09/01/25 23:42:42 xnP11a7a0
test
3:風と木の名無しさん
09/01/26 00:55:44 3ssceYM60
>>1
乙です
4:風と木の名無しさん
09/01/26 08:26:08 QrGiOMLxO
>>1乙!
5:風と木の名無しさん
09/01/26 16:22:49 VQP/FLZPO
>>1乙!
6:風と木の名無しさん
09/01/26 18:10:40 2//Ag3InO
>>1乙でした!
また新しい萌えにたくさん出会えるといいな
7:風と木の名無しさん
09/01/26 19:20:31 0nlrke+3O
>>1乙
このスレでも今まで気付かなかった萌えが誕生する事を願って
8:風と木の名無しさん
09/01/26 19:26:55 T/1Zird/O
一発目はこちら↓
9:風と木の名無しさん
09/01/26 19:34:46 0nlrke+3O
女装攻め(notカマ)
10:風と木の名無しさん
09/01/26 20:01:08 dRW0kZx80
幼馴染の家に遊びに来ないかと誘われたのは一時間前。
いらっしゃい、と笑顔で部屋に案内されたのは30分前。
「……で、俺はどうしてこんな格好をしなくちゃいけないんだ?」
「似合ってるよ、ぴったり。すごいぴったり」
「感想は聞いてねえ」
フリルがふんだんに使われたワンピースにニーソックス、ヘッドドレス。所謂メイドさんの格好だ。女の子に着せればよく似合うであろう服。
唯一の問題は、それを男である俺が着ているということ。
「だからなんでこれを俺が着るはめになってるんだ?」
「えー?何となく似合うと思ったから」
「どう考えてもお前のほうが似合うだろ……」
細身の体躯に白い肌。筋肉のついている俺なんかよりもよっぽど着こなしてくれそうだ。
ヘッドドレスを外して幼馴染につけようとするが、頑として受け取ってくれない。
「だめだよ。これは君に着て欲しいんだ」
「なんで」
「……ずっと僕、色々女の子扱いだったからさ、たまには男の子もやってみたいんだ」
だから、と身長差のせいで必然的に上目遣いになる幼馴染を見下ろして、あまりのくだらなさに俺は思わず吹いた。
「お前な……そーゆーところが女の子みたいなんだって」
「ちょ、そーゆーこというなってば!笑うな!僕は大真面目だ!」
必死に俺を押し倒そうとしてる幼馴染の手を掴んで抱き寄せ、そのままベッドにダイブ。
生憎と、俺はまだまだ襲われるつもりはない。というか一生無い。
掴んだままの手にそっとキスを落として、俺は幼馴染に覆いかぶさった。
俺の幼馴染兼恋人は、今日も可愛い。
11:風と木の名無しさん
09/01/27 11:18:16 ujrjNpMHO
>>10
必死な受け可愛いよ受け
幼なじみ萌えたGJ!!
12:風と木の名無しさん
09/01/27 19:10:15 zKL4krLeO
いつか女装プレイに目覚めるといいw
13:風と木の名無しさん
09/01/27 23:10:23 GA8/bdra0
何このかわいい受け
なんやかんやで数分後には受けが着せられてそうだw
14:風と木の名無しさん
09/01/28 03:17:11 UcwysX2J0
まわし
15:風と木の名無しさん
09/01/28 07:58:07 R2RdHZSwO
>>1乙です
健気な受、可愛いよー
なんだかんだで女装してあげる攻に萌え
16:風と木の名無しさん
09/01/28 08:19:24 eadrq3qEO
まわしまーす
17:風と木の名無しさん
09/01/28 09:49:24 MBqXslvcO
まわし
18:風と木の名無しさん
09/01/28 10:25:44 GJNZMfq60
まわれー
19:風と木の名無しさん
09/01/28 10:28:08 Pl8gpmnj0
二人暮らし
20:風と木の名無しさん
09/01/28 12:30:31 Y4Nz8XS/0
「風太~お前は俺が座ろうと思うといつもそのソファーにいるね…」
ああ?お前なんかが座っていいわけねーだろ。
これは俺のソファーだぜ。
「なあ、風太~。あいつって俺のことどう思ってんのかな?」
また始まった、いつものコレ。俺に聞くなよ。
「風太はあいつのことよく知ってるじゃん?どうなの?どうなの?」
うざっ!相変わらずうざっ!
こいつ、いちいちひっついてくるしチョーうざい。
「風太~!あいつってやっぱり俺のことうざいって思ってる?」
うっせーな。少なくとも俺はうざいと思ってるよ。
「いつも夕飯つくっておいてくれるのに俺何もしてないし…」
作りすぎた、作りすぎたって言いながらいつもニコニコして作ってるしいいんじゃねーの。
「風呂掃除やろうかって言ったらすごい勢いで断られたし…俺邪魔かな…」
邪魔だね。そりゃもうAVのモザイク並みに邪魔。
疲れた顔してんだから休めって言われてんだろ。言うこと聞けよ。
「風太~…あ…もうバイトの時間だ…」
やっと解放されるのか。おい、もたもたしてないでとっとと行け。
「またあいつと入れ違いだよ~…じゃあ風太行ってくるよー。あいつのこと宜しくね」
はいはい。もういいから早く行ってくれ。
俺は一眠りしたいんだ。
21:2
09/01/28 12:32:53 Y4Nz8XS/0
「ただいまー」
ん、おはよう。そしておかえり。
「あ、お前はまたソファーでふんぞりかえって…」
だってソファー気持ちいいんだもんよ。
ここは俺の場所だぞ。
「あいつは?もうバイト行った?」
行ったよ。あのうるさいのならバイトだよ。
「あいつ忙しそうだよなあ…。体崩さないか心配だよな」
いや、別に。
あいつが風邪でもひいて俺の場所に居座るっていうなら心配だけど。
「…あいつって俺のこと苦手なのかなあ」
出た。出たよ、毎度毎度のコレ。
なんなんだよ。俺は毎日生活相談員か何かか?
「なんとなく俺と入れ替わりになるようにバイト入れてるみたいだし…」
それはいつも店長に頼まれてるからだってこの前愚痴ってたぞ。
この時間は人が足りないんだってさ。
「珍しく顔合わせてもあまり話してくんないしさ…」
それはうざがられたら嫌だからって、あまり話さないようにしてるんだとよ。
あいつにしてはいい心がけだな。俺の前でも実行してほしいもんだけど。
「風太ー…あいつ、俺のことどう思ってんだろ」
ああもう面倒くさい。どっちでもいいから早く告っちまえ。
俺はそういう意味を込めて、一度だけ「にゃー」と鳴いてやった。
22:風と木の名無しさん
09/01/28 16:45:51 wEgZEGDvO
まさかの猫視点ktkr!
悪態つきながらも風太がとりもってやればいい
何より風太のツンデレっぷりに惚れた!GJ!
23:風と木の名無しさん
09/01/28 17:02:29 4DpM4hWKO
二人+一匹暮らしか!GJ!
二人がくっついたらくっついたで風太はまた苦労しそうだw
まとめ投下の人もGJです!
24:風と木の名無しさん
09/01/28 18:33:29 Zrkgd+eFO
風太かわいいw
萌えたーGJ!
まとめの人もよかった!パエリア食べたいGJ
25:風と木の名無しさん
09/01/28 19:04:25 OA8J1OB+O
すげぇよかった…!!GJ!!
二人暮らし+1匹か。うまいなぁ
風太可愛いよ風太
26:風と木の名無しさん
09/01/28 20:07:15 ucnJ4rTFO
ぬこ可愛いよぬこ
シンプルなお題だったけど良作GJ!まとめも!
27:風と木の名無しさん
09/01/28 21:26:40 ytzY7OvGO
ねこ惚れた…男らしい!
人間組もかわいいし、素敵でした、GJ!
28:風と木の名無しさん
09/01/28 21:30:35 MBqXslvcO
ふみしめて!
29:風と木の名無しさん
09/01/28 21:32:00 8piw1QwG0
ツンデレ泥棒×お人好しな刑事
30:風と木の名無しさん
09/01/29 10:46:17 2Xo4YIsYO
「つかまえたっ! ドロボーつかまえたっ! クラスで二番目に足のはやい菅原をつかまえたぞ! あとのドロボーはいちもうだじんだっ」
「み、見逃しくれ、刑事さん。こきょーに病気のおかっかさんがいるんだ…」
「なんだって、そんなおっかさんを残して来たのか」
「おっかさんの病気のクスリを買うために東京へやって来たはいいものの、
さぶ、さぶぷらいむろーん?のせいで仕事を失いこのザマだ…」
「うーむむ、はけんしゃいんだったのですな」
「そうです、はけんぎりです」
「ハンバーグですか」
「ハローワーク?」
「Yes! Wii can!」
「ゲームですね」
「いつの世も、ろーどーしゃにはきびしいですな。こーむいんで良かった…」
「あっ、刑事さんの後ろにさぶぷらいむろーんが!!」
「え!? 嘘、どこどこどこ!?」
どんっ
「ばーかばーか! ドロボーにだまされてやんのー! だっせぇー!」
「あ――っ! 菅原ずるいぃ――!」
31:風と木の名無しさん
09/01/29 13:58:36 FpkWejVJO
ドロケーかね?
ツンデレなのかは??だけど、ちっこい子が意味わかってない言葉を使ってるのは可愛いな
32:風と木の名無しさん
09/01/29 14:02:12 nClwI1AX0
ツンデレつーか、デレツン?
しかし可愛いなw
ほのぼのした
33:風と木の名無しさん
09/01/29 14:21:32 31JTp9uAO
ドロケイ懐かしいw
かわいいなーGJ!
34:風と木の名無しさん
09/01/29 14:23:40 Ey6Lo8aaO
最後ww
ほのぼのしたよ!GJ!
まとめの人のも萌えた!
お題もGJですな(*´∀`)
35:風と木の名無しさん
09/01/29 15:38:28 vPu/8wXY0
確かにどちらかと言うとデレツンだな
和んだよありがとう
36:風と木の名無しさん
09/01/29 16:38:33 Pz041uC10
なんとかわいいwGJ!
37:風と木の名無しさん
09/01/29 19:57:53 kcVEVfZn0
動物、子どもと、ほのぼの萌えが続いて幸せだー!!
GJ! GJ! まとめてGJ!
38:風と木の名無しさん
09/01/29 19:59:18 mm1u7S9KO
ゆっくりふんでいってね!
39:風と木の名無しさん
09/01/29 20:03:57 +HyIoLCSO
雅
40:風と木の名無しさん
09/01/30 00:50:11 Zs/ACwCw0
夕暮れ時の平等院は、黄金色の西日の中に、黒々とした影となって建っていた。
俺たち二人の前に広がる阿字池を、鴨の親子が泳いでいく。
サディクが眩しそうに目を細めて、帽子のひさしを深く引いた。
「ミヤビだ……」
そう呟く彼の横顔には夕日が差し、彫りの深い顔立ちが強調されていた。
サディクは中東の国からやってきた、俺の同期生だ。
言語学を専門にしていて、アラビア語、英語、フランス語、日本語を話す。
出会ったばかりの頃は彼の日本語がまだ初級レベルだったため、よく英語でコミュニケーションを取っていた。
しかしもともと勤勉な性格の彼は、1年後には古典文学にも手を出すようになった。
明治・大正の近代小説から遡り、江戸時代の戯作、竹取物語に源氏物語、果ては万葉集や古事記まで。
国文学科に在籍している俺は、彼のために現代語訳をしたり、文法の解説をしたりと、
自分の知識をフルに活用して世話を焼いてやった。
代わりにサディクからは、あのアラビアン・ナイトについて教えてもらった。
1001夜に渡って語られるこの物語を、アラブの血を引くサディクが語る。
なんて贅沢なんだろうと思い、胸が弾んだ。
そうやって俺らは互いに異国の文学を学びあい、それぞれの文化に触れていった。
ある日彼は日本文学史の年表を広げながら、ヘイアン時代が一番好きだと言った。
「マクラノ草子はとてもユニークなエッセイだし、
コンジャク物語の背景にはアラビアン・ナイトに通じるものを感じるね。
ゲンジ物語やイセ物語は、なんだかもう全てが美しいよ。実にミヤビな文学だ。」
彼は年表に書かれている作品名を指し、人差し指で線を引いた。
もう常用漢字は大体読めるらしい。語学センスがあるのだろう。
「雅か、今はあまり使わない言葉だ。サディクの語彙は本当に幅広いな」
俺が言うと、サディクは柔らかく微笑んだ。
「だってマサの漢字だろう」
マサカズのマサはミヤビ、カズは数字の1。
初めて会った時に、俺は自分の名をそう説明したのだった。
「だから“ミヤビ”は、僕が日本に来て一番に覚えたカンジなんだよ」
「ああ、それなら俺も同じさ。初めて知ったアラビア語だ、“サディク”」
もっとも今は、友達―サディク―以上の関係になってしまったのだけれど。
41:風と木の名無しさん
09/01/30 00:51:26 Zs/ACwCw0
そして俺たちは、平安文学の世界を求めて京都へやって来た。
二人きりの卒業旅行だ。一週間後にサディクは母国へ帰る。
出発前に話し合って、感傷的にならずに最後まで楽しもうと決めた。
多くの寺院をめぐり、懐石料理を食べに行き、様々な話をした。
たわいない思い出話も、真剣な議論も、俺たちにとっては貴重な時間だった。
最後に平等院に行こう、と言い出したのはサディクだった。
美しい庭園や貴重な文化財を見ることができると思い、すぐに賛成したのだ。
ああ、本当に終わるんだ。
サディクの横顔を見た瞬間、そう思った。
この旅もこの恋も今日で最後なのだという実感が、夕日と共に押し寄せてきた。
彼が帽子を深くかぶったのも、たぶん似た理由からだろう。
今さら何を泣くことがある。わかりきっていたことだ。
俺たちは素晴らしい時間を分かち合った、それで充分じゃないか。
頭ではわかっているのに、感情が追いつかない。
それほど俺らを包む風景は美しかったのだ。
「雅だな、サディク」
「うん、一生忘れないよ」
彼の鼻声が耳に響いた。
ああ、俺だって一生忘れられないだろう。
彼の縮れ毛や、乾いた肌、優しいまなざし。絶対に忘れやしない。
「ありがとう、マサ」
「こちらこそ、サディク」
真っ赤に熟れて沈んでいく太陽を切り裂くように、一羽の鴨が飛んでいった。
42:風と木の名無しさん
09/01/30 01:17:04 EpeABnQV0
うおー、せつない。GJ! GJ!!
この二人の未来が気になって仕方ない
43:風と木の名無しさん
09/01/30 01:38:50 wAuP1nWL0
おおおおおGJ……!
44:風と木の名無しさん
09/01/30 02:06:39 r8P6qyBGO
文章上手いな
雅な風景が浮かんでくるよ、GJ!
45:風と木の名無しさん
09/01/30 07:35:22 u5X3I3eiO
朝から泣いてしまったGJ!
好きなのに離れないといけないなんて…
今更ながらハッピーエンドになることを切に願います
46:風と木の名無しさん
09/01/30 07:39:38 S6tZTQP7O
うめええええええええええええ
力の限りGJ!
47:風と木の名無しさん
09/01/30 08:16:05 UdTrY6a1O
二人で幸せになって欲しいよ(´;ω;`)
漢字一文字のお題をここまで上手くこなした姐さんに全力でGJ!
48:風と木の名無しさん
09/01/30 08:38:26 /oAmj0+pO
号泣した。ほんとに上手いGJ
次どぞー
49:風と木の名無しさん
09/01/30 08:41:57 zp6vYPvbO
宝石商
50:風と木の名無しさん
09/01/30 09:38:10 Oi2pTCaX0
「この石のリカットを依頼したいと?」
彼は僕の差し出したダイヤモンドを手に取った。
「父の遺産にあったのですが、これだけ大きいと高額になりすぎて
処分し難いのです。分割して処分したいと思いまして....」
事前に用意しておいた言い訳を説明する。
いや、これはこれで真実だし。
「お父様は、元華族のお家柄でしたな。財閥解体で規模縮小をやむなく
されながらも、その経営手腕で再び力をつけた複合企業。社会福祉にも
力を入れて、多くの人々の尊敬を集めた人格者」
赤ん坊のこぶしくらいはありそうなペアーシェイプのダイヤモンドの巨塊を
弄びながら、彼は眼鏡の向こうから鋭い視線を向けて言った。
「そんなお父様も、人に言えない面をお持ちだったようですな。これは
50年程前に盗難被害に遭った石です」
バレた....
僕は下唇を噛んだ。
公になっている資産はとっくに処分した。それでも弟の移植手術には
まだ金が必要なのに。
黙ってうつむいている僕の前にダイヤモンドを置くと、彼は人差し指で
それを押さえた。
「リカットすれば石の素性を隠して売り払うこともできる。お父様の
名誉も守ることができる、というところですか。子供なりに考えましたね」
子供と言われてカッとなって顔を上げると、僕を見下ろしていた彼と
目が合った。
「良いでしょう。私の出す条件を飲むのなら、私がこの石を丸ごと買い上げ
ましょう」
彼は薄い唇をゆがめて笑った。眼鏡の奥の目は笑っていなかった。
51:風と木の名無しさん
09/01/30 12:27:20 S6tZTQP7O
つ、続きを…!
52:風と木の名無しさん
09/01/30 13:04:18 r8P6qyBGO
終わり…だと…?
続きが気になる
53:風と木の名無しさん
09/01/30 18:01:07 n/5yUoD1O
悪い宝石商に萌え転がった!
本当に続きが気になる!
54:風と木の名無しさん
09/01/30 18:20:48 O6aj5X7S0
悪いオトナと没落華族ごちそうさまです!
続きが読みたくなる話だなー
55:風と木の名無しさん
09/01/30 22:42:22 5VTMM06f0
妄想次第でシリアスにもファンタジーにもエロにも展開できるな
一粒で何度もおいしい萌えをありがとう!
56:風と木の名無しさん
09/01/30 23:11:24 osJMzgbq0
なにこれ萌えたー
このスレ終わったら流れちゃうのがもったいないくらいだ。
57:風と木の名無しさん
09/01/31 10:32:56 pJ7HRx3jO
うわーわくわくした!GJ!
この「続き!続き!」ってなるのもこのスレの魅力だよね
58:風と木の名無しさん
09/01/31 10:38:24 W67cqXKwO
ささっどうぞ
59:風と木の名無しさん
09/01/31 10:42:35 H8UTDub00
魔王×勇者
60:1/2
09/01/31 15:55:51 vSIM3jEO0
人間も魔物も共存している世界。
祖父が偉大な勇者である少年は自分も勇者になることを夢見ていた。
平和な今の世の中に勇者は必要なく、
叶わぬ夢という事も成長するに従って理解していく。
小さな頃は口を開けば「勇者になる」と言っていたがそれもなくなった。
その頃少年に親友ができる。それは人間ではなく魔物の子どもだった。
どんな種類の魔物かはわからなかったが少年は気にしなかった。
頭が良くて魔法も使え剣の腕も立つ。何より一緒にいて楽しい。
少年はそんな魔物の子どもが大好きだった。
いつも2人で森や洞窟を探索しては、いつか2人で冒険に出たいと話していた。
新しく出来た夢によって少年は勇者になるという夢も諦める。
もし少年が勇者になればそれは人間と魔物が対立する世界になるということだから。
「俺、小さい頃は勇者になりたかったんだ。じいちゃんみたいな」
ある日少年は魔物の子どもにそう告白する。
それはもう過去の事で思い出話のつもりだった。
「君ならなれるよ」
でも魔物の子どもの反応は違っていた。
その夢を話して笑われなかったことは初めてで少年は驚く。
同時にやっぱり魔物の子どもはいい奴だと実感する。
「もう昔の話だ。今の世界には勇者なんて必要ないから。やっぱり平和が一番だよ」
そう言ってこの話は終りにしたつもりだった。
翌日も一緒に遊ぼうと思っていたがいつまで待っても魔物の子どもは現れない。
少年は次の日もそのまた次の日も待ち続けたが、いつまで経っても親友は姿を見せなかった。
61:2/2
09/01/31 15:56:41 vSIM3jEO0
その頃凶暴化した魔物に襲われたという事件が多発する。
壊滅させられた国もあると噂で聞く。
少年の村に住んでいた魔物も気がつけば姿が見えなくなっていた。
次第にそれが魔王の仕業だということが判明する。
各国で魔王討伐隊が結成されるが魔王を倒したという話は聞かず、
代わりに魔王による悪行の話ばかりが増えていく。
少年も魔王討伐の旅に出る事が決まる。
親友を捜す事ができるかもしれないという希望を抱いていた。
少年の国にも討伐隊は結成されていたがそれには属さず一人きりで旅を続ける。
立ち寄る村や町では必ず魔物が現れ少年はそれを退治した。
そんなことを繰り返しているといつしか勇者と呼ばれるようになる。
子どもの頃の夢が叶ったにも関わらず少年は少しも嬉しさを感じなかった。
親友については見つけるどころか少しの情報すら得られなかった。
すべての原因が魔王にあるなら自分が倒せば彼も姿を見せるはず。
いつしかそのように考えるようになっていた。
数年掛けて勇者は魔王のもとに辿り着く。
少年は精悍な青年へすっかり成長していた。
魔王は勇者が今まで見て来た中で最も恐ろしい姿をした魔物だった。
苦戦しながらも何とか倒す事に成功する。
倒れた魔王の身体が光ったかと思うと、そこには親友が倒れていた。
自分と同様に身体は成長していたが勇者にはすぐにわかった。
剣を放り投げ、身体を抱き起こす。
「どうして、お前が……」
「君の夢を、叶えたかったんだ」
「俺の夢?」
「僕を倒せば、本物の勇者に……」
その言葉に勇者は子どもの頃に話した過去の夢を思い出す。
「バカだな、お前。俺の夢は、お前と一緒に世界中を旅する事だ。
いつも2人で話していただろ」
魔物は困ったような笑顔を浮かべ、勇者に向かって手を伸ばした。
その指先が触れる前に砂に姿を変え、さらさらと流れ落ちた。
62:風と木の名無しさん
09/01/31 16:07:25 V6+IwbYX0
いいあらすじだ。きちんとSSで読みたいなあ
GJ!
63:風と木の名無しさん
09/01/31 16:50:44 si8A4HyjO
切ないわ萌えるわどうすればいいんだ…!
GJ!心の底からGJ!力の限りGJ!
64:風と木の名無しさん
09/01/31 19:20:47 cJIAlJs20
詰め込んでるねえ
よかったよ~
65:風と木の名無しさん
09/01/31 19:27:35 VbzMSBh00
切ないなあまわし
66:風と木の名無しさん
09/01/31 19:56:51 3TrqYT2V0
切な萌えたー超GJまわし
67:風と木の名無しさん
09/01/31 21:47:38 W67cqXKwO
切ない!
GJまわし~
68:風と木の名無しさん
09/01/31 21:50:38 Ul6+6HcPO
どうぞどうぞ
69:風と木の名無しさん
09/01/31 22:07:34 49/uiPrz0
ある日目覚めたら魔法がかかっていた
70:風と木の名無しさん
09/01/31 22:51:57 7zp0NoHn0
「ある日目覚めたら魔法がかかっていたんだよ」
「相談って、それか?」
「うん」
「そうか、よかったな。じゃ、俺は帰る」
「待てよ、待ってくれよ、待ってくださいお願いです」
「わかったよ、1つだけ聞いてやる。どんな魔法がかかってたんだ?」
「魔法が使えるようになる魔法」
「座布団全部取り上げるぞ、ゴルア」
「本当なんだよ~。これなんだかわかる?」
「...新しい魔女っ子シリーズの魔法のステッキのオモチャか?」
「に見えるよねえ。これを手に持って、魔法の言葉を唱えると、変身して
魔法が使えるようになるんだよ」
「ああ、そりゃよかったな、帰る!」
「マクリツマクリツルルルルルー♪」
「なんじゃ、その呪文は....ぶはっ!!はははははっ!その格好はなんだ!」
「これが僕の魔法使いコスチュームなんだって」
「普通、魔法少年のコスチュームのイメージはハリーポッターだろうが!
なんでミニスカなんだよ。脛毛さらすなww」
「僕が望んでこうなってるわけじゃないんだってば!」
「ひ~~、腹いて~~~。で、その格好で何すんの?正義の味方でも
すんの?大体、魔法少年って、お前、何の魔法が使えるようになったの?」
「僕が使えるようになった魔法はね、『限定一名様、魔法少年が思いを寄せる
相手の願いを叶える魔法』なんだって」
「なんだそりゃ!」
「僕が好きな人が望むことなら、僕がその人を好きでいる限り、何でも
叶えることができるんだって」
「へえ...そいつはラッキーだな」
「...なんで、こんな姿をさらしてまで、こんな話をしたか、わかってない?」
「ん....?」
「何でも叶えてあげるよ。何して欲しい?」
「....あ~~~...とりあえず、この会話の記憶を消して欲しいな。そんで、
告白はもうちょっとまともなシチュエーションでということで、ヨロシク」
71:風と木の名無しさん
09/02/01 00:30:21 tZ0M6a8D0
おおおおおおかわええーーーーーー!!!萌えた!!!!!
72:風と木の名無しさん
09/02/01 00:39:06 f8/zHKmvO
かわいいw
最後萌えたよ!GJです!
まとめの人のも毛根無くなったww
73:風と木の名無しさん
09/02/01 02:09:23 RVPOnoftO
>>60
うまいね!
切なすぎるよー…
ファンタジーの世界だから魔王は生き返れると勝手に信じてるよ
>>70
かわいい!!
一生懸命考えたんだろうね
うまくいくといいな
74:風と木の名無しさん
09/02/01 02:47:53 AI4lUKDhO
かわゆすかわゆす
75:風と木の名無しさん
09/02/01 03:09:27 EZOCXA7V0
かわいい。最後が特に上手い!萌えた。
76:風と木の名無しさん
09/02/01 07:58:49 frdgDVJP0
かわいいなw
まとめも凄く萌えた GJ!
77:風と木の名無しさん
09/02/01 12:15:09 I6QBX/WfO
まわし
78:風と木の名無しさん
09/02/01 12:41:17 yRbWbzBR0
かわいいので踏まれる
79:風と木の名無しさん
09/02/01 12:46:07 tZ0M6a8D0
芸術家の悩み
80:1/2
09/02/01 14:55:09 amxJqlkM0
芸術家の悩みもいろいろあるけどここは801板なのでやっぱりラブの悩みを語りたい。
才能と引き換えに空気を読むとか輪を重んじるという能力が著しく低いっぽい芸術家。
そして私はそういう変人芸術家にはぜひとも識人を組み合わせたい。
芸術家と常識人は根本的にわかりあえない。だからこそ悩み、そして惹かれるといい!
…といかに思いつくまま脳内棚の芸術家ストックを並べます。
【気弱芸術家&強気常識人で(いつも迷惑掛けてるから見捨てられるかも…)なお悩み】
「……あの、ごめんな?」
「ごめんで済むなら警察は要らない」
「……本当に、申し訳ありません。引受人になってくれてありがとう…」
「どうして交番の壁に落書き、なんて馬鹿なことをするんだ」
「それが、急に頭の中にイメージが浮かんでこれは忘れる前に形にしなきゃと思ってさ。
そしたら目の前に妙に広い場所があるし画材屋の帰りで絵の具もあるじゃん?
やったーと思って筆を握ったらもう頭が真っ白になってさー…怒って、る?」
「怒ってない」
「怒ってるよ。そりゃ怒らせるのは俺だけど…」
「怒ってないから、早く帰ってちゃんとキャンバスで完成させろ。それで許してやる」
【身勝手芸術家&引き摺られ常識人で(素直になれない)なお悩み】
「先生!いい加減にしてください!締め切りは先月だったですよ?!」
「そんなこと言ってもできてねぇんだから仕方あるめぇ」
「仕方なくないです。もう、これ以上延ばしたら…」
「へえ、延ばしたらどうなるんだ?とうとう契約解除か?」
「決してそんな事はさせません!でも先生の作品を待っている人ががっかりします」
「……で、ついでにお前がクビになったりすんのか」
「そ、それは…わかりませんが、とりあえず先生には関係ありません」
「お前、そう言えば適当に仕上げろとは一度も言わねぇな」
「当たり前です。先生が作品に篭める愛情を見たらそんな事は言えませんよ!
あっ!また話を逸らしてごまかすんだから。それよりも作品を……」
「ちっ…しかたねぇなあ」
「つ…ついにやる気になってくださいましたか!先生!先生ーー!」
81:2/2
09/02/01 14:59:04 amxJqlkM0
【根暗芸術家&陽性常識人で(俺みたいな変人じゃ釣り合わない)なお悩み】
「お前ってさー日がな一日篭って、絵と向き合って嫌にならない?」
「……別に」
「たまには外に出て騒いだり、かわいい女の子とデートかしたくならないの?」
「……全然」
「いや、それは嘘だろ。たまには絶対絶対そう思ってるはずだ!」
「……嘘じゃないよ。それより何しに来たんだ?」
「お前が独りで閉じこもってかわいそうだなと思って来てやったんだろ」
「頼んでないから帰っていいよ」
「何だよー怒った?ごめん、冗談!だってこうでもしないとお前に会えないじゃん?」
「………」
「家でもいいけどさ、たまにはお前と外でデートしたいなー…とかね」
「……冗談」
「今度は冗談じゃないって。本気で誘ってるよ」
「来週……」
「ん?」
「来週、なら…ヒマだから……行ってもいい」
【電波芸術家&真面目常識人で(理解不能)なお悩み】
「……いつまでそうしてるの?雨、降り出すよ」
「放っておいてくれ。ここは金星じゃない。水銀の雨は降らない」
「水銀じゃないけど、最近の酸性雨は怖いよ?ね、帰ろう?」
「いやだ。放っておいてくれ。俺はこのままあいつの煙が夜に溶けるのを見ている」
「ここから火葬場の煙突なんて見えないじゃないか」
「それはただの物理的な話だ。俺には見える。ちゃんと見えている」
「……そうだね。でも帰ろうよ。こんな季節の雨に濡れたら物理的に風邪を引く」
「いやだ。帰らない。お前だけ帰れば良い。放っておいてくれ」
「こんなに言い張るなら、どうして今日の葬式に来なかったんだ」
「……俺が行ったら、迷惑が掛かる」
「どうして君はそういうところだけ常識的なんだろうね…」
80の上から3行目は「ぜひとも識人」→「ぜひとも常識人」の間違いです。失礼しました。
82:風と木の名無しさん
09/02/01 16:01:35 /6diAO1+0
これはいい。めちゃめちゃ萌えた
>>73
直近の*0以外の感想はまとめに書き込む方がいいよ
83:風と木の名無しさん
09/02/01 19:11:14 t4hIfoy7O
もれなく全部萌えた!
これはいい萌え語り。GJでした!
電波芸術家いいな、超いいな
84:風と木の名無しさん
09/02/01 19:31:01 AI4lUKDhO
こんな多彩な萌えを自家発電できる貴方が素晴らしい
85:風と木の名無しさん
09/02/01 19:31:37 yRbWbzBR0
GJ!気弱な芸術家って自分的に新しい感じで萌えた!
86:風と木の名無しさん
09/02/01 19:47:54 frdgDVJP0
引きずられ常識人の先生!先生ーー!に萌えたwGJ
87:風と木の名無しさん
09/02/01 22:11:29 f8/zHKmvO
やっぱ萌え語りっていいな!
萌えさせてもらいました姐さん!
88:風と木の名無しさん
09/02/01 22:12:32 frdgDVJP0
今日はたくさん萌えさせてもらったのでどうぞ↓
89:風と木の名無しさん
09/02/01 22:13:56 I6QBX/WfO
お次の方ー!
90:風と木の名無しさん
09/02/02 01:23:47 kwGroLztO
「お次の方ー! こちらのレジへどうぞ!」
並んでいた客に営業スマイルで声をかけて二番目で待っていた男性がこちらに来る。
ファーストフードで働きだして半年。すっかり接客と笑顔が板についた。現在通っている高校では「無口でクールで真面目な生徒会長」で通っている俺だが、ここでは「笑顔が素敵な爽やか『美少年』」でちょっとした評判になっている。さすが俺。どこに行っても完璧だ。
バイトをするにあたり自分の学校でのイメージ崩壊阻止の為にわざわざ遠くの市を選んだ甲斐あって未だにバレていないし、このままいけば目当ての物を買える額が貯まるのはあっという間だろう。
そんな事を考えながら注文を受けていると、ふいに客の声が途切れたのに気づいた。
「……お前」
そういえば聞き覚えのある声だ。しかし常連客にこんな中年男はいなかった……。
「谷沢か……?」
『ような』という言葉は顔を見た瞬間吹っ飛んだ。
帰宅途中に寄ったのか見慣れた紺のスーツ姿、白髪が少々混じり始めた頭に大学生の頃から使っているというボロボロの鞄。見間違いではない。
よりにもよって担任兼生徒会顧問が何故ここに!!!!
笑顔のまま凍りつく俺と、今まで絶対に見たこともないであろう俺(谷沢)の表情に呆然とする海野先生(何故かほんのり頬染付き)。
確かにこの時、時は止まっていたのである。
91:風と木の名無しさん
09/02/02 11:58:39 o+Gy1jOq0
801板だからちょっとそういう部分が弱いかなと思ってしまった
ごめんなさい
まとめもGJ
92:風と木の名無しさん
09/02/02 12:09:53 qxFrFI3yO
生徒じゃなくて先生ってとこが良い!
93:風と木の名無しさん
09/02/02 12:28:49 xZyteuXAO
イメージ気にしてるあたりがまだまだ子供っぽくて可愛い
多分リロミスの*9なのに処理GJ
あとまとめ投下のにめちゃくちゃ萌えたんですがどうすればいいですか
94:風と木の名無しさん
09/02/02 13:19:07 lw4HiZco0
世界の中心でGJと叫べばいいと思います
95:風と木の名無しさん
09/02/02 15:43:28 q+yDuwss0
二人のストーリーはここから始まるわけだねぇ。萌。
生徒×先生なのか先生×生徒なのか、激しく気になる。
96:風と木の名無しさん
09/02/02 16:02:19 a2v+xqapO
次学校で会った時ちょっと気まずい雰囲気が流れて
「先生、少しよろしいでしょうか」で秘密共有ですね、わかります
97:風と木の名無しさん
09/02/02 16:20:53 WDM8R0RCO
生徒×先生で美味しく妄想させていただきます
まとめの人もGJです!
98:風と木の名無しさん
09/02/02 16:38:25 lmhpi+6b0
超GJ!妄想させてもらうぜ
じゃあ次のお方どうぞ↓
99:風と木の名無しさん
09/02/02 16:40:06 CXaA7915O
小鳥
100:風と木の名無しさん
09/02/02 20:40:07 82I4bnlT0
そのロードショー私のために公開してください早く!
若き日の執事 in諜報部ってだけで丼三倍はいける
101:風と木の名無しさん
09/02/02 23:11:44 82I4bnlT0
妻が、友人から小鳥を譲り受けてきた。
金糸雀という鳥で、鮮やかな黄色のうつくしい愛玩種である。
さえずりを目当てに雄を貰ってきたのだが、これが一向に鳴く様子を見せない。
黙々と青菜を啄ばむ他は、日がな一日空を眺めている。
これを飼っていた猫がしきりと気にするので、鳥籠を遠ざけておくよう気をつけていたのだが、
ある日、うっかりと籠を縁台に置いたまま家を空けてしまったことがあった。
用事を済ませ、急いで帰宅すると、驚いたことに、縁側からさえずりが聞こえてきた。
さらに驚いたことに、猫が鳥籠のすぐ傍に身を伏せて、さえずりに耳を傾けているのである。
生来気性が荒く、喧嘩の絶えない暴れ猫であるから、鳥の音を解する情緒がそなわっているとも思えぬが、
ぴんと両の耳を起こして、一心に聞き入っているように見えた。
鳥も何を思ってか、猫が傍に居るときを選んで、うつくしいさえずりを響かせるようになった。
我々人間も、猫の相伴にあずかる形でその声を楽しませてもらった。
鳥は喉元の羽毛を震わせて、トゥリトゥリトゥリピチピチと、求愛するように歌う。
あの子たちは、お互いのことが余程気に入ったのでしょうと、妻は言った。
籠の鳥と獣が心を通わせるはずなどないが、女というのは、禽獣を擬人化したがる向きがあるものだ。
それから三年ほど経って、猫が死んだ。その日を境に、鳥の声もぱたりと絶えた。
貰われてきた頃のように、止まり木の上からじっと空を見ている。
余所から猫を借りてきたらまた鳴くかも知れないと妻が言い出したので、私はそれを諌めて言った。
「あの鳥にとっては、うちの猫が一番の知音だったのだ。余所の猫では代わりになるまい。
伯牙が琴の弦を絶ったように、あれも歌うことをやめてしまったのだろう」
「まあ。まるで人間のようですね」
妻に言われて、私は思わず苦笑した。
知音断琴。そういった心のありようは、あるいは鳥にも通じるのかも知れない。
金糸雀は二度と歌わないだろう。
102:風と木の名無しさん
09/02/02 23:37:07 CXaA7915O
なんか漱石の猛禽思い出した
誤爆なのにGJ!
103:風と木の名無しさん
09/02/02 23:39:20 ceQWkCX20
萌えを感じるのとは違うけどすげえ上手いと思った
雰囲気が出てて凄いなー…
誤爆で踏んだのに
104:風と木の名無しさん
09/02/02 23:43:00 BDyiFOAz0
純文学素敵だーGJ!
静謐な雰囲気がいいね
105:風と木の名無しさん
09/02/02 23:43:51 xZyteuXAO
誤爆なのにこれは凄いぜ
106:風と木の名無しさん
09/02/02 23:50:51 7Q2Rm70F0
動物物で短編集出したら買いますってくらい好みだ
ネタも文体も
107:風と木の名無しさん
09/02/03 00:13:24 J3B+S7EB0
GJ!萌えたよ~
108:風と木の名無しさん
09/02/03 00:15:06 2edPkXoUO
泣けた
お題が好みだったから誤爆で残念だと思ったけど
すごく萌えたよ!GJ!GJ!GJ!
しかし、どこへの誤爆だったんだw
109:風と木の名無しさん
09/02/03 00:20:03 gXZ1xSgi0
ちいさな祈り
110:1/2
09/02/03 01:56:25 +gAdq8fk0
テニスコートの周りには、普段からは考えられないくらいのギャラリーがいた。
黄色い声を送る人も、写真を取る人も、何かを細かくメモする人もいた。
男性も、女性も、大人も、子どももいた。
しかし、その人たちの全ての目は、コートの中の2人に注がれていた。
その内の1人、前原祐二は私の息子だ。
流れる汗もそのままでコートの中を走り、懸命にボールを追いかけている。
一進一退の攻防が続き、どちらが勝っても負けてもおかしくない状況にある。
パコーンパコーンとラリーの音が続く。
この1セットを取れば祐二の勝ちだ。
神様お願いします。どうか祐二を勝たせてやってください。
そして、全国大会へ行かせてやってください。
私は懸命に神に祈った。
それは、本当に小さな祈りだったのかもしれない。
しかし、これほどまでに何かを真剣に祈った事は無かった。
神様…神様…
息苦しそうにコートの中を駆け回る息子を私は見てはいられなかった。
辛かったらいつでも辞めても良いんだぞ。
私の夢なんか気にすることは無い。
そう言いたかったが、必死に走ってボールを打ち返す祐二には言えなかった。
111:2/2
09/02/03 01:57:29 +gAdq8fk0
「私は昔テニスをしていて、全国大会まで後一歩の所で負けてしまったんだよ。」
そんな事を話したあの日、祐二は私にはっきりと言った。
「お父さんの夢は僕が叶える!」
自分の夢を息子に押し付けてしまったと気付き、罪悪感に苛まれた。
だが、そんな息子の言葉が嬉しかった。
パコーンパコーンという音はまだ続いている。
ただうつむきひたすらに祈るしかなかった。
神様…神様…
一際大きな歓声が上がり、試合が終ったらしい。
ハッと顔を上げると祐二は息を切らせながら笑っていた。
そして、私に向かってVサインをした。
どうやら、私の小さな祈りは神に届いたらしい。
私は感動で涙が止まらなかった。
コートから出てきた息子の顔は、前よりも少し大人びて見えた。
112:風と木の名無しさん
09/02/03 14:44:56 YpHCSrbw0
出来が悪いということではないのだけれど…
このスレに投下で良かったのかどうか…
113:風と木の名無しさん
09/02/03 17:12:32 vYh/EO3T0
まわし
114:風と木の名無しさん
09/02/03 17:13:51 0BkMUsqH0
親と息子の絆って感じで自分は好きだけど
最近後書き書く人いるね
それこそいらない
115:風と木の名無しさん
09/02/03 17:39:41 wWNfMwm20
>>114 後書きなんてどこにあるの?
父と子、801萌えはしないけど普通に良かったよー
116:風と木の名無しさん
09/02/03 17:40:55 7wJUUYwm0
じんわりまわし
117:風と木の名無しさん
09/02/03 17:42:22 0BkMUsqH0
>>115
ごめん、>>110-111=>>112かと思った
118:風と木の名無しさん
09/02/03 17:56:27 04boDbO6O
ふみやがれ!
119:風と木の名無しさん
09/02/03 18:01:28 aZyJsiXN0
真面目な後輩×遊び人先輩
120:1/2
09/02/03 18:59:13 U3awrBk80
「体壊しますよ」
怒った声が降ってきて顔を上げれば逆行の中、後輩の伊藤が怖い顔で立っていた。
タバコを手元の缶に押し付けて消すと最後の煙を肺から吐き出した。風にのった煙は
伊藤へかかることもなく、空気の中へ溶けていく。
「いーんだよ」
へらっと笑って答えてやれば伊藤の眉間に更なるしわが加わる。
俺が練習をサボって帰ろうとするとよくこの顔で校門に立ちはだかったなぁ、既に引退
した部活動の日々を思い出す。
「よくありません」
その声も変わらず、全く一緒。
「ところで、部長が立ち入り禁止の屋上にいていーの?」
「話をそらさないで下さい」
あまりにまっすぐな目がこちらを責め立てる。いたたまれなくなって僅かに視線を逸らした。
「怒るなって。俺、ニコチン星の王子だから、たまに摂取しないと死んじゃうの」
だから、ね、見逃して。
丁寧にウインクまでつけてお願いしたのに伊藤は全く聞いてくれなかった。
「その言い訳が通用すると思ってたんですか」
「女の子は大体これで許してくれるもーん」
伊藤の顔が更に怖くなった。伊藤は真面目すぎるのだ。しかも、規則とか法律とかに
違反するからどうこうではなくて、体に悪いからとかためにならないとか、おかんかよ
っていう理由で責めてくる。正直言って苦手だ。
「また、彼女に振られたみたいですね」
伊藤が話題を変えた。
「おう」
「また浮気ですか」
お前こそまたその話題か。
女の子に悪いとか、そのうち刺されますとか、何度も聞いた説教が脳内でリピート
し始める。いい加減飽きて逃げようとするとごつい手に腕を強く捕まれた。
「なに」
「…またすぐ、彼女作るんですか。そうでしょうね、二週間とあいたことないですもんね。
適当にどっかで引っ掛けて、また浮気してまた振られるんでしょうね」
イライラと神経質な声でまくし立てられ、流石にかちんと来た。
121:2/2
09/02/03 19:00:00 U3awrBk80
「関係ないだろ。俺はそのときそのときを楽しむんだよ」
言った瞬間強く手を引かれ、フェンスに体を打ち付けられた。衝撃に息を詰まらせると
目の前の顔が泣きそうに歪んだ。
「…った、」
「先輩…」
まるで何かにすがるような声だ、と思った。
思った瞬間唇に衝撃を感じた。
「すきです」
まっすぐな目が俺を金縛りにさせる。
「すきです…」
もう一度呟いて伊藤は今度はゆっくりと唇を重ねてきた。侵入してきた舌が上顎を擽る
ように撫で、俺の舌を絡めとる。あまり慣れていない動きだ、とぼんやり思った。
暫くそうして好き勝手に蹂躙するとそれはゆっくり出ていった。
「煙草やめて下さい。苦いです」
キスの直後がそれかよ。
文句を言う前に伊藤はこちらに背を向けて去っていった。
結構重厚な金属音を立てて閉まった扉を呆然と眺めた。座り込み、大きく息を吐く。
「…痛ぁ」
口端をぬぐった親指には最初のキスでぶつけた時の血がついていた。
122:風と木の名無しさん
09/02/03 19:24:10 BytT6ghE0
いいね
こういうネタ好きだわ
123:風と木の名無しさん
09/02/03 19:25:16 ikb3hrRH0
なんて言えばいいんだろう、ものすごく萌えた
こういう関係いいなGJ!
あと>>199もいいお題GJ!
124:風と木の名無しさん
09/02/03 20:15:37 7wJUUYwm0
*9も*0も萌えツボだー
GJ!
125:風と木の名無しさん
09/02/03 21:45:53 /7EtarB+O
ツボすぎる…!
GJ!GJ!
126:風と木の名無しさん
09/02/03 22:10:44 +S8JqRmR0
萌えた!くっつくといいな~
127:風と木の名無しさん
09/02/03 22:38:40 XvQxS3vhO
いい、これはいい。
切な萌えたよGJ!!
128:風と木の名無しさん
09/02/03 23:11:24 3pzJYOkTO
踏まれてやろう
129:風と木の名無しさん
09/02/03 23:13:03 U53ZjtgAO
その弱さと醜さを愛す
130:1/2
09/02/04 02:21:10 vSBoP40D0
「俺はお前のことなんか好きじゃないんだ」
自分の下で熱い吐息をこぼしながら、年上の人は言った。だから勘違いをするな、と。
会社の忘年会でつぶれてしまった上司を一人暮らしのマンションまで送り届けると、
ベッドに引きずり込まれた。
酒のせいで上気した顔でねだられて抱くと、普段厳しい顔しかしない上司の甘えてくる様は
自分の中にある庇護欲を驚くほど刺激した。
「お前だって出世したいだろう。君は男しか駄目かもしれないが、俺は違う。
会社にばらすなんてバカなことは考えない方がいい」
セックスのときにまで萎えるようなことをいう口を唇でふさぐと、
上司はうっとりと恍惚な表情を浮かべて腰を揺らす。
……そのままおとなしくなった上司を揺さぶって、タイミングを合わせて射精すると、
くったりと胸に顔をうずめてきた。
忘年会の翌朝、裸で抱き合ったまま眠って、先に目が覚めた上司は真っ青な顔で罵倒の言葉を投げつけた。
会社にばらされたくなければ自分とこれからも寝ろと言ったのは自分だ。
131:2/2
09/02/04 02:22:19 vSBoP40D0
「あなたは弱い人だ」
自分の胸の中でびくんと上司が震える。
「俺は出世なんかどうだっていい。でも会社にばらしたりもしない」
「……ばらさないなんて嘘だ。君だって心の中では俺をバカにしてるんだろう。
足を引っ張ってやろうと思ってるんだろう」
「馬鹿になんかしていません」
「弱い醜いと君は言った!」
「ええ、あなたは弱くて醜い。思いやりはないし自分の保身ばかりだ」
言うと上司は泣きそうな顔で体をよじった。
自分から離れようとする体を強く拘束すると、泣きそうな顔をする。
「嫌がらせを言うならもうやめてくれ」
「やめません」
上司は唇を強く噛むと、頼りなく数回瞬きをした。
その仕草が、上手く甘えられずわざと酷いことを言って気を引きたがる子供のようにみえてくる。
上司の髪にあやすように口づける。何度も繰り返すと、上司のこわばった体が少しずつゆるんでいく。
「俺はあなたが好きだ」
「……うそだ」
「嘘じゃない。あなたの弱さも醜さも、全部ひっくるめて、愛してますよ」
腕の中で上司は、もう一度「嘘だ」、と呟いた。
132:風と木の名無しさん
09/02/04 02:33:09 6c1PSjYr0
ドツボです。ありがとうございました。GJ!
133:風と木の名無しさん
09/02/04 07:10:30 qNG0xhNdO
これはいい萌えた!
力の限りGJ!
134:風と木の名無しさん
09/02/04 08:52:46 Jivd5woFO
お題からして萌えたけど、*0さん上手いね!更に萌えた(*´Д`)
まとめの人のも萌えました!GJ!
135:風と木の名無しさん
09/02/04 17:47:22 6ajypcgm0
泣きそうな上司、イイヨイイヨー
朝の光景を画像付きで見たくなったw GJ!
136:風と木の名無しさん
09/02/04 18:33:56 84iqf3OJO
なんという萌え…!
前後が読みたいです(´Д`*)
137:風と木の名無しさん
09/02/04 18:54:31 OfuWncdJ0
なんという素晴らしいお題の活かし方の上手さ・・・
続きを読みたくもありここでとめておいてほしくもある
最高のSSだな!
138:風と木の名無しさん
09/02/04 19:11:23 Gbf6+6m3O
ふみなされ
139:風と木の名無しさん
09/02/04 19:15:49 qBDwfewN0
思い詰めて気が狂いそう
140:1/2
09/02/05 01:56:00 U/g2ZV030
「どこに行くの?」
玄関で靴を履きかけていた俺は、体を強張らせた。
部屋で執筆をしていたはずの彼がいつの間にか俺の背後にいた。
「どこに行こうとしてたの? 僕に黙って」
こういう時の彼の様子は鬼気迫るものがある。
俺は無理やり笑顔を作って説明した。
「……料理の本を見ていたら作りたくなったレシピがあったんだ。
足りないものを買いに行こうと思って。それだけだよ」
「冷蔵庫にあるもので作ればいいじゃない。聡の作るものなら
僕はなんでもいいから」
その言葉は嘘じゃないのはわかっている。
この間はストレスのたまった俺が作った
火の通っていない固いパスタを文句も言わずに食べていた。
作家としての彼は世間で名が知られていて、印税でしばらく生活できるだけの財力がある。
俺は彼の秘書だ。
愛想がなく営業成績の悪い俺は、リストラで路頭に迷っている所を元同級生の彼に拾われた。
執筆以外の雑用をするために雇われている。
……はずだった。
今は雇われているとは言えない。
確かに金はすべて彼から出ているが、俺と彼の間にあるのは雇用じゃない。
執着だ。
141:2/2
09/02/05 01:56:35 U/g2ZV030
「宅配ばかりだし買い物ぐらい……」
「行かないで。必要なものなら言って。ネットで買うから」
「蒼。そんなに思い詰めないで。俺は出て行ったりしないから」
「嘘だ」
「嘘じゃないよ」
「この間も僕に黙って出て行って、三十分も戻ってこなかった」
「仕事だよ。編集さんが近くまで来ていたから資料を受け取りに駅まで行った。
それだけだよ」
「そんなの聡が行く必要なんかない。届けさせればいいんだ」
「俺の方が暇なんだから少しぐらい」
「ダメだ!」
蒼が近くにある物に手を出しそうな気配を感じて、俺は外出をあきらめた。
この間も俺が家に帰ってきたら、室内が散々な状態になっていたからだ。
もう少しで泥棒が入ったと警察に電話をする所だった。
いつから彼はこんな風になってしまったんだろう。
「どうして俺のことが信じられないの? 愛してるって言っているのに」
「聡が僕のことなんか愛してくれる訳ない」
「そんなことないよ。俺は蒼の才能を愛してる。こんな蒼の弱さも好きだ」
「嘘だ」
「嘘じゃない」
腕の中にいる彼が落ち着いていくのが伝わる。
何度も呪文のようにいう。好きだよ。愛しているよ。
そう言うと彼が安心するから。
「聡。僕から離れていかないで」
「いかないよ」
「もう気が狂いそう……」
もうとっくにこの関係は狂っているよ。
だがその言葉が俺の口から出ることはなかった。
142:風と木の名無しさん
09/02/05 07:52:30 YIzpIVGwO
ヤンデレだヤンデレだ!
最近のマイブームだったから嬉しいw
この後どうなっていくのか気になる…
GJです。
143:風と木の名無しさん
09/02/05 08:25:48 V2C30XuLO
萌えすぎてどう表現したらいいか分からない
ヤンデレが好きだから鼻血噴きそう
そして文章上手い!ほんとGJです!
お題出した人にもありがとうと言いたい
144:風と木の名無しさん
09/02/05 08:37:28 nYsHF9b9O
これがヤンデレ!
はまりそうだ GJ!
145:風と木の名無しさん
09/02/05 08:40:13 iNw4pHOSO
は げ た
力の限りGJ!!
146:風と木の名無しさん
09/02/05 09:07:17 5hpkWqY1O
ここでこんなにいいヤンデレが見られるとは…!
朝から萌えた!ありがとう!GJ!
147:風と木の名無しさん
09/02/05 09:23:10 YeWDpvbc0
ヤンデレ興味なかったけどコレはヤバイ!はまりそう!
GJ!!!!!
148:風と木の名無しさん
09/02/05 09:28:10 iwWnexji0
素晴らしいヤンデレです GJ!
149:風と木の名無しさん
09/02/05 09:31:07 iNw4pHOSO
脇役のジレンマ
150:風と木の名無しさん
09/02/05 11:38:08 5hpkWqY1O
「いい加減にして下さい」
小さなオフィスに苛立ちを含む男の声が響く。
「先輩が早く進めてくれないと僕の仕事まで遅れます。」
「だって…最近森本が口聞いてくれなくて仕事どころじゃ…」
「仕事なめてるんですか?勤務時間は勤務する時間であってそんな隅っこでめそめそする時間じゃないんですが。」
「うわぁ…社会人一年生に怒られた…」
古びたデスクに突っ伏したまま情けない声を出す男を見て、南はわざとらしく溜息をつく。
「で、何なんですか、森本先輩が口を聞いてくれない原因は」
「え?あぁ、こないだ森本といる時さ、偶然前の彼女に会って…」
へぇ、と関心なさそうな返事をする南にこいつは本当に聞く気があるんだろうかと思う。
「……でさ、その彼女と昔話でしばらく盛り上がって。なんかそのあたりから森本機嫌悪くなって、それ以来喋ってくれなくなった。」
南はというとコーヒー片手に携帯をいじりながら相槌をうっている。もうこいつ絶対聞いてない。
「どうせ俺の片思いだよ!もう絶対森本に嫌われた!」
「…森本先輩、今食堂にいるらしいですよ」
そう言うと南はずっといじっていた携帯の画面を見せる。
「森本先輩にはしばらくそこにいるようお願いしておきました。いい加減告白でもしてきたらどうですか?」
ぱたん、と携帯を閉じて仕事に向き直る。
「ま…マジで?」
「マジです。大体、先輩達どう見ても片思いなんかじゃないですから。」
「嘘…でも…」
「見てるこっちが苛々します。早くくっついて早く仕事片付けてください。」
「…ありがとう!行ってくる!本当ありがとう!南愛してる!」
言いながらバタバタと慌てて出ていくのを少し冷めたコーヒーを飲みながら見送る。
「僕も愛してますよ」
小さくなっていく足音に震える声で呟いた。
151:風と木の名無しさん
09/02/05 12:54:01 Lt+NpHup0
せつな萌えた。GJ!
南には幸せになってほしい。
152:風と木の名無しさん
09/02/05 13:00:36 iNw4pHOSO
南切なす…でも片思いは萌えます
ありがとう!
153:風と木の名無しさん
09/02/05 13:16:35 BORjpTXF0
南を無口クール眼鏡で想像した。
南男前すぎるよGJ!
154:風と木の名無しさん
09/02/05 16:36:29 tkX88D+fO
南…いつか主役になってくれ
萌えたGJ!
155:風と木の名無しさん
09/02/05 17:00:14 nYsHF9b9O
南が幸せになれることを願うよ
GJ!
156:風と木の名無しさん
09/02/05 18:41:12 iwWnexji0
最後の一言が印象的だ GJ
157:風と木の名無しさん
09/02/05 18:42:04 8t/Rj87L0
南…脇役にしておくのはもったいない
GJ!
158:風と木の名無しさん
09/02/05 18:51:40 boIvqtNM0
同じ人が*0を踏んでるのかな
まあいいや
159:風と木の名無しさん
09/02/05 18:52:31 iwWnexji0
一人が好きな男とその兄貴分
160:風と木の名無しさん
09/02/06 10:56:41 80jDVBfV0
「一人ぼっち」ではなくて「一人が好き」なら一人の時間を楽しめる男だと思うんだ。
仕事や趣味が充実してるのかもしれないし、自分のペースで過ごすのが好きなのかもしれない。
イメージはテレビで最近よく言ってるお一人様の男バージョン。
兄貴分もお一人様だと何も始まらないのでw逆にいつも人の中心にいるようなタイプがいい。
一人で飯食うなんてさみしいなーと思っちゃう。
食事も飲みもみんなひきつれてぞろぞろ行く。休みの日もつい「なにしてる?」とか電話する。
いつも一人の後輩にに兄貴ぶって声掛けてやるんだけど全然付いて来ない。
で、ある日いつも一人の一雄(仮名)に「お前ってさみしい奴だよなw」って軽口叩いたら
真顔で「さみしいのは先輩でしょう?」と言い返されちゃうんだ。
先輩はびっくり、大げさに言えばカルチャーショック。
「え?何でいつも一人のお前が、いつも人の中心にいる俺にさみしいとか言うの?!」と動揺。
でもよくよく考えてみたら、確かにさみしいんだよ先輩は。さみしいから人といたいんだ。
みんなでわいわい騒ぐときは楽しいけど別れた後は余計にさみしい。だからまた人を集めたくなる。
「そっかー…俺ってさみしい奴なんだ…」と落ち込んじゃう先輩。
だってさみしいって気がついたら余計にさみしいからね!
そしたら一雄は先輩にそっと寄り添ってくれるわけだよ。
一雄は一人でも全然さみしくないけど先輩はそうじゃないからお一人様も一時休業。
「お前、一人が好きなんだろ。無理して俺といなくてもいいよ」
「いや、別に。先輩も好きですから」
何か恋が始まっちゃったりして、最終的な折衷案として二人でお一人様時間が増えたらとても萌える。
161:風と木の名無しさん
09/02/06 12:32:15 +mroWxem0
>先輩も好きですから。
このセリフいいね!
サラッと言ってるところがたまらんのう(*´Д`*)
162:風と木の名無しさん
09/02/06 14:34:43 DbTUDL+OO
受け攻めどっちでも萌えるうううううう
GJ!
163:風と木の名無しさん
09/02/06 20:03:11 gQuucJ+FO
萌え語りktkr
こういう関係好きだ!GJ!
164:風と木の名無しさん
09/02/06 20:43:36 ka7Wq3670
最後二人でお一人様時間で萌え尽きた
GJでした!
165:風と木の名無しさん
09/02/06 20:58:53 A3dMqkH2O
萌えたー!
GJ!GJ!
166:風と木の名無しさん
09/02/07 01:32:08 E/XkT07vO
いい…!寂しがりんぼ攻めいい!
167:風と木の名無しさん
09/02/07 02:11:00 qKLW1waVO
いいね~、萌えさしてもらいました。たな
168:風と木の名無しさん
09/02/07 03:12:43 FktuIajV0
踏んでもいいよ?
169:風と木の名無しさん
09/02/07 03:33:23 gPd1XpwO0
平民×王子様
170:1/3
09/02/07 17:46:50 ymBBspoL0
荒くれ者の集う酒屋の壁際で娼婦に軽くあしらわれている青年を見て、俺はめまいを起こしそうになった。
炭で顔を汚し、簡素な服を着て上手く化けたつもりかもしれないが、
艶のある髪や手入れの行き届いた爪はいつぞや城で見た姿をすぐに思い起こさせた。
面倒なことは避けたい性分なのだが、さすがに今回は見逃せない。
大股で近付き、金髪の女の肩を叩いた。
「あっちでママ・ルアンヌが呼んでたぜ」
「あら残念。今夜はお別れね、ボク」
女は派手なブラウスに覆われている胸の膨らみを見せ付けるようにして席を離れた。
こちらの気も知らず、彼はのんきな顔で手を振っている。
俺は前の席にどっかと腰を下ろし、彼が飲んでいたらしい酒を引き寄せた。
「あんた、何しに来た。こんな安酒がお好みか」
青年の目が一瞬丸くなり、それから微笑みのために細くなった。
「堅苦しい場で飲むよりはこちらの方が良い。歌も踊りも楽しめる」
彼―第4王子アンリ・デ・ダルシャン―はそう言い、俺が取り上げた酒に手を伸ばし、一気に呷った。
が、白い喉がこくりと鳴った次の瞬間、彼は盛大に噴き出した。
テーブルがびしょ濡れになり、彼自身の服も色が変わってしまった。
慌てて背中を叩いてやったが、ずいぶん長いこと咽ていた。
激しい咳と呼吸の合間をぬって彼が呟いたのは、「美味くはないな」という一言だった。
「飲めないなら無理に飲むな」
王室育ちが口にするワインとは物が違う。
そんなこともわからないのかと呆れていたら、僕は飲んでない、先程の彼女の酒だと返された。
自分の勘違いを反省すべきか、彼の無茶を叱るべきか、迷うところだ。
「ルーカス・フルドラン、僕と勝負しろ」
酒とも唾液ともつかない口元の液体を拭いながら、彼の目は青く燃えていた。
ああ、誇り高い剣士の目だ。
あの日中庭で見た澄んだ目だ。
171:2/3
09/02/07 17:47:31 ymBBspoL0
―1ヶ月前のあの日、僕は君に侮辱された。
試合は全力を出すのが鉄則だ、途中で止める事など許されない。
周りから見れば互角の戦いに見えたかもしれないが、剣を合わせている者同士ならはっきりとわかる。
僅かにそちらの方が優勢だった。なのに、君は何故か剣を引いた。
王家に気を使ったつもりか? 王子に花を持たせたのか? 剣に対する尊敬はどこへ行った。
僕は確かに王の息子だが、あの日あの場では一人の剣士であったはずだ。
君は僕のみならず、剣を持つ全ての者を軽んじた。
そのことが許せず、君を追ってここに来た。
黙って聞いてはいたが、俺には俺なりの言い分があった。
あの頃はまだあばら骨がくっついていなかった上に、試合が長丁場になって二人ともひどく消耗していた。
いや違う、視界の隅で王が小さく欠伸をしたのがきっかけだった。
国王に剣を馬鹿にされた気がして、俺は先に負けを継げた。
招待試合の場で主催者が飽きているのに、戦いを続ける意味がないと思ったのだ。
しかし今思うと、確かに彼には失礼なことをした。
親は親、子は子。なぜあの時そんなことに気付かなかったのだろう。
生まれついた庶民根性のせいか、あるいは相手の腕前への焦りが出たか。
どちらにせよこの勝負、男ならば受けなくてはならない。
「剣はあるか」
「2本持ってきているが、自前の剣でも構わない」
彼は隠し持っていた布の包みを取り出して見せたが、紋章入りの王室の剣など使う気がしなかった。
もし刃こぼれでもしたら一大事だ。
「俺は庶民の剣でやらせてもらう。立会人は?」
「あの女性に頼もう」
「娼婦だぞ」
「何か問題が? 僕がここにいることの方がよっぽど重大だ」
自覚しているのなら尚更たちが悪い。
切れ者の第1王子に聡明な第2王子、温和な第3王子、そして無謀な第4王子。世の噂は案外的を射ているようだ。
「3つ条件がある。1つは決闘ではなく試合をすること。あんたを殺したら俺も首を刎ねられるからな。
2つ目は終わったらすぐに城に帰ることで、最後にいますぐ『僕』を止めること。
坊っちゃん育ちだとここの奴らに知られたら危険だ。城に反感を持つ者も多い」
オーケイ、クソ野郎―王子の話しぶりは妙に板についていた。
172:3/3
09/02/07 17:48:26 ymBBspoL0
相手に背を向けて店の前の道を3歩歩いたら、それが試合の始まりだ。
金髪の女が甘ったるい声でカウントを取る。アン、ドゥ、トロワ。
先手を取る! そう思っていたはずだったが、相手の方が幾らか速かった。
左に回られて体の横で剣を受けることになった。
「遅い! あまりオレを見くびるな」
ぎりぎりと剣をかちあわせながら彼が叫ぶ。
「最初から飛ばすな、前の試合を忘れたのか」
「早く終わらせるために飛ばすんだ」
胴に入りそうになった剣を払いのけ、そのまま首を狙う。
もちろん寸止めするつもりだったのだが、思いがけず前に踏み込まれて腰が引けた。
「おい、死ぬ気か!」
「王族の血を見るのがそんなに恐ろしいか、この臆病者」
彼は俺を煽っている、乗ってはいけない。
しかし相手の身を傷つけないように戦うのが難しいことはよくわかった。
「本気を出してやるよ。おしっこチビんなよ、ボク」
「貧乏剣士め、おむつの替えを用意していなかったことを後悔しろ」
しばし睨みあい、互いに距離をつめ剣を大きく振るった直後、勝負は決した。
「それまで!」
耳に飛び込んできたのは凛々しい男の声だ。
「双方剣が折れましたので、引き分けです」
「はは、フランツ。声が戻ってるぞ」
甘ったるい声でしなを作っていたはずの娼婦が、機敏な動きで折れた剣先を拾い上げた。
俺はわけがわからず、間抜けにもその場で固まってしまった。
「試合は終わりました。金輪際こんな芝居は御免です」
芝居? 男の娼婦? 待て、一体どういうことだ。
「ルーカス・フルドラン、君は強い。是非第4王子直属の騎士に指名したい」
彼が真っ直ぐに手を伸ばし、握手を求めてきた時、ようやく気付いた。
このまさに奔放な王子は、直情型の箱入り息子の振りをして俺を釣り、真剣勝負をしかけて俺の実力を試したのだ。
測られたのは気に食わないが、鮮やかな剣技は尊敬に値する。
俺は一つ息をついてから、鼻の頭をかきながら彼の握手に応えることにした。
以上が我が主であり我が最愛の人、アンリ・デ・ダルシャンと出会った夜の全てである。
173:風と木の名無しさん
09/02/07 18:10:52 WK0u/j/N0
ごちゃごちゃしてわかりにくい
174:風と木の名無しさん
09/02/07 18:47:50 e/SCJUTr0
そうかな。翻訳物のこの時代のものってこんな感じだよ?
三銃士とか思い出した。GJ
175:風と木の名無しさん
09/02/07 18:49:31 8XD5yyhe0
確かにちょっとだけごっちゃりしてるかもしれないけどこういう時代物大好きな自分はものすごく萌えた。
GJ!
176:風と木の名無しさん
09/02/07 19:30:45 2K8VIimEO
読んでて、すごくドキドキした。
文章も好きです、ありがとう。
177:風と木の名無しさん
09/02/07 19:35:08 kboZ7qpQO
上手いけど平民×王子には見えない
王子×平民ぽいな~
178:風と木の名無しさん
09/02/07 19:38:17 AhBWaMvH0
続きが読みたくなるな
面白かった!
179:風と木の名無しさん
09/02/07 19:39:29 vmQCdAPo0
きっと昼と夜は立場がまるっと逆転するって事さ!
さあ踏んで踏んで!
180:風と木の名無しさん
09/02/07 19:45:22 wxy5toi30
探偵とミステリマニア
181:風と木の名無しさん
09/02/07 19:47:47 DHGm4MWOO
うめえ!!!
この日が始まりなわけですね!
この二人の恋人になってからも読みたいものだ
姐さんほんとにGJです!
前にも誰かが言ってたけど、短文に萌えが凝縮されてるのも好きだけど
長文だと書いた人の個性とかが出て面白いね
182:1/2
09/02/07 21:48:04 wxy5toi30
「んじゃ行きます」
「おう」
よっ、と掛け声をかけて、不安定な飾り椅子を二つ重ねたその上に俺は倒立をした。
足の裏がきちんと水平になるように姿勢を整えると、間髪いれずに先輩が
その上へジャグリングをしながら乗ってくる。
ぐん、と腕への負担が増すのが分かるが、先輩はまだ他の団員と比べて軽い方だ。
むしろ男衆の中で一番軽いんじゃないかとすら思う。
おまけにバランスの取り方も上手いので、こういう型を組む場合には
先輩が一番上に乗って見得を切る役になることが多い。
一番多くのスポットライトと歓声を浴びるそのポジションを、
本人はあまり喜ばしく思っていないようだったが。
「うーん、やっぱり椅子だと高さが足りないな。ステージ栄えしない。梯子で行くか」
まるで命が宿ったように生き生きと動いていた8つのボールが
ひときわ高く宙に投げられ、先輩は俺の上からひらりと飛び降りた。
そしてくるっとターンを決めると、美しく腕を掲げたまま次々と落ちてくるボールを受け止める。
その姿を大鏡が映し出していた。
「こら、何やってんだ。お前も降りてポーズ決めないとだめだろ。
個人練習だからって気ぃ抜くんじゃないぞ」
「あ、す、すみません」
まさか見とれていたとは言えない。
慌てて椅子から降りて頭を下げる俺を横目に、先輩はフロアの隅へスタスタと歩いていくと
そこに置いていたノートを広げて何やら書き込み始めた。
「んー。このタイミングで梯子出すなら、大道具のアレが……」
中身は、講演の進行やその最中の人や物の動き、ライトやSEなど
まぁとにかくステージのことに関する全てを細かく書き込んであるものだ。
いつか構成や演出をやってみたいんだ、と言っていた。
そのために忙しい合間を縫って独学で勉強もしているらしく、最近では団長も
ライトや道具の演出に先輩の意見を取り入れるようになって来た。
183:2/2
09/02/07 21:48:32 wxy5toi30
学校や映像の勉強だけで演出家になってきた人たちと比べて、
実際に舞台に立っている先輩の切り込みは斬新で面白いものが多い。
それはこの世界ではまだまだ新入りの俺にだってわかっていた。
先輩は、俺が隣に来たのに気づいているのかいないのか
時折鉛筆の尻をかじりながら、一心不乱にノートへ心を砕いている。
俺もいつか先輩の夢が叶ってほしいと思う。だが、それと同時に不安にもなってしまう。
もし先輩が演出一本に転向してしまったら、それはつまり彼がステージに立たなくなるという事だからだ。
俺は、先輩が俺の肩や背中を踏んづけて乗ってくる瞬間が好きだった。
他の誰よりも軽やかで、安定していて、絶対の安心感を持って堂々と型を決められる。
あとで講演の映像を見たって、先輩の見得は本当に美しいのだ。
そして、今目の前でノートに視線を落としている凛々しい横顔。
ステージの上のきらびやかな姿とはまた違うけど、これも俺の好きな顔だ。
「ねぇ、先輩」
「何だ?」
「キスしてもいいですか?」
「……お前はすぐキス以上をしようとするから駄目だ」
「えぇっ」
「大体、興行中とその前後一週間は禁止だって言ってあるだろ!
体力馬鹿のお前はいいかも知れんが俺は大変なんだぞ!」
「いえ、本当にキスだけですってば」
「駄目だ」
バシ、と閉じたノートを顔面に叩きつけられた。
「ほら、さっさと続きやるぞ!」
すっくと立ち上がってフロアに戻る先輩を追いながら、俺は先程の不安を胸から消した。
舞台に立っていようがこうしてじゃれていようが、あの人はあの人だ。
それは変わらないし、俺が先輩を好きでいるのにも変わりはない。
ただ俺の背中に彼の足跡さえ残っていればいいのだ。
184:風と木の名無しさん
09/02/07 22:17:46 cb5kNNin0
やばい
めちゃめちゃ萌えた
いいなあこういう先輩
リロミスはドンマイ、でもGJでした
185:風と木の名無しさん
09/02/07 22:28:27 b4576S4cO
すごい、ちゃんと>>179がお題になってる
鮮やかです!GJ!
186:風と木の名無しさん
09/02/08 02:28:02 Nw3gGay80
>>180=182
すごいな、すごすぎる。マジで鮮やか!心からGJ!
187:風と木の名無しさん
09/02/08 09:04:47 K25UIV+AO
これはすごいですね。
鮮やかです!GJ!
188:風と木の名無しさん
09/02/08 10:27:05 R1GoFYWX0
どうぞ
189:風と木の名無しさん
09/02/08 10:28:31 EGih/AUkO
結婚するAとAに片思いしていた幼なじみのBとC
190:風と木の名無しさん
09/02/08 10:28:44 SX4yj47dO
眼鏡を外して見えるもの
191:1/3
09/02/08 22:26:28 SX4yj47dO
「俺さ、女でなくてよかったなーって今思ったよ」
今日一日馬鹿の一つ覚えみたいに貼り付いた笑顔を見せていた佐藤は、マイクのスイッチを切ってテーブルに転がすと、ぽつりと呟いてスツールに腰掛けた。
けたたましいクラッカーの祝砲で幕を開けたニ次会も半ばに差し掛かり、次の余興までの短い歓談タイムに突入したところだった。
「好きな奴がお前も幸せになれっつってブーケなんかくれちゃったりしたらさ、そんでめっちゃ綺麗に微笑んでくれたりしちゃったら、おめでとうって言わないわけにいかなくなるじゃん」
佐藤は手近にあった受付名簿か何かを引き寄せて、それに視線を落としながら囁く。
少し硬くなったその口許から、店の奥、中央に並んで座る二人を囲む女性陣のうちの一人が手にした、丸い花束に目をやる。
いましがた行われたブーケトスで獲物を獲得した猛者が、友人とともに新郎新婦と記念撮影をしていた。
途切れることのない笑顔、笑顔。
「…おめでとうくらい言ってやってもいいんじゃねぇ?」
その光景を眺めながら小声で返すと、直後胸の辺りが引き攣れるように痛む。
思わず中身の入ったグラスを探すが、手の届く範囲には見当たらなかった。
「…ココロ込めてなんて言えねぇし」
「ケンジに泣かれるぞ、つれないって。現実から目ェ背けてたって仕方ねぇだろ」
「…鈴木だって言ってないくせに…」
背中を丸めながら頭を抱え込んで、佐藤が恨みがましい口調で言う。
それを無言で流して、次の進行の確認を取ろうと立ち上がると、ケンジがふらふらと覚束ない足取りでこちらに向かってくるのが見えた。
192:2/3
09/02/08 22:27:23 SX4yj47dO
白目が見えないほどの満面の笑みを振り撒いているせいか、あちこちの人にぶつかったり寄り掛かったりしながらも、ケンジはどうにか俺達の前に辿り着く。
「どうしたんだよ、便所か?」
空いたスツールに促すとケンジは殆ど体当たりな勢いでそこに座り、目尻の皺を更に深くさせながら俺達二人の首に腕を伸ばして引き寄せた。
「佐藤ぉ!鈴木ぃ!今日はぁ、ほんっとありがとなぁあああ!」
そう喚きながらぐいぐいと腋の下に抱え込もうとするケンジの腕から自分の頭を抜くと、同じタイミングで佐藤も顔を上げた。
佐藤の髪の毛は乱れ、頬に若干の赤みが差している。
「ちょ、酔っ払い!席戻ってろよ!」
「この時期特に忙しいのに、お前らに幹事頼んじゃってさ~…でも俺、お前ら一番信用してっからさ~」
「わっ、離れろキモい!つか重い!」
態勢を整えて座り直した佐藤にケンジが再び全身を預けるように抱きつき、佐藤は辛くも隣りのスツールに腕をついて、倒れ込むのを防いだ。
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人の姿に、つい幼い頃の自分達を思い出して口許が緩む。
変わらないな。
無意識のうちに口をついて出ていたらしく、えー何ー?とケンジが間延びした声をあげる。
「そういやお前らちゃんと食ってる?このテーブル、見たとこ料理は並んでないけど」
そこでようやくテーブルが視界に入ったのか、身を起こしながらきょとんとした表情でケンジが聞いてくる。
「ああ、まぁ適当に食ってるよ」
本当は朝から満足に食えてなどいないが、単に食欲が湧かないだけなのでごまかしつつ答える。
佐藤は、披露宴で出された物はあらかた片付けていたが、飲み過ぎたからここに来る前に一度吐いたと言って、この一時間半何にも手をつけていなかった。
193:3/3
09/02/08 22:27:56 SX4yj47dO
「あ、ちょっと待っててー」
俺の返答を聞いたかどうかのタイミングで、ケンジは何かを思い付いたように立ち上がり、ゆらゆらと頭を揺らしながら自分達のテーブルに引き返す。
「なんかさ…案外変わらないもんなのかな」
新婦と二言三言交わし、再びこちらに向かってくるケンジをみつめて、佐藤は小さく笑った。
「まぁ、あいつは変わらないだろうな。俺らは…変わるべきだろうけどな…」
目が無い笑顔は変わらず、しかし先程に比べてどこか誇らしげに胸を反らしながらやってくるケンジに、またちりっと胸が鈍く痛んだ。
「お待たせー!これ食おうぜ!」
そう言いながらケンジがテーブルに置いたのは、一番最初に切り分けて皆に配られたウェディングケーキだった。
白い生クリームの上には、小さな生花がふたつ、乗っている。
「これさー、食べられる花なんだって!アユミのケーキもまだ残ってたからさー、花だけ貰ってきた」
どこか浮かれた口調で言いながら、小さなケーキにフォークを宛てがって真ん中で切り、両方に赤い花を乗せる。
「はい、あーん!」
いいよ要らない、なんだよ食えよ、と三人でひとしきり押し問答した後、結局事を荒立てたくない俺達が折れて、ケンジが差し出すフォークからケーキを受け取った。
二人揃って大きく開けさせられた口にケーキを押し込まれ、ひたすらに咀嚼する。
味わう余裕はなく、ただ早く飲み下したいと内心必死な俺達に向かって、ケンジは満足そうに微笑んだ。
「さっきも言ったけど、二人ともほんとありがとな。これからもアユミともどもよろしくな!」
後半若干照れながら、それでも嬉しそうに言うケンジに、佐藤はぎこちない笑顔を返した。
「…幸せになれよ」
「ヒヒッ」
ケンジは恥ずかしげに肩を竦めながら、そろそろ戻る、と言って踵を返した。
俺は、何も言えずにそれを見送るだけだった。
194:風と木の名無しさん
09/02/09 00:57:14 jQRW/AZiO
文章が好みだ…!
秘めた思いって切ないよね
GJ!!
195:風と木の名無しさん
09/02/09 01:11:44 TrFpIr9Z0
最近ここの姐さん達、神がかってないか?
誤って踏んでもしっかり萌えを投下していく。
今回も萌えたよ。GJ!
ケンジは罪つくりなヤツだ。佐藤にも鈴木にも幸せになってほしいよ。いっそ鈴木×佐藤でくっつけ!
196:風と木の名無しさん
09/02/09 03:29:34 Km7GEwlDO
鈴木と佐藤はライバルで同志って感じだろうから、自分はあんまりくっついて欲しくないなぁ
このどうしようもない切なさ、GJです!
197:風と木の名無しさん
09/02/09 10:48:48 i/YhcmUN0
せつなくて良い!GJ!こういうのって萌える
鈴木→ケンジでケンジ←佐藤なら、ずっと一緒にいるうちいつの間にか
鈴木→←佐藤になってもおかしくはない
でも互いに「こいつはケンジが好きなんだよな」とか思ってせつなくなるとよい
紆余曲折を経て最後には鈴木×佐藤になると尚よい
Happy endが好きなんだ、申し訳な(ry
198:風と木の名無しさん
09/02/09 11:18:33 12T6/DREO
ふみなはれ
199:風と木の名無しさん
09/02/09 11:22:31 LKvBVBtiO
トラウマ
200:1/2
09/02/09 13:33:37 7BIVvRGE0
洋介は触れられた指先に反応して、コーヒーカップを落とした。
陶器の割れる音がして、黒い液体がフローリングの床に散らばった。
洋介は少年の服に汚れがないのを確認し、あわてて破片を片付ける。
片付けを手伝おうとした少年は
「いいから! 本当にいいから!」
と洋介に全身で拒否され、おとなしくソファに座りなおした。
「なあ、海人」
「あー?」
「お前の兄さんさ。俺の事嫌いなのかな」
「なんで?」
「この前も同じ事あったじゃん。俺が近寄るとビクビクしてるしさ」
「洋介は男が苦手だからな」
「男なのに?」
「男だからじゃない?」
「意味不明」
「わからなくていいよ」
「教えろよ」
「洋介はトラウマ持ちなの。はい、終わり終わり」
「なんだよー」
釈然としない様子で、少年は出されたチョコを口に放り込んだ。
「お兄さんそこらの女より色っぽいからなあ。男に襲われちゃったとか?」
「バーカ。おまえエロ雑誌の読み過ぎ」
海人は笑って少年にゲーム機のコントローラーを渡した。
すぐに少年は夢中になって、そんな話題が出たことも忘れたようだった。
201:2/2
09/02/09 13:34:31 7BIVvRGE0
少年が帰ると、テーブルの上の飲み終わったカップを海人はキッチンに運ぶ。
「コーヒー、サンキュ」
「あ……ああ。悪かったね。そこに置いておいて」
「俺が洗うよ」
海人が近寄ると洋介は一歩後ずさる。
「い……いいから」
「俺がそんなに怖い?」
海人は口の端を少し釣り上げた。
「あいつが洋介に嫌われてるんじゃないかって心配してたぜ。
それは違うって言っといたから。洋介はただのトラウマ持ちだって」
「海人!」
「なに? 大丈夫だよ。弟にレイプされたのが原因で、
男性恐怖症になりましたなんて言ってないしね」
「か……」
「言わないよ。言ったら洋介、俺と寝てくれなくなっちゃうもん」
「海人……。もうやめよう。もう俺は嫌だ」
「コレ後でいいよね。したくなっちゃった」
洋介の手首をつかんで、海人は自分の部屋に強引に連れて行く。
自分の上にのし掛かってくる体重を感じるたびに、洋介にフラッシュバックする昔の傷。
嫌悪を感じながら洋介は固く目を閉じた。
202:風と木の名無しさん
09/02/09 16:13:30 8RiMapo90
こういうの好きだ
GJ!!
203:風と木の名無しさん
09/02/09 16:59:19 Km7GEwlDO
凄いBLってかんじw
でなんだかんだ言って好きな訳でGJです
204:風と木の名無しさん
09/02/09 17:43:09 cz+CISGM0
トラウマだけでも萌え要素満載なのに、更に弟×兄の萌え要素が追加されてしまってはもうどうしたらいいやら…
萌えたーーーーー!GJ!
お題の姐さんもGJ!
205:風と木の名無しさん
09/02/09 22:21:11 Qx4ggGim0
おお、凄いなこれ
206:風と木の名無しさん
09/02/09 22:37:37 SBo6akGG0
少年がお兄さんへの恋心を自覚して、
お兄さんを物理的にも心理的にも
海人から開放するような続きを妄想してハアハアしました。
GJ!
207:風と木の名無しさん
09/02/09 22:54:58 ynURWs1O0
今後の少年の頑張りに期待
GJ!
208:風と木の名無しさん
09/02/09 22:58:14 58OtgWs80
それでは
209:風と木の名無しさん
09/02/09 22:58:53 dpKTDqqH0
陰間茶屋
210:1/2
09/02/10 14:54:21 zr7A1VNT0
目を開いていても瞑っていても考えるのはあんたのことだけ、
幾度抱かれようが何を言わされようが、心まで許した覚えは一度もねえ。
「有明よ、こんな遅くまで何をしている」
「なんでえこの店は、番頭に許しを請わなけりゃ月見もできねえのか」
「その物言い、直さねえうちに一花終わっちまったな」
「はん、上方育ちの気色の悪い話し方なんて真似したくねえよ」
「まったく、愛想がねえな」
「だけども売れっ子だったぜ、生まれ持った顔のおかげでな」
「それも明日からはどうなることやら」
「女の客なんて少うし優しくしてやりゃあすぐ喜ぶ、男よりよっぽど楽だ」
「ま、手前ならうまくやるだろうな」
「おう」
「最後の客があの坊さんとは、お前もよくよく運がない男だ」
「あんの生臭坊主、死んだら必ず地獄に落ちるだろうよ」
「今日もひどくされたか」
「毎度のことよ」
「そうか、お疲れさん」
「……清正さん、暇はあるかい」
「何か?」
「今日で男相手は終いだが、締めくくりがあの爺さんじゃ胸糞悪い」
「ほう」
「あんた、俺と寝ないか」
「阿呆、手前は売りものだぞ。手ぇつけられるかよ」
「売れっ子のささやかな望みくらい大人しく聞きやがれ」
「本気か」
「あぁ、あんたにゃ世話にもなったし、坊主よりゃずいぶんマシだ」
「……最後の男っつうのも荷が重いもんだな」
「あんたは何も気にするこたぁねえ、俺の我が侭なんだから」
211:2/2
09/02/10 14:56:31 zr7A1VNT0
「有明、なぜ泣く」
「泣いてねえよ」
「こんなに涙を溜めておいて、不思議なことを言う」
「黙って脱げよ」
「なぁ、どうした」
「……初めてなんだ」
「初めて? 何が?」
「こんな風に顔が火照るのは」
「俺は客じゃねえぞ」
「わかってる、あんたは清正だ、茶屋の番頭だ」
「嘘も無理も俺にゃあ要らねえ」
「俺はあんたの前だからこそ嘘なんかつかねえのよ」
「えらい殺し文句だな……」
「あんたはこの夜だけ俺のもんだ」
「待てよ、それは売る側の台詞じゃねえだろ」
「そう思うならあんたが言ってみろ」
「“おまえは俺のもんだ”」
「……大根役者」
「手前なあ」
「もっと言えよ、それ。ずっと言ってろ」
「こういうのが好みか」
「あった方がその気になる」
「可愛いところもあるのな、手前」
「少しは黙ってられねえのか、やることやる前に朝が来ちまう」
「悪いな。じゃあそら、口吸いだ」
「馬鹿野郎、目も閉じろ……」
目を開いていても瞑っていても思い出すのは手前のことだけ、
どんなに美しい女を抱こうが甘い言葉を与えようが、心をかけた夜は一度だけ。
212:風と木の名無しさん
09/02/10 15:10:03 QRDASagJ0
セリフメインなのに時代の雰囲気が出ていいね。
GJ!
213:風と木の名無しさん
09/02/10 15:21:13 /zHkle430
萌えたあああ…!!
本当雰囲気があって切なくていいな!GJ!
214:風と木の名無しさん
09/02/10 15:25:53 idir7DJ0O
すげぇ!姐さんの文章力すげぇ!
文章が切なくて綺麗だGJ!
215:風と木の名無しさん
09/02/10 16:31:27 uZLh18GPO
個人的に時代ものより現代ものの方が好きなんだけど
この雰囲気はイイ…!
216:風と木の名無しさん
09/02/10 17:13:34 s/4sKiyXO
凄くシンプルな構成なのにめちゃくちゃ萌えた
二度はない関係なのかなー せつないけどイイ!
GJ!
217:風と木の名無しさん
09/02/10 17:38:45 +Q6reBVSO
萌えた!
最初で最後って切ないなあ(´;ω;`)
GJです!
218:風と木の名無しさん
09/02/10 18:54:37 MZG2Lse50
素晴らしき哉、GJ
さあ、踏んで
219:風と木の名無しさん
09/02/10 18:55:45 uZLh18GPO
友情です
220:1/2
09/02/10 23:01:28 zl/u/5Zk0
「中島は親友だからさ」
絶対頼みたいと思ってたんだ。いいかな?
屈託の無い黒澤の笑顔に俺は何も言えなくなって、必死の自制力をもって笑みを浮かべることしかできなかった。
残された猶予が一週間になって、ようやく俺は行動を開始した。
しかしペンを走らせては紙をぐしゃぐしゃに丸め、机の前でぼんやりと物思いにふけるという繰り返しばかり。
初めて顔を見たのは入学式だ。美形ではないが妙に目を引く顔。涼しげな目尻と薄い唇。神経質そうな線の細さ。クラス分けの後教室でその顔に遠目ながらも再会して、嬉しくなった。
入学直後の健康診断。さりげなくお前に近いところにいて、自然に話しかけて話題を繋ぐことに腐心した。
今まで書道の授業なんて落書きの時間でしかなかったけれど、真似をして書道部に入部した。王羲之を書くお前の横顔が綺麗だった。意味はてんで分からなかったけど、お前の書いた趙孟?が美しいと思った。
大学は分かれてしまったけど、一月に一回は一緒に飲みに行った。その習慣は社会人になってからも変わらなかった。
潰れたお前を家に連れて帰ったことも二度や三度ではなかった。俺のベッドに眠るお前の、ネクタイを緩めてやるのが好きだった。赤い顔をして眠っているお前に口付けたのは、夢だったのか現実だったのか今でも分からない。
お前の口から彼女の話が出てくるようになった。その話題がお前の口から吐き出されるたび、胃の中をゆっくり掻き回されるような不快感が襲ってきた。喧嘩をすればそのまま終わってほしいと思い、デートのために俺の約束をキャンセルされれば悔しくなって拗ねた振りをした。
221:2/2
09/02/10 23:03:13 zl/u/5Zk0
俺は一週間をかけ、ゆっくりゆっくりペンを走らせた。出会ってからもう十年以上だ。取っ組み合いの喧嘩もしたし、陰険な口論もした。でもそれの全てが、今の俺にとってはひどく優しい思い出になっているのが自分でも不思議だと思う。
カンペ代わりの何度も便箋を読み返し、溜息をつく。それをスーツの内ポケットに忍ばせる。思いを振り切るようにぎゅっとネクタイをきつく締めた。
なあ黒澤、あの有名な映画知ってるか?最後に花嫁をさらう、あの映画。変だけど、俺、あのシーンが今すげえ心の中でぐるぐる回ってるんだよ、どうしてなんだろうな。なあ。
「雅弘君、ご結婚、本当におめでとうございます」
言葉に詰まった。喉一杯に小さな小石をこれでもかと詰められたような感じだ。俺は溜息とも笑い声ともつかない曖昧な空気をふっと口から吐き出した。精一杯の明るい声を振り絞りながら、さりげなく黒澤から目をそらす。
「どうか、恵子さんと温かい家庭を築き、幸せになって下さい」
俺は親友の結婚式に感極まって涙を拭う振りをしながら必死に自分に言い聞かせる。親友のために友人代表のスピーチができるなんて、幸せなことじゃないかと。
そう、この胸が針で突かれるような、まるで押さえの利かない衝動のような情熱は、きっと、友情だったんです。
222:風と木の名無しさん
09/02/10 23:05:54 509P57pS0
あああ切ない・・・(´;ω;`)
友情だ、って自分に言い聞かせてるんだね。
223:風と木の名無しさん
09/02/10 23:47:03 GmWlbVqhO
わあああ顔から色んなものが出た
GJGJ!!
224:風と木の名無しさん
09/02/10 23:51:02 d8RUEpER0
胸が切なくなった
GJ
225:風と木の名無しさん
09/02/10 23:52:42 J2k0T53d0
やべえええええ萌えた!!!
中島切ねえよ、切なすぎるよ…長編で読みたくなった
226:風と木の名無しさん
09/02/10 23:56:53 uZLh18GPO
最後…最後がヤバス…!ありがとう!
227:風と木の名無しさん
09/02/11 00:03:47 Ey02TMUyO
切ねええええってなった後に>>225のコメ見て某国民的アニメの眼鏡君が出てきた件w
228:風と木の名無しさん
09/02/11 00:09:03 99UurcF/O
ではお次は!
229:風と木の名無しさん
09/02/11 00:10:02 Ey02TMUyO
両親とご対面
230:1
09/02/11 03:26:30 h/hnh8RG0
「はじめまして、赤坂裕です。これ、つまらないものですが、どうぞ」
俺は前日に散々迷いながら選んだ土産の袋を渡した。
お父さんは日本酒が好きだというから手取川の純米吟醸古々酒とフグの
卵巣の糠漬け、お母さんは料理と甘いものが好きだというから煮物に使うと
照りが良くなる俵屋のおこしあめと、浦田の花くるみ。
俺たちの住む金沢近郊の物で揃えてみた。
静岡住まいの仁史のご両親には、珍しいものだろう。(仁史は「土産?
実家に帰るのにそんなものいるか!」というタイプだし)
「まあ、ご丁寧に」
お母さんがにっこり笑って袋を受け取ってくれて、その重さにちょっと
目を見張る。
「あら。こんなに気を使ってくれなくてもいいのよ?お父さん~!
お土産いただいたわよ~!」
「お~お~。すまんなあ。まあ、遠慮なく上がりなさい」
居間から顔だけを出してお父さんが言う。
「応接間じゃねえの?」
先に靴を脱いで上がりながら、仁史が言う。
「これから家族になろうって人なんだから、こっちだろうが」
お父さんの声が聞こえてきた。
231:2
09/02/11 03:26:56 h/hnh8RG0
「本当にねえ。この子が『俺、ゲイだから一生結婚できない。一人で生きて
一人で死ぬ』って宣言した時は大騒ぎでねえ」
居間のコタツでとりあえずお茶を飲みながら、お母さんが言った。
「こっちは、ゲイもニューハーフも区別がつかなかったからなあ。『俺は
娘を持った覚えは無い!』って言ったら、『それ違う』って笑われたなあ」
あっけらかんとお父さんが笑う。
「それから、色々話し合って、色々勉強して。このご時世だ、結婚できない
まま四十・五十になるのも珍しくないからいいかとは思っていたんだがなあ」
「この子、一人っ子でしょ?私達もこの歳だし、私達が死んだ後、この子が
一人残されると思うと、かわいそうでねえ。もう、男でもいいから、この子と
一緒にいてくれる人がいればねえって...」
「おい、男でもいいからは、赤坂さんに失礼だろう?」
「あら。ごめんなさいね」
「いえいえ...」
笑い返しながら、まさか、こんな風に歓迎されるとは思っていなかった俺は
少しばかりくすぐったいような気分だった。
「親父、赤坂さんも問題だぞ。これからはこいつも畑中になるんだから」
「じゃあ、裕さんって呼ぶのね」
「この歳で、息子が増えるとは思わなかったな」
「いや、裕は俺の養子として届けるんだから、増えるのは孫だぞ」
「なんなら、私達の養子として届けてもいいのよ?」
お母さんの言葉に驚いて、俺たちは顔を見合わせた。
232:3 end
09/02/11 03:27:31 h/hnh8RG0
「親父もお袋も、裕とは初対面だろうが。どんな人間かも分からないのに、
そんな思い切りの良すぎることを...」
「どんな人間かはわかってるぞ。俺の息子が生涯の伴侶と決めた人間だ。
良い人に決まってる」
「裕さんは、私達の息子になるのは嫌かしら?」
「嫌だなんてことないです!嫌じゃないですけど....男の俺に...そんな、
そこまで....」
気がついたら胸の辺りに熱いものがこみ上げてきていて、俺は言葉に
詰まってしまった。うつむいて目頭を親指で拭うと、思いがけない量の
涙が指を濡らした。
「嫌じゃないのなら、考えてみてね。さて、お夕飯の準備をしましょうか。
お父さん、手伝ってね」
「おう。遠路疲れたろうから、お前たちはゆっくりしてなさい」
二人が居間を出て行くと、隣の仁史がそっと俺の肩を抱いてくれた。
「まったく、親父もお袋も、いきなりあんなこといいだすんだから、困った
もんだよな。びっくりするよな」
俺は、仁史の手のぬくもりを感じながら、涙で濡れた指を握り締めた。
息子でも孫でも関係ない。届けなんかなくても、法律的なつながりがなく
てもいい。
俺が愛する仁史を愛するこの人達を、俺は一生大事にしよう。
そう心に誓った。
233:風と木の名無しさん
09/02/11 09:48:02 zs0kWQI30
ご両親懐広すぎるwwGJ!
あげつつまわし
234:風と木の名無しさん
09/02/11 13:21:44 i6VUZOQXO
同じくまわし。
235:風と木の名無しさん
09/02/11 13:24:49 99UurcF/O
まとめにも来てたよーGJ!
236:風と木の名無しさん
09/02/11 14:43:10 V7+tN4xb0
まとめ投下のご両親にほのぼのした
いいなあーGJ
237:風と木の名無しさん
09/02/11 14:46:50 QnBjS1hY0
両親も息子たちもえらいな。長年持ってた偏見を変えるなんて大変だろうになぁ
なんかぐっと来ましたGJ!
>>236
まとめの感想はまとめで言うべし。専用スレもあるし
238:風と木の名無しさん
09/02/11 15:12:07 EgWbPkx20
ほっこりするしじんわりさせられた!
GJ!
ご両親も二人も素敵だなぁ
末永く幸せに暮らすといいよ!
239:風と木の名無しさん
09/02/11 15:13:58 fqkqzKq70
襲い受け
240:1/2
09/02/11 17:54:26 yImwNtj90
「…え、ちょ、ちょっと?!どうしたんだよ!」
「うるせぇ…黙ってろ」
「黙ってろって…お前、今自分が何してんのかわかってんのか?」
「……お前を襲ってる」
いやいやいや!見ればわかるよ!
俺の上に跨って、服脱いで、細い腰とか感じやすい乳首とか色素の薄い躰を俺にさらして!
明るかった視野がふと薄暗くなって、和樹を見上げると、その目は快楽を欲していた。
「ん……」
触れるだけの軽いキスが何度か降ってきたあと、何の躊躇いもなく舌が入ってきた。
「っ、ふ……ん……はぁっ…」
「…和樹、お前、酒弱くはなかったよな?」
荒れた呼吸を静めながら訊く。
強いわけでもないけど、弱くはない。酔っても、ぼーっとして無口にはなるけどキス魔にはならない。
241:2/2
09/02/11 17:56:09 yImwNtj90
酒は理性の箍を外す、というかゆるくはなるから…もしかして、
「弱くはねぇよ。…レポートだのバイトだので、誰かさんが構ってくれなかったせいではあるけどな」
確かに、最近立て込んでてこいつに構ってやれてなかったな。
「酒が入ってるからとはいえ、お前がこんなこと言うなんて…よっぽど寂しかったんだな」
上半身を起こしながら言う。
「なんだよ、ニマニマしやがって…気持ち悪い」
「ごめんな。構ってやれなくて」
「詫びるならもう少し計画立ててやれ。お前のレポートのせいで一日暇だったんだぞ」
「前向きに検討いたします…」
「許してほしかったら今度飯奢れ。今は……」
途切れた言葉が気になって和樹を見ると、顔が赤くなっていて、目が潤んでいた。
「今は、…祐介が欲しい。お前が欲しい…」
普段素直じゃないこいつから出てきた言葉は、俺には刺激が強すぎた。
242:風と木の名無しさん
09/02/11 19:51:39 zs0kWQI30
まとめにも来てるね
両方GJ!
243:風と木の名無しさん
09/02/11 21:01:03 /LjmwDqnO
お酒の力で、っていう体での襲い受けが萌えました
攻め視点なのもナイス!!
244:風と木の名無しさん
09/02/12 10:45:51 7KiyKO3K0
かわいいなあ。ニマニマしてしまったw
245:風と木の名無しさん
09/02/12 17:33:09 +qyerTaA0
襲い受けなんだけどイメージからは少し遠いかも?でもそれも意外性かな
まとめもGJ
246:風と木の名無しさん
09/02/12 19:01:33 xk4hxObTO
さみしんぼ受けかわゆす
まとめの後輩君とバカップルにも萌えた!GJ!
247:風と木の名無しさん
09/02/12 19:44:12 7Ur6Me4x0
GJまわし
248:風と木の名無しさん
09/02/12 19:47:58 mMZnckHyO
踏んでご覧なさい
249:風と木の名無しさん
09/02/12 19:48:31 HnvTA3vi0
くだびれたオサーン2人
250:風と木の名無しさん
09/02/12 21:02:20 Syyb8FPa0
指の間から吸いかけの煙草がさらわれていくのを追って気怠く目を上げた。
非常階段の頼りない手摺に身を預けた同僚がため息をつくように煙を吐き出した。
冷たい金属に凝められた狭隘な空間に青白い煙が漂う。
すこしだけ軽くなった右手でネクタイをゆるめた。
もうすぐ夜の女神の支配する時間が始まる。
251:風と木の名無しさん
09/02/12 21:21:34 KMyBVpcg0
タバコの回し吸いってえっちくさいよなw
252:風と木の名無しさん
09/02/12 22:03:32 LTvmdgE7O
短いのに萌えが凝縮されてて好きだ
このアダルトな雰囲気はおっさんの特権だな、GJ
253:風と木の名無しさん
09/02/12 22:11:48 xk4hxObTO
いい濃縮度。GJ!
254:風と木の名無しさん
09/02/13 00:10:21 jEf1ktch0
いいね
非常階段ってところがまた
255:風と木の名無しさん
09/02/13 00:37:57 QuLbfpU2O
GJ!
まとめの方にもはげた
256:風と木の名無しさん
09/02/13 04:22:15 qrQzAH8pO
GJ
旧まとめサイトって落ちてる?
257:風と木の名無しさん
09/02/13 10:51:19 5fCEDbOp0
>>256
つ>>1
258:風と木の名無しさん
09/02/13 11:56:00 7kIIRYc5O
いざ踏まれましょう
259:風と木の名無しさん
09/02/13 12:06:00 jJrukOZWO
パティシエの恋
260:風と木の名無しさん
09/02/13 16:15:41 PHgWFnis0
閉店の片づけを終えた彼は、レジ前の待ち椅子にかけて一息ついていた。
「おつかれさま」
僕は彼の前にイートイン用のカップに淹れたホットチョコレートを差し出した。
「明日からはひな祭りとホワイトデー用のメニューに変えるから、
余り物処分に協力して」
「俺、甘いもの苦手なんですけど」
「なのにケーキ屋でバイトって矛盾してないか?」
「苦手なものなら、バイトしてても食べたくならないでしょ?」
「なるほど。でも、コレは甘いの苦手でもいけると思うから試してみてよ」
「はあ...」
彼はカップを受け取ると、おそるおそるといった様子で口をつけて、ぱっと
顔を上げた。
「これ、美味いです。全然甘くない。砂糖入ってないんですか?」
「砂糖は少しは入ってるけどね。カカオ分が多くてクローブとシナモン
を効かせてるから、甘ったるくないでしょ?」
「ビターな大人の男の味って感じすね!」
そういう彼の表情はむしろ子供っぽかった。
261:風と木の名無しさん
09/02/13 21:47:43 PgfEg4Bi0
あれ? 2の投下がないと思ってしまった自分はどうすればいいですか…
バイト君が気がついてなさげなのがいいです
262:風と木の名無しさん
09/02/14 00:24:16 6YiwsJSW0
媚薬が入っていて・・まで想像した
263:風と木の名無しさん
09/02/14 03:07:08 gSAnsGnt0
萌えたー
プラトニックでお願いしたい
264:風と木の名無しさん
09/02/14 06:24:56 v+LJBwBnO
バイト君かわいいなあ!いいよいいよー
265:風と木の名無しさん
09/02/14 10:17:00 UbQTI0qq0
まとめにも来てましたよー
266:風と木の名無しさん
09/02/14 11:18:08 Kl7EHCiAO
なんだかんだ言ってバイト君のために作ったバレンタインのプレゼントなんですね、わかります
267:風と木の名無しさん
09/02/14 11:51:16 u0DAQH9NO
ああそうかバレンタインと>>266で気付いた
駄目だな、今日は眼鏡が曇ってる
268:風と木の名無しさん
09/02/14 11:53:36 +qtAu3WnO
踏んでもいいんだぜ?
269:風と木の名無しさん
09/02/14 11:54:41 u0DAQH9NO
初恋の女の子(仮)は現在身長180cmの男前
270:風と木の名無しさん
09/02/14 11:54:52 UbQTI0qq0
先生と生徒の禁断の恋
271:1/2
09/02/14 14:51:05 UbQTI0qq0
「本日のゲストは雑誌のボーイズコンテストで入賞され、
現在テレビやドラマで大活躍中の鈴木琢磨さんです!」
拍手の指示がスタッフから出て、俺は幼なじみの登場に拍手する。
馬鹿馬鹿しいと思いつつも、憧れていたテレビ業界の雰囲気はやっぱりわくわくする。
「背がお高いですね。身長おいくつなんですか?」
「190㎝に少し足りないくらいだと思います」
「本当に素敵。人気があるのもわかりますね」
「いえ、そんな」
「質問のFAXがこんなに来ているんですよー。いいですか?」
「どうぞ」
「デビューのきっかけは」
「幼なじみが応募していて、同じ業界に行きたくて」
その幼なじみは、今日は観客になってますー。よくある話ですー。
「初恋はいつ頃ですか?」
「3才くらいじゃないかな。大人になったら結婚しようねなんて言って」
「あらー」
「今でも大好きなんですけど、未だに結婚してくれません。結婚詐欺ですよねコレ」
会場から笑い声が聞こえる。俺は笑えないけど。
「実はですね鈴木さん! 今、この会場に初恋の人をお呼びしています!」
「え?!」
俺は思わず立ち上がった。
「嘘ですー」
この司会者、覚えてろよ。
「男性まで心配しちゃったみたいですよ。男性ファンも熱烈なんですね」
俺は平静をよそおって座り直した。琢磨は笑いをかみ殺していて、
しばらく会話にならなくて司会者が困っていた。ざまあみろ。
272:2/2
09/02/14 14:52:59 UbQTI0qq0
収録が終わり、琢磨が俺を見つけて駆け寄ってきた。
「ゆーちゃん!」
「げっ」
「待っててって言ったのに。食事にいこうよ」
「おまえはもう有名人なんだから、俺と気安く…」
「ゆーちゃんと遊べないなら仕事やめる」
「簡単に言うなよ。俺はなれなかったんだから」
「なれなかったってなんで決めるのさ? わからないだろ?」
俺をよく誘うのは、業界の人にさりげなく紹介する為だろうと薄々気がついている。
そんな気を遣われてるのも、差を感じて苦しくなる。
見上げると少し口髭の生えたワイルドな横顔が見える。
昔は可愛かったのにな。ピンクの服着て、花冠なんかつけて。
プロポーズなんかもしましたよ。あああああ、黒歴史。
「ゆーちゃん。早く結婚して」
「男同士は結婚できません」
「外国に行ってもいいよ」
「絶対にありえない」
「じゃ、一緒に暮らそう」
「なんで俺が一緒に暮らさないといけないんだよ」
「俺と暮らしてたら、寝坊しないよ」
「うっ」
「食生活だって今よりよくなると思う」
「……なんでおまえが女じゃなかったんだろうな。それは本当に思うよ」
「ゆーちゃん」
「なんだよ!」
「大好き」
満面の微笑みをふりまきながら俺の手をぎゅっと握る。
こういう所は昔と変わってないから嫌になるぜ。まったく。
※身長間違えました…。180㎝に修正で。
273:風と木の名無しさん
09/02/14 15:24:53 v+LJBwBnO
ガタイがいいくせに甘えんぼくさいのがかわいいなあ~グッジョブ!
274:風と木の名無しさん
09/02/14 15:50:05 el+J2Cjm0
立ち上がるゆーちゃんテラカワユス
萌えたよ~GJ!
275:風と木の名無しさん
09/02/14 18:12:25 olMFQEu10
リロミスなのにこんな萌がくるとは嬉しい限りだGJ
276:風と木の名無しさん
09/02/14 20:14:23 u0DAQH9NO
可愛い可愛いありがとう!
277:風と木の名無しさん
09/02/14 21:40:13 cu1BbXa7O
ゆーちゃんかわいい!
GJです!
278:風と木の名無しさん
09/02/14 21:51:23 8Sr92KMQ0
踏んでしまえ!
279:風と木の名無しさん
09/02/14 21:52:28 zMHZFUmW0
機械化
280:風と木の名無しさん
09/02/15 03:21:04 oX4wADPAO
僕は此処が大好きだ。
時折流れる機械音、鼻を突く薬品の匂い。
壁際に乱雑に置かれた、試作品達。
外ではいつも“独りきり”であったが、この部屋に帰ると組み立てた機械が、「おかえり」と言ってくれているような気がする。
そして、最近僕の帰りを待ちわびる子が一人増えたんだ。
「…おかえり」
ほぉらね、この子はちゃんと僕の事を待っててくれている。
最初はなかなか素直になってくれなかったけど、一度関係ない所を弄ってやったら大人しくなった。
「ただいま、愛しい実験体。身体の調子はどうだい?」
僕は荷物をそこら辺に投げ、可愛い可愛い機械を見つめた。
うん、いい具合に顔色が悪いじゃないか。でも昨日組み入れた機械は正常に動いている。
やっぱりアレかな、機械になりかかっているとはいえ半分は人間なんだし、ちゃんとご飯もあげた方がいいのかな。
でも必要な栄養は点滴で補給させてるんだけどなぁ。
「…おい」
考え込んでいた僕に、半分機械の子が呼び掛ける。
「…今日は改造しないのか?」
遠慮がちな声。僕はすぐさま首を振った。
281:風と木の名無しさん
09/02/15 03:22:11 oX4wADPAO
「ううん、今日も改造してあげる。期限が近いからね、早くしないといけないんだ。
本当はもっと、君の体調を見ながらゆっくり仕上げたかったんだけどね」
「でも、珍しいねえ。君が催促するなんて」
僕がそう言うと、もうすぐ機械になる少年は不快そうにそっぽを向いた。
「別に…早く機械と化してしまった方が、お父様は喜ぶからな」
少年はそっぽを向いたまま喋る。
えらく辛そうだ。
「うん、依頼人のお父様ね。確かに、早く仕上げた方が嬉しがるからねえ。
…でも、君のお父様も馬鹿だよね。息子が病気で死ぬ姿なんて見たくないからって、何処の人間かも分からない僕に、機械にしてくれだなんて頼むなんて」
「確かに、機械になったら“永遠”を手にいれる。
でも、形ある物はいつか壊れるよ。いくら手間かけたからって、すぐ壊れて終わりさ」
あー、おかしい。
いくら天才の僕でも、壊れる事のない機械を造るなんて無理だよ。所詮、永遠なんて手に入らないのさ。
クスクス笑う僕に、気分を害したのか少年は眉間に皺を刻みながら吐き捨てた。
「分かっている。…だが、お父様が死ぬまでは持つようにしてくれ。
そのあとは壊れてもいいから」
―あらあらまぁ、どうしても大好きなお父様を悲しませたくないんだね。
しょうがないから、何十年も持つように頑張ってあげましょ。
永遠は無理でも、それなら天才の僕ならいけるでしょ。
282:風と木の名無しさん
09/02/15 07:07:00 aVl27caeO
わーなんかすごい好きな文章だ…!ぞわっときた(´;ω;`)
283:風と木の名無しさん
09/02/15 08:02:45 alxCP6Rg0
一筋縄ではいかないマッドサイエンティスト?にはげた!ありがとう!
284:風と木の名無しさん
09/02/15 08:28:53 Y26h/xuI0
か、関係ないところって・・・どこだ!
285:風と木の名無しさん
09/02/15 13:17:05 Jv4VOo8wO
純粋な部分とそうじゃない部分の配分がすごく好きだ…!
萌えた!GJ!
286:風と木の名無しさん
09/02/15 14:46:28 wf7aXsftO
科学者、息子、お父様それぞれの歪んだ純粋さがいい!GJ!
287:風と木の名無しさん
09/02/15 17:26:21 z3Hx/bui0
関係ない所を弄った部分を詳しk
みんな愛情があるのがまた悲しいな
ヤンデレ好きとしても萌えさせてもらったよ、GJ!
288:風と木の名無しさん
09/02/15 17:40:11 2PQcc+WkO
踏まれてみようホトトギス
289:風と木の名無しさん
09/02/15 17:41:09 wf7aXsftO
大事な事なので二回言いました
290:風と木の名無しさん
09/02/15 19:13:13 alxCP6Rg0
「お前なんて嫌いだ」
お前なんて嫌いだ、と念を押すように俊吾は二回言った。
慌しく一夜の逢瀬を重ね、平日朝、くだり電車には二人以外誰も乗っていない。ボックス席に座り、人目を気にせず二人で身を寄せ合っている。心地よい揺れは普段なら心地よい眠りを誘うものだが、今日ばかりは睡魔はちらとも襲ってこなかった。
「俺のこと、嫌いなの?」
玲一は眼鏡越しに俊吾をちらりと見た。その茶化すような声音に血が上り、俊吾は隣の玲一を睨む。こいつはいつもこんなだ。自分が真剣になっても、子供をあしらうような態度で押さえつけにかかってくる。
玲一の家はでかい。家政婦だっている。聞いても玲一は言葉を濁すばかりだが、家が代々会社を経営しているということは言葉の端々から窺うことが出来た。
大学で出会ってから今までずるずると付き合ってきたが、玲一は大学院で研究中、俊吾は学部を卒業後、アルバイトをしながらその日暮らしで生きている。いくら自分の頭が良くないとは言え、このまま玲一と付き合っていくなんてことは到底出来ない。
普通電車が一駅一駅止まっていく。暫く二人は黙って座っていた。
堅く握り締めた俊吾の拳に、玲一が上から掌を重ねる。
291:風と木の名無しさん
09/02/15 19:13:48 alxCP6Rg0
「また、馬鹿なことを考えているんだろ」
「違う」
「今時会社が世襲制なんてナンセンスだ。俺が継がなくても誰かが継ぐ」
「違うって言ってるだろ」
子供がむずがるように俊吾は声を上げる。玲一は吐息だけで小さく笑った。
「俊吾、俺に嘘はつかないで。お願いだから」
柔らかく笑みを含んではいたが、その声色は真摯だった。俊吾は一瞬息を呑み、唇を噛む。固い決意が崩れそうになったから、俊吾はもう一度繰り返した。
「嫌いだ」
「うん」
分かっている、と言うように玲一は俊吾を引き寄せて、彼の柔らかい髪の毛に鼻先を埋める。目を伏せて息を吸う。ホテルの安っぽいシャンプーの香り。多分自分の髪からも同じ匂いがするのだろう。
「嫌いだ嫌いだ、嫌い、」
「うん」
向きになったように俊吾は玲一の胸の中で繰り返している。余りにも可愛く余りに切ない嘘に、玲一はいっそ笑ってしまう。俊吾はもしかしたら泣いているのかもしれない。鼻を啜る音が聞こえた。
「俺は、好きだよ。俊吾のこと」
ぎゅう、と胸元のシャツを俊吾が縋りつくように握り締めてくる。ああ、どうやって彼と別れるなんてことができようか。こんなことでこんなにも幸福になっているくせに。
292:風と木の名無しさん
09/02/15 19:38:12 wf7aXsftO
うああ萌えた…!ありがとう!
293:風と木の名無しさん
09/02/15 20:30:23 z3Hx/bui0
大事な事なので(ryで萌える日が来るとは思わなかった
GJ!
294:風と木の名無しさん
09/02/15 23:29:30 oX4wADPAO
萌えすぎて毛根なくなった!
心が暖かくなったよ。GJ!
295:風と木の名無しさん
09/02/15 23:43:07 Jv4VOo8wO
萌えたー!うまいなぁGJ
まとめの人も萌えたよGJ
296:風と木の名無しさん
09/02/15 23:54:37 2PQcc+WkO
*0もまとめ投下も萌えたー
(´・ω・`) n GJ!
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(
297:風と木の名無しさん
09/02/16 00:13:22 YuJUNM5+O
シチュエーション萌えるなあ!
*0さんは嫌いを二回で萌えてまとめの方は好きを二回で萌えて面白いねえ
GJです!
298:風と木の名無しさん
09/02/16 00:15:16 LjS9F54EO
踏んじゃってー
299:風と木の名無しさん
09/02/16 00:25:20 dYjUCml60
執事
300:1/2
09/02/16 02:25:03 LjS9F54EO
「坊ちゃま、そろそろお休みになられては?」
「だけどレナード、僕まだ全然眠くないよ」
「ベッドにお入りになって、目をつむってご覧なさい。じきに夢の国から小人がやって参ります」
「小人? レナードは小人を見たことがあるの?」
「えぇ、ございますよ。幼い頃はよく一緒に遊んだものです」
「へえ、僕とも遊んでくれるかな」
「もちろんですとも」
「あのね、僕、他にも遊びたい子がいるの」
「ほう、どちらのお方ですか?」
「一昨日お父様のお友達がいらしたでしょう」
「アスター様ですね」
「その1番下の子が僕と同じ歳なんだ、とっても優しくて面白い子だった」
「アスター家の末のお子様と言いますと、ドミニク様でございますね」
「僕ね、ドミと結婚するんだ。まだお父様とお母様には内緒だよ」
「おや坊ちゃま、もう婚約なされたのですか」
「ううん、ドミは考えてみるって言ってた。返事は次に会った時にねって」
「ドミニク様は賢明でいらっしゃいます、お二人のご結婚には少々やっかいな問題がございますから」
「問題ってなぁに?」
「まず坊ちゃまは、旦那様のたったお一人のお子様ですから、 必ず女性を娶ってこの家をお継ぎにならなければなりませんね」
「お嫁さんをもらうんでしょう、僕知ってるよ」
301:風と木の名無しさん
09/02/16 02:28:42 LjS9F54EO
「ドミニク様はご兄弟の中では1番下でいらっしゃいますが、上はみなお姉様方ですから、ドミニク様もまたアスター家の跡継ぎでいらっしゃいます」
「ドミもお嫁さんをもらうの?」
「さすが坊ちゃま、私の心をお読みになりましたね」
「でもドミはどんな女の子よりも素敵だよ、きっとお嫁さんより」
「世の中には不条理なことが多々あるのでございます」
「どうしようレナード、僕ドミと結婚したいのに……」
「それはまた明日ゆっくり考えましょう。時間を空けた方が良い考えが浮かぶものです。さ、毛布をおかけになって」
「レナード、僕の恋を応援してくれる?」
「ええもちろん、私はいつでも坊ちゃまの味方です」
「絶対にだよ」
「神にかけてお約束します」
「レナードが味方をしてくれるから安心だね」
「ええ、ですから何も心配せずにお休みください。すぐそこまで小人が迎えに来ておりますよ」
「おやすみ、レナード」
「おやすみなさいませ、坊ちゃま」
「レナード、あの子は寝たかい?」
「ええ、実に素直な方でございます」
「私が言っても聞きやしないのに、お前は子供を寝かしつけるのが上手いな」
「ふふ、昔の旦那様のようなことをおっしゃっていましたよ」
「ほう、何と?」
「秘密にすると坊ちゃまと約束いたしましたので、教えてさしあげることはできません」
「まったく、うちの執事は有能だな」
「もったいないお言葉でございます」
「それじゃあそろそろ寝るよ。お休み、レナード。小人に会ったらよろしくな」
「ゆっくりお休みなさいませ、旦那様」
302:風と木の名無しさん
09/02/16 02:52:59 3SrR5ZCCO
うをを、凄く読みやすい!
ドキドキしました、未来が気になる!GJ!
303:風と木の名無しさん
09/02/16 08:36:07 bVpIxKIV0
もしかして旦那様はレナードのことが・・・!
昔、息子と同じことを言ってたんだろうなあw