08/10/04 00:32:41 8cJlWA6Q0
寒い季節が来た。
冬服の上に厚めのコートを羽織って、マフラーを巻いて、頑丈に寒さ対策をする俺とは違って、
となりを歩く田中は冬服とマフラーだけのいでたちだ。どんな体をしていれば寒さに強くなるのか
と考えて、ふと昨日の夜のことを思い出して赤面する。そういや意外にがっしりしてたんだっけ。
普段見ていてもそんなに思わないけど、結構筋肉がついていて、抱きしめられると心地がよかったの
を思い出す。
「何で赤くなってるの?」
「……ほっといて」
誰もいないからそっと繋いでいる手に力をこめて、そっぽを向く。
田中は何が嬉しいのかにこにこ笑って、きゅっと力をこめてくれる。優しい強さに、少し、どきっとする。
夕焼けが向こうでとけていって、ああもう陽が落ちるのが早いんだと妙に切なくなりながら、
田中の方に寄り添う。
公園のあたりで焼きいも屋さんの音楽がして、食いしん坊の田中は慌てて俺を引っ張っていく。
「はやいよ、田中っ」
「はやくしないと行っちゃうし!」
あわただしく足を動かして小さいトラックを運転するおじさんに声をかけて、田中は2人分買って
くれた。
そっとさしだされた焼きいものつつみを両手で持って、ブランコに座る。
焼き芋やさんはゆっくりと公園を離れて角を曲がっていく。公園にふたり残されて、俺は田中と一緒に
ゆっくりと咀嚼する。
ブランコの影と俺たちの影が交差して、硬い地面に落ちた。
「美味しいねー」
田中が嬉しそうに笑う。
……ずっとこんな風にいれるだろうか。なぜか不安になりながら、俺はそっと田中を見つめる。
「すき」
つぶやいた言葉は、田中の唇にうばわれた。
げっとしたぜ。
こんなもんでいかがでしょうか・・・。