しあるけどエロくは無いです。多分…



その夜、自分の前に現れたのは一匹の猫だった。
月の光が落ちる、庭に臨む廊下の板の上。
寝つかれず、寝所を出て柱にもたれるように腰を下ろし、手慰みにと吹いていた笛の音が
不意に横合いからの気配を察し、止まる。
向けた視線の先、あったのは闇の中で煌々と輝く二つの目だった。
迷いの黒猫か。
夜の影の中に輪郭を滲ませた、その正体を三條はそんなふうに思う。
けれど無言で見つめる自分の方へ、やがてゆっくりと近づいてきたその毛並みは、月明かりが
射す場所まで出てこれば、驚くほどの真白だと知れた。
ただ染まりやすいその色は今、闇と月光の双方を吸い取り、鈍い錫色の光沢を放っている。
そんな曖昧な色合いは瞬間、自分の脳裏に一人の男を思い出させた。
だからだろう。
「おいで。」
半ば無意識に唇から零れた言葉と、差し出した手。
手招く己に、その時猫は逃げなかった。
それゆえ、ゆるりと近づいてきたその体を静かにすくい上げ、夜着一枚の胸元にそっと抱く。
柔らかな毛並みだった。
優しく撫でれば輝く瞳は心地よさそうに細まり、小さな口からは短な鳴き声が洩れる。
その素直さがまたしても自分の違う記憶に触れる。
思い出す。
彼は自分の前でけして、こんなふうに素直に啼きはしなかった。

339:笛と猫 2/6
10/04/26 02:04:55 SBSewMxT0
彼が初めて自分の館を訪れたのは盛夏の折りだった。
うだるような京の暑さの中まみえたその姿は、質実にもどこかひんやりとした冷気を
帯びているようだった。
土イ左の荒くれ下司200人を束ねる人物としては、想像していたよりはいささか細身の、しかし
時折上げられる瞳の意思の強そうな光にはやはり目を引かれるものがある。
事実彼が退出した後、周りにいた者達は皆、彼を評して黒曜の石のようだと口にした。
しかしそれをあの時自分は、違和感を持って聞いていた。
黒曜の石。
そんな煌びやかにも輝く玉石ではないだろうと。その実はおそらくは泥に塗れたものであろうと。
三條家は土イ左の山宇知家とは縁戚関係にある。それ故に噂ながらにも知っている。
かの国の苛烈なまでの身分に対する偏重を。
そんな中で下級層出身である彼がどのような手を使い、どのようないきさつを経て、藩の実権を
握るまでになったか。
興味は沸いた。それは周りの者達と同様に。
公家の身の悪癖だ。
遥か昔に政り事の実権は武家に奪われ、残されたのは飾りばかりの高い位と、それと引き替えに
そんな武家に頼らねば生きてゆけぬ程の御家の窮乏。
そして傷つけられた自尊心を紛らわす為とばかりに身を浸したのは、恋と呼ぶには面映ゆいほど
誠の無い色事の享楽。
ゆえの、それは彼自身まったく預かり知らぬ所で起きていた自分達の水面下での駆け引きだった。
朝廷への働き掛けを餌に、皆が彼を手元に引き入れようとする。
それは戯れでもあり、退屈しのぎでもあり、中には本気になる者もあり……
そんな中、自分は果たしてどうだったのか。
利害関係上、彼に一番近い位置にいたのは自分だった。
その自負が自分に優越感を持たせ、同時に……焦燥感も与えた。その末での言葉だった。
『今宵、私のもとに』
座を同じにした宴席の最中、酔いで口を滑らせたようにひそりと告げた自分の囁きに、あの時
彼の肩は見間違えようのない程の震えを帯びた。
彼は酒が飲めなかった。その性質は生真面目で、ごまかす事も出来なかった。だから、
『……はっ…』
やがて短く返されたのは、声と言うよりは吐息に近かった。
そしてそれに潜む彼の胸の内の感情は、この時怒りでも侮蔑でもない、ただひたすらの諦めのようだった。

340:笛と猫 3/6
10/04/26 02:06:09 SBSewMxT0
主の意を汲みすぎる使用人と言うのも困りものだと、その夜御簾越しに彼の姿を見留めた時、
自分の脳裏に浮かんだのはそんな言葉だった。
淡い行灯の明かりだけが灯る寝所に、綺麗に身支度を整えられて一人座らされている。
その、こんな時にまでひどく良い姿勢は、いっそ奇妙に可笑しくさえ思えた。
部屋に足を踏み入れれば、それに彼は顔を上げる。
そこに浮かんだ表情には、これまで昼の光の下では見た事が無かった幼さのようなものが一瞬見て取れた。
ほのかな明かりを受けて黒い瞳が揺れる。印象の幼さはそのせいかもしれなかった。
意外さに思わず目を奪われる。
けれどそんな自分から視線を引き剥がすように、その時彼は再び顔を伏せるとそのまま自分の前に
身を折った。
発せられた声。何やら懸命な口調で告げられる。それは今彼が身に纏う夜着について触れていた。
真白く繊細な織りの、それは絹だった。
それについて彼は言った。
下司であるこの身は絹を纏う事は許されない、と。
正直、驚きながらも少しだけ…呆れた。
こんな自分達以外誰もいない秘め事の場でまで、国元の因習の縛りに捕らわれる彼が滑稽にも……
どこか憐れだった。
だからきっと、正面から答えても彼には届かないのだろう。ならばすべて戯れにしてやろうと思った。
『着れぬのやったら、すぐに脱ぎますか?』
静かな慇懃さで、告げた言葉に彼はもう一度顔を上げた。
己でも無意識だろう、その反射的に上げられた瞳には明らかに傷ついた色が見えた。
人は昼の彼を黒曜の石のようだと言った。
しかし今自分の前にいる彼は、触れる事にすら躊躇を覚える柔らかな殻のようだった。
あまりに違う印象に戸惑いが隠せない。それでいて、伸ばす指を止める事も出来なかった。
髪に触れ、頬に触れ、ゆっくりと抱き込むように腕をその肩に回し、引き寄せる。
それに彼は一瞬硬く身を強張らせた。けれど結局はそれも頬を埋めた肩先、ひそりと零された
吐息と共に弛緩する。
伝わってくる彼の諦めと瞬間胸に覚えた微かな疼き。
それが痛みだったのだと自分が知るのは、もう少し後の事だった。

341:笛と猫 4/6
10/04/26 02:07:17 SBSewMxT0
何もかもが危うい均衡の上に立っているようだった。
厭うた着物越しに触れただけでその目は堅く閉じられ、その質感ゆえにするりと滑り落ち
露わになった肩口に唇を寄せれば、その呼吸は詰められた。
そのくせその内は熟れていた。
香油を纏わせた指で中を探れば、抱き留めた背筋に小刻みな震えが走る。
傷つけるつもりはなかった。
だから戯れを装いながらゆるく内側を擦り、その身が痛みを覚えぬよう徐々にその数を増やそうとする。
けれど彼はその時、そんな自分の意図を拒絶するように首を横に打ち振った。
『ええです…そんな…』
労わってくれんでも――
声にならない声までもがはっきりと耳に届いたような気がした。
行為そのものに嫌悪を抱きながら、しかしその肌は触れるほどにその温度を上げ、でも心の芯は
どこまでも潔癖な。
この繋がらなさはどこから生じたのか。
想像はある意味容易かった。
彼の身分とその国の事情を思へば、さもありなんと邪推が出来た。
しかし、だからこそとも思う。
今彼がいるのは彼の国では無い、京だ……自分の手の内だ。だから、
『私が、こうしたいのや』
宥めるように告げた、その言葉に一瞬彼は目を開けた。
信じられないものを見るように、その視線を自分に向け上げてきた。
それは不安定に無防備な、子供のような顔だった。
だからこんな時にそんな表情を浮かべる彼を、自分は刹那、稚くも痛ましく思う。
愛おしいと…想ってしまった。
それから、始め方を間違えたこの抱擁は、与えるばかりのものになった。
遊びでも真実でも、人の恋情には多かれ少なかれ打算が混じる。
気を引き、寵を競い、相手を自分のものにする為に懸命な手を尽くす。
しかし彼には何も無かった。
ただ己が身を貪り食う相手の欲に狂わされ、奪われるばかりだった。
憐れだった。
自分自身が彼を喰らう矛盾を止められないまま、傲慢でも身勝手でも、そう思わずにはいられなかった。

342:笛と猫 5/6
10/04/26 02:08:21 SBSewMxT0
ことりと横で音が聞こえ視線を向ければ、そこには膝から落ち廊下を転がる笛の影が見えた。
胸元に抱かれていた猫がにゃあと鳴く。
それらに物思いに耽りすっかり意識を飛ばしていたと気付き、三條はこの時抱えていた猫を今一度
腕の中深く抱き直すと、もう一方の手を落とした笛へと伸ばした。
拾い上げる、それはあの日吹いていたのと同じ物だった。
視線も言葉も、肌以外何も交わせない情事の後、眠るように気を失った彼を残し自分は寝所を出た。
その手には笛があった。
体にはわだかまる気怠い疲れがあった。それでも寝つける気配は無かった。
それゆえ襖を開け、庭の見える廊下へと下り立ち、その場に腰を下ろす。
そして構える。
笛は三條の家に代々課された家業。幼い頃から手に馴染んでいる。
ゆえの音色はかそけき優美さで夜のしじまを渡った。
どれくらいそんな時間を過ごしたか。
ふいに指の動きが止まったのは、背後に何やら気配を感じたからだった。
振り返る。
そこにはいつの間に目を覚ましたのか、ふらりと立つ彼の影があった。だから、
『起こしてしもたやろうか』
笛を脇に置き、声を掛ければ、しかしそれに返される彼のいらえは無かった。
彼はただ立っていた。光の無い目をして立っていた。
その不安定さが自分の中で言い様の無い焦りを生む。それゆえ、
『こちらに来なさい』
まっすぐに見つめ、差し伸べた手。
それに彼は……静かに足を踏み出した。
一歩一歩近づき、手が重ねられる。それを自分は引いた。
落ちるように崩れたその体を腕の中に抱き留める。
それに彼は抗わなかった。
床の中で長く解けなかった強張りは今は無く、ただ大人しく自分の腕にその身を預けてくる。
その力の抜けた冷えた背を自分は優しく撫でた。
視線を落とす白い夜着は、蒼白い月の光を受けて淡い錫色に染まっているようだった。
それを自分は綺麗だと思う。
だからこの色にしようと思った。

343:笛と猫 6/6
10/04/26 02:10:41 SBSewMxT0
今、朝廷に上奏している幕府への勅使の議が通れば、自分は江戸へと立つ事になるだろう。
それに彼も連れてゆく。
身分を偽らせてでも、側におこう。その為に
着物を用意させる。絹で。
腕の中の動かぬ体を抱きながら、密かに思う。
自分ならば、彼をその身相応に扱ってやれるものを。
しかし彼の心がここに無い事は朧げながらもわかっていた。
孤高で、不安定で、人の手に怯えて……それでいて人の手に馴染み、その中でしか眠れない。
だからそのいびつさを埋める為に、彼は今夜も誰かの腕の中にいるのだろう。
それはまるで罰でも受けるように……
手が背を撫でる。
自分が今触れるのは、彼ではない、温かくも柔らかな毛並み。
それに密かな声が零れ落ちた。
「今夜は、おまえがここにいておくれ」

彼の、武智の代わりに――

猫は妖しに近い獣だと言う。
だから言葉を解する事が出来るのだろうか。
腕の中で上がる瞳。
それは自分と目が合った瞬間、人と聞き間違う声で、鳴いた。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
三條様に癒しを求めるあまり夢を見過ぎてる自覚はあるw
専スレで家業を教えて下さった姐さん、ありがとうございました。


344:風と木の名無しさん
10/04/26 11:50:26 9G0jwrp70
>>326
小ネタ、いいね!
某ネタスレでも書いてた方かな
チーフD最萌えの自分には嬉しい…

>>338
待ってました参上さん
離れられなくなる位優しくしてやって!

345:風と木の名無しさん
10/04/26 17:52:47 E6GPK4s4O
>>338
参上様きたー読みたかったので嬉しいです
やっと先生に優しくしてくれるお方が…それなのに矛盾だらけでやっぱり痛々しい先生に萌えました!
もしかして以前にも投下してくれたのと同じ人かな…?
姐さんの文章と先生受すごく好きです

346:春の夢 1/4
10/04/26 20:58:15 FIP/a4FQO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

俺屍
男主人公・菊人
日常のひとこま。
性描写はありません。
主人公の性格捏造してますので苦手な人は気を付けて下さい。


「今年でこの桜も見納めかァ」

中庭の桜を見上げながら、男がしみじみと口にした。そっと木の幹に触れて、撫でる。幹のざらりとした感触が皮膚の上を過ぎていった。
「なあ菊人、お前は来年も見られていいよなあ」
妬みや、不満でなく、本当に羨ましいといった風に男は言う。子供のような純粋さで。
「……何が羨ましいんだか」
彼はまだ生まれてから一年少ししか経っていない。
短命の呪い。彼の一族にかけられた呪いは、異様な成長速度と、あまりにも短い寿命をもたらした。四季を経てようやく次の年を迎えたあたり、来年を迎える前に彼らは死ぬ。
「人間様はキミみたいに桜をありがたがるけどさ、何がそんなに良いんだかねェ。
僕にはサッパリわかんないや、春にはぞろぞろ行列引き連れて宴会、酒飲んで酔っ払って、騒いで歌って……まっ、祭り好きな君たちの事だ、そういう乱痴気騒ぎが好きなのは分かるけどサ」
「菊人は桜が嫌いか?」
菊人はさぁね、と誤魔化すように笑ってみせた。
「考えたこともなかったなそんな事。ああ、花びらが地面に散らばって踏まれてンのはみすぼらしいと思うけど」
「そうかあ、俺は好きなんだけどなあ……」
はらはらと花弁が男の肩に舞い落ちる。男は肩に視線を移し、そっと拾いあげた。


347:春の夢 2/4
10/04/26 21:00:45 FIP/a4FQO
「ほら、見てみろよ綺麗だろ?」
「ふぅん、綺麗だから好きなんだ」
「ああ。綺麗なものは好きだ、花も女も……お前もな」
菊人が馬鹿にしたような視線を男に向け、鼻で笑い飛ばした。
「はぁ?! なあに言ってんだか、とうとうモウロクしちゃった?」
「死期は近ェだろうけどよ、そこまでボケてねぇよ。この通りピンピンしてらあ」
死期が近い。冗談めかした台詞にある鋭さに、菊人は一瞬返事を躊躇った。
「それじゃあ春に毒されでもしたんだろ」
「ハハ、相変わらずきっついな」
菊人は桜に近づく。男の隣に並んで、空を仰ぐ。
「俺もさ、前はそんなに好きじゃなかったんだよ桜って。
すぐ散っちまうし、縁起悪いだろ。
でもさぁ、最初に咲いた桜が散ってよ、夏になって……葉桜になって秋になって……でさあ、冬になって待ってるうちに、待ち遠しくなってる自分がいて……あ、俺って桜好きなんだって気付いたわけさ」
「ふぅん。割とどうでもいいね」
「ひでぇなお前。人が真剣に話してんのに……」
「ハハハッ、悪い悪い」
菊人は桜を見た。男が「縁起悪い」と言った通りにすぐ散ってしまう儚い花。

男が不吉を感じたのは、おそらく花に人の生を重ねたからだろうと思った。
永劫を生きる神からしてみれば人間の生は米粒のようなもの。その刹那の生を、咲き誇ろうと藻掻きあらがい、消えていく。

人はあまりにも脆く弱い。

だからこそ、この男を見ていると思うのかもしれない。

「もし、君たちが、朱点を倒して君たちと僕の呪いが解けたらさ、花見に行こう」
人に秘められた可能性を。
神の力だけでは為しえない奇跡。
神と人が交じりて子を産した時、その子は神をも超えし力を持つという。



348:春の夢 3/4
10/04/26 21:05:03 FIP/a4FQO

「僕、いい庭を知ってるんだ。紅い華が咲いてそりゃあ目も眩むほど美しいんだから……」


男は返事をしなかった。
菊人の言葉を聞いて、目尻を緩ませうっすらと微笑んだだけだった。
来年も桜は咲くだろう。
その頃、自分はいない、と。
聡いからこそ、彼は自分の行く末を知っていた。
菊人は歯噛みする。本当に憎たらしい。せめてもう少し愚鈍であったなら、甘い夢に酔わせ続けてやれたものを。

「……だからおいで。僕を殺しに」
自分以外には誰にも聞こえないように囁くと、「何か言ったか」と肩に声が降りてきた。

「ううん、何でもないサ、ちょっとね、他愛いない独り言だよ」
「そっか、それならいいんだかな。なあ菊人」
「ん?」
振り返る。御天道様みたいにカラッと晴れた顔がそこにあった。

「案内、楽しみにしてるな。お前と見る花は綺麗だろうから。ああ、そん為にも朱点を討たないとなあ」
「だっらしないなァ、面倒臭そうにしてさ、嫌なのかい?」
「いやあ、そんなことはねェけど。だってよ、朱点を倒したら、お前元の姿に戻れんだろ?」
まさかそれを言われるとは夢にも思っていなかったので、返答が遅れた。
「え?……ああ、ウン」
今一度向けられた視線は菊人をしっかと捉えて離さない。
「だったら張り切らねえとな」


349:春の夢 4/4
10/04/26 21:10:01 FIP/a4FQO
菊人はそこで初めて知った。
この男は。
この風変わりな男は。
「死ぬ前によ、一度くらいは好きな奴の手に触りてぇじゃねえか」
己の為でも、一族の悲願の為でもなく。
「……我が儘」
「我が儘で悪かったな」

ただ自分が肉体を取り戻せるようにと戦おうとしていることを。

なんて……愚かな奴だ。
家族より血族より、恋した相手をとるなんて。

「ご先祖様が見たら鼻水垂らして泣いちゃうかもね」
「泣かしとけ泣かしとけ。男の人生は一度きり、誰の為に闘うも生きるも、そして死ぬのも全て俺が決めるさ。なあ菊人、今日は随分と暖かいな……なんだか眠くなっちまうぜ、ははっ」

男はゆっくりと瞼を伏せ寝息を立て始める。
声はぬくもりを宿してそこに留まり続ける。
「桜か……ま、悪くない、ね」

半透明の肉体―触れることができず、温かみの通わないはずの身体に、春が滲んだ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

350:風と木の名無しさん
10/04/26 21:19:25 bwwPneTV0
>>346
リアルタイムでご馳走様でした。
このゲームに限り、性格捏造ってことはないですよ。
まちがいなく他の誰でもない「彼」がプレイ内に存在していたとおもいます。
良ゲーの良レポをありがとうございます。

351:「俺たちの季節」 0/3
10/04/27 01:40:52 h3fH79pF0
SilverSoul(和訳)劇場版より 銀×ヅラ

エロ無しの駄文で失礼します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

352:「俺たちの季節」 1/3
10/04/27 01:43:06 h3fH79pF0
戦場と化した高杉の船から、無事に脱出できた銀時と桂だったが
パラシュートが風に流されて、海の上に落ちてしまった。

なんとか岸まで泳ぎ着いた頃には、もう日も落ちて
うらぶれた海岸には、小さな街灯が遠くに灯るだけで
辺りは人影もなく、ひっそりと静まりかえっていた。

「・・ったく、もうちょっとマシなやり方はなかったのかよっ!」
ざばざばと波を蹴って、海から上がってきた銀時が
濡れた銀髪をかき上げながら毒づくと
「どさくさで俺にくっついて来たくせに、文句を言うな」
こちらも、濡れて頬に張り付く黒髪を耳の後ろへなで付けながら、桂が返す。

「へーへー、どうもすいませんでした。・・ってか、ココどこだよっ!」
周りを見渡しても、見覚えのない景色ばかりで、銀時が焦りだす。
「随分流されたからな、まぁ、心配はいらん。
 どこに居ようと、エリザベスが迎えに来てくれる」

いつもと変わらず鷹揚とした桂の態度に、銀時は仄かな期待を込めて尋ねた。
「え?なに?お前、からくり嫌いのくせにケータイとか持ってんの?GPSとかGTOとかそういうの?」
「いや。気配で」
「は?」
「エリザベスは、俺の気配が分かるらしい」
「あー・・・そうですか」
『んなワケねえっ!』と心の中だけで突っ込んで、銀時は不毛になりそうな会話を打ち切った。


353:「俺たちの季節」 2/3
10/04/27 01:46:45 h3fH79pF0
とにもかくにも、このずぶ濡れの着物をなんとかしようと、二人は近くの松林まで歩いた。
そこで、重くなるほどに海水を含んだ着物をやっと脱いで、両手で絞ると、手近な枝に干し掛けた。

銀時が、脱いだブーツを逆さにして、中の海水を振り絞っていると
ふと傍らの、夜目にも白い肢体が目に入った。

月光の下、白く浮かぶ艶やかな肌。
そこには不似合いな赤黒い傷が、一筋貼りついていた。

「それは、紅桜に、やられた跡か?」
岡田に、とは言いたくなかった。
銀時の脳裏に、桂の黒髪に頬ずる岡田のにやけ顔が甦る。
胃の辺りがきりきりと痛んだ。
「ああ」
傷の主は、さして気にする風もなく、そう一言頷いただけだった。

「見事にバッサリいかれちまって。よく死ななかったもんだな!」
不快感を吐き出すように言い放った銀時を、桂は横目でちらりと見やって
すっと視線を足元へと移した。
そこには、刀傷のついた古ぼけた本が、潮風に吹かれて僅かに頁をめくっていた。

「・・・この本のお陰で太刀傷が浅くなった。
 もう少し深くやられていれば・・・危なかったろうな」

354:「俺たちの季節」 3/3
10/04/27 01:49:42 h3fH79pF0
ふいに銀時の腕が伸びて、桂を体ごと引き寄せた。
銀髪がふわりと、傷を負った桂の胸に当たる。
「銀時?」
「他人事みたいに言ってんじゃねぇ!俺が、どんなに・・・っ」
桂の胸に顔を埋めた銀時が、言葉を詰まらせる。
傷を気遣うように、桂の背にゆるく回された銀時の両腕が小刻みに震えている。
自分の胸を暖かい滴が伝うのを感じた桂が、驚いたように声をあげる。

「なっ・・泣いているのか?・・・銀時?」
桂の問いに、一息、鼻を啜り上げて、低い声が応えた。
「うそみたいだろ」
「・・・ありえないだろ」
ため息と共にそう呟くと、桂は胸の中の銀髪を
両腕で包み込むように抱きしめた。
「お前が俺の腕の中で泣く日がくるなんてなぁ」

「全くだ・・・ガラじゃねぇ」
ずずっとまた鼻を啜って、銀時が顔を上げた。
「なんとも、情けない面だな、銀時」
「オメーもな。ヅラ」
気付かぬうちに桂も涙目になっていたようだ。
「ヅラじゃない、桂だ」
いつものように返して、桂は優しく笑った。つられたように、銀時も微笑う。
そうして、ゆっくりと、お互いに唇を寄せ合った。

静かに重なる二つの影を、遥か中天に懸かる月だけが見ていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

なんか中途半端ですいませ…っ! お目汚し、失礼しました。

355:キスしてみたい 1/7
10/04/27 07:56:07 EzFYsspH0
ナマモノ注意



邦楽バンド原始人ズの唄×六弦
また書いてしまいました。
以前の話と続いています、すみません。
ローカルルールでシリーズ物執筆者はトリップ推奨とありましたが、
今後の予定が未定ですので、とりあえず今回は名無しで失礼します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


キスしてみたい(あるいは友情と恋情のあいまいな境界)

356:キスしてみたい 2/7
10/04/27 07:56:41 EzFYsspH0

最近、俺にはちょっとした悩みがある。

ほんの些細なことさ。お気に入りのレコードに針を落とせば、すぐに頭のすみっこに追いやられてしまうほどの。
例えるならそう、のどに引っかかった魚の小骨みたいなもんだ。
気にはなるけど、別に死にゃしない。

何より大切なことは俺の心の真ん中にどっしりと居座っていて、きっともう、どんな事があってもびくともしない。
大切なことは一つだけ、他はどうだっていい。
だから魚の小骨だって、放っておいたって構やしないんだ。

でも――、やっぱり、気になるじゃんか。
のどに刺さった小骨って、すごく気持ち悪いじゃんか。
好きな音楽聴いてたって、いつの間にかそのことばっかり考えちゃってるじゃんか。

だから、これって些細な悩みなんかじゃないのかも。
もしかしてすごく重大なことなのかも。
そう認識すると、余計に気になって気になって仕方がない。


どうして――、なんであのとき俺は、マーツーにキスをしたんだ?

357:キスしてみたい 3/7
10/04/27 07:57:37 EzFYsspH0
夜更けのスタジオに2人きり。

一緒に晩メシを食べに出かけたあと、なんとなくまた連れだってスタジオに戻ってきて、そのままだらだらと居残っている。
昼間、ばったり出会ったレコード店で見つけた掘り出し物のレコードは、プレイヤーの上でもう何巡目になるのか。
マーツーはと言えば、お気に入りの1人掛けのソファにすっぽりと収まって読書なんか始めちゃって、完全に長居モードだ。
そして俺は、さっきからそんなマーツーの様子をちらちらと盗み見ていた。

なんでだ。何でこんなことしてんだ俺。

こそこそする必要なんて全然ない。堂々と、思う存分見つめてたっていんだ。俺とマーツーの間にいまさら、変な遠慮なんかないんだから。
マーツーが俺の視線を訝しく思ったとしても、「お前の顔を見ていたいんだ」って正直に言えばいい。そしたらマーツーはきっと「なんだそりゃ」って呆れて笑うだけで、あとは別に気にしないでいてくれる。あいつはそういう男だ。
それなのに、俺はさっきから通学の電車の中で気になる女子を盗み見ている中学生よろしく、数メートル先の男をこっそりと観察している。
バンダナしてないとやっぱり若く見えるなあ、とか、髪の毛ふわふわだなぁ柔らかそうだなぁとか、あ、白髪発見、とか。
伏せた目元に差すまつげの影や、高く繊細に通った鼻筋にドキドキしてみたりだとか。

なんなんだ俺、中学生男子そのまんまじゃないか俺。

そして困ったことに、観察の目が行きつく先は、常にマーツーの口元で。
今はほんの少し口角が上がって、なんだか猫みたいだ。控え目に色づいてる薄い唇。
ドキドキ感が加速する。

……あの唇に、俺はキスしちゃったんだよな……。

毎回毎回、最終的に思考はそこに辿りつく。
そして、思い出すのだ。あの時のことを。

358:キスしてみたい 4/7
10/04/27 07:58:15 EzFYsspH0
心を閉ざし、俺から離れていこうとしていたマーツーが、もう一度俺の手をとってくれた時。
マーシーの望みが、俺と同じ「ずっと一緒にロックンロールをやっていきたい」ってことだと分かったあの時、
俺は嬉しさのあまりマーシーに抱きついて、顔中にキスの雨を降らせていた。
喜びが、あいつへの愛しさが濁流のように俺の心に渦巻いて、そうやって表現でもしなきゃいてもたってもいられなかったんだ。
マーツーはそんな俺の行動を黙って受け入れて、優しく俺の背中を撫でてくれた。
そして、笑ったんだ。穏やかに、目を閉じて。
それはとても満ち足りた、幸せそうな顔だと、俺には見えたんだ。
衝動的に俺は、マーツーの唇を塞いでいた。
その上、突然のことでガードのゆるかった歯列を割って、俺はマーツーの口の中に舌まで差し入れていた。
さすがに俺を押しのけて、非難の声を上げたマーツー。
けれど、言い訳にもならない俺の弁明を聞いて、ため息をひとつ、それだけで俺のしでかしたことを、あっさり水に流してしまったのだ。
キスされたのに。男にキスされて、舌まで入れられたと言うのに。
加害者(?)の俺が言うのもなんだが、ちょっと能天気すぎるこの対応。

真縞昌俊とは、そういう男だ。

359:キスしてみたい 5/7
10/04/27 07:58:58 EzFYsspH0
その後は何もなかったみたいに、以前の俺たちのまま。
むしろ以前より更に関係は良くなったのかもしれない。
マーツーは前みたいに――、それ以上にリラックスしてよく笑うようになったし、俺はそんなマーツーの笑顔で幸せな気持ちになる。エネルギーを貰ってる。
新しく始める俺たちのバンドはそりゃもういい感じで、日々、スタジオに来ることが楽しくて仕方なくて。
わくわくとした毎日。
万事が順調だ。

ただひとつ、俺の心に引っかかる「魚の骨」を除いては。

ささいなことなのかもしれない。
嬉しくて、テンションが上がってつい、勢いでしてしまったこと。ライブ中に脱いじゃうのと同じレベルの出来事。マーツーだってすっかり忘れてくれている。

でも俺は――、忘れられなかった。

ささいな出来事だって思い込もうとして、でもできなくて、こんなにもぐるぐる悩んでる。

360:キスしてみたい 6/7
10/04/27 08:00:37 EzFYsspH0
あのときだって、本当はものすごく動揺してたんだ。
衝動的に友情の範囲を超えたキスをしてしまった俺を、少し赤い顔をしたマーツーが非難の目で見つめていたあの時。
笑ってごまかしてみせながら、俺の心臓はドキドキと暴れ出しそうだった。
だって、俺にとってはキスは重要なことだもん。特別な人としかキスはしたくないんだもん。
こう見えても俺は慎み深いんだ――、ライブ中に全裸になったりはするけれど。
だから、あんなにあっさりと無かったことにされても、それはそれで困るんだ。
何にも気にしてないって態度に、正直ヘコんでたりするんだぜ。
なあ、マーツー、お前、なに考えてる?

それ以前に、俺は―、俺自身のこの気持ちの正体は、一体何なんだろう…?

俺はマーツーと一緒にいると安心する。
楽しくて、ふわふわとした、幸せな気持ちになる。
ドキドキしたりもする。
そして――、キス、したくなる。


中学生男子と、同級生の女の子なんていう2人だったら、簡単に説明ができるその感情。
でも俺たちはそうじゃない。40をとうに過ぎたオッサンと、その長年の相棒。
ありえない。
マーツーは大切で、かけがえのない存在だけれど、だからこそ、簡潔な“あの単語”ひと言で俺の気持ちが表現できるわけがない。

でも―、だったら、青臭くて甘酸っぱい、このドキドキの正体はなんなんだ?


361:キスしてみたい 7/7
10/04/27 08:01:35 EzFYsspH0
こんな状態で俺の思考は堂々巡りを続けていて、今この部屋にかかっているレコードと同じだ。ぐるぐる考え続けて、もう何巡目なんだろう?
スーヅー・クア卜口のライブ盤は何べん聴いたって最高だけど、こうやって思い悩むのは、正直もう飽き飽きなんだ。

「……………」
俺は大きく息を吐きだした。それは、決意のため息だ。

うだうだと考え込んでたって仕方ない、何にも変わりゃしないんだから。
思い切って行動するしかないんだ。このままじゃ嫌だから。


―そしてこんなにも俺はいま、マーツーにキスしてみたいんだから。


もう一度あの感じを確かめてみようと思う。そしたらきっと分かるはず。
マーツーとするキスの意味が。
俺の中で苦しいほどに存在を主張している、この感情の正体が。


[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

10レス超えてしまうので、ここで区切ります。
長々とすみません。

362:風と木の名無しさん
10/04/27 09:37:34 U561mAp70
>>351
なんとタイムリーな!ありがとうございます!
EDの歌詞の使い所がいいと思いました

363:キスしてみたい 1/6
10/04/27 13:34:49 FJP9bEts0
>>355の続きです。ナマモノ注意

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「ねえ、マーツー」
意を決して呼びかけると、「なーにー?」と間延びした声が返ってきた。
それでも目線は広げた本に向けられたまま、どうにもこちらを向いてくれそうにない。
仕方ないので俺は、とりあえず読書に夢中な俺の相棒の元へ近寄って行った。
ソファに座るマーツーの前に立つと、「どうかした?」とでも言いたげな無言の上目づかい。その仕草に、心臓をキュッと鷲づかみにされる。
高まる緊張。なんて陳腐で古典的な、俺のこの反応。
どこか冷静な部分が内心で苦笑いしているのを感じながら、俺は気持ちを落ちつけようと、2度3度大きく呼吸をした。
そして、まっすぐにマーツーの目を見て言った。


「ねえ、キスしてもいい?」


言った。言っちまったよ。
ずいぶん唐突な話だ。ムードなんて皆無、不自然極まりないって、我ながら思う。
だってフランス映画みたいに、いいムードに持ってって自然な流れでキスするなんて芸当、俺にはぜったいに無理。
だから潔く直球勝負で行くしかないんだ。びっくりして目をまんまるくさせているこいつには、不意打ちかけたみたいで悪いなぁとは思うけど。
いつもは少し眠たげな目をめいっぱい見開いて俺を凝視しているマーツーは、まるで人に馴れない猫のよう。息をひそめてこちらの様子を窺っている。
悪意はないんだよ、と俺はマーツーに目で訴えかけた。
別にからかってるわけじゃないんだ。そして、強要するつもりもないんだ。
お前がどんな対応をしたって、俺はがっかりしたりしないよ。
俺たちの関係は何にも変わったりしない、そうだろう?

364:キスしてみたい 2/6
10/04/27 13:37:59 FJP9bEts0
だから、そんなに警戒しないでくれ――。

そんな俺の想いを読み取ってくれたのかは分からない。
しばらくひたと俺の目を見つめていたマーツーは、ふ、と短い息を吐き出して、いつものようなのんびりとした口調で言った。

「……いいよ」

こんなにあっさりOKをもらえるとは思わなかった。
少し拍子抜けした気持ちでマーツーの目を覗きこむと、見返すまなざしが、ほんの少し強いものになって。

「でも、舌、入れるのは……、だめ」
「…………………………」

そんなとんでもないことを、いたずらを嗜めるみたいな「めっ」って顔をしながらさ、舌足らずのあどけない口調で言っちゃって、おまえは俺をどうしたいの…?
……そしてまたこれがほぼ100%天然なんだから、余計たちが悪い。

ほんっと、真縞昌俊という男の生態は、未だ謎に包まれている部分が多いよなぁ……。

なんだかもう色々な意味で腰が砕けそうになりながら、それでも俺はとりあえず、マーツーに神妙な顔をして頷いて見せた。
「分かった」と。

365:キスしてみたい 3/6
10/04/27 13:39:23 FJP9bEts0
「うん、じゃあ約束だからな」
そう言いながら、マーツーがおもむろに立ち上がる。
向うから動かれたことに、俺は驚いた顔をしていたらしい。
怪訝な表情のマーツーが、「座ってた方がいいのか?」と尋ねてくる。
俺はあわてて首を横に振った。
「いや、別に……。返ってありがたい、デス」
「……ソウデスカ」
「………うん、じゃあ…」
「ハイ………」
変に畏まって、ぎくしゃくとした妙な雰囲気。俺はそれを振り払うように咳払いをして、改めて目の前の男と向き合った。
緊張で背筋が伸びる。すると目線が少しマーツーをを見下ろす形になって、そう言や俺の方が背が高かったんだっけ、と再認識。
うつむき気味のマーツーが、ちらりと不安げな視線をよこしてくる。その上目づかいにまたしても心を持ってかれる俺。
やばい、かわいい。心臓飛び出しそう。
俺がみっともなく震えながら細い肩に手を置くと、ピクン、とほんの少しだけマーツーの身体が揺れた。
そして意を決したように顔を仰向かせたマーツーは、「ん、」という短い声と共に目を閉じた。
潔いほど無造作なキスの催促。けれど、俺にはこいつが精いっぱい無理をして、強がって、平気なふりをしているのがよく分かる。
よくよく見れば細かく震えている瞼、緊張に引き結ばれた唇。
全てがかわいくて、愛しくて仕方がない。

俺は、できうる限りそうっと優しく、マーツーの唇を塞いだ。

366:キスしてみたい 4/6
10/04/27 13:39:49 FJP9bEts0
「……ん…」

吐息交じりの声はいったいどっちから出たものなんだろう。
触れ合わせた唇は、べつに甘いなんてことはなくて。
少しかさついた、薄い唇だ。触れていても現実味が薄くて、どこか儚いようなマーツーの唇。
もっと確かな手ごたえを感じたくて、確かにいま、マーツーとキスをしているのだと実感したくて、俺は触れているだけだった唇を深く重ね合わせた。
「……………っ」
おののく身体をぎゅっと抱きしめ、その背中をあやすように撫でさする。
そうすると安心したのか、抱きしめた身体のこわばりが段々と解けていく。
それが嬉しくて、俺の腕の中でリラックスしていくマーツーが愛しくて、この前みたいに、気持ちが溢れだしそうになって。
「…………ふっ…」
悩ましく漏れた吐息と一緒に、引き結ばれていた唇がうすく開かれた。
そうやって無意識なんだろう、マーツーが俺のキスに応えてくれたのが、俺が自制心をあっけなく放り出した直接のきっかけだった。
「……っ、んんっっ!!」
さらに深く重ねた唇、差し入れられた舌。突然激しくなったキスに、当然のことながら驚いたマーツーが抵抗を始める。
けれど俺はその抵抗を許さずに、もがく身体を抑えつけてマーシーの唇を、口内を貪った。
怯えて縮こまる舌をちょん、とつつき、おじゃましますの挨拶をして、並びのいい歯の裏側や、上あごや、口の中の触れられる所を、くまなく差し入れた舌で暴いていく。
押し入った口の中はつるりとして、熱くて、すごく気持ちが良くて。
俺はマーツーとするキスにすっかり夢中になった。
「……ん、ふ……っ、ぅ………」
そうして、長く続くキスで、腕に抱く身体が力を無くしてくったりしてしまうまで。

367:キスしてみたい 5/6
10/04/27 13:40:24 FJP9bEts0
名残惜しい気持ちで唇を離して見れば、半開きのマーツーの唇の端からどちらかのものとも分からない唾液がひとすじ垂れている。
それを俺はベロリと舐めとった。
とたん、思い切り突き飛ばされる。
「っ、うわ……っ、と……っ」
大きく体勢を崩して2、3歩後ずさった俺を、マーツーが手の甲で乱暴に唇を拭いながら睨みつけていた。
「お前……っ、約束違反だろ……っっ」
好き勝手しやがって馬鹿野郎、と語気荒く俺を責めるマーツーの、赤みを増した唇、涙をためた瞳、目の周りを染める赤く上った血の色。

たまらない。

俺は、こみ上げる衝動を抑えるように、ごくりと唾を飲み込んだ。

いや、なんかもう、これは、もう……

認めないわけにはいかないな、と髪の毛をかきあげながら俺は思った。
やっぱりこれはさぁ、愛情ってやつだよ、と。
もちろん友情だって感じている。
愛情と言っても家族に感じるそれと同じなんじゃないかと言われたら、それもそうだと俺は頷くだろう。
俺がこの男に抱く想いは今やいろいろなものを内包して、とてつもなく巨大になっていて。
その大きな袋の中に、俺は未知の感情を発見してしまったんだ。
その未知の感情に、たったいま、はっきりとした名前がついたんだ。

368:キスしてみたい 6/6
10/04/27 13:42:25 FJP9bEts0
俺は、真縞昌俊を愛している。真縞昌利に恋している。

そして――、どうしようもなく俺はいま、この男に欲情している。


認識してしまえば、すとん、とその感情は俺の心の棚に整理され収まって、我が物顔で激しく主張を始める。
友情に愛情に、欲情まで感じちゃうだなんて、なんてパーフェクトな感情。まったくもって素晴らしいじゃないかと。
早くマーツーと、この感情を共有してみたくはないか、と。

その心の声にそそのかされるように、突き動かされるように。
俺は、妙に晴れやかな気分でマーツーに告げた。

「やっぱり俺さ、マーツーのこと好きだわ」

と。



「だからさ―――、俺とセックスしてみない?」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

貴重なスペースをどうもありがとうございました。

369:風と木の名無しさん
10/04/27 19:20:59 w+PXmnKg0
>>368
長編乙です!でもなんという寸止め!!
前回のも今回のも、2人のじれじれした感じやまっすぐなかんじに禿萌えました
もし良ければ、続き、お願いします。

370:音→日 0/5
10/04/27 22:46:08 ZhRu8l+yO
今期アニメ・Angel Beats!より。4話後を音無視点で捏造
音無→日向止まりです
二人に萌えが抑えきれない今日この頃

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

371:音→日 1/5
10/04/27 22:51:50 ZhRu8l+yO
空の眩しさに、打ち上がった白球が溶けて見失いそうになる。
彼の目がその行方を捉えきれていたのかはわからない。
けれど、掲げたグローブにボールが吸い込まれていくのがフラッシュバックした瞬間、俺は叫んでいた。
たとえ届かないとしても、走らずにはいられなかった。


「あーあ。優勝目前だったのになー」
「チーム結成すら無理そうな状況からよくやったよ」
「ほんと、人望の差が歴然でしたからねっ!」
「黙れチビレスラー」
「なんですってえぇ!」
グラウンドを後にする道の途中、後ろから日向に肩を引き寄せられた俺は、されるがまま、引きずられるように歩いている。
過剰スキンシップにもそろそろ慣れてきた。端からは間に合わせピッチャーの奮戦を労っているようにも見えるだろうか。
負け試合だったのに、日向はいつもと変わらないどころかそれ以上に、人好きのするまっすぐな笑顔を隠しもせずに向けてくる。
敗北に貢献したユイも相変わらず賑やかだ。こんなことを言ったら容赦なく関節を決められそうだが、
同じレベルでいじり倒し合える日向をわりと気に入ってそうな感じがする。
俺はというと、きっとどこかばつが悪いような、照れくささと安堵が混じったような、よくわからない表情をしていると思う。
「おまえなんてこうだっ」
「いでっ!」
ものすごい音がして、ブーツを履いたユイの渾身のローが無防備な日向の膝下に入った。
「わ」
肩を組まれているから、当然崩れる日向と一緒に沈みそうになる。腰を掴んで体重を支えた。なんとか転倒は避けられた。
俺にぶら下がった状態で日向が背を震わせている。
「大丈夫か?」
「あのアマ……」
ユイは、汗臭い野郎二人がべたべたあつくるしいんだよ! と俺を巻き込んだ捨て台詞を吐き、親衛隊の女の子達の輪へと駆けていった。
最後尾の俺達にきゃんきゃんくっついて歩くのも飽きたんだろう。
でも俺は、彼女に内心ものすごく感謝していた。
あの時ユイが日向に――。
でも、日向への仕打ちを考えると礼を口にするのもなんとなく憚られて、そのことは黙っていた。

372:音→日 2/5
10/04/27 22:56:36 ZhRu8l+yO
俺達は、死んだ世界戦線という妙な組織に所属している。
ここは死後の世界で、仲間はみんな死んだ連中。
しかも、俺には生きてた頃の記憶がなく、死んだ理由さえわからない。
現世で自分がどんな人間だったかは知らないが、免許もなしに銃火器を使うことになるとは想定していなかったと思う。
それも一人の女の子相手にだ。
記憶が飛んでるのであいにく有効活用できないが、そういった武器の類は生前の知識をもとに製造・調達するという、
とんでもDIY設定がおまけでついてくる。
現実世界なら間違いなくあの世逝きであろう怪我を負ったって、もう死んでるから死にはしない。
時間が経てば治癒してしまうのだから、本当に何でもありだ。
とにかく、挙げればきりがないくらいにまともじゃない。戦線のメンバーも相当な個性派揃いである。
でも悪い奴等じゃない。オペレーションの一環とはいえこうやってつるんだり、本部で他愛のない雑談をしてる時なんかは、
置かれている状況の奇怪さがどうでもよくなることが、最近はたまにある。
けれど、この前の作戦中の出来事は、頭から離れそうにない。
実行部隊が天使エリアでの侵入ミッションを行っている間、陽動部隊は体育館で大規模なライブを始めていた

373:音→日 2.5/5
10/04/27 23:00:26 ZhRu8l+yO
その最中にオーディエンスの前で消えた岩沢。
彼女が話してくれた、無念のうちに絶たれた短い生涯。
かき鳴らされるアコギのストロークと静かな激情を湛えた歌声が、まだ耳に残っている。
歌いきった後、ギターだけを残して岩沢はどこにもいなくなってしまった。
誰にも何も告げず、彼女は彼女の最期を迎えたのだ。

既に肉体的には死んだ人間が死を迎えるとはどういうことなのか。
それは、ここで抗うことを辞めた時に訪れる。
天使に従って模範生徒になるか、あるいは、生前の苦悩から解放されて満たされたと感じるか。
どちらにせよ、思い残すことがなくなったら、俺達は消滅してしまう。
死んだ世界における最期とはそういうことだ。

374:音→日 3/5
10/04/27 23:04:10 ZhRu8l+yO
生徒会チームとの決勝戦。アウトあと一人の場面で、日向がこの世界に来た理由の断片を教えてくれた。
日向は震えていた。そんなあいつを見たのは初めてだった。
日向自身よく覚えていない、とは言っていた。野球少年だった日向は野球によって人生を狂わされ、
そして恐らく自責の念を抱えたまま、ある日敢え無く命を落とした。
「何も考えられなくて、あの時と一緒で。俺とボールと空しかない感じも」
9回裏1点差でツーアウトランナー2・3累、打球はセカンドフライ。
グローブを構える彼の姿に岩沢が重なった。
日向が消えるイメージが脳内で再生される。
俺はあいつに消えて欲しくないと強く願い、叫び、走っていた。衝動だった。
その時だ。ユイが力の限り突っ込んでいったのは。
それがなければ日向は捕球していただろう。今考えても背筋が寒くなる。
「けど、全然同じじゃなかった。だいたいこのチームめちゃくちゃだからな」
「確かにな」
「それに、ここにはお前がいるから」
――今、なんて。
不意を突かれて相槌も打てない俺に、日向は続ける。
「今日はちゃんと思い出せるぜ。音無、俺の名前を呼んだだろ」
「……」
「ありがとうな」
日向の声がくすぐったい。耳が熱くなる。
お前のこと結構気に入ってるとか、俺にはお前が必要だとか、こいつのストレートな物言いに多少の免疫ができた頃だと
思っていたのに。
強く胸が締めつけられて、何も言えずに俯いた。
あんなところで勝手に消えさせない、ぐらい吐いて格好付けられたらいいのに。
お前に消えて欲しくなかった、と今ここで言えるほど素直になれたらいいのに。
どっちもできなくて、ただ下を向いて、自分の気持ちをかみしめる。

375:音→日 4/5
10/04/27 23:08:32 ZhRu8l+yO
知り合ってほんの短い間に、日向が俺を気にかけてくれるのを、自然と受け入れていた。
それが元々の日向の性格によるもので、たとえ俺だけに向けられるものじゃなかったとしても、それでもいい。
失いそうになってわかった。
俺も日向のことが大事だ。
日向が好きだから大事にしたい。失いたくない。
強く湧き上がる感情を何度も確かめる。
これからも、お前が一人で勝手に満足していなくなってしまおうとしたら、俺は全力で妨げる。
俺にもお前が必要なんだ。
この思いだけは、お前が消えるなんて形で終わらせたくない。
「そんな顔しなくても、お前を残して成仏なんて心配だからできない!」
「……おう! 頼むぜ」
どんな顔してた、とは聞けなかった。
間近の日向はやっぱり笑っていた。置いていかれそうになった子どもに向けるような、優しくてあたたかい笑顔を見て、
日向の言葉はきっと嘘じゃないと思った。

死ぬ前の記憶をなくした俺は、いったい何をしたら満たされたと感じるんだろう。
俺が消えそうな時は、日向に引き留めて欲しい。
そう願っている。

376:音→日 5/5
10/04/27 23:14:36 ZhRu8l+yO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

勢いで書いてから本編見返して辻褄合わせたのは内緒
そうだね侵入班はライブ見れなかったね…
二次創作が増えるといいなーと思っています
ありがとうございました

377:風と木の名無しさん
10/04/27 23:31:00 HvdMEDQJO
グッドマッスル!!
音無は乙女だなあ音無は乙女だなあ

378:風と木の名無しさん
10/04/28 00:39:17 ygVZyVbl0
>>351
GJ!棚で銀ヅラが読めると思わなかったw
タイムリーで萌えましたありがとう
「岡田に、とは言いたくなかった」の一文がすごく好きです。

379:風と木の名無しさん
10/04/28 02:54:34 m8VG3I030
>>376
GJGJGJ!!!
萌え禿げるってこういう事なんだな

380:恋心0/4
10/04/28 16:34:01 zMGd80Fq0
※ナマモノ・エロ有り注意

紙川氏×空澤氏です。
紙川氏が結婚する前の設定
遅いですが具ー単で紙空に萌え過ぎるあまりやってしまいました
初投下です
全くの捏造なので細かい所はスルーしてやってくださいw

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


381:恋心1/4
10/04/28 16:34:50 zMGd80Fq0
初めて彼に会ったとき、その大きな瞳に吸い込まれた。
彼は自分よりも歳上とは思えない程童顔で
驚くほど小さな顔の中に収まっている二つの黒目がちな瞳で興味深げに覗きこんできた。

「紙川です。よろしくお願いします。」
「おうっ、よろしく。紙川って言いづらいから下の名前で呼んでもいい?」
「はぁ…、?」
「それじゃ、ノリpじゃなくてタカpでw」
「…」

初対面なのになんて慣れ慣れしいんだと内心、少し腹立たしく思いつつ
彼が冗談を言って突っ込まれたがっているのは
極度の寂しがりやのせいだということに徐々に気付いた。
そして、誰とでもすぐに親しくなれてどんな場所でもリーダーシップをとってしまう彼に
軽い嫉妬を覚えながらも、何となく一緒にいるのが心地良くて二人でいる時間が増えてきた。
親しくなるまでさほど時間はかからなかったように思う。

「今日は後、何か予定あるのか?」
「いえ、空澤さんは?」
「いや、それならお前んち行ってもいい?」
彼主催の恒例の飲み会の後、いつもそんな会話が続いた。

382:恋心2/4
10/04/28 16:35:53 zMGd80Fq0
「冷蔵庫の中ビールばっかだなー」
一応一言断った後、勝手に冷蔵庫の扉を開いて中を物色している。
「一人暮らしの男の家なんてみんなそんなもんですよ。」
缶ビールの中から見つけたらしいミネラルウォーターを
喉を鳴らしてごくごく飲み始めている。
「ー空澤さん」
「ん?」
後ろから両腕を回して抱きしめた。
項のあたりに口づけたら急に彼が焦り出した。
「水飲んでんだよ!」
「…そのつもりで来たんでしょ?」
「…」
こっちを向かせると少し潤んだような視線が絡まった。
「隆哉…」
自分の名前を呼ぶ彼の唇に口づけた。
唇を割り、歯列を舐め舌を無理矢理中に挿れて絡ませる。
もっと奥に入りたい、彼の奥の奥まで感じたいー
そんな欲望が疼く。

383:恋心3/4
10/04/28 16:36:53 zMGd80Fq0
ベッドへ移動し、お互いに服を全て脱いで抱き合った。
素肌が触れ合う感じが気持ちいい。
空澤さんの耳の中に舌を差し入れ、首筋から下って乳首を舐めると一瞬びくっとされた。
彼の中心に触れて、上下にゆっくり優しく扱いでやると段々硬く熱を帯びてきた。
感じる部分を気持ちよくさせながら、中指を少しずつ挿れていった。
「んっ…」
中指、人指し指、薬指、と自分の指が彼の中に徐々に飲み込まれていく。
中を探っていき、ある一点を擦ると突然空澤さんが「あっ」と声を上げた。
そこを強く刺激してやる。
「あっ…、あっ、隆哉ぁ、もう…」
普段と違う甘い口調で名前を呼ばれて顔を上げると、空澤さんの大きな目に少し涙が浮かんでいる。
自分のものが熱を持ってかなり大きくなるのを感じた。
「挿れていいですか?」
「ん…」
少しずつ自分の張りつめたものを空澤さんの中に埋めていく。
十分ほどこしたにも係わらず中はまだかなりキツかった。
彼の中に入って一つになる、そう考えただけでイきそうだ。
全て中に収めてしまうとゆっくり腰を動かした。
ふと、空澤さんの顔を見ると眉間のあたりに皺を寄せて苦しげに顔を仰け反らせている。
そんな彼を見ていたら抑えが利かなくなってきて
さっき見つけたイイ場所に当たるように激しく腰を動かした。
「…あっ、あっ、あっ、ん…ひっ、あっ」
「空澤さん…!」
「隆哉…隆哉ぁ…、俺、もう駄目っイクっ…」
「空澤さん…!俺も…」
その瞬間、頭の中で火花が散った。

384:恋心4/4
10/04/28 16:37:46 zMGd80Fq0
あれから結局何回もしてしまった…。
隣ですやすや寝息を立てて眠っている彼の横顔を見つめる。
まぁ、忙しくてあまり会えないんだから仕方ない、なんて自分に言い訳をして。
後で体がキツかったらまたうるさく言われるんだろうなー、
このまま時間が止まってしまえば良いのに、なんて思いつつ
こうして彼の隣で眠れることに幸せを感じている自分がいる。

ただ今だけ、今だけ彼は自分だけのものだ。
気持ち良さそうに眠る空澤さんを後ろから静かに抱きしめた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


385:風と木の名無しさん
10/04/28 17:33:50 1Hzxrww60
>>355
GJ!!!
2人の台詞・表情・仕草…すべてがそれっぽくて目に浮かぶようです!
そしてタイトルをはじめとして各所に散りばめられた小ネタ(?)にもニヤリ

次もあっさりいいよって言っちゃうのかマーツー…期待してます


386:風と木の名無しさん
10/05/01 00:09:25 6/swhsuz0
>>368
ものすごくこの二人らしくてもうニラニラが止まらないです!

387:陽気な強盗の終末の馬鹿
10/05/03 02:32:12 IY3UQAC10

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |   陽気な強盗in終末の馬鹿で成→響
                     |   パラレルだから気をつけてくださいってさ!
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|   というか発行時的に結構前のネタですが
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |



388:陽気な強盗の終末の嘘1/3
10/05/03 02:33:12 IY3UQAC10
「当然の疑問じゃないか。食事と空気は、生きるのに必然な物だぞ。
そもそも、方舟と言う名が気に喰わない。
方舟というのであれば、人だけではなく動物も乗せるのが必然だろう。
それに、考えても見ろ。
例え小惑星の衝突から生き延びたとしても、生き延びたのが人間だけならそれ以降何を食べて生きていれば良い。
人か?共食いをしろというのか?共食いをしても繁栄できるほど、方舟に人は入るのか?ほら、見ろ。どう見たって行き詰っているじゃないか。全く、後々餓えと酸欠で苦しい思いをしながら死ぬ為に生き延びるなんて馬鹿らしい」
「……そこまで考えられるのは、お前ぐらいだろうな」

響/野の所へと「方舟」の関係者が来たと言う事を聞いた時、成/瀬はあまり心配はしなかった。その代わり、よりにもよって彼の元へ来たその人物の運命に、哀れみを覚えた。
避けられない終末をネタに優越感を得た挙句、人を馬鹿にしようとした報い、という言葉も当てはまるのだが。
結果は全く想像通りで、その上、恐らくは関係者へと語ったのであろう演説を延々と受ける羽目になった。事の顛末を尋ねた時、簡潔に、と言ったはずなのだが、やはりと言うか、予想通りと言うか。結果は見えていたはずなのに、聞いてしまう己が憎らしい。
ああそれとも、予想通りだったから聞いていたのだろうか。

別れた妻の嘘偽りの無い言葉より、的確に未来を示す息子の言葉より。
今はこの男の、ばかばかしくてありえない、ほぼ100%近くを嘘と屁理屈で持って塗り固められている、本当にどうしようもないほどの与太話を、聞きたい。

理由なら―解る。
後少しで、世界が終わるからだ。

389:陽気な強盗の終末の嘘 2/3
10/05/03 02:35:24 IY3UQAC10
一年ぐらい前に聞いたアナウンサーの言葉からは嘘は聞き取れなかった。
大丈夫と言う救いの言葉(つまりは響/野の元へと赴いた、方舟だのなんだのという連中の言ったのと同じ言葉だ)は、耳へと届いた瞬間に「嘘」の一文字に変換されて、終わった。
慰めの言葉は全て嘘。となれば、思いつく言葉は一つしか、無い。
この世界には、逃げる場所など何所にも無いのだ。

持ち前の能力でその事を看破してしまった成/瀬だが、だからなんだ、と言う訳でもない。
今になって度胸が据わった訳でもない。
嘘を見抜ける。真実が解る。全てが見抜ける。
そのお陰で今までやってきて来れたし、捕まることも無かった。
だから、なんだ。
何時かは死ぬだろう。自分も。仲間達も。例え、それがどんな理由であっても。
「真実」と暮らしてきた成/瀬にとって、それぐらいの事実で動揺する事は無かった。
成/瀬を動揺させたと言えば、妻と別れた事と、数年前の事件で犯人の一人の電話からリダイヤルをしたら響/野が出てきた事ぐらいだ。その他はまだ、そう。自分の想定内の範囲で動いている。
例えば…それが、自分や大切な人たちの死に直面していた、としても。

響/野特有の不味い珈琲を入れながら、響/野は明るく笑い話を続ける。
まだ外は落ち着かない。
優越感に満ちた笑みを浮かべた人が来て、何かを言っても、成/瀬も響/野も騙される事は無い。
彼等は騙し、奪い取る方だ。騙される方じゃない。
長年騙し、真実を見抜き、中身の見えない話で人を誤魔化してきた自分達に、軽い言葉は通じない。
まるで彗星など無かった頃のように、まるで昔に戻ったかの様に。
ゆっくりとのんびりと、時間が過ぎていく。


390:陽気な強盗の終末の嘘 2/3
10/05/03 02:54:48 IY3UQAC10
「全く、あの時のお前の作戦と言ったら…いや、私はちゃんと解っていた。解っていたぞ?
だがな、いきなり連れされられるだなんて久/遠は解っていないだろうから、事前に言っておけばあいつの動揺も少なくて済んだ、というかな」

明るく笑い話を続ける響/野。その内容は、本来で有れば人々へと隠し通すべき事のはず。
だが、もうそれも必要ないだろう。
警察など、あって無き者。
自分達の話を聞いて誰かに通報する人なんて居やしない。
店には客は成/瀬一人。響/野の奥方は、昨日から、我等がチームの紅一点や某劇団の俳優達と一緒に騒いでいる。
そう。
店には響/野と成/瀬だけ。昼夜等の関係無く、まるで学生だった頃の様に、強盗だ何て想像せず、地球の未来なんて思いもせず計画を立てる前の如く、あの日あの場所で、成/瀬が一人だけ、イグアナの行進を見ていた頃の様に。

嗚呼それも今となれば「今更」と言う単語に移り変わるのか。
銀行強盗よりもっと悲惨な事になっている外へと思いを廻らし、成/瀬がどうしようもないと微笑み。
そして、釣られるように笑った響/野が口を開いた。
あっけらかんと紡がれる言葉は何の問題も無い、自分や相手のところに来た「方舟」関係者ともう一人の仲間についてだ。

「そう言えば聞いたか。いや、聞いていないだろうな…聞いたら驚くぞ」
「何の事だ?」
「久/遠は、方舟と言うなら動物も乗せろ、と言ったらしいぞ。この間、電話で聞いた。なんともあいつらしいじゃないか」
「ああ……そうだな」

ちなみに当の本人は、数ヶ月前からオーストラリアだ。
このご時勢、一人でちゃんと向こうに行けたかどうだかを心配していたが、先日奇跡的にかかってきた電話で動物達が食べられる為に殺されている、と嘆いていたから元気なのだろう。
何時か嘆くだけではなく、実力行使に出ないか、と言う事が心底心配ではあるが。




次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch