10/02/19 18:36:35 9zoVBP470
瀕死の密航者をわざわざ匿い、自身の身の危険を押してさえ錬金術にこだわるのはなぜなのか。
ヴィクターに近づけば、それだけで生命力が奪われるのはもうすでに学習しているだろうに、いまだに数歩の距離にまで歩み寄ろうとするのはなぜなのか。
「キミに興味がわいた」
「それは光栄だ」
男が笑う。
そういえば他人の笑顔を見るのも久しぶりだ。彼は実に楽しそうに笑う。
「ミスター・パワード、私は君に最大限の助力を差し上げよう」
「…だが、錬金術について教えるとは言っていない」
「それについては、保留としておこう。君にも深い事情がありそうだ」
あっさりと引かれて、ヴィクターは一瞬驚く。なんだか虚を突かれたような気分だ。
「……いいのか。私が口を割らない可能性もあるぞ」
「まず君の存在そのものが、錬金術の可能性を示している。それだけでも今の私には充分だ」
ヴィクターは眉を寄せた。
「それにしても、この疲労感の理由くらいは、教えてもらいたいものだがな」
額に浮いた汗をハンカチでぬぐいながら、男が呟くように言った。
「………バク…あー?」
「バクシャク、……そうだな、言いづらければバタフライとでも」
「バタフライ?」
「蝶野家は昔からバタフライをシンボルにしている」
「だから、その髭か」
「これは私の趣味だ」
「…そうか」
妙な男だ、とヴィクターは思った。同時に、胸の内におかしみがほんの少しわいてきたようだった。
あの悲劇の日から、忘れ去ったと思っていた温かい何かが、心の中によみがえった気がした。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
夢見すぎと罵ってくださいorz
お目汚し失礼しました。