オタク男子で801 part2at 801
オタク男子で801 part2 - 暇つぶし2ch551:風と木の名無しさん
09/07/06 17:03:32 Nh+xVmJ8O
>>516じゃないが萌えたので書いてみた
でもなんの知識もないうえ文才がなく途中で諦めたんだが…誰か続き書いてくれないかなぁと期待してしてうp



「はぁ はぁ…、よし、あと20回…」

都内のアパートの一室。床にひいたマットの上に寝転び、健(たけし)は今日もストレッチに励んでいた。

僕は自他共に認める健康器具オタクで、棚にはサプリメントや何に効くのかよくわからないドリンク剤が大量に並び、指圧マッサージ用のゴム製リングから、ランニングマシーンまで大小の健康器具が転がっている。

気になったモノはすぐ試してみるが飽きるのもはやく、長く続けることはめったにないので効果は期待できない。
実際僕の体は、室内での運動ばかりの為真っ白で、筋肉も通常の生活を送っている人とあまり大差はない。仕事は市の公務員をしているが、それも大抵デスクワークだ。

しかし気休めでも、なにかしら健康に気を使っているという気持ちだけで充分。
なにもしないより全然いいし、なにより健康器具というのは使ってみるまでどう機能するのかわからない未知の感覚がいい。
男は機械をいじるのが好きだが、健康器具にはそれに匹敵するものがあると僕は思っている。



「よしっ…今日のノルマは終わり、と。
佐藤さんが来るまであと30分か、汗臭いと悪いしシャワー浴びとくかな」




552:風と木の名無しさん
09/07/06 17:05:42 Nh+xVmJ8O

佐藤さんとは、よく僕が健康器具を買っている"黒字フィットネス"の営業さんだ。

一度購入した器具に不備があり電話したところ、ちょうど近くに来る予定があった佐藤さんが謝罪も兼ねて商品交換に来てくれた。

僕の部屋に入った佐藤さんは最初多少驚いたようだが、「そんなに好きなら、うちの新商品のテストモニターをやってみないか」と誘われ、僕としても願ってもない申し出だったので受けることにした。


もう何度もモニターをして、報酬は異例だが商品そのものを頂いている。
話をするうちに佐藤さん自身とも少しずつ仲良くなってきて、最近ではプライベートの話をすることもあった。
歳は佐藤さんのほうが二歳下だが、しっかりしていて信頼できる人だ。

今日もなにか新しい商品を持ってきてくれるそうで、僕はわくわくしながらシャワーをあびた。



---------------

ここまでです…!ほんと消化不良で申し訳ない/(^0^)\やっぱチラシの裏にでも書くべきだったか
続き頑張ってみますが姉さんがたの力をお借りしたい…



553:風と木の名無しさん
09/07/06 23:24:18 IkNhwlSuO
ちょ、なんというすんどめww
続き気になるうううう

554:風と木の名無しさん
09/07/07 20:39:19 bIKP4Xa5O
>>549
幽霊×ヲタの人です/(^O^)\
最近リアが忙しくて書けなくて……!
……言い訳ですごめんなさい。

今週乗り切れば暇が出来そうだからよかったらもう少しだけじらさせてくれ!
好きだなんて嬉しすぎるんだぜ…

555:風と木の名無しさん
09/07/08 15:10:26 DOaKwtX1O
百合萌えオタの話とか書いてみたい
「男同士?薔薇?キモイ、汚い、むさい男同士とか絵面的にも有り得ない、大体どこに突っ込むんだよ。
 その点百合は「可愛い女の子×可愛い女の子」。至高。至高すぎる。エロでもピュアでも美しい。BLとかホントありえねぇ。」
みたいなオタがガチホモとか腐男子に優しく抱かれてしまう話が書いてみたい

556:風と木の名無しさん
09/07/08 20:10:37 3IwKnDzpO
>>555
わっふる大量に用意して待ってます!!
ぜひ腐男子×オタクでおながいします!!

557:風と木の名無しさん
09/07/09 16:23:43 jXA19FJTO
みんなまとめてわっふる!!!

558:風と木の名無しさん
09/07/09 21:06:00 nB2bQenH0
>>552
焦らしプレイとは鬼畜な姐さんだなw
ここは、ベタにシャワーから出てタオル一丁の健康オタと攻が
鉢合わせといく映像を受信しました。わっふる
>>555
百合オタが騎乗位でしぼりとられても良いのよ。わっふる


559:風と木の名無しさん
09/07/09 21:13:44 pq20uGRf0
>>558
>>一丁の健康オタと攻が鉢合わせといく映像を受信しました

お前はおれかw




560:風と木の名無しさん
09/07/09 21:54:36 f/JyV/tJ0
>>534じゃないけど、>>551のように俺も受信してしまった……!
ちょっとだけ晒させてください。





 「あぁああああっ!」
 ブラックアウトした画面に噛りつかんばかりの勢いで駆け寄る。今まで色鮮やか……というよりも、毒々しいカラー
リングのモンスターを映し出していた画面が一瞬で真っ黒になってしまったのだ。そりゃあ絶叫もしようというもの。
俺の折角今日でLv150に達したというのに……しかも、レアドロップもあったのに……。
 「ああ……俺のデモリションコメットがぁああ……!」
 「うるさいなぁ、んなもん何とかなるだろっ! 子供じゃあるまいし、ちったぁ遊びに来た俺を構ってくれたってい
いじゃねぇかよっ!」
 諸悪の根源は、俺の今までの努力なぞ全く知らずにそう言い捨てたやがった。こいつは何にも分かっちゃいな
い。俺の連日の洞窟周回も、リューカー法でGCに掛けた負担も、何より俺の怒りも。
 いくら温厚誠実……もとい、気弱で意気地なしの俺だって、こんなことされれば堪忍袋の尾が切れる。俺は思
わず激昂して、長い髪を振り乱して無二の親友に怒鳴り散らした。顔全体……特に目頭が熱く、ふとした弾みに
泣いてしまいそうだ。
 「お前……もう帰れよ……! 帰れ! 馬鹿野朗!」
 「お、おい……そんなに怒ることないだろ……たかがゲームのデータで……」
 ヤツはようやく事態を察したらしく戸惑いだしたが、また言わなくても良い一言を付け加えやがったので、俺の
怒りをますます増長させる結果となる。ついに俺の涙腺が堰を切った。
 「ば……馬鹿ぁあああっ! 帰れ! 帰れよ!」
 「いって! いてぇって! 分かったよ! ごめんって!」
 手当たり次第に散乱するゲームカセットを投げつけ、叫び、怒りの程を教えてやる。俺はもう、こいつを殺して
やりたいとすら思う。感情が促すままに、どんどん部屋からヤツを押し出した。そしてドアを乱暴に閉めて、素早く
鍵を掛ける。
 「お、おいっ! 健太! ごめんって! 悪かったよ!」
 「バカ慎二! 帰れ! もうお前と話したりなんかするもんか! 帰れぇえっ!」
 ドアをノックして呼びかける信二の声も無視して、俺はベットに飛び込んだ。布団を頭まで被って、猫のように丸
くなる。何故だか、頭が痛かった。

561:風と木の名無しさん
09/07/09 21:55:23 f/JyV/tJ0
 「バカ……ちくしょぉ……!」
 「おい! 健太ぁ! おぉい!」
 暫くは空しく響いていた声も俺が答えないことを理解したのか、やがて収まった。階段を降りていく音が聞こえ、
信二が帰ったことを俺に知らせた。
 「うぅ……えぐ……ふっ……!」
 情けないことに、俺は泣いていた。ゲームのデータは我々「オタク」と言われる人種にとって、何物にも変えがた
い価値がある。アイツにはそれを理解出来ないのだ。幼馴染だというのに、百八十度違う人生を辿って来たのだ
から。
 それは小学生時代から顕著に表れる。
 小学生時代、俺はドッチボールをやっても隅っこで避けるのに必死。
 アイツはボールを取るのも当てるのも上手で、その地位のままクラスの纏め役になっていった。
 中学生時代、内向的な面が現れだした俺は、裏でこっそり虐めにもあった。一時は登校拒否染みた行動も取っ
たっけ。
 一方でアイツはバスケのキャプテン。女子にもキャーキャー言われて、クラスじゃ学級委員。勉強も出来なかっ
たくせに。
 でも、何の因果か違う高校に進んだ今でもこうやってアイツは絡んでくる。おかしなヤツだし、話も合わない。正
直ウザいとも思ってた。でも、根性なしな俺はそれを伝えることも出来なかった。
 それでも黙ってれば……根本的な違いが、今日みたいに亀裂を生じさせるのも当たり前だ。
 嗚呼馬鹿馬鹿しい。放っておいてほしい。現実の友達なんて、俺には似合わない。ネットで話す名無しだけで、
俺は生きていけるんだ。
 ぶつぶつと呟くように反芻していると、俺はいつの間にか眠っていた。



今はこれだけなんです。ごめんなさい。
もし、もしもだけど……需要があったら、今少し書いてみようかと思ってる……。

562:風と木の名無しさん
09/07/09 22:13:54 pq20uGRf0

ワフーワフー

ワッフル製造機を10ダースくらい注文してきた

563:風と木の名無しさん
09/07/09 23:30:03 nB2bQenH0
需要ならここにあるぞー!わっふる

564:風と木の名無しさん
09/07/10 17:59:50 mZK/PyhPO
わっふる!わっふる!

565:風と木の名無しさん
09/07/10 21:59:12 jisH2exC0
帰ってきたら反応あって嬉しかったので、ついつい加速度的に書いてしまった……。
ではちょっと晒してみる!


 今しがた思いっきり蹴り上げた空き缶が、綺麗な放物線を描いて青空に舞った。缶は道路に落ちて醜くひしゃ
げる。今の俺の機嫌を体現したかのように。
 「ちっ……ゲームごときで……ガキじゃあるまいし……!」
 腹の底で鉛が沸騰しているかのようだった。粘り気のある赤黒い情動が、絶えず混ぜっ返されているのだ。獣
のごとく低く唸りながら、俺は先ほどの光景を幾度も思い返していく。涙目の健太。馬鹿という言葉。あいつらしく
ない、感情剥き出しの行動。
 勿論、俺に非があることは頭の隅っこで理解している。ただ、あいつが見ているのが画面ばかりだったのが気
に食わなかったというだけで。久しぶりに見た微笑も、必死な顔も、全部画面に向けられているのが腹立たしかっ
ただけで。
 ……なんでだろう、こんなに一々敏感に反応してしまうのは。
 そんな疑問がふと脳裏を過ぎる。ふと我に帰ったとき、俺は青空を見上げて馬鹿みたいに突っ立っていた。
 頭を振って、疑問を打ち消す。決まっている。アイツが心配だからだ。一体どれだけの間外に出てきてないと思っ
ているんだ。高校に入学した時から逆算して、もう一年と半年はゆうに過ぎ去った。
 家が近いからというだけで、週に三日も通えるものか。それなのに、それなのにアイツは。
 こんなに毎日のように通っているのに、何故あいつは俺を見ようとしない?
 俺以外に誰か来るわけでもない、一人っきりで家に引きこもってなお、どうして救いを求めてくれない?
 怒りが沸騰を通り越して蒸発しているみたいだ。何とも形容しがたい、あえて言うなら諦観という言葉に近い虚
しさが混じった。色で例えるなら、もう変化のしようがない黒。
 しかし、このままでおれない。何とか信頼を回復させなくては、本当にアイツは腐ってしまうかもしれない。外界
との唯一の繋がりが、途絶えてしまうことになるのだから。
 家族も、他の友人も、とうに健太と関わるのを諦めた。ただただ静観することを選んだ。でも……だからこそ、俺
一人だろうと、そんな風にアイツを切り捨てて進みたくないのだ。

566:風と木の名無しさん
09/07/10 22:00:32 jisH2exC0
 ─かつての、そして今の親友として。
 「健太……」
 ぽつり、名前を呼んでみる。
 そして冬場の澄み切った空気を大きく吸い込むと、俺はぐっと腹の底に力を込めた。再度頭を振って、決心を
新たにする。
 俺は─アイツを、助けたいのだ。
 「となれば、だ」
 携帯電話を取り出しながら、一人ごちる。まずは仲直りをすべきだろう。そのために必要な人材を手繰り寄せる
ため、俺は電話帳を順繰り見ていった。百件以上にも及ぶ人を、一人一人思い浮かべながらキーを操作する。
 『か』行の人物が終わった時、手が止まった。
 『ダイちゃん』という登録名の人物の欄だ。センターキーを押せば、携帯電話の番号やアドレス、生年月日等が
表示される。そして、その人を更に深く思い浮かべた。
 高校のクラスメート、入間大輝。通称ダイちゃん。並々ならぬ運動神経を持ち、ルックスも十人並み、加えてコミュ
ニケーション能力はそれ以上という超完璧人間。クラス委員と生徒会副会長を兼任し、誰から話を聞いても好人
物。そうでありながら、一番の趣味はゲームやパソコンだと言う。つまり、ちょっとおかしなヤツだった。
 だが、今この時において、これ以上の人材はない。メール画面を開くと、手早く用件を書き込んだ。
 『明日の放課後、話があるんだけど時間取れねぇ?』


逆に収集つかなくなった……投稿しても許されそうなら、ちみりちみり書いてみる……。

567:風と木の名無しさん
09/07/10 22:59:21 bIoIHV3x0
コソーリ534だけど
>>565の姐さんにワッフルを捧げる
つ#######

568:続・中の人×声オタ1
09/07/11 04:21:08 T5sKAiIfO
前に書いた声優×オタクの続きです。
今回はちゃんと中の人登場してますが、結局エロには持ち込めんかった……。
携帯からなので改行変で見づらかったらごめんなさい。

====================

もうすぐ友衛くんと待ち合わせの時間だ……。
久しぶり会えるのは嬉しい反面、かなり気まずい。

あの“事件”の翌日、冷静になった俺は早速グーグル先生にお伺いを立ててみた。何件か皓役のヨーグル・ブルーは宮野友衛じゃないかという感想は見かけたが、やはりみんな憶測の域を出ないものばかり。
俺も結局確証を得られず、皓の中の人が友衛くんかどうかは判らずじまいだ。

思いきって本人に直接尋いてみようか、でももし俺が友衛くんの立場なら絶対にイヤだ。だが気になる、気になるよ、あの可愛い声で喘いでたのが友衛くんなのかどうか!
悶々と思い悩んでいた俺の前に、問題の当人は笑顔を浮かべて現れた。

569:続・中の人×声オタ2
09/07/11 04:24:45 T5sKAiIfO
「久しぶり。最近メールなかったけど、崇史(たかし)忙しかったの?」
「あ、うん、まぁ。それより、友衛くんメガネかけてるけど目悪かったっけ?」

もちろん俺なんかが忙しかった訳もなく、単にヨーグル・ブルーの正体が友衛くんなんじゃないかと思ったら動揺して連絡できなかっただけだ。

「いや、これ度は入ってないよー。どう、似合う?このピンクっぽい色のフレーム可愛くない?」
「う、うん。いいと思う。友衛くんに似合ってるよ」 「でしょー?今日久しぶりに崇史に会うから新調してみたんだ」

友衛くんが下から俺を覗き込んで笑いかける。
ふいに近くから微かに柔らかな甘い香りがした。
俺より背が低いせいでどうしても上目づかいになってしまうからだが、なんで俺より年上なのに可愛げのある仕草に違和感ないんだろう。
優しい笑顔にオシャレなメガネ、さらに可愛い仕草と、女の子にモテ要素ありまくりじゃねーか。
なんか一つくらい俺にもその要素分けろ。


連れて行かれた店は席がカーテンで区切られ、外からは見えないような半個室状態になっている。席ごとの感覚は広く、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
週末だからか席はほぼ埋まっていたが、友衛くんが予約を入れてくれていたので俺たちはあっさりと案内された。
店内の照明はほの暗く、会話の邪魔にならない程度に音楽が流れている。
どう考えても女の子が喜びそうな店じゃないか。
俺が女の子だったら喜んでるねチクショウ。俺には当分、ひょっとしたらずっと縁のない店だ。

570:続・中の人×声オタ3
09/07/11 04:28:25 T5sKAiIfO
それぞれ飲み物を頼み、以前にも来店したことのある友衛くんがお勧めの料理をいくつか注文した。

「なぁ、友衛くんアルコール頼まなかったけど明日仕事あんのか?今日大丈夫だった?」
「明日はオフだし心配ないよ。ただ昨日も飲んだから、今日はちょっとお酒は控えておこうかなーと思っただけ。崇史はおれに遠慮しないでどんどん飲んでよ」
「それならいいんだけどさ。それにしても……、ここって雰囲気いいけどカップル向きのとこじゃ?」
「そうかなー。こういうとこの方が落ち着いて話せるでしょ?崇史と会うの久しぶりだしさー、ゆっくりしたかったんだよね」

こういう感じのとこ苦手?と、また可愛らしく小首を傾げられる。
だから男の俺相手にそんなことされても……。女の子相手にやった方がいいと思うんだが。

「いや、落ち着いてていい店だと思う。俺がこういう雰囲気の場所に縁がないだけで……。女の子が好きそうだよな。デートとかに良さそう」

―まぁ俺なんかにそんな相手いな、と続けようとしたら、何故か友衛くんが少しむくれた顔を見せていた。

「ふぅん。知らない間に崇史、彼女できてたんだ?」
「いるわけないだろ、俺なんかに。友衛くんならともかく……」
「なんだ、いないの?そうだよね、崇史だもんね。でもおれも一緒、いないよー」

途端に友衛くんは笑顔全開になる。
何がそうだよね崇史だもんね、だ。そうだよ、どうせ俺なんか女子と縁がないよ。最近リアル女子と会話したのはコンビニ店員さんだけだよ。
あれを会話と言うならば、だけどな!
俺は勢いにまかせてグラスの中身を一息に呷った。

「もったいねーな、友衛くんはモテない訳じゃないんだろ?俺が友衛くんなら即、彼女作るけどなぁ」
「まぁ、そりゃあ適度にはねー。でも自分が好きな人からモテないと意味ないんだよ?」

全くリア充はこれだから……。俺は新しく頼んだお酒をまた勢いよく口にした。

571:続・中の人×声オタ4
09/07/11 04:32:42 T5sKAiIfO
あれやこれやとくだらない話をしながら俺はよく食べ、よく飲んだ。料理もおいしいし、友衛くんとしゃべるのはやっぱり楽しい。

俺も払うと言ったけど、結局は友衛くんにご馳走になってしまった。
店を出ると夏場特有の生ぬるい夜気がまとわりつく。それと共に、また微かに柔らかな甘い香りが届いた。

「今日さ、崇史のとこに泊まっててもいい?明日休みだしさー、もっとゆっくりしたい。でも突然お邪魔したらおばさんとおじさんに悪いかな」
「友衛くんなら大丈夫だよ、母さんも喜ぶ」

友衛くんが泊まりにくるなんて久しぶりだよなぁ、小さい頃を思い出す。
段々とお酒が回ってきたらしい、俺はずっとふわふわとした心地でいっぱいだった。少しずつ眠気が襲ってくる。

母と挨拶を交わす友衛くんを置いて、俺はおぼつかない足取りで二階の自室へと向かう。
風呂に入んなきゃ……と思いつつも、そのまま力がぬけて俺は床に丸まってしまった。

―カシ、タカシ。
なんか俺を呼ぶ声がする。頭を軽く撫でてくる手つきが優しく、無意識に擦りよると、また独特の甘い香りが鼻孔を掠めた。
―あ、友衛くん、いい匂いする。
思ったことが声に出ていたらしい、もうシャワー浴びたからフレグランスは落ちてるよ。寝ぼけてないで崇史もお風呂入っといでと返された。

「でもやっぱり友衛くん、いーにおいする……」
「あんまり煽るようなこと言わないでくれるー?お風呂入らないと体ベタベタして気持ち悪いでしょ、ほら」
そう言って抱き起こそうとしてくるが、起き上がるのが面倒になった俺は力を抜いて友衛くん胸に上体を預けた。
意図せずまるで抱きつくような体勢となる。

友衛くんが息を詰める気配がして「もう我慢するのムリ……。ごめん、崇史」言葉の直後に俺の顔は上を向けさせられ、友衛くんの唇が俺の唇に重ねられた。

唇が離れ、再び別の角度から唇が寄せられ―って、何してんの友衛くん!?何されてんの、俺!?

いまや眠気は完全に覚めている。シャワー浴びるというのを口実に、俺は慌てて部屋を飛び出したのだった。

572:風と木の名無しさん
09/07/11 07:12:56 9SQFym+eO
わっふるわっふる!

573:風と木の名無しさん
09/07/11 10:01:57 sCbl86TIO
ワッフルワッフル

574:風と木の名無しさん
09/07/11 12:38:18 hC88OgXL0
おぉぉ…これはどちらが攻めでも受けでも萌える…
わっふるわっふる!!

575:風と木の名無しさん
09/07/11 21:57:05 b5pHry3d0
>>566
事態更に悪化フラグキターw
助けを求めるなら、リア充じゃなくてガチオタが正解だよな
わっふる
>>571
部屋を飛び出す→シャワー浴びる→乱入される
というコンボ画像を受信しました。
わっふる

576:風と木の名無しさん
09/07/11 22:49:47 /PrYzPMa0
ゲーヲタも声ヲタもわっふるわっふる!

577:風と木の名無しさん
09/07/12 06:26:32 w5KZpT/T0
いやむしろ助けを求めたリア充と受けが仲良くなるフラグじゃ……
わっふる!わっふる!

578:幼馴染リア充×ゲーオタ
09/07/15 02:26:38 TiG5ieyU0
幼馴染リア充×ゲーオタの人です。
やたら文字量多くて、読み辛かったらすいません。
そしてますます暴走する話の拡大度ったら…。


 目が覚めたら、外は真っ暗だった。
 昼間は閑静な団地が見える窓に、腫れぼったい目をした俺が映る。やっぱり、頭が痛かった。
 窓に映し出されたのが、まさに今の俺だ。唯一の外界と接続する窓たる友人を自ら遠ざけて、薄暗い部屋に一
人。そして、ますます孤独を実感する辛さを増幅する。空想に耐え切れず、俺は跳ね上がった。
 ゲームケースを蹴り飛ばして立ち上がると、鈍った体の感覚が戻ってくる。耳にはリビングの賑やかさが、鼻に
はいつ干したかも分からぬ自分の布団の臭いが、目には起動したパソコンの画面が。これだけが、俺の世界。
 ─アイツなんか、要らない。
 覚醒とともに思い出した苦い記憶を、俺は真っ向から否定する。後悔なんかしない。一人でこうやって、出来る
限りを生き抜くんだ。現実なんか、見たくない。友人や家族なんて、そんな現実的なものは見たくない。
 もとは勉強机だったデスクの中央に鎮座するキーボードを見つめる。椅子に腰掛けて、無意味な文字列をひ
たすら打ち込むのだ。そうすれば、忌まわしい家族の声も紛れるから。
 暖房器具のない、冷えきった部屋。かじかんだ指を擦りながら、黙々と文字を辿り、それに関する文字を打ち出
す。機械的に、作業的に、感情は時に押し殺して、時に爆発させて。その方が、俺は楽。
 コンセントの抜けたゲームハードに目もくれず、俺はただ祈るように画面と対峙した。
 カタカタというキーを叩く音と、リビングのテレビから漏れる耳障りな笑い声と、暗闇と。いつ押しつぶされるか分
からない、俺だけの戦場。こんなところにアイツは来ないほうがいいんだ。知られたくないし、教えたくもない。
 それなのに……どうしてか分からないが、頭痛が収まらない。

579:幼馴染リア充×ゲーオタ
09/07/15 02:26:59 TiG5ieyU0
 「めっずらしいじゃん。お前が部活おサボりなんて」
 ヘッドフォンを外した途端に飛び込んでくる、ややキーの高い声。さっきまで聴いていた、流行のポップ歌手に
ちょっぴり似ている。こんな喧騒の中でもよく通る、少年らしい声だ。平均より頭一つ分背が高い俺のこと。声のし
た方向を見やれば、ひらひらと手を振る人影が見えた。
 「……ちょっとな、いいだろ別に」
 大型ファストフード店の片隅、ポテトを貪りながら小憎たらしい笑顔で笑っているのがダイちゃんだ。理知的な
眼鏡と、短い黒髪が妙に似合っている。阿呆っぽくて気さくなのだが、こいつに勝てるのは身長くらいのものだ。
 一通りやりあったので、片手に持ったワンコインのジュースとハンバーガーを置いて正面に腰を降ろした。その
途端、ダイちゃんが興味津々という様子で乗り出してくる。
 「相談って何? 恋? 恋か?」
 「親父入ってるぞダイちゃん。見た目は中学正の癖に」
 「う、うっせぇよ……俺だってお前くらい身長欲しいよ……」
 唯一俺が勝っているものにして、この完璧超人をやり込める方法。それが身長。百六十センチ弱という、下手を
すれば小学生にも見られかねない身長こそが、ダイちゃんのコンプレックスなのだ。色素の薄い肌が作り出す童
顔を加えると、なお効果的。そして指摘されると、こういう風にたじろぐ。実に面白い。
 「あと……頭一つ分くらい……あっても……」
 「はいはい、牛乳飲もうね」
 「飲んでるよ! 毎日ワンパックは飲んでるってぇの!」
 「……一リットル……? そりゃ飲みすぎ」
 子供染みたやり取りではあるが、こういう雰囲気って良いものだと思う。清々しいというか、心地よいというか。
 ……アイツも、この良さを知ってるはずなのに。
 そう思って、本題を思い出した。ついつい本題が歓談に埋もれそうになってしまうのは、俺の記憶力の問題だ。
それならば、思い出したときにさっさと切り出すに限る。
 「ねぇ……背の伸びる牛乳の銘柄って無いの? シンジの好きな銘柄なら伸びそう」
 「それはそうとして、だ。本題に移ってもいいか?」
 「……いいよ。何?」

580:幼馴染リア充×ゲーオタ
09/07/15 02:27:39 TiG5ieyU0
 ダイちゃんは俺の真面目な声色を敏感に感じ取れる。素早くモードを切り替え、俺に合わせたやや低い声で
応じた。眼鏡を外し、ツルを軽く咥える。彼独特の癖で、こうすると頭が速く回るらしい。レンズを通さなくなると、
幾分眼光が鋭くなった気がする。
 「あのさ、ダイちゃんはゲームには詳しいよな」
 「そりゃね……ゲーム?」
 ダイちゃんが眉を寄せた。それもそうかもしれない。ゲームの話でこんなにもったいぶったりする者はそうそう居
ないだろう。それでも、今の俺には切実な問題なのだ。
 「それで─って知ってる?」
 「ああ、知ってるけど……大手メーカーのオンラインゲームだな。色んな機種に移植されて、結構な人気だそう
だ。まぁ、ジャンルがジャンルだけに、そういうの興味無さそうなお前の口から出るとは思わなかったけど……」
 言いながら、今度は口が曲がった。合点がいかないという表情そのものだ。それもそうだろう。俺がダイちゃんと
ゲームの話をしたことなんて、未だかつて数える程しかない。
 「ちょっと、さ。そういうの好きな友達のデータを無くしちゃってよ……どうにかなんないのかなって思って」
 理由を簡潔に、かつ重要な点を回避しながら説明する。勘の鋭いダイちゃんは訝しげな顔を保っていたが、と
りあえず納得しておくことにしたらしく、少し目を閉じて考えると話を進めてくれた。眼鏡のツルを噛む音が妙に大
きく聞こえたのは、俺も少し緊張していたからかもしれない。
 ……あいつのことは、出来れば他人に教えたくないから。
 「ふぅん……で、俺に相談に来たということですか」
 「そういうこと。データの復旧とかさ、出来ないのかな?」
 「無理」
 俺の解説した動機同様、簡潔な返答だった。思わずあっけに取られる。だって、ダイちゃんは……。
 「ダイちゃん、前にそういうの出来るって言ってなかったか!?」
 「出来るよ。でもね、あのゲームじゃそうはいかないんだよ」
 勢いのままに立ち上がった俺を見て、ダイちゃんは手で制した。座れとでもいうように、掌を下にして上下運動
させる。溢れ出す焦燥の出鼻を挫かれた俺は、座るしかなかった。
 ダイちゃんは俺が座ったのを確認して、話を継いだ。

581:幼馴染リア充×ゲーオタ
09/07/15 02:29:24 TiG5ieyU0
 「あれね、オンラインゲームなんだよ。しかも最新の。たくさんの人が繋がるってことは、違法に手に入れたアイ
テムがゲーム世界に氾濫しやすいってことだからね。だから、セキュリティが厳重なんだ」
 「で、でも……それじゃあ……マジかよぉ……」
 「まぁ待てって。話は終わってないぜ? 方法はあるよ」
 がくんと首をうな垂れた俺に対して、ダイちゃんは話を続ける。ツルを噛んだ童顔が、一瞬仏様に見えた気が
する。もしかして、セキュリティを突破する方法でもあるのか?
 「オンラインゲームなら、逆にそれを利用することもできる。つまり、物々交換」
 「……えっと……ごめん。よく分からない」
 「だから! ネットには君の友達と同じアイテムを持ってる人が沢山居るでしょ! 何らかの方法で、それを貰え
ばいいんじゃない?」
 なるほど……確かに、それならあるいは何とかなるかもしれない……。そうと決まれば……。
 「ただ、この方法は……」
 「ダイちゃんありがと! これ奢りね!」
 「ちょ、おいっ!」
 俺は乱暴に千円札を叩きつけて、一目散に駆け出した。……まずはゲームを買わないとだな。
 駅前のゲームショップに向けて全力疾走している俺には、ダイちゃんの言いかけた言葉は届かなかった。
 ただ、最後のダイちゃんのため息は聞こえたような気がする。

582:風と木の名無しさん
09/07/16 05:18:24 v5HofKg4O
わっふるわっふる!!

583:風と木の名無しさん
09/07/16 18:49:11 q8GhBLrp0
幼馴染リア充はちょっと病み気味だなw
わっふる

584:風と木の名無しさん
09/07/18 03:40:50 /FBlh4zD0
>>578
も萌える・・・(*´Д`) ダイちゃんもいいキャラしてる
わっふるわっふる!!!!

585:風と木の名無しさん
09/07/21 19:52:36 xSIuPzr9O
携帯でファイルシーク通して読んだからURL上手く貼れてるかわかんないけど
↓のまとめが、このスレ過ぎて萌えた

成り行きで友人になったイケメンが物凄い趣味を持っていた
URLリンク(p15.fileseek.net)

586:585
09/07/21 22:11:59 xSIuPzr9O
ごめんうまく貼れてなかったorz
成り行きで友人になったイケメンが物凄い趣味を持っていた
URLリンク(runxz.blog4.fc2.com)

587:風と木の名無しさん
09/07/21 23:57:18 +0g8yKXE0
>>585
ガチ過ぎて吹いた

588:風と木の名無しさん
09/07/22 06:51:19 OZTz+arr0
>>586
ウホッ、良いBL!
不思議系腐男子×隠れヘタレオタ萌え

589:風と木の名無しさん
09/07/22 10:25:22 /1Jffg9Y0
>>586
ガチすぎワロタw
水沢受けかと思いきやこれはこれでいい萌え

590:風と木の名無しさん
09/07/22 22:03:46 B47EyUXU0
>>586
ガチすぎだろwwwww
大好きだwwww


591:風と木の名無しさん
09/07/23 02:38:11 HuDDB3Z70
あ、これ4まであったんだ
普通にいい話過ぎて、最後ちょっと泣きそうになった
水沢かっこよすぎる
この更に続きがきになってしょうがない。1年前か・・・

592:風と木の名無しさん
09/07/27 21:44:47 msBGK6Vo0
ぐだぐだと長いんですが、投下します。
暇つぶしにでもなれば幸いです。

593:拾い物
09/07/27 21:46:57 msBGK6Vo0
なんか落ちてる。
桜井の頭に浮かんだ言葉はそれだった。
落ちている”それ”の傍へ屈み込み、まじまじと見つめる。
「人間……。てか、男。あ、これは……」
桜井の目の前にいる男はまだ若く、桜井と同じ大学生くらいだろう。汚いアパートの外階段の前に寝転んでいる男の髪は茶髪で、
着ている服は金をかけてお洒落をしていると一目で分かるもの。
桜井は小さく唸った。
俺はこの男を知っている。
「え、と。み、御手洗くん?」
声をかけても反応はない。
顔を近づけるとぷん、と酒臭い匂いが鼻をつく。
整った顔とこの酒の匂いの取り合わせは最悪かもしれないな、と思いながら、仕方なく桜井は御手洗の肩を揺する。
多分呑みすぎているのかもしれない。
急性アルコール中毒ではないといいな、と思いながら肩を揺すり続けるものの、御手洗は反応が無い。思わず焦ると、
「あとごふーん」と間抜けな声が聞こえ、肩から力が抜けた。
「御手洗君」
あとごふん、あとごふん、いやごじかん。呂律が回らないままそんなことを言い続ける御手洗に、桜井はますます呆れた。
いくら冬で無いとはいえ、こんなところで寝ていたらどんな目にあうか。
桜井は、御手洗を見つめた。
御手洗とは同じ大学で、同じ学科で同学年だが、会話をしたことがない。年中バイトに明け暮れ、たまの休みは漫画を読み
漁ったり小説を書いたりしている典型的なオタクである自分が、常に女をはべらせている御手洗とは接点を持ちようが無い。
「御手洗君、ここは君の家ではありませんよ。僕が住んでいる、アパートの階段の前です。職務質問にあうよ。御手洗君?」
声をかけても、その口から出るのは「あとごじかん」
こいついつまで外で寝るつもりだ。本当に外で五時間寝せてやろうかと思うが、このままではなんだか可哀想で、放っておけ
ない。
桜井は仕方なく、自分とそう体格が変わらない御手洗を担ぎ上げた。足元が危なく、これで死んだら本当に笑えない、と思い
ながらなんとか自分の部屋までたどり着いた。

594:拾い物
09/07/27 21:48:03 msBGK6Vo0
いつもの習慣で朝の四時に起きてしまう。
桜井は眠るときに傍にいつも置くようにしている手帳を確認し、ずるずると突っ伏した。
「今日、休みじゃん……、バイト。しかも、どっちも」
桜井は二つアルバイトを掛け持ちしている。一つは早朝、数時間のコンビニのアルバイト。もう一つは夕方からの居酒屋の
アルバイト。
早朝のコンビニのアルバイトは最近、授業数が少なくなってきてから始めたものだが、課題と居酒屋のバイトに追われてい
た以前と殆ど忙しさは変わらない。だから、体はまだもっている。
その代わり、「休みがある」という感覚を失っている。
今日は授業もない日だ。なんという偶然だ、と寝返りを打ち、そこでぎょっとした。
知らない男が寝ている。
しかし、数秒後には「あ、御手洗君を泊めたんだっけ」と呟いていた。
御手洗は桜井に引き摺られて布団の上に投げ出されると、「寝たい寝たい」と主張し、そのまま寝てしまった。おかげで桜井
は畳で雑魚寝することになったが、兄弟が多いなかで育ったのでなれている。
さて、この男をどうしよう。
桜井は黒縁の冴えない眼鏡をかけ、立ち上がった。
二度寝はしたいが、とりあえず味噌汁を作って、それを冷蔵庫にしまってからにしよう。そんなことを思いつつ、台所へ向かった。


595:拾い物
09/07/27 21:49:20 msBGK6Vo0
味噌汁を作り終え、冷ましている間にシンクに溜まった食器類を洗っていると、ぎしりと床がきしんだ。
振り返ると、寝癖をつけたままの御手洗がこちらを見ていた。
「あのー、すみません。ここ、どこっすか」
「俺の部屋です」
桜井は食器に顔を戻し、泡を水で流す。整った顔立ちの御手洗を直視しているのは嫌だった。
「御手洗さん、ここのアパートの外階段の前で寝てたんで、運んだんです。余計なことして申し訳ないです」
別に謝る必要はないんだよな、俺。そう思いながらも、一応下手に出る。
「あ、いや、そんなことないっす! いやもう、マジで!すんませんした!」
慌てた声に思わずにやけそうになった。多分、この男と会話をするのもこれっきりだろう。そんな思いがあり、「いや別に構わないですよ」
と答えながら、桜井は食器を全て水切り籠に入れた。
タオルで手を拭き、振り向くと御手洗が申し訳なさそうに立っている。
「あのー、俺の名前、知っているっつーことはぁ、あれですか。俺と同じ大学、とか?」
「同じ学科の桜井です」
「え、あ、さくらいさん…」
頭をがりがりと掻く御手洗は全く桜井のことを知らないようだった。それもそうだろう。桜井は大学では友人がおらず、唯一の話し合い手は、
離れ離れに暮らす兄弟たちなのだから。

596:拾い物
09/07/27 21:49:57 msBGK6Vo0
「御手洗さん、味噌汁、食いますか」
きょとんとする御手洗の前で「あ、飲みますか」と訂正すると、御手洗はぎこちなく「お、お願いします」と頷く。
「じゃあ、あの、適当に布団畳んで、テーブルのとこにいてください」
「え、いや、俺、手伝いますよ」
「いいですよ、たいしたことじゃないんで」
半ば拒絶するように味噌汁に火をかけ始め、冷蔵庫の前へ行くと「すんません」と小さな御手洗の声が聞こえ、御手洗は布団を畳みに行ったようだった。
うちの兄弟は全員、コミュニケーションが下手だな。
そんなことを思う。
兄も、自分も、友人と呼べる存在がいないに等しい。
兄弟で一緒に居すぎたからかもしれないし、忙しすぎたからかもしれない。
一番上の兄は優しいがゆえにいつも貧乏くじをひいているような男で、工場で黙々と働き、金の殆どを家族に与えている。二番目の兄は現実主義
の塊に見えて、時々夢想家。二番目の兄も自分と同じように学費のためにアルバイトをして大学へ通っている苦学生のため、それが支えになって
もいる。
母の度重なる再婚のため、二人とは血が繋がっていないが、一緒にいた時間が長すぎたせいか、根っこにある部分は同じになってしまった気がする。
冷蔵庫から適当におかずになりそうなものを取り出し、味噌汁のもとへ戻った。
味噌汁は適度に温まっており、いい匂いがした。

597:拾い物
09/07/27 21:51:23 msBGK6Vo0
御手洗は味噌汁しか飲まなかったが「うめえっす、マジ最高っす」と繰り返し、そしてそのあと、一時間寝てしまった。桜井も一緒に二度寝をして
しまったので、今度は御手洗に起こされ、「マジすんませんした!」と謝られた。
「あの、俺、酒癖悪くて。もうマジ、ありえねーっすよね。ほんとう、あの、桜さんに拾われて良かったです」
「……桜井です」
「えええあああ、マジすんません!」
土下座をしそうな勢いで謝る御手洗に「いやいやいいです、いいです、そこまで必死にならないでも」となだめ、桜井は御手洗が顔を上げたときには
疲れ果てていた。
正直、見捨てればよかったのかもしれない。そう思った。
「あの、本当、ゴチでした!あと、泊めてくれてありがとうございました!ええっと、このお礼は必ずしますんで!」
「いやあの、電車、動いているよ。帰ったら?」
「え、あ、そうっすね!」
最後は追い出すように御手洗を外に送り出したが、御手洗は「マジ、感謝してます!」と言いながら爽やかに帰っていった。
桜井には、その爽やかさが理解できず、とりあえず寝たいと思った。
桜井が三度目に起きたのは二番目の兄の足音だった。
二人の兄には合鍵を渡しているので、二番目の兄がいるのは別段珍しくない。
目を覚ました弟を見るなり、兄は「お前、みらくる学園シリーズと、魔法少女りりーな、どっちが萌える?」と聞いてきた。
どちらも今、オタクに大人気の美少女アニメで、桜井は寝ぼけながら「りりーなのゆりりん萌え」と答えた。
「ゆりりんかー。兄貴はあやの萌えだって」
「兄ちゃんは?」
桜井はずるずると這いながら、テーブルに頬杖をつく。一番上の兄は「兄貴」、二番目の兄は「兄ちゃん」と呼んでいる。
「俺はりりーなだったら、やっぱり主人公のりりーなだな。おてんば少女萌え。な、兄貴もお前も、みらくる学園シリーズは好きじゃねえの?」

598:拾い物
09/07/27 21:53:08 msBGK6Vo0
みら学はなー、巨乳ばっかでちょっとー」
「兄貴と一緒のこと言ってるよ。さすが兄弟」
舌打ちする兄に「兄ちゃんも兄貴も流石兄弟と思うよ、俺」と笑った。
幼い頃、夕日を見て、一番目の兄が「空が泣いているみたいだ」といい、その事実を知らない二番目の兄が「夕日は空が流す赤い涙みたいだ」
と言ったことがあった。桜井はそのことを兄たちには言わずに、自分の心にそっとしまっておいた。幼いながら、二人の絆のようなものを、
自分のうちに大切にとっておきたいと思ったのかもしれない。
二番目の兄は、長い前髪をうっとおしそうに摘みながら「兄貴と同人誌出すけど、お前、参加する?」と聞いてきた。
「え、ジャンル、何?」
「りりーな。百合カプオンリーのつもりだけど」
「うわー、超参加したい。でもはずかしー。兄弟で合同誌!」
「しょうがないだろー、三人ともオタクなんだからよ」
「時間あんの、兄貴たち」
「萌えのためならなんでもやるさ」
桜井は苦笑した。全く、かっこいいんだか、悪いんだか。
「バイトがんばろー」
そう言うと、兄が首を横に振った。
「ゲスト扱いにしてやるよ。末っ子よ、金の心配ならするな」
兄が安っぽさが目立つ腕時計を見、立ち上がった。
「兄貴面くらいさせろよ、こんなときでもさ」
にやりと笑った兄に申し訳なくなりながらも、ありがたくその提案を受け入れた。きっと断っても、兄たちは「いいよいいよ、金なんて」と断る
のが容易く予想できたからだった。兄たちは、自分に甘い。弟に甘くしているほど余裕はないはずなのに。
「邪魔したな。俺、帰るわ」
「うん」
忙しい合間を縫って会いに来た兄の愛情が嬉しく、恥ずかしい。こんなこと、メールで済むことなのに、兄たちは存在を確かめるように時々会い
に来てくれる。兄が帰ったあとの部屋で、桜井は壁にもたれてため息をついた。
「あー、なんか」
さみしい。そう続けそうになり、慌てて打ち消した。
「眠い」
桜井は目を閉じた。大丈夫。夢に沈んでしまえば寂しくはない。いつも、夢は幸福だから。

599:拾い物
09/07/27 21:54:28 msBGK6Vo0
とりあえずここまで。中途半端ですみません。

600:風と木の名無しさん
09/07/27 23:38:38 o6CCxh5GO
ワッフルワッフル!
つ、続きがきになる~

601:風と木の名無しさん
09/07/28 00:00:10 +1U45VXKO
ワッフル!!!

御手洗×桜井も気になるけど兄貴達とのほのぼのも萌える

602:風と木の名無しさん
09/07/28 00:30:01 HBxgYZNcO
わっふるをお供えしていきますね。
つ###############

603:風と木の名無しさん
09/07/28 00:38:14 Tg9cAP/sO

・・・#####⊂三(°Л、 °)モグモグ

604:風と木の名無しさん
09/07/28 01:54:42 2v17GaqIO
先生ー、>>603が食べてまーす

605:風と木の名無しさん
09/07/28 02:22:32 T5eIbo8TO
>>585
はげ萌えたwww
水沢が受けだと思ってたら…超いい

>>599
萌えたああああ!
敬語な末っ子かわゆす


606:風と木の名無しさん
09/07/28 02:22:42 vVsUFGwmO
>>599
わ、わっふるわっふる!

607:風と木の名無しさん
09/07/28 03:35:29 xzJczqqK0
>>603
めっ

608:風と木の名無しさん
09/07/28 19:27:19 o1sP7LhZ0
リア充がちょっとバカっぽくて萌え。
兄とお手洗いが弟をとりあう予感がビンビンするぜ。

609:拾い物
09/07/29 19:02:26 xwEuDdRP0
わっふるたくさんありがとうございます。また途中まで投下で申し訳ない。

610:拾い物
09/07/29 19:04:09 xwEuDdRP0
翌日、大学へ行くと、御手洗と偶然会った。
「あ、桜さん!」
「桜井です」
「桜井さん!昨日はありがとうございました!」
高校球児のように爽やかに、なおかつ礼儀正しく頭を下げる御手洗に困惑しながらも、桜井は両手で相手を押し戻すような仕草をしながら「べ、
別にいいから」と言った。
御手洗は明るく「今日、昼飯、一緒に食いませんか?」と言ってきた。
内心、桜井は蒼ざめた。御手洗がいつも一緒にいる男女のグループを思い出す。
派手で、他人を小ばかにすることが楽しげな、そんな軽薄な、それでいて明るい人々。
勘弁してくれ!そう叫びたかった。あのなかにいったら、自分は完全に笑いものじゃないか。
「お、俺、課題あるから、図書館行ってやらなきゃ。そ、それに、バイトもあるし」
「え、じゃあ、夕飯は?俺、昨日の礼におごりますよ」
願っても無い申し出だが、桜井は首を横に振った。
「ごめん、その時間もバイト」
「あ、そうっすか」
いかにも残念です、というように肩を落とした男が信じられない。ここまで律儀な男も珍しいものだ。
「あ、じゃあ、俺、用事あるから」
桜井はそそくさとその場を後にした。
目立つ男とこれ以上、地味な自分が一緒に居ることが耐えられなかった。

611:拾い物
09/07/29 19:05:00 xwEuDdRP0
大学の人気のない場所にある、ベンチに座り、桜井は課題をしながら固形栄養食を齧っていた。兄貴たちに見つかったら殺される、と思った瞬間、
携帯電話がズボンのポケットのなかで震え、びくりと体を震わせた。
「はい」
慌てて固形食を飲み込むと、「やっちゃん?お兄ちゃんだけど」と一番目の兄の声が聞こえてきた。
「あ、兄貴。ひさしぶり」
「ひさしぶりじゃないよ。花ちゃんにも電話してないんだって?きょうくんが会いに行ってなかったら、そのうち干からびて死んでるんじゃないか、お前」
きょうくん。その言葉に少し笑う。二番目の兄のあだ名だ。ちなみに、花ちゃんは自分たちの母のことだった。クラブのママとして働く彼女には「おかあさん」
という呼び方が似合わなくて、「花ちゃん」と兄弟して呼んでいた。
「兄貴、そういや、兄ちゃんから聞いたよ。俺も、合同誌、ゲストで参加していいんだって?」
「うん、二人で出すのは寂しいからさ」
それは嘘だ。そう思いながら、桜井は笑った。
「すげー楽しみ。まあ、絵を描けるのは兄貴だけだから、表紙で一番苦労するのは兄貴だけどね」
「ははは、きょうくんにアシをやらせるから心配するでない」
笑った後、兄は「ごめん、休憩時間終わるから。話せてよかった。あと、二人とも夏休みには実家に戻っておいでね」と言って電話を切った。
暫く、桜井はベンチに座ってぼんやりとしていた。
寂しいなんて嘘だ。俺が寂しいから、俺がいつまでも二人から離れられないから、
二人は俺を確認してくれるんだ。俺に声をかけてくれるんだ。
幼い頃の記憶が蘇る。三人とも血が繋がらないということで迫害を受けていたとき、
一番上の兄はしっかりと手を繋いでくれた。二番目の兄はその隣でポケットに手を突っ込みながらも、足の遅い弟を気遣ってよく振り返っては確認してくれた。
あのときと、何一つ、変わらない。
桜井は俯いた。

612:拾い物
09/07/29 19:06:03 xwEuDdRP0
このままでいいのか。二人に甘えて、殻に閉じこもって、兄しか信用しないようで、いいのだろうか。いいはずはないと分かっているのに、一歩、踏み出せない。
怖い。そう、怖いのだ。嘲笑とか、柔らかな拒絶が。
御手洗の姿を思い出した。
彼と関わること。それが出来たら、自分はもう少し、勇気がもてるのではないか。そんなことを思った。
翌日、また大学へ行くと御手洗が待ち構えていたかのように走り寄ってきた。
「おはよーございまっす!桜さん!」
「桜井です」
「いやでも、俺考えたんすよ。桜さんってのがマジ、可愛くねっすか?」
「いや……そう、ですか?」
女の子の桜ちゃんは可愛いだろう。ちなみに、近所のチワワの名前は桜ちゃんだ。可愛い存在に「桜」という名前は似合うが、自分の
ようなださい男に桜はどうか。
御手洗は何故か拳を突き出し「桜さんで行きましょう!」と宣言した。その行動についていけなくて、なし崩しに「桜さん」に決まってしまった。
御手洗は桜さん桜さんと連呼し、礼をさせてくれとまた言ってきた。御手洗は「礼をしなけりゃ男がすたるっす!」と言ったが、外で酔っ払って
転がった男が言う台詞なのだろうかと思った。しっかりした男ならまず、そんなことはしない。
桜井は片手で顔を覆い、「あーじゃあ」と妥協案を出した。
「映画にでも…」
誰かと関わる一歩のつもりだったが、言った後で後悔した。いきなり映画はないか。
いきなり図々しいか?そう思ったが、御手洗は両手を上げてぐるぐる回転していた。
「了解っす!」
「え、と。なんで回っているの?」
「回転寿司の踊りです!映画の後は回転寿司です!勿論、俺がおごります!」
後ろからは、きゃあ御手洗可愛いー、と声がかかるが、桜井は脱力した。
可愛いの?これ?最近の”可愛い”の定義を誰か教えてくれと言いたくなった。

613:風と木の名無しさん
09/07/29 21:48:53 KPSAPmkL0
わっふるわっふる!!


614:風と木の名無しさん
09/07/29 22:42:50 VclFjFgQ0
わっるるわっふる。
桜ちゃんかわいいよハアハア

615:風と木の名無しさん
09/07/29 23:36:05 Vja+hq7hi
わっふるわっふる!!わっふるわっふる!!
御手洗イイヨー御手洗

616:風と木の名無しさん
09/07/30 00:26:30 r7sxKdhgO
御手洗のお尻もかわいいわっふー


617:風と木の名無しさん
09/07/30 15:43:49 qrq5rP/Q0
WCの暴走が楽しみで夜も寝られます!
わっふるわっふる

618:風と木の名無しさん
09/07/31 00:17:41 6/CgV9upO
WCも良いが兄ちゃんズもたまらん!
わっふるわっふる!!

619:風と木の名無しさん
09/08/01 01:52:22 EsIPvHpK0
すいません、ちょっと妄想置かせてください。
高校生お笑いオタク男子&運動部男子
------------------------------------------------------------------------
(はぁ、最悪…)
俺は、下校途中のグラウンドを見ながら、思い返しては頭をかきむしりたくなる思いでいっぱいだった。
その原因は。
(あ、今のパスうまい)
サッカー部に視線をやると、そいつ、木本が絶妙なアシストをしてゴールが決まったのが見えた。
人の輪の中で駆け出していく木本を見て、俺は見つめていた自分に気づき、慌てて奴から眼を引きはがした。
そこに、異様に視力がいいらしい木本の絶叫が聞こえた。

「西原ーー、忘れたらしぼくぞーー!!」

俺は聞こえなかったふりをして、慌てて逃げ出した。



ことの発端は、俺のろくでもないノートだった。

放課後、俺は一人教室でノートに趣味の分析を書き綴っていた。と言っても、俺の好きなのはお笑いだ。
昔から見るのが好きで、関西に引っ越した時からさらに多く見るようになり、自分でもネタを考えだしたくらいだった。
しかし、致命的なことに俺には友達が皆無で、なりはデカイが色白で、さらに悪いことに性格も消極的、むしろ暗かった。
俺は普通の高校生なら友だちと馬鹿騒ぎするところを、お笑いに対する暗い情熱をノートにその日もぶつけていたのだ。
そうして下校時刻も過ぎたところ、誰もいない教室に人が入ってきたのも気づかないくらい夢中でノートを書いていた。

620:風と木の名無しさん
09/08/01 01:52:55 EsIPvHpK0
「おい」

「…俺?」

俺は慌てて顔を上げて横を向いた。西日に照らされた日焼けした顔は、同じクラスのサッカー部の木本だ。
ユニフォームを着て、面白そうな顔でこちらを見ている。嫌な予感がした。

「お前以外誰がおんねん。ひとりで何書いてんの」
「いや、別に…」

俺は焦った。木本は学校ではサッカー部でインハイ出場も期待されている有名人で、異常にモテるわりには
それに輪をかけた異常な短気で、ナチュラルボーン・ヤンキーと異名をとるほどだった。

「君子危うきに近寄らず」、と俺は一瞬で思った。
そんな俺の動揺を見抜いたか、木本は俺との距離を一瞬で詰めてくる。
さすがの運動能力、と感心したのもつかの間、奴は無断で俺のノートを拾い上げた。

「ちょ、返せよ!!」
「ええやんけ、そんなエロいことでも書いとったんかい」
「そりゃ多少は…なわけあるか!}
「ははは、おまえ実はおもろいやん、西原」

名前を覚えられていた、ということにも驚いたが、それより笑顔で「おもろい」と言われたことで俺は舞い上がるのを感じた。

621:風と木の名無しさん
09/08/01 01:53:42 EsIPvHpK0
「木本、くんは…」
「なんで敬語やねん。普通に話せや」

恐ろしくてできません、という本音も言えないくらいの威圧感が木本にはある。見た目、木本は俺より背は低く、顔は小さく、
笑うと小動物のようであるのだがそのギャップは大きかった。俺が怯えているのを察してか、木本は気まずそうに口を開いた。

「俺もお笑い好きやし」
「…こっちの方の人ってみんなそうなんじゃないの」

しまった、と俺は内心焦ったが、木本は気にするそぶりは見せず、「そらそうかもしれんけど、人前でやるレベルで好きってそうそう
おらんし」とでこを掻きながら言った。そこらへんで、すっかり俺は油断していたのだ。

「なあ、おまえ漫才とコントどっちが好き?ちゅうかどっち得意?」
「見る分にはどっちでも…」
と続けようとすると、食い気味に「ちゃうくて」と言われた。え、どういうこと?

「コンビ名はつけさしたるわ」
まさかとは思うが、この人ひょっとして…

「俺とコンビ組んでさ、みんなわらかしてやろうや」

あんまりいい笑顔で木本が言うものだから、思わずうなづいてしまった俺は愕然とした。
あ、今のナシで、と言う前に木本が「じゃあネタよろしくな」と言い捨ててさっさと部活に行ってしまった。
そして、冒頭に戻る。
----------------------------------------------------------------------
接点ない同士の無自覚ホモが好きで、すみません。

622:風と木の名無しさん
09/08/01 04:43:36 xWzNZlKIO
続きワッフルワッフル!

623:風と木の名無しさん
09/08/02 23:13:07 rN9xIKWy0
ワッフルを捧げます…
わっふるわっふる
無自覚ホモは正義

624:風と木の名無しさん
09/08/06 22:38:28 LMg6snfZO
桜たんも御手洗もお笑いコンビ(未遂)もまとめてわっふるわっふるわっふる!!!!!

625:風と木の名無しさん
09/08/07 21:36:13 Tuvz9oJEi
仕事中にゲーセン通いのチャラ男×ゲーオタな店員を受信した。

毎日メダルや音ゲーで仲間とワイワイやってるチャラ男を
羨ましく思いながら不愛想に接客するゲーオタ。
チャラ男が自分の好きなゲームをプレイしてるのを見て
つい口を挟んでしまったところ、懐かれてしまって困ったり、
DQNにgkblしながら対応してるところをチャラ男が庇ったり、
店員と客が馴れ合いすぎだと注意されて凹んだり、
ゲーオタのアドバイスでうまく取れて、喜んで抱きつく
チャラ男にドギマギすればいい。
ゲーオタの方がひと回りくらい年上だとなお良い。

626:風と木の名無しさん
09/08/07 22:24:43 yQhe/HKT0
>>625

ああああああ禿げ散らかした
新刊待ってる!

627:風と木の名無しさん
09/08/08 19:59:24 HfHDA/aD0
>>625
これは言うしかないだろ・・・
わっふるわっふる!

628:風と木の名無しさん
09/08/09 01:33:30 BP4vofd+O
チャラ男がゲーオタ目当てで一人でもゲーセン来ちゃうくらいになってくれたら萌える

629:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:47:40 pVXJkjPK0
わっふるされてしまったので、チャラ男×ゲーオタ店員投下。
書いてたらチャラ男というより軽い高校生になってしまった。年下攻めおいしいです(^q^)
ゲーオタ目線が長いめです。

山田雄一:バイト暦1年。29歳。ひょろ長。黒髪。無愛想。メガネ。心は饒舌。RPGとアクション好き。
大谷寛太:メダルゲーム大好き高校生。18歳。がっしりめ。茶髪短髪くせ毛。喋りたがり。背は低い。

 18から働いてた工場が不況のあおりで潰れて、もう1年になる。
 親も歳だし自分もいい歳だし、とにかく職に就かないとやっていけなくて、近いからという理由だけで選ん
だのがこのゲーセンのバイト。
 元からゲームや機械は好きだし、スタッフはゲームがタダでできると聞いて、何をするのかも分からないま
まとりあえず面接を受けた。
 ゲーセンなんてギリギリの所で稼ぐアコギな商売だ。常に人手は足りないし、猫の手でも借りたかったのだ
ろう、即採用で次の日からフロアに放り込まれた。
 希望していたビデオゲームではなく、メダルゲームとプライズのコーナーに。
 大型ショッピングモール内にあるこのゲーセンは、1フロアにビデオゲー、音ゲー、メダルゲー、プライズ
(UFOキャッチャーなんかがそうだ)、それにアミューズメント仕様のパチンコやスロットなどがスペース
いっぱいにこれでもかと敷き詰めてある。
 毎日同じ時間に来て山ほどメダルを出して行く主婦。黙々とパチンコだけをしていくおっさん。機械を揺すっ
て景品を落とそうとするDQN。当たらないからといって機械を殴る小学生。4、5人で一台のメダルゲーを
囲んで騒がしい学生……上げればキリがないくらい、ろくな人間がやってこない。
 そんな中で右も左も分からずに働き始めた。初日なのに誰も何も教えてくれないもんだから、延々と掃除ば
かりしていたのを今でも覚えている。
 おなじバイトの連中も、アイツの選んだ景品が悪いやら、もっと金を使えと客の聞こえない所でグチグチ言
うだけならまだしも、毎月客やら社員やらとトラブルを起こしては辞めて行く。
 自分も早く辞めて別の仕事を探そうと思っていたのに、そんなに都合良く仕事が見つかる訳もなく、とにか
くがむしゃらに働いた。

630:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:48:45 pVXJkjPK0
 最初はメダルゲーのメンテナンスから。機械の中を掃除したり、メダル詰まりを取り除いたり、ボタンが効
かなくなるエラーを直したり、メダルを洗浄機にかけて他店メダルを選り分けたり。機械が好きで工業高校ま
で行った自分としてはたいした事のない作業だった。
 だけど同じバイトの連中は、隙あらば人に仕事を押し付けてきては、自分たちだけサボって金を稼ぎたがる。
働き始めて少し慣れてきたと思ったら、やれプライズ用の景品を選べだの、UFOキャッチャーの配置を考え
ろだの、やれ今週のノルマにむけてもっと接客しろだの、じゃあ一体お前らは何の仕事をしてるんだ。
 しかしそんな事を面と向かって言えるような性格じゃないのは自分が一番よく分かってる。元から人見知り
な方だし、背ばっかり高くなって肉の付かない自分の体が、自分の性格を良く表していると思う。
 だけど流れを覚えてしまえば前の工場より楽で、口うるさい同僚が帰ってしまえば特に何を言われる訳でも
なく、だらだら働き続けたら、あっという間に1年が経っていた。

 あー、また来てるよあの高校生達…毎日メダルゲーばかりして飽きないのかね。
「兄ちゃーん!メダル詰まったしー!」
 カウンターで客数を記録していたら、そんな声が聞こえた。お前らの手汗でメダルが機械内に引っ付くんだ
よ。手ぐらい洗ってこいよ。てかそこにサービスのおしぼりあるだろ。
「はーい、今行きまーす」
 いつも通りの返事をして、けたたましくエラー音が鳴るメダル機に向かう。メンテ用の工具とミニカバンは
自腹で買った。機械を触るなら手に馴染む方が良い。
「ちょっと離れててくださいねー」
 機械の扉を開けるので、高校生達に下がるように言う。メダルが出ないからって叩くな。機械が壊れるだろ。
「はい、直りましたよ」
「サンキューっす兄ちゃん!」
 自分がエラーを解除したと同時にメダルを突っ込みだす高校生。どうやら画面内のスロットにリーチが来て
るみたいだ。あー、こりゃ200枚は出るな。
「あの高校生、ちょっとメダル出しすぎだと思わない?」
 カウンタに戻った自分に、同じ時間帯にシフトに入ってるおばちゃんが声をかけてくる。結構でかい声で客
の悪口を言うおばちゃんは、近所の小学生から「タヌキ」とあだ名をつけられている事を知らない。

631:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:49:54 pVXJkjPK0
「はぁ、そうですね」
「メダルの売り上げに貢献しない客なんて、来なければいいのにねぇ」
 最初聞いたとき誰だか分からなかったけど、そういえば似てる。さすが小学生はあだ名さえ容赦がない。自
分は多分「メガネ」だな。もしくは「もやし」。
「山田くん、私休憩行ってくるから」
「はい、いってらっしゃい」
 いつも開店時間ギリギリに来て、休憩も10分ほどオーバーして、終了時間間際にバタバタと仕事して残業し
てるこのおばちゃん。こういうのが人件費に響いて来るんだな…といらぬ心配をしても仕方がない。
「ちょっとそこの店員ー」
「はーい」
 プライズコーナーから男の声。どうやら彼女にぬいぐるみをあげたいらしい。だけど100円も突っ込まない
うちから「位置変えて」と言われても、こっちとしても商売が成り立たないっての。
「すいませーん、動かせないんですー」
「何だよケチくせーな」
 何で見知らぬ他人をすぐに罵倒できる人間がこんなにも多いんだ。愛想笑いだけして、別の場所で呼ばれた
ふりをしてその場を去る。
 未だに接客は慣れない。愛想笑いは最近ようやく板についてきた。それまでは「山田くん、顔が硬いよ」な
んて店長にずいぶん注意されたもんだけど。
 今日の出庫表を見ながら、メダルの売り上げをチェックしたり、減ってきた景品を足したりする。だいたい
ここの景品設定が辛すぎるんだよ。少しでも甘くしたら店長より上の社員が飛んできて怒るし、安物しか入れ
ないし、こんなんだから売り上げが伸びないんだ。
 あー、早く帰ってこないだ買ったばかりの無双やりてー。本当はここにもある某ガンダムシリーズも実機で
プレイしたいし、あの音ゲーの新作も気になる。あと新しく入ったキャッチャーのアーム調整もしたいなー…
とにかくゲーム機に触っていたい。
 結果、ゲーセンで稼いだ給料を新作ゲームに注ぎ込むという、なんとも偏った循環を毎月繰り返してる。
 だけどここで遊ぶと常連の客や同じバイトの連中から絶対なんか言われるから、いつもは隣の市の無人ゲー
センまで行く。その為にバイクの免許も取った。

632:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:50:20 pVXJkjPK0
 ゲームはもっと面白くあるべきだし、それを提供するゲーセンも面白くあるべきだと思っている。だけどそ
こまで色々できないのがバイトの悲しい所。てかそこまでしないといけないんだったらもっと時給上げてくれ。
「いやっほーー!!」
 おーおー、さっきの高校生が大当たりしてるぞ。メダルをジャラジャラ、すくっては落としすくっては落と
し、もううるさいなぁ。
 まぁあの音は自分も好きだけどね。金属の匂いと手触りは癖になる。他店メダルを選り分けてる(違う店の
メダルは詰まりの原因なのだ)とだんだんハイになってくるのは自分だけみたいだけど。
「すっげー増えたっすよ兄ちゃん!」
「よかったですねー」
 さっきの集団の真ん中で、メインでプレイしていた茶髪の高校生がメダルバンクにメダルを預けにきた。最
近来るようになった客だな。こりゃしばらくタダで遊ばれるぞ。
「はい、おしぼりどうぞ」
 指紋認証付きの最新型メダルバンクは、指のちょっとした汚れで読めなくなるおバカな機械だ。仕方なしに
預ける前の客にはおしぼりを手渡しして、少しでもエラーが少なくなるように勤めている。まぁ、これをやっ
てるのは自分だけなんだけど。
「えっ、あ、サンキューっす!」
 よしよし、きっちり手を拭いてから、ちゃんと預けろよ。
「ねぇ兄ちゃん、これどーやるんっすか?」
 こないだ教えたばかりだろ…とはさすがに口に出せないから、一から説明をする。番号を入れて、名前を打
ち込んで…毎回同じ事を聞いてくる客ばかりなんだもんな。さすがに覚えてくれよ。
「よっしゃ!1000枚越えたぜ!」
 カウンター部分に表示された数字に一喜一憂する高校生。このゲーセンでしか使えないメダルなのに、なん
でそこまで熱くなれるんだろう…自分も全キャラLv100に情熱を注いだりするから一緒か。

633:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:51:09 pVXJkjPK0
「ありがとうございましたー」
 友達と談笑するあの高校生を見送って、カウンターに戻る。まだおばちゃんは戻ってきていない。
 最近、仕事以外で他人と口をきいてないなぁ。ていうか笑ってないなぁ。
 高校の友達も働き始めたら縁遠くなった。前の職場の同僚も連絡なんて取り合ってない。何でもかんでも一
人が気楽だ。ネット上で匿名でやりとりもなんだか疲れるから、もっぱら読むだけだし。
 悲しい事に来年で自分は魔法が使えるようになるらしい…月日というのは恐ろしいものだ。いや、考えない
ようにしておこう。
 さっきの高校生達の様に、昔の自分もあんな風に笑っていたんだろうか。

 最悪だ。
 メダルバンクが壊れた。
 修理にひと月もかかるらしい。
「兄ちゃーん!俺のメダル出してちょー!」
 あぁ、また来たよあの高校生。てか今の時期はテストだろ。勉強どうしたんだよお前。
「…はい、名前と番号」
 その間メダルの預け入れはバイトが行えと社員様のご指示だ。
「えー。もう覚えたっしょ?」
「だめです決まりなんで」
「ちぇー。30番!大谷寛太!200枚でお願いしまっす!」
「はいはい」
 幸いメダルバンクの情報は個人情報なんとやらで、端末に保存してある。小学生がちまちま10枚20枚引き出
すのも鬱陶しいけど、そんなに大声でいちいち名乗るな。聞こえてるっつーの。
「はい、200枚ね」
「おまけしてくれたり?」
「そんな事は行ってません」
「ちぇー。まぁいいや」
「カンちゃーん!この台良さげだぞー!」
「今行くってのー!」
 メダルがたっぷり入ったカップを意気揚々と持って行く高校生。あー、そこの台は当りが増えたけど落ちに
くくなってるぞー。まぁ今のメダル量とトントンだろう。

634:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:51:47 pVXJkjPK0
 こんなときに限って他のバイトの連中は別のフロアに居るし…いや、たぶんこれは押し付けられてるな。端
末のデータ消されるよりましだと思っておこう。
「山田くん、ちょっと」
 うわ、店長だ。
「くん、お客さんにメダルのおまけとかしてない?」
「は?」
「なんかねー、そんな話を聞いたもんだからさ」
 誰だそんなこと言う奴は。
 てか時間外にメダル持ち出して遊んでるバイトが居るのは知ってるぞ。
「そんなこと、するわけないじゃないですか」
「まぁ、私も山田くんの事は信用してるからね。なんたって数少ない長期バイトだし」
 そういえばバイト同士で派閥みたいなもんができてるらしくて、なかなか新規のバイトが長続きしないって
前言ってたな…自分は終わったらすぐに帰るから知らないけど。
「あと、お客さんとあんまり親しくなりすぎないようにね」
 …さっきの高校生の事だな。あれはあっちが勝手に話しかけて来るんだ。
「気をつけます」
 店長は自分の返事に満足したのか、バックヤードに戻って行った。発注の最終確認や集金なんかをとり行っ
てる店長だから、売り上げに響きそうな事は気になるんだろう。
 あー、しかし嫌だな。そんな噂流されてるなんて。だから他人と慣れ合うのは嫌いだ。裏で何言ってるかわ
からない。
 …でもちょっと、あの高校生がうらやましい。あんなに楽しそうにゲームしてる。細かい探り合いとか押し
付け合いとかせずに、友達と遊べるなんて。
 学生の頃から生粋のゲーマーだったから、週末はよく友達と集まってゲームしていた。あの時のメンバーは、
今はどうしてるんだろう?
「おいそこの!」
「はっはい!?」
 突然の大声。思わず変な声が出る。声の先にはだぼだぼのパーカーに身を包んだいかにもな男がメダル機を
叩いている。
「お客様、機械は叩かないでいた…」
「うるせぇ!500円も注ぎ込んだのに全然出ねぇんだよ!!」

635:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:52:10 pVXJkjPK0
 おいおい500円じゃパチンコだって当らないっての。
「俺の金返せってんだよ!!」
「いえあくまでゲームですので…」
「いいから返せってんだよ!!それかメダル1000枚よこせ!!」
 うわー…なんという自分勝手な理論。これがいわゆるDQNってやつだな。って、冷静に分析している場合
じゃない。
「いえそのような事は行ってませんので」
「あんだとゴルァ!?お前俺がどこの人間か分かって言ってののかゴルァ!?」
 知りません。帰ってください。…って、言えたらいいなぁ。うおう、こっちに近づいてくるな!こういう場
合はできるだけ卑屈にならずに、だけど穏便にすませないと…そうだ店長呼ぼう!こういうときの店長だ!
「何キョロキョロしてんだよお前!?」
「いえ、ですから!」
 おいおい他のバイトの奴居ないのかよ!逃げただろ絶対!連絡入れてくれよー!
「うわー!カンちゃんすげーなー!」
 必死に踏ん張る自分の耳に、場違いなほど明るい声。
「俺はメダルの天才だっつーの!こんなもん楽勝よ!!」
 振り向くと、さっきまでDQNが座っていたメダル機で、あの高校生がメダルを出しまくっていた。さすが
に慣れているだけあって上手い。
「こんなにおいしい状況なのに、マジもったいねー!」
 おいおい挑発してどうすんだ!?DQNそっち向いたぞ!?とか思っていたら、ちらっと高校生が自分を見
た。え、何?!もしかして、助け舟出してくれてんの?!
「このガキィ!俺の台だぞそこは!!」
「え?おっさん席空けたっしょ?」
 高校生はまだまだメダルを出し続けている。さすがにDQNも気分が悪くなったらしく、自分から視線が外
れた。今だ!!
 すかさずカウンターに戻って内線電話を入れる。
 そしてすぐさまやって来る店長。
「……お客様、他のお客様に迷惑になります。止めていただけますか」
 おお流石店長!DQNがビビってるぜ!そりゃ180もある大女(失礼)に威圧されちゃたまんねぇよな!!

636:チャラ男×ゲーオタ店員
09/08/09 01:54:50 pVXJkjPK0
「けっ!覚えてろよ!!」
 うわー、本当にあんな台詞を吐く人間なんて居るんだ…。
「山田くん、大丈夫?」
「はい…すいません、ありがとうございます」
「いやよく頑張ったね山田くん。最初の頃の君だったら今のきっとまずかったかも」
 そ、そうなのかな…。
「うんうん、それでもうちょっと笑顔があったら完璧なんだけどな」
「がんばります…」
 店長はひとしきり人の頭を撫でてから、バックヤードに戻って行った。今度から姐さんと呼ぼう。心の中で。
 ていうか、さっきのは完全にあの高校生に助けられてしまったな。あんな気の引き方したら、自分にも降り
掛かってくるかもしれないのに。
「兄ちゃん、マジ大丈夫?」
 おわ!そう思ってたら本人が!!いつの間に横に。メダル機は?って、友達がプレイしてるのか。
「嫌だねーあんな客。俺の方がもっといいお客だっつーの。なー兄ちゃん!」
 うぉっ、まぶしっ!ってな具合の笑顔。これが若さか…。
「…危ないから、あんな真似はしちゃだめだぞ」
「えー?何で?」
「お客さんを危険な目に遭わせないために、僕たちスタッフがいるんだから」
 客同士のトラブルなんて、一番起きて欲しくない。噂がすぐに広まるし、客足にも影響する。そんなことに
なったらギリギリで運営してるうちなんてすぐに潰れてしまう。
「ふーん。なんかよくわかんないけど、わかった」
 そうしてまたメダルゲームに没頭し始める高校生…本当に分かったのかアイツ。ていうか、あんな良さげな
顔してる癖に意外と気が強いんだな、あの大谷って子は。

--------------------
勢いに任せるまま書いた。正直心の中で喋りすぎだよ山田。
ここからお家で一緒にゲームか、>628が言ってくれた1人でもゲーセン通いしはじめるかで悩んでる。

637:風と木の名無しさん
09/08/09 03:05:05 ObTxFiTMO
>>636
ぎこちない関係がもどかしい、だがそこが良い!!
お家でプレイでも職場でプレイでも美味しいです…
わっふるはいかがですかっ!!
(*´∀`)⊃#####)Д`)

638:風と木の名無しさん
09/08/09 14:07:39 st66iy3j0
わっふるわっふる!!

639:風と木の名無しさん
09/08/09 15:45:20 EwYRPHVM0
わ…わっふるわっふる!!

640:風と木の名無しさん
09/08/09 17:10:04 02j93L1T0
圧迫感があふれる最低職場の描写が秀逸だな。
こういう最低な状況だからこそ、人の優しさが一際目立つ。
店長が女っていうのに驚いたがwわっふる

641:風と木の名無しさん
09/08/09 18:24:28 B6hQnmW90
わっふるわっふる!!

642:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2
09/08/09 20:23:46 pVXJkjPK0
>>629のチャラ男改めチャラ系高校生×ゲーオタ店員を投下した奴です。
まさかこんなにわっふるしてもらえるなんて思ってもみなかったんだぜ…

いただいたわっふるを山ほど食べたら続きを受信したんで、投下しておく。
(高校生がゲーオタより頭半分ぐらい背が低い事を念頭に置いてほしい)

643:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2-1
09/08/09 20:25:22 pVXJkjPK0
 出勤前に店長から電話があった。
「え?僕がですか?」
 ……誰だー!!我が愛する某9ボタン音ゲーのボタンを叩き割った奴は?!
 今日はいつも勤務している社員が全員休みで直せる人間がいないらしく、暇さえあれば機械ばっかり触って
る自分にお鉢が回ってきた。壊されたのは自分が無双で「俺TUEEEEEEEEEEE!!」とトリップしていた昨日ら
しく、部品はすでにメーカーから届いているらしい。
 店長の「せっかくだから、今日は機械メンテにかかりっきりになってくれない?」という言葉に、ちょっと
ウキウキしながら出勤した。
 今日は平日水曜日。大体この曜日は客が少ないから、好きなだけ機械を触れるし、接客もしなくていい。
 店について制服に着替えて、すぐに音ゲーコーナーに移動する。もちろん部品と工具を持って。
「これはひどい……」
 思わず声に出してしまうくらい、ボタン全部が割られていた。すでに警察には届けてあるらしい。
 なるほど、ちょうど監視カメラから死角気味なこの機械が狙われたんだな。
 思い通りに演奏できないからって、どっかのバカが腹いせに壊したんだろうな。ああ、機械を大事にしない
奴なんて大嫌いだ。
 この機械自体も何度か開けた事があるから、どの辺りを外せば交換できるか大体見当がつくし、なにより交
換についての詳しい手順はちゃんと説明書に載ってある。
 ページを開いた説明書を近くの床に置いて、扉を開けて電源を落とし、ボタンのパネルを外した。
 客の少ないフロアには、気分を盛り上げるために作られたメロディが響いている。ゲーム用に吹き込まれた
名も知らぬ声優の声、何かの銃声らしき音、メダルがどこかで落ちる音。そのどれもが「遊んでくれ」と言わ
んばかりだ。
 誰かに遊んでもらわないとゲームはゲームとして成り立たない。どのゲーム機もそう願って誰かに造られた。
 こんな事をずっと思っているから、どんなゲームでもとことんやり込みたくなるし、その仕組みを知りたく
なる。たぶんそんな事を考えながらゲームをする人なんてほとんどいないだろう。
 だから自分だけでも、ここにあるゲーム機を大事にしていたい。くたくたになるまで遊ばれて、それで役目
を終えさせてあげたい。こんな傷ぐらいでへこたれるなよ。


644:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2-2
09/08/09 20:25:57 pVXJkjPK0
 ぶっ壊れたボタンを一つ一つ外して袋に包み(証拠として置いとくらしい)、届いたばかりのピカピカのボ
タンに付け替える。
 とりあえず1つだけ線を繋いで、動作確認。うん大丈夫。配線交換の必要はなさそうだ。
「すっげー!!」
 なんか背後で聞いた事ある声が……。
「こんな機械直せんの!?兄ちゃんってすっげーな!」
 大谷くん?!何でこんな平日の午前に高校生が1人で!?
「……学校は?」
「自主休講の日だし」
 それはサボりというのだよ。サボりと。
「へ~、中ってこんなになってんだ」
「コラ!危ないから覗き込まない!」
「兄ちゃんだって覗いてるじゃん」
「僕は仕事中」
「ここの機械直すのが、兄ちゃんの仕事?」
 いつもは社員がやってるんだけど、今回は特別…なんて説明しても仕方ないか。
「そうだよなー。エラーもメダル詰まりも兄ちゃんが直すの一番早いもんなー」
 あんなの奥の方じゃなければすぐ直るし……って、何でそんなに見てるんだ。
「他のボタンも全部付け替えんの?」
「ああ、そうだよ」
「ふ~ん」
 とか言って、機械から離れたものの、ずっとこっちを見ている。
 まさか全部付け替えるのを見ているつもりか?!うおお!やめてくれ!恥ずかしすぎて手元が狂う!
「…見てても面白くないよ」
「面白いって!だって俺こんなの何がどーなってるのかわかんねーもん!」
 どうやら大谷くんは全然ここから離れる気がないらしい。せっかく1人で黙々と機械を触れるかと思ったの
に…だけど邪見に扱うわけにもいかないし…。
 ええいとりあえず9ボタンに罪はない!さっさと直してしまおう。

645:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2-3
09/08/09 20:26:33 pVXJkjPK0
 大谷くんの声は無視。残りのボタンを付け替えて、配線チェック。よし、おk。
「ひゃー!はえー!」
 電源を入れ直して、テストモードに切り替えて、ボタンの押し具合を確認。これもおk。
 たしかこれで一曲だけテストプレイができるはず。どうせなら難しい曲でも入れてみるか。
 おー、アーケード版は久々だな。これは一世代前だから、この曲にしよう。
 耳慣れた音楽と音玉が落ちてくるのを見ながら、できるだけ静かに叩く。みんな強く叩きすぎなんだよね。
「……うわ」
 …スコアはBADが2か。久々だったからイマイチだな。
「何今の!?何であんなに叩けんの!?なぁもう1回やってよ!」
「やりません」
 言いながら機械のドアを閉め、工具を片付けて、部品の入っていた段ボールに壊れたボタンを入れて、さて、
他の機械もメンテしよう……って、うわっ!
「俺全然なんだよこれ!何かコツあんの!?」
 こらこらこらこら!なぜそこで横から抱きつくんだ高校生!?離してくれっ!!
「教えてくれるまでぜってー離さねーから!」
「ちょっ!わかっ、分かったから、離れなさい!」
 引きはがすようにして大谷くんから離れる。
 あーもー、心臓バクバクしてる…人に触られるのは慣れてない。
「で、どうやんの?どうやんの??」
 そんなおあずけ食らってる犬みたいな目を向けないでくれ…。
「…音玉は目で追わない。何度も聞いて、そのタイミングを覚える」
「んな無理だよー」
「無理じゃない。練習すればいいんだから」
「練習とかー、無理だって」
「慣れだよ。君だってメダルゲーム上手いじゃないか。あれもタイミングを覚えたんだろ?」
「あー、そういえばそっか…」
 大谷くんは何か分かったような顔をして、ふんふんと一人で相づちを打った。
「もうこれプレイできる?」

646:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2-4
09/08/09 20:27:15 pVXJkjPK0
「大丈夫だよ。いつでもどうぞ」
 いつもの癖で機械に手を向ける。大谷くんはワイシャツの袖をめくり上げてコインを投入した。
 これでしばらくは見られないですむな。よし、他の機械のメンテもしてしまおう。

 途中ちょっと休憩を入れたけど、これで全部の台の掃除とメンテが終わった。もうすぐ交代時間だ。今日は
これで帰れるぞ。あぁ、いつもこんなんだったらいいのに。
 つーか本気で誰も中を掃除してないとは…手が真っ黒だし機械油臭い。多分顔も汚れてる。とりあえずごし
ごしと肩口で顔をこすってごまかした。これで大丈夫だろ。
「兄ちゃん!兄ちゃんってば!!」
 おいおい大谷くん、まだ帰ってなかったのか君は。てか何で汗かいてんだ?
「見てよ俺のスーパーなプレイを!」
 自分で言うなよ…。どうやら、小遣いを注ぎ込んでずっとプレイしていたらしい。うんうん、その気持ちは
よくわかる。自分も家庭用コントローラーを買ったけど、アーケードでプレイしたくなるもの。
「どれどれ?」
 もうすぐ帰るし、少しぐらい見ていっても別に大丈夫だろ、客も少ないし。今日は売り上げ少ないな…。
「行くぜぇ!!」
 大げさに腕を振り上げて、大谷くんはノリノリである。あ、さっき自分がプレイしたのと同じ曲だ。
「ちゃっちゃらっちゃーん♪」
 歌いながらするのは正しいプレイだ(と思う。自分も歌うから)。タイミングばっちりだし、リズムもよく
取れてる。何よりもボタンを柔らかく叩く所が素晴らしい。
「……どうよ!?」
 フィニッシュポーズを決めてボタンを叩き終わる大谷くん。スコアはBADなしの高レベル。これはこの曲だ
けかなりやり込んだな。
「やった!最高得点ゲット!」
「おおー…」
 思わず歓声が出てしまう。大谷くん画面の中にいるキャラクターと同じように踊りだした。
 しかしメンテ中に一瞬チラ見した時より上手くなってる。
 さすが音ゲー好きだけあるな。リズム感が良い。

647:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2-5
09/08/09 20:27:46 pVXJkjPK0
「兄ちゃん!マジでありがとな!!」
「ちょっ…!?」
 こっ、こら!また抱きつくんじゃないっての!
 慣れない他人の体温に全身がむず痒くなった。周りに誰もいないけど恥ずかしい!やめてくれ!
「俺このゲーム大好きなんだけど、学校の奴ら全然キョーミねーの!だからすっげー嬉しかった!」
 あー、そうなのか。だから1人でプレイしにきたんだな。いつもはこの時間帯に来るもんな。
 てかそんなにホールドされると痛い!苦しい!
「わかった!わかったから、離れなさいっ!」
 今度は手が真っ黒なので相手を押しのける訳には行かずおたおたしていたら、突然腕の力が緩んで胸元に大
谷くんの顔が押し付けられた。
「兄ちゃんって…」
 うおお!いき、息が、胸にっ!って、相手は男子高校生だ。何をドキドキする必要があるんだ!落ち着け、
落ち着け自分!
「メダルの匂いがするんだなー」
 は?メダル?そりゃまぁ今機械山ほど触ってきたところだし……てか今そんなに金属臭い?
「今日はすっげー楽しかった!ぜってーまた来る!」
 やっと離れたかと思ったら、びしっとひとさし指を指されてされてそう宣言される。お前はハ○ヒか!
 そのテンションは確かに似ていない事もないが…。
「だから、またコツとか教えてくれよ!」
 返事をする間もなく、あっという間に走り去っていく高校生。残されたのは、未だに心臓がバクバクいって
る自分と騒がしいゲーム機達。
 今時の高校生はあんなにスキンシップが好きなのか…?
 うーん分からん!分からんぞ自分には!

648:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その2
09/08/09 20:36:12 pVXJkjPK0
ここまで一旦終了。
ゲーセン大好きなんで描写が細かくなってしまい、読みづらくてすまん。
その3は多分高校生くんのゲーオタお宅訪問になるかも。まだわからんけど。

ゲーオタは金属や機械、設計全般が好きで、RPGツクールとかやり込むタイプだと思う。
んで誰にも見せれず悶々とするという。

649:風と木の名無しさん
09/08/09 21:34:33 587S7Sgr0
メダルの匂いの兄ちゃんに禿げた!!

わっふるわっふる!!

650:風と木の名無しさん
09/08/09 22:19:43 8e02IYmy0
ものすげえ萌えた
ありがとわっふる

651:風と木の名無しさん
09/08/09 22:51:17 9NyTr6ga0
…禿げちらかした
わっふるわっふる!!お宅訪問楽しみに待ってる!!

652:風と木の名無しさん
09/08/09 23:42:47 BP4vofd+O
>>628ですが萌えすぎて禿げました!

わっふるわっふる!!!!

653:風と木の名無しさん
09/08/10 08:44:11 cK2kDug60
>>648
ゲーセンに対するオタの愛情がひしひしと感じるぜ。
初々しい関係に萌え。
わっふる、わふるぅうううう!

654:風と木の名無しさん
09/08/10 14:19:39 vIcaitjB0
お茶とわっふるのサービスですよ!!
(*´∀`)⊃旦♯旦♯旦♯旦♯)Д`)

655:風と木の名無しさん
09/08/10 20:27:28 cjTLeABLO
ひー!
禿げた禿げたww
わっふるわっふる

656:幽霊×ヲタ
09/08/12 00:49:11 iRsh3+Jf0
遅れすぎたんで一応大まかな今までのあらすじ!

大学中退、晴れて二十歳からヒキニート生活に踏み出したオレ、比喜新斗!
毎日gdgdで腐った生活を送るオレ。過去も未来も現在も見えない知らない見たくもない。

そんなオレがいつものようにニヨニヨとネトサをしていたその時!
急に「天使に追われてるんだ!」なんて、厨なリア充が現れた!
しかもそいつはどうやら幽霊らしくて…?

そして冷たく追い返そうとしたら逆鱗に触れてしまったオレ!
これからどうなっちゃうの!?


かなり遅れたけど最後のお目汚し!

657:幽霊×ヲタ14
09/08/12 00:51:29 iRsh3+Jf0
ぎりぎり、掴まれた手首が嫌に軋む。
嘘だろ。幽霊って言ってたじゃん。なんで触れるんだよ。さっき触れなかったのに。
ああくそ、ほっぺた痛え。強いんだよ馬鹿。非力なヒキニートを殴るな馬鹿。

抵抗したってこの筋肉も何もない身体じゃ何も出来やしないだろう。
分かってるけど無駄な抵抗を試みてしまうのは、リアルに殺られそうな雰囲気をこいつが纏っているからなのか、


「……俺は、俺はッ、」
「……ッ、ぐ、……、…」


やべえ、息が詰まる。なんだこれ。なんだこれ。なんなんだよこれ。
魔法?幽霊が魔法を使ったって?はは、ファンタジーじゃねえんだぞ畜生。
痛い痛い痛い。苦しい。痛い。嫌だ。嫌だ―

―死にたく、ない、


「…ッ、ぅ、え、ッ……、」


視界が滲む。
オレは、泣いて、る?

…嫌だ。嫌なんだよ。
いくら今まで腐りきった生活をしてたからって、日々に絶望してたからって、こんな死に方したくない。
未来が見えなくても過去に縛られてても、絶望したふりしてても、オレはまだ、それでも生きてたいんだよ。
抜け出すまでは、それまでは、まだ――、

658:幽霊×ヲタ15
09/08/12 00:52:39 iRsh3+Jf0

「…やだ、……いやだ…ッ!」


首を振って全身全霊の力を込めて幽霊を振り払おうと抵抗する。
涙が頬を伝って、敷きっぱなしの湿っぽい布団を更に湿っぽくした。
ひんやりと体温の低い幽霊の手を震えた手で掴む。
動かない。

―ああ、やっぱりオレには、オレは、いつまでも非力なまま、



「――ッ、!」



諦めに飲まれかけたその時、不意に、ばっ!と、幽霊がオレの身体から飛びのいた。



「ッ、げほっ、…、……は、ぁ、…、」
「ご…ごめ、ごめん!!大丈夫!?」


さっきまでのあの形相はどこへやら、眉をハの字に下げて幽霊は俺を抱き起こす。
そして背中をさする優しい手。


「…ッ、ぅ、……っく、ひっ、……ぅぇッ、」
「ごめん…ごめん…!!俺、なんてこと…」

659:幽霊×ヲタ15
09/08/12 00:53:14 iRsh3+Jf0
混乱した頭で、涙を止める方法も分からないまま、ただ俯いて泣きじゃくっていると、ぎゅうと暖かく抱き締められた。
頭をゆるく撫でられて、もうどうしようもなく、訳の分からない嗚咽が込み上げる。


「ごめ…ごめんな、……泣かないで、新斗、」
「っ、……ぅう、ッ、……、」


怒りやら恐怖やら悲しさやら安心やら、もう色んなものがごっちゃごちゃで、


「……ほんと、ごめん」


ちゅ。
額に、キスがひとつ。


「…………は、…!?」


おまえおまえ、おまえ、いま、なにを、


「泣きやんで、」


勢いよく顔を上げたオレに、その言葉と共にもうひとつ、キスが降る。
今度は唇に。


「ばッ―!!!」

660:幽霊×ヲタ17(前の16だった)
09/08/12 00:54:18 iRsh3+Jf0
今度こそ、思い切り幽霊を突き飛ばして、口をすごい勢いで拭う。
なにすんだこいつふざけやがって!市ね!いやもう死んでるけど!市んでしまえ!
畜生オレのはじめてが!かわいいおにゃのことを毎晩毎夜夢見てたのに!
何故!何故男と!しかも幽霊と!死んだ方がマシだ!…いや死にたくはないけど!

あまりにもあんまりな事態に、一瞬止まった涙がまた溢れてくる。


「な、なんで余計に泣くんだよ!?」
「うっせーばか!しね!まだ見ぬはじめてのときめきを返せ!うわあああん」
「え…ごめ……泣き顔見てたらついちゅーしちゃったっていうか」
「ばか!うんこ!」
「…え、てか、……はじめて、だったの?」


ぴたっ。
オレの動きが止まる。

ち、畜生墓穴を掘った。あまりのショックとはいえ、こんな奴にキスすらはじめてだなんて事を知られてしまうとは!
一生の不覚どころじゃねえ。穴があったら入りたい!
…へへ、知ってるさ。お前みたいな(生前)リア充なんてどうせ童貞卒業は10代のうちにだろ。
そんなのファンタジーの世界だとしか思えないオレとは全然違う、目くるめく素敵世界を生きてきたんだろ。
ばーかばーか!羨ましいに決まってんだろそりゃあ!


「……黙ればか!帰れ!オレはもう寝る!」
「や、ちょ、待っ…」

661:幽霊×ヲタ17(前の16だった)
09/08/12 00:54:55 iRsh3+Jf0
ぐだぐだと何かを言おうとする幽霊を尻目に、オレは布団に潜り込んだ。
ああくそ、涙のにおいがする。泣いたのなんていつぶりだよ。
とにかくこんなのは悪い夢だ。悪夢悪夢。素晴らしい悪夢。
だからきっと、明日目が覚めたらきっと、いつもみたいに透き通るような腐った日々が――





――来るはずだった。いや、来て欲しかった。心からそれを望んでた。
神様や正義のヒーローがいるなら、どうしてオレを助けてくれないんだ。
助けを待っても、オレに手を差し伸べてくれるような人はいつだっていなかった。

…今日だってそう。

悪夢だったのに。幽霊だとかファーストキスだとか、そーゆーのはただの悪い夢だったのに。


オレのマイスウィートパソ子の前でうんうん唸りながら恐々とキーボートやマウスをいじっているのは誰だ。


「……うーん、わっかんねえなあ…ダウンロードボタンとか分かりやすいのあればいいのに…」
「…おい」


寝起きのもっさりした声でその背中に声をかけると、そいつはびくんとオーバーなくらいに肩を震わせた。
そして、ゆっくり、ゆっくりとオレを伺い見る。

662:幽霊×ヲタ19(前の18ry)
09/08/12 00:55:27 iRsh3+Jf0
ぐだぐだと何かを言おうとする幽霊を尻目に、オレは布団に潜り込んだ。
ああくそ、涙のにおいがする。泣いたのなんていつぶりだよ。
とにかくこんなのは悪い夢だ。悪夢悪夢。素晴らしい悪夢。
だからきっと、明日目が覚めたらきっと、いつもみたいに透き通るような腐った日々が――





――来るはずだった。いや、来て欲しかった。心からそれを望んでた。
神様や正義のヒーローがいるなら、どうしてオレを助けてくれないんだ。
助けを待っても、オレに手を差し伸べてくれるような人はいつだっていなかった。

…今日だってそう。

悪夢だったのに。幽霊だとかファーストキスだとか、そーゆーのはただの悪い夢だったのに。


オレのマイスウィートパソ子の前でうんうん唸りながら恐々とキーボートやマウスをいじっているのは誰だ。


「……うーん、わっかんねえなあ…ダウンロードボタンとか分かりやすいのあればいいのに…」
「…おい」


寝起きのもっさりした声でその背中に声をかけると、そいつはびくんとオーバーなくらいに肩を震わせた。
そして、ゆっくり、ゆっくりとオレを伺い見る。

663:幽霊×ヲタ20
09/08/12 00:56:52 iRsh3+Jf0
「…何をしてる」
「…い、いや、その、」
「オレは帰れと言ったはずだ」
「…か、帰れないって、言ったよ」
「言ってない。言ったとしても聞いてない」
「ひどい!」
「どっちがだ」


昨日のすったもんだを思い出して眉間に濃いシワが寄る。
畜生。モヤモヤする。胸焼けがしそうだ。

のっそり布団から這い出て、パソコンで何をしてたのか確認しに行く。
データ消したり壊したりワンクリ引っかかったり、とにかく変なことしてたらただじゃおかねえ。
(…もっとも、何か出来る力はオレには無いがな)


「あ、ダメ、ダメだって!見ないで!」
「ふざけるな。オレのパソコンだ」
「ああああ」


画面を見る。
……なんだこのワンクリ詐欺臭ぷんぷんのエロサイト。何見てんだこいつ。幽霊の分際で!
マウスを操作してひとつ前のページに戻る。
…ぐーぐる先生だ。検索ワード「ネコ耳 メガネ メイド エロサイト」。

…………頭痛がする。


「……お前、人のパソコンで何エロサイト巡りしようt」
「―違う!!」

664:幽霊×ヲタ21
09/08/12 00:57:49 iRsh3+Jf0
予想外に大きな声で否定されて、情けなくもびくっとしてしまう。


「あ、ごめ……ちが、違うんだよ、俺はただ、」
「……ただ?」


もじもじと言葉を迷っている幽霊。早く続きを言え続きを。


「…その、昨日の、お詫びに、……えっちい動画とか、すきだと、おも、って、」
「…………」


オレ、まさに絶句。

昨日のお詫び、…だと?
……昨日のアレをすまなかったと思ったこいつは、オレにお詫びの品を捧げようと思ったと?
そして考え抜いたお詫びの品がエロ動画だと?


「……笑わせるなぁあああああ!!!!」
「うわあっ」
「おま…おまおまえ!オレがそんなにエロ動画好きだと!?ふざけるのも大概にしろ!」
「い、いや、だって、ごめ、」
「帰れよばかー!もうオレ嫌!いつものヒキニート生活に戻りたいの!」
「も、もう本当に何もしないから!真面目になるから!お願いここにいさせて!」
「こんだけ断ってるんだから他の所へ行けよ!お前を受け入れてくれるようなビッチの所にでも!」
「びっち?てナニ?」
「うっせばーか!うんこ!」

665:幽霊×ヲタ22(ラスト)
09/08/12 01:00:11 iRsh3+Jf0
―くそ、何言ったってこいつはもう帰らないような気がしてきた。
なんだってオレはこういう面倒くさい奴に絡まれる体質なんだ畜生!


「あ、そういえば言ってなかったけど、俺、高橋怜って言うんだ、よろしく」
「誰がよろしくするか!幽霊で名前もレイってか!笑わせるな!」
「あ、言われてみればそうだ」


あはは俺ダジャレ幽霊だね、なんて呑気に幽霊、もとい怜は笑う。
このリア充幽霊、今日こそは追い出してやる!



―――――

長々と完結せずに失礼しました・・・
これで一応完結!
天使(敬語ドS)が降臨してすったもんだするのも書きたかったけど長いので抹消!

666:風と木の名無しさん
09/08/12 01:29:06 2dI9PX4jO
携帯から失礼、
>>661>>662二重投稿スマソ/(^O^)\

667:風と木の名無しさん
09/08/12 01:38:48 /lkAE5R0O
むしろわっふる!!!!
二人とも可愛いすぎる

668:風と木の名無しさん
09/08/12 02:04:17 B1bGm91oO
>>665
続き投下ktkr!!!!
嬉しさのあまり他スレにゴバークしてしまうほどの萌破壊力…
これは天使さんにwktkぜずにはいられませんよ

669:風と木の名無しさん
09/08/12 18:04:03 lhEayynO0
>>665
完結乙です!
結構想像を掻き立てられるラストだったよ。
ちょっとおバカなリア充幽霊に萌へ

670:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3
09/08/13 01:22:47 8Y/HQM9C0
>>665
幽霊×オタ待ってたyo!
完結乙です!絡まれる体質のオタかわゆすw

しかしなんというわっふる責め…。
おかげさまでチャラ系高校生×ゲーオタ店員が一応完結。
わっふるいただいた皆の期待に答えられるかどうかはわからないが、投下させてもらうぜ!
相変わらず長文ですまん…今回一番長い。

671:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-1
09/08/13 01:23:11 8Y/HQM9C0
 夏、まっただ中。
 今日は待ちに待ったモン○ン3の発売日!!!!!!この日が来るのをどんなに待ちわびた事か!!!
 楽しみすぎて過去作品4週もしてしまったぜ!!
 …おかげで寝不足気味なんだけど。
 この日のためにシフトは朝にしてもらったし(休みは流石に気が引けた)、早くプレイしたくて家の近所の
ゲームショップで1ヶ月前に予約までした。
 本体はもう準備してあるし、部屋も片付けた。お菓子もお茶もしっかり用意してある。
 ああもう自分はゲームでも現実でも魔法使いになっていい…って、このシリーズは魔法使い出てこないか。
 夏休みの真っ只中でうるさい客が多いけど、そんなことも気にならないぜ!早くバイト終わらないかなー…。
「今行くってー!」
 ん?今の声は…。
 あ、やっぱり大谷くんだ。夏休みに入ってからよく来るようになったなぁ。
 今日は友達と一緒にメダルコーナーに居るな。相変わらず楽しそうだ。
 でも音ゲーは本当に一人で来た時しかプレイしないんだなぁ。あれくらいの歳ならみんな音楽好きだろうに。
 まぁあんまりお金のかからないメダゲーが友達と一緒に遊ぶのにはちょうど良いんだろう。
 いやいや、何勝手に他人の考察してるんだ自分は。
 おっと、目が合ってしまった…いかんいかん、とりあえず手だけ振り返しておこう。

 いつも以上に時間が経つのが遅かったけど、やっとバイトが終わった。
 一目散に向かうはもちろん予約を入れたゲームショップ。もちろんバイクは安全運転で。
 いそいそとレジに並び、予約券と代金を店員に手渡して、立派な箱に入ったソフト(と限定フィギュア)を
受け取る。
 今日から狩りの日々が始まるんだなぁ。あぁ、楽しみだなぁ。
 他のゲーム棚もちょっとだけ冷やかしてから、入り口に留めてある自分のバイクへ向かう。
 んん?
 なんで、自分のバイクに誰かが座ってるんだ?
 留めてる場所間違えたかな?
「やっぱり、ゲーセンの兄ちゃん!!」
 …って!!
「大谷くん?!」


672:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-2
09/08/13 01:24:12 8Y/HQM9C0
「あ、やっぱり俺の事覚えてくれてたんだ。マジ嬉しー!」
 いやいやそこ喜ぶところなのか?!
「何で大谷くんがこんな所に?!」
「俺の家この辺なんだよねー」
 なっ!?
 ということは、同じ市内に住んでんの??
「バイク、チャリで追っかけるの大変だったんだよー。でもいつも学校行くのに使ってるルートだったから、
そんなに迷わなかったけど」
 あぁ、そういえばあの辺に大きな高校があるな。そこの生徒だったのかこの子…。
「今日の兄ちゃん、何かずっとウキウキしてたみたいだったから、気になって追っかけてきたんだー」
 なぜ今日に限ってそんなに感情だだ漏れなんだよ自分……orz
「あっ!それって!今日発売のヤツじゃん!兄ちゃんそのゲーム買ったんだ!」
 しまった、むき出しのまま手提げカバンに突っ込むんじゃなかった。
「なーなー!俺にもちょっとだけ遊ばせて!!俺このシリーズ全然やったことないの!!」
 ええい!店前で大声を出すな!うわ周りの人がこっち向いた。
「ちょっ、ちょっと声が大きいよっ…」
「お願いっ!」
 うう…これはOKしないとバイクからどいてくれそうにもないぞ。
 でもこないだ助けられた時のお礼とか、まだしてないしなぁ…。
「じゃあ、これを貸そう…返すのはいつでもいいから」
 まだ封も開けてないソフトを誰かに貸すだなんて…悲しすぎる。
「えー、俺本体持ってないから借りてもプレイできないよ」
 マ、マジですか????
 ということは、プレイしようと思ったら──

 なんという事でしょう。
「えいっ!たぁっ!!」
 他人なんてここ数年来た事のない我が部屋に、
「うわーっ!こいつ硬てっ!!」
 うちのゲーセンの常連客である高校生が居るだなんて!!

673:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-3
09/08/13 01:24:32 8Y/HQM9C0
 って、番組風に語っても仕方ない…来てしまったのだから。
 同じ市内に住んでいるだけだと思っていたら、なんと隣町のご近所さんだった。
 そういえば通勤で使う道沿いで「大谷」って表札の家があったような…よくある名前だからまったく気にし
た事なかったよ。
 幸い部屋は片付けていたもんだから、見られて困るような物は特にない。
 まぁ壁には有名どころの大作RPGポスターを貼りまくっているし、本棚には攻略本やらムックがたくさんあ
るけどね…あ、あと関連フィギュアも(クリーチャーを作れる人は尊敬に値する)。
 テレビに繋ぎまくった大量のハードに「兄ちゃんって、家もゲーセンなの!?」と驚かれてしまったけど。
 でももっと引かれるかなと思ったんだけど、意外とそうでもなくてよかった……。
 起動してからずっと大谷くんがプレイしているので、仕方なしに説明書を読みながらゲーム画面を見ている。
「あー!もう無理!兄ちゃんパス!」
 こら!キャラが死にかけてるのに操作を投げるな!受け取るけどさ。
 一旦戦線離脱しよう。キャラの体力とスタミナを回復させて、攻撃補助アイテムを選んで、武器の使い方を
確認する。動かし方は過去作品とほぼ一緒か。うん、これならいけるな。
「へー!そんな事できんだー」
 さっきのモンスターにコンボ技を決めたり、回避を繰り返していると、大谷くんが相づちを打ってくれる。
「がむしゃらに突っ込むとボコボコにされるからね」
 うわー、この感覚懐かしいなぁ。誰かとゲームしながら会話するなんて。
「兄ちゃんマジすげー!!」
 たかってくる小型モンスターを撃破。次は大型だな。
「何でそんなにスゲーの!?」
 それはね…魔法使い(予定)だからさ。なんて事はもちろん言わないが。
「コントローラーの操作に慣れれば、できるようになるよ。はい説明書」
「俺説明書読まないタイプだしー」
 読めよ!そこには作り手さんの思いがたっぷり詰まってるんだぞ!!
「…これが回避で、これがガード」
「ふんふん」
 他のモンスターを倒しながら、操作の説明をする。大谷くんは操作と画面を交互に見て確認。
「貸して貸して!」
 大谷くんが再挑戦することに。今度はさっきより動きが良い。


674:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-3
09/08/13 01:24:59 8Y/HQM9C0
「てやっ!たぁっ!!」
 アクションゲームは声が出るよねー、やっぱり。って、しみじみしてどうする。
「できたっ!」
 お、コンボが決まった。それだと大型も行けそうだな。
「うん、そんな感じ。それを今度は…」
「兄ちゃん、教え方上手いよねー」
「え?」
「エラーもすぐに直しちゃうし、ゲームもめっちゃ上手いし…」
 キャラクターの操作を一旦止めて、大谷くんがこっちを見た。
「もしかしてこの手に何か入ってんの?」
 こらこらこら!勝手に人の手を掴むな!
 画面内では武器を出したキャラクターが突っ立ったままだ。
「別に普通だよ…」
 肌荒れし放題の指先に節ばった間接、そんなの見ても仕方ないだろうに。
 でも大谷くんの手は柔らかいなぁ。何を触ってたらこんなに変わるんだろう。
 そこで、場違いすぎる流行りの曲であろう着メロが部屋に響いた。どうやら大谷くんの携帯電話らしい。
「おっと、メールだ」
 はー…やっと離してくれた。なんか手がぞわぞわして、思わず擦り合わせる。
「うわもうこんな時間じゃん!」
 大谷くんは携帯電話の画面を見て、大声を上げた。
「俺のセーブデータ置いといてね!また来る!!」
 おいおい勝手にセーブしちゃったよ……そしてまた来る気なのか。
「あ、そうだ!兄ちゃんのケータイってどれ?」
 何年も着信のない携帯電話なら、PCの横に放置してあるけど…。
「あった!ちょっと貸してね!」
 おいおいこらこら何をする!?電話同士をくっ付けたって、何かできる訳じゃ、
「これでおっけー」
 …赤外線通信なんて初めて見た。あーやって使うのかあの黒い部分は。
「へぇ、兄ちゃんてユーイチって名前なんだ」
 あぁ、そういえばそうだった。
 自分の名前なんて家族も最近呼んでくれないから、忘れてた。

675:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-5
09/08/13 01:25:35 8Y/HQM9C0
「じゃあゆー兄、またメールするからね!」
 バタバタと大きな足音を立てて、大谷くんはあっという間に我が家から出て行ってしまった。
 うーわー、これはもしかしたら、毎日来るフラグ?

 それから予想通り、大谷くんから「今日行っていい?」というメールが毎日届くようになり、返事をしない
と電話までかけてくるようになった。バイトのある日ない日に関わらず。
 自分は大谷くんとは別のキャラクターデータで新しくゲームを始めたので、スタート画面には2人のキャラ
が表示される。進めるスピードはもちろん自分の方が早い。
 躍起になってモンスターを倒そうとする大谷くんに、後ろから操作方法や先にクリアしてるモンスターの弱
点なんかを教える。
 今回は攻略本買ってないから、お互い手探りで進む場所も結構あった。
 休みの日には一日中一緒に居るようになるだなんて、誰が想像しただろうか……。
 でも、いつの間にか大谷くんと一緒に居ることに疲れなくなってきた。
 最初の頃はそりゃあもう嵐が去った後のような気分になったもんだけど、慣れというのは恐ろしいものだ。
 大谷くんからはいろんな話を聞いた。
 学校でどんな授業があるのかだとか、変な先生の話とか、友達との過ごし方だとか。
 自分からはあんまり話をしなかったけど、聞いて来る時は話した。小学校が一緒で、まだあの先生が働いて
る事にびっくりしたりもした。
 それでゲーセンにも普通に来るもんだから、大谷くんと顔を合わさない日はなかった。今が夏休みだからか
もしれないけど。
 最近は夏休みの宿題を持ち込んで、僕がゲームしてる後ろで宿題をしている。
 計算問題が苦手らしく、関数や方程式について聞いてこられたときはどうしようかと思ったもんだ(CGIを
かじった事があるから、何とか教えられたけど)。
 そういえば、うちの店長である姐さんが「対応うまくなったね」と褒めてくれたなぁ。
 なんだか前より接客に抵抗がなくなったなぁ。なんでだろう?

 そして、今日も今日とて、大谷くんは我が家に居る。
「ゆー兄、晩飯何食うの?」
 その呼び名、定着したのか…別にいいけどさ。
 大谷くんは宿題もほぼ終わったらしく、今は僕の操作するキャラクターの動きをずっと目で追っている。

676:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-6
09/08/13 01:26:12 8Y/HQM9C0
「サンマとみそ汁とご飯」
「俺も食べたーい」
「自分家で食べなよ」
「俺ん家今日誰もいないんだもん。コンビニ弁当飽きたし」
 コンビニ弁当は確かに飽きるなー。
 前の職場の昼飯がコンビニばっかりで、嫌になって自分で弁当作り始めたくらいだから。
「ていうか、今日泊めてよ」
「…君ん家はすぐそこだろ?」
「だから、誰もいないっての。そんならゆー兄と一緒に居た方が楽しい」
 おいおい自由奔放だな高校生。
 そんな会話をしているうちに、クエストクリア。今回は時間かかったな。
「へー、そうやって倒すんだ。俺もできるかなー」
「弱ったタイミングを覚えないとね」
 んで、本当に泊まる気ですか大谷くん?
「んじゃ、着替えとってくるー」
 本当に泊まる気だ……仕方ないなぁ、2人分の材料あったかな。
 2階の自分の部屋から1階に降りて、台所の冷蔵庫を覗く。
 あ、サンマが1匹しかない。
 仕方ない、上半身と下半身に分けよう。ご飯とみそ汁を多めにすれば足りるだろ。
 そんなこんなしているうちに大谷くんが戻ってきて、食事作りを手伝ってくれて、2人で晩飯タイム。
 BGM代わりに居間のTVは付けっぱなし。バラエティもドラマも気にしない。
 若いだけあってよく食べるなぁ。3合炊いたご飯がからっぽだ。みそ汁も残ると思ったのに一滴もない。
 しかもそんなに食べているのに、会話が止まらないとは…恐れ入る。
 その食べっぷりは見ているだけで気持ちがいい。
 ありあわせなのにそんなにおいしそうに食べてもらえると、作った甲斐もあるというものだ。
 食事もあっという間に終わって、洗い物も終わらせる。
 大谷くんが風呂に入っている間に、寝床の準備をしてしまおう。
 うわ、客用布団がしけてる。
 …というか、ハード置きすぎて布団を敷く隙間がない。置きすぎだろうjk…。
 うーん仕方ない、自分は1階のソファで寝るか。

677:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-7
09/08/13 01:26:45 8Y/HQM9C0
 両親は同じ家に暮らしてるけど、寝室は1階と2階に別れてるし、両方ともまだ仕事は現役だから、このバ
イトを始めてから本当に顔を合わさなくなった。
 だから今日、1階で寝ていたら驚くだろうな。まぁ飲み会で帰ってこない確率の方が高いけど。
「ゆー兄、風呂ありがとー」
 お、上がったな。入れ替わりに自分も入って、寝る時用の楽なシャツに着替えた。
 部屋に戻ると、ベッドの上でケータイを触る大谷くんの姿があった。着替えって、そのランニングと半パン
だけかい。あ、ゲームがデモ画面になってる。
「あ、おかえりー」
「…ただいま」
 何か変な会話だけど、気にしないでおこう。
「髪、乾かした方がいいよ」
「いいよほっといたら乾くから」
 まぁいいけどさ。とりあえずデモ画面から、スタート画面に切り替えた。
「続きする?」
「んー、ちょっと疲れちゃった。ゆー兄は?」
「僕もちょっと疲れたから、今日は終わりにする」
 なら仕方ない。今日も長い間電源が入っていたハードのスイッチを切る。はいお疲れさま。
 もう時計は深夜にさしかかっている。ハードの起動音も消えて、PCも付けてないから、部屋は一気に静か
になった。
「大谷くんはベッド使っていいから」
「え?ゆー兄は?」
「1階で寝るよ」
「ここで寝たらいーじゃん」
 …男2人にこのシングルベッドは狭いだろう。
「つめたら大丈夫だって」
 うーん仕方ない。大谷くんが眠ったら移動しよう。
「家族に連絡しないで、大丈夫かい?」
 ケータイでメールを打ち続ける大谷くんの横に座った。大谷くんはメールを打つ手を止めない。
「…別にいいよ」
 大谷くんの声が冷たく聞こえた。

678:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-8
09/08/13 01:27:16 8Y/HQM9C0
「俺が多少家に居なくても、誰も気にしないし。兄貴の方が期待されてるし」
 う、これは聞いちゃ行けない話だったかな…とりあえず、話を変えないと…。
「でも、ゆー兄があのゲーセンに居なかったら、俺こんなにゲーム楽しめなかったなー」
 え?どういう事?
「最初は友達に誘われて遊びにいったんだけど、ゆー兄がなんか、大事そうに機械の掃除?しててさ」
 まぁ暇さえあればずーっと機械触ってたからなぁ。特に何もなくても。
「その台でメダルやったら、何かめっちゃ当ったってさ。何かカンドーしたっていうか」
 あー、そういえば、一時期客寄せようとこそっと甘めに設定したんだっけ。社員にバレてすぐ戻したけど。
「エラーになっても他の店員みたいに邪険にしないしさ、だから、ゆー兄が居る時間帯狙ってた」
 そうだったのか…道理でよく見るようになったと感じたわけだ。
「前さ、変な男に絡まれててたじゃん?」
「あの時は助けてくれて、ありがとう」
 そういえば、あの時のお礼言えてなかった。やっと言えてよかった。
「そんなんいいよ!あれ、完っ全にオッサンの言いがかりだったし」
 大谷くんはケータイから目を外して、こっちを向いて笑った。
 でも、いつも楽しそうなあの笑顔じゃなかった。
「そっからさ、ゆー兄から音ゲーのコツ教えてもらって、このゲームも教えてもらって、ゲームってすっげー
面白いんだなーって、思った」
 ベッドの上に三角座りをした大谷くんは、膝にあごを乗せてこっちを見ていた。
「俺、頭悪いからさー、オヤジもオフクロも大学行った兄貴ばっかりかまっちゃって」
 口元は笑ってるけど、目は、悲しい色をしている大谷くん。
「なーんにも期待されてないんだ。だから、ゆー兄と一緒に居られるだけで、今すっげー楽しい」
 そこでいつもの、大谷くんの笑顔になった。
 ─期待、されてない。
「……ゆー兄?」
 なんか、鼻の奥がつーんとする。
 心臓はバクバク言い出すし、変な汗も出てる。
「どしたの?俺、何か悪い事言った?」
 違う、違うよ。気にしないでいいよ。
 大谷くんは、悪くない。
「だったら」
 大谷くんは膝を崩して僕の方に向き直った。

679:チャラ系高校生×ゲーオタ店員 その3-9
09/08/13 01:28:24 8Y/HQM9C0
 僕の前にはボタボタと、シーツに水滴が落ちていく。
「何で、泣いてんのさ?」

 …ただ、思い出しただけなんだ。
 自分が誰にも期待されてないって事に。

「ゆー兄、泣かないでよ…」
 心配そうにこっちを見る大谷くんの顔が、ぼやけて見えない。
 工場で働いていた時も、今のゲーセン仕事も、誰にだってできる仕事だ。
 店長だって、同僚だって、あそこに居るのは別に僕じゃなくてもいいと思ってる。
 僕は、親からも、世間からも、誰にも期待なんてされてない。

「ごめん、ちょっと、思い出しただけだから…」

 だから、ゲームが好きだ。
 何も喋らなくても、僕と向き合ってくれるから。

「そんなに悲しい顔、しないで。俺、ゆー兄がそんな顔すんの、見たくないよ」
「ごめん……」
 声も出にくくて、ちょっと裏返ってしまう。
 でも、ちょっと、止まらない。いつも思い出さないようにしていた事だから。
 でも、きっと、君は違うよ。
 だって僕じゃないから。
「大谷くんは、さ」
「…うん」
「ゲームって、どこかの誰かが、作ってるって、考えた事ある?」
「……そんなの、気にした事ない」
 そうだろうなぁ。普通はそうだ。
「ゲームは、みんな、誰かが、誰かを、楽しませる為に、作られてるんだ」
「うん」
「それって、遊んでもらえる事を、期待されて、作られてるんだよ」
「…うん」


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