モララーのビデオ棚in801板57at 801
モララーのビデオ棚in801板57 - 暇つぶし2ch258:Are you cry? 1/3
10/04/15 21:29:41 309ENoNlO
半ナマ
ターミネーター2のT-800×ジョン


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



 いままでポツリポツリと言葉を紡いでいたジョンが、急に黙り込んだので、"ボブおじさん"は「不思議そうな」とでも形容できる顔を向けた。
 トラックの下に潜り込んで作業をしているので身体ごと向けることは出来ないが、彼の機械仕掛けの頭脳はその必要はないと告げていた。
 作業を続けながら、首だけ横を向けてT-800は訊ねた。
「どうかしたのか」
 そこにあるはずのない気遣わしげな色を読み取って、ジョンは力なく笑った。
「なんでもない」
 ただ、ちょっとだけ不思議な気分だった。
 それは言葉では言い表せない気持ち。
 目の前のターミネーターから視線を外して、ジョンは彼の手元に目をやった。
「僕のパパは未来から来て、」
 少年は歌うようにつぶやいた。
「僕のママは指名手配されてる犯罪者」
 言いながら声をかけられる前にスパナを手渡す。
「そして僕は人類の最後の希望。未来のリーダー」
 少年は微笑んでいるのに。ターミネーターは少年がまた涙を流すのではないかと思った。
 人間がなぜ泣くのかはまだよくわからなかったが、わずかな経験で知覚したパターンに似ているような気がした。
 けれど少年は泣かなかった。ただほんの微かに笑っただけだった。
「泣かないのか?」
 だから素直に訊ねた。


259:Are you cry? 2/3
10/04/15 21:30:52 309ENoNlO

 ジョンは弾かれたように顔をあげ、驚いた顔でT-800を見つめた。
「……君は未来から来たサイボーグ」
 そう言葉を続けて、じっと相手の顔を眺めた。
 ターミネーターも、ハシバミ色の淡い瞳を見つめ返した。
「…そうだ」
 なにか言わなければいけない気がして、同意を示した。
 答えに、ジョンはまた微笑んだ。
「どうしてそう思ったの?」
「…?」
「僕が泣くと思った?」
「違うのか?」
 問いかけの繰り返しに、ジョンはまいったなぁと笑った。
「君はやっぱり人間に見えるけど、サイボーグなんだね」
 その言葉の意味を定義することは難しかった。
 けれど言葉以外の部分で了解できたような気がした。
「普通の人間だったらって思うことがよくあったよ」
 唐突に、少年はつぶやいた。
 文脈も脈絡もない言葉についていけないサイボーグは、とりあえず続きを待った。
「ごく普通の10歳の子どもでさ。みんなと同じように学校へ行って、放課後は馬鹿みたいに遊んで。世界の終わりのことも、犯罪者で精神病院にいるママの事なんかも考えないで」
 少年は少しだけ遠い目をした。
 その表情の意味を、T-800は正確に窺い知ることは出来なかった。
 またわからないものが増えた。ターミネーターは思った。
 ジョンに関して理解の出来ないことは増えるばかりだった。
 今の表情もそうだ。


260:Are you cry? 3/3
10/04/15 21:32:29 309ENoNlO

 相槌のないことにも慣れてしまったジョンは、目の前の男には構わず話を続けた。
「でもそれじゃ僕は僕じゃないんだ。パパはどこにでもいる普通の人間で。ママだってちょっと口やかましいけど戦争のことなんてこれっぽっちも考えていなくってさ」
 少年が、少し口篭もった。
「…"普通"がよかったのか?」
 感情の篭らないはずのサイボーグの言葉が妙に温かくて、ジョンは無性に泣きたくなった。
「……そうだね。"普通"なら、こんな目にあわなくてもいい。なんにも知らないで生きていける。きっとどんなに楽だろうね。でも……僕は僕だから」
 そう微笑む少年は、幼いながらも確かに人類のリーダーたるにふさわしい風格と自信を覗かせていた。
「それに…"普通"だったら、君に逢えない」
 ハイ、とスパナを受け取り、もう片手でレンチを差し出しながらジョンは言った。
「君に逢えて、よかったと思っている。だから、"今"のほうがいい」
 なんと答えるべきかしばし迷って、"ボブおじさん"は言った。
「私も、君に逢えてよかった、と思う」
 戸惑いがちに告げられた言葉に、ジョンの顔が驚きに染まり、そして満面の喜色に変わった。
「うん、ありがとう」
「なぜ礼を言う?」
 不思議そうな顔で、サイボーグが訊ねた。
「…嬉しいから、かな」
「……そうか」
 そこで、トラックの下での会話は終わりを告げた。
 二人は黙り込み、黙々と作業に励んだ。
 けれど無言の空間は、ほのかな柔らかさを漂わせていた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
T-800←ジョンは鉄板だと思います


261:風と木の名無しさん
10/04/15 22:31:32 EiJwsH1AO
>>258
GJ
スレ見て渇望してたところだったんだ
美少年と武骨サイボーグって映えるなあ

262:見上げてごらん夜の星を(1/3)
10/04/16 00:14:42 s2So6Bpn0
|>PLAY ピッ ◇⊂(;∀; )ウシミガンバッタナア…
内容がタイムリーなうえ不謹慎なので注意!
生きていれば昨日誕生日だったコーチと、某監督の話です。
ちなみに元ネタは、今日発売の週刊ブンシューの4コマ漫画。


真夜中、ふいに鳴ったチャイムの音に目を覚まし、玄関のドアを開けた私は驚愕した。
そこには、先日、我々の前から突然姿を消したはずの人物が、ユニフォームを着て立っていたからだった。

「監督、このたびはご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。」
彼はただでさえ小柄な身体を、さらに縮こまらせるようにしてぺこりと頭を下げた。
「・・・そ、そうだぞ!みんなしてワンワン泣いて、大変だったんだからな!
ほら、こんなところにいたら寒いだろ。とりあえず家に入れ。」
そう言いながら彼の肩に手をかけたが、その身体はギョッとするほど冷たくなっており、私は改めて、彼が既にこの世の人ではないのだということを思い知らされた。
「すみません、僕はもう行かなくちゃいけないんです。これ、あとで読んでください。」
彼は呆然と突っ立ったままの私の手に、手紙らしきものが入っている白い封筒を押しつけると、
「それでは、失礼します。」と言うやいなや、夜霧のようにさぁっと、その姿を消してしまった。


263:見上げてごらん夜の星を(2/3)
10/04/16 00:16:11 s2So6Bpn0
一人残された私は、手元にある封筒の口を破り、中身を取り出した。
真っ白な便箋に黒いインクで書かれたそれは、彼の生真面目な性格をそのまま表したかのような、
ごく丁寧な文字で綴られていた。

「このような形で監督にお手紙を差し上げることとなってしまい、大変残念です。

監督がセカンドで僕の名前を叫ぶ声を聞いて、久しぶりに大泣きしてしまいました。
できることなら今すぐにでも、皆さんの元に帰って、また一緒に野球がしたい。
しかし、今の僕には、もはや生身の身体すらありません。
あるのは、死してなお野球を愛している、この魂だけです。

若手に出番を奪われていた僕を必要としてくれて、もう一花咲かせてくれた監督に、
十分な恩返しもできぬままになってしまい、本当に申し訳ないと思っています。
どんなときも勝利を目指して、一緒に戦ってきた仲間達を、よろしくお願いします。
コーチとしてひよっ子だった僕に、笑顔で教えを乞うてくれた若い奴らを、よろしくお願いします。
監督に『二人で一つ』と言われていたのに、突然一人ぼっちになってしまった僕の友達を、よろしくお願いします。
そして、僕の大好きな奥さんと、可愛い3人の子ども達を、どうか、どうか、よろしくお願いします。


264:見上げてごらん夜の星を(3/3)
10/04/16 00:17:43 s2So6Bpn0
最後にもう一つだけ、監督とみんなに、伝えたいことがあります。
もし僕に会いたくなったら、空を見上げてみてください。
きっと、どこかに僕がいるはずです。

それでは、いつか、また。」

気がつけば双眸から雫がこぼれて、インクの文字が滲んでいた。
夜空を見上げると、キラキラと幾千もの星が瞬いていて、
その中で彼が確かに笑っているような気がした。


翌朝、目が覚めると、手紙はどこにも見当たらなくて、昨夜のことはやはり夢だったのかと悟った。
それでも、青い空に遊ぶ白い雲を見上げると、胸の中に何かじんわりと温かいものが
広がっていくのを感じることができたのだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(;∀; )
気持ちの整理はとっくについたはずなのですが・・・。
ブンシューの漫画の「監督に『僕に会いたくなったら空を見上げてください』と手紙を渡すネタ」を見て、
どうしても話を広げたくなりました。

改めて、ご冥福をお祈り申しあげます。

265:風と木の名無しさん
10/04/16 00:36:02 s2So6Bpn0
しまったブンシューじゃないブンシュンだったorz

266:243
10/04/16 01:17:02 TzyeqMHoO
すみませんが一言だけ。
一日たって投下ミスに気付きました…
1レス目、追加訂正を保管庫でさせてもらいました。


267:バッソンピエールの尋問(1/9)
10/04/16 01:47:03 Goniwin90
エヌエチケーにて放送中の人形劇三十四より アヌス×谷やん前提の
バッソン×谷やんです。
誰得なカップリングですが、脱出おめ記念ということで。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「そういうことであれば、お望みどおり死んでいただこう。
 ……裏庭へ連れて行け」

バッキンガム公の言うとおり、ダルタニアンというのは中々気骨のある
青年らしい。この若さで朽ち果てさせるには惜しい人材であることに
間違いはないのだが、生きて返せば間違いなく手ごわい敵となり向かってくる
であろう危険因子をみすみす見逃すことなど、できるはずもない。

『ふりでも、仲間になると言えばいいものを……!』

自分が思った以上にあの青年に肩入れしていることに、我ながら意外だとは
思いつつも、“惜しい”という気持ちを消し去ることができない。
だから、なのだろうか。
殺してしまう前に、もう少しだけ彼と話してみたいと思った。

それによくよく考えれば、彼は見習いとはいえ銃士隊に所属していたはず
なのだからその動向を聞いておかなくてはならない、という重要な事実を
思い出した。
国王直属の近衛銃士隊が出陣しているとなれば、それは国王自らが兵を
率いて戦場に来ていることを意味しているからだ。
そうとなれば、リシュリュー枢機卿が戦場に来ている可能性も、また高い。
元々一般民衆がその大部分を占める我が軍は、イギリスからの支援があるとはいえ
本格的な戦闘が始まってしまえば、本職の軍人と銃を撃った経験もない一般人。
最低限の訓練は施してあるが、正面から戦えば戦況の不利は最初から
わかりきっている。

268:バッソンピエールの尋問(2/9)
10/04/16 01:48:20 Goniwin90
持久戦に持ち込まれては、自滅あるのみ。
一点突破でリシュリューの首を取ることは、勝利のために必要不可欠な要素なのだ。

その成否を握る情報を、あの青年は知っている可能性がある。
さっきまで、ほんの少しとはいえ心にあった同情心は一瞬にして消え去った。
どんな手段を用いてでも、必要な情報は引き出す。
……殺してしまうのは、それからでも遅くはない。

そう決意が固まるのにさして時間はかからなかった。

ダルタニアンを自分の私室に連れてくるよう指示を出し、どう口を割らせるか
思案をめぐらせる。
勇気と度胸はあるのだろうが実戦の経験が浅そうなあたり、普通に拷問に
かければ案外あっさりと全てを白状する気もするが……。
だが、意地になった人間は案外苦痛によってでは真実を語らない
ものだということを、私は経験から良く知っていた。
自白内容の真否が確認困難である以上、何でもいいから白状させるのが
得策だとは思えない。相手はこれから銃殺されるのがわかっている身の上だ。
最期の一芝居に付き合わされてはたまらない。

要は、苦痛に起因するものであろうが何であろうが、相手の心を折ることが
できなければ本当に必要な情報を得ることはできない、ということだ。

となれば、……やはりアレ、だろうか。
まぁ、駄目だったなら駄目だったで構わない。
とりあえずやってみる価値はあるだろう。
彼のことは、結構“お気に入り”なのだから。

269:バッソンピエールの尋問(3/9)
10/04/16 01:49:51 Goniwin90
考えがまとまったところで、タイミングよくダルタニアンが半ば引きずられる
ように部屋の入口まで連行されてきた。
銃殺の指示を出したかと思いきや、間髪いれず、また連れ戻す指示が出たことで
部下も若干いぶかしげな表情をしている。が、輪をかけて困惑した表情を
浮かべているのはもちろんダルタニアンだ。

部下を下がらせると
「……今更、何か御用ですか?」
挑むような目つきで、そう尋ねてきた。
「君に色々と聞いておきたいことがあったのを、忘れていた」
ダルタニアンの眉が一瞬ぴくり、と動く。どうやら、自分が尋問の対象と
なり得ることは理解していたらしい。
「……あなたにお話しできることは、何もありません」
そう言い切った口調からは、どんな些細な情報も漏らすまいとする固い決意が窺えた。

これでは正面から力押しで情報を吐かせるにしても、大分骨が折れそうだ。
不意に横合いから殴りつけるような、とでも評すべきこの作戦が
思ったように功を奏すれば良いのだが。

「そう意固地にならなくてもいいだろう。
 無駄に痛い思いをするのは、馬鹿らしいと思わないか」
「……拷問でもなんでも、したいならすればいいでしょう。
 それで本当のことを話すとでも思っているなら、ですが」
「なに、そんな野蛮なマネは私たちはしないさ」
その返答は少し予想外だったのだろう。
彼は不可解なものでも見るような目つきで、こちらの出かたを窺っている。

では行動開始といこう。
戸棚から小瓶を2つ取り出すと、その片方の中身をグラスに空けて
ダルタニアンに差し出す。

270:バッソンピエールの尋問(4/9)
10/04/16 01:51:03 Goniwin90
「飲みなさい」
と勧めてみても、全く正体のわからない飲物に口をつけたりしないのは当然だろう。
堅く口を閉ざし、そっぽをむいてしまった。
まあ、こっちも素直に飲むなんて思っちゃいない。

実力行使あるのみ、だ。
……つんと上向いた鼻をぐっとつまんでやった。
みるみるうちに苦しそうな表情を浮かべ、抵抗するように首を振ろうとするが
それは逆に限界までの時間を短くする効果しかなかった。

空気を求めて口を開かざるを得ないタイミングを見計らい、グラスの中身を煽って
微かに開いた唇をこじ開け、舌ごとねじ込むように“それ”を流し込む。
ぐっと喉が鳴る音がして、液体が間違いなくそこへ入り込んだことがわかった。

「ちょっ……!! くそっ 今、何を飲ませた?!」
された行為にも驚いたのだろうが、既に飲み込んでしまった液体の正体の
ほうが気になるのだろう。縄で後ろ手に縛ってあるとはいえ、まるで掴み
かからんばかりの勢いだ。
さて、飲まされた物の正体を知ったらどんな顔をするか。
「なに、ちょっとした催淫剤の一種さ」
「……さ、サイン?」
予想外に鈍い反応は、聞き覚えのない単語を耳にしたせいなのだろうが……。
「媚薬、といえばわかるか」
その単語にも反応は薄かった。
この手の知識については、まだまだ子供レベルということなのだろう。
少し興を削がれたが、何を飲んだのかわかってもらわないとその効果も半減だ。
肩をつかんでベッドまで連れて行き、力任せに背中を押すとつんのめるように
ダルタニアンの身体がベッドに沈む。
背中越しに青ざめた様子でこちらを窺う彼には悪いが、ここからが本番だ。
思う存分、泣いてもらうことにしよう。

271:バッソンピエールの尋問(5/9)
10/04/16 01:52:56 Goniwin90
腰に手を回し、ベルトを抜き取ると当然のように抗議の声があがったが
構わずに下着ごとズボンも膝まで下ろしてしまう。と
「やめろ!」「何考えてんだ」「ふざけるな!!」「馬鹿」「変態」等々
考え付く限りの悪口雑言が、途切れることなく声高に繰り広げられ続けた。
「……うるさいな」
あまりにも間断なく文句ばかり言うものだから、力任せに1発
尻に平手をくれてやった。
ダルタニアンはぎゃっと小さく悲鳴をあげると、いったん言葉を止め
今度は突き刺すような視線で憎々し気に睨んでくる。
「そう怖い顔をしないで頂きたいな。
 ……死ぬ前に、気持ち良い思いをさせてあげようと思っているのに」
「……!!」
その一言でさっと血の気が引いたところを見ると、今から自分の身に
降りかかるであろう運命は理解できているようだ。
媚薬の存在を知らなかったわりには……と、少し意外な気もしたが
彼ほどの容姿であれば、そう不思議な話でもない。
何も知らない子供を蹂躙するわけではないのならば、気も楽だ。

「あまり要領を得ていないようだったから、きちんと教えてあげよう。
 さっき君が飲んだのは、まぁ、こういった行為の快楽を何倍にも
 高めてくれる薬さ。……強制的に、ね。」
見開かれた目が、信じられないという心の声を声高に代弁している。
「なるほど。そんな薬があるなんて信じられない、か。
 だが、それが嘘じゃないことは君自身が一番良くわかっているはずだ。
 身体が熱くて仕方がないだろう? それが、薬の効き始めだ」

はったりだろう、信じない。という気持ちと、だが事実として熱を持つ身体に
揺れ動く心中が手に取るように伝わってくる。
もう一押しが必要だ。

272:バッソンピエールの尋問(6/9)
10/04/16 01:55:09 Goniwin90
「薬の効果を信じるも信じないも君の自由だ。だが、聞く耳を持たないというのなら」
さっき使わなかった方の小ビンの中身を右手に空け、とろりとした液体を指に
馴染ませると、躊躇なく後孔にそれをねじ込む。
「……どうなっても、知らないぞ」

「やっ、やめろ! 触るな!!」
思いのほか簡単に指を飲み込んだあたり、相当念入りに“仕込み”が
行われていたらしい。これは作戦が大当たりしたかもしれない、と
思わず口端が上がる。
指を1本から2本に増やし中を解すように動かし続けると、ある部分に
触れた瞬間びくりと体が跳ね上がった。

急所を探り当てたことに気をよくして、緩やかにそこを愛撫してやると
された方はたまったものではないのだろう。ぴんと背中を張って、なんとか
快楽の波を我慢しようとしているようだが、それに追い討ちをかけないほど
こちらもお人好しではない。

「やっ……。もう、やめ……」
大分限界が近いのだろう。
変に意地など張らないほうが、辛い思いをしなくて済むものを。
今度はわざと焦らすようにポイントを外して、なお執拗に攻め続ける。
徐々にではあるが、抵抗する力が確実に弱まる中
「や…やだ、あっ…。助けて  ァ…ト 」
と、無意識に零れたのであろう言葉に思わず手を止めた。

「ア、ト、 ……三銃士のアトスのことかな?」
「呼べば助けに来てくれるくらいには、近くにいるのかい?アトスは」
「……」
「だんまり、か。それがあまり得策でないことを
 そろそろ君は理解したほうが良いな」

273:バッソンピエールの尋問(7/9)
10/04/16 01:57:13 Goniwin90
敏感なところに狙いを定め、多少力を入れて指の腹で擦るように刺激を
与えると、瞬く間に形の良い眉がぎりぎりとつり上がって、何秒もしない
うちに限界に達した。

いくら未経験ではないといっても、さすがにこんなマネをされたことは
ないのだろう。その屈辱、そしておそらくは快楽も想像を絶するもの
だったに違いない。
まるで魂が抜けてしまったかのように弛緩し、力なく涙を流して呆ける様は
一瞬精神が壊れたかと心配になったほどだ。
「かわいそうに。
 強情を張らなければ、ここまではしなかったものを」
「……う…るさい」
この期に及んでの減らず口に、思ったより根性もあるようで感心する。
ここでそれを発揮するのが良いことかどうかは別問題だが。

「まだ口が利けるようで安心した」
その言葉に嘘はない。
ただ目的が達成されるまで容赦するつもりもないので、
彼自身のためにも早く折れてくれるのを祈るばかりだ。
ぐったりする身体を返して仰向かせると、漆黒のマントをとめる
肩の留め金を外して一気に引きずり抜く。
まだ真新しい様子のそのマントを床に投げ捨て、さて、どうしてくれようか
と思考に入ろうとした刹那、かさ、とその場には違和感のある音がして
その出所に目をやった。
そこにあるのは床に投げ捨てたマントで、布と多少の金属から構成される
はずのそれから、紙の音がするのは何とも妙な話で。
何となく興味をそそられて衣嚢を探ると、果たして1通の手紙が出てきた。

274:バッソンピエールの尋問(8/9)
10/04/16 01:58:28 Goniwin90
その手紙をみた瞬間、半ば死人のようだったダルタニアンが突如として
起き上がり全身で体当たりをしてきた。…と気が付いたのは、不意を突かれた
せいでもろに頭突きを食らって床に転がった後だった。
窮鼠猫を噛むとはよく言ったものだ。完全に油断していた!

すぐさま起き上がりダルタニアンは、と見ると、何と例の手紙に噛み付いて、
いや厳密に言えばそれを“食べよう”としていた。
慌てて、手紙を取り戻そうとするが真ん中の部分はもう欠けてしまっていて。
力任せに引っ張っては被害が拡大するだけとみて、また鼻をつまんでやった。
残った部分は手中にできたが、全く、手紙を食って処分しようだなんて、
どこからそんな発想が湧いてくるのか!

邪魔をされてはかなわないと、ダルタニアンをベッドの柱に縛り付けて
手紙の中身を検める。
真ん中がなくなってしまったせいで、わかるのは彼の安否を心配する内容
だけだったが、署名が残っていたお陰でそれでも問題ないように思えた。

手紙の最後にあった署名は “ポルトス”

やはり銃士隊、……三銃士がラ・ロシェルに来ているのだ。
書かれてからそう長い期間は経過していないことがわかる
インクの色に、その距離の近いことを感じて否応なく緊張感が高まる。

三銃士といえば敵対を避けたい相手の筆頭株なのだが。仕方あるまい。
思いもかけない事態で知りたかった情報が手に入り、ダルタニアンも
これでお役御免で構わないのだが、さてどうするか。
景気づけにヤってしまうのも悪くないが……。
「ダルタニアン。知りたかった情報は全てあの手紙のなかにあった。
 もう君に用はない。が、君に飲ませた薬のことがある。
 その状態で放って置かれれば、辛い思いをすることになるだろう」

275:バッソンピエールの尋問(9/9)
10/04/16 02:00:44 Goniwin90
「……君が望むのならば、抱いてやるが。 どうだ?」
そう言われて、はいお願いします。などと言う人間はまずいないだろう。
ダルタニアンも怒りのあまり顔を真っ赤にして、
「冗談じゃない! 誰がお前なんかに!!」
と、視線で物が貫けるのならば即死しそうなほど、鋭く激しい眼光で
こちらを睨み付ける。
手負いの獣は厄介だ。本人がそう希望しているのだから、とっとと檻に
戻して、……処分してしまおう。

縛られて自由の利かない彼の代わりに身繕いをしてやり、部下を呼んで
一旦地下牢に入れておくよう指示をだすと、ふと、ある疑問が頭に
わいた。非常に重要な情報をもたらしてくれたあの手紙だが、何故
彼はそんな“危険”な手紙を処分もせずに持ち歩いていたのだろう。
手紙には、読んだら燃やせと書いてあったのに、だ。
処分できない、ないしはしたくない理由でもあったのか。

全ては謎のままだ。
そしてそれで構わないはずだった。どちらにせよ、明日はない命なのだから。
処刑の準備をできるだけ急がせて、確実に息の根を止めておかねばならないと思った。
数時間前までならいざ知らず、今となっては、再び相対することがあれば
彼は私の命を奪うことを躊躇しないに違いない。
そういう相手が、戦場では1番やっかいなのだ。

「何も問題ない」
何故か自分に言い聞かせるようにそうつぶやいて、手に入れた情報を最大限に
利用するべく作戦を立てる作業に没頭することにした。
それが処刑に立ち会わない理由になる気がしたから。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お目汚し失礼しました。

276:風と木の名無しさん
10/04/16 17:10:56 VNAwLLxG0
オリジナル鉄道もの半擬人化。エロ無しです。バッドエンド注意。
モデルにした路線は一応ありますが、具体的にここというのではないです。
長くなってしまったので連載になってしまいますが、2回で終わります。
すみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

277:僕の金色の 1/7
10/04/16 17:15:07 VNAwLLxG0
 その踏切は、通称「3号踏切」と呼ばれておりました。ある駅から数えて
3つ目の踏切なので、3号です。幅が1m弱しかなく、片側は道路に降りる
ところが数段の階段になっているので車やバイクは通れません。人と、頑張
って持ち上げられた自転車くらいしか通らない小さな小さな踏切です。
 毎日どの電車も轟音を立てて3号の前を通っていきます。3号もそれを自分
の仕事をしながらただ見送っています。カンカンカンカン……。
「電車が来ますよ。危ないからくぐったり渡ったりしてはいけませんよ」
……カンカンカン。

 ある日の夕方、3号の前を見たことも無い車両が通り過ぎました。シャンパ
ンゴールドのボディ、そのところどころに赤いラインのアクセント、顔には黒
いサングラス、シンプルなパンタグラフ。どうやら新型車両の回送のようです。

 東に向かう上り線を走る金色の車両は後方から大きな夕陽に照らされ、通り
過ぎる線路上に黄金の粒を振りまいていくかのように見えました。
「なんて綺麗なんだろう!」
まるで太陽から生まれてきたようだと3号は思いました。
 翌日の早朝、金色の彼が今度は下り線を走っていきました。朝日を浴びる
彼は白金に輝いて、全身がプラチナでできているかのようでした。満員のお客
様を乗せて、昨日よりもどこか誇らしげに見えました。3号はほれぼれとしな
がら金色の彼を見送りました。

 その日以来、その金色の彼を見ることが3号の楽しみになりました。金色の
新型は、起点のターミナル駅から終点の観光地までという最も長い距離を往復
していたので、3号は1日に数回しか彼を見ることができませんでした。

278:僕の金色の 2/7
10/04/16 17:18:28 VNAwLLxG0
 なかなか会えない分、彼を見れた時の喜びはひとしおです。金色の彼が通る
時刻が近づくとドキドキと胸が高鳴ります。
 風に乗って聞こえてくる彼の警笛は、他の車両の鳴らす
「ぷぁああっ! どけオラァ!」
という怒号ではなく、甘く優しいメロディでした。地面を伝って響いてくる彼
の振動は、金属然とした下品な揺れ方ではなく、小刻みで上品な心地よい振動
でした。

 3号は毎日、黄色と黒の縞模様の身体いっぱいに彼の音を感じ、彼からこぼ
れる太陽の光を浴び、その度にたまらない気持ちになりました。
「一度でいいから、話をしてみたいなぁ……」
 けれども3号にとって、それは見果てぬ夢でした。
「彼からしてみれば僕はたくさんある踏切の1つにしか過ぎないものな。しか
もこんなに小さい、一瞬で通り過ぎてしまうようなちっぽけな踏切だもの。
きっと彼は僕のことなんて気づいてもいないんだろう……」
 3号はポロリと涙を流しました。その涙は通り過ぎる人たちからは、赤いシ
グナルの下に溜まった雨粒のように見えたことでしょう。


 3号が金色の彼への届かぬ想いを抱えてから二ヶ月ほど経った頃、この路線
で大きなダイヤ改正がありました。
 ベッドタウンと都心を結ぶ線でもあるこの線は、朝の通勤ラッシュ時には数
分間隔で電車が通ります。大変な過密ダイヤの上に、人が多過ぎて乗り降りに
時間がかかるので、どの電車も少しずつ本来のダイヤから遅れていきます。そ
れが積み重なると、ついには線路上で電車が渋滞状態になってしまいます。
 ダイヤ改正はこの通勤ラッシュ時の混雑を解消しようというものでしたが、
改正の翌日には、さほど駅に近くもない3号踏切の前でも徐行や停止をしてい
る電車が増え、かえって電車の渋滞が酷くなったように見えました。

279:僕の金色の 3/7
10/04/16 17:21:48 VNAwLLxG0
 ラッシュのピークが少し過ぎても電車の数珠繋ぎは続きました。今まで以上
に開かずの踏切になってしまったと3号が自身を嘆いていた時、ふと足元から
覚えのある心地よい振動が伝わってくるではありませんか。
「え? 彼はこんな時間には走らないはずだけど……」
 けれども視界には、あの金色に輝く彼の姿が見えています。以前なら軽やか
に3号の前を通過していた彼が、今日は数珠繋ぎに巻き込まれ少しずつ少しず
つゆっくりとこちらに近づいてきます。そして3号のすぐ手前の信号が赤にな
り……。すぅと金色の彼は止まりました。3号の目の前で。

「はわわわわわわあわわわぁわわわああああああっ!!!!」
突然降って沸いた幸運に3号は頭が真っ白になりました。何か話さなければと
思っても、なかなか言葉が出てきません。
 カンカンカンカンカンカンカンカンッ! 自分が鳴らしているのですが、警
報音が余計に焦りを誘います。
「お、おは、おは、おはようございますっ!」
数秒後、大変な努力の末に3号は憧れの彼にやっと話しかけました。やや挙動
不審気味の上ずった声ではありましたが。

「あれ? こんなところに踏切があったのか」
突然踏切から声をかけられた金色の彼は少し驚いて、チラリと3号を見ました。
「あ、はい、その、すみません……」
「ふうん、ずいぶん小さい踏切だなぁ。まぁいいや」
 金色の車両は3号の挨拶をさらりと受け流し、前方で遅々として進まない各
駅停車の車両を恨めしげに眺めながら、ぼそりとつぶやきました。
「俺はね、こんなふうに各駅停車ごときの尻をじわじわ追いかけているような
チンケな車両じゃないんだよ」

280:僕の金色の 4/7
10/04/16 17:27:22 VNAwLLxG0
 彼は、以前はラッシュのピークを避けた時間帯に走っていました。ところが
今回のダイヤ改正でこういった朝の混雑に強引に巻き込まれるようになってし
まい、えらく腹を立てているようなのです。
「俺は特急列車なんだ。しかもただ停車駅が少ないだけじゃない。都会の喧騒
から、自然あふれ、心休まるリゾート地へ快適にお客様をお連れする、お客様
にラグジュアリーな旅をお約束する、その為に俺は作られたんだ。
 だからスタイリッシュだし、台車もシートも特製で乗り心地は最高だし、窓
が大きくて景色もいいし、騒音も少ないし、終点のホームは俺専用だし、車内
販売のお弁当は有名料亭のものだし、美人アテンダントも乗っている」

 ここで信号が橙黄ニ灯に変わりました。金色の車両は徐行をはじめ、ずるず
ると進みながらもさらに話し続けました。
「それがどうだ? こうやって朝から延々と各駅停車の尻を眺めている。しか
も乗っているのは寝不足のサラリーマンやOLばかり! 俺の座席で経済新聞
読むな! 俺の座席で化粧をするな! 俺の座席は日常から非日常へのアプロ
ーチなんだぞ!」
 金色の彼は、愚痴を吐きながら通過していきました。

 3号は、憧れの彼がいきなり怒っていたことに少なからず驚きました。美し
く品が良いと思っていた彼が、乗客に対して文句を言っていたことには少々
ショックを受けました。
 でも同時に、彼はきっとリゾート列車として高いプライドを持っているのだ、
だからあんなに怒っていたのではないか、とも思ったのです。
「あんなに美しく作られたんだ。通勤に使われるのは嫌だろうな。僕だって彼
が通勤電車だなんて似合わないと思うもの」

281:僕の金色の 5/7
10/04/16 17:30:37 VNAwLLxG0
 次の日の朝からも、金色の車両は3号の手前の信号で止まっては同じように
こぼしていきました。日中から夜と土日や祝日は軽快にリゾート列車として走
ってはいましたが、3号には彼が以前よりどこか元気が無いように見えました。
「僕にはダイヤを変えるなんてスゴイことは絶対できないけれど、でも何か、
彼の為にしてあげられる事はないだろうか……」
 考えた末、自分にできることは聞くことだけなんだと3号は思い至りました。
だからどれだけ長い愚痴であっても同じ愚痴が繰り返されても、3号は黙って、
時には相槌をうちながら、金色の車両の話を聞き続けました。

 金色の車両は独り言のように不満を吐き散らかしていきました。小さな踏切
にこぼしたところで何かが変わるとは思えません。それでも彼は話さずにはい
られなかったのです。
「この間、俺の車内で酔っ払ってゲ○吐いた奴がいたんだ。この俺の中で○ロ
だぞ? あり得ないだろ」
「それは酷いね。すぐに掃除してもらえたの?」
「当たり前だ。俺の車内が汚いなんて許されないことだ。お前は知らないだろ
うけど、ゲ○吐かれるって本当に情けない気分になるぞ」
「……わかるよ。悲しい気持ちになるよね」
「お前も吐かれたことあるのか?」
「足元にね……。雨が降って綺麗になったけど……」
 信号が変わり、金色の車両は走りはじめました。いつもこんな風に、2人の
会話は中途半端に途切れていました。

 3号の次の踏切を通り過ぎたあたりで、金色の車両はさっきの会話をなんと
なく反芻していました。
「雨が降って綺麗になったって……。あいつ、掃除してくれる人いないのか」
 ここにきて金色の列車は、あの小さな踏切はいつも一人ぼっちで立っている
んだということにやっと気が付いたのでした。

282:僕の金色の 6/7
10/04/16 17:34:20 VNAwLLxG0
 ある日、いつものように3号の前に止まった金色の車両は言いました。
「おい、俺のフロントのワイパーを見てみろ」
「何? あっ! 紅葉!」
 朝日に照らされてプラチナに輝く車体の前面に、真っ赤な紅葉の葉がそっと
添えられています。それは彼の赤いボディラインとコーディネートされている
かのようで、金色の車両にひどく似合っていました。

「この辺のは、まだこんなに赤くなってないだろう?」
「うん。山の方はもうこんなに赤いんだね?」
金色の車両は走り出しの向かい風に合わせて器用にワイパーを動かすと、紅葉
の葉をふわりと、3号に向けて飛ばしました。
「お前は見に行けないから、仕方ないから持ってきてやったよ」
「ありがとう!」
 3号は、自分の列車進行方向表示器の上に舞い落ちた紅葉の葉を眺めました。
風よ吹くな、紅葉の葉よ、ずっと僕の上にいておくれと願いました。金色の
車両がどこにも行けない自分のためにプレゼントしてくれたことが、とても
嬉しかったからです。
 その葉を通して、目の前の線路が行き着く遠い山に思いを馳せました。赤や
黄色に色づいた山の中を走る金色の車両も、さぞや美しいことでしょう。でき
れば見てみたいものだと、3号は思いました。

 ある日の昼下がりのことです。3号は向こうから、車椅子を自分でこいで
いるおじいさんが近づいて来るのに気が付きました。
「僕を渡るつもりなのかな? こちら側は階段なんだけど……」
 近所の人達は、この踏切の片側が階段であることをみんな知っています。
それでも念のため、踏切の向こう側には『この先階段につき自転車・バイクは
通れません』という看板が立っています。

283:僕の金色の 7/7
10/04/16 17:38:40 VNAwLLxG0
 でも、おじいさんはその看板に気が付いていないようでした。
「この辺に住んでいる人じゃないのかな?」
踏切の真ん中が高くなっていて、向こうから階段が見えないのもやっかいです。
「誰か階段だって教えてあげて! 電車が通り終わったら僕は遮断機を上げな
くてはならないんだ!」

 左右から時間差で通過していた電車がどちらも通り過ぎ、遮断機が上がった
ので、おじいさんは踏切を渡り始めました。そして真ん中を過ぎたあたりで、
やっと反対側が階段であることに気づきました。おじいさんはあわてて元いた
方に戻ろうとしましたが、この3号踏切は幅が1mも無いのです。
 おじいさんは車椅子の向きを変えようとしますが、今にも脱輪しそうです。
3号に次の電車が近づいているとの信号が届きました。もう少ししたら警報機
を鳴らさなければなりません。
「誰か! 誰か! 気が付いて!」
自分が人と話せないことを、今日ほど呪った事はありませんでした。

 おじいさんは結局、たまたま通りがかった近所の主婦達に助けられました。
反対側に脱出できた頃には、警報機が鳴り始めていました。主婦達はおじいさ
んに声をかけながら、この踏切はホント危ないのよと口々に言いました。
「前に○○さんの娘さんが自転車で通ろうとして階段で転んでね……」
「うちの娘はベビーカーで……」
彼女達は過去にこの踏切で起きたトラブルの例を挙げていき、3号はそれを
悲しい気持ちで聞いていました。

 直後、電車が轟音とともに通り過ぎて主婦達の声はかき消され、3号の耳に
「また町会で言おうと思うのよ……」
という断片的な言葉だけが残ったのでした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

284:世紀の邂逅 1/3
10/04/16 20:47:57 mlhCLfQhO
ナマ、というか干物で丸クス×円ゲルス。



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



 1844年8月末、パリ。
 ヴァノー街のとある家で、2人の青年が対面していた。
 2人とも背が高くがっしりしていたが、同時に対象的であった。

「…私は、またあなたにお会いできるのを楽しみにしていましたよ。マ/ル/ク/ス博士」
 シルクハットにステッキという粋ないでたちの若者が、いくぶん頬を染めて手を差し伸べた。
 背が高く、肩幅が広く、痩せた若者は、意思と知性、温厚と鋭い観察力をたたえた顔をしていた。
 一度見たら、決して忘れられないような、そんな男だった。
「会いたいと思っていたのは君だけじゃないですよ、エ/ン/ゲ/ル/スさん」
 その家の主でもある黒髪の若い男は、差し出された手を強く握りしめた。
 肩幅の広い、ずんぐりとした印象のある彼は、深みをたたえた黒い瞳の率直で快活な眼差しをもっていた。
 それは人をひきつけずにはおられない目だった。
「君の『国民経済学批判大綱』を読みましたよ。あれは近年稀にみる、天才的な論文ですね。『ブルジョア経済の一切の矛盾は私的所有によって引き起こされる』というあなたの発見、これはまだ誰も述べていないことですよ」
 2人は小さなテーブルに向かい合って座った。
「それは褒めすぎですよ。私の到達したところは、あなたがこれに関わっていたなら、あなたはきっと、私よりもずっと早くに到達していたでしょう」
 エ/ン/ゲ/ル/スの細い端正な顔は、出会ったばかりの、けれど尊敬する友人からの率直な賛辞に紅潮していた。


285:世紀の邂逅 2/3
10/04/16 20:50:41 mlhCLfQhO


 2人とも、手紙や論文で互いを知っていたために、まるで長い間の知り合いのような心地だった。
「今になって、2年前に君がケルンに訪ねてきたときの、僕の不調法が悔やまれます。
あのとき君がこれほどの知性と才能をもっていると知っていたら!」
「その話はなしですよ、マ/ル/ク/ス博士。私だって不遜なところがありました」
 2人は顔を見合わせるとにこりと笑った。
 2年前、ドイツのケルンで『ライン新聞』の編集長だったマ/ル/ク/スのもとを、イギリスへ赴く前のエ/ン/ゲ/ル/スが訪ねたが、そのときの邂逅は不首尾に終わっていた。
「フリードリヒ、君の2年間の成果を聞かせてください。産業革命のあったあの国で、そしてブルジョワ社会の最も進んだ国で、君が何を見てきたのかを。
ケルンでもパリでも、海を越えた隣国の話は伝わってきていますよ。明日にもプロレタリアートが革命を起こすんじゃないかと、皆噂しているんですよ」
 マ/ル/ク/スが促すと、エ/ン/ゲ/ル/スは少し驚いたように目を見開き、それからにっこりとした。
「ええ、そうですね……実はそれに関して、論文を書こうかと準備しているところです。僕の故郷のヴッパータールでも見てきたことですが、プロレタリアートはまったくひどい状況に置かれているんです。
だからわたしは、イギリス人に向かって、見事な罪状目録を作ってやるつもりなんです。イギリスのブルジョアジーの殺人や強盗、その他ありとあらゆる大量の罪状を全世界に向けて告発するのです」
 エ/ン/ゲ/ル/スは熱をこめて語った。マ/ル/ク/スは力強く頷いた。


286:世紀の邂逅 3/3
10/04/16 20:52:37 mlhCLfQhO


「その点で、僕たち2人はまったく同じ結論にたどり着いた」
 マ/ル/ク/スがエ/ン/ゲ/ル/スのほうへ身を乗り出した。
「プロレタリアートこそが、この世界と人類を変革する偉大な使命を担っている。君も、そう確信しているんですね、フリードリヒ」
「もちろんですよ、カール。プロレタリアートの勝利を、私は信じて疑いません」
 エ/ン/ゲ/ル/スが応じると、マ/ル/ク/スは嬉しそうに頷いた。
「われわれは共同作業ができますよ、フレッド。われわれの至った結論に攻撃を加えてくる連中、プロレタリアートを搾取する彼らを敵に回した、人類史的にも偉大な事業にとりかかるのです」
「まったく同感ですよ。…カール、僕は、あなたのような親友をずっと探していましたよ」
「僕こそ、君のような素晴らしい友が欲しかった」
 言い合って、2人のドイツ人の若者は陽気な笑い声を立てた。
「ワインを開けましょう。今日は記念すべき日ですよ」
 マ/ル/ク/スが言った。
「すべてのブルジョアジーにとって、もっとも恐ろしい敵が手を取り合ったんですからね!」
 エ/ン/ゲ/ル/スが高らかに応じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
マイナーで萌えててすみません…orz
頭いい人が天然でいちゃついてるのが好きです。
あと、直訳したような文章で書くのが楽しいです。

287:風と木の名無しさん
10/04/17 01:50:48 z4Y2pQcqO
そんなことより頭いい人に聞きたいんだが、スタヴローギンの見る幻ってなんなのよ
チホンには正体が一つの雑多なものと言いつつ、文書ではマトリョーシャになってる
マトリョーシャと鬱陶しい小悪魔どもが元々同じ存在だったってことか?

288:風と木の名無しさん
10/04/17 01:51:29 z4Y2pQcqO
誤爆死んできます

289:風と木の名無しさん
10/04/18 01:21:54 22jpzYcB0
>>243
遅ればせながらGJ!
姐さんの本編と専スレの行間補完力パネエっす。
側にいて欲しい、お側にいたい、それだけの望みすらはかない。
せつなすぎるよ先生。

290:生 親愛の赤 0/5
10/04/18 01:32:31 WWQx7z5XO
なまもの。完全捏造です。ダメな方はスルーしてください。
数年前の話です、捏造120%なのでもうパラレルみたいなものだと思っていただければ…

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


291:生 親愛の赤 1/5
10/04/18 01:34:11 WWQx7z5XO
彼は世界に愛されていた。選ばれた者とそうでない者がいたとすれば、彼は前者だ。
才能があるというだけでは役に立たないこの世界を、圧倒的な実力と素晴らしい成績を示すことで黙らせて、あの場所で咲き誇る姿が好きだった。
悠然と笑う彼のわずかな表情の違いさえも判る距離で、彼が見つめるその先にいられることが誇りだった。
彼は世界に愛されすぎてしまった。

ぺたんと胸と胸をつけて、彼の左手で俺の右手を掴んで指を絡ませて、鼻と鼻を擦り合わせて。
彼の普段の振る舞いから、体温は低いものだと勝手に思っていたものだから、熱い素肌がすこし意外だった。
乾いた唇を開いて甘ったるい空気を吐き出しながら、彼は笑っていた。
それはどこかよそよそしさを感じさせるもので、彼の焦燥を汲み取るには十分だった。
彼が彼でいられなくなるようなことが起きているのだ、認めたくなんてないのだけれど。

292:生 親愛の赤 2/5
10/04/18 01:35:10 WWQx7z5XO
暗い廊下の突き当たりで告げられた短い言葉を思い出す。なぜこんな話になったかなどもう忘れてしまった。そんなものはどうだってよかった。
おおきな背中をちいさく丸めるようにして、ぎゅっと両手を握りしめて、しかし視線だけは揺るがず強くこちらに向けられていて。
弱った姿で自分に助けを求めた彼の手を振り払うことができなかった時点で未来は決まっていたのかもしれない。
そのときの彼の瞳の熱さも吐息の色も、きっと自分は生涯忘れはしないだろう。それだけを覚えていれば十分だ。

彼があまりに情熱的で魅力的で煽情的ですらあったので、誤解してもいいと思えた。
彼は本気なのだと思い込んでもいいのではないかと。

液状にとろけた彼が覆いかぶさってきて、身体のすべてを包まれた。ぜんぶそのまま吸収されてしまったいま、自分のすべては彼のなかだ。
そして同時に、彼の身体を毛細血管のように支配しているのは自分だ。
目が合えば彼の考えていることがわかるし、彼が自分にどうしてほしいのかがわかる。こんなときまでわかりたくはなかった。
彼の想いにこたえてやりたいと考えることは、自分にとって当然のことで、それに抗う術など持ち合わせていなかった。


293:生 親愛の赤 3/5
10/04/18 01:36:06 WWQx7z5XO
だいじょうぶ。そう言って彼がにやりと笑えば、たいていのことはなんとかなるのだから不思議だ。
動揺もなにも表には出さず綺麗に笑うものだから信じてしまう。そうしていくつもの逆境を切り抜けてきたのだから、
大丈夫と彼が言うならば大丈夫だ。そう、この世界を支配する彼が大丈夫だと言っている。
彼が自分のことを見てきたと言う時間と同じだけの時間、自分は彼を見つめていた。信頼している、なんて簡単に言えるはずもない。
彼に全権を委ねている、捧げている、どんな言葉も陳腐で役に立たない。「へいきですか」
指先で彼がそろりと顔に触れてきて、慈しんでいるかのような仕種で頬を撫でている。
そんなに平気ではない顔をしていただろうか。声を出そうとすると余計な感情まで溢れてしまいそうだ。
表現することができなかったから、せめてもの想いで彼の細い身体を抱きしめてやった。頷いてやることで伝わるとわかっている。
だいじょうぶ。自分が彼を安心させてやらなくてはならない。


294:生 親愛の赤 4/5
10/04/18 01:38:29 WWQx7z5XO
***

圧迫感に気付いて目を覚ますと、彼の長くしなやかな腕が肩に回っていた。頭をまるごと抱え込まれていることに気付き、
必要以上の負荷をかけている彼の身体と腕が心配でたまらなくなった。どれだけのひとがその腕を好きでいるのか、
どれだけおれがその腕を愛しているのか、わからないわけがないくせに。だから本当はこんなこともするつもりはなかったのだ。
こちらの想いなど知らず、かれは静かな呼吸で眠り続けている。どんな苦痛も消えてゆくような、穏やかで揺らぐことない表情のままで。
少なくとも、悪夢にうなされているようには見えない表情に、心から安堵した。

見上げた先にある顔はまるで気に入ったぬいぐるみを手放さない子供の顔だった。
ぎゅっと締めつけられたその中から、それなりの労力と時間を費やして彼を起こさぬよう抜け出す。
緩みきった幼稚な顔にキスをしてやりたい。無意識に浮かんできた不用意な気持ちを、再生してこないように細かく切り刻んで捨ててやる。
愛しいなど、そんな身勝手な想いを抱いてはいけない。世界に愛されている彼を、自分の所有物にしてはいけない。


295:生 親愛の赤 5/5 おわり
10/04/18 01:40:03 WWQx7z5XO
彼が今日のことを後悔するようなことがなければいい。できることならいますぐ忘れてくれたらいい。
夢から醒めたあとは、なにもなかったことにして昨日までと同じ顔で笑ってくれればいい。
明日も、明後日も、どちらかがこの世界を去ったあとも、
ふたりで違う世界を生きることになったあとも、この先何年何十年先も、死ぬまでずっと。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


いつもありがとうございます。

296:花冷え1/10
10/04/18 20:33:45 b2+UlytTO
オリジナル。
酔っ払ってヤっちゃう若気の至り。
年下攻。
オチが汚いです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス。


 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。

 バイトの飲み会終了後。
 飲み足りないと、新しいガンプラを買ったという噂を確かめに、上司でもあり駅から家が近いという理由だけで吉川さんの家に転がり込んだ。
 無駄に広い3LDK。
 一人暮らしには贅沢すぎやしないかと、散々冷やかして、嫌がる家主を無視してエロ本検索をかけたが、埃のない部屋同様に身綺麗なもので、至極ノーマルな雑誌が数冊。
 DVDも字幕のない何語かわからない暗いものが出てきたくらいだ。
 一人暮らしだとエロネタ溜め放題という将来の夢と希望と期待を返せこの堅物め。
 オレと渡辺は後頭部を一発ずつ殴られる。
 大人しく飲む、騒がない、寝場所だけ貸して欲しいと泣きついた結果、半ば強引に押し掛けただけの後輩を労るような優しさはない。
 チキショー。
 ちょっと先に生まれて、社員だからって横暴だ。
 冷蔵庫の中には、ワインとウィスキーくらいしかなくて、飲み慣れないオレはウィスキーの一杯目でアウト。
 調子に乗って飲んだ渡辺は、現在トイレでゲロと頭痛とランデブー。
 ははははは。ざまぁ見ろ。
 何だかフワフワして楽しい。
 支離滅裂な鼻歌に、嫌そうな表情の吉川さん。
 いつものトレードマークの眉間に皺は、今日も絶好調に3本がっつり。
「まま、そんな深刻な顔してても、ウザいし」
 部屋にあったウィスキーの蓋を開ける。

297:花冷え2/10
10/04/18 20:36:38 b2+UlytTO
新しい瓶だが気にしない。
 何か吉川さんはわめいていたが、開けちまったもんは仕方なかろう?
 金玉の小さい男だ。
 あれ?ケツの穴だっけ?
 チンコ?
 ま、どっちでもいいや。
 とにかく小さい。
背だってオレより10cmは小さい。
威張っているからデカく見えていたが、実際には170と少しらしい。
190くらいあるのかと思ってた。
 なんだかんだで、オレが手酌で5杯ほどグラスにウィスキーを注いでやった頃、吉川が突然キレた。
「お前らタク出してやるから帰れ!」
オレと渡辺のケツが蹴られる。
 うっわ、暴力。
 月曜日に上にチクってやる。
 コートと渡辺を抱えて、追い出された部屋のドアを蹴る。
 一発後頭部を殴り倒され、盛大に渡辺ごとぶっとばされる。
 え?何この文系引きこもりっぽい癖に無駄な力持ち。
 SEだから理系か?
 廊下を連行されながらマンションから出される。
 真夜中ムードの田舎道。
 もともとここに来たのだって、終電を諦めたからだ。
「おい、無ぇよ。こんな電車止まってる時間にタクシー駅なんか来てねぇし。」
「ある。」
 断言か。
 足取りはしっかりしているが、目が据わっている。
 相当酔っているな。

298:花冷え3/10
10/04/18 20:41:28 b2+UlytTO
 早足で人の腕を引く吉川の腕を払う。
 急に止まった勢いで、渡辺を背負っていたオレもこけかけるが、なんとか持ちこたえて両足をしっかり地に立てる。 
オレ、超カッコイイ!
 いかん、酔ってる。
 目が回る。
「・・・・・・・・」
 背中に負った渡辺が、何か呻く。
 あーだか、うーだかそんな感じだ。
「どうした、渡辺?」
 背中から地面へ下ろし、頬を数回叩く。
 吉川も気になったのか、渡辺の背中をさする。
「吐くか?少し先に公園があったぞ」
 表面だけはマトモになったのか、酔っぱらっていてもそこだけ正常なのか、はたまた別な何かなのか、吉川が今は正常だ。
「・・・変質者・・・」
 は?
 地面に座り込んだ渡辺の、まっすぐ指指す方向へ目を向ける。
 子供の落書きのような絵と、変質者注意の看板。
 夜間でもハッキリ見えるようにと気遣いか、夜目にも痛い蛍光イエロー。
 渡辺は、ごそごそとカーキ色のアーミッシュコートを広げて、「変質者じゃーーーーーーーーー!!!!!!!」と叫ぶや否や、公園の植え込みに突撃し、ピクリとも動かなくなった。
 ポカンと置いてけぼりのオレ。
 同じくポカンとする吉川。
 え?
 え?
 どいうい

299:花冷え4/10
10/04/18 20:46:39 b2+UlytTO
※最後の行訂正:どういう事ですか?
 ネタですか?
 全力で置いてけぼりですよ。
「・・・木元くん、・・・僕にはサッパリついていけなんだけど、今時の若い子はこんなもんなんか」
 遠い目をして吉川が呟く。
 いやいや、同じ大学生で、学部も同じではありますが、オレにだってサッパリですよ。
「全然着いてけません。オレにもサッパリ。」
 惚けたように道に座り込み頷きあう。
 そら解らんよな、と妙な連帯感を共有しつつ、重い腰を上げる。
 思いの外、遠くまで走り抜けた渡辺の背中をさする。
 全く反応無し。
 むしろ心地よさそうに寝息を立てて、完全にあっちの世界。
 どうしようもない状況を報告しようと振り返れば、吉川が一人でコートの前を広げて得意げな笑み。
 アルコール以外の頭痛で、目の前がクラクラする。
 ああ、もうどうしてこんなにアホばっかりか。
 本気で泣きたい。
 オレは今、世界で一番味方が少ない危険地帯へ突入したのか。
 得意げな酔っぱらいとの距離を詰める。
「アンタ、何やってんですか。」
 薄い春物のコートを広げ、千鳥足と酔拳と足して割らずとも結局グダグダなままの、どうしようもない足取りで細い小道へ消えてゆく。
 手の施しようのない酔っ払いが増えた。
 今日はもうこれなんて厄日?
 金を持っているのは吉川なので、しょうがなく追いかける。
 普段マトモな振りして、どんだけ駄目な大人だ。
「吉川・・・、もう諦めてマンション帰るぞ。」
 やっとこさ追いついた細い小道、吉川の右腕を掴んで持ち上げる。

300:花冷え5/10
10/04/18 20:54:44 b2+UlytTO
 少しはしゃっきりするかと思いきや、全くそんな事はなし。
 地面にしゃがみこんだまま、寝転がる。
 お前、髪の毛とかドロドロだろ。
 ほんとに社会人かよ。
「起きろよ。」
 何度か肩を揺すぶる。
 眠そうに目を擦った後、片手で自分のコートを広げ、先ほども聞いた言葉を繰り返す。
「変質者。」
「知ってる。」
 べちんと一発頭を叩く。
 恨めしそうに呻いて、なにやらごそごそと探る仕草。
「変質者だ。」
 喉元近くまでシャツをまくりあげ、肋の浮いた胸元を見せつける。
「オイ、・・・」
 ゴクリと喉が鳴る。
 薄暗い街灯。
 夜にくっきりとそこだけ白く光って、呼吸まで吸い込むような生命力。
 突然突きつけられた生々しさに、息が止まる。
「よ・・・」
 所詮酔っ払いだ。
 正常じゃないんだ。
 酒のせいだ。
 頭の中で100くらい言い訳をして、吉川係長の前に座り込む。
 なぁ、酔ってんだろ?
 さらりとした薄い手触りのコート。襟を掴んで顔を寄せる。
「酔ってる?」
 鼻先同士が触れそうな距離。
 お互いの酒臭い息も、今なら許せる。
「酔ってるだろ?」
 黙って肩を震わせて笑う吉川の唇を塞ぐ。
 酔ってなきゃ許さないだろ?
「・・・酔ってる」

301:花冷え6/10
10/04/18 20:57:25 b2+UlytTO
 わずかに首を傾げるようにして、押し返される唇。
 頬を撫でて首筋へと回る指。
 自然とかけられてくる体の重み。
 冷えた夜中の風とは違う、熱いくらいの体温。
 ああ、オレも相当酔ってる。
 なんで男なんかに手を出してんだよ。 ましてや直接の上司だ。
 これから仕事やり辛ぇだろ、どう考えても。
 薄く目を開け、現実の世界を確認。
 今キスしている相手は吉川係長。
 吉川係長はバイト先のちょっとエラい人。
 しかも仕事の鬼だ。
 ペアだってよく組まされる。
 そして男だ。
 目を覚ませオレ。
 俯き加減のせいで、薄く伏せられた瞼から陰を落とす長い睫。
 スーツではなく私服のせいでいくらか若く見える顔。
 濡れた唇を舐める薄い舌先の赤さ。
 再び頭が酔っぱらう。
 乱暴に抱き寄せ、膝を抱えあげる。
 最初に僅かに抗っただけで、くったりと力の抜けた体。
 抵抗がないことに半分苛立ちながら、無理矢理に服をはぎ取る。
 アンタ酔っ払ってりゃ誰でもいいのか。
 さすがに少しは抵抗が強くなったが、本気で今の状況を変えるのには弱すぎる。
 キスを繰り返しながら、吉川の腹を手のひらで撫でる。
 明日から仕事増やされてもいい。
 残業や掃除も理由つけて逃げないし。
「・・・あ」
 ジーンズのチャックに手をかけた時、さすがに吉川の手が胸を押す。
 それを無視して下着の中へと指を入れる。
 ふにゃりと硬さの欠片もないペニス。
 指で扱けば酔っ払いは僅かな抵抗で肩を押すが、唇を離す事無く舌は絡めたまま。
 抵抗よりも煽られていると強く感じる。

302:花冷え7/10
10/04/18 21:01:24 b2+UlytTO
 酔うと性格変わりすぎだろ?
 自分もジーパンのチャックを下ろし、硬くなって先走りで濡れたペニスを握る。
 鈴口近くに溜まった先走りを指へと塗り付け、その指を吉川の唇に塗り付ける。
 オレの唇の代わりに当てがわれた指。
 その指に絡んだ粘つきが、何か知ってんのか吉川?
 離れた唇を追って寂しげに寄せられた眉も、唇の代わりが与えられればすぐに元へと戻り。
 くちゅくちゅと音を立て、人差し指と中指へと唾液を絡める吉川の口から指を抜き、なんども己のペニスと唇を往復させる。
 指を抜く時も、目を瞑ったまま物欲しげに薄く開けられた唇と、そこから覗く赤い舌先。
 ドクンと胸が強く鼓動を繰り返す。
 滅茶苦茶にしてやりたくなって、吉川の下着を剥ぎ取り、膝を右手で抱え左手で尻を割開く。
 なにも考える時間を与えず、強引に尻穴へとペニスを突っ込む。
 悲鳴地味た声を出し、逃げようとする吉川の口を逆手で塞ぐ。
 強張った体がペニスを締め付け、一瞬でもって行かれそうな程気持ち良い。
 騎乗位で貫かれた吉川も、尻から血を流しながら勃起してるとかどんだけマゾだ?
 我慢出ず、強引に尻穴へとペニスを突っ込む。
 悲鳴地味た声を出し、逃

303:花冷え8/8
10/04/18 21:08:16 b2+UlytTO
※最後の行訂正:悲鳴地味た声を出し、逃げようとする吉川の口を逆手で塞ぐ。
 強張った体がペニスを締め付け、一瞬でもって行かれそうな程気持ち良い。
 騎乗位で貫かれた吉川も、尻から血を流しながら勃起してるとかどんだけマゾだ?
 そのまま腰を抱いて、貪る様にガツガツと上下に揺する。
 どこに突っ込んでいるのかとか、男同士だとか、これは強姦だとか、最後にちらっと浮かんだ仕事だとか。
 気が付いたら吉川の両脚がオレの腰へと周り、自分から尻を擦り付けてきて。
 イキそうだと、目を眇めて耐えている間際、頭上で小さなうめき声が聞こえたと同時、酒臭い物が勢いよく音を立てて胸元へ。
 ちょ、おま、ちょーーーーーーーーー!!!!!!!


 ゴホゴホと噎せる吉川を担ぎ、一目散に公園の便所へ向かって走る。
 その間にもあふれるゲロ、体中を伝う固形物のイヤな感触、今更暴れる吉川、色々な意味で止まらない頭痛、悪臭、つられてこみ上げる吐き気。


何でこんな事になったのか。
 何を間違えたのか。 解っていることはただ一つ。
「最悪だ。」




 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。
 ただ一つわかった事は、オレはかなり年上で、手に。
 ほんと、明日からどうしよう。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

304:花冷え8/8の下7行目以降訂正
10/04/18 21:13:43 b2+UlytTO
 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。
 ただ一つわかった事は、オレはかなり年上で、仕事では鬼の、どうみてもかわいくないオッサンの、吉川係長へ突っ込んだという事だけだ。
 できれば一生縁がないまま終わりたかったが、男とヤッてしまった。
 全然好みじゃないし、男なんかまっぴらゴメンだと思ってたのに、勃った。
 しかも出した。
 ゲロ塗れの相手に。
 ほんと、明日からどうしよう。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


間違えまくってすみません。

305:風と木の名無しさん
10/04/19 01:53:37 LeGmh4iK0
>>290
なまものって注意があるけどヒントくらい書いてくださいませんでしょうか?
読んでも何のジャンルなのか全くわかりません
>いつもありがとうございます。
ということは続きものでしょうか?

306:風と木の名無しさん
10/04/19 09:49:05 B3B4kblM0
>>305
290の人は2008年から「~の赤」って題名のシリーズで
時々作品を投下してくれる人ですよ
今回で6作目だと思います
自分も全く元ネタがわからないので
もうオリジナルとして楽しませてもらってます

307:僕の金色の(2) 1/6
10/04/19 11:39:32 h4SAwe7m0
オリジナル鉄道もの半擬人化。エロ無しです。バッドエンド注意。
>>283からの続きです。今回で終わりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 数年が経ちました。金色の車両と3号はすっかり打ち解け、何でも話せる間
柄になっていました。

 金色の車両の話は愚痴ばかりではなくなっていました。終点の観光地の雄大
な景色について話したり、変な乗客を乗せた時の話を面白おかしく語ったりも
しました。各駅停車がノロノロ詰まっていても、腹が立つことも無くなりまし
た。3号の手前の信号が赤くないと、がっかりしている自分に気が付きました。

 彼は時々、沿線に咲く花の花びらをとらえて3号に届けました。桜、ツツジ、
あじさい、コスモス。小さな野の花の時もあります。
「俺は花なんかに興味は無いが、お前が動けないから持ってきてやったんだ。
お客様の為に、たくさん咲いているところをゆっくり走るんだ。これはあくま
でもそのついでだから」
金色の車両はいつもそう言うのでした。

 3号は金色の車両の話を楽しみにしていました。彼の為に話を聞いてあげて
いたつもりが、いつのまにか聞くことが自分の楽しみになっていたのです。停
止信号の時しかゆっくり話せないことが物足りないくらいでした。もっと彼の
話を聞いていたいと思いました。
 そしてそれ以上に、朝日や夕焼けの中、太陽の光をいっぱい浴びながら走っ
てくる金色の車両が相変わらず好きでした。

「キミは本当に綺麗だ」
ある日3号は、これまでずっと心の中だけで思ってきたことを、思い切って口
に出してみました。
「…………。当たり前だろう? 俺は特別なんだから」
一瞬の沈黙の後、金色の車両はさも当然のように答えました。いつもと違って
何故か3号から目を逸らして答えていましたが。

308:僕の金色の(2) 2/6
10/04/19 11:46:01 h4SAwe7m0
 数日後の夜、その日最後の往復仕事を終えた金色の車両が、車庫に向かって
珍しく徐行運転で走り抜けていきました。
 昼間見ると金色や白金に見える彼の身体は、夜間に線路を照らす白い照明の
中では銀色に浮かび上がります。何しろ彼は、その鉄道会社の看板車両でもあ
りましたから、いつだってピカピカに磨きあげられていました。そのピカピカ
の銀色ボディに沿線で灯る信号機やネオンの色とりどりの光が反射して、それ
はそれは幻想的な雰囲気を醸し出していたのです。

 うっとりと銀色の虹になった彼を眺めていた3号の耳に、
「お・や・す・み……、さ・ん・ご・う……」
という声が響いてきました。
「えっ?」
いつもいばっている彼の、今までに聞いたこともないような優しい声。3号の
中に何かあたたかいものが広がっていきます。
「おやすみなさい……」

 幸せそうに答えた3号から少し離れたところで、数人の男性達がなにやら話
をしていました。彼らは残業している公務員と会社員でした。区役所とか県庁
とかそういうところの職員と、3号や金色の車両が所属している鉄道会社の社
員と、ゼネコンの社員です。

 その日以来、3号の周りにはやたら人が多く来るようになりました。最初は、
双眼鏡のようなものを持った人と、何かの図面を広げた人がきました。次にい
つも3号を渡っている近所の住民さんが集まったりしました。その後に、ヘル
メットをかぶった人達が大きなトラックとともにたくさんやってきました。
 彼らは3号から少し離れたところにある線路際の空き地に穴を掘り、鉄の杭
を打ち込み、コンクリートを流しました。3号は自分の仕事をしながら、毎日
横目でその様子を眺めていました。
「何を作っているんだろう?」

309:僕の金色の(2) 3/6
10/04/19 12:05:48 h4SAwe7m0
 工事は昼も夜も続きました。線路を挟んだ両側で作られていたものが線路の
上空に伸びはじめ、数ヵ月後には左右の建物が線路の上で繋がりました。両側
には屋根とスロープの付いた階段と、大きなエレベーターがありました。

 ヘルメットをかぶった人達がいなくなり少し静かになった頃、役所と鉄道会
社と近所の人達が、新しくできた建物のところに集まりました。人々はエレベ
ーターに乗ってこの新しい橋に登り、そのまま線路の反対側に渡っていきまし
た。みんな嬉しそうでした。
 3号を渡ってくれる人はとても少なくなりました。開かずの踏切になってし
まう朝のラッシュの時間帯には、3号の周りには全く人がいなくなりました。

 数日後、3号のところに鉄道会社の人達がきました。3号の身体に手をかけ
てグラグラと揺すってみたりしています。
「結構キテるなぁ。来月のいつだっけ?」
「14日ですね。すぐは無理なんでとりあえず止めるって」
 3号は自分がこれからどうなるのか悟りました。いやきっと以前から、あの
橋ができた時から、何が起きるのか本当は分かっていたのかもしれません。

 朝、赤信号で止まった金色の車両は、いつも通り3号に話しかけてきます。
3号も、何事も無いかのように普通にそれに答えます。
「そういえばな、新しく出来たあの橋の野郎、なんか感じ悪いんだよ」
「……そうなんだ」
「ここじゃなくて、1つ前の信号で止められるとあいつの前になるだろ?
だからこないだ一応挨拶してやったんだけど、あいつ無視しやがった。この俺
の方から挨拶してやったっていうのに! 腹立つよなぁ」
「……そうなんだ」
「……? どうしたんだよ? お前最近なんかぼーっとしてないか?」
「そんなことないよ。踏切がぼーっとしていたら、通る人の命に関わるもの」
「そりゃそうだけど……」
 信号が変わり、いつも通りの尻切れトンボな会話を残して金色の車両は走り
出しました。

310:僕の金色の(2) 4/6
10/04/19 12:09:48 h4SAwe7m0
 何日経っても3号は、金色の車両に本当のことを言えませんでした。目の前
を金色の車両が通過するたびに、胸が張り裂けそうになりました。いつも饒舌
な金色の車両も、何故か3号を問い詰めることはできませんでした。お互いに
心にわだかまりを抱えたまま、日々が過ぎていきました。

 某月14日。今朝も金色の彼は3号の前で止まりました。いつものように話
しかけられ、いつものように答えているつもりでした。
「……3号?」
「あ、うん、聞いてるよ」
「それならいいけど……。変わったから行くよ。またな」
「うん。またね」
 動き出した金色の車両は朝日を受けて白金の光を放ち、その光は3号のぼや
けた視界いっぱいに広がりました。涙で波打つ光の中を遠ざかっていく彼の姿
は、溜息が出るくらい美しく思えました。3号は、金色の彼が走り去っていっ
た線路をいつまでもいつまでも見つめ続けていました。誰にも気づかれないよ
うに、赤いシグナルを濡らしながら。

 最終電車が車庫に帰っていった後、3号のところにヘルメットをかぶった人
達がやってきました。いよいよなんだなと、3号は思いました。
 さよなら、僕の金色の……。

 静かに、役目を終えた3号踏切の電源が落とされました。間違って誰かが通
っては危険ですから両側にバリケードが築かれ、『使用禁止』の看板が立てら
れました。
 踏切として動けなくなった後も薄っすらと3号の意識は残っていて、淡々と
作業をする工事の人々の声を、ただぼんやりと聞いていました。

311:僕の金色の(2) 5/6
10/04/19 12:13:11 h4SAwe7m0
 次の日の朝。すぅと目の前に車両が止まる気配がしました。彼なのだと音と
振動で分かりました。けれどももう、あの光り輝くプラチナの、3号が大好き
な美しい彼の姿を見ることはできませんでした。3号の赤いシグナルにはカバ
ーがかけられていたからです。

「よう」
いつもの通り金色の車両は3号に話しかけましたが、3号から答えは返ってき
ませんでした。
「おい、3号?」
 彼には、何がどうなったのか分かりませんでした。今まで一度だって3号が
自分を無視したことなどありません。それなのに、自分が来たというのに、こ
こにいるというのに、3号はカンともスンとも言わないのです。
「俺が通ってるのに、どうしてカンカンやらないんだ? 誰か渡ったら危ない
だろう? お前はいつも人間を気にしていたじゃないか」
 金色の車両は3号を見ました。いつもならウザイくらいに点滅している赤い
シグナルが見えません。他の踏切より少し甲高い、3号独特の警報機の音も聞
こえません。人が通る道の左右は、良く分からない板でふさがれています。
「3号……」

 3号の薄れゆく意識の中に、金色の車両の声が響いていました。
 さよならって言いたくなくて、最期までただキミの話を聞き続けていたくて、
こうなってしまうことをどうしても言えなかった。ごめんなさい……。毎日本
当に楽しかった。キミに会えて幸せだった。ありがとう。大好きだよ。
 彼に伝えたかったけれど、3号にはもう、それを伝えるすべは残されていま
せんでした。

312:僕の金色の(2) 6/6
10/04/19 12:20:08 h4SAwe7m0
 金色の車両はそれでも毎日3号に話しかけ続けました。もう答えは返ってこ
ないのだと分かっていても、話しかけずにはいられませんでした。思えば3号
から最初に声をかけられて以来ずっと、金色の車両はほとんど一方的に3号に
向かってしゃべり続けてきたのでした。一方的に話しているという状況だけな
ら前と同じなのに、今はどうしてこんなに悲しいのでしょう。
 彼は、とりとめの無い話に耳を傾け続けてくれた、そして美しいと褒めてく
れた3号に、自分がどれだけ甘えていたのか、どれだけ支えられていたのか思
い知ったのでした。ちっぽけで優しい踏切が、自分にとってどれだけ大きな存
在だったのかを。

「おい3号。今日俺は団体のお客様を乗せるんだ。終点の山では紅葉が見ごろ
なんだ。毎年言ってるけど、山が燃えているように赤くなるんだぞ。新しい観
光スポットもできて、とんでもなく混んでるんだ。俺が運ぶお客様で駅がいっ
ぱいになるくらいで、いつもより1往復多く走らなきゃならないんだ。それく
らい忙しいんだ。
 だからお前に、いつものアレをとってきてやるのは、少し……、少しだけ、遅
くなっちゃうかもしれないんだよ。でもそれまで、それまでは、ここにいろよ。
わざわざとってきてやるんだからな……」

 数日後、3号の全面撤去作業が始まりました。地面に埋められている黄色と
黒の身体が掘り起こされ、今にも引き抜かれようとしています。遠くから風に
のって優しいメロディが聞こえ、地面から心地よい振動が伝わってきます。
 その時、3号のシグナルにかぶせられていたカバーの片方が、重機のアーム
にひっかかって外れました。現れた真っ赤なシグナルの上に、真っ青な空と、
白い雲と、すぐ傍を走っていく金色の車両が映りました。

 金色の車体の鼻先を、静かに水がつたいました。天気雨と思った運転士はワ
イパーのスイッチを入れましたが、何故かワイパーは少し動いただけで止まり、
代わりに一枚の真っ赤な紅葉の葉が空に舞い上がって、3号のシグナルの上に
ふわりと降りたのでした。


313:風と木の名無しさん
10/04/19 12:22:26 h4SAwe7m0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

314:風と木の名無しさん
10/04/19 12:36:17 DlPGVZgIO
>>313
GJ。
きゅんきゅんしながら、リアルタイム更新見ていました。
切な萌え良かったです。

315:風と木の名無しさん
10/04/19 14:25:38 n7NnYBNdO
>>313
3号…°・(ノД`)・°・
良い物読ませてもらいました!

316:風と木の名無しさん
10/04/19 16:48:32 KKEV2y5w0
>>313
未読だったので>>277から一気に読んで、途中からもう目の前がぼやけたよ
切な萌えありがとう

317:風と木の名無しさん
10/04/19 19:38:18 7tYsEsxZ0
失礼します。
ローカルルールの追加のお知らせです。

5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
 また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

この件に関するご意見ご質問等は会議室にて。
URLリンク(s.z-z.jp)
皆様よろしくお願い申し上げます。

318:Absolute Zero 0/5
10/04/21 18:20:54 GsWqJ+iz0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  KOF01より、中ボス×ラスボス
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  公式小説とは矛盾するかも
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ソシテ オソイウケギミ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


319:Absolute Zero 1/5
10/04/21 18:21:39 GsWqJ+iz0
玉座から差し出される白い手に、音もなく触れる。
初めは指先で。続いて包み込む掌で、次には接吻する唇で。
委ねられた手の重みと、肌理の整った皮膚の滑らかさが伝わる。
しかし、何度触れてみても、体温だけは感じられない。

神の座を求め、科学技術による強化を重ねても、生身の人間だ。
血の通った肉体は、相応の温かさを持っているはずだった。
だが、男には何故か、それを感じ取れたためしがない。
薄い皮膚に触れるたび、感じるのはその奥底の冷たさ。
人の形をした身体に、人のものとは思えぬほど静謐な何かが。
しんと冷え切った何かがあるように、男はいつも感じていた。

男がその不可思議な温度を知った契機は、ひとえに総帥の命による。
否、より正確に言えば、彼は組織内で正式に認められた総帥ではなく
実権だけを影から手にした、表向きは一幹部にすぎなかった。

彼が実父たる当時の総帥を消し、組織の全権を一手に掌握した時。
その事実を知らされたのは男を含め、数人の幹部だけであった。
本来そう呼ばれるべき人物を失った今、総帥の座は空席であったが
何故か男は、その子息を―簒奪者にすぎぬはずの人間を
新たな総帥、ひいては自らの主と、ごく自然に認識していた。
仕えるべき相手は彼ひとりと、最初から定められていたかのように。
彼に忠誠を誓い、およそ現実的とは思えぬその志に従うことも
少なくとも男にとっては、至極当然の流れであった。

だが、そうした鋼の如き意志、あるいは忠誠心をもってしても
即座には受け入れることのできなかった指示が一つだけある。
男が未だ忘れることの叶わぬ、全ての契機となった命。

320:Absolute Zero 2/5
10/04/21 18:22:10 GsWqJ+iz0
作戦への指示を与えるのと同じほどの重さで、あるいは軽さで。
眼前で跪く男に対し、要は当然のことのように総帥は命じたのだ。
傍に来て、自分を―有体に言い表すなら、抱くようにと。
実のところ男は、その時の総帥の言葉をはっきりとは覚えていない。
言葉遣いよりも内容そのものの方が、それだけ衝撃的であったのだ。

ともあれ、男はまず当惑し、次には堅く拒んだ。
今や己にとって、否、組織全体にとって絶対の存在。
私情など、いかにして抱けよう。まして欲望など。
それは幾億の命を奪うよりも、なお罪深い所業に思われた。

しかし、逃れようとする男を、総帥は許さなかった。
か細くも見える指で、砕けよとばかりに男の顎を捕らえ。
真紅色の瞳で、射抜くように見据えながら、ただ一言。
―神たる私に、禁忌などあると思うのか。
厳かな、正しく託宣と呼ぶに相応しいその響きに。
それきり男は、抗うことを止めた。
己が欲望を抱こうと抱くまいと、そんなことは問題ではない。
命ぜられたなら、理由など考えず、従わねばならないのだ。
それほどに総帥の存在は、男にとって絶対のものであった。

事実、その遣り取りの直後、男は再び痛感することになる。
主の望みの前には、己の意思など何ら意味を持たぬのだと。
自らが理性と思い込んでいたものは、全くの無力であった。
触れれば身体は自ずと熱を持ち、汗が伝い、呼吸は乱れた。
まるで思考よりも先に、肉体が彼に恭順を示すかのように。

321:Absolute Zero 3/5
10/04/21 18:22:46 GsWqJ+iz0
その様に満足したのか、以降も総帥は男に同様の命を下した。
上辺だけを見れば、主導権を握っているのは男の側であったろう。
しかしその実、優位に立っていると感じたことなど一瞬とてない。
あくまで上に立つのは総帥の側であり、男はそれを拒めぬだけのこと。
いかなる理由によってか求められるのに、ただ応えるだけであった。
己の肉欲も、交わすべき情も、自覚している余裕すらない。
自ら口にすることこそなかったものの、おそらくは総帥もまた。
身体と共に重なるべきものが、およそ二人の間には欠落していた。

もっとも、忘我の淵で一瞬、閃くように何かを感じることはあった。
褥の上に広がる金の髪、焦点を失い視線を彷徨わせる瞳。
あるいは低く掠れる声、抜けるような白い肌に差す鮮やかな朱。
そうした光景が、突き上げるかの如く、不意に心を動かすのだ。
しかし、男はそれを表に出さなかった。必死にそう、努めてきた。
美しさを称える睦言、甘やかな抱擁、あるいは眼差しの一つさえ。
世俗の男女が行うようなそれらは、主の望むところではなく
むしろ、神たらんとする身への冒涜でしかないように思われたのだ。

しかし総帥は、それすらも許そうとしなかった。
男が視線を逸らそうとすれば、鮮やかな紅の瞳はたちまちにそれを悟る。
ほんの刹那であっても、見抜かれずに済んだためしなどなかった。
もっとも、見抜いたところで、整った面差しが怒りの色を宿すことはない。
ただ、戦いなど知らぬかのような細い手が、男の黒みがかった頬に沿い
無造作な、しかし有無を言わさぬ力で己の方に向き直らせるだけである。

強引に視線を合わせられ、男は直視せざるを得なくなる。
総帥の姿を。そして、それを目にして己の内に湧き上がった何かを。
先刻までは閃きのようであったその感覚は、続けばまるで烈日の光だ。
視界から、意識から、他の全てをかき消す、眩しいほどの衝動。

322:Absolute Zero 4/5
10/04/21 18:23:24 GsWqJ+iz0
身も心も逃げ場を失った男を、総帥はその手を伸ばし引き寄せる。
招き寄せるのでも、ましてや抱き寄せるのでもない。
刈り込まれた白い髪を掴み、まるで玩具でも扱うように引き寄せるのだ。
そして、口付ける。
退こうとする男の頭を捕らえ、歯列を割って、深く。
拒む術など、もとより男の側には存在しない。
喉の奥で上げる微かな呻きすら、呼吸ごと飲み込まれてしまう。
互いの舌が別の生き物のように絡み、繋がり合った箇所がぎちりと軋む。
しなやかな白い脚は、容赦のない力で腰を挟み込み、擦り寄せてくる。

額から頬へ、そして顎の先へ。黒い肌を、透明な汗の雫が伝う。
やがて白い肌の上に落ちるそれを、男はどこか他人事のように見ていた。
熱い、のだろう。
皮膚で、あるいはそれ以外の箇所で、交わり触れている全てが。
だが、男にはその熱が、当然あるべきそれが感じられない。
神経を刺激しているはずのそれが、意識にまで届かない。
届くのはただ、皮膚を透き血を凍らせるような、冷え切った静謐。
間近で生じている、濡れた音すらもかき消してしまうほどの。
息を継ぐ間もなく、五感に注ぎ込まれるそれだけが全てとなる。

耳の痛くなるような静謐の後、互いの全身に張り詰めていた力が緩む。
その時に何を思うのか、総帥は決まって微笑んだ。
瞳の深い赤はわずかにその光を弱め、色の薄い唇は形良く弧を描く。
どこを見ているともしれぬその表情は、一分の屈託もなく美しい。
男の心など意にも介さぬ一方、それを隠し通すことは決して許さない。
人らしい感情など滅多に表さない、時に背筋が凍るほど整った相貌が
男を捕らえ弄ぶこの瞬間だけ、唯一満ち足りた様子を見せる。
その姿を目にするたび、男は痛烈に思い知らされるのだ。

これは、情交などではない。
神が人に対し、気紛れに与える、試練なのだと。

323:Absolute Zero 5/5
10/04/21 18:28:02 GsWqJ+iz0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |   世界に1人くらい、だいしゅきホールドな
 | | □ STOP.       | |   イグニス様がいたっていいじゃない
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
連投規制ひっかかった、そしてナンバリングがおかしかったorz
これで終わりです。読んでくれた方、ありがとう。

324:風と木の名無しさん
10/04/21 22:04:38 NIubDAamO
>>295
もしかして商売道具の色がお揃いの二人ですか?

325:風と木の名無しさん
10/04/22 01:08:43 lArZz1090
>>324
投下者さんへの質問は、保管サイトの感想板での方が良いかもしれない
URLリンク(s.z-z.jp)
でも姐さんの言葉でピンときたwありがとう

326:風と木の名無しさん
10/04/25 18:04:54 ZywIlU3z0
生モノ注意

タイガードラマ製作スタッフ&中の人の捏造ギャグです。
チーフD→竹地中の人というか、
チーフDは竹地中の人を美しく撮ることに命をかけています。
ちょっと竹地中の人の出演映画ネタバレもあるので注意。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

327:恐るべき監督たち(1/3)
10/04/25 18:06:25 ZywIlU3z0

O共「えー、これからディレクター会議を行いまーす」
W鍋・M奈辺「うぃーす」
O共「では、まず『O盛君のうなじをいかにセクシーに撮るか』ということについて、
D同士の見解を一致させておきたいと思います」
M奈辺「・・・・・・」
W鍋「他に話し合うことあると思うんですけど」
O共「もちろん。これは話し合いのとっかかりだよ」
M奈辺「ははは、そりゃそうですよね」
O共「そう。大事なのはうなじだけじゃないんだよ。O盛君のいいところっていうのはね、手、目、腰のライン・・・」
W鍋・M奈辺「・・・・・・」
O共「つまり全身・・・そう、全体だ。映像作品とは全体の調和によって、初めて価値が高まるものだからね」
W鍋「前半は意味わかんないけど、後半の意見には賛成です」
O共「そう。だからこそ、O盛君の撮り方について、意見を一致させておくべきなんだよ。
でないと、竹地の描かれ方に、我々の解釈の相違がそのまま反映されてしまう。
O盛君は製作者の心の鏡のような存在だからね。彼をいかに撮るかで、その人間の本心がわかるんだよ」
M奈辺「じゃあ、O共さんの本心って・・・・」
W鍋「しーっ」

328:恐るべき監督たち(2/3)
10/04/25 18:07:07 ZywIlU3z0

W鍋「とにかくさぁ、バンバーンと派手に行こうよ派手に」
O共「O盛君の出てた映画あったじゃない・・・・笑う景観ってやつ・・・・」
M奈辺「うーん、あんまり騒がしくしすぎるのもよくないでしょ」
W鍋「でも、幕末なんだから騒がしいもんだろ?」
O共「・・・・O盛君の撃たれるシーンあったんだよね・・・・俺なら、俺ならもっと色っぽく撮ったのに・・・・」
M奈辺「けど、対象はお茶の間なんですから」
W鍋「だからって、毒にも薬にもならない画じゃつまんないじゃないか」
O共「しかも、後輩から殴られるシーンもあったんだ。そういうのもさ、もっとこう・・・・」
M奈辺「やっぱり、フツーの演出が一番だと思います」
W鍋「でも、どの層を基準にした普通なんだよ」
O共「しかも、M佐湖君と一緒にヤクザに殺されそうになり、そこから絆が生まれるというおいしい設定が・・・・
その設定が完全に死んでいたんだよ! ああああ!」
W鍋・M奈辺「(泣いてる・・・!)」


カメラ「W鍋さーん、ちょっとこれ見てくださいよ」
W鍋「ん? どうした」
カメラ「なんかこう、竹地のセクシーショットが撮れたんですけど」
W鍋「あー、これは・・・・・・セクシーだな。なめらかだ。半開きだ。まさに光と影の奇跡だな・・・」
カメラ「で、どうしましょう。本編にはちょっと使えるかどうか微妙っすけど・・・」
W鍋「こういうのはな、持ち主に返すんだよ。O共さーん、O共さーん、いい画取れましたよー」
カメラ「持ち主なんだ・・・・・・」

329:恐るべき監督たち(3/3)
10/04/25 18:08:16 ZywIlU3z0

O共「こ、これは・・・」
W鍋「まー、本編にはちょっと使えなそうな画なんですけど」
O共「・・・・・・・・・」
W鍋「ああ、・・・まずかったですか? すいません、勝手にO盛さんのセクシーを撮っちゃって」
O共「・・・・・・・・・」
W鍋「うん、わかってます。こういうのは、O共さんの求めるセクシーじゃないんですよね。
どちらかというとO共さんの求めるセクシーってのは、ストイックというか、
追い詰められた中に発揮される何かであって・・・・」
O共「(ガッ!と手を握る)」
W鍋「!?」
O共「素晴らしい映像だ・・・・ついに君も・・・・この領域に」
W鍋「(うわぁ・・・仲間になったと思われたくないな・・・・)」



W鍋「なんか向こう盛り上がってるね」
M奈辺「O盛さんが砂糖君にポッキーを両端から食べるゲームをけしかけてるらしいです」
W鍋「ふーん、和むねえ」
M奈辺「なんか砂糖君も熱くなってるらしいですよ」
W鍋「そりゃまあ、O盛君に舌入れられそうになったら必死になるわな」
M奈辺「いえ、それがフラン使ってやってるせいで、どちらがチョコのついてる端からはじめるかについてのバトルが・・・」
W鍋「譲れよ。O盛が」

330:恐るべき監督たち(3/3)
10/04/25 18:08:43 ZywIlU3z0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

331:風と木の名無しさん
10/04/25 22:08:31 /z9Zdb9y0
これは酷い

332:風と木の名無しさん
10/04/25 23:40:52 AjzDbz86O
よしよし、携帯小説HPに帰ろうね……

333:風と木の名無しさん
10/04/26 00:08:05 q6RHMdoU0
>>326
超どストライク!
監督sの掛け合いにニヤつきながら楽しませて頂きました

334:風と木の名無しさん
10/04/26 00:22:21 +qKJH+3R0
>>326
これが小説…だと…?
酷すぎる

335:風と木の名無しさん
10/04/26 00:31:51 2lex2dgY0
>>326
わいわい会話してる情景が目に浮かぶようでした
チーフDの強すぎる思い入れ、イイです!

336:風と木の名無しさん
10/04/26 00:41:29 /Je6gXNjP
>>317
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

337:風と木の名無しさん
10/04/26 01:08:59 FFrZI4lXO
作品はけなされるし
感想は保管庫へ追っ払われるし
最悪だなここ

338:笛と猫 1/6
10/04/26 02:03:46 SBSewMxT0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマから三條×武智。描写は少しあるけどエロくは無いです。多分…



その夜、自分の前に現れたのは一匹の猫だった。
月の光が落ちる、庭に臨む廊下の板の上。
寝つかれず、寝所を出て柱にもたれるように腰を下ろし、手慰みにと吹いていた笛の音が
不意に横合いからの気配を察し、止まる。
向けた視線の先、あったのは闇の中で煌々と輝く二つの目だった。
迷いの黒猫か。
夜の影の中に輪郭を滲ませた、その正体を三條はそんなふうに思う。
けれど無言で見つめる自分の方へ、やがてゆっくりと近づいてきたその毛並みは、月明かりが
射す場所まで出てこれば、驚くほどの真白だと知れた。
ただ染まりやすいその色は今、闇と月光の双方を吸い取り、鈍い錫色の光沢を放っている。
そんな曖昧な色合いは瞬間、自分の脳裏に一人の男を思い出させた。
だからだろう。
「おいで。」
半ば無意識に唇から零れた言葉と、差し出した手。
手招く己に、その時猫は逃げなかった。
それゆえ、ゆるりと近づいてきたその体を静かにすくい上げ、夜着一枚の胸元にそっと抱く。
柔らかな毛並みだった。
優しく撫でれば輝く瞳は心地よさそうに細まり、小さな口からは短な鳴き声が洩れる。
その素直さがまたしても自分の違う記憶に触れる。
思い出す。
彼は自分の前でけして、こんなふうに素直に啼きはしなかった。

339:笛と猫 2/6
10/04/26 02:04:55 SBSewMxT0
彼が初めて自分の館を訪れたのは盛夏の折りだった。
うだるような京の暑さの中まみえたその姿は、質実にもどこかひんやりとした冷気を
帯びているようだった。
土イ左の荒くれ下司200人を束ねる人物としては、想像していたよりはいささか細身の、しかし
時折上げられる瞳の意思の強そうな光にはやはり目を引かれるものがある。
事実彼が退出した後、周りにいた者達は皆、彼を評して黒曜の石のようだと口にした。
しかしそれをあの時自分は、違和感を持って聞いていた。
黒曜の石。
そんな煌びやかにも輝く玉石ではないだろうと。その実はおそらくは泥に塗れたものであろうと。
三條家は土イ左の山宇知家とは縁戚関係にある。それ故に噂ながらにも知っている。
かの国の苛烈なまでの身分に対する偏重を。
そんな中で下級層出身である彼がどのような手を使い、どのようないきさつを経て、藩の実権を
握るまでになったか。
興味は沸いた。それは周りの者達と同様に。
公家の身の悪癖だ。
遥か昔に政り事の実権は武家に奪われ、残されたのは飾りばかりの高い位と、それと引き替えに
そんな武家に頼らねば生きてゆけぬ程の御家の窮乏。
そして傷つけられた自尊心を紛らわす為とばかりに身を浸したのは、恋と呼ぶには面映ゆいほど
誠の無い色事の享楽。
ゆえの、それは彼自身まったく預かり知らぬ所で起きていた自分達の水面下での駆け引きだった。
朝廷への働き掛けを餌に、皆が彼を手元に引き入れようとする。
それは戯れでもあり、退屈しのぎでもあり、中には本気になる者もあり……
そんな中、自分は果たしてどうだったのか。
利害関係上、彼に一番近い位置にいたのは自分だった。
その自負が自分に優越感を持たせ、同時に……焦燥感も与えた。その末での言葉だった。
『今宵、私のもとに』
座を同じにした宴席の最中、酔いで口を滑らせたようにひそりと告げた自分の囁きに、あの時
彼の肩は見間違えようのない程の震えを帯びた。
彼は酒が飲めなかった。その性質は生真面目で、ごまかす事も出来なかった。だから、
『……はっ…』
やがて短く返されたのは、声と言うよりは吐息に近かった。
そしてそれに潜む彼の胸の内の感情は、この時怒りでも侮蔑でもない、ただひたすらの諦めのようだった。

340:笛と猫 3/6
10/04/26 02:06:09 SBSewMxT0
主の意を汲みすぎる使用人と言うのも困りものだと、その夜御簾越しに彼の姿を見留めた時、
自分の脳裏に浮かんだのはそんな言葉だった。
淡い行灯の明かりだけが灯る寝所に、綺麗に身支度を整えられて一人座らされている。
その、こんな時にまでひどく良い姿勢は、いっそ奇妙に可笑しくさえ思えた。
部屋に足を踏み入れれば、それに彼は顔を上げる。
そこに浮かんだ表情には、これまで昼の光の下では見た事が無かった幼さのようなものが一瞬見て取れた。
ほのかな明かりを受けて黒い瞳が揺れる。印象の幼さはそのせいかもしれなかった。
意外さに思わず目を奪われる。
けれどそんな自分から視線を引き剥がすように、その時彼は再び顔を伏せるとそのまま自分の前に
身を折った。
発せられた声。何やら懸命な口調で告げられる。それは今彼が身に纏う夜着について触れていた。
真白く繊細な織りの、それは絹だった。
それについて彼は言った。
下司であるこの身は絹を纏う事は許されない、と。
正直、驚きながらも少しだけ…呆れた。
こんな自分達以外誰もいない秘め事の場でまで、国元の因習の縛りに捕らわれる彼が滑稽にも……
どこか憐れだった。
だからきっと、正面から答えても彼には届かないのだろう。ならばすべて戯れにしてやろうと思った。
『着れぬのやったら、すぐに脱ぎますか?』
静かな慇懃さで、告げた言葉に彼はもう一度顔を上げた。
己でも無意識だろう、その反射的に上げられた瞳には明らかに傷ついた色が見えた。
人は昼の彼を黒曜の石のようだと言った。
しかし今自分の前にいる彼は、触れる事にすら躊躇を覚える柔らかな殻のようだった。
あまりに違う印象に戸惑いが隠せない。それでいて、伸ばす指を止める事も出来なかった。
髪に触れ、頬に触れ、ゆっくりと抱き込むように腕をその肩に回し、引き寄せる。
それに彼は一瞬硬く身を強張らせた。けれど結局はそれも頬を埋めた肩先、ひそりと零された
吐息と共に弛緩する。
伝わってくる彼の諦めと瞬間胸に覚えた微かな疼き。
それが痛みだったのだと自分が知るのは、もう少し後の事だった。

341:笛と猫 4/6
10/04/26 02:07:17 SBSewMxT0
何もかもが危うい均衡の上に立っているようだった。
厭うた着物越しに触れただけでその目は堅く閉じられ、その質感ゆえにするりと滑り落ち
露わになった肩口に唇を寄せれば、その呼吸は詰められた。
そのくせその内は熟れていた。
香油を纏わせた指で中を探れば、抱き留めた背筋に小刻みな震えが走る。
傷つけるつもりはなかった。
だから戯れを装いながらゆるく内側を擦り、その身が痛みを覚えぬよう徐々にその数を増やそうとする。
けれど彼はその時、そんな自分の意図を拒絶するように首を横に打ち振った。
『ええです…そんな…』
労わってくれんでも――
声にならない声までもがはっきりと耳に届いたような気がした。
行為そのものに嫌悪を抱きながら、しかしその肌は触れるほどにその温度を上げ、でも心の芯は
どこまでも潔癖な。
この繋がらなさはどこから生じたのか。
想像はある意味容易かった。
彼の身分とその国の事情を思へば、さもありなんと邪推が出来た。
しかし、だからこそとも思う。
今彼がいるのは彼の国では無い、京だ……自分の手の内だ。だから、
『私が、こうしたいのや』
宥めるように告げた、その言葉に一瞬彼は目を開けた。
信じられないものを見るように、その視線を自分に向け上げてきた。
それは不安定に無防備な、子供のような顔だった。
だからこんな時にそんな表情を浮かべる彼を、自分は刹那、稚くも痛ましく思う。
愛おしいと…想ってしまった。
それから、始め方を間違えたこの抱擁は、与えるばかりのものになった。
遊びでも真実でも、人の恋情には多かれ少なかれ打算が混じる。
気を引き、寵を競い、相手を自分のものにする為に懸命な手を尽くす。
しかし彼には何も無かった。
ただ己が身を貪り食う相手の欲に狂わされ、奪われるばかりだった。
憐れだった。
自分自身が彼を喰らう矛盾を止められないまま、傲慢でも身勝手でも、そう思わずにはいられなかった。

342:笛と猫 5/6
10/04/26 02:08:21 SBSewMxT0
ことりと横で音が聞こえ視線を向ければ、そこには膝から落ち廊下を転がる笛の影が見えた。
胸元に抱かれていた猫がにゃあと鳴く。
それらに物思いに耽りすっかり意識を飛ばしていたと気付き、三條はこの時抱えていた猫を今一度
腕の中深く抱き直すと、もう一方の手を落とした笛へと伸ばした。
拾い上げる、それはあの日吹いていたのと同じ物だった。
視線も言葉も、肌以外何も交わせない情事の後、眠るように気を失った彼を残し自分は寝所を出た。
その手には笛があった。
体にはわだかまる気怠い疲れがあった。それでも寝つける気配は無かった。
それゆえ襖を開け、庭の見える廊下へと下り立ち、その場に腰を下ろす。
そして構える。
笛は三條の家に代々課された家業。幼い頃から手に馴染んでいる。
ゆえの音色はかそけき優美さで夜のしじまを渡った。
どれくらいそんな時間を過ごしたか。
ふいに指の動きが止まったのは、背後に何やら気配を感じたからだった。
振り返る。
そこにはいつの間に目を覚ましたのか、ふらりと立つ彼の影があった。だから、
『起こしてしもたやろうか』
笛を脇に置き、声を掛ければ、しかしそれに返される彼のいらえは無かった。
彼はただ立っていた。光の無い目をして立っていた。
その不安定さが自分の中で言い様の無い焦りを生む。それゆえ、
『こちらに来なさい』
まっすぐに見つめ、差し伸べた手。
それに彼は……静かに足を踏み出した。
一歩一歩近づき、手が重ねられる。それを自分は引いた。
落ちるように崩れたその体を腕の中に抱き留める。
それに彼は抗わなかった。
床の中で長く解けなかった強張りは今は無く、ただ大人しく自分の腕にその身を預けてくる。
その力の抜けた冷えた背を自分は優しく撫でた。
視線を落とす白い夜着は、蒼白い月の光を受けて淡い錫色に染まっているようだった。
それを自分は綺麗だと思う。
だからこの色にしようと思った。

343:笛と猫 6/6
10/04/26 02:10:41 SBSewMxT0
今、朝廷に上奏している幕府への勅使の議が通れば、自分は江戸へと立つ事になるだろう。
それに彼も連れてゆく。
身分を偽らせてでも、側におこう。その為に
着物を用意させる。絹で。
腕の中の動かぬ体を抱きながら、密かに思う。
自分ならば、彼をその身相応に扱ってやれるものを。
しかし彼の心がここに無い事は朧げながらもわかっていた。
孤高で、不安定で、人の手に怯えて……それでいて人の手に馴染み、その中でしか眠れない。
だからそのいびつさを埋める為に、彼は今夜も誰かの腕の中にいるのだろう。
それはまるで罰でも受けるように……
手が背を撫でる。
自分が今触れるのは、彼ではない、温かくも柔らかな毛並み。
それに密かな声が零れ落ちた。
「今夜は、おまえがここにいておくれ」

彼の、武智の代わりに――

猫は妖しに近い獣だと言う。
だから言葉を解する事が出来るのだろうか。
腕の中で上がる瞳。
それは自分と目が合った瞬間、人と聞き間違う声で、鳴いた。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
三條様に癒しを求めるあまり夢を見過ぎてる自覚はあるw
専スレで家業を教えて下さった姐さん、ありがとうございました。


344:風と木の名無しさん
10/04/26 11:50:26 9G0jwrp70
>>326
小ネタ、いいね!
某ネタスレでも書いてた方かな
チーフD最萌えの自分には嬉しい…

>>338
待ってました参上さん
離れられなくなる位優しくしてやって!

345:風と木の名無しさん
10/04/26 17:52:47 E6GPK4s4O
>>338
参上様きたー読みたかったので嬉しいです
やっと先生に優しくしてくれるお方が…それなのに矛盾だらけでやっぱり痛々しい先生に萌えました!
もしかして以前にも投下してくれたのと同じ人かな…?
姐さんの文章と先生受すごく好きです

346:春の夢 1/4
10/04/26 20:58:15 FIP/a4FQO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

俺屍
男主人公・菊人
日常のひとこま。
性描写はありません。
主人公の性格捏造してますので苦手な人は気を付けて下さい。


「今年でこの桜も見納めかァ」

中庭の桜を見上げながら、男がしみじみと口にした。そっと木の幹に触れて、撫でる。幹のざらりとした感触が皮膚の上を過ぎていった。
「なあ菊人、お前は来年も見られていいよなあ」
妬みや、不満でなく、本当に羨ましいといった風に男は言う。子供のような純粋さで。
「……何が羨ましいんだか」
彼はまだ生まれてから一年少ししか経っていない。
短命の呪い。彼の一族にかけられた呪いは、異様な成長速度と、あまりにも短い寿命をもたらした。四季を経てようやく次の年を迎えたあたり、来年を迎える前に彼らは死ぬ。
「人間様はキミみたいに桜をありがたがるけどさ、何がそんなに良いんだかねェ。
僕にはサッパリわかんないや、春にはぞろぞろ行列引き連れて宴会、酒飲んで酔っ払って、騒いで歌って……まっ、祭り好きな君たちの事だ、そういう乱痴気騒ぎが好きなのは分かるけどサ」
「菊人は桜が嫌いか?」
菊人はさぁね、と誤魔化すように笑ってみせた。
「考えたこともなかったなそんな事。ああ、花びらが地面に散らばって踏まれてンのはみすぼらしいと思うけど」
「そうかあ、俺は好きなんだけどなあ……」
はらはらと花弁が男の肩に舞い落ちる。男は肩に視線を移し、そっと拾いあげた。


347:春の夢 2/4
10/04/26 21:00:45 FIP/a4FQO
「ほら、見てみろよ綺麗だろ?」
「ふぅん、綺麗だから好きなんだ」
「ああ。綺麗なものは好きだ、花も女も……お前もな」
菊人が馬鹿にしたような視線を男に向け、鼻で笑い飛ばした。
「はぁ?! なあに言ってんだか、とうとうモウロクしちゃった?」
「死期は近ェだろうけどよ、そこまでボケてねぇよ。この通りピンピンしてらあ」
死期が近い。冗談めかした台詞にある鋭さに、菊人は一瞬返事を躊躇った。
「それじゃあ春に毒されでもしたんだろ」
「ハハ、相変わらずきっついな」
菊人は桜に近づく。男の隣に並んで、空を仰ぐ。
「俺もさ、前はそんなに好きじゃなかったんだよ桜って。
すぐ散っちまうし、縁起悪いだろ。
でもさぁ、最初に咲いた桜が散ってよ、夏になって……葉桜になって秋になって……でさあ、冬になって待ってるうちに、待ち遠しくなってる自分がいて……あ、俺って桜好きなんだって気付いたわけさ」
「ふぅん。割とどうでもいいね」
「ひでぇなお前。人が真剣に話してんのに……」
「ハハハッ、悪い悪い」
菊人は桜を見た。男が「縁起悪い」と言った通りにすぐ散ってしまう儚い花。

男が不吉を感じたのは、おそらく花に人の生を重ねたからだろうと思った。
永劫を生きる神からしてみれば人間の生は米粒のようなもの。その刹那の生を、咲き誇ろうと藻掻きあらがい、消えていく。

人はあまりにも脆く弱い。

だからこそ、この男を見ていると思うのかもしれない。

「もし、君たちが、朱点を倒して君たちと僕の呪いが解けたらさ、花見に行こう」
人に秘められた可能性を。
神の力だけでは為しえない奇跡。
神と人が交じりて子を産した時、その子は神をも超えし力を持つという。



348:春の夢 3/4
10/04/26 21:05:03 FIP/a4FQO

「僕、いい庭を知ってるんだ。紅い華が咲いてそりゃあ目も眩むほど美しいんだから……」


男は返事をしなかった。
菊人の言葉を聞いて、目尻を緩ませうっすらと微笑んだだけだった。
来年も桜は咲くだろう。
その頃、自分はいない、と。
聡いからこそ、彼は自分の行く末を知っていた。
菊人は歯噛みする。本当に憎たらしい。せめてもう少し愚鈍であったなら、甘い夢に酔わせ続けてやれたものを。

「……だからおいで。僕を殺しに」
自分以外には誰にも聞こえないように囁くと、「何か言ったか」と肩に声が降りてきた。

「ううん、何でもないサ、ちょっとね、他愛いない独り言だよ」
「そっか、それならいいんだかな。なあ菊人」
「ん?」
振り返る。御天道様みたいにカラッと晴れた顔がそこにあった。

「案内、楽しみにしてるな。お前と見る花は綺麗だろうから。ああ、そん為にも朱点を討たないとなあ」
「だっらしないなァ、面倒臭そうにしてさ、嫌なのかい?」
「いやあ、そんなことはねェけど。だってよ、朱点を倒したら、お前元の姿に戻れんだろ?」
まさかそれを言われるとは夢にも思っていなかったので、返答が遅れた。
「え?……ああ、ウン」
今一度向けられた視線は菊人をしっかと捉えて離さない。
「だったら張り切らねえとな」


349:春の夢 4/4
10/04/26 21:10:01 FIP/a4FQO
菊人はそこで初めて知った。
この男は。
この風変わりな男は。
「死ぬ前によ、一度くらいは好きな奴の手に触りてぇじゃねえか」
己の為でも、一族の悲願の為でもなく。
「……我が儘」
「我が儘で悪かったな」

ただ自分が肉体を取り戻せるようにと戦おうとしていることを。

なんて……愚かな奴だ。
家族より血族より、恋した相手をとるなんて。

「ご先祖様が見たら鼻水垂らして泣いちゃうかもね」
「泣かしとけ泣かしとけ。男の人生は一度きり、誰の為に闘うも生きるも、そして死ぬのも全て俺が決めるさ。なあ菊人、今日は随分と暖かいな……なんだか眠くなっちまうぜ、ははっ」

男はゆっくりと瞼を伏せ寝息を立て始める。
声はぬくもりを宿してそこに留まり続ける。
「桜か……ま、悪くない、ね」

半透明の肉体―触れることができず、温かみの通わないはずの身体に、春が滲んだ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

350:風と木の名無しさん
10/04/26 21:19:25 bwwPneTV0
>>346
リアルタイムでご馳走様でした。
このゲームに限り、性格捏造ってことはないですよ。
まちがいなく他の誰でもない「彼」がプレイ内に存在していたとおもいます。
良ゲーの良レポをありがとうございます。

351:「俺たちの季節」 0/3
10/04/27 01:40:52 h3fH79pF0
SilverSoul(和訳)劇場版より 銀×ヅラ

エロ無しの駄文で失礼します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

352:「俺たちの季節」 1/3
10/04/27 01:43:06 h3fH79pF0
戦場と化した高杉の船から、無事に脱出できた銀時と桂だったが
パラシュートが風に流されて、海の上に落ちてしまった。

なんとか岸まで泳ぎ着いた頃には、もう日も落ちて
うらぶれた海岸には、小さな街灯が遠くに灯るだけで
辺りは人影もなく、ひっそりと静まりかえっていた。

「・・ったく、もうちょっとマシなやり方はなかったのかよっ!」
ざばざばと波を蹴って、海から上がってきた銀時が
濡れた銀髪をかき上げながら毒づくと
「どさくさで俺にくっついて来たくせに、文句を言うな」
こちらも、濡れて頬に張り付く黒髪を耳の後ろへなで付けながら、桂が返す。

「へーへー、どうもすいませんでした。・・ってか、ココどこだよっ!」
周りを見渡しても、見覚えのない景色ばかりで、銀時が焦りだす。
「随分流されたからな、まぁ、心配はいらん。
 どこに居ようと、エリザベスが迎えに来てくれる」

いつもと変わらず鷹揚とした桂の態度に、銀時は仄かな期待を込めて尋ねた。
「え?なに?お前、からくり嫌いのくせにケータイとか持ってんの?GPSとかGTOとかそういうの?」
「いや。気配で」
「は?」
「エリザベスは、俺の気配が分かるらしい」
「あー・・・そうですか」
『んなワケねえっ!』と心の中だけで突っ込んで、銀時は不毛になりそうな会話を打ち切った。


353:「俺たちの季節」 2/3
10/04/27 01:46:45 h3fH79pF0
とにもかくにも、このずぶ濡れの着物をなんとかしようと、二人は近くの松林まで歩いた。
そこで、重くなるほどに海水を含んだ着物をやっと脱いで、両手で絞ると、手近な枝に干し掛けた。

銀時が、脱いだブーツを逆さにして、中の海水を振り絞っていると
ふと傍らの、夜目にも白い肢体が目に入った。

月光の下、白く浮かぶ艶やかな肌。
そこには不似合いな赤黒い傷が、一筋貼りついていた。

「それは、紅桜に、やられた跡か?」
岡田に、とは言いたくなかった。
銀時の脳裏に、桂の黒髪に頬ずる岡田のにやけ顔が甦る。
胃の辺りがきりきりと痛んだ。
「ああ」
傷の主は、さして気にする風もなく、そう一言頷いただけだった。

「見事にバッサリいかれちまって。よく死ななかったもんだな!」
不快感を吐き出すように言い放った銀時を、桂は横目でちらりと見やって
すっと視線を足元へと移した。
そこには、刀傷のついた古ぼけた本が、潮風に吹かれて僅かに頁をめくっていた。

「・・・この本のお陰で太刀傷が浅くなった。
 もう少し深くやられていれば・・・危なかったろうな」

354:「俺たちの季節」 3/3
10/04/27 01:49:42 h3fH79pF0
ふいに銀時の腕が伸びて、桂を体ごと引き寄せた。
銀髪がふわりと、傷を負った桂の胸に当たる。
「銀時?」
「他人事みたいに言ってんじゃねぇ!俺が、どんなに・・・っ」
桂の胸に顔を埋めた銀時が、言葉を詰まらせる。
傷を気遣うように、桂の背にゆるく回された銀時の両腕が小刻みに震えている。
自分の胸を暖かい滴が伝うのを感じた桂が、驚いたように声をあげる。

「なっ・・泣いているのか?・・・銀時?」
桂の問いに、一息、鼻を啜り上げて、低い声が応えた。
「うそみたいだろ」
「・・・ありえないだろ」
ため息と共にそう呟くと、桂は胸の中の銀髪を
両腕で包み込むように抱きしめた。
「お前が俺の腕の中で泣く日がくるなんてなぁ」

「全くだ・・・ガラじゃねぇ」
ずずっとまた鼻を啜って、銀時が顔を上げた。
「なんとも、情けない面だな、銀時」
「オメーもな。ヅラ」
気付かぬうちに桂も涙目になっていたようだ。
「ヅラじゃない、桂だ」
いつものように返して、桂は優しく笑った。つられたように、銀時も微笑う。
そうして、ゆっくりと、お互いに唇を寄せ合った。

静かに重なる二つの影を、遥か中天に懸かる月だけが見ていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

なんか中途半端ですいませ…っ! お目汚し、失礼しました。

355:キスしてみたい 1/7
10/04/27 07:56:07 EzFYsspH0
ナマモノ注意



邦楽バンド原始人ズの唄×六弦
また書いてしまいました。
以前の話と続いています、すみません。
ローカルルールでシリーズ物執筆者はトリップ推奨とありましたが、
今後の予定が未定ですので、とりあえず今回は名無しで失礼します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


キスしてみたい(あるいは友情と恋情のあいまいな境界)


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