モララーのビデオ棚in801板48at 801
モララーのビデオ棚in801板48 - 暇つぶし2ch125:駅擬人化 拝×昭 7/9
09/05/16 18:55:18 3EZzPCYY0
俺達駅は駅を使う人のエネルギーを受けて生きている。気の器みたいなもんだ。
小さい器に許容範囲以上の人の気が流れ込む負担は大きい。
だから小さい駅が急に人のあふれる大きい駅に行ったりすると具合が悪くなる。
何かのきっかけで自分の器の成長が追いつかないくらい駅に来る人が増えても同じじゃないか。
「まあ、急な利用者増加はこの線じゃあんまり起きないから気が付かないのも仕方ないけど、
そういうことだからもちっと気をつけてやってよお隣さん。」
ぽん、と今度は励ますように軽く頭を叩かれた。
「…西立川駅は知ってたんだな。」

こんな話は初めてだった。この線の他の駅の奴等だって縁のない話のはずだ。
昭島駅だってそんなこと一言も言ってなかった。いままでずっと辛かったんだろうか。
「僕?ああ、立川駅がさ、そうだったんだよ。奴のは規模が大きくてけっこう酷かったわ。
今もしょっちゅうだからあいつのはもはや持病だね。あ、僕が教えたことたっちゃんには内緒ね。」
自分の喋りすぎに慌てて西立川駅が口をおさえる。
それすら初耳だったが、言われてみれば確かに最もな話だった。全然気がつかなかった。
いつも堂々として偉そうに自分が一番だという態度をとっていたから。
他の駅達だって全然気付いてなかったはずだ。多分、西立川駅だけが知っていた。

126:駅擬人化 拝×昭 8/9
09/05/16 19:03:03 3EZzPCYY0
黙り込んでしまった自分をの代わりと言わんばかりに西立川駅は続けた。
「たっちゃんのことも知らなくて仕方ないよ。あいつ超巧妙に装ってるもん。
プライド高いから弱み見せたくないんだよね。
昭ちゃんは心配掛けたくないからきっと黙ってるんだと思う。
多分そういうこともあって、たっちゃんは昭ちゃんがほっとけないんだろうね。
急に発展することの辛さはこの辺じゃあいつが一番分かってるからさ。
人の気だけじゃなくて急な成長をやっかむ駅に嫌がらせされたりもするし。」
「…俺のことか?」
非難まじりの西立川駅の流し目についむっとなって返したが、弁解の余地はなかった。
「さあね。立川駅ん時は自尊心の高い遠い山の手の面々だったよ。
少なくとも僕や国立駅は掌を返したりしなかったし?」
やっぱり俺を非難しているんじゃないか。

俺だって言ってくれればもっと…、何が心配かけたくないだあのお人好しめ。
心配…どころか自分はそんな昭島駅の努力にも気付かずにあいつを疎んじていた。
今までご機嫌取りだと思っていた態度は、実は切実なSOSだったんじゃないか。
後悔と自己嫌悪がじくじくと胸に広がった。
「…!?」
俺が黙っていると、いきなり西立川駅が立ち上がった。
「あ、ごめん。ちょっとたっちゃんとこ行かなきゃ。」
「わり、何か約束あった?」
「いや、今わかった。休日で人手が増えてややキャパオーバーっぽいから手伝ってくるわ。」
「そんなことわかんのか?」
「気配でね。たっちゃんのは分かるようになった。拝島っちも練習すればできるよ。」

127:駅擬人化 拝×昭 9/9
09/05/16 19:05:14 3EZzPCYY0
本当だろうか。にしても立川駅が人を頼るなんて見たことない。
そう思ったのが顔に出たのか、西立川駅はカラカラ笑った。
「一回も頼まれた事はないんだけどね。勝手に気付いて勝手にやってんの。
隣にいるだけでも気が分散するから楽みたいよ。」
「…俺も手伝おうか?」
立川駅はいけ好かないが、西立川駅には今日世話になったし。
そう思っていった一言だったけど、次の言葉で一蹴された。
「あいつは僕一人で十分だから大丈夫。
持久力ないけど瞬発力はここでやる毎年の花火大会や花見で鍛えられてっから
半日くらいなら何万人でもどんとこいよ!
てか君はたっちゃんより手伝うべき相手がいるでしょ。」
「うっ…なぁ、どうしたら昭島駅のこともっとわかるようになると思う?」
今日のことでちょっと気付いた。多分、俺はもっと色々知らなきゃいけない。
西立川駅は一瞬目を丸くすると、へらっと笑っていった。
「愛、かな~。」
あまりの気障な物言いに思わず手元の草をちぎって投げつけたけど、
それが当る前に西立川駅は姿を消してしまった。

128:駅擬人化 拝×昭 9/9
09/05/16 19:07:45 3EZzPCYY0
中途半端ですみません。
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) いつかまた機会があれば…
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129:ゲ仁ソ 特異×八部 0/5
09/05/16 21:06:09 o3wAm+dH0
初投稿失礼します。ゲイニソコンビ越えカプ。
エロくはないです。


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |   中途リアル特異×100-1八部だモナー
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|   二番煎じらしいよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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130:ゲ仁ソ 特異×八部 1/5
09/05/16 21:07:11 o3wAm+dH0
このまま堕ちていって、戻れなくなってしまうんだろうな、と漠然と思った。
いつもふわふわと笑って、舌っ足らずな喋り方をして。
好かれることは多い人なのだろうけれど。
「何考えてるん」
「なんもないよ」
二人とも口数が多い方じゃない。
居心地はいいけれど微妙な距離感が、二人の間に確かに存在する。
でも、これ以上あなたに近付いてしまったら、僕はあなたを壊してしまうだろう。
「何、考えてんの」
「なんにも」
あなたは煙草の匂いがする。
あなたの居ない所で同じ匂いがするだけで、胸がぎゅっと苦しくなる。
「ねぇ」
僕と目が合うと、優しくふわりと笑ってくれる。
「好きやよ」
そう言って、あなたの肩に頭を預けた。
好き。あなたは滅多に言わないけど、この言葉を使うとき、一番幸せそうな顔をする。
年上なのに、そんな時には幼い子供のように見える。

131:ゲ仁ソ 特異×八部 2/5
09/05/16 21:07:55 o3wAm+dH0
「いきなり何やのよ」
あなたは笑う。
言葉自体は冷たくても、あなたの声はこんなにも優しい。
口では嫌がるのに、いつも照れたようにあなたは笑うんだ。
「なんもない。ただこうしてたいの」
そう言うと、あなたはガキかお前は、なんて笑って、僕に同じく頭を寄せて来た。
長めの髪が頬に触れて、少しくすぐったい。
でも、あなたに体を預けるのは心地好くて、自然と目を閉じてしまう。
こんな風に二人で、何も言わずに過ごす時間が、僕にとっての全てなのかも知れない。
目を閉じて、あなたの体温と時計の秒針の音だけを感じていると、いつか二人の境界が溶けていくような錯覚をすることがある。
布越しに伝わる遠慮がちなあなたの熱は、あなたの無垢を裏付ける代わりに、僕の劣情をも煽る。
「義.実」
柔らかい声が、あなたを通して僕の頭の中で優しく響く。

132:ゲ仁ソ 特異×八部 3/5
09/05/16 21:08:46 o3wAm+dH0
あなたの喉仏が言葉と一緒に上下するのを、目を閉じた僕は容易に想像することが出来る。
「ん、なに」
あなたが僕のことを名前で呼ぶのは、初めてだ。
だから少しだけ、胸がどきどきした。
「…呼んでみたかっただけ」
あなたは僕を横目で見て、また、ふわりと微笑んだ。
それがあまりにも美しくて、眩しくて、思わず目を伏せてしまった。
心配そうな声が頭上から降ってくる。
「…嫌やった?」
見上げると、首を傾げてこっちを覗き込む顔が近くにあった。
「全然。嬉しかった」
あなたをぎゅっと抱き締めて、頬にキスをした。
「よかった」
長い腕が僕の背に回される。
この瞬間はいつだって、あなたを一番近くで感じられる。
「何、考えてるん」
「こんなに幸せで罰が当たらへんかなって」
いつもはこういうことを言うと馬鹿にするくせに、今日はただ、そうやねぇ、と抱き締め返してくれた。
「ねぇ」
「うん」
あなたに触れていると、柔らかくて温かくて、眠ってしまいそうになる。
だから、その前に。
「言うてよ、今日くらい。好きってさ

133:ゲ仁ソ 特異×八部 4/5
09/05/16 21:09:34 o3wAm+dH0
あなたの言う「好き」は、言葉にならない程優しいから。
「…好きや」
ためらいがちなあなたの唇が、
「あいしてる、義.実」
僕の名前を呼んだ。
愛している、と言った。
「何、泣いてんねん」
「なんでもない」
言われるまで気付かなかったけれど、僕は涙を流していた。
カッコ悪くて袖で拭うと、あなたが子供を見るように笑った。

あなたの優しさは、少しずるい。
いつもあなたは僕よりずっと大人で、あなたと一緒にいるとき、僕はまるで小さな子供だ。
「ねぇ、ねぇ」
「ん」
「俺ね、」
あなたが居ないと、駄目なんだ。
伝えたいことがたくさんあるのに、伝え方がわからない。
「…俺もやで」
あなたが笑う。
僕が言いたかったことばをあなたは最初から知っていて、
僕が一番欲しいことばを、あなたはさらりと言ってしまう。

134:ゲ仁ソ 特異×八部 5/5
09/05/16 21:10:21 o3wAm+dH0
「…ずるいわ、矢.部さん」
それは嬉しいけど、少し苦しい。
「…せやね」
あなたの手が、僕の頬に触れる。
僕が見上げると、静かな水面のようなあなたの目があった。
あなたはそれ以上何も言わずに、ゆっくりと唇を合わせてきた。
いつものベタベタした甘いのじゃなくて、どこからか寂しさが込み上げて来るような。
息が苦しくなって、ようやく離れたそのあとも、しばらくは二人とも何も言わなかった。
ただ、並んでソファに座って、時を過ごした。
「…なぁ、義.実」
「…うん」
なんだか、妙な背徳感に襲われる。
「…どこにも、行かんでな」
あなたが呟いた。
遠くの一点を見つめているように見えるあなたの目。
吐き出された言葉は、やけに孤独な響きをしていた。
あんなキスをした後だから?
分からないけれど。
「…行かんよ、どこにも」
僕とあなたの間には、境界線がある。
あなたは確かに僕の側へ侵入してきたはずなのに、
僕は今、初めてあなたを遠くに感じていた。

135:ゲ仁ソ 特異×八部 6/5
09/05/16 21:12:07 o3wAm+dH0
なんか不完全燃焼ですいません

 ____________
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 | | □ STOP.       | |
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136:風と木の名無しさん
09/05/16 22:26:41 NxXRWw7P0
>>109
うわー! 飴話見て彼らの可愛さに当てられてたんで待ってました!
GJっす!

>>117
姐さんの投下がキッカケで彼らに目覚めたよ! ありがとでした!

>>118
多摩きたー!!!! 拝島、ガンガレ!

137:風と木の名無しさん
09/05/16 23:08:13 rc4jgvE+0
>>118
他地方在住でその辺りの地理は全く分からないんだけど、キュンキュンきた…!
飄々とした脇役キャラスキーとしては、西立川駅に萌える

138:風と木の名無しさん
09/05/16 23:19:23 9PcBclra0
>>129
何かぐっときた。
こういう感じ好きです。GJでした。

139:風と木の名無しさん
09/05/16 23:24:37 NQKTkfMw0
>>118
GJ。昭島可愛いよ昭島
立川にもそんな辛い過去があったなんて…
今後はきっと、青梅線乗る度にニヨニヨしてしまうよ…!

140:風と木の名無しさん
09/05/16 23:38:49 2d9JTmLc0
>>118
GJ!地元ネタw
西立川のキャラが好きだww
拝島も昭島もかわいいわー。

141:風と木の名無しさん
09/05/16 23:54:03 Bhw/KjuW0
>>118
萌え抜きにしても面白かったよ!
青梅線乗ったことないけど俄然興味わいてきたw
立川にもそんなかわいいところあったなんて!

142:風と木の名無しさん
09/05/17 00:17:27 TpBXL214O
法律といい駅といい、最近の擬人化レベルたけえ…
ものすごく素敵だよーありがとう!

143:風と木の名無しさん
09/05/17 00:27:50 MTo2IS7nO
オリジ高校生もの801未満です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

144:風と木の名無しさん
09/05/17 00:34:44 MTo2IS7nO
退屈な授業中、抜けるように青い空を眺めていた。
頭の上をカテイホウカコやらミライカンリョウやらが飛び交っていたが、クラスの半分も聞いていなかった(ような気がする)。
意欲だとか気合いだとかがあれば眠くなることはない、なんて先生は言ってたけど、そんなわけがない。
だったら隣の席の青木やら斜め前の谷川さんやらが舟を漕いでいることはどうやって説明するというのだ。
二人ともうちのクラスの五本の指には入る成績だし、やる気がないなんて俺には逆立ちしたって言えない。
つまり、この眠気はやる気とは微塵も関係ないのだ。第一、あいつらが起きてられないのに成績中の下の俺が起きてられるわけがない。
悪いのは俺じゃなく、この上天気に違いなかった。
俺は頭と肩を机に預け、窓の方を向いた。春の心地好い風が顔をなでた。こんなに気持ちのいい日に勉強に集中できるなんて奴はなかなかいない。
そうでなくとも運動部は最後の大会のシーズンなのだ。斜め前でついに突っ伏してしまった谷川さんは、たしか女子バレーのエースだ。
バレー部は昨日壮絶な接戦の末に地区大会三位を勝ち取り、県大会出場を決めたと聞いた。そりゃあ授業も寝るというものだ。

145:風と木の名無しさん
09/05/17 00:35:15 MTo2IS7nO
(あーあ、俺も野球がやれりゃなあ。)
なんとなく隣で未だに舟を漕ぐ青木を見た。
こいつが野球部のキャプテンで、おまけに四番だ。こんな奴が。
悪いが、俺の方がよっぽど上手い自信があった。
というか、野球ならこの学校の誰よりも上手いという自信が俺にはある。
(くそっ、こんな膝さえなかったら今ごろ俺はこんなとこにはいなかったんだ。)
無性にいらいらした。青木は何も悪くないというのに。申し訳なくなって、無理矢理青木から目を背けた。と、先生とばっちり目が合った。
あ、まずい。思ったときには遅かった。
「よし、じゃあ澤村。ここに入る前置詞は?」
最悪だ。ここと言われてもどこの話かすらわからない。前置詞、前置詞というと…
「…with?」
「うん、正解。よく予習してきてるな」
ラッキー!心の中でガッツポーズをしながら席に着くと、いつのまに起きたんだか、青木がこっちを見てにやついていた。
「澤村、お前今の適当に言っただろ」
「うるせえ」
舟漕いでた奴に言われたくないね、と付け足すと何で知ってるんだよ、と青木は慌てたような声を出した。
それを見て俺は笑った。いい奴なのだ。そんなことはとっくに知っていた。

146:風と木の名無しさん
09/05/17 00:36:20 MTo2IS7nO


四月の終わりとはいえ、夕方になると案外冷える。昇降口から数歩歩いたところでカッターシャツ一枚では寒いことに気付いた。
未だに未練がましく使っている中学時代のエナメルバッグに適当に突っ込んであった学ランを引っ張り出してその上に羽織った。
少し遠回りして帰るつもりだった。いつもの道だと野球部が練習している河川敷のグラウンドの横を通らなきゃならない。
なんだか今日は野球を見たい気分ではなかった。帰ったらナイターじゃなくてたまには母さんの好きなドラマを見せてあげよう。
そう決心して歩き出したときだった。
「おーい、澤村!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ってみるとやはりそこにいたのは青木だった。
「青木、お前練習は?」
こっちはお前らを見たくないためにわざわざ遠回りして帰るのだというのに。
「あ、休み休み。珍しいだろ?
それより澤村、お前方向一緒だったんだな。一緒に帰ろうぜ!」
最悪だ。今日はとことん運がない。なんでわざわざ遠回りして青木なんぞと一緒に帰らにゃならんのだ。
悪いが断る、と言いかけたときにはもう青木はそこにはいなかった。
ずいぶん前の方で澤村早く、なんて手を振っている。

147:風と木の名無しさん
09/05/17 00:37:21 MTo2IS7nO
なんだか断るのも面倒になって歩き出した。どうせ今日限りのことだ。たまには遠回りして帰るくらいのことしたっていいだろう。
手を振る青木のところまで行って、一緒に歩き出すと、満面の笑みで話しかけられた。
「なあ澤村、俺今超嬉しい!」
「はあ?」
こいつは頭はいいけど、ときどき話がわけわかんないときがある。なんの話だ。
「澤村とこうやって一緒に帰れるなんてさあ、夢みたいだ!」
「はあ?俺?」
ぎょっとなって思わず聞き返した。なんで俺と一緒に帰ることが夢のようなんだ。
「そう、お前!
俺さあ、お前に憧れてたんだよね、西中のエースで四番、お前だろ?
絶対私立の強いとこ行くんだと思ってたらおんなじ学校なんだもんな!
なんで野球やめちゃったんだよ?」
どくん、と心臓が音をたてた。思わず足をとめた。
青木が怪訝そうに俺の名を呼ぶ。
「澤村?」
「怪我だよ。
引退後の二月だ、もう行く高校も決まってた。
なのに俺は信号無視の酔っぱらいに跳ねられた。
日常生活には困りませんが、野球は諦めてください、だとよ。」
自嘲が口をついてでた。だからこいつとあまり話したくなかったんだ。
いつか聞かれるような気がしてた。

148:風と木の名無しさん
09/05/17 00:38:17 MTo2IS7nO
こいつは何一つ悪いことなんかしちゃいない。
わかってはいるが、この話題にはどうしても触れられたくなかった。
俺が心の中でそんなことを考えていると、青木がでかい体を丸めて言った。
「な、なんか…ごめん…。」
まるで犬みたいで、思わず噴き出してしまった。やっぱりこいつはいい奴だ。
青木は少し不思議そうな顔をした。
「いや、お前はなんも悪くないよ。
俺こそごめんな、まだこの話題に軽い反応できなくてさ」
お詫びにコロッケおごってやるよ、と付け加えると、青木はぱっと顔をあげた。
「まじで!? …じゃなくて、いいよ、俺がおごる!
ごめんな、澤村」
その様子もまさに犬で、俺はまた笑った。
「謝らなくていいし、黙っておごられとけばいいんだよ。
俺のファンサービスなんだから。」
にやっと笑ってそう言うと、青木は一瞬びっくりしたような顔をした。それから顔を真っ赤にして俺に抱きついた。
「澤村超いい奴!大好き!」
犬より単純なやつだと思った。しかしなんだかちょっと可愛い気がしてきたから不思議だ。
ただしもちろん俺が奴を暑苦しいってぶん殴ったのは言うまでもないが。

149:風と木の名無しさん
09/05/17 00:38:55 MTo2IS7nO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お粗末さまでした!

150:風と木の名無しさん
09/05/17 00:46:13 8t9ZRCBMP
主人公の不真面目さと、周りへのひがみっぽさがDQN? って最初思ったけど
そのひがみには理由があったところでほほうとさせられました
友人同士の尊敬関係が青春って感じですね。 GJ!

151:風と木の名無しさん
09/05/17 01:27:05 ogCnt1/UO
立川でいちばんいらない子は南武線だよ!
ちなみに川崎駅でもいらない子だよ!

と言ってみるテスト。指くわえて大きい兄ちゃんたちを眺めてるがいいさ!


152:風と木の名無しさん
09/05/17 09:31:59 m2n1699p0
>118
地元線北!!
西立川かわいいよ西立川
いつかMY地元駅も出てくるだろうかww
ローカルな店の名前とかnrnrしたよ、GJ!!

153:臼い貼る 元893←金髪 熱 0/4
09/05/17 17:00:12 DHCfZvfp0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  半ナマ 歌謡ドラマ 臼い貼るより
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  元893←金髪です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )    
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

154:臼い貼る 元893←金髪 熱 1/4
09/05/17 17:00:50 DHCfZvfp0
いい加減読み飽きた雑誌を放り投げてぐるりと首を回すと、部屋の奥に転がっているでかい生き物が目に入った。
そいつはつい15分ほど前、昨日と大体同じ時間に帰ってきて、昨日と同じように水道水をコップで2杯。
それからコンビニ袋から出したおにぎりと、テーブルの上に放置されていたつまみをいくつか咀嚼した後、
昨日と同じ場所にごろりと横になった。
昨日、と言ったけれど、一昨日だってその前だって全く同じだ。
この部屋で、食う、寝る以外にすることがないらしいこの同居人は、毎晩同じルートで床に着く。
このオッサンのどこがいいのか、毎日やたらめったら話し掛けたがる女も今日は留守で、
そうなるとこいつは声すら発しない。

「なあ」
テーブルに頬杖をついて、まだ眠ってはいないであろう後ろ頭に話し掛ける。
返事がないのは予想の範疇。
少しは癪に障るけれど、慣れてきたのも事実だ。
「あの金、どうやって稼いだの」
東京湾に沈められる寸前の俺を救った30万。我関せずを貫いていたこいつが突然放り投げてきた30万。
変な金だとは言っていたけれど、どんないわくが付いていようとも金は金だ。
俺はそれを手に入れる方法を毎日探して、それで度々ひどい目に遭っているのだ。

155:臼い貼る 元893←金髪 熱 2/4
09/05/17 17:01:25 DHCfZvfp0
「まあ“稼いだ”っつう感じじゃねえんだろうけど。どうやったらいきなり30万も手に入んだよ。
手っ取り早い方法、あんなら教えてよ」
男は当然のように答えない、どころか、こちらを見ることすらしない。
まるで聞こえていないかのような態度に、慣れたつもりでもやはり段々腹が立ってくる。
「おい、起きてんだろおっさん!返事くらいしろよ!」
痺れを切らして大きな声を出すと、巨体は首だけをぐるりと回してこちらを見た。
…う、やっぱり目が合うと怖え。絶対ヤ9ザだって、こいつ。

一瞬怯んだ俺を見て、そいつはフン、と鼻で笑うと、またぐるりと顔を背けてしまった。
「…んだよ。なんか言えよ」
「てめえみたいなチビは、二丁目で立ちんぼでもやった方が早いんじゃねえか」
「ああ!?」
やっと出た言葉は、事もあろうか俺が一番言われたくない単語を含んでいて、つい頭に血が上る。

おい、今チビって言ったなてめえ。人が気にしてることを。
つうかてめえがでかすぎるんだろ、このデクノボウ。やるかコラ。

…なんて絶対に言えない言葉を全部飲み込んで、チッと舌打ちをする。
ああもう、一から十まで腹が立つ。
もういいやと、さっき投げたばかりの雑誌に手を伸ばしかけて、浮かんだ別の考えに手を止めた。

…ちょっとからかってやろうか。

156:臼い貼る 元893←金髪 熱 3/4
09/05/17 17:01:55 DHCfZvfp0
「何、おっさん、そういう目で俺のこと見てるわけ?」
面白がるようにそう言うと、少しの間の後これみよがしに長い溜め息を吐かれた。
思いっきりバカにされているって事はいくら俺がバカでもわかる。
が、退屈しのぎと憂さ晴らしの方法が他に思い付かない。
「なんだったら抜いてやってもいいぜ。おっさんには30万分借りがあるからなあ。サービスしなきゃ割に合わないっしょ」
言いながら立ち上がって、そいつの寝床に近付く。
傍らにしゃがみ込んで耳元に唇を寄せ、触れそうなくらいスレスレの距離で囁くように声を出した。
「なあ、溜まってんだろ?」
わざと息を吹き掛けながら言うと、おっさんの体がビクッと跳ねた。
予想通りの反応に吹き出しそうになった、瞬間、強い力に下顎を掴まれる。

―やばい、と思った次の瞬間にはぐらりと世界が反転して、後頭部に打ち付けられるような痛みが響いた。
え、今、何が起きた。
思わず閉じてしまった目を恐る恐る開けると、眼前には鬼の形相があって、その鬼は俺を組み敷いて両手をきつく掴み上げていた。

―いや、ほんの冗談でした。すみません。やめて。助けて。

頭の中の言葉が声になって出て来ない。
全身が固まったように動かなくて、ただじっと、自分に跨がったままの鬼と見詰め合う。
正確に言うと、睨まれている。
無理、本気で怖い。

たぶんほんの数秒、けれどやたら長く感じる沈黙の後、鬼の顔が降りてきた。
左頬のすぐ横を通過して、耳に生温い息が触れる。
―喰われる。そう思った瞬間、どうしてか、固まった体に一気に熱が広がった。

157:臼い貼る 元893←金髪 熱 4/4
09/05/17 17:02:26 DHCfZvfp0
「そうやって調子乗ってると、そのうち本当に沈められるぞ、ガキ」
鬼は耳元でそれだけ言うと、あっけなく離れていった。
しばし呆然としていた俺は、突然体に走った原因不明の熱をゆっくり逃がしてから起き上がる。
「…なんなんだよ…」
呟いて、さっきと同じように壁を向いて寝転んでしまったおっさんの背を盗み見た。
僅かながら、肩が規則正しく上下しているのがわかる。
今度こそ本当に眠ってしまったのかもしれない。

さっき、熱が離れる前、こいつの唇が降りてきた時。
ほんの一瞬だけ、その先を見たいと思ってしまった。
よくわからないけれど、俺は確かに何かを期待した。
人間本当に身の危険を感じると感覚がおかしくなるのだろうか。
たとえば殺されそうな時って、さっきみたいに体が熱くなって、早く殺して、みたいに思うのだろうか。
…いや、ないよな。それじゃ変態だ。じゃあなんなんだ、さっきのは。
少しだけ考えたけれど、すぐにめんどくさくなって敷きっ放しの布団に潜り込んだ。
眠って全部忘れよう。
考えて答えが出ても、なんだかろくなことにならない気がするから。

158:臼い貼る 元893←金髪 熱 END
09/05/17 17:03:39 DHCfZvfp0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 失礼しました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


159:風と木の名無しさん
09/05/17 17:31:27 /T4cm+jV0
>154
ウヒョーまさかの元893←金髪!!!
金髪かわいすぎる GJです!

160:風と木の名無しさん
09/05/17 17:32:57 kuHiDqmB0
生注意
高学歴ゲイニソ 炉算 京大×大阪府大

飴話「愛.方」の回でこのふたりに転んだ全国の姐さん方に捧げます


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


161:金曜日に変わった直後 1/5
09/05/17 17:36:36 kuHiDqmB0
『×××××見ましたよ!相変わらずラブラブじゃないですか~』
『ちょお!全国ネットであんな告白してもええんですか!?』

東京で放送が終わった直後から、後輩たちから続々と入ってくるメール。
大阪府大はボタンに指を置き、画面を次々に切り替えながら届いた文面を読んでいく。
ガラスのテーブルに置いてあるもう一つの携帯。
マナーモードになっているそれがヴィィィン、ヴィィィンと2度振動した。
大阪府大はチラッとそちらを見たが、すぐに視線を元の位置に戻し、自分の手の中にある携帯のキーをカカッ、カカカッと押し始めた。

大阪府大が送信ボタンを押すと当時に、リビングの扉が開いた。
「すが~、シャワー空いたで~」
間延びした声の主は、タオルで短い髪をわしゃわしゃと拭きながら、バスローブ姿で中へと入ってきた。
「うじー、メール来てたで」
「メール?誰からやろ」
京大は小首を傾げながらテーブルの方へ歩みより、そこに置いてあった自分の携帯を手に取った。
「んー、ああ、東京はこっちより放送早いんやったな」
どうやら京大に来たメールも、大阪府大に来たメールと同様のものだったらしい。
誰からなん?と大阪府大が尋ねると、先程自分にメールを送ってきたのと同じ後輩の名前が返ってきた。
ちなみに出身は関西だが、現在は東京在住の男である。
リアルタイムで番組を視聴し、その直後にふたりにそれぞれ別々にメールを送ってくるところを見ると、今日はもう家に帰っているのだろうか。夜遊び好きで知られているヤツにしては珍しいことだ。


162:金曜日に変わった直後 2/5
09/05/17 17:37:33 kuHiDqmB0
「なんやあいつ、おまえにもメール送ってんか。暇なヤツやなー。で、返信したん?」
「たった今したで」
「何て?」
「『こっちは今放送あってる最中や。先にオチバラすな、アホ』て」
「黒い!黒いで~、すがちゃん!」
京大は苦笑いを浮かべながら、ソファーに座る相方の隣に腰を下ろした。
「冗談や。そんなん送ってどないすんねん」
大阪府大は白い歯を見せてケタケタ笑う。
「でもまぁこの番組に限ったことやないけど、全国ネット言うたかて、地域で放送時間がずれることはままあるんやから、そこは配慮してもらいたいよなー」
「せやな」
そう言って二人は、目の前に鎮座するテレビの液晶画面に目を遣った。
先日自分たちが出演し、ラブラブぶりを余すところなく見せ付けた某番組が、東京とは約1時間遅れで放送中であった。

それからしばらくの間、互いに寄り添うようにソファーに座り、大阪府大も京大も無言でテレビ画面を眺めていた。
テレビの中ではちょうど、大阪府大が京大の好きなところを熱く語っている最中であった。
「なぁ、うじ」
視線は前方に固定したまま、大阪府大が口を開く。
「何や?」
京大も肩にもたれかかる相方の方を向くことなく、短い言葉だけで応答する。
「俺、どうしてもわからんことが一つあんねん」
「うん?」
「さっきあいつからメールもろたて言うたやろ」
あいつ、とは先程京大にもメールを送ってきた、例の後輩のことだ。
「うん」
「あいつな、『全国ネットでこれはちょっとやりすぎたんとちゃいます?』って言ってきてん」
「あー、あいつ、俺に送ってきたのにも同じようなこと書いとったわ」

「これ、やりすぎなんか?」
「え?別に、普通なんとちゃう?」
「やんなあ」

163:金曜日に変わった直後 3/5
09/05/17 17:38:23 kuHiDqmB0
会話はさらに淡々と続く。

「あとな、もう一つうじに聞きたいことあんねん」
「うん」
「これの打ち合わせん時、スタッフに『ちょっと大げさすぎるくらいの言い方や動きをするように心がけて下さい』って釘さされたやろ?」
「言われたなあ。『がっつりコントのノリでお願いします』とかな」
トーク番組でいくら台本がないと言えど、一応大まかな流れは存在するしリハーサルも行う。
視聴率獲得のため、多少の演出を制作側に求められるのは当然の話だ。

「おまえこれ、大げさに言うたりしたりしてるんか?」
「いやあ、全然。素のまんま…いやちゃうな、むしろその逆で、抑えてた方やけど?」
「やんなあ。俺だって、いらんことべらべら喋らんようにて、抑えてんもんなあ」

「……………」
「……………」
ふたりとも口にこそ出さなかったが、それぞれ頭の中では思っていた。
これは、漫才のネタにすればダダすべりに違いない、と。
なんせどちらもボケまくり(にしか見えない)で、互いにツッコむところがないのだから。

164:金曜日に変わった直後 4/5
09/05/17 17:39:09 kuHiDqmB0
「…うじ。俺、その、別にネタ振ったわけやないで?」
沈黙を気まずく思った大阪府大が、ほんのり頬を染めて京大を見上げる。
「わかっとるよ。そんな弁明せんかてええわ」
その上目遣いが、あいも変わらず愛くるしく、京大は大阪府大の瞼にちゅっ、と口づけを落とす。
「少なくとも俺たちにとっては、逆にコントのノリやと思ってもらった方が都合ええやろ?テレビではこんくらい抑えるぐらいでちょうどええねん」
「うん……あっ」
京大が大阪府大の首筋に唇を寄せ、軽く吸った。
弱いところを攻められて、大阪府大の体がビクンと跳ねる。
「けどな、本音言うたら実はそんなことないねん。俺たちは相思相愛や、菅は身も心も全部俺のもんやて、もっともっと言いふらしたり見せつけたりしたい気持ちもあるんや」
京大はゆっくりと大阪府大をソファーに押し倒す。
シャツをまくりあげ、親指の腹で乳首を弄れば、そこはすぐに硬くなりぷっくりと膨れ上がった。
「あっ、うじぃ……あかん、そんなん…」
「だからって俺らがこんなんしとるの…いや、その前におまえのこんなイヤラシイ姿、公共の電波に乗せるわけにはいかんもんな」
「なっ…そっ、そんなん俺かてイヤや!お前以外に見せるとか、じゃなくて、こんなんお客さんに見せれるわけないやろ!!」
かあっと赤くなり声を荒げる大阪府大に、京大は思わずふきだしてしまいそうになるのを必死でこらえた。
「やんなあ。お客さんもこんな風には笑ってくれへんよ。多分絶対ドン引きや」
つけっぱなしのテレビから断続的に上がる笑い声。
もちろんあの日の収録を観覧していた客の声に相違ない。
だけど――。

165:金曜日に変わった直後 5/5
09/05/17 17:39:58 kuHiDqmB0
「……うーちゃん」
「うん?」
大阪府大はふたりきりになり甘えモードに入ると、例外なく京大を『うーちゃん』と呼ぶ。
相方のスイッチが入ったことに気づいた京大は、大阪府大の胸の辺りを執拗に愛撫していた舌の動きを止め、顔を上げた。
「テレビ、消してや」
「何で?先に見よったんはおまえやろ」
「そらそうやけど……何や、逆に見られてるみたいでイヤや。集中できひん」
大阪府大は近くにあったクッションを顔の辺りに引き寄せて、少し潤んだ瞳で京大を見つめながら懇願する。
《ああ、もうこいつときたら何でこんなにかわいいんや。そんな顔されたら俺、敵わへんよ、すがちゃん》
京大はふうっと溜め息をついて、大阪府大に覆い被さっていた上体を起こす。
「ほんなら、寝室行くか?」
「…うん」
大阪府大はふわりと微笑んで、両腕を京大の方へ突き出した。
「うーちゃん、抱っこ」
「もう、相変わらずめっちゃ甘えたやなー、すがちゃんは」
そんなことを言いつつも、言葉の響きはちっとも嫌そうには聞こえない。
京大はくすくす笑いながら、大阪府大の体躯をよいしょっと抱き上げた。
男同士とはいえ、京大と15㎝差のある大阪府大の体は、抱えるにはちょうどよいサイズである。
「うーちゃん、ええ匂いする」
大阪府大は京大の首に腕を回し、顔に顔を近づけて耳元で囁く。
「いつもと同じシャンプーやん。ちゅーか、すがちゃん、シャワー浴びんでええのん?」
「ええよ、ってうーちゃん、俺がシャワー浴びる前からヤる気満々やんか」
「あ、やっぱバレた?」
「うーちゃん!」

大阪府大の大声とともにリビングの扉が閉められ、辺りには静寂が訪れ――たわけではなかった。
ソファーの隅に置いたままの大阪府大の携帯からは、メールの着信を告げる音楽が鳴り響き、つけっぱなしのテレビの画面には、背中合わせに立つ大阪府大と京大の姿が大写しになっているところであった。


166:風と木の名無しさん
09/05/17 17:43:31 kuHiDqmB0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



言うまでもなく妄想630%全開なんだぜ
最初飴話が大阪では1時間遅れの放送だって知らなかったんだぜ

毎度大阪府大が甘えん坊受バリバリ全開だけどいつか京大受も書いてみたいんだぜ



私信レス:前回「どっちが大事?」に感想くれた皆様、㌧㌧!

167:風と木の名無しさん
09/05/17 19:05:45 b66Rd+8c0
>>160
飴話、録画してあるだけでまだ観てないんだけど、GJ!
こないだの道案内でシャツにスケスケだった大阪府大の乳首(*´Д`)
やっぱり愛方に散々いらわれていたのか。

頼むわw >京大受

余談だが、関西弁って濡れ場になるとなんかやたらイヤらしく聞こえるよな。

168:オナホ 13-1
09/05/17 19:33:57 /+AbfWS60

オリジナル。現代もの。オナニー男のその後。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


志井の父はコンドーム世界売り上げ第1位の(株)志井商事代表取締役だ。
親のコネで入社した会社で、志井は常務としてオナホール部門を率いていた。
だが莫大な開発費を投じた1デイズの使い捨てオナホの売り上げが国外で伸び悩み、
志井商事は不採算事業であるオナホ部門をオナホール世界シェア第1位の
コール社(本社:ドイツ/インゲルハイム)に売却した。
現在、志井の下で働いていた5人の優秀なオナホ職人たちは、皆インゲルハイムの研究所に勤務している。
コール社が志井商事のオナホ部門を買い取る条件の1つが、彼ら全員のコール社移籍だったからだ。
5人がそろって移籍を決意したのは5人で研究を続けたかったからにつきる。
決してコール社が彼らに提示した金額の高さだけではない。
志井は部下たちを見送り、売買契約の書面作成や押印までの最終調整、
合意後の速やかな事業継承に向けたスケジュール作成などを終えた後、
一連の責任をとり常務を辞した。一時は志井商事を去ることも考えたが、
社長である父にオナニー専用コンドームの開発準備室を任され、今は室長を務めている。


169:オナホ 13-2
09/05/17 19:36:18 /+AbfWS60
いま志井は、オナホールに挿入する際に着用する専用のコンドームの開発に夢中だ。
志井の恋人だった「中出し推奨派」の三鷹という男は、
コンドームをつけてオナホに突っ込むのは無粋だと主張した。
けれどオナホとコンドームを併用し、ご自愛をするといい事がたくさんある。
オナホを汚さないから衛生的だし後片付けもらくちんだ。
オナニー後、甘美なけだるさに浸っていたい気持ちに折り合いをつけて、
死んだ精子が付着したオナホを洗っているときのむなしさを志井は知っている。
それだけじゃない。洗った後は乾かさなければいけない。干されたオナホは男の抜け殻みたいだ。
出すまでは悪くない。なのに出した後がわびしい。こんなのは嫌だ。
毎日もっと颯爽とオナニーをしたい。だから志井は1デイズの使い捨てオナホをつくった。
オナニーは後ろめたいものでも薄暗いものでもない。
いたって健全な男の楽しみだ。ごく当たり前な行為だ。そのはずだ。
1デイズの使い捨てに勝る衛生的かつ颯爽と使えるオナホはない。そう信じて開発に勤しんだ。
しかしながら時代がエコモードの昨今、オナホを毎日使い捨てるという案はノーグッドで、
志井らが開発したオナホは志井商事の主力商品にはなりえなかった。
コール社の数ある商品のうちのひとつとして、
「1デイズ使い捨てオナホ」の製造レーンは残っているが
世界的に需要があるかと言えば爆発的には無い。


170:オナホ 13-3
09/05/17 19:37:02 /+AbfWS60
コスト的にもオナホを使い捨てるのは正直厳しい。ならば薄皮を一枚脱ぎ捨てればいい。
捨てるのはオナホではなくコンドームだ。オナホとコンドームを併用してオナニーをする。
そうすれば射精後、先っぽに白濁の溜まったコンドームを捨てたら仕舞いだ。
オナホの洗浄というむなしい後始末をせずにすむうえ、
より衛生的にオナニーにふけることが可能になる!
何よりコンドームのもたらす着圧とオナホの内壁の形状が、
素手で剥き身のペニスをしごくだけでは得られない快感をもたらしてくれる。
射精という大ヤマに向かってカタルシスが邁進していくのだ。
そういうわけで志井商事はコール社と共同で新型オナホとオナニー専用コンドームの開発をはじめ、
志井は研究と実験をかねてオナニーに励んでいる。
どんな形状のオナホにどんな素材のコンドームをあわせれば、神の穴になるのか?
永遠の命題の解を求めて、日々くりかえす自慰はセックスよりも楽しい。
探りたいのはオナニーの深遠。夢は着けた方が気持ちいいオナ専コンドームの具現化だ。


171:オナホ 13-4
09/05/17 19:37:43 /+AbfWS60

志井の下半身はハードボイルドでノワール的だ。
オナニーをこよなく愛している志井は、日々夜々アスリートのようにオナニーをする。
その姿勢はやや病的だ。恋人だった三鷹という男に去られてから、
志井は以前にもましてオナニーに打ち込むようになった。
三鷹は化繊と植毛のスペシャリストだ。
志井が開発に携わっていた1デイズの使い捨てオナホの内部に、
ペニスをまんべんなく刺激する「長さと硬さが異なる極細繊維の束」を生やしてくれた。
もともと二人は単なるセフレだったが、
志井ともっと深まりあいたいと思った三鷹が志井を口説き落とした。
三鷹の目に映る志井は拒絶のオーラと魅惑の光を同時に発していた。
ベッドや布団に「身体を受け止められる感じ」が嫌いなのだと寝袋を常用し、
80㎡の2LDKには、オナニー専用のリクライニングチェア以外は、
ダイニングテーブルと付属の椅子しか置かないなど奇異な面も多々あったが、
無口で無愛想なくせに、セフレが必需品な程度に遊びなれていたし、
下戸そうに見えて、自分の好みを知っているくらいには酒もたしなむあたりは、
根が遊び人の三鷹的に好ましかった。何より、志井の少女マンガの世界の住人めいたキレイな顔には
最初から、ちょっとした好意以上の気持ちを抱いていた。


172:オナホ 13-5
09/05/17 19:38:15 /+AbfWS60
とはいえ、携帯している黒革の手帳には、世界各国の主要メーカーのオナホの発売日が記され、
買い忘れることなく購入してはオナニーにふけるほど、セックスよりオナニーが好きな
志井のファニーな個性は、「顔のアップがもう滅茶苦茶キレイ」なぐらいでは、
ごまかしきれない程に痛く滑稽だった。
理解することは容易ではない。三鷹は志井を知ってそう思った。
そう思ったら、理解したくなった。もっと志井を知りたくなった。
絡みにくい男だが、たまらなくかまいたくなった。だから口説いた。
そうして志井は口説き落とされ、三鷹と三鷹の巧みなセックスが大好きになった。
三鷹が運命のひとに巡り合ったのは、志井が三鷹との仲に永遠を感じはじめた頃だ。
まことの深みとか誠実さだとかそういうものが自分に欠けていることは、
百も承知で三鷹は志井にバイバイを言った。
二人の仲に終わりが生じたのは、ひとつの恋愛としてちゃんと成立していたからだ。
適当につきあっていたら、きっとしまりのない別れ方をしていただろう。


173:オナホ 13-6
09/05/17 19:38:43 /+AbfWS60
互いに相手をめいらせるような倦怠期が訪れるよりはやく、三鷹の心が変わったのは、
志井にとっては不運だったけれど、運命の相手だと確信できる男に巡り合えた三鷹は幸せだ。
その男と目があった瞬間、その一瞬が志井と過ごした数ヵ月を凌駕した。強く惹かれた。
三鷹は子供の頃、縁日でキラキラのザラメがふわふわの綿あめに変わっていく不思議に
目を奪われた事がある。三鷹が繊維の世界に身を投じたきっかけだ。
男との出会いは、その時とまったく同じで、前のめりな興奮を伴う衝撃的な出会いだった。
だから直感でわかったのだ。運命の男だと。
三鷹はいま地元金沢で蒔絵筆を作っている。
本来、蒔絵に使われる専用の筆にはネズミの背中の冬毛が使われるのだが、
鼠猟をする猟師の減少等で、蒔絵筆をつくるのに必要なネズミの毛が入手できないうえ、
筆の作り手の高齢化も進んでおり伝統的な筆は製作が困難になっている。
その為立ち上がったのが、コシが強く漆の含みのよい筆を化繊でつくるプロジェクトだ。
道具が消えれば職人も消える。地元の伝統工芸存続のために三鷹は技術者としてプロジェクトに参加した。


174:オナホ 13-7
09/05/17 19:40:48 /+AbfWS60
取材で輪島の若い蒔絵職人の仕事場に行った日、三鷹は志井を裏切ることを決めた。
彼の描く竹に装飾性と遊び心とアニミズムを感じた。彼の手と筆に目を奪われた。
アディダスのタオルを頭に巻き蒔絵を施している彼の横顔に、
10代の頃夢中だったバスケット漫画で精彩を放っていた、
主人公チームのシューティングガードがダブった。
はやい話、彼の外見も彼の作品も超好みど真ん中!どストライクだった。
真摯な瞳で漆器の表面に漆で竹を描いている若い男の横顔から、目が離せなかった。
片恋上等!たとえこの男と性器の結合によって歓びを共にすることができなくても、
ただ彼だけに心を寄せ続けていたいと強く思った。
この男が描きたいものを描き続けていけるよう、繊維のプロとして
何としても筆を作り上げるんだと心に決めた三鷹は志井との別れを決意した。
もう、どうしようもなかった。志井に抱いていた愛情や二人の思い出を、
ペガサスみたく軽やかに飛び越え、三鷹は若い蒔絵職人へと走った。
そういうわけで、志井はいま独り身だ。
ときどき志井は、三鷹との出会いは本当に素敵だったなと反芻する。
金色の夢をハイスペックな画素数で見ていたような数ヵ月だった。
三鷹は自分なんぞにはもったいない男だったのだと思う。
付き合っていた間、いつだって三鷹は志井を無理なく素直な気持ちにさせてくれた。
もうずっと前からあきらめていた自分の内面をまるごと受け入れてくれた。
別れたくはなかったけれど、自分と付き合い続けることが
三鷹の幸せに繋がらないなら、別れるべきだとハートでわかった。
だから志井は三鷹を見送った。後悔はしていない。


175:オナホ 13-8
09/05/17 19:42:01 /+AbfWS60
志井には心から打ち込める仕事がある。かけがえのない仕事があるということは、
かけがえのない伴侶がいるのと同じくらい贅沢な事だ。だから大丈夫。
それにオナニーという典雅な趣味だってある。
以前はペニスでの刺激でしかいけなかった志井だが、
交際中、三鷹がアナルを開発してくれたおかげで、いまは後の悦びだって知っている。完璧だ。
真夜中の2時につくばの研究所から帰宅し、志井は愛用のバイブを手に取った。
もっか志井は母校の名誉教授と伸縮自在の特殊フィルムの開発に取り組んでいる。
オナニーのためのコンドームを追及するのは楽しい。だが仕事のあとのオナニーはそれに勝る。
志井が手にしているのは太さと長さが三鷹とよく似た防水機能付きのバイブだ。
単4電池2個で得られるパワフルさと、フォルムが気に入っている。
志井の後孔によく馴染むバイブだ。
志井はバイブとローションのボトル3本を手にバスルームへ向かった。
志井が抱えているローションは志井の元部下で、ローション開発の世界的権威・Dr.仁科の手によるものだ。
志井の嗜好をよく知る仁科が先週、志井に1ダース送ってきたそれは
ドイツのバート・ヴィルトバート温泉の源泉をベースに、何種かのハーブと
乾いた男のアナルに最適な成分エクトインを高配合している。仁科の最新作だ。
エクトインは水分を捕らえて逃がさない。
このローションを使えば濡れないアナルに、気持ちよくバイブが入っていく。
志井は近頃とろっとろのローション風呂につかりながらする、バイブオナニーにはまっている。
バスタブにボトル3本分のローションを贅沢に投入し軽くかき混ぜながら、志井は胸を高鳴らせた。
まったりとしたお湯が志井を誘っている。だが、まだ入ってはいけない。
浸かるのは身体を清めたその後だ。


176:オナホ 13-9
09/05/17 19:43:04 /+AbfWS60
バスチェアに座って身体を洗い、ついでにシャワーで前を刺激する。
両脚を大きく開き右手で亀頭にシャワーをザーザーあて、
左手でそこを弄っていると身体が火照ってきた。
志井の頭は一旦シャワーを弱くしろと命じたが、体がシャワーをますます強くした。
足の裏が熱い。頬が紅潮する。気持ちよくてたまらない。あっという間に勃起した。
ヘッドからお湯が束になって迸る。それが満遍なく志井の股間を気持ちよくしている。
シャワーヘッドを鈴口に近づけては喘ぎ、遠ざけては悶えをひとしきり楽しんだ後、
志井はシャワーを壁に固定し、開いた股間に心地よい水圧による刺激を受けながら
両手で思いっきりご自愛をした。オナニーの背徳性なんて知らない。羞恥心だってない。
変態でいい。三鷹がしてくれたみたいに志井は夢中で手を動かした。
悔しいけどペニスはまだ三鷹の大きな手を覚えている。これは自分の手だ。三鷹じゃない。
志井の手じゃ神の指を持つ三鷹の手には及ばない。
それでも己の気持ちよいところを知り尽くした両手に力を込めて、
三鷹が教えてくれたリズムで上下させていると直ぐに絶頂がやってきた。
股間から命が湧き出してくる。
おさえきれなかった声を風呂場中に響かせて志井は達した。息が荒い。
呼吸を落ち着かせた後、志井は死んだ精子で汚れた股間を洗い流し、
気だるい身体をローション風呂に沈めた。


177:風と木の名無しさん
09/05/17 19:57:47 BjioLfUXP
支援?

178:オナホ 13-10
09/05/17 20:02:36 /+AbfWS60
ハーブの新鮮な芳香に包まれながら、とろみのあるお湯に手足を伸ばす。
あっという間に志井の体は股も胴も四肢もぬるぬるになった。
志井は今しがた全力で駆け抜けるような射精をしたペニスを、
ローションをまとった左手でごく軽く3回半扱き、
「お疲れさん」と、とびきり優しくひと撫でした後、
会陰にもローションを伸ばし、会陰から後孔へと指をすべらせた。
指の腹を使い開口部にローションをなじませ行き渡らせる。
深く浅く、ローションまみれの指を出し入れしている最中唐突に、
三鷹が脚を持ち上げて深くペニスを挿れてくれたのを思い出した。体のあちこちが三鷹を覚えている。
いった直後にお掃除フェラと称して射精後の敏感なペニスを何度も吸い上げられた。
ペニスをくわえてくれた三鷹の口や、先っぽを舐めてくれた舌が頭をよぎる。
三鷹とのセックスは忘れない。忘れられない。
タマを揉まれた。お尻のほっぺたを揉まれた。右の乳首を舐められた。左の乳首を摘まれた。
お臍を舌先でくすぐられて勃起した。抱かれて揺さぶられると自然に腰が動いた。
鼻先にキスを受けた。唇を吸われた。大好きだった。
志井は股を大きく開き、ローション濡れのバイブを後孔に近づけた。
三鷹はもういない。でも思い出とバイブがある。だから独りの夜も寂しくない。
バイブを両手で静かに沈め、三倍速で引き抜く。
それからまたゆっくりと、バイブを根元まで挿入した。
ああ、とってもいいな。満たされる。


179:オナホ 13-11
09/05/17 20:03:09 /+AbfWS60
バイブをうごめかす度ローションにまみれた後孔が卑猥な音を放つ。
ひとしきり手動で楽しんでから、志井はバイブレーション機能をオンにした。
リズムよく押し寄せる強弱のある振動と、焦らすような優しい刺激が
かわるがわるやってくるランダムモードを選び、後孔の事はバイブにまかせる。
フリーになった両手を前にもっていき、右手でペニスを持ち左手で先端を弄りながら、
志井はソファの背に寄りかかるように浴槽にもたれた。
ローション風呂に抱かれていると心がやすらぐ。気分は羊水の海に漂う胎児だ。
バイブがちょうど、まったりモードなのも気持ちに影響しているのかもしれない。
ゆるやかな波のようにやってくる優しい揺らぎが心地よかった。
「ちょっとだけ、寝ようかなぁ……」
独り言をいい目を閉じる。まどろんでいたら突然バイブの動きが切り替わり、
メリハリのある刺激がフォルテッシモでズドーンッとでやってきた。
「アンッー!」
思わず喘がされ自嘲する。だがこれがいい。ペニスも悦んでいる。
志井は深い笑みをうかべ、内壁に染み入るようなバイブの振動をむさぼった。
自作自演でも快楽は得られる。汗ばんだ体を震わせながら、
志井は惚けた顔でマントヒヒのようにオナった。
しょせん恋愛より自愛派だ。もしもまた誰かといつか付き合えるなら、
セックスが三鷹と似てる男がいい。


180:オナホ 13-1
09/05/17 20:03:29 /+AbfWS60
バイブをうごめかす度ローションにまみれた後孔が卑猥な音を放つ。
ひとしきり手動で楽しんでから、志井はバイブレーション機能をオンにした。
リズムよく押し寄せる強弱のある振動と、焦らすような優しい刺激が
かわるがわるやってくるランダムモードを選び、後孔の事はバイブにまかせる。
フリーになった両手を前にもっていき、右手でペニスを持ち左手で先端を弄りながら、
志井はソファの背に寄りかかるように浴槽にもたれた。
ローション風呂に抱かれていると心がやすらぐ。気分は羊水の海に漂う胎児だ。
バイブがちょうど、まったりモードなのも気持ちに影響しているのかもしれない。
ゆるやかな波のようにやってくる優しい揺らぎが心地よかった。
「ちょっとだけ、寝ようかなぁ……」
独り言をいい目を閉じる。まどろんでいたら突然バイブの動きが切り替わり、
メリハリのある刺激がフォルテッシモでズドーンッとでやってきた。
「アンッー!」
思わず喘がされ自嘲する。だがこれがいい。ペニスも悦んでいる。
志井は深い笑みをうかべ、内壁に染み入るようなバイブの振動をむさぼった。
自作自演でも快楽は得られる。汗ばんだ体を震わせながら、
志井は惚けた顔でマントヒヒのようにオナった。
しょせん恋愛より自愛派だ。もしもまた誰かといつか付き合えるなら、
セックスが三鷹と似てる男がいい。


181:オナホ 13-12
09/05/17 20:03:51 /+AbfWS60
すみません。ミスりました。

ドイツと日本の時差は8時間ある。志井がオナニーにふけっていた未明、
六六六は仕事をしていた。
六六六と綴ってミロク。珍しい苗字を持つ32歳のデザイナーは、
志井の元部下で、共に1デイズの使い捨てオナホを開発した仲だ。
ドイツに引っ越す際、六六六は一日引きこもってオナニーをすることもある、
オナニー至上主義者で就寝には寝袋を愛用している4つ下の、
ファニーで不健康な元上司を日本に残していくことが気がかりだった。
六六六の目に映る志井は保護してあげないといけない子だ。
生活習慣の改善に向けて自分に出来ることがあれば何だってしてやりたかった。
ベッドで体を休めて欲しいと願い、ポケットコイル・マットレスのベッドを贈ったり、
殺風景で寒々しい部屋に憩いをと、オーガスタの鉢を贈ったりもした。
六六六の心配の種だった志井が、六六六も良く知る三鷹という男と
交際をはじめたことを知った際、異性愛者の六六六は男同士のカップリングに、
驚きを隠せなかったが、三鷹になら志井をたくせる気がした。
三鷹と一緒になる事が志井のライフスタイをきっと豊かにしてくれる。そう確信した。
だからこそ、別れたことを三鷹から聞かされたとき、志井は三鷹を殴りたくなった。
仕事中、ときどき元上司のことを思い出す。三鷹に放られ、心に傷をおってなければいいんだが……。
ニュータイプのオナホのデザイン画を前に溜息をついた六六六の顔を、
同僚の五代が「まだ悩んでんの?」と覗き込んだ。


182:オナホ 13-13
09/05/17 20:04:55 /+AbfWS60
六六六の前に広がっているデザイン画は先日のミーティングで、
ボスから「大量生産できない。形状を考慮しろ」といわれたものだ。
「あんたのデザインは俺が具現化してやる。だから、あんたはOKの基準を下げんなよ」
五代はそう言い切り、六六六の肩を叩いて去っていった。
五代の言葉は嬉しかったが、先ほどの溜息はオナホとは何の関係もない。
デザイン画はたまたま広げていただけだ。
心の奥で五代にわび、六六六は気持ちをお仕事モードに切り替えた。
金型をつくり工場を動かす。五代はそのプロだ。
外見はいかにも仕事の出来なさそうなチャラい男だが、精密な金型づくりも、
巨大な工場の設計も、工場を実際に動かすオペレーターのための運転マニュアルの作成も、
天才五代はさらっとこなす。頼りになる男だ。
ちょっと形成できなさそうなデザインでも、機能的にその形がベストだと確信したら、
五代は必ず具現化してくれる。だからと言って五代に甘えていてはダメだ。
より無駄の無いデザインへとブラッシュアップさせなければ。
六六六はデザイン画に熱視線を落とした。
そうだ、このオナホの試作品ができたら、それを手土産に元上司の顔を見に行こう。
ふと思いつき六六六はそう決めた。
いつも横顔を凛と引き締めている、なかなか笑わない薄い唇が、
オナホを見てにこりとしてくれたらとても嬉しい。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
完。 投下中、連投規制にひっかかりました。
ご迷惑をおかけしてすみません。支援ありがとうございます。


183:風と木の名無しさん
09/05/17 22:50:22 BV5BbXt+0
>168
オナホ姐さん、お帰りー!!
彼らのその後が読めて嬉しかったよ
さらにその後にも期待w

184:風と木の名無しさん
09/05/17 23:11:20 MTo2IS7nO
昨日投下した高校生801未満の続きです。
一応青木×澤村のつもりで書いてます。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

185:1/5
09/05/17 23:12:31 MTo2IS7nO
かあん。小気味いい金属音とともに、テレビの向こうで歓声が上がった。
球はぐんぐん伸びて、ライト側フェンスに直撃した。サードランナーがホームベースを踏む。
俺は思わず立ち上がり、叫んだ。
「よっしゃあ!」
テレビの中で俺の愛する竜戦士たちが跳び跳ねていた。延長11回、やってくれると俺はもちろん思ってた。
さっきまでの暴言はちょっとした気の迷いだ。
「あら、終わったの?
 じゃあチャンネル回してよ、まだドラマやってるから」
母さんの声が台所から聞こえるが、そんなのもちろん却下だ。
「まだヒーローインタビューあるから無理!」
心の中で青木にお礼を言う。今日の帰りあいつに会わなかったら、俺はこんなに素晴らしい試合を見逃すところだった。
「放送席、放送席」
アナウンサーの声も心なしか弾んで聞こえる。お立ち台に上がったのはもちろんサヨナラのバッターだった。
マスコット人形を抱えて観客に手を振るその姿は、日本男児たる者一度は必ず憧れたことのあるものに違いなかった。
しかし、さっきのは実にいい当たりだった。テレビを眺めながら思う。
俺はホームランの感触を思い出していた。

186:2/5
09/05/17 23:13:30 MTo2IS7nO
芯で捉えられたボールに重さはない。拍子抜けするくらいにあっけなく、バットときれいに反発し合うのだ。あれは本当に気持ちがいい。
そんなことを考えているうちに、ヒーローインタビューは終わった。
「母さん、何チャンネル?」
首を回して母さんに声をかけると、少し呆れたような怒ったような声が返ってきた。
「もうとっくに終わっちゃったわよ。
 野球と違って、ドラマに延長はないんだから。」
私だってたまにはテレビくらい見たいわ、とこぼしながら食器を拭く母さんに非常に申し訳なくなって、明日は母さんの好物のおはぎを買って帰ろうと心に決めた。
ただし明日もテレビは譲らないが。
「じゃあ俺、勉強するから」
言って階段を上がる俺に、母さんはどうだか、とため息をついた。親というのはさすがだ。俺はもう今日は寝るつもりだった。
明日は早く学校に着いて、今日の芸術的サヨナラについて青木と語り合おう。



「おーす、青木」
朝俺が目一杯早く(といっても始業30分前だが)教室に着くと、青木はもう席に着いて今日の予習をやっていた。
「おー澤村」
俺が声をかけるとその手を止めて、こちらを向いた。相変わらず犬みたいに人懐っこい笑顔だと思った。

187:3/5
09/05/17 23:14:48 MTo2IS7nO
「昨日はサンキューな。
 お前のおかげでいいことあったわ。」
俺が言うと青木は目をまんまるにして、それから顔を真っ赤にして笑った。
「まじで!?俺、超嬉しい!」
ああ、本当に犬みたいだ。今にも尻尾を振り出しそうだった。
「俺今日落ち込んでたんだけど、今ので一発で元気出たぜ!」
立ち上がって、椅子の背越しに俺に抱きつきながらそう言う。スキンシップの過剰な奴だと思った。ますます犬っぽい。
「はあ?お前、なんか落ち込んでたのかよ。」
首と肩の間ににぐりぐりと押し付けてくる頭を手で押しやりながら訊いてやると、奴はいかにも重要なことであるかのように、言った。
「ほら、昨日巨人がサヨナラ負けしちゃったじゃん?」
はた、と俺は動きを止めた。今信じられない言葉を聞いた気がしたが、念のためもう一度確認してみる。
「…今、巨人って言ったか?」
「え、うん。」
その声が聞こえるやいなや、俺は俺の首に巻きついていた青木の腕を引き剥がし、肩に乗っていた頭を押しのけて立ち上がった。
「さ…澤村?」
青木はわけがわからないといったふうに俺を仰ぎ見ていた。こんな奴を一瞬でもいい奴だなんて思った俺が馬鹿だった。
「巨人ファンと話すことはない」

188:4/5
09/05/17 23:15:54 MTo2IS7nO
俺は吐き捨てるとその場を立ち去った。
といっても、斜め前でこちらをくすくす笑いながら見ていた谷川さんのもとへ行っただけだが。
「あはは、男の子ってほんとにわけわかんないことでケンカするよね。」
そう言って笑う谷川さんはとても可愛い。そうだ、本来「可愛い」っていう単語はこういうことを言うのだ。
青木みたいなでかい野郎に使うような言葉じゃない。どうやら昨日の俺はどうかしてたようだ。
と、そんなことを考えていたからなのかもしれない、青木が背後から近寄っていたのに気付かなかった。
「澤村ぁ、お前どこのファン!?」
そんな声と同時に急に後ろを向かされて、ひっ、という間抜けな声が出てしまった。
そして青木がこっちをあまりにまっすぐ見てくるから、なぜだかちょっとどきどきした。
「ちゅ、中日だけど…」
そう言うと青木は俺の両肩を掴んだまま大声で言った。
「じゃあ俺も今日から中日ファンになる!」
だから嫌いにならないで、と何度も肩を揺さぶる青木を見てたら、俺はまたしても噴き出してしまった。ほんとに馬鹿というか、犬みたいな奴だ。
「馬鹿、別にいいよ。別にこんなことで本気で人を嫌いになるわけないだろ?」

189:5/5
09/05/17 23:16:47 MTo2IS7nO
ほんとに?と涙目で俺に問いかける青木は、でかい野郎なのにやっぱり可愛いかった。
ああほんとに、と答えると、そのまま抱きつかれた上に泣かれた。しょうがないから背中を撫でてやったら、また澤村大好き、と叫ばれて、顔が赤くなるのがわかった(だっていくら相手は野郎でも恥ずかしいじゃないか)。
「あはは、二人ともラブラブね」
谷川さんに言われ、俺はちょっと慌てて青木を引き剥がすと、こいつがスキンシップ過剰だからさ、と照れ笑いをした。こういうからかいは得意じゃなかった。
でも青木なら器用に返すんだろうな、と思いながら隣のでかい犬を見ると、真っ赤な顔で俯いていた。
それを見ていたらなんだか俺も妙に恥ずかしくなって、口ごもってしまった。
谷川さんはそんな俺らを見て、さらにくすくす笑っていた。

190:風と木の名無しさん
09/05/17 23:17:11 MTo2IS7nO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お粗末さまでした!

191:風と木の名無しさん
09/05/17 23:32:01 4AGeRbN60
>>184
ひどい!なんてひどいヤツなんだ澤村!!いいぞもっとやれwww
とりあえずたまには母ちゃんにドラマを見せてやるんだ。

青木は早く恋心を自覚してあわあわしたらいいと思います。
そして青木はドラキチの澤村のために卜゙アラの動きをマスターしたらいいと思いますww

192:下手 米英 「あの頃は。」1/2
09/05/18 00:08:10 XIU8UGzpO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



公園のベンチ。
昼下がり。

例えば、隣にいるのが他の誰かなら。
俺はこんな複雑な感情を抱かないだろう。

「……なあ」
「ハンバーガー食べてるから、邪魔しないでくれないかい?」
「聞いてればいいからよ」

隣は見ない。
伝えたいのは、こいつじゃない。自分にだから。

「鼻に付くんだ。お前が。」
「……」
「大切、だった。今も、あの頃は大切だ。……殴っていいなら、今すぐ殴るくらいにはお前が嫌いだ」

もぐもぐ。
アルフレッドがハンバーガーを咀嚼する音が聞こえた。

「だけど、大事、なんだよなぁ……」
「鬱陶しいよ、キミ」
「KYメタボ野郎に言われたくねーよ」

そのまま、しばしの静寂。


193:下手 米英 「あの頃は。」2/2
09/05/18 00:09:34 XIU8UGzpO
「よくわからないよ。」
「あ?」
「きっと、何年も、何十年も、何百年もかかる」
「何の話しだ?」

唐突に始まった話しに、
俺はようやくアルフレッドの顔を覗き込んだ。

「キミを好きかどうかさ」

こいつも複雑そうな顔をしていた。俺たちは、関係を切った筈だった。
だけど、未だにあの頃を引きずり、
あの頃に抱いた感情を刷り込まれている。

新しい未来を選んだのに。
俺たちは。

「また、不味いスコーン焼いてくれよ」
「不味いは余計だ。……気が向いたら作ってやる」

年を取った俺たちは、また、過去を棄てきれないでいる。

新しい関係になるためにもう一度、さよならを。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


194:風と木の名無しさん
09/05/18 01:28:07 9NvqGdwc0
(・∀・)イイ!!

195:風と木の名無しさん
09/05/18 10:27:14 In+OAc+Z0
>>168
ぐはぁっ、待ってましたよ!オナホ姐さん。待ってた甲斐がありました。
感激屋のご自愛志井ちゃんのその後が気になってましたが、
別れちゃったのかぁ・・・。三鷹好きだったので残念。
だけれども!デザイナーさんとの成り行きには期待大。

196:風と木の名無しさん
09/05/18 15:49:23 b7zZ0hWv0
>>160
飴話キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!GJ!GJ!
Sっ気を見せる京大に萌えたw
京大受けにも激しく期待

197:風と木の名無しさん
09/05/18 19:27:23 8FYNFSQM0
誰か府知事受も書いてくれ

夢にも思わなかったトヲル萌えに目覚めた >前スレ
あの人のかわいさに気づかなかった自分を殴りたい

198:風と木の名無しさん
09/05/19 00:19:53 mBGHjvza0
>>160
放映できない愛方話を期待しておりますw

199:風と木の名無しさん
09/05/19 21:42:45 Ot2+xrqQ0
前回は暖かいコメント本当にありがとうございました。
皆さんのおかげで続きを投下する勇気が出ました。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  駅擬人化 青梅線 拝島駅×昭島駅。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  前回の続きです。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

200:駅擬人化 青梅線 拝×昭 中編 1/4
09/05/19 21:44:00 Ot2+xrqQ0
西立川駅が去った後、そのまま不貞寝を続ける気にもならなかった俺は自分の駅に戻った。
帰り際にどうしても気になって昭島駅に寄ってみたけど、
奴が近くにいる気配はしてもどこにいるかまではやっぱりわからなかった。

戻ってきてからも何かもやもやといろんな考えがまとわり付いて離れない。
ホームのベンチに座り込んでぼんやりと何本もの電車を見送った。
もし本当に昭島駅が今色々大変なんだとしたら助けてやりたい。
今日だって立川駅が大変だったなら昭島駅にも相当人が来ただろう。
そうじゃなくてもそもそも酷い態度を取ってきた。謝りたい。
一方でもっともっと自分や自分の周辺が発展して欲しい気持ちも否定できない。
当たり前だ。俺は駅なんだから。より人間に求められる存在になりたい。
そういう自分が欲しくても手に入らないものを手に入れようとしているやつに
どうやったら優しくなれんだろう。

俺の中の二つの気持ちは、永遠にどっちも譲らないし和解も出来なそうに思えた。
俺って我侭すぎる。昭島駅と仲良くしてたいくせに、昭島駅より使えない駅になりたくねーんだ。
西立川駅や国立駅はおんなじ風に思ったりしなかったんだろうか。
思ったことあんならどうやって折り合いをつけてんだろ。
俺はこんなままじゃまた自然に昭島駅とやってくなんて絶対無理だ。
きっと何したって嘘んなる。


201:駅擬人化 青梅線 拝×昭 中編 1/4
09/05/19 21:45:01 Ot2+xrqQ0
「あーもう!」
イライラする。今は何より自分の身勝手にイライラする。
夕方に差し掛かった日曜の下り電車は飽きもせずまた遊びから帰ってくる客を次々と俺の所に降ろしてきたから、
俺はそれを憂鬱な気持ちで迎え入れた。
彼等がどこから乗ってきたかは見ればわかる。新宿、東京、渋谷、原宿、吉祥寺、立川、
ごもっともなラインアップの人々は誰もが充実した一日に満足した様子で、
そんな彼等の気持ちのおかげで自分の憂鬱も大分やわらいだ。
全ての駅がそうであるように、利用客の満ち足りた気は何よりのごちそうだ。
だからもっといい駅になって、もっと喜ばれたいと思う。
急ぎ足で改札へ向かう客たち中にちらほらとだけど昭島駅からの客もいた。それでも昔に比べれば大分増えてる。
洋服の袋を持ってる女性や映画館帰りの家族連れ。彼等の明るい表情を見て素直によかったと思った。

「…あ。」
そうじゃんか…。なんで今まで忘れてたんだろう。
一番大事なのはこれだったはずだ。
俺のところから、いろんな人が自由にいろんな所に行って幸せだったらそれで良いじゃんか。
昭島駅が便利な駅になったからといって、俺がいらなくなるわけじゃない。
昭島駅がよくなれば俺んとこも良くなるし、逆もまたそうなはずだ。
駅と駅はつながっていてはじめて意味があるんだから。
「どこにも妬む理由、ねーじゃん。」
馬鹿だ俺。昭島駅に追い越される焦りとやっかみばかり強くなって、
いつのまにか昭島駅から帰ってくる人達を見なくなってた。彼等だって俺を使ってくれる人たちなのに。
もっとちゃんと自分自身を見つめていればとっくに気付いたことだった。

―昭島駅に会いたい。

いてもたってもいられなくなり、次の瞬間俺は飛んでいた。

202:駅擬人化 青梅線 拝×昭 中編 3/4
09/05/19 21:46:23 Ot2+xrqQ0
午後の最初のピークを過ぎた昭島駅は、それでも絶えず人が行き来していた。
またしばらくすれば平日ほどではなくても上り方面からどっと人が帰ってくるはずだ。
勢いで高架した駅の改札前に来てはみたものの、あたりに昭島駅はいなかった。
近くにいる事は感じられるが、いつも座っているホームのベンチにもいない。

さがさねぇと。でもどうやって?
昼間西立川駅に言われたことを思い出す。
「練習っていっても…どうすりゃいいんだろ。」
とりあえず目を閉じて昭島駅の気配だけに集中してみる。すると、なんとなく気配が一つの方向に収束してくる気がしてきた。
と同時に、昭島駅以外の駅の気配に気付いた。誰かと一緒にいる。こいつらは…。
さらにその方向に気を向けると閉じた目に映像が浮かび上がった。
そこは駅に隣接された複合デパート内のフードコートだった。オープンスペースのテーブルに着いた昭島駅と、他に二人。
中神駅と東中神駅だ。ガキどもはコート内のマリオンクレープで買ったであろう甘ったるそうなクレープを嬉しそうに食べてる。
もっと集中すると声も聞こえてきた。

「おいしかったー。悪ぃな昭島駅、奢ってもらっちゃって。」
全然悪そうに思っていない中神駅が言った。
「ごちそうさまです。」
東中神駅の方はきちんと頭を下げる。
「ううん。手伝ってもらったお礼だから遠慮せず食べて。
君たちも沢山僕の分の気を引き受けて疲れたでしょ。」
昭島が笑いながら手をパタパタと振る。


203:駅擬人化 青梅線 拝×昭 中編 4/4
09/05/19 21:47:45 Ot2+xrqQ0
「今まで知らなかったけどでかくなるって大変なんだな。ま、俺等はどうせ暇だから全然いいけどよ、」
「僕達じゃ役者不足で大して力になってないと思います。」
弱小駅だもんねーとおどける中神駅に同意するように東中神駅が頷いた。
「そんなことないよ。ちょっと手伝ってもらう位で良いって立川駅も言ってたし。」
「そう?でもなんか顔色良くねーしやっぱ拝島駅にも教えて頼んだ方がっぃてっ!」
話の途中でうめいた中神駅が屈んで足元をさすりながら隣の東中神駅を睨みつけた。
中神駅はそ知らぬふりで口を開く。
「この後もお手伝いしたいのは山々なんですが…。」
「あっいいよいいよ。大丈夫。君たちのところもこれから下り客が増えるでしょ。」
「そーなんだよな。ま、お互い頑張んべ。」
「無理しないでくださいね。もしもの時は福生駅に頼めばいいと思います。」
「うん。そうするよ。ありがとう。」

クレープを食べ終わった二駅はそれぞれ自分の駅に戻って行き、後には昭島駅だけが残った。
「うーん…。あいつらにも心配かけてるんだ。もっとしかっりしなきゃなぁ。」
残された昭島駅はそう呟いて伸びをした。その上を見上げた顔と、丁度目があった気がした。
「…拝島駅?」
その瞬間その場から昭島駅がいなり、慌てて意識を戻すと目の前に昭島駅が立っていた。


204:風と木の名無しさん
09/05/19 21:49:18 Ot2+xrqQ0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) お目汚し失礼しました。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


205:風と木の名無しさん
09/05/19 22:32:46 e0C/IZOr0
>>204
続きktkr!いままで駅なんてまったく興味無かったのに姐さんのおかげで気になってきたじゃないか!
後編楽しみに待ってます

それにしても最近擬人化が熱いなw

206:風と木の名無しさん
09/05/19 22:33:16 e0C/IZOr0
うわあageてたすまん

207:風と木の名無しさん
09/05/19 22:56:28 mBGHjvza0
>>199
続きキター!
昭島、可愛いなあ…w 拝島、ガンガレよ!
何気に福生が気になりますよ

208:風と木の名無しさん
09/05/19 23:29:50 fUZFnqbwO
一昨日の801未満続きです。
レスくださった姐さんの言葉に触発されて書きました。
後悔はしていない。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

209:1/6
09/05/19 23:35:54 fUZFnqbwO
「澤村ー!さーわーむーらー!」
喧しい声と共に、バタバタという足音がこちらに近づいて来る。本当に犬みたいな奴だ。もう少し慎みというものを持ったってバチは当たらないだろう。
手当たり次第に叫びながら教室の戸を開けているらしく、ここかっ、という声と共にがらがらというけたたましい音が廊下に響いている。
「ここかっ!」
やっと俺のいる教室にたどり着いた青木が戸を勢い良く引いた。もちろん俺はとっくに教卓の下に隠れているから、見えるのは谷川さんだけなのだが。
「おはよう、青木くん」
いつものくすくす笑いで、谷川さんは青木に声をかける。
「あ、ごめん谷川さん。澤村見なかった?」
青木は少し恥ずかしそうにはにかんで、谷川さんにそう訊いた。
英語の辞書をめくっていた谷川さんはその手を止め、少し首を傾げながら言った。
「澤村くん?悪いけど見てないなぁ。」
青木は、そうかありがとう、と少し落胆したように言ってまた教室を出ていった。
ここかっ、と声をあげるのはやめにしたのか、廊下には戸を引くがらがらという音だけが響いていた。
「澤村くん、青木くん行っちゃったよ。」
谷川さんがくすくす笑いながら俺に声をかける。
「ごめん谷川さん」

210:1/6
09/05/19 23:36:20 fUZFnqbwO
教卓の下から這い出ながら、ありがとう、とつけ足す。
「どういたしまして。
 それで、今日はどうしてケンカしてるの?」
谷川さんは相変わらずのくすくす笑いで俺に訊ねた。
「いや、ケンカっていうか、俺が勝手に逃げてるだけなんだ」
「そうなの、じゃあどうして逃げてるの?」
俺はう、と言葉に詰まる。谷川さんはにこにことこちらを見ている。俺は意を決して言葉をふり絞った。
「それがあいつ…なんか、気持ち悪くて」
谷川さんは一瞬きょとんとして、それからまたいつものくすくす笑いに戻って、どういう意味?と訊ねた。
谷川さんの予想より柔らかい反応に俺は安心して、そうすると俄然青木の所業を話したい気分になった。
「それがさ、昨日あいついきなりドアラの真似しだして」
言いながら昨日の青木を思い出してしまい、思わず噴き出しそうになるのをなんとか堪える。
昨日の青木は似てる似てないなんぞというそんなものではなかった。そのものだったのだ。
あいつが巨人ファンでさえなかったら、ドアラの中の人への就職をおすすめしたいレベルだった。
「本気で似てたんだ…不覚にも爆笑しちゃってさ、そしたら急にこう、俺の手ぇ握って『澤村、野球部入って!』」

211:3/6
09/05/19 23:38:07 fUZFnqbwO
最後は渾身の声マネだ。言いながらあまりの恥ずかしさに思わず顔を両手で覆った。
今時少女漫画でもあんなくさい告白はないに違いない。
しかもそれがドアラのモノマネのあとだ、俺の全身が総毛立ったのは言うまでもない。
恥ずかしいやら気持ち悪いやらで、その要求を聞くまでもなく、断る、と叫んで俺はその場から走り去った。おそらく膝の怪我をしてから最も速かった(と思う)。
「そんで昨日は逃げきれたんだけど、さっき学校着いたんだけどあいつ昇降口で待ち伏せしててさあ」
「あはは、また手握られた?」
ご名答!俺は片手で目を覆って、黙ったまま頷いた。恥ずかしすぎる。
とそこであることに気づいた。
「あれ、てかあいつ朝練は?」
馬鹿かあいつは。部活の勧誘で部活をサボってどうするんだ。
すると谷川さんは目を丸くした。
「え?今日からテスト週間だよ、澤村くん」
え?
今度は俺が驚く番だった。まさかもうそんな時期だとは。まだまだだと勝手に思い込んでいた。
「やばい…」
なんたってここのところ全く勉強していない。今教科書の何ページまで進んでいるのかすらわからない。
脳裏に赤点の山がありありと描き出された。まずい、まずすぎる。

212:4/6
09/05/19 23:39:50 fUZFnqbwO
しかし全く以て回避の方法が思い浮かばなかった。
「どうしよう、谷川さん…」
思わず知らず、声が震えた。青木に構ってる暇はますますもってなくなった。
脳内で青木(というかゴールデンレトリバー)が耳を垂れて下を向いた。ええい、お前なんぞに割くような時間はない。
「あはは、きっと大丈夫よ。
 それにわからなかったら青木くんに聞けばいいんじゃない?」
そうか、その手がある。俺の中で何かが閃いた。
教室の戸をがらりと開け、腹の底から叫んだ。
「青木ィ!」
するとどこにいたんだか青木がものすごい勢いで駆けてきた。
「澤村、入る気になってくれたの!?」
またも俺の手を取って言う。振り払ってやりたいとこだがぐっと堪えて言う。
「条件がある。」
何、とがっつく青木を制止しつつ、話しはじめる。あまりきらきらした目で見ないで欲しかった。こいつと目が合うと、なんでか苦しくなるからだ。
「まずひとつ。
 俺は野球部には入らない。お前だけにコーチすればいいって言うんならやってやらんでもない。」
青木は予想通りどうして、と詰め寄った。
俺以外の奴らにも教えてやってよ、と俺の目をまっすぐ見て言う。
俺の顔はきっと真っ赤に違いなかった。

213:5/6
09/05/19 23:41:24 fUZFnqbwO
青木に手を握られたくらいでこんなになってしまうというのなら、いずれできる(予定の)彼女と手を繋いだ暁には俺はどうなってしまうのか、少し心配になった。
「最後の大会まで三ヶ月きってるっていうのに今更入れるわけないだろバカヤロウ。
 そんなことしたらお前らの信頼関係パァだボケ。キャプテンならそんくらい考えろバカ。」
一息にそれだけ言いきると、青木は目に見えて落ち込んでいた。仕方ないから頭を撫でてやろうかと思ったら、手は青木に握られていてふさがっていた。
だから俺のデコを青木のデコにくっつけて、言った。
「キャプテンが上手くなるだけでチームは上向く。
 俺はスパルタだぞ。三ヶ月、覚悟しとけよ。」
握られていた手がほどかれた。と思ったら、背中に腕が回って、抱き締められていた。
「俺やっぱ澤村超好き!」
また胸の奥の方が苦しくなった。相変わらず顔も熱い。しかしなんだか幸せだった。
ふと顔の横にある青木の顔を見てやると、青木の顔も真っ赤だった。
「あー…青木?もうひとつ、条件あるんだけど」
「何ー?」
ぎゅうぎゅうと俺を抱き締めながら青木は言った。今にも尻尾を振りだしそうだった。
「その…さ、悪いなとは思うんだけど」

214:6/6
09/05/19 23:42:43 fUZFnqbwO
「勉強教えてくんない?」
俺がおそるおそるそう切り出すと、青木はなんだそんなこと、と笑った。
「俺でいいならいくらでも教えるぜ!」
澤村の家にも上陸できるしな、と青木はつけ足した。誰も家まで上げるとは言ってない。
まあべつに悪かないが。帰りに母さんのおみやげにおはぎを買って、それで俺の家で勉強しよう。
そんなことを考えていたら、谷川さんのくすくす笑いが聞こえた。
「本当に二人ともラブラブね、もしかして私お邪魔かなあ?」
はっと我に返って、青木を引き剥がすと、とんでもない、と慌てて言った。
顔から火が出そうだった。
青木の顔を盗み見た。どうやら奴の顔も火出る寸前みたいだった。

215:風と木の名無しさん
09/05/19 23:43:33 fUZFnqbwO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

途中ナンバリングミスりましたすみませんorz
お粗末でした!

216:風と木の名無しさん
09/05/20 00:00:55 PvRbz0910
>>208
顔が近い!顔が近いよ澤村!!!(*´Д`)
ここが学校じゃなかったら青木は勢いに任せてアッーかとハラハラした。
ワンコ攻め×男前受け大好物です。本当にありがとうございます。
谷川さんは一服の清涼剤。テストガンガレ若人。

しかしドアラ…言ってみるものだな。

217:風と木の名無しさん
09/05/20 00:21:04 lGPzEGDhP
ドアラいいな
ドアラの話が読みたい
D31との

218:風と木の名無しさん
09/05/20 00:43:46 E7yn+S9bO
>>199
立川の駅の古茶屋さくら樹の
 紅葉のかげに見送りし子よ  牧水

季節外れご容赦!

219:風と木の名無しさん
09/05/20 03:45:21 0sIOeQiR0
>204
青梅線続きキター!
クレープ食べる二駅イイ。
続きもwktk待ってます

220:風と木の名無しさん
09/05/20 23:30:34 fe0RQ9oj0
鯨忍 来扇子 白×黒 「Wait for」
お邪魔いたします
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

221:鯨忍 来扇子 白×黒 「Wait for」1/3
09/05/20 23:31:08 fe0RQ9oj0
藤藁の手が、声が、体が、俺のスペースをちらちらと侵してくる。
何年経っても、幾つになっても、俺に依存しようとする態度は相変わらず変わらんし、ほんの少しの事で嫉妬するその性質も変わらん。
その重さにもうそろそろ、潰されそうやで、ほんまに。

「外れてんで」
ふいに、相方の低い声が俺の思考へと割って入った。
いきなり聞こえた声にはっとして目の前を見ると、藤藁の顔が正面にあって、その手が俺のピンマイクへと伸ばされている。あまりにも真正面にいる事に驚いて、俺は距離を取ってから今の状況をゆっくりと、考えた。
…また、やってもうた。
目の前は立ち見も出るほど満席状態の観客席。
ぼんやりしていた俺の状態を前の方の客は気付いてたようで、数人が不思議そうな顔をこちらに向けていた。
まずい、どうフォローしよか…俺はピンマイクを直しながら、必死に考える。そこに藤藁のわざとらしい盛大な溜息が聞こえた。
「お前なあ…さっきから聞いてんのか」
笑いでも何でもなく、普通の会話として呆れを含んだ声で尋ねられる。
「聞いてるよ。聞いてないようでしっかり聞いてんねん」
責めるような藤藁の視線から逃れるため、俺は俯いてもう既に直し終わったマイクをごちゃごちゃと触りながら、嘘を付いた。本当は…まったく聞いてへんくて漫談の掴みの部分しか記憶になかった。
俺の適当な嘘に納得する筈もなく、短い沈黙のあと、藤藁は観客席へと顔を向け語りかけるようにして話しはじめた。

222:鯨忍 来扇子 白×黒 「Wait for」2/3
09/05/20 23:31:31 fe0RQ9oj0
「…あのねえ、聞いて下さいよ。こいつ2週間位前からちょこちょこあるんですよ。いきなりぼんやりしだすっつか」
やっぱりそうきたか…。
そろそろやろうな、と予想していたその行動に俺は心底うんざりして長く細い息をゆっくりと吐いた。
つい数十分前の楽屋ですでにこの事について小言を言われたばかりやった。前の舞台でネタを飛ばし、前々回では今と同じようにぼんやりと心ここにあらずで。
多分、客の前で吊るし上げられるだろうと予想はしてた。答えの出ない押し問答や、今回の俺のように何度繰り返しても治らない事はこんな風にさらし者にされるのが、互いの暗黙のルールでもあるから。
俺はどうやってこの会話を早めに切り上げようかと、思考をフル回転させる。
「…疲れてんねん、最近暑いし夜寝られんし、夏バテもあるし…もうオッサンやねんか」
「そんなもん俺かて一緒やろ。おい、貴ちゃん」
「誰が貴ちゃんやねん」
すかさず突っ込むとそのテンポのよさに客席がどっと沸く。それを強引に落ちにして、藤藁の言葉が続く前に、カンペを読んでこの話を終わらせた。
コーナーのSEが流れる一瞬の合間に藤藁をちらりと横目で見ると、瞳孔の奥で動揺がかすかに読み取れた。俺は久しぶりのその目に、徐々に冷静さを取り戻していく。

223:鯨忍 来扇子 白×黒 「Wait for」3/3
09/05/20 23:32:11 fe0RQ9oj0
ライセンスを組んで十数年、機嫌が悪かろうがへこむことがあろうが、俺はいつも冷静を装ってきた。それは藤藁を動揺させない為でもあった。
どちらかが揺らげばどちらかがしっかりと立つ。そうやってバランスを取るのが舞台上では当たり前の事なのだ。
当たり前、それなのに。
今思えば、仕事上のこの関係が、俺たちそれぞれのスペースを徐々に侵していたのかもしれへん。

『これが恋やないなんて、誰が言えんねん』

ニ週間前にそう言った唇がするすると言葉を紡いでる。
俺を起こさへんようにって、柔らかく押し当てられたあの唇が。
その呟きを俺が聞いたなんて、本人は全く知らないし、わかってないやろう。
できる事ならば俺かて聴きたくなかった。何も知らんままに、お前と舞台に立っていた頃に戻りたい、ただただそう思った。
そうすれば、
この感情に気付く事も無かったのに。
ホンマに、これが恋やないなんて、誰が言えんねん。
あと少しでいい。
あと少しでいいから、俺が囚われているのはお前の愛情表現の重さって事にしといて。
仕事も私生活も手に付かんほど、考えこんでまうお前へのこの感情が…友情以上のものやって全力で認められるまで、待っとって。
潰される前に、認めるから。どうか。

ケリが付いたら、即効抱きしめにいくから。

224:風と木の名無しさん
09/05/20 23:33:12 fe0RQ9oj0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ありがとうございましたー

225:風と木の名無しさん
09/05/21 23:07:22 vBzrXOb70
>>220
こういう感じの好きです。
GJでした!

226:風と木の名無しさん
09/05/22 01:17:24 RMF9WkfO0
お邪魔致します。オリジナルものでファンタジーRPGなどの
魔王×勇者のBLです。「消えた勇者と闇の魔像」
               ,-、



                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < BOX仕様
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 長丁場
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < がっつり~
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

227:消えた勇者と闇の魔像1(1/3)
09/05/22 01:21:34 RMF9WkfO0
「消えた勇者と闇の魔像・1」
数年前、魔王と勇者の壮絶な戦いがあった。

大いなる力の継承者として王命を受け、長い長い旅の果てに 深い森と
渓谷に隠された魔王城に辿り着いた勇者は、人間界へと 侵攻する魔王の
野望を阻止せんと、最後の戦いを挑んだ。
その夜、針のように細い三日月が黒雲に覆い隠され、雷鳴轟く嵐の中、
魔王城から光の渦があふれ、耳をつんざく轟音が空と大地を引き裂いた。
夜が明け、人々は徐々に何かが変わった事を感じた。魔王城は未だ存在
していたが、人々を脅かした魔物の侵攻はそれ以来ぱたりと止んだのだった。
しかし、勇者は城から出て来ず、待てど暮らせど彼が王国に帰還する
様子は無かった。これは全て、勇者が魔王と相討って全てを収めてくれた
のだと人々は語り合ったのだった。
 
そして数年の時が経ったが、魔王城周辺はいまだ色濃く瘴気が漂い、そこに
近付く者はたちまち幻惑され、生き残った魔物たちの贄として連れ去られるのだという。
その証拠に、魔王城から時折風に乗って声が聞こえて来るのだ。時に哀切に
満ちたその声は魔物の手に堕ちた生け贄の、断末魔ではないかと。
そうして近隣の村人たちは勇者への感謝をいだきつつも、それぞれの平和な
営みを守る事に没頭し、今やそこへ近付くものは誰もいなかった。

228:消えた勇者と闇の魔像1(1/3)
09/05/22 01:25:48 RMF9WkfO0
闇に塗り込められたかのような深い深い森と底など見えぬ程の切り立った渓谷、
そして針のような鋭い岩肌の中に、魔王城の威容が現れる。
天高くそびえる塔、巨大な城門、頑強な城壁、複雑に入り組んだ内部は
地下深くまで伸び、まさに人の手ではなし得ぬ業だ。

その地下のもっとも奥深く、重い暗闇の中、小さく灯る炎に照らされ
黒髪の青年の姿がゆらゆらと浮かび上がる。そしてその髪よりも黒い影が、
青年の腕を捕らえ宙に浮かせていた。

引き締まった裸身、その身に走る幾つかの刀傷。しかしきめの細かい
象牙色の汗ばんだ膚。青年は苦しげに、それでいてどこか夢見るような
心地でうっとりと喘いだ。
「うぅ…ん…っ」
青年を戒めている黒い影は、角の生えた家畜を模した像。
これこそが魔物の力の源であり、命をつなぐ「闇の魔像」であった。

やがて聞こえてきた足音に、青年はぼんやりと顔を上げた。夕刻の
空のような赤い眼が、闇の中から現れる。貴石で染め上げたかの
ようなローブに逞しくしなやかな身体を隠した銀髪の男が現れた。
青白く光る膚、切れ長の眼、闇の王たるにふさわしい精悍な顔つきと、
全身から漂う威厳と風格。勇者と相討ちになったという魔王だ。

「どうだ…楽しんでいるか?」
どくん、と明滅する光が魔像から弾け、部屋の壁を伝い染み込んで行く。「んく…っ…み…見た…とおりだ…」
一糸まとわぬ姿で戒められた青年は時折切なげに眉根を寄せ、びくりと
身を竦ませる。

229:消えた勇者と闇の魔像1(3/3)
09/05/22 01:29:30 RMF9WkfO0
魔像は、青年の菊座に深々と醜悪なモノを突き刺していた。
そしてぎちぎちに張りつめた体内で、まるで生きているかのようにその
身をくねらせる。内圧で首をもたげた青年自身が、その度先走りを滴らせ、
青年を昏い快楽へと誘っていく様を物語る。

魔王はそんな青年の痴態に薄く微笑んで、朱の走った濡れる胸にそっと
指を走らせた。その瞬間また身体を強張らせるのに、魔王は愉悦を覚えた。
「いつまで経っても慣れんな…魔像と我に夜ごとその身を捧げていると
いうのに…」
「いう…な…っ」
そう、戦いに敗れたあの日以来、彼はここで魔像と魔王に永遠に捧げられた
"生け贄"となったのだ。
「うぅ…っ」
「魔像も、お前を気に入っているのがわかるだろう?」
魔像の口から、ずるずると蛇のような触手が這い出て、青年の身体に
まとわりつく。そして全身を締め上げ、愛撫する。
「ククク、お前も相当に好きものだ。こんな形で力を吸われたいとはな」
「ち…が…あぅう…」
嫌悪感に身を捩るも、何度も情を交わし、快楽の絶頂を教え込まされた
身体は、淫らな悦びを次々と呼び覚まし、かつての勇者をますます苛むのだった。
魔像に無惨に貫かれ、無数の触手の海の中で 戒められ、全身への愛撫に
身悶えるこの青年こそ、大いなる力の継承者、勇者の成れの果てだった。

その黒髪はかつて、輝くばかりのブロンドで深海を思わせる蒼い瞳と
相まって見るもの全てに勇者としての輝かしい力と栄光とを感じさせる
ものであった。今はしかし、そのブロンドは失われ、どす黒く染まって
闇に溶け込まんばかりであった。



230:風と木の名無しさん
09/05/22 01:32:52 RMF9WkfO0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 誤植あったね
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < 2本目も
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 1になってたね
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ

すみません1/3が二つになってしまいましたm(__)m
また続きます。お邪魔致しました。

231:風と木の名無しさん
09/05/22 03:00:11 uPGMBM/w0
連続での投稿失礼します。
>>118-128 及び >>199-204 の続きです。
前々回に引き続き暖かいご感想ありがとうございました。
ここの姐さん方のコメントで自分の中でも色々と話が広がってとても楽しかったです。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  駅擬人化 青梅線 拝島駅×昭島駅 後編
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 予想外に支持を頂いた彼の番外編つけてみました。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) よろしくお付き合いください。
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


232:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 1/9
09/05/22 03:01:48 uPGMBM/w0
目の前に現れた昭島駅は俺が来たことに目を丸くしてる。
会いたかったはずなのにいざ対面してみると何故だかまともに顔が見られなくてつい顔をそらしてしまった。
ここ最近見ないようにしていた所為かも。
「拝島駅、どしたの?」
「え…あ、いや、別に覗いたとかじゃなくて…。」
実際は覗いてたわけで、上手い弁明が浮かばなくて焦っていると、は?と首を傾げられた。
どうやら、こっそり見ていた事は気づかれてないらしい。
「あ、何でもない。うん、なんだ、その、…元気にしてっかなと思って。」
やべぇ、不自然すぎる。正直何て言うか全く考えてなかった。
少なくとも謝ろうと思って、できれば前みたいな感じに戻れれば良いと思った。
俺の返事はやっぱりおかしかったみたいで、昭島駅がさらに怪訝な顔をする。
流石にここ最近自分からは全く昭島駅を訪ねてなかったから当然と言や当然だった。

「まあ、立ち話もなんだし座ろうぜ!な。」
時間稼ぎの意図もあって昭島駅が定位置にしてるベンチの横に座って、昭島駅を手招きした。
「…」
さあ、どうやって切り出そ。頭の中を引っ掻き回して言葉を捜してたら、
昭島駅に先手を打たれてしまった。
「何かあった?困ったことがあるなら僕でよければ聞くけど…。」
自分だって大変なくせに他駅の心配してる場合かよ。と、言いそうになるのをかろうじて飲み込んだ。
「俺じゃなくて、…最近お前色々しんどいだろ?」
結局直球。隣に座った昭島駅が驚いてこちらを向いたのが分かったけど、
やっぱ視線を合わせづらくて俺はずっと正面を向いてた。

233:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 1/9
09/05/22 03:02:56 uPGMBM/w0
「…立川駅から聞いたの?」
「えっ、別に。」
「じゃあ西立川駅だ。」
「うっ…俺が自力で気付いたとはおもわねーの?」
「思わない。」
「…。」
流石良く分かってらっしゃる。けど何か普通に話せてるしこの流れならなんとか謝れる気が…
「そっか。でも気にしないで。僕拝島駅には言う気なかったし。」
…は?俺は思わず昭島駅を見たけど、今度はやつがうつむいてるので顔が良く見えない。
「困ったら他の線の駅達もいるし、もうしばらくすれば耐性がつくって立川駅も言ってたから、
拝島駅を煩わせるほどのことはないよ。そろそろ戻れば?そこにいられても邪魔なんだけど。」

「なっ!…っ。」
いきなりの言い草につい怒鳴りそうになって、慌てて我慢した。
落ち着け俺。感情的になるな。冷静に考えろ。また見落とすぞ。
そもそも昭島駅が考えなしにこんなこというわけがない。きっとあんだ。何かサインが。
一呼吸してよく昭島駅の方に向き直る。昭島駅はベンチに座ったまま向こうを向いて黙っている。
「昭島…?」
返事はない。
「本気でそう思ってんなら目ぇ見て言えば?」
「…。」
沈黙を取繕うように先程ホームに滑り込んだ下り電車が発車のベルを合図に俺の駅へと旅立っていった。
「…あーもう、だからお前の嘘はすぐバレんだよ。」
「ぅるさっ、…だから嫌だったんだよ。自分の状態知ったら拝島駅が断れなくなるじゃんか!」
話が見えない。 何故そこで俺?


234:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 3/9
09/05/22 03:03:56 uPGMBM/w0
「僕嫌なやつなんだ。嫌われてるのわかってるのに、自分が会いたいから拝島駅んとこ行ってんだ。
嫌がってんの、分かってるのに。
だからせめてしつこくならないようにしてたけど僕のこと知ったら君断れないだろ?
現に今来たじゃん。義理だって分かってるのに舞い上がりそうで自分もう嫌だ。」
昭島駅は一気にまくし立てるとベンチの上で膝を抱えて頭をうずめてしまった。
今度は俺が目を丸くする番だった。何かすげー事を聞いた気がするけど、それに答える上手い言葉が出てこない。

「あんさ、俺の態度も悪かったけど、別に嫌いだったわけじゃ…。」
「…気ぃ、使わない、でよ。」
「本当だって。こっち向いて俺の顔を見てから判断しろよ。」
半ば無理くり昭島駅の両腕を掴んでこっちを向かせた。
久々にまともに見た昭島駅の顔は歪んでるし濡れたまつげがいびつな束になってるし酷い有様だった。
「何泣いてんだよ。」
「泣いてない。」
「泣いてんじゃん。」
「これは…地下水だし。」
「ぷっ!何それ?」
俺が噴出した隙に手を解いた昭島駅は急いで顔をぬぐった。
失態を見られて不本意なのか憮然としたまま未だ笑う俺を向いてる。
改めて見るとその顔は以前よりやつれてた。記憶の中の昭島駅より顔色も悪いし輪郭も鋭い。

235:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 4/9
09/05/22 03:05:37 uPGMBM/w0
これ程の変化に気付かない位俺は昭島駅と向き合っていなかったんだと改めて痛感した。
昭島駅の外見の変化にばかり気を取られて、反発していたのを思い出した。
気付くべきは見てくれじゃなくて中身の変化だったのに。
「ごめん昭島駅…俺ほんとガキだ。ホントごめん。ごめんな。今まで冷たくして悪かった。」
情けないやら申し訳ないやらで馬鹿みたいにごめんを繰り返した。
「えっ?な、何で拝島駅が謝るの?」
「俺、自分のことしか考えてなくて全然周りが見えてなかった。
昭島駅がどんどん大きくなるから焦ってたんだ。取り残されそうで。
嫌いになったわけじゃねーんだ。本当に。信じてくれよ。頼む。」
どうしたらこれまでの事を穴埋めできるのか分からなかったけど、必死だった。
俺の様子に昭島駅は小さく頷いて、それでもまだ念を押すように聞く。

「僕が嫌になったんじゃないんだよね?」
「ああ。」
「面倒臭くなったんじゃないんだよね?」
「お前が七面倒くさいのは今に始まったことじゃないだろ。」
「う、うるさい。…また一緒にいても良いんだよね?」
最後の質問にしっかりと頷く。
「そっか…。よかったぁ…。」
ようやく納得した昭島駅が思いっきり笑ったのでつられて俺も笑った。
二人でまた心から笑えてるって、たったそれだけのことがすっげえ嬉しい。
まだまだ俺はガキだけど、気付かないことが沢山あるかもしれないけど、
これからもずっとこいつとこうしていられるために精一杯頑張ろうと思えた。

「じゃあ俺、そろそろ帰るわ。」
それからしばらく久々に色々話して、時間も遅くなってきたので俺は自分の持ち場に戻ることにした。
流石にこれ以上ほっとくわけにはいかない。ベンチから立ち上がって昭島駅に挨拶しようとしたときだった。
突然昭島駅が立ち上がって俺の正面に立った。驚きと焦りが混じった顔をしてる。
「な、な、な、なんか拝島駅背ぇ伸びてない!?」
「は?そんなことないと思うけど…。」

236:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 5/9
09/05/22 03:06:50 uPGMBM/w0
俺の記憶が正しければ、今の俺と昭島駅の背丈は同じくらいのはずだ。
「絶対伸びてるって!ほら!」
昭島駅は俺を掴んでエレベーターの前まで引っ張って行く。
二階へと伸びるそのガラス張りの外壁に写った俺の身長は、確かに隣に並んだ昭島駅より少し大きかった。
「やっぱり…。なんか顔も前見たときより老けてるし。確実に2歳は行ってる。」
身長を確認した後は俺の肩を掴んでまじまじと顔を覗き込んでくる。眉間の皺がガチだ。
「老ける言うなよ。別に良いじゃんそんなん。」
「良くない!あー、今度こそ追い越せると思ってたのに!」
聞けば昭島駅はずいぶん前からひそかに「俺越え」を狙ってたらしい。

昭島駅との身長や年―といっても表面上のものだけど―の差なんて気にしたことがなかった。
そりゃやつが出来たばかりの頃は俺のが全然上だったけど、ここ数十年はほぼ一緒だと思ってたし。
きょとんとする俺とは反対に昭島駅はすごく悔しそうだ。まあ、気持ちは良く分かる。
要するにこいつもガキなんだなと妙に安心した。
「なんで拝島駅ばっかりいつも先行っちゃうんだろ…。」
「ん?んー、そーだなぁ。」
言われてみれば今回の事で俺は少なからず変わった気がする。
それが外見に現れたんだとしたら…

「愛、かなー。」

しばらくその発言の意味を考えていた昭島駅が急に真っ赤になったのを見届けてから、
「じゃあまた明日な。」
とその場を後にした。

―おわり―


237:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 6/9
09/05/22 03:18:06 uPGMBM/w0
~番外編~ 『立川駅のホンネ』

数週間ぶりの晴天の休日のおかげでロータリーを縦横無尽に行き交う人をガラス越しにベッカーズの中で眺めながら、
立川駅は手にしたコーヒーの最後の一口を飲み干した。
「遅い。」
そう呟いてカップを戻す。ラッシュと人身事故の時さえ耐えれば平穏な平日と違って、
休日の人出はひっきりなしにじわじわと体力を奪うので休まる暇があまりない。
かといって彼等によって自分が生かされているのだから文句を言う筋合いもなかった。
駅はただ受け入れるのみである。
戯れに周囲の路線の様子を気配だけで探ってみれば、まあどこもそれなりに忙しいようだった。
昭島駅も中神駅や東中神駅のおかげでなんとかやっているみたいだ。
腰が重くなって昔ほど気軽に出歩けなくなった分、こういう能力は大分鍛えられた。
―それってテクニックのわりに体力がないってことじゃ~ん。―
そんな立川駅を、昔ある駅はそう下品に例えて笑った。
そのある駅は、現在未だ拝島駅と一緒にいる。
「チッ、早く来いよ。」

そう言うや否や目の前に見飽きたヘラヘラ顔が現れた。
「チョリーッス。たっちゃん元気~?」
「遅い。変な挨拶するな。その呼び方止めろ。」
不機嫌そうに吐き捨てると同時に自分の受けている負担をごっそりと現れた西立川駅に押し付ける。
「わっ!ちょっ!そりゃないんじゃないの!?君のでしょ!?」
いきなりの無茶振りに彼はよろめきながらもなんとか持ちこたえた。
「いいからちょっと持ってろ。」
立ち上がって楽になった体を伸ばし、深呼吸をしたあと、
「いいぞ、ほら。」
といって自分が押し付けたものをまた引き受けるため手を差し出した。

238:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 7/9
09/05/22 03:19:24 uPGMBM/w0
もとよりずっと押し付けている気はかった。自分がテクだけ男ならば、
目の前の駅は一発屋である事を立川駅は良く知っていた。
それにこいつの所だって今日は既に相当人が来ているはずだ。
体に馴染んだ感覚が立川駅の元に再び戻って来たが、それは預ける前に比べて少し軽くなっていた。
その変化に気付いて西立川駅を一瞥するも、やつは何事も無いように、
あーキツかったと笑いながらカウンターへ行ってしまう。
こいつはいつもそうなのだ。のんきな顔して何も言わずに来て、何も言わずに勝手に引き受けていく。
だから今日も立川駅は肝心な事を言いそびれてしまった。

以前は確かに急な自分の変化と人の増加に慣れないで苦戦していた。
それを周囲に悟られたくなくて隠していたのも事実である。
そんな中何故か唯一気付いた西立川駅に、不本意ながら何度か助けられてきた。
頼んだ事はなかったが、気付いて以来西立川駅は様子見にちょくちょく意識を飛ばして来て、
大変な時だけ飄々と現れるのだった。
しかし、実を言うと今の立川駅は西立川駅が思うほど「テクだけ」ではなかった。
今日くらいの人出なら、十分一人でやっていけるほどの体力はもうあるのだ。
問題は、西立川駅が自分の「大変な時にだけ」しか来ないことだった。
様子を探りに来ても立川駅が普通にしていればそのまま戻ってしまう。
その結果が現状だった。


239:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 7/9
09/05/22 03:20:26 uPGMBM/w0
つまり、西立川駅が様子を探りに来るタイミングを見計らって、
「わざと」キャパオーバーを装うようになって今に至っている。
最初はほんの出来心だったが、つい2度、3度とやるうちに打ち明けるタイミングを完全に逃していた。
我ながら子供っぽい事をしているのは立川駅自身わかっていて、言わなくてはと思うのだが、
その度に先ほどのごとく言えずに終わるのだった。
はぁ、と小さくため息をついていると西立川駅がトレーの上にハンバーガーと2人分のコーヒーを乗せて戻ってきた。
向かいに座ってコーヒーの片方を立川駅に渡すと自分はバーガーを嬉しそうにもりもり食べ始める。
「なあ、…。」
「ん?」
「いや、…やっぱ何でもない。」
駄目だ。何もなくても会いに来いなんて今更言えるか。
代わりに呷ったコーヒーは苦味を残して言葉と一緒に喉を過ぎていった。

―終わり―

240:駅擬人化 青梅線 拝×昭 後編+番外 7/9
09/05/22 03:28:16 uPGMBM/w0
他地域の方も読んでくださってるので最後に一つだけ補足させていただきますと、
昭島市は水道水が100%地下水なんだそうです。
最初から最後までローカルなネタ、ご容赦ください。
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 | | □ STOP.       | |
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) ここまでお付き合い本当にありがとうございました。。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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