10/03/03 11:58:32 +csziAT40
構わずヴィクターは語り続ける。
「あれと同じで、俺が彼に触れると、彼は弱った」
「だから、触れたことはない、か」
面白くもなさそうに呟いて、同時にパピヨンは何かをヴィクターに投げつけた。
「!」
「ひいひいじいさんの日記だ。アンタがフラスコに入ってからのことが書かれてる」
とっさに受け止めたそれは、分厚い本だった。何百もあるページそれぞれに、彼の流麗で几帳面な文字が記されている。
「英語で書いてあるところを見ると、ほかの人間に見られたくなかったんだな」
散らかした書籍を片づけながらパピヨンが呟く。日記には、ヴィクターのフラスコの状態が詳細に記されている。その合間に、彼からの、ヴィクターへの思いが綴られていた。
『いつになれば、君を救えるのだろう』
『君は私を信頼してくれた。それに応えねば』
『この命尽きても…』
気づけば、ぽたりと落ちるものがあった。慌てて手の甲で拭う。
ふん、と呟いて、パピヨンが蔵を出ていく。
「それは好きにしろ。オレはもう行く。これでも忙しいんでね」
「待ってくれ!」
スタスタと歩き去ろうとするパピヨンを呼び止める。
「…………ありがとう」
「……ふん」
ヴィクターの感謝を、パピヨンは背で受け止める。
「用が済んだらさっさと出ていけ。ここは蝶野の敷地、つまりオレのものだ」
それだけを言い捨てると、パピヨンは黒い翅を広げて飛び立った。
それを見送って、ヴィクターはもう一度彼の日記に視線を戻した。
「…おやすみ、バタフライ」
そっと呟き、日記を閉じた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お粗末さまでしたorz