モララーのビデオ棚in801板56at 801
モララーのビデオ棚in801板56 - 暇つぶし2ch215:シーソー 3/3
10/03/04 21:20:37 nvQ4sDeW0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )オソマツサマデシタ

216:風と木の名無しさん
10/03/04 23:46:39 +Gr0usR/0
>>215
某吸血鬼と神父を彷彿とする殺し愛ktkr
どっちが勝っても、後で残った方が静かに狂ってそうだよなぁ
大変美味しゅうございました

217:風と木の名無しさん
10/03/05 00:46:04 gq6NLROZ0
>>215
短いのにぞわっとした…
一度もヒメネスとは呼ばないヒトナリが悲しくい
毎回まるで違う作風を見せる姐さんに吃驚させられ通しだ

218:風と木の名無しさん
10/03/05 02:40:02 2RX9m3GE0
>>207
ちょw
兄萌えだけどそんなエピがあったとは…それも含めて禿萌えたGJ!



219:騎士と魔術師 1/4
10/03/05 05:10:19 QI7lMWXVQ
オリジナル 騎士と魔術師 エロ描写一切無し 一応モトネタありだが、掛け離れてるのでオリジナルで

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

220:騎士と魔術師 2/4
10/03/05 05:11:10 QI7lMWXVQ
遠くを見て彼は言う。
「……それでも戦わなくちゃいけない」
一度ボロボロにやられた後回復した彼は、皮肉に笑う。
「多勢に無勢でも、いくら倒されても……」
彼は俺に向き合った。真面目な顔で手に持った盾を腰にぶら下げ、ランスを持つ。
「お前を護るのが……」
綺麗に笑った彼の笑顔が眩しかった。
「俺の使命」
ランスを構えて彼は俺を庇うために術を唱えた。俺は後ろから攻撃魔術を放つ。多勢に無勢……彼の言葉を思い出す。
『無駄な抵抗はするな』
敵の声が聞こえる。だけど、少しでも彼を助けたい、そう思った。彼の背中から声がする。
「無理すんな」
周りがうるさくても、不思議と彼の声だけははっきりと聞き取れた。
「……上手く逃げろよ」
「出来る訳ないだろ……見損なうな」
最初からそうだった。まだレベルの低かった俺に、なぜか彼は剣を捧げて、二人で色々な戦場を渡り歩いた。

221:騎士と魔術師 3/4
10/03/05 05:15:03 QI7lMWXVO
「そうか」
いざとなったら、自分が犠牲になって俺を逃がしてきた彼。
「俺も最後まで戦う」
俺だってレベルも上がって、戦場を渡り歩く一端の傭兵として彼に認められたかった。
「……無理はするなよ」
彼はそれだけを言って口をつぐんだ。攻撃を仕掛けてくる敵に、意識を集中させているのが解る。俺も意識を集中させ、次の魔術に備える。
彼の小さな息遣いまで、なぜか綺麗に俺の耳に届いた。その瞬間集中が切れ、雑念が沸き上がる。
この戦場の仕事が終わったら聞いてみよう。なぜ、俺に剣を捧げたのか、俺を庇ったのか……どんな気持ちを俺に感じているのか。不意に彼が振り返った。
「お前の中に有るのと一緒だよ」
口だけが動いて、少し目に笑いが滲み出た。彼の視線が、俺の上に一瞬留まる。
「集中しろよ」
つい、口から出た言葉に彼は面食らったらしい。切れ長の目が少しだけ大きく開かれた。

222:騎士と魔術師 4/4
10/03/05 05:16:28 QI7lMWXVO
そうだな、と言うふうに彼は頷いて前に視線を戻す。
「お前も集中しろ」
……何だろう、少し照れ臭そうにしている彼が見えるような声。声をかけようとしたら周りの敵が動きはじめる。……生き延びられたら、沢山聞こう。気持ちも、なにもかも。
「生き延びような」
彼は俺の言葉に答えなかった。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ジョブは違うけど若干、師匠と弟子っぽい。ID変わってますが同一人物が書いてます。

223:原因と結果 1/4
10/03/05 14:43:13 C1ZXg+T20
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 生注意 六角形なクイズ番組煙草銘柄ユニット
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 紫色×水色 既にデキてる前提で
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ふと目が覚めた。
暗い部屋に目が慣れてくると、うっすらと家具の輪郭が浮かんでくる。
水が飲みたい。
一旦そう思うと、喉の渇きが我慢できない。
隣の寝息を乱さないように、そっと布団から抜け出る。
自分の部屋では無いものの、通い慣れ、泊まり慣れた部屋である。
さしたる迷いも無くドアを向かおうと立ち上がったつもりが、へなへなと床に座り込んでしまった。
「マジかよ……」
体ががくがくして、腰に力が全く入らない。



224:原因と結果 2/4
10/03/05 14:43:51 C1ZXg+T20

何故こんなことになったのか。
原因は分かってる。
今も安らかな寝息を立てているこの部屋の主のせいだ。
新曲の練習が終わった後部屋に来て、風呂から始まりベッドに移動して、何度も何度も愛された。
宝物を扱うかのような優しい指先は、どこまでも甘く追い詰めてきて、半ば失神するように眠りに落ちた。
「あんなに放してくれなかったら、そりゃ腰も立たないよな」
ある種の納得と諦めが混じったため息を一つつき、布団の中から手探りでTシャツとボクサーパンツを引っ張り出して身に着ける。
サイドテーブルに手をかけてなんとか立ち上がって壁伝いに歩き出した時、背後で衣擦れの音と共にスタンドライトの小さな灯りがともった。
「ひろ、み……?」
かすれた声に心臓が跳ねる。
この寝起きの声で名前を呼ばれるのが一番好きだ。
もちろん本人には一生言うつもりは無いけど。

「比呂巳、なんでそんな格好してんの?」
言われて己の姿を確認してみれば、へっぴり腰で壁にすがっていて、まるで老人のようだ。
「誰のせいだと思ってるんですか?まっすぐ立てないんですよ」
「マジで?」
驚いた声に続いて噴出している。
ムッとした瞬間、軽々と抱え上げられた。
「ちょ、ちょっと!なんでお姫様抱っこなんですか!?」
「なんでって俺の姫みたいなもんじゃん」
「俺は男です」
「知ってるよ。で、どこ行こうとしてたんだ?トイレ?」
「違います。喉が渇いて……」
「おっけー。水持ってくる」
ベッドに下ろされ、部屋を出て行く背中を見送る。


225:原因と結果 3/4
10/03/05 14:44:25 C1ZXg+T20

「タフだなー」
こっちは腰が立たないのに、向こうはダメージゼロ。
お姫様抱っこする余裕すらあることが、なんとなく腑に落ちない。
時計に目をやると、3時を回ったところだ。
疲れてくたくたなのに、変な時間に目が覚める事がたまにある。
今日もそんな日なんだろう。
「お待たせ」
ペットボトルを受け取ろうと手を出すと
「俺が飲ませてやるよ」
「大丈夫ですよ」
「いーから、いーから」
「でも……」
水を含んだ唇に反論を封じ込められる。
流し込まれた冷たい水が驚くほど甘いのは、喉が渇いていたせいなのか。流し込む相手のせいなのか。
唇の端から零れた水が首筋を伝うのを丁寧に舐めとられると、それだけで息が弾む。
もう一口、と流し込まれ、水が無くなっても唇は離れない。
絡めた舌で口の中を探られると、体の芯に熱が宿る。
「…ん……だめ、ですよ……今日もしゅう、ろくが」
途切れ途切れの抗議に力があるはずも無く、呆気無く押し倒された……。



226:原因と結果 4/4
10/03/05 14:45:03 C1ZXg+T20

「だから駄目だって言ったじゃないですか」
収録で大失態を演じた俺の前で土下座する人物を睨むのは、この日の夜のお話。



 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ <失敗も美味しく頂きました
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


227:風と木の名無しさん
10/03/05 21:33:47 XzschdPfO
>>223

立てないってどんだけw
優しい指先に追い詰められるって
あたりに盛大に萌えた!

そして先視点が読めて嬉しい!
thnks(゚∀゚)

228:風と木の名無しさん
10/03/05 21:58:03 lGSm6Pto0
亀レスだけど>>189
ヴィクバタ姐さん来てたー!ひゃっほー!
ヴィクバタ!ヴィクパピ!
蝶を触ると蝶は弱って、触った手には跡がずーっと残るよね・・・甘切ない・・・

229:風と木の名無しさん
10/03/05 22:23:37 x7quUAjDO
>>223
姐さんゴチです!
コヅ体力ありすぎw

230:原人バンド唄六弦 1/8
10/03/06 00:01:25 HyzNrVmw0
生注意 元青心臓、元高低 現原人バンドの唄&六弦の話
時系列は原人バンド結成前。事実も織り交ぜてますが大部分虚実です当然です。

じゃっかん唄×六弦気味

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ああ、まるで子供みたいだ、と。

真縞は匕口卜のくしゃくしゃに歪んだ顔を見上げながら、ぼんやりと思った。



交互に使っているスタジオ、現れるはずのない時間帯に顔を出した匕口卜。
セッションしよう、と無邪気に彼は言った。
「俺さ、昨日の晩さ、匕°ス卜ルズの『ア十ーキーイソザUK』のドラムコピーしたんだぜー」
だからさ、マーツーギター弾いてよ。そう言う匕口卜があまりにもわくわくと楽しそうで、ドラムセットに座りながら自分を見上げるその目が、あまりにもきらきらと期待に輝いていて。
流されるままに真縞は、ギターを手にとっていた。
愛器を肩に掛け、2、3度試し弾きをすると、待ち構えていたようにヒロトの持つスティックがカウントを始める。

曲の最初のギターコードをつま弾いた後にちらりと背筋を駆け抜けたのは、自分の決意が揺らいでしまいそうな、そんな不安だった。


231:原人バンド唄六弦 2/8
10/03/06 00:02:29 gA9nQnCi0
匕口卜とのセッションは楽しかった。

なるほど、一晩かけて練習してきたというドラムパートはなかなかのもので、そのしっかりとしたリズムに助けられながら、うろ覚えのコードを探るように、聴き馴染みの曲を演奏していく。
どちらともなく歌いだし、自然とボーカルのパートは2人でとる形になった。
真縞がミスをしたり、思いだしあぐねてもたついたりすると、ドラムのリズムも一緒にもたついてくれる。それが楽しくて、嬉しくて、顔を見合わせて笑う。
一度目は本当にボロボロで、泣きの再チャレンジ。
一度目よりはましになったけれど、納得いかなくてさらにもう一度。
そのうちに、他の曲もやってみようという話になり、今度こそ2人そろってうろ覚えもいいところの、かなり酷い演奏を、大笑いしながら繰り返した。
怪しいコード進行のギター。独創的なドラムのリズム。唄の歌詞などまるでデタラメで、半ばヤケのように2人でがなり立てる。
何度か繰り返すうち、自分たちなりに満足いく演奏ができたら、次の曲、そしてまた次の曲。
そうやって、いったい何時間が過ぎたのか。


気づけばスタジオの外は夕暮れていた。


「あー、楽しかったーー」

満足げにドラムスティックを置く匕口卜の顔が、夕日に照らされていた。
そのせいか、またはセッションの高揚感のせいなのだろうか、いつもは青白い匕口卜の顔が紅潮している。
その様子をしばらくの間ぼおっと見つめていた真縞は、ふと我に返ると、慌てて匕口卜から視線を逸らせた。
あーあ、とわざとらしく大儀そうな声を上げ、ギターを肩から外してスタンドに立てかける。
「久しぶりに真面目にギター弾いたら、疲れちゃったよ」
そして、匕口卜に背を向け、腕をぐるぐる回しながらスタジオの隣の休憩室に向かった。
まるで、匕口卜から逃げるように。
後を付いて来てくれるな、と祈りながら。


232:原人バンド唄六弦 3/8
10/03/06 00:04:57 HyzNrVmw0
けれど、

「なーなーなー、」
そんな真縞の身勝手な望みなど匕口卜に分かるはずもなく、楽しげに弾んだ声と軽やかな足取りが、すぐに追いついてくるのだった。
「マーツー、楽しかった?」
並んで休憩室に入ると、匕口卜は回り込み、真縞の顔を覗き込んできた。
「うん、楽しかったよ」
そのどこか不安そうな顔に、真縞はかすかに笑ってみせる。
楽しかった。それは偽りのない事実だったから。
匕口卜はニコニコと頷いた。
「やっぱさー、人と演奏するのは楽しいね?」
「……うん、そうだね」
それも、本当だ。
「いやでも、マーツーとだったから、余計楽しかったのかもなぁ…」
「…………」
それも、本当のことだ。少なくとも真縞にとっては。
匕口卜と一緒に演奏するのは、ロックを共にやるということは、掛け値なしに楽しい。最高に。
けれどそれは、今の真縞にとってはひどく苦しく、辛い現実なのだった。

ねえねえ、とまるで近所の気になる子を初めて遊びに誘う子供のような、はにかんだ匕口卜の口調。
どうか、その先は言わないでほしい――、
そんな真縞の願いが、やはり通じるはずもない。

「またさ……、一緒にやろうよ」

「……………」
何を、と問わなくても、匕口卜の言いたいことは痛いほどよく分かっていた。
数か月前に事実上解散したバンド、終わらせた2人での音楽活動。
その再開を匕口卜は望んでいるのだ。
また一緒にロックをやっていくことを、彼は望んでくれるのだ。こんな自分と――、
それは何よりも嬉しいことで、同時に何よりも恐れていることでもあった。

233:原人バンド唄六弦 4/8
10/03/06 00:05:41 gA9nQnCi0
真縞は、胸の痛みに耐えるようにそっと目を閉じた。
細く長く、息を吐き出す。これから言う言葉が、匕口卜を落胆させるであろうことを覚悟しながら。
匕口卜をひどく傷つけてしまうかもしれないことを、怖れながら。

「…………ごめん…」

それは無理だ、と真縞の口から出たのは、蚊の泣くような呟き。
とたん、2人の間に重く沈黙が落ちた。
「……………」
「…………………」
もしかして聞き取れなかったのだろうか?
長すぎるその沈黙を不安に思った真縞は、閉じていた目をヒロトに向けた。
そのときだった。

「……やっぱり…」

静かな部屋の中に、低く重く、呻くような声が響く。
ヒロトは俯き、身体をかすかに震わせていた。

「―――え?」

「やっぱりお前、俺のことがイヤになったんだろ!!?」

「ヒロト……!?」
叫び声。それと共に身体に与えられる衝撃。

突き飛ばされた真縞は大きくよろけ、気づけば休憩室のソファに座り込み、くしゃくしゃに歪んだ、子供の泣き顔のようなヒロトの顔を見上げているのだった。

234:原人バンド唄六弦 5/8
10/03/06 00:06:27 gA9nQnCi0
それは、久しぶりに匕口卜が見せた激情だった。

「俺と一緒にいるのがイヤんなったから……、一緒にロックンロールやるのに飽きたから、だからお前、バンド辞めるなんて言い出したんだろ!!?」

やはりそう感じていたのか、と真縞は思う。
突然のバンド休止の申し出の原因が、別のところにあることを。
努めてとった匕口卜との距離の意味するところを。
聡いこの男が気づかないはずがないのだ。
そして、そのことに心を痛めていないはずもない――。

あの時―、バンドを辞めたいと真縞が突然言い出したときでさえも、匕口卜は穏やかだった。
少し困った顔をしながらも、タイアップが決まりかけていた曲をあっさりと放り出し、「お前がそうしたいんなら、じゃ、休止しよっか?」と軽い調子で言ってくれた、そんなヒロトなのだ。
それが今は、真っ赤にした顔を歪ませて、こんなに感情を昂らせている。
怒っているのではなかった。付き合いの長い真縞には、それがよく分かっていた。

「なあ、俺のこと、そんなに嫌い……? バンド辞めて逃げ出すほど、スタジオ来る時間ずらして、俺と顔合わさないようにしなきゃなんないほど、俺と一緒に居るのがイヤんなっちゃったのか………?」

不安げにゆれる瞳。言葉もなくじっと見返すと、それは今にも泣き出しそうに潤む。
自分のそんな表情を隠したいのか、あるいは真縞をどこにも逃がすまいとでも言うのだろうか、ヒロトは床に座り込み、長い腕をソファに座る真縞の腰に巻きつけ、腹の辺りに顔をうずめた。
まるで、親に捨てられるのを怖れる子供のように。


235:原人バンド唄六弦 6/8
10/03/06 00:07:12 gA9nQnCi0
そう、匕口卜が感じているのはきっと、不安だ。
長年一緒に過ごしてきた人間が去っていくという不安。
自分が心を許せる人間を、失うかもしれないという不安。
真縞よりずっと友人知人も多く、大勢の人間に囲まれて朗らかにふるまっているように見える匕口卜だが、その実、人と打ち解けるのがあまり得意ではない。
だから、彼が本当に心を開ける人間はほんのわずかしかいないのだ。そんなところは切ないほど自分と似ていて、真縞は、だからこそ匕口卜の抱いている喪失の不安が、己のことのように実感できた。

匕口卜の問いに、そうだ、と返答できたら。
嫌いだ、と嘘をついてしまえたら、どんなに簡単なことだっただろう。

けれど、真縞は誰よりもよく知っているのだ。
匕口卜が自分の周囲の人間を、心の許せる人間を、どんなに懸命に愛しているのか。
自分が、どんなに匕口卜に大切にされてきたのか。
そして、自分などよりよほど情に厚い、優しいヒロトが、この別れでどんなに心傷つくことだろう―?
そう思うと、心にもない言葉で2人の関係を終わらせることなど、とてもできないのだった。

真縞はしがみつく匕口卜の頭を、愛しげに撫でた。
ちがうよ、そうじゃない、と子供をなだめる親のような口調とともに。

「お前のことがイヤになったんじゃない。……お前が好きだよ、すごく大切に思ってる」

こんな直截なことを匕口卜に言うのは初めてで。
どんなに気恥ずかしいだろうと口に出す前は思っていたが、真縞の耳は自分の言葉を、思いのほか自然な響きだと感じていた。
それはきっと、心からの本音だからだ、と真縞は思う。
けれど、いまの2人にとってはひどく薄っぺらな言葉だ、とも。

一緒にロックをやらない、それは2人にとって決別にも等しいことなのだと、互いによく分かっているのだから。

236:原人バンド唄六弦 7/8
10/03/06 00:08:03 HyzNrVmw0
撫でた手の下で匕口卜の頭は一瞬震え、真縞の腹にぐりぐりと押しつけられる。

「……それなら、」「でも、もう一緒にやることはできない」

最後の希望にすがるようにも聞こえる匕口卜の言葉を、真縞は残酷に遮った。
匕口卜に、そして何より自分に言い聞かせるように、真縞は言葉を並べた。
「これからも、俺が力になれることなら喜んでする。お前がソロやってくんなら裏方やるし。いつだって俺はお前の味方だよ。
 でもさ……、俺たちは長く一緒に居すぎたんだ。少し離れた方がいい」

匕口卜がぶるり、と激しく身体を震わせた。
「……なんでだよ!? なんで、俺たち離れた方がいいんだよ!?
 こんなに楽しいのに……、ロックンロールやって、あんなに最高の気分になれるのに、どうして俺たち一緒にいちゃだめなんだよ!!?」
「匕口卜………」

いっそう強くなる拘束。苦しいほどの締め付けと匕口卜の悲痛な声に、真縞は顔を歪める。

「なあ……俺を見捨てないでくれよ。 やだよ……、お前が俺をここまで引っ張ってきたんだろ…?」
「匕口卜、違う…」
「なにが違うんだよ!!……ダメだ!! 俺は、お前が離れてくなんて絶対許さねぇぞ!!」

不安がる子供のさまから、次第に狂気じみてさえきた匕口卜の自分に対する執着が、次第に真縞を追い詰めていく。

237:原人バンド唄六弦 8/8
10/03/06 00:08:48 gA9nQnCi0
落ち着け、と真縞は大きく深呼吸をした。
「――、匕口卜、離せ」
「いやだ!! お前がもういちど俺と一緒にやるって言うまで、離してなんてやらねーー!」
「いい加減にしろ、子供みたいなこと言ってんじゃねぇよ」
「うるせぇ!! お前がうんって言わないからいけないんじゃんか!!」
「――匕口卜!!」

堂々巡りの押し問答、募る苛立ち。

「なんでだよ……!? なんで俺から離れてっちゃうんだよ…、マーツーっっ!!」

そして何よりも、悲痛な匕口卜の声を聞くことの、身を切るような辛さに耐えきれず――、


「しょーがねーだろ!!?」

しまった、と思ったときには、すでに抑えてきた感情のダムが決壊していた。
真縞は叫んだ。

「だって、もう俺は、からっぽの抜け殻なんだから!!!」

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
まだ続きます、申し訳ない。
それから、新バンド結成を持ちかけたのは六弦だそうですが、
きっかけを作ったのは唄の方からだって無理に解釈しちゃってすみません…

238:風と木の名無しさん
10/03/06 12:04:59 60mQfKfn0
>>230
続きwktkで待ってます!!

239:風と木の名無しさん
10/03/06 12:42:27 DLbi1JzcO
>>230
美味だ―
続きハフハフしながら待ってます

240:風と木の名無しさん
10/03/06 14:15:37 68HGPMBC0
>>230
この2人の話をどれだけ待っていたことか…!!
いつまでだって待ちますぜ

241:原人バンド唄六弦 1/8
10/03/06 15:13:37 gA9nQnCi0
>>238>>239>>240さんありがとうございます
>>230-237の続きです

生注意


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

『真縞さんの作る曲が、だんだん匕口卜さんのと区別つかなくなってきてるような気がするんですけど』

そんな指摘で、自覚したのはいつだったか。

最初は愕然として、それから必死で否定して、それでも否定しきれず認めるしかなくて。
そして――、怖くなったのだ。
自分の世界の大部分が、匕口卜で占められているという事実に。
匕口卜という存在に飲み込まれ、“自分”が段々と無くなっていくような、そんな感覚に。

真縞は、“自分”でいたかった。
匕口卜が時に全てを委ねるような信頼をしてくれる、「自分にとって特別な存在だ」と公言してくれる、それに値するような自分でありたかった。
それなのに、気づいてしまったのだ。

「俺にはもう、なにも無い。――からっぽだ」

いつの間にか拘束は解かれ、ポカンとした顔が真縞を見上げていた。
情けなく歪んだ顔を見られるのが嫌で、真縞は両手で顔を覆い隠した。

242:原人バンド唄六弦 2/8
10/03/06 15:14:17 gA9nQnCi0
真縞にはもう何も無かった。
音楽を通して表現したいこと、主義主張。
怒りや悔しさ、虚無感、疎外感……、かつて自分の表現の源だと思っていたそれらの感情も、ギタリストとしての矜持すらも。
いまの真縞にあるのは、ただこれだけだった。

「俺はもう、お前とロックをやりたいって、それ以外のことは何一つ残ってないんだ――」

匕口卜がいればそれだけでいい

そんなことすら思ってしまう自分が心底嫌だった。
そして、これ以上、情けない男になりたくなかった。、
ただ匕口卜にすがることしかできない、何もない男には。
いつか匕口卜にも呆れられるだろう、みじめで空虚な男になり下がるのは、まっぴらご免だ。

だから、逃げるんだ。お前から。
手遅れにならないうちに。
自分の足で逃げ出すことができるうちに。
これ以上お前に溺れてしまう前に。
そうしていつか、お前に見限られてしまう、その前に。

「だから……、もう許してくれよ…。俺をお前から…、解放してくれ……」

顔を覆った手の隙間から、呻くような自分の告白が溢れ流れ出していくのを、真縞はどこか人ごとのように聞いていた。
そして祈っていた。
早く行ってくれ、と。
こんな価値のないガラクタのような俺なんか、いっそもう今すぐ見限って、ここに捨て置いてくれ。
そして、お前は変わらずに歩いていってくれ。ロックンロールの道を、わき目も振らず、ひた向きに。
それが、いまの俺にただ1つ残された誇りなんだ――、と。

243:原人バンド唄六弦 3/8
10/03/06 15:15:00 gA9nQnCi0
そのまま2人黙り込み、どのくらいの時間が経ったのか。
しかしその重苦しい沈黙は、のんびりとした匕口卜の声で破られた。


「いやー……、なんか、嬉しくて死んじゃいそうだなぁ……」


「―――!?」

匕口卜は笑っていた。
驚き見上げる真縞の前で、照れくさそうに鼻を掻いて、なんだかプロポーズとかされた気分だ、などと言いながら。

「……お前…、茶化すなよ…」
憮然として真縞は、やにさがる目の前の男の顔を睨みつけた。
「茶化してなんかないよ」
けれど、匕口卜から返ってきたのは、思いのほか強い視線だった。

「だって、俺もおんなじだもん」

俺だって、マーツーとロックンロールやりたいーって、それだけだよ。
あっけらかんと匕口卜は言った。

「他のことなんて、ホントどーでもいい。 ハハ…、すごいね、俺たちって両想いじゃん」

244:原人バンド唄六弦 4/8
10/03/06 15:15:54 gA9nQnCi0
茶化すな、とその言葉を否定するには、匕口卜の目は真剣でありすぎた。
だから真縞は、力なくでも、と言い募った。
声が掠れてしまうのは、拭いきれない不安のせいか。
それとも――、じわじわと湧きあがる喜びのせいなのか。
「でも……、そんなのはダメだろう…?」
お互いさえあればいい、だなんて、何も持っていなかった若いころよりもさらに乱暴で、傍若無人な言い分が、許されるはずもない、と。

「ダメでもいいじゃん」
こともなげに匕口卜は言う。
「ダメでどーしようもなくて、世界中の皆に怒られても、2人一緒ならきっと大丈夫。楽しいよ」
「…………」
「マーツーとロックンロールさえあれば、俺は他になにもいらない」
「………………」

それは、いろいろなものを抱えた今の自分たちには望むべくもない我儘だ。
それでも、きっぱりとそう言いきってしまう匕口卜の瞳の光の強さに、真縞はしばし見惚れた。

ヒロトは言う。

「だからさ、一緒にいよう?」

真縞の手をとり、今までみたことのないほど優しげな、慈しむような表情で真縞を見つめながら。

「2人でロックンロールやって、好きなことばーっかやって、笑いあって、ずっと一緒にいよう?」

今までに聞いたことのない、真摯な口調で。

それはまるで―――、

245:原人バンド唄六弦 5/8
10/03/06 15:16:28 gA9nQnCi0
「……お前の言ってることの方が、よっぽどプロポーズみたいじゃんか」
思わず真縞は破顔していた。
「ええ? そうかなぁ……?」
少しきまり悪そうに、匕口卜は首をかしげる。
それでも真縞を見つめ、実に嬉しそうに笑うのだ。
「やーーっと笑ったな」
「え……?」
そんなに自分は仏頂面をしていたのだろうか? 真縞が意味を掴みかねて見つめた匕口卜は、拗ねたように口を尖らせた。
「ここんとこずっと、お前の嘘笑いしか見れてなかったからさぁ」
「……………」
今度は真縞がきまり悪い思いで俯く番だった。
聡いこの男にどこまでも見透かされていたのかと思うと、恥ずかしいやら、申し訳ないやら、様子をうかがうように匕口卜を見上げると、予想に反して緊張した顔がこちらを見ていた。

それで?と匕口卜が厳粛な口調で言う。
「で、返事は…?」
「ん?」
「……プロポーズの返事だよっ!!」

「……お前なぁ…」

呆れた視線を投げるも、緊張を通り越して不安げになっている匕口卜の表情にぶつかって、真縞は苦笑する。
―自分の心の中が、この男を愛おしく思う気持ちでいっぱいになっていくのを感じながら。

246:原人バンド唄六弦 6/8
10/03/06 15:17:25 gA9nQnCi0
さっきはあんなに自信に溢れて、世界中の人間に怒られても平気だ、と言い放った男が。
自分の返答を不安な気持ちで待っているのだ。
お前に溺れそうで怖い、と先ほど告白したばかりなのに、それでもまだ不安に思っているのだ。

真縞は匕口卜の肩を軽く小突いた。

「イエス、に決まってんだろ」

悔しいけれど、もう自分は1人では上手く歩いていけそうにもない。
ヒロトと肩を組んで、支えあって、馬鹿なことをやって、ロックをやって―、そうやって生きていく他に想像がつかないのだから。
そして、それこそが自分の望んでいることなのだから――。

「一生、お前と一緒にいるよ」

言ったとたん、真縞の視界は90度回転した。

「………………!!!」
飛びかかるように抱きついてきた匕口卜と共にソファに沈む。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられる苦しさに辟易しながらも、真縞は、自分にしがみつく男の背を、子供をあやすように撫でた。
その感触が心地よいのか、くすぐったいのか、耳元で匕口卜が笑う気配。
そして、真縞の耳に押し付けられた柔らかな感触。

247:原人バンド唄六弦 7/8
10/03/06 15:18:24 gA9nQnCi0
「…………」
耳に、頬に、額に、顔中にくり返し押し付けられる匕口卜の唇を、真縞は黙って受け入れる。
なんだか大型犬にでも懐かれた気分だ、と内心で苦笑しながら。
そうして、どこまでも優しいその感触に心地よさすら感じてきた真縞が目を閉じかけた、その時だった。

「――っっ!!?」
唐突に口を口で塞がれ、驚く間もなくぬるり、と匕口卜の舌が入り込んできて。
「………ちょ、…っ」
さすがに堪りかね、真縞は頭を振って口付けから逃れると、匕口卜の身体を押しのけた。
案外あっさりと離れていった身体は、けれど悪びれた様子もなく、のろのろと起き上がる真縞を楽しげに見守っている。
その顔をしかつめらしく睨み上げながら、真縞は唾液に濡れた口を拭った。

「今のはさすがにちょっとさ………。なんなの?いったい……」
「いやぁ、なんかね、原始的な衝動がね?」
「……ね? じゃないよまったくもう…」

いたずらが成功した子供のように笑う匕口卜にいよいよ呆れて、真縞は大きなため息を吐いた。
と、同時に真縞の脳裏にひらめいたのは、あるインスピレーション。

「……………」
「わー、もうこんな時間かぁ」
すっかり日が落ちた窓の外の景色と壁にかかった時計を交互に見ながら、匕口卜が腹が減ったと騒いでいる。
「マーツー晩メシどうする? 家に帰って食べるつもりじゃなかったら、これから一緒にどっか行かない?」
「……う、ん…、どうしよっかなぁ……」
匕口卜の誘いに気もそぞろな返答をしながら、真縞は逃げていこうとする先ほどの閃きの影を追いかけた。

248:原人バンド唄六弦 8/8
10/03/06 15:19:02 gA9nQnCi0
(……原始的、か…)

捕まえてみてもまだはっきりとした形を成さないそれは、しかし心が湧きたつような楽しい色を帯びていた。
真縞は抜け殻だった自分の身体に再び音楽に対する活力がみなぎってくるのを確かに感じ、そしてつくづくと思うのだった。


どうやら匕口卜と共にあることが、今の自分の音楽表現の源らしいと。
やはり、自分は匕口卜がいなければ駄目なのだ、と。


「マーツー? どうかしたの?」
「ん…、なんでもない。 メシ、行こうか」

ソファから立ち上がり、匕口卜と目線を合わせると、ニコリと、無邪気な笑顔が返ってくる。
その安心しきった表情を見ながら、幸福な気持ちであきらめのため息をひとつ。

「俺、カレーが食べたい」
「ええーー、またぁ?」

真縞はいつもと同じように匕口卜と肩を並べ、部屋を後にした。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

この2人なら、恋愛感情すっとばしてうっかり将来を誓い合っちゃったりしてるんじゃないかって
妄想が止まらなくなってついやっちまいました…

長々と失礼しました。

249:風と木の名無しさん
10/03/06 16:07:23 XqSTSfOO0
>>248
すごく良いものを拝ませていただきました
乙でした!

250:風と木の名無しさん
10/03/06 19:07:03 x3oImHUiO
>>248
原始人ズには全然詳しくないのに差し出がましいですけど感動しました!!
良いもの読ませていただいてありがとうございました。

251:風と木の名無しさん
10/03/06 21:51:53 M33vPlNyO
>>248
gj!
もう、すごくいいものを読ませてもらった、としか言えない。
248は萌えよりの使者だ。

252:原因と結果 4/4
10/03/06 23:34:54 FLHAmES30
>>248
うわー、すごく素敵なお話を有難うございます!
文体も超好みで萌えました

253:風と木の名無しさん
10/03/06 23:36:00 FLHAmES30
すみません!
>>252の名前欄は無視して下さいorz

254:風と木の名無しさん
10/03/06 23:58:22 QOXrM2bS0
>>253
あるあるw

どんまい

255:風と木の名無しさん
10/03/07 00:43:12 Si0fW0JfO
>>248
この二人まってました…!
GJ!

256:夜明け前1/9
10/03/07 01:38:03 QPNE23G90
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの武智と伊蔵の9話後あたりの話。この2人はほのぼのっぽいが
本スレからお智恵を拝借して上司2人×武智なんかも少し有り。
そんなにエロは無いですが、痛い描写が少々あるかもなのでご注意下さい。
先生があいかわらずグルグルしてます。


霞む視界に白くくゆる煙が見えた。
日はまだ高く。それでも障子越しに差し込む光はどこか薄暗く。
鼻腔に感じるのは畳の古い井草の匂いと、狭い部屋に満ちる人いきれ。
足を抱え上げる手と肩を押さえつけてくる手は別物だった。
頭上で交わされている声がある。笑っているようにも思える。
しかしその意味までを聞きとる事は出来ない。
一方自分の口からも溢れるものがある。おそらくは無意識の悲鳴。
それは即座に肩から離れた片手が、塞ぐように押さえつけてきた。
口元に感じるその武骨な手の平の感触を、しかしそれならそれで構わないと思う。
自分とてこれ以上こんな姿を、外にいるかもしれない誰かに悟られたいとは思わない。
いずれ変わりゆくだろう己の浅ましい声色を耳にしたいとも思わない。
それくらいなら塞がれ続けている方がましだった。
視界の中で煙が揺れる。
それが組み敷かれている自分の傍ら、置かれている煙草盆の上の煙管からのもの
だと言う事を認識したのはしばらくたった後だった。

257:夜明け前2/9
10/03/07 01:39:07 QPNE23G90
傍若無人に押し開かれ、揺さぶられ、それにもはや抵抗する力も無いと見て取られると、
肩を掴んでいた男の手が不意に離された。
茫洋と開かれた視界の中で、その手が傍らの煙管を取り上げるのを見止める。
ゆっくりと運ばれた、その雁首が自分の上で微かに傾く。
火皿から零れ落ちる灰は赤いのだと知った。
その赤が肌一枚をちりりと焼く、その感覚に悲鳴がまた口をつくが、それは再び
広げられた手の平で強く抑え込まれた。
知覚した痛みに揺り戻された意識が、声を声として初めて拾う。
顔は駄目じゃ、足も土イ左まで戻る事を考えれば不憫ぜよ、ならば、
向けられる残酷な好奇の視線に、たまらずに身が竦む。
その脅えが相手を煽る事はわかっているのに、どうする事も出来ない。
案の定、頭上の声は途端喜色を帯びた。
そして告げられる。
可哀想に。愚かな門弟を持ったばかりに。それでも、
おんしの責めは免れんぞ。
先刻も告げられたその言葉が、呪詛のように深く身の内に染みてゆく。
そしてあらためて思い出す。そうだった。覚悟はしていた、最初から。
だからこの時、諦めと共に目は堅く閉じられ、胸の内には繰り返される言葉があった。
大丈夫、自分は慣れている。こんな事には慣れている。慣れている………


それでも――心は擦り切れた。

258:夜明け前3/9
10/03/07 01:40:18 QPNE23G90
瞼の裏で火花が爆ぜる。
その赤さに跳ねるように飛び起きれば、そこはまだ夜も明けきらぬ自分の部屋だった。
辺りに満ちる薄闇に、夢かと武智は深い息をつく。
しかしそうしてあらためて周囲を見渡せば、そこには広げられたままの自分の荷物の山があり、
その寒々しい光景にまたしても一つ吐息が洩れた。
昨夜の内に片付けきれなかった、江戸を去り、土イ左へと戻る仕度。
戻る事情は収次郎には話した。もっともそれは下手な嘘ではあったのだけれど。
だから一瞬いぶかしげな光を灯した彼の視線や追求を恐れ、自分は昨夜遅く、藩の中屋敷から
この世話になっていた道場に身を移すと、短い期間ながらそこに間借りをさせてもらっていた
部屋の整理に取りかかり、そしてそのまま床についた。
さすがに昨夜ばかりは藩邸に戻る気になれなかった。
おそらくは殺到するだろう皆の問い掛けに、冷静を装う余裕も気力も無かった。
それでも、逃げてばかりいる訳にはいかない事もわかっている。
日に日に冬へと向かう朝の空気は、今見た夢にうっすらと汗ばんだ肌に冷たく、
武智は布団の上に掛けていた羽織を引き寄せると、それを肩に掛けた。
まだ早い時間だが、もう一度眠る事は出来そうになかった。
だから起き上がり、着替えようとする。その時、
不意に部屋の戸の向こう、続く廊下の奥の方からなにやら騒がしい気配を感じ、武智は
手早く着物を改めると、戸を引き開けた。
騒ぎは聞き間違いではないようだった。
廊下の奥から徐々に近づいてくる乱雑な足音と入り乱れる声。
一方が制止し、一方がそれを振り払うような、そんな気配が角を曲がり現れる。
その瞬間、武智の目に飛び込んできたのはひどく取り乱した様子の伊蔵の姿だった。


259:夜明け前4/9
10/03/07 01:41:21 QPNE23G90
驚き、一瞬声も無かった自分を、見つけた彼の目が大きく見開かれる。
「武智先生!」
刹那、大きな声で叫ばれる。
それに武智は何事かと問う前にその事情を察していた。
あぁ、彼も知ったのか。
だからそんな彼を必死に押し止めようとするこの桃居の道場の門弟に、この時武智は静かに
声をかけていた。
「朝から騒がせてすまんかったな。こやつとはわしが話をするきに。」
おそらくは踏み込んできた伊蔵から自分の眠りを守ろうとしてくれたのだろう、そんな相手に
ねぎらいの言葉を与えれば、その門弟は一度複雑そうな視線を伊蔵に向けながらも塾頭であった
武智に黙って頭を下げた。
そしてその場から立ち去る。
後に残されたのは二人だけとなった。
伊蔵の息はまだ整わないようだった。それでも見上げてくる大きな瞳には苛烈なまでの激情が
浮かんでいる。だから、
「ここで騒いでは先生や先生のご家族にもご迷惑がかかる。」
部屋を間借りしている道場主への配慮を口にし、武智は伊蔵にひそりと告げた。
「外へ出よう、伊蔵。」

260:夜明け前5/9
10/03/07 01:42:23 QPNE23G90
百井道場は二つの川と合流する三十間堀の河岸にあった。
その堀沿い、藩邸の方角には背を向ける形で武智は歩く。
辺りはまだ薄暗く、道には人影も無く、そんな中伊蔵は先程の勢いはどこへやら、ただ黙って
自分の後ろを着いてきていた。
だから武智はこの時、静かに口を開く。
「国元から手紙がきたがじゃ。」
「…………」
「婆様の具合が悪うなっての。先も危ういやもしれん。せやきに、藩に帰国の許しをもろうた。」
考え、繰り返し声にし、ようやく人に告げられるようになった説明。
そして武智は伊蔵にはこうも付け加える。
「じゃが、心配せんでもええ。帰るのはわしだけじゃ。おまんと収次郎についてはそのまま
江戸に留まれるよう話はつけてある。」
元は自分の江戸修行の願い出の時に同行を許してもらった二人だ。
だが彼らは今回の自分の動向とは関係ないのだと、その立場を安心させてやろうとする。
しかしそれに伊蔵はこの時ハッと息をのんだようだった。
「わっ、わしはそんな事を気にしちゅう訳では…っ」
叫ぶ言葉が途中で詰まり、一瞬の惑いの後、地面を蹴る音が背後で聞こえる。
勢いよく自分の前に回り込んでくる、彼は自分を真正面に見据えるとこう叫びの続きを口にした。
「わしも一緒に行きますきに!」
「伊蔵?」
「先生だけを一人で帰す訳にはいかん!」
悲痛な声色でそう告げてくる、そんな伊蔵に武智は一瞬戸惑いを覚える。
が、そんな違和感は胸の内に押し隠し、今は年長者の度量で諭しを口にしようとした。
「何を言うがじゃ。帰るくらいわし一人で大丈夫じゃ。それよりおまんは、残りの滞在期間で更に
剣の腕を磨き、立派な侍に…」
「武智先生!」
ありきたりな説教は無用とばかりに、再度叫ばれる名。
いつもは自分の言う事をいっそ従順なまでに聞く、そんな彼の頑なさにこの時武智は明確に
いぶかしさを覚える。だから、
「どうかしたがか、伊蔵?」
うかがうように問う。するとそれに伊蔵は瞬間泣き出しそに表情を歪めると、クッとその顔を伏せた。


261:夜明け前6/9
10/03/07 01:43:27 QPNE23G90
「……の…せいじゃ…」
「……………」
「わしが…涼真を頼ったきに…先生が……」
ぽつぽつと落とされる、その呟きに武智はハッとする。
彼の言おうとしている事。それは彼が真相を知っているとは思えないが、それでも今回の一連の事の
顛末の本質を少なからず突いていた。
数日前に起きた、自らの門弟が引き起こした不始末。
夜道で拾った商家所有の舶来時計を質屋へ持ち込み、盗品と見抜かれ、奉行所へ訴え出られた。
その処分は上司から自分に任された。そしてそれに自分は切腹を申しつけた。
けれどそれに涼真は抗い、自ら動き、商家に訴えを取り下げさせると自分に情状酌量を願った。
しかし……自分はそれに応えられなかった。
切腹は予告した通り、日の出と共に。
しかしその朝を待たず、その門弟は夜の明ける前、姿を眩ました。
証拠は無い。痕跡も無い。しかしその手引きをしたのが涼真だろう事は自分には察しがついていた。
そしてそれを心のどこかでほっと安堵している自分がいる事も事実だった。
罪を犯したとは言え、自分を慕ってくれた教え子であり仲間でもあった者だ。
許してはやりたかった。助けてもやりたかった。
だが同時に、そう思ってしまう自分自身の弱さが、許せなくもあった。
自分一人だけならば、なりふり構わぬ事も出来たかもしれない。
しかし今の自分には背負う物がありすぎた。
唱えたい主張がある。国の行く末を想う理想もある。それに共鳴してくれる仲間もいる。
しかしそれらの事を成すには、藩内で連綿と続く身分差はあまりに大きな弊害で、それを改めさせようと
思えば、まず取り掛かれる事は下司全体の規律を正し地位向上を図る事くらいだった。
侮られぬよう、隙を作り見下されぬよう、必ず自分達の存在を認めさせる。
そう皆に触れを出した、これはその直後に起こった事件だった。
だから見逃してやる訳にはいかなかった。
彼一人への情と仲間全員に対する責。
それは自分の立場では、秤にかけてもいけない事だった。
なのに……揺れた。自分の弱さ、それは自分だけの罪だった。だから、
「涼真は…関係ないきに。」
後悔の念を口にする伊蔵に静かに語りかける。
しかしそれにも伊蔵は首を激しく横に振った。

262:夜明け前7/9
10/03/07 01:44:31 QPNE23G90
「せやきに、わしが涼真を呼んで、事を大きくして、それで少しでも希望を持たせてしもうたから
あいつは逃げ出すような事しでかして……そのせいで武智先生が…」
訴える主張は、やはり少し的を外している。
けれど今回の事で自分に累が及んだ、それを察しているらしい伊蔵の勘の良さに武智は少しの驚きを抱く。
まだ子供だと思っていた。
素直で、幼く、導いてやらねばならないとばかり思っていた。そんな彼が今、自分の事を慮って
悔恨を口にする。
だがそれを武智はやはり無用だと思った。
あの者が逃げようと逃げまいと、処罰がされようとされまいと、どのみち、自分の責任は
多かれ少なかれ免れはしなかった。だから、
「おまんは、何も気に病まんでええ。」
本心からそう告げる。けれどそれに伊蔵は納得を見せなかった。
「武智先生!」
責めるように縋るように名を呼び、その手を伸ばしてくる。そして掴まれた二の腕。
指が着物越しに強く肌に食い込む。その瞬間、武市は肘の内側に走ったひりつくような痛みに
思わず顔を歪めていた。
「……つっ…」
口の端からも噛み殺せなかった声が洩れる。それに伊蔵は慌てたようにバッとその手を離してきた。
「すっ、すいません!」
自分の手と武智を交互に忙しなく見やり、うろたえる。
それに武智は腕の痛みが治まるのを待って、一度深く息を吐いた。
そしてゆっくり顔を上げる。と、そこには堀沿いに営まれている茶店の、軒先に寄せられた腰掛けが
あるのが目に止まった。
「少し、座るかえ?伊蔵。」
言い、返事を待たずに踵を返す。
そして無意識に肘を庇うように腰を下ろし視線を上げれば、そこにはまだ尚困惑したように
道の真ん中に立ち尽くす伊蔵の姿があった。
途方に暮れたような、そんな頼りなげな様子に思わず苦笑めいた笑みが唇に浮かぶ。
だからそれを開いて、
「来いや。」
もう一度呼び寄せれば、それに伊蔵はようやくおずおずと歩を進めると、指示された武智の横へ
その腰を下ろしてきた。

263:夜明け前8/9
10/03/07 01:45:36 QPNE23G90
身長の差から見下ろす形になる、その肩越しに言葉をかける。
「少し前に痛めての。別におまえのせいやないきに。」
繰り返す、それは今回の事も、腕の痛みも。
思いながらもう一度触れる場所。
着物越しに確かめる。そこにあるのは、癒えきっていない火傷の跡だった。
処罰者の逃亡を許した、その申し開きをする為に訪れた上司の部屋で施された、それは罰と言うよりは
ただの嫌がらせだった。
普段の姿では気付かれる事の無い。しかしわずかでも腕を晒す機会があれば余人に見咎められるだろう
位置につけられた所有の印。
おそらく彼らにとって自分はもともと目障りな存在であったのだろう。
下司の分際でありながら、藩士らが多く通う百井の道場で塾頭に任じられた。
だから今回の騒動は、自分を痛めつける良い材料だったのだ。
身に加えられた私情交じりの制裁。
しかしそれに自分が何を言えるか。
いや、むしろこれは僥倖と捉えるべきであったかもしれない。
本来なら下司全体に及んだかもしれない処断が、目先の欲にかられた彼らによって己一人に向けられたのだから。
それでも、事が済んだ後に告げられた処罰。
江戸を辞しての土イ左戻り。
責の罪状としては軽いものだったのかもしれないと受け止めながらも。
それでも……心はさすがに軋んだ。
知らずため息が漏れてしまいそうになる。しかしそれを意識して殺した武智の隣り、この時
膝に置かれた伊蔵の拳を握った手の甲に落ちる何かがあった。
いぶかしく思い、視線で追う。
うつむいた伊蔵の顔から落ちる、それは彼の涙のようだった。
頑是ない子供のように小刻みに肩を震わせて泣く、その姿に武智はつい先程成長したと思ったのに、と
不意におかしくなる。だから、
「顔を上げや、伊蔵。」
優しく命じて、しかしそれに伊蔵は首を横に振れば、今度は手を伸ばして。
頬を包むようにしてこちらに顔を上げさせれば、そこには止めどなく涙を溢れさせる大きな瞳があった。
触れた彼の、自分の為に流される涙は温かかった。
そしてそれを温かいと感じられる自分が少し不思議だった。

264:夜明け前9/9
10/03/07 01:46:58 QPNE23G90
身に受けた痛みと共に擦り切れると思った。
一輪の花を愛でる事の出来る人ではないかと指摘をされれば、疼き苦しかった。
繰り返され、積み重なっていく苦痛にいっそ無くなってしまえば楽になれるかもしれないとさえ
思った心が、しかし今触れた温かさを飢えたように求めているのがわかる。
それは自分の弱さだった。戒めなければならない。けれど、
「そんなふうに、泣かんでもええ。」
二人以外誰もいないこの場だけは今少しの間、許して欲しかった。
「わしなら大丈夫じゃ。せやきに、おまんはおまんでここで頑張ればええ。剣の腕を磨いて、
見聞を広めて、そして土イ左に戻ったら、その時はわしにまた力を貸してくれ。」
「……………」
「それを誓うてくれる事が、何よりの旅の手向けになるがぜよ。」
教え諭すように。告げたその言葉に伊蔵は頬を取られたままこの時何度も頷きを見せた。
懸命なその稚い所作に、やはり笑みが誘われる。
だから濡れる頬を指の腹で拭ってやれば、それに伊蔵はすいませんと自ら袖でそれを拭く素振りを見せた。
だからゆっくりと手を離し、見下ろす。その肩に武智はこの時、ふらりとその額を寄せていた。
「…武智先生っ?」
驚いたような伊蔵の声が耳に届く。けれどそれにも伏せた顔は動かさなかった。
「おまんの肩の高さはちょうどええ。」
「……は…い…」
「このところ、ちっくと眠りが浅くての。せやきに……」
ほんの少しだけ……
身の重さを少しだけ預ける、その胸に誓う想いがある。
支えを乞うのはこれで最後にする。約束を、するから……
辺りに人影は無く、音も無く、そんな中でただ二人、息をひそめて寄り添う。
夜が明ける前の闇は一際暗い。
それでも彼のこの温もりを覚えてさえいれば、自分は今しばしその中で耐えられる気がした。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
白先生とお花イゾー、書けるうちに書いておく。
本スレ姐さん達、いつも素敵な妄想ありがとうございます。煙管ネタ萌えました。

265:架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠1/4
10/03/07 02:13:07 jzerBC4SO
架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
延々規制中につき携帯より失礼します。


今日はずっとトロンとした目でボーッとしている。
かと思えばたまに盛大な溜息。
その溜息ですらなんだかいい声だ。
せっせと機材を運び込む俺達を手伝う気配もない。
まぁもうこれで終わりだからいいですけどね。
「ヒラ/サワさん、これで終わりますけど、何か飲みますか?」
声をかければこちらを見るが、返事は無い。
「相当お疲れですね…素敵でした、昨日のライブ。」
あ、また溜息。
こんなヒラ/サワさんは珍しい。
というか、初めて見た。
最近新しいファンがたくさん増えて、昨日最終日を迎えた3日間のライブは全日満員御礼だった。
昨今では平日なんか当日券はあたりまえ、休日でも広い会場では後ろはガラガラだったのに。
ヒラ/サワさん自体は何も変わっていない。
ただ、多くの人が彼を知る機会があっただけだ。
人が多ければお客さんのノリも変わるもので。
人の期待にはできる限り応えてしまう性格のヒラ/サワさんはそのノリに合わせて無茶をして相当疲れたようだ。
「…なんか、恥ずかしい」
お、やっと喋った。恥ずかしい?あら、まぁ…。
「なんか…翻弄されたっていうか…燃え尽きちゃった」
翻弄…?
「MCでもない所で休憩とかしちゃったし。私とした事が。不覚。くそ。」

266:架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠2/4
10/03/07 02:15:04 jzerBC4SO
ええ、ええ。
あれはかわいかったですよ。
萌えられてもしょうがないと思います。
「燃え尽きるなんて恥ずかしい…」
また。恥ずかしがるヒラ/サワさんなんて滅多にお目にかかれない。
ちょっとじっくり見たい代物だ。
「私の方が優位に立ってないと、ヤだ。」
ヤだ、ねぇ。
「見下ろしてあすんでいたい。」
はい知ってますよもちろん。
ていうかお客さんは誰も自分があなたより優位に立ってるとは思ってないでしょうけど。

でも…そんな上からのヒラ/サワさんだからこそねじ伏せてみたい、と思ってる人が、何人かは居るだろうな。
少なくとも俺は。
「つまりこういうことですか。」
ぼんやりした目がこちらを向いてからゆっくり話す。
「からかって遊んでたら、逆に襲われて、いっぱい喘がされてイッちゃったみたいな感じですか。」
あ、睨まれた。
「下品。」
「だってなんかそんな感じなんですもん。」
そんな風に睨まれると余計に…くる。
抗いがたい色気があるんだよなぁ。
なんでだろう。あなたの何がそうさせるんだ。俺は男だしあなたはもう50過ぎた中年だ。
なのにその色気と、かわいらしさはなんだ。
耐えがたい魅力がある。そそられるんですよどうしようもなく。
あ、だから溜息やめてください。漏れているのは息だけじゃないんです。
「あいつら。馬の/骨め。くそ。」
あらら。ほんっと珍しい。
まずいなぁ。ほんとに欲情しちゃうな。
きっと喘ぎ声もいい声なんだろうなーとか…想像した事もあるんですよ。
…鳴かせてみたい。

267:架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠3/4
10/03/07 02:16:26 jzerBC4SO
これから先も一緒に仕事するんだから変な事なんかできるわけないのに、
こんなかわいらしいヒラ/サワさんを放っておくのは…惜しい。
「ヒラ/サワさんて…」
ああもう、たまらない。
「…Uターン/通勤とかしてるくらいだから、やっぱり腹筋とかすごいんでしょうね。」

突然の話題変換に怪しんだのか、眉間に皺が寄る。
…ごめんなさい。ちょっとだけ。
ヒラ/サワさんの座っている椅子の肘かけを押さえると、ものすごい不機嫌な顔になった。
逃げ場を失ったヒラ/サワさんがギロリと睨みあげてくる。
「…何をする」
「何もしません。」
怒ってるなぁ…ぺろりと黒タートルの裾をめくった。
あ、やっぱり腹筋すごい。
ヒラ/サワさんの手が俺の手を掴む。
「この、変態」
「何もしません。」
「してる!」
もうやめなきゃ。止まらなかったらどうしよう。
なんて、考えてたら。
第三の手が俺の手首を掴んだ。
…そうだ、こいつがいたの忘れてた。一緒に機材搬入してたんだった。
「はい、離す。」
松/村。
いい所だったのに、とは思うが。止めてくれてありがとう。

268:架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠4/4
10/03/07 02:17:47 jzerBC4SO
「…じゃ、ヒラ/サワさん、とりあえず全部奥の部屋に入れちゃいましたんで。俺ら帰ります。」
ヒラ/サワさんの手がゆるゆると伸びる。
その手が弱々しく松/村の服の裾を掴み、少しひっぱった。
あーあー。そうですかそうですか。
松/村はヒラ/サワさんのお気に入りだ。
「なんですか?」
「帰れ帰れ。」
「じゃ、服離してください。」
「一人にしてくれ。」
「だから、」
松/村だったらどこまでOKなのかなぁ。
松/村がふぅと息を吐いた。お前が溜息なんかついてもなんにもエロくないのに。
「おい、俺はもう少し残るからお前は帰れ。」
「ずるくない?」
「お前ヒラ/サワさんに変な事しようとするから駄目。」
お前はしないのかよ。
しないのか。
変な事しない上に機材にめちゃくちゃ詳しいから気に入られてんのか。
はぁ。帰って俺も勉強しよう。

ヒラ/サワさんと松/村を残し、俺はつくば/山頂を後にした。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
前回も感想ありがとうございました。
読んでくださってありがとうございました。

269:風と木の名無しさん
10/03/07 14:45:39 vN3zxRSSO
>>248
姐さんネ申です
また、二人のチャイチャイな文章拝見したいですね…!
ありがとうございました!

270:風と木の名無しさん
10/03/07 16:57:15 uwmrI6Io0
>>265
まさかこんな可愛い師匠をここで見られると思いませんでした
ごちそうさま!その後の二人とか考えると禿げそうだ…

271:風と木の名無しさん
10/03/07 17:47:39 sZjburi/0
>>256
姐さん、ありがとう。ほんっとにありがとう
冒頭wktkから一転切なくてたまんないよー(/_;)

あと少しでhi放送。どうしよう平常心で居られない・・・

272:風と木の名無しさん
10/03/07 19:15:56 ugUMRxCZO
>>265
スタッフの独白に全力で同意しました!そしてまさかの松/村さんw
暴力()技師といい守りは固そうだけど、スタッフ頑張れ。超頑張れ。
続き楽しみにしてます!

273:風と木の名無しさん
10/03/07 22:31:02 6gfnZKrl0
>>256
おあああ萌えた!やられました。
なんて効果的に「慣れている」をお使いなさるか。
本編を補いつつスレの萌えをちりばめつつこの完成度。
姐さんは天才!

274:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(1/7)
10/03/07 22:54:38 Jiy22rZg0
サンノベ「シブヤ」の印刷屋×ライター、おまけ程度にバナナ刑事×研究者
バッドエンド埋め記念にやってやった

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ START.      | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

シティホテルのエレベーターに乗り込みながら、片/山は何故自分がここにいるのかを思い返した。
今日は土曜日。仕事は休みである。
大手印刷会社の営業ともなれば、週休2日など都市伝説かのような多忙を極めるが、片/山は労働者の権利を放棄したりはしない。
否、自分に忠実に仕事をしていれば休みは勝手に向こうからやってくる。
今日は、午前中にフィットネスクラブで汗を流した後、行き付けの喫茶店で自分の担当する雑誌を眺めながらコーヒーを飲み、
夜はズワイガニとアスパラの冷製パスタとワインで胃を満たす、そういう予定だった。全て秒単位で組み立てられている。
―予想外の人物からの電話さえなければ、彼はシティホテルになど足を踏み入れることもなかった。
指定された14階、1421号室のインターフォンを押す。5秒待ってドアが開かなかったら、元の予定に戻ろう。1、2、3…
きっかり5秒後に扉は開き、中から片/山を呼び出した御/法/川が顔を覗かせた。んっ、と無表情で片/山と目を合わせ、入室を促す。
言いたいことは多々あるが、ここで口論になってはならない。ホテルの廊下は公共の場所。これ、社会の常識。


275:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(2/7)
10/03/07 22:56:11 Jiy22rZg0
背後でドアのオートロックが作動する音を聞いて、片/山は口を開いた。
「随分と遅かったな」
開いた口は御/法/川の理不尽な言葉に、真一文字に閉められる。
携帯電話が鳴ったのは、片/山がフィットネスクラブを出た時だった。
通話ボタンを押してみれば、ホテルの名前と部屋番号、そして今すぐ来い、という一方的すぎる要求がまくしたてられ、あっという間もなく切れた。
「君の電話から今まで経過した時間は18分23秒。別段遅いと指摘されるほどではない」
片/山がきっぱりと告げれば、御/法/川が振り返った。にぃ、と満足気な笑みを浮かべている。
「だが、来たことは誉めてやる!」
ビシィ、と片/山を鋭く指差した。指差された方は、呆れるように息を吐く。
「それで、呼び出した理由をどうぞ」
冷静な対応に御/法/川は拍子抜けするも、すぐに気を取り直して、鞄をごそごそと探る。
「これだ、これを飲めっ」
片/山に突き付けられたのは、小さな茶色い瓶だ。中の錠剤が跳ねて、チャッと音を立てた。
「嫌ですね」
即答した。ラベルも何もないのだ。正規の薬とは思えない。
「まぁ、少し話を聞け」
何の説明もしなかったのはそっちだろうにと思いつつ、片/山は一人掛けの椅子に腰を下ろした。もう一つの椅子には荷物をどさりと置いてやった。
御/法/川は自分の席を荷物に占拠されてしばらく逡巡していたが、片/山の正面に位置するため仕方なさそうにダブルベッドに座る。


276:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(3/7)
10/03/07 22:57:56 Jiy22rZg0
「これは、とある科学者が作った薬だ。人体に悪影響のある材料は入っていない。だから、飲め」
「嫌です」
またもや即答。
「…が、せめてどのような効果があるのかぐらいは教えて欲しいですね」
御/法/川の言葉に嘘はない。嘘を吐くことのない男だと、片/山も十分に理解していたが故の最大限の譲歩。
「それは教えられん!」
そこまで分かっていても、返答は理解の範疇を超えていた。
「先入観があると、効果のほどに影響があるかもしれないからな」
と言われ、そうですかそれじゃあ飲んでみましょうか、となる人間がどこにいるのだろう。
片/山が立ち上がると、御/法/川は慌てて手首を掴んできた。
「いいか、この薬が完成すれば全世界の10億…いや20億という人間を助けることが出来るんだ」
御/法/川が上目遣いながらも真っ直ぐな視線を両眼に向けてくる。
人の目を見て話す。これ、社会の常識…なのに、それすらも出来ない人間がどれだけいることか。
「俺は御/法/川/実だぞ。俺を信じろ」
先に目線を外したのは、片/山の方だった。悔しいかな、御/法/川は奇抜な男でありながら、信じるに値する男でもあった。
「なら、騙されてみましょうか」
片/山は再び椅子に座り直すと、手のひらを差し出した。
「騙すだなんて人聞きの悪いこと言うなよ。だが安心しろ、何があっても今日のことは記事にはしない。記事にするのは薬が完成してからだ」
御/法/川は冗談まじりの口調で宣言すると、瓶を傾けた。
1回2錠。水なしで噛み砕く。
「まぁ、何かあったらこの俺が責任とってやろう!」
「ええ、約束ですよ?」
当然だ、と御/法/川が力強く頷くのを確認すると、片/山は何の変哲もない白い錠剤を口に含んだ。


277:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(4/7)
10/03/07 22:58:57 Jiy22rZg0

「うーむ、見たところ何も変化はない、な」
手帳に効果を如実に記そうとしていた万年筆は、出番がなくて寂しそうだ。
「10分経過。そろそろ何の薬か教えていただけます?」
10分で効いてくる、とウイルス研究の権威は言っていた。
喫茶店に呼び出され、どうしても会社に内緒で薬の効果を試したい、君しか頼める人がいないんだ、と。
「『素直になる薬』だそうだ」
御/法/川は、喫茶店で説明されたそのままを伝えた。
曰く、ウイルスを参考にし、一点の目的を達成するための行動力を増大させる。
ウイルスと違うのは、目的が人間らしく好意を基としたものに特定される。すなわち、
「言いたい、でも言えない。嫌われたらどうしよう…裏腹な乙女心解消薬ってところか」
御/法/川はつぶやき、何の成果も得られそうもないことに憮然としてベッドに寝転んだ。
それから、はたと気付く。
『好意』を忘れていた。大事な要素だったのに。素直になるという効果に興味を持ちすぎてしまっていた。
自分で試してみようと御/法/川は思わなかった。だって自分はいつだって素直だから。
千/晶で試してやろうとしたが、先に素直になる薬と説明してしまったために全力で拒否された。
その時に千/晶から、片/山さんに飲ませてみたらどうですか?という提案が出たのだ。
あの冷静沈着な気に食わない男が素直になる…純粋に見てみたかった。
だが、それも叶わないことだと分かった。好意を持った相手が目の前に居なければ意味がない。
文字通りお手上げだと言わんばかりに御/法/川は両腕を伸ばした。凝った肩にじんわりと痺れが走るのが心地いい。


278:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(5/7)
10/03/07 23:00:53 Jiy22rZg0
「ところで」
平板な声が上から降ってきた。同時に、御/法/川に影が下りる。
「責任をとっていただきましょう。約束は守る。これ、社会の常識…以前に、人間の常識」
片/山がベッドに膝をつき、両腕をがっちりと押さえ込んできた。あまりにも突飛な行動に、御/法/川は目を丸くする。
何なんだこれは、まさか薬が効いているとでもいうのか!?
「はぁ!?…いや、待て待て待て待てぇっ!何のつもりだ、これは!?」
っていうか、効いていたとしたら、それはそれで問題なわけで。だって好意が、ほら、ね?
声を荒げつつ、抵抗を試みる。
しかし体力自慢といっても、御/法/川は取材で走り回るだけの不規則な生活をしているのに対し、片/山は週3回のフィットネスクラブ通いを続け、食事もバランスの取れたもの。
結果。びくともしない。
あれよという間に腹に体重を乗せられ、足での抵抗も封じられてしまった。力が入らない。
「何のつもり?この状態で責任をとると行ったら、一つしかないでしょう」
『一つ』の具体的な内容が頭に浮かんで、背中に冷や汗が染みだしてくる。
嫌だ、嘘だ、待て、冗談じゃない、様々な制止を求める言葉が浮かんだが、全て重なってきた片/山の口の中に消えていった。


279:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(6/7)
10/03/07 23:01:33 Jiy22rZg0

日曜日。爽やかな朝の8時。
大/沢は自室でそわそわと落ち着きなく、携帯電話を手にしていた。
早く効果が知りたい。あの薬に効き目があったのか知りたい。託した相手は、土曜日に実験するから待っていろ、と言っていた。
日付は変わった。知りたい、早く知りたい。
大/沢はついに待ちきれず、発信ボタンを押した。コール音が鳴る。なかなか出ない。いつもなら3回で出るのに。
『はい』
出たら出たで、明らかに御/法/川ではない人物の声だった。
「えっ、あ、あなたは?」
『人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗る。これ、社会の常識』
いやに失礼な男だなと思うが、大/沢は戸惑いがちに名前を告げた。相手の返答はない。代わりに、
『こらぁ、勝手に人の電話に出るなっ!』
と電話口から離れた場所で持ち主の声がした。ビシィ、と指を差している姿が容易に想像出来る。
『もしもし、大/沢さんか?』
御/法/川の声は掠れており覇気に欠けていた。
「ああ、今の人は…いや、薬はどうだった?」
『あんた、何てもんを作ってくれたんだ!』
覇気が復活した。
『あれのおかげで酷い目に―うわっ!…ちょっと待て、乗るなっ!こっちは電話が―』
がさごそと布擦れの音と御/法/川の悲鳴にも似た声が聞こえたかと思えば、前触れもなく通話が切れた。
大/沢はしばらく呆然と携帯電話を見つめていたが、ため息を吐いて机に置いた。
酷い目にあった、と彼は言っていた。いや、ひょっとしたら今も…大/沢は責任を感じて頭を抱える。


280:ヨン二ハチ 印刷屋×ライター(7/7)
10/03/07 23:03:46 Jiy22rZg0
「大/沢さん、朝食が出来ましたよ―おや、どうしました?」
振り返ると、開いた扉のところに梶/原が立っていた。エプロン姿である。
「いや、何でもない」
首を振り、部屋を出ようとすると梶/原がススッと歩を進めた。
「大/沢さん、我々の間に隠し事は無しですよ」
眼前に顔を突き合わせられ、思わず息を飲む。近い、近すぎる。
「今の電話の相手は?薬って何でしょう?」
何とか白を切ろうとしたが、刑事である梶/原には勝てない。大/沢は、洗いざらい喋らされた。
「なんだ、そんなことだったんですか」
「そんなこととは何だ。私にとっては死活問題だぞ」
梶/原のホッとしたような笑顔が癪に障った。そもそも、私は君に感謝の気持ちが伝えたくて―
「大沢さんは、いつだって素直です」
すっ、と梶/原が頬に手を添えてきた。体中の血液が心臓と顔に集まったかのように熱くなる。
「ほら、すぐに顔が赤くなって。そういうところも好きですよ」
梶/原にそう言われ、大/沢はあっさりと好きな人に素直になれる薬(御/法/川命名・裏腹な乙女心解消薬)の開発を中止した。作る必要は始めから無かったようだ。

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ○○吉ストーリーヤッテクル
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

281:暮句本工事とオレ 1
10/03/08 01:16:11 DZK/sDF7O
喜乃下部長と僕の比位済×暮句本のビデオだってさ


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

AM7:00、俺は上機嫌でビルの玄関を跨いだ。
「暮句本の奴、ちゃんと働いてるかな♪っと」

前日の俺と粕賀さんのやりとりによって、倉庫整理の業務を早出で行う事になった暮句本。
昨晩のシミュレーションは完璧だ。

三時間の間に一人であの荒れた倉庫整理は集中も持たないだろう。
途方にくれる奴の前に現れる俺。普段はいけ好かない態度の俺が見せる優しさ。
いわゆるギャップってやつだ。
暮句本の気持を激しく揺さぶる事は確実。一歩前進。

あわよくば、手に触れてもいいかもしれない。
奴のあの細い目がハート型のおめめになるのも時間の問題。



282:暮句本工事とオレ 2
10/03/08 01:17:01 DZK/sDF7O
ぶんぶんと鞄を回すようにして歩きながら、完璧な妄想にくふふと笑う。
浮かれ気分で倉庫のあるフロアに着いて、一回深呼吸。

足音をたてないように倉庫に近づくと暮句本と粕賀さんの声が聞こえる。

「―暮句本が倉庫整理が好きだからって言ってたわよ」

って、えええぇぇぇぇ、おいおいおいおい。
そこばらしたら意味ねぇだろ。使えねーぞ粕賀の局!

とりあえず作戦会議だ。便所だ便所。



283:暮句本工事とオレ 3
10/03/08 01:17:38 DZK/sDF7O
お便器様に腰を落ち着け、一回深呼吸。
「うーん。このままじゃ悪者だ」
ハート型のおめめどころか、すわっちゃうよ俺を見る目。
カラカラカラ
なんにせよ、悪者のままは避けねばならん。
カラカラカラカラ
「やっぱお前一人じゃ始業に間に合わねーと思って、来てやった」
あいつの掲げた書類を奪い取って、この台詞。うんクール。
カラカラカラ
あぁ、暮句本よ可愛すぎるよ罪な奴
俳句も完成したところでって、「なんだこれは!」
盛大にトイレットペーパーがオンザ膝。
仕方ない、尻でも拭うか。
べ、別に必要だから拭いてるんじゃないんだからね!仕方なくだよ仕方なく!

豪快に大レバー捻って個室を飛び出す。
ちゃんと手も洗おうね。あいつに触れても良いように。



284:暮句本工事とオレ 4
10/03/08 01:18:57 DZK/sDF7O
すたすたすたザザー

hey暮句本!
え?
あれはえーっとお岩さん?否違う、お清さんか
なんでお清さんが暮句本の目の前に?

「はい、暮句本くん」
資料の束を渡すお清嬢を見る暮句本の目!なんだあの蕩けるような眼差しは!


ゆ、夢だ
これは夢だ、悪夢だ

こんな早朝から、暮句本の為に出社なんて俺以外にいる筈がない!



285:暮句本工事とオレ 5
10/03/08 01:20:08 DZK/sDF7O
********

話は去年の3月に遡る。
グループ面接。五人対面接官。俺以外の学生はどいつもこいつも腑抜け顔に緊張を張り付かせて面接官の問に答えている。
もっとまともな返しは出来ないのかと、後からどついてやりたくなる。
その中でも飛び抜けて平々凡々な答えしかしないのが、暮句本。奴だった。
お前は面接対策マニュアルか!と、どんな奴かとそいつの方に目をやった。
俺は瞬間、凍りついた。

な、なんたる平均値!

ふにゃりとした顔も、佇まいも、胸に付けた名札に書いてある学校名も、全てが平凡。
マニュアル通りの回答が、全て真実に見える!

瞬間、俺の脳裏を家のPCに保存されていた、妹作であろう俺様×平凡のやまなしおちなしいみなしストーリーがかけめぐった。


きっと奴は、内定式に現れるだろう。
斬新でありながらも、万人に受ける物が必要とされる広告業界。
完璧な平均データのあいつを欲しがらない訳がない。

そして俺は誓った。

俺はこの就職戦線を勝ち抜き、内定式までに立派な俺様になる事を。
妹の俺様×平凡に勝る、萌えキュンストーリーを実践するために。

********

286:暮句本工事とオレ ラスト
10/03/08 01:22:26 DZK/sDF7O
「そいつは!暮句本は!俺様が先に見つけたんだ!誰にもやらないぞ!宣戦布告だお清嬢!」

俺は暮句本と良い雰囲気になってるお清嬢にバシりと言いつけて、その場を駆け出した。
誰かに聞かれたら、恥ずかしいので極々小さな声で!




「やまなしおちなしいみなしストーリーには、当て馬が必要なんだ。当て馬だ、ざまーみろお清嬢。待ってろよ暮句本工事!」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


比位済が変態ですみません

287:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 1/8
10/03/08 01:55:58 UlBvNCz00
方角 オフィス・八月 耶麻崎昌良×須加鹿男(と隙間がちょっと)

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

オフィス・八月には、犬が二匹いる。
犬の大きさは似たようなもので、それなりに大型犬。それぞれにちゃんと飼い主がいるのも同じ。
一匹は飼い主に真っ直ぐに愛情を向けていて、もう一匹は今で言う所のツンデレだけれど。
ボーカリストの癖に煙草が好きでお酒が好きなのも一緒。声質も音域もよく似ている。
オフィス・八月には、犬が二匹いるのだ。
 
今日に限ってという訳でもないけれど、オフィスでは犬が二匹雁首を揃えていた。  
「そーいや小耳に挟んだんやけどさぁ、」
という自分に投げられたらしい昌良の一言に、時田を待っていたO端が振り返った。
昌良はマネージャーのデスクに頬杖を突きながらO端を眺めている。口調に含む所もなく、ただの
世間話でもするような調子で続けた。
「この前の打ち上げで、鹿男ちゃんにちゅーしたってホンマ?」
酒が入った時のO端の変身ぶりは昌良も知っている。故に聞いた時に、百パーセント事実だろうと
思ったのだけれど、一応確認を取っておかねばならない。対鹿男対策のカードの一枚に加えるには、
事実確認が必須なのだ。
「あぁ、したような覚えもちらっと。」
誤魔化さねばならないような疚しい気持ちはこれっぽっちもないO端は、酒の所為で途切れた
記憶の糸を辿りながら答える。
昌良は律儀にも真面目に思い出そうとしてくれるO端が微笑ましくて笑いながら問うた。
「怒られた?」
「呆れられました。怒ったのはどっちかっていうと、」
ちらっと背後を気にするようにO端が視線で指す。その先には後姿のアフロがいるものだから、
昌良は納得した。時田とO端の関係は飼い主と犬だが、どちらかというと犬が飼い主を
振り回している関係だ。
自分達とは、そこが決定的に違う。

288:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 2/8
10/03/08 01:56:34 UlBvNCz00
「なる程なぁ。悋気強い相方持つと大変やのぉ。」
「まぁ、ガチで無視しますけどね。」
「新太も大変やな。両方大変でお似合いっちゅーか。」
「いやいや、耶麻さんには負けますよ。」
「やかましいわ。でも、えぇネタ仕込んだわ。ふははは、待っとれや、鹿男ちゃん! 
これネタにして、めっちゃ絡んだるからなっ。」
これで確証は取れたと昌良は思わず高笑いをして握り拳を掲げた。
そのテンションの上がり具合にO端は付いていけずに、本人曰く『象っぽいつぶらな』瞳を
ぱちくりと見開いている。
「耶麻の凄い所は、」
嫌でも耳に入ってくる馬鹿男二人の会話を聞くとはなしに聞いていた今日子が、呆れたように言った。
「鹿男君へのそのテンションを、十年年近く維持している所よね。継続は力ってよく言ったもんだわ。」
「だって好きやねんもん。」
「はいはい。」
「すでに姫も相手にしてくれへん。」
ソファーによよと泣き崩れる真似をする昌良を放置して、今日子は差し入れで貰った菓子をO端に
進めながら苦笑する。
「琢也も、耶麻のこのテンションは見習わない方がいいよ。」
「それは新太に言って下さい。」
「それもそうね。」
耶麻先ほどテンション高くは語らないものの、愛情垂れ流し具合は似たようなものな時田が、
噂されているとは知らずに大きなくしゃみをした。


ふらりと立ち寄っただけの昌良の部屋。
ドアを閉めた昌良が呟いた『飛んで火に入る夏の虫』の故事を問いただす暇もなく、鹿男は
リビングに連行されていた。
一応おもてなしに珈琲は振舞われていたが、いつもなら自分は構わず缶ビールでも開ける昌良が、
今日は鹿男に付き合ってか珈琲をすすっている。正直言って不気味な状況だ。

289:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 3/8
10/03/08 01:57:10 UlBvNCz00
それでもお互いの近況なんかを語らいながら、マグカップ一杯分を飲み干すだけの時間が流れると、
醸し出されるいつもの空気に鹿男は昌良の言葉を忘れかけていた。
その隙を狙って、ふと思い出すように昌良が言った。
「あぁ、そうや。」
「ん、」
「ちょぉ、ごめんな。」
言うが早いか昌良は鹿男のサングラスのテンブルに手をかけると、さっと引き抜いた。
いきなりの早業に鹿男は対応出来ない。 
昌良はうっかり壊さないようにと、鹿男から手の届かない離れたテーブルにサングラスを
置いてしまった。
直で見てしまった蛍光灯が眩しくて、鹿男は二三度瞬きを繰り返す。自然と目が眇められて
睨む様な形になる。
「と、言う訳でして。」
「どういう訳だよ。」
「琢也にちゅーされたん?」
突然の先制攻撃に続いて、またも効果的に昌良は己のペースに鹿男を巻き込んだ。
一瞬何を言われているのか分からないで、鹿男はきょとんと昌良を見返したけれど、
先日の打ち上げの席での出来事を指しているのだと思い当たる。
隠す理由も無いけれど、どこかなんとなく後ろめたいような気持ちになるのはどうしてか。
鹿男は小さな声で返した。
「……されました。」
「上手かった?」
「上手いもなんも、一瞬だったし。新太が羽交い絞めして引き離したから。」
何の言い訳だこれは、と鹿男は冷静に考える。責めるでもなく昌良は鹿男の前に座って、
五センチ程高い背を丸めるようにして器用に作った上目遣いで見上げてくる。
分かりやすくむくれて昌良が言った。
「やっぱしたんや。鹿男ちゃんは俺のやのにぃ。」
「そんな事言いつつも、お前もあんま怒ってないじゃん。」
映画二本ドラマ一本その他いくつかをこなした筈の演技を簡単に見抜いて、冷めた目付きの鹿男は
何言ってんだかと言いたげに反論する。

290:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 4/8
10/03/08 01:57:46 UlBvNCz00
「うーん、アイツも飼い主決まっとるからなぁ。今ひとつ怒る気になれんわな。」
酔っ払ったO端の悪癖には昌良をはじめとして幾人も被害にあっている。
しかもニュータイプなO端にはコミュニケーションの一環らしく、ケロっとしたものなので
怒りも出来ない。どれだけ酔っても時田にだけはしないというのがO端らしくて、
怒れない原因の一つであったりもした。
分かり易い昌良と、分かり難いO端。ベクトルは正反対だけれど、地球をぐるりと回せば
ブラジル辺りでぶつかるのであろう、二人のご主人様への感情の表し方。
やっぱりこの犬達は似ている。
鹿男は素直にそう思ったけれど、同意するにはひっかかる点が無きにしも非ずだ。
「アイツ『も』って、なんだよ、『も』って。」
「琢也の飼い主は新太。俺のリード握ってんのは鹿男ちゃん。」
「知らねぇよ。お前なんか、半野良の時々餌貰いに来る猫みたいなもんじゃん。何年か前なんか、
ぽーんとニューヨーク行ったっきりで長らく帰ってこなかったし!」
「でも俺は犬やで。鹿男ちゃん、犬顔好きなんやろ?」
突かれると痛い後半はスルーした昌良の小ずるい手法に気付かず、鹿男はまんまと律儀な
つっこみを入れてしまう。
「俺が好きなのは犬顔のオ・ン・ナ、だっつーに。」
「俺は?」
「…………。」
「なぁ、俺はぁ?」
しくこく食い下がる昌良に、鹿男は溜息をついて目を眇めた。奪われたサングラスは
昌良の身体の向こうで取り返せそうにない。表情を晒すのに慣れてはいない鹿男には、
今の状況はひどく居心地が悪かった。昌良との間に嘘を置こうとは思わないけれど、
はぐらかしも出来ない。本能的にそれを知っているからこそ、こんな話になる前に昌良は
サングラスを抜き取ってしまったのだろう。野生の勘って怖ぇえな、と鹿男は現実逃避的に思った。
口に出して言わなければ昌良は納得しないだろうけれど、シラフで目の前の男に愛を囁ける程
鹿男も根性が座っては居ない。
しょうがないと、鹿男は昌良の膝に手を突いて軽く伸び上がった。
触れ合わせた唇からは、微かに煙草の味がした。


291:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 5/8
10/03/08 01:58:20 UlBvNCz00
「嫌いでこんな事出来る程、俺は酔狂な性格してないよ。」
すぐに離れた薄い唇が吐いたのは、ひどく遠回りな愛の言葉。昌良に届かない筈はなかったけれど、
素直に受け取ってはくれないらしい。一言で言い返されてしまう。
「琢也ともしたやん。」
「そこに戻んのかよっ」
「戻るの。なぁなぁ、これってひょっとしてヤキモチ?」
「どっちかってーと、縄張り争いに見えるんだけど。」
「なーんや、人生初ヤキモチかと思ったのに。」
つまらんと呟きながらこれまでの人生で嫉妬という感情を覚えた事がないという昌良は唇を尖らせた。
その子供じみた表情がやけに可愛くて、鹿男の口元が無意識に緩む。
「あれは『された』であって、俺からはしてないの。」
「んー、それはそうかぁ。よし、おいで。」
どこでどう納得したのか、昌良はからりと笑って両手を広げて鹿男を呼ぶ。
「はぁ?」
「だっこさせてぇや。最近スキンシップ少なかってんし。」
「やだよ。」
「じゃぁ、さっきの蒸し返す。んでめっちゃグレる。盗んだバイクで走り出すで」
「脅してんの、それ。」
「うん。」
しつこく両手を広げたままの昌良に折れて、鹿男はやれやれと口の中で呟きながら結局こうなるのかよと
傍に膝立ちでにじり寄った。
昌良は鹿男の腰に腕を回すと、ひょいっと持ち上げて自分の膝に乗せてしまう。
まさかそこまでされるとは思ってもおらず鹿男は面食らった。
「耶麻崎、」
「んー、何ぃ?」
「流石にこれはないんじゃないの?」
「えぇやん。誰が見てるでもなし。」
対面で向き合うのは誰かに見られていなくとも照れくさかった。でも昌良のにっこにっこした笑顔を
向けられると、文句も言えなくなる。

292:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 6/8
10/03/08 01:59:33 UlBvNCz00
「鹿男ちゃんは俺のやーって、時々言いたくなる。」
ちょこっと小首を傾げて昌良が鹿男を覗き込む。声のトーンに微妙に滲んだ色合いの真面目さに、
鹿男は視線を逸らさずに昌良を見つめ返した。
続きを促すでもなく、ただ待つ。
「俺らも、増えたやん。」
大きくなった事務所を指しているのだと、すぐにわかった。
「嬉しいけど、鹿男ちゃんとの距離が離れるんは嫌や。」
ずっと付かず離れずよりも少しだけ近い距離でいたから、ここまで直球の駄々をぶつけられた経験は
なかった。
意外に長い睫毛が伏せられる。泣くのではないかと思ったけれど、昌良は泣きはしないだろう、絶対に。
鹿男は黙ったまま昌良の癖のある髪を抱いてやる。
肩口に預けられた頭の重み。ゆっくりと撫ぜてやると、昌良の肩から力が抜けるのがわかった。
「馬鹿だなぁ。」
ようやく出た声は、自分でも驚く程甘かった。
そーゆーとこもいとおしいと告げたら、耶麻はどうするだろう。ちらりと考える。
「わしもそう思います。」
苦笑いの混じった声が返って、それを渡す機会を逸してしまう。
心を軽くしてやる事ならば、多少は出来るのかも知れない。昌良が望んでくれるのならば。
以前はある事は知っていても眼前に晒しては貰えなかった弱みの片鱗を、
今ようやく見せられているのだと、妙な感慨が浮かんだけれど押し殺す。
声が震えない様にとブレスを一つ挟んでから、鹿男は笑みを作った。
「今日子さん挟んでさ、俺とお前が両翼固めないでどうすんの。しっかりしてよ、長男。」
「へいへい、僕は長男ですからねぇ。」
コロコロと一人称を変えながらも昌良顔を上げようとはしなかった。だから鹿男も手を止めたりはしない。
その掌に励まされるように、小さな声が続けられる。

293:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 7/8
10/03/08 02:00:09 UlBvNCz00
「歌って、自分の中で生まれて、声に出して、んでただ消えていくもんやと思っててんわ。
一人で発信して、一人で終息するみたいに。……でも、ここに辿り着いて、姫と鹿男ちゃんと
ユニットになったりして一緒に歌って、その人数が増えてアイツらが入って沢山になって。
共鳴して、響いて、広がって、空気に溶けてしまうんは一緒でも、何かこう、誰かの心とか身体に
入り込んで、残って、淡い星の光みたいにチカチカ輝き続ける……みたいなもんかも知れへんなぁ、って。
そう思うようになってんよ。」
「お前がそこまで思えたら、上等なんじゃない?」
人当たりが良い癖に、人付き合いの苦手な耶麻先昌良。
ちょっとずつそれが改善されるのを見ても寂しい気持ちにならないのは、昌良の言葉が
星の光のように鹿男の中に残り続けているからだ。日常の何気ない一言や、酔っ払いの戯言。
そんなものが二人の間には沢山沢山降り積もっている。
「どこにも行かないよ、俺は。ふらってどっか行ちゃうのは耶麻の方じゃん。」
「ちゃんと鹿男ちゃんトコに帰って来てるやん。」
「港のオンナかよ、俺は。」
「いんや、飼い主。」
「じゃぁ鳴け。」
「わんっ。」
ようやく顔を上げた昌良が、冗談に乗って一声鳴いてみせる。嬉しそうに。
「やっぱ馬鹿だねぇ。」
軽く額を合わせて鹿男も笑うと、昌良の目尻の皺が一層深まる。笑顔が連鎖していく。多分、昌良が
先刻恥かしげもなく言っていたのは、こういう事だ。
響き合って、広がっていく。
お互いにしか影響を与えないのではなく、色んな人に投げられて、受け取って、それでいいのだ。
世界に二人だけしかいないなんて、勿体無い。少なくとも鹿男の愛している昌良の声や歌が、
自分だけのものだなんて贅沢は許せない。
不意に、言い訳ではなかったけれど、問題のキスに対する回答が浮かんだ。
「琢也にキスされても嫌じゃないのはね、お前に似てるからだよ。」
「……はぁ?」

294:オフィス8月 耶麻崎昌良×須加鹿男 8/8
10/03/08 02:01:13 UlBvNCz00
「その、非常に犬な所を含めてさ。だから、仕方ねぇなって思っちゃうの。」
「……わん。」
思い当たる節があるのか、今度はとても複雑そうに昌良は鳴いた。
鹿男はそれを見てケラケラと笑い声を上げる。一本取返したような気分になった。
でも、それを口にしたのは、そんな高揚感からじゃない。
例えば、声に出しても消えてしまうだけのものでも、昌良の心の中に残ってほのかに光る星に
なってくれればいい。そんな明かりが、時と共に瞬きを増やして星空のようになればいい。
昌良が鹿男の中に描いてくれる星座のように。
「ほら、耶麻先」
「あい?」
「好きだよ。」
言って貰えるとは思ってもみなかった言葉に目をまんまるにしてぽかんと口を開いた昌良の鼻先に、
鹿男は笑って口づけた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

耶麻が結婚したばかりなのに申し訳ない。
でも一瞬本気で「え、鹿男と?」と思った。

295:風と木の名無しさん
10/03/08 08:36:26 8KX3sfET0
>>281-286
まさか喜乃下部長のSSが読めるとは。しかも一番好きなカプだし…。
比位済の空回りっぷりが良い。道は険しそうだけど頑張れ!


296:風と木の名無しさん
10/03/08 13:00:24 Cevqot3L0
>>274
>>281
好きなのが二連発!
ありがとう・・・

297:風と木の名無しさん
10/03/08 20:18:53 nZgtQK3p0
>>274
乙です!
片ミノも刑事所長も大好きなんでニヤニヤさせていただきましたw


298:風と木の名無しさん
10/03/09 01:14:28 XkACYRzKO
>>265

読んでてすっごくドキドキしました…。
最初にこの2人のお話が投下された頃からずっと好きです。続き楽しみにしてます。

…この後松/村くんがどうしたのか気になるw

299:風と木の名無しさん
10/03/09 20:38:50 3Iuj8avS0
>>34-59
遅まきながらGJ!
ネタがあったらホワイトデー編が読みたいです。他の話でも…!

300:俺俺、VIPPERだよ! 1/4
10/03/11 07:10:13 d/+7n5/xO
去年2/23にチラ裏投稿したオレオレ詐欺ネタ・オリジナル男子高校生。
一年経過してるけどSS風に仕立て直してみたものを発掘したので投下。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 高校三年の二月。サクラサク、の知らせをもって俺の受験生活動は終了した。
 俺の頭の中にギッチリ詰まってた練り消しが綺麗さっぱり取れたような爽快感は最高にhigh!って奴だッ!
 てなわけで浮かれてはしゃいで卒業旅行の計画立てたり、塾やら模試やらで遠ざかっていた彼女といちゃいちゃチュッチュするのが正しい勝ち組の姿勢だろう。
 しかし俺は大衆に迎合しない。
 塾に行かなくていい土曜はネサフと2ch三昧が、通のたしなみだろ?
 べっ、別に、彼女はモニタから出て来なくて、旅行に行く金もないから負け惜しんでるわけじゃねーよ!
 三次女はウゼーし、俺は知的なインドア派ってだけなんだよ!
 ……モニタが滲んで見えるのはなぜだろうな。
 虚しいひとり芝居をしていたら、ベッドの上にほったらかしてた携帯が鳴った。
 メールじゃなくてわざわざ電話してくるっつったら、俺とご同類な佐東か、浪人決定の上泉か。
 ギャルゲークリア報告でしたら、ぶち殺してさしあげますよ。
 フリーザ様気取りで開いた液晶画面には、見慣れない11ケタの番号が浮いていた。
 誰だ?
 セールスだったら嫌だな、と思いながら、通話ボタンを押した途端。
『もしもし、俺だけど!俺、おまえのこと好きだ!』
 見事にテンパってひっくり返りきった男の声が鼓膜にクリーンヒットした。

301:俺俺、VIPPERだよ! 2/4
10/03/11 07:11:31 d/+7n5/xO
 インターネッツの海を華麗に泳ぐダディのように明敏な俺は、瞬時に状況を理解する。
 おいおーいw間違い電話ktkrww
 わかるゥ、わかるぜェー、こいつからはモテない男のニオイがプンプンしてきやがるぜェー!
 勇気を振り絞って告白したんだろうに、幸先が悪いね兄ちゃん。
 しかし紳士たる者、不運な過ちを犯した者に寛大であらねばならん。
 俺はおもむろに通話録音のスイッチを入れ、洋画劇場風の渋い声を作り、落ち着いて応じた。
「失礼ですが、どなたかとお間違いではありませんか?俺は男でs」
『そんなのわかってる!』
 必死な叫びが、俺のダンディ演技を遮った。
 男なのをわかってる……だと……!
『でも好きなんだ!心で誰よりも傍にいたい!体で、キスとか、触ったりとか、性的な意味でもいろいろしたい!』
 ちょ、阿部さんでねらーかよwオワトルw
 俺は心の中をプギャーAAで埋め尽くしつつ、録音が続いていることを確認した。
 こいつはうpしてやらねばなるまい。
『いきなりこんな事言われて、気持ち悪いかもしれない、けど……』
 告り野郎のテンションが落ちた。アッー!の人は大変だな。
 しかし俺は801板にも突撃した男。ひるみはせぬ。
『俺は、本当に、お前の事好きで、だから……知ってほしくて』
 絞り出すような声は、本気でいっぱいいっぱいになっているようだ。

302:俺俺、VIPPERだよ! 3/4
10/03/11 07:12:44 d/+7n5/xO
 もしかして、受話器を握る手も震えてたりするのか。
 さすがに気の毒になってきて、録音停止ボタンに指をのばす。相手がねらーでも、真剣な気持ちを笑い物にしたらいかんよな。
「あのぅ、番号、確かめた方がいっすよ」
『ちゃんと確かめた!安価指定なんて軽蔑するかもしれないけど、こんなきっかけでもなきゃ、言えなくて!』
 指を引っ込めた。
 ちょw安価かよwスレどこだwww
「ちょっと待ってくださーい」
 笑いをこらえつつ、子機を握りしめて板を開く。
『あ、俺ほんとに、本気で…』
 告り野郎に生返事をしつつ、スレ一覧を素早くチェック。
 これか?『同じ塾の男好きになった 2』。
 最新の安価が「電話で告白」、1のレス「電話する」で止まってるな。
 前スレの全て読む、で最初から素早く辿る。
 1が好きになった奴はヒョロくてチャラいけど、オタっぽい奴らとニコ動の話で盛り上がってたから多分ねらー。
 自分には縁遠いDQNだと思ってたのに、雨の日に傘貸してくれて、「俺、予備あっから」って嬉しそうに広げたのが某蛙軍曹の傘。
 ……これなんて俺?
 傘男(仮)が気になり出した1が、どんどん彼に惹かれていった話を続けていくにつれ、TDNコピペや阿部さんAAが減っていく。
 顔を合わせれば挨拶する程度の仲になって。他の奴らのおまけみたいに誘われて一緒にゲーセン行って、音ゲーの鬼ステージをクリアした1に「おまえすげーマジすげー!」と興奮した傘男(仮)の笑顔に、はっきり恋を自覚するくだりは、甘ずっぺえ青春じゃねーかチクショウ。
 誕生日なのを当日に知って、コンビニで蛙軍曹のキーホルダー買って渡したらすごい喜ばれて泣きそうになったとか。
 スレの伸びはあまり良くないけど、純情すぎる1の気持ちが、俺の胸をギュッとさせやがる。
 受験が終わって、塾って接点がなくなって、大学も違うとこで……もう会えないって焦って、でも何かする勇気が出なくて、安価指定か。がんばれ1!と、追い付いた時には応援したい気持ちでいっぱいになってた。
 しかし、この、既視感っていうのか?傘男(仮)の行動はことごとく身に覚えがあるものだ。
 ゲーセンは覚えてないけど、蛙軍曹のキーホルダーくれたのは、確か……
「えーと……おまえもしかして、内藤?」
 おそるおそる聞いてみる。

303:俺俺、VIPPERだよ! 4/4
10/03/11 07:16:43 d/+7n5/xO
『あ!そ、そう!携帯番号、同じ高校のやつに聞いて、ややっぱきもいよなごめぁえk◇#§ふじこ※●』
 内藤……知的で落ち着いた男だと思っていたおまえがこんなキャラだったとは。
「落ち着けよ。混乱するのは俺のほうだろ常識で考えて」
「すぁ、ああぅ」
 そうだな、って言いたかったんだな内藤。ほんと落ち着け。しかし、何故だろう。
 俺のためにこうなったかと思うと悪い気はしていない。
 スレをリロードすると、沈黙したままの1を案じる皆のレスが現れた。当事者が言うのもなんだが、俺も内藤を応援したい……今すぐ受け入れるとかは無理だけど。
「じゃあ、次の安価は450な」
『え』
「いーから」
<1:>>450
 新着を確認し、息を深く吸う。俺クラスのvipperだと安価ゲット余裕でした^^なわけだが、流石に焦って震える指を叱咤し、書き込みボタンを押す。
<450:1に告られた男
同じ塾の知り合いとしか思ってなかったから、正直なにも考えられない。
だけど、なんで俺なのか知りたい。
1は俺をデートに誘え。
誘えないなら、釣り宣言しろ。>
 電話の向こう、息を飲む気配に、俺まで胸苦しくなった。
 内藤。どうなんだ。
『……デート、してください』
 蚊の鳴くような震え声をpgrすることはできなかった。
 いいぜ、とcoolに答えたつもりの俺の声も、つられてかっこ悪く裏返ってたから。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

304:風と木の名無しさん
10/03/11 09:35:42 tcOWYYRw0
>>300
GJ!
可愛いですー!
最初おいおいびっぱーか?と思ったけど、ホント可愛い!!
続きあるようだったら期待します!

305:酔いの黒ネコ 1/2
10/03/11 17:06:00 LNOXdOFYO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ドラマilのカンサシカンさんと正式ilさんの話。
昨日の最糸冬回がスゴすぎて勢いのみで書いた。



背後でオートロックの扉が閉まる音がした。
戻ったホテルの部屋には、出る時確かに消したはずの明かりがついている。
それにわずかに眉をしかめ、足を奥へと進めると、そこには置かれたベッドの上に
くったりと目を閉じて横になっている神部の姿があった。
かろうじてシャワーは浴びれたのか、髪は濡れバスローブに着替えてはいるが、
それで力尽きたのか、脱いだ服の一式は無惨に床のいたる所に散らばっている。
皺になるぞ。そう思い、近づきながらそれらを拾い上げる。
するとその気配に気がついたのか、ベッドの上で神部が微かに身じろいだようだった。
「……あれぇ……どこ行ってたんですかぁ…大小内さん?」
話しかけてくる口調が危うい。完全な泥酔状態。
こいつがここまで飲んだのは珍しい。
そう思いながら、大小内は手にした服をそのままに、神部の頭がある側近くの
ベッドの端に腰を下ろしていた。
「無様なものだな。」
冷たく言い放つが、それにも神部はふふっと笑う。
「口が悪いなぁ。」
ゆっくりと目を細め、にんまりと口角を上げて。
濡れている髪と合わせ、それに大小内はこいつは黒猫だなと思う。
しなやかで、気まぐれで、プライドが高くて、それでいて甘え上手。
だからか、こうして自分が構ってしまうのは。
「で、そんな無様な僕を置いて、どこ行ってたんですか?」
見下ろす視線の先で、神部がもう一度繰り返してくる。
それに話は終わっていなかったのかと思いながら、大小内は口を開いた。


306:酔いの黒ネコ 2/2
10/03/11 17:07:34 LNOXdOFYO
「ちょっとした野暮用だ。」
「やぼ?」
「無鉄砲に飛び出して家への帰り道を忘れた飼い猫が、外でも生きていけるよう
鞭撻を願いにな。」
「……なんですか?それは。」
さすがに声に怪訝な色が滲む。
そんな神部にこの時大小内は初めて、その口元に微かな笑みを浮かべると
その手を伸ばした。
「明日になればわかる。」
言いながら、その髪をクシャリと撫でてやる。
するとそれに神部はただ、ふうんと答え、再び目を閉じてしまった。
もう何かを考える事も面倒なくらい、酔いで思考が止まっているのかもしれない。
そしてこれまでほとんど見た事が無いようなそんな無警戒な姿は、やはり心の重荷が
取れたからか、とも思う。
髪を撫でているうちにやがて聞こえ出した寝息。
葛藤はそれなりにあるだろうが、それでも穏やかに満足げな。
そんな心のままに生きる事を彼に選ばせた相手の事をふと思い浮かべれば、
少し寂しいと……そんな言葉を思いつく自分も、きっとまだ酔いが残っているはずだった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
おかんなカンサシカンさんは帰る時、服をハンガーにかけ、
目覚まし時計のタイマーもちゃんとセットしていけばいいと思う。


307:風と木の名無しさん
10/03/11 18:55:39 r/j8M8CDO
うおおお!!!おかんなカンサシカンに禿げた
昨日は神部が総モテ過ぎて動揺したよ

308:風と木の名無しさん
10/03/11 20:25:55 FHjO+mET0
>>305
GJJJJJJJJJJJ!!!!!!!!!!
カンサシカンの缶への愛は海より深いねえ!
昨日はハッスルしすぎて眠れなかった
ああもう今から次が気になって気になって…

309:Gガンダム キョウジ×ドモン 0/9
10/03/11 21:51:59 o4AD5Suh0
ガンダムスレの今の流れに萌え滾って勢いだけで書いてみた
ちゅーってしかもべろちゅーかよ!
ご都合主義により最終回後なのに兄さんが生きてますが勘弁してください
ドモンの家出当時の事や頭なでなでするのはムック本に入ってた漫画からです。

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |>PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

310:Gガンダム キョウジ×ドモン 1/9
10/03/11 21:52:23 o4AD5Suh0
やあやあ皆さん、お久しぶりですねえ。
え、誰?ですって?
ひどいご冗談だ。この顔をお忘れですか?いくら15年振りとは言え。
そうです、わたくしです。いやはや、ご無沙汰しておりました。
さて!今日のカードはこの二人、ネオドイツはシュバルツ・ブルーダー!
対する相手はキング・オブ・ハート、ドモン・カッシュ!
宿命の兄弟対決でございます。
はてさてどんなファイトが待ち受けているのでしょうか!
それでは皆さん!ガンダムファイ―
と。……ああ、ファイトはもう終わったんでしたねぇ。
いやはや、こうなってみると寂しいものですな。
仕方ありません。今回は恒例のアレはお預けと言う事で、
それでは少しだけ、カーテンコールのおまけでもご覧頂きましょうか……

――

ガンダムファイト終了後、世界がすぐさま平和に戻ったかと言えばそうではなかった。
確かに巨大な悪は倒れたが、あの戦いはコロニーや地球全土に深い爪あとを残し
その復旧作業や難民の救済などが大きな課題として残っている。
また、ネオジャパンの―つまり今後4年間世界の覇権を握る国の―実権を握っていた
ウルベが倒れたと言う事もあり、その隙を狙って様々な暗躍を遂げようとする者もいた。
そのため、世界の秩序を保つ役目を持つシャッフル同盟や
彼らに賛同するガンダムファイターたちはその実力と知名度を生かし、
各国で様々な任務をこなし、復旧の音頭をとりながら忙しく過ごしていた。
本来ならばシャッフル同盟はこういった表舞台に立つ組織ではないのだが、
例の一件でその存在が世界中に知れ渡ってしまったという事と
そのリーダーがガンダムファイト優勝者のドモン・カッシュともなれば
今更隠匿するわけにも行かず、
結局現状で「シャッフル同盟」は「英雄」と同義の言葉として扱われている。
5人揃ってセレモニーなどに招待される事もしばしばだった。

311:Gガンダム キョウジ×ドモン 2/9
10/03/11 21:52:58 o4AD5Suh0
……とまあ、そんな前置きはおいて。
宴会の話である。
式典などで久々に集った仲間たちが、
その後身内だけで酒を酌み交わすことは珍しくなかった。
今日はネオジャパン側が用意したそこそこの格式の料亭で、
みなが膳を囲み車座になって、宴もたけなわ、久々の旧交を楽しんでいた。
シャッフル同盟5人だけでなく、彼らにごく近い仲間だった
ネオスウェーデン代表やネオネパール代表の姿もある。

既にほとんどの皿は空き、2合徳利が何本もごろごろと転がっていた。
顔を赤くしていない者のほうが珍しく、
宴会芸と称してスウェーデン代表が梁の上で新体操を披露したり、
フランス代表が刺身の薄切りで得意げに薔薇を作ってみせたり、
アメリカ代表がピエロの幻覚を見て泣きながら座敷の隅でうずくまっていたり、
ロシア代表は平然としているように見えて、
手首に巻きついているのが味付け海苔の二枚重ねだったりする。
彼らのファンにはとても見せられない光景だった。
リーダーであるはずの我らがドモン・カッシュも、
いつも身に着けている鉢巻きを中国代表に奪われ
その中国代表は鉢巻きをリボン代わりに自らの髪をお団子に結っている。

「……ドモン」

そのどんちゃん騒ぎを眺めながら
自分も強かに酔って壁際にもたれていたドモンの元に、にじりよる者があった。
ドモンとは違う母親ゆずりの栗色の髪の毛、
堅苦しいトレンチコートの上に乗った顔は珍しく素肌を晒しており、
こちらは兄弟でよく似ている黒い瞳を酒のためにうるうると滲ませていた。

「に、にいさん?」

312:Gガンダム キョウジ×ドモン 3/9
10/03/11 21:53:21 o4AD5Suh0
ドモンは少しだけうろたえた。
いくら酔っているとは言え、膝だけでこちらにずりずりと近寄り
畳に両手を付いたままぺたんを座り込んでいる様子はあまりにも普段の兄と違っていたのだ。
ほんの80cmほどの距離で、彼は口を開いた。

「俺はなあ、ドモン。お前がいなくなってから凄く探したんだぞ。
 それはもう必死だった。警察にも行ったし、探偵も雇った。
 書置きは見たけど……10歳足らずの子供が突然いなくなったんだ、
 誘拐とか、事件に巻き込まれた可能性もあるじゃないか。
 心配で心配でしょうがなかった」
 
少しだけ視線を伏せてとうとうと語り始めた彼に、
ドモンはかける言葉を見つけられなかった。

「だってそうだろう。単なる家出なら、すぐに見つからなきゃおかしいんだ。
 まさか『下』に行ってたなんて……
 ああ、そっちを調べなかったのは俺のミスだった。
 生きてるのか死んでるのかも分からないのに、帰りを信じて待つのは辛かったよ」
 
伏せていた顔を上げて、更に彼はぐいとドモンに近づく。
 
「いいんだ、言ってくれ、ドモン。
 将来を決められてたのが嫌だったのか?
 俺にいつもからかわれてたのが嫌だったのか?
 悪かった、許してくれ」
「……っ兄さん」
「お前が可愛かったし、だから父さんと二人で
 お前のためになるようなことをしてやりたかった。
 でもその反面でからかったりもした。あの時は俺も子供だったんだ……」

313:Gガンダム キョウジ×ドモン 4/9
10/03/11 21:54:08 o4AD5Suh0
常ではありえない饒舌さで謝罪の言葉を述べる彼に、
ドモンは胸が震える思いがした。
戦いを通じて、兄とはもう十分に分かり合えた気がしていた。
昔のような屈折した反発とも違って、素直な尊敬を感謝を持つことも出来た。
しかしまだそれが全てではなかったのだ。
無鉄砲に飛び出した家で、そんな風に想われていたとは考えもしなかった。
互いにすれ違ったままだった過去の時間が、きちんと重なり合っていく音がする。

「……もういいんだ、兄さん。謝らなきゃいけないのは俺の方だ。
 俺は、何でもできる兄さんがずっとうらやましくて……」

酒の力か、ドモンの口からも自らが驚くほどにすらすらと言葉が出た。

「いつも頭をなでてくれてたけど、俺はその度に
 兄さんを追い越したいと思ってたんだ。
 でも、そのためにはあそこにはいられないと思って……
 だって、あんなに優しい兄さんがいたんじゃどうしても甘えたくなるから……
 甘えてしまったら、兄さんよりは強くなれないだろう。
 だからほとんど勢いに任せて飛び出したんだった」
 
鉢巻きがないためか、いつもより幾分幼く見える顔を赤くしながらドモンはそんな風に語った。

彼らの話の途中から、いつしか宴会場の中は静まり返って
誰もがその会話に聞き入っていた。
感動的な兄弟の和解のシーンに、スウェーデン代表などは胸の前で指を組んで
その大きな瞳を潤ませている。

「……俺たち、馬鹿みたいな遠回りをしたんだなあ」

言葉そのものは過去を悔やむものでありながら、どこか安堵したような響きの声で
彼は身体の中からこぼれ出てくるような笑みを顔に浮かべた。
それにつられるようにして、ドモンもまた照れくさそうに微笑む。

314:Gガンダム キョウジ×ドモン 5/9
10/03/11 21:55:20 o4AD5Suh0
「ドモン」
「?」
「頭をなでさせてくれないか?……昔みたいに」

兄がそうしたいと言うのなら、拒む理由はドモンにはなかった。
こんな衆人環視の中、常ならばとても了承できたものではないのだが
二人はごく近い距離の中で話をしているせいか、
周りから注目を浴びている事には露ほども気が付いていない。
小さくこくりと頷く。
すると彼の兄はいっそう笑みを深くして、すぐ傍にある弟の頭へと腕を伸ばした。
記憶よりもずいぶんと大きくなった頭を撫でながら
あまり手入れがされている感じでもない髪の毛を指で梳いてやる。

「少しくせっ毛なのは、変わってないんだなあ……」
「そ、その。あんまりじろじろ見ないでくれ、兄さん」
「どうしてだ?」
「恥ずかしいだろ……」
「恥ずかしいことがあるものか。こんなに可愛い顔なのに」

少し伸びた前髪を梳いていた指が、そのまま下へ降りて頬をとった。
誰もが、あ、と思う間もなく。

「「「!!!!!」」」

ドモンの少し薄い唇を彼が奪っていた。

ほんの数秒合わせられていただけだったそれは、次第に動きが大胆になり
舌がドモンの唇を舐めたかと思ったら、そのまま割り入って
驚いて逃げる事も忘れている相手のそれを絡めとった。
舌先で根元をくすぐり、吸い上げる。

315:Gガンダム キョウジ×ドモン 6/9
10/03/11 21:56:15 o4AD5Suh0
「ふぅッン……!」

上あごのドームを、触れるか触れないかといった弱さで舐め上げられたとき
ドモンの肩がびくりと跳ね上がった。

「っん、んぅ……ふ、んんっ……」

そのまま歯列をなぞられ、口腔の隅から隅までを蹂躙されながら
いつの間にかドモンの瞼は陶然となったように閉じられており、
指は無意識に兄の腕へすがり付いていた。

「ん……」
「…………ふぁ……?」

長い長い時間をかけて、二人の唇はやっと離された。

経験したことのない大人のキスに、ドモンが茫然自失の状態になっているのをいいことに
彼は行動を止めずドモンの唇からこぼれそうになっていた唾液を舐めとり、
そのままちゅっちゅっと頬だの額だのに際限なくキスしまくっている。

そして、あまりの勢いに二人ともがどさっと畳の上に倒れこんだ時点で
周囲はやっと我を取り戻した。

「な、なにをやっているんです!」
「離れろこのドイツ仮面!!」
「いや、引き剥がせ!!」

やにわに会場内の温度が上がった。
今にも飛び掛ってこようとする彼らを、ネオドイツ代表はめんどくさそうに一瞥し、
次の瞬間にはドモンを抱えたまま窓際まで跳躍していた。
その素早さに誰もが瞠目する。

316:Gガンダム キョウジ×ドモン 7/9
10/03/11 21:56:53 o4AD5Suh0
「そうかお前たち、うらやましいのか?うらやましいんだろう?そら」

ちゅううぅ。
言うが早いか、ゲルマン忍者は再び腕の中のドモンの唇を吸った。
ドモンはまだ硬直したまま我を失っている。

「ははは、しかしこれは私のだからな!
 お前たちにくれてやるわけにはゆかん!」
 
すっかり「キョウジ・カッシュ」ではなく
「シュバルツ・ブルーダー」に戻ってしまっている様子で、彼は高らかに笑う。

「ええい、あんな酔っ払いごときに遅れをとるシャッフル同盟ではありませんよ!」
「応!」
「アニキを返せこのやろー!」

同じく酔っ払いであるはずの3人も、思い思いにゲルマン忍者に躍りかかっていった。
実はメンタル面で弱いアメリカ代表だけは、小さく「おーまいがっ……」と呟いたきり絶句してしまっている。

「甘いッ!」

フランス代表がとっさに拾って投げつけた塗り箸は、
カカカッ!と小気味よい音を立ててお膳の底に突き立った。
ロシア代表の重い拳を、ドモンを肩に担いだままでひらりひらりとかわしながら
中国代表の拳法と組み合う。
しかし拳が合わさったと思った次の瞬間、彼の長い髪がぱらりとほどけていた。

「!?」

バックステップで素早く身をかわした忍者の手には
リボン代わりにされていた鉢巻きが握られている。
一瞬の間に髪をほどいてそれを取り戻したのだ。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch