09/11/30 20:25:11 EQCfgTjyO
とある州は、服を着なければならないと言う法律のない州でした。
多くの住民達は服を着ていましたが、そんな法律はなくとも生活に支障はないと思っていましたし、
たまに裸の人間を見かけても、別に個人の自由だろう。と思って気にしていませんでした。
所がある日、あるテレビ番組が裸の人間を写し
いたずらに「ここは服を着ていない人間が住んでいる場所である」と放送したのです。
テレビを見て、色んなな理由で「ここは素晴らしい!」と思った人達は次々に移住し、州の人口はぐっと増えました。
外には薄着であったり、裸の人間が増えて行きます。
元々住んでいた人で、服を脱ぐ人も現れました。
服を着ている人達は、気恥ずかしさを覚えます。自分の住所を知られれば、たちまち裸族だと決め付けられてしまうのではないか、と考える人もいました。
家に帰れば裸になることもあれど、外で他人の裸を見るのは恥ずかしい、という人もいます。
しかし裸である事は犯罪ではなく、咎める手だてはありません。
裸の人達は裸であることを恥じる事はなく、恥ずかしがる先住民をとても不思議に思いました。
犯罪でないのに嫌がられ、不満に思う人もいました。
お互いこの州が好きで住んでいるのに、ちっとも上手くいきません。
お互いが仲良く出来る場所は、全員が裸になる浴場と、全員が服を着なければならない特定の施設だけ。
どちらかが我慢しない限り決して和解は出来ず、しかしお互い譲り合いません。
どちらも悪い事をしていないと言うのに、時に議論し、時に口汚く罵りあう者すらいました。
次にテレビクルーがこの場所を訪れたら、きっとこう紹介するのでしょう。
『この州には恥も外聞もなく、議論にかこつけて他人を否定する奴らばかりが住んでいる』と。