08/02/15 17:09:17 NiN9cpLIO
じゃあトーマスは基本的に受けという事で
3:風と木の名無しさん
08/02/15 18:26:55 JxNR8/Ei0
声えろいヤツが多いよね
低音たまらん
4:風と木の名無しさん
08/02/15 20:22:24 7V3rVb990
>>1
なぜ小説限定なのか
5:風と木の名無しさん
08/02/15 21:51:55 c5AUDjlU0
>>4
>>1です。ごめんなさい。小説以外に思い浮かばなかったもので。
じゃあ、板違い&荒らしにならない限り、小説以外でもOKということでいいですか?
6:風と木の名無しさん
08/02/16 01:47:34 xUuO96lNO
ゴードンは受け
7:風と木の名無しさん
08/02/16 13:11:41 jMttm4HY0
すみません、実は擬人化ゴードン×トーマス(H描写はなし)小説持ってるんですが・・・
ゴードン受がお好きな方さえ構わなければ、投下しても宜しいでしょうか?
8:風と木の名無しさん
08/02/16 13:19:06 cFvoNQKcO
どうぞ!喜んで。
9:擬人化トーマス&ゴードン(1/5)
08/02/16 13:24:13 jMttm4HY0
では参ります。
(「あなにおちたトーマス」より。一部擬人化に合わせて変更してあります。)
「そして君はいたずらものだ。全て見ていたぞ」
ハット卿がやって来てトーマスを叱った。
「どうか助けてください。もうこんなことは二度としませんから・・・」
トーマスはしょんぼりしながら懇願した。
しかしハット卿は難しい顔をしている。
「さあて、助けられるかな?ここは地盤が弱くて、クレーン車も使えないし、そう大勢の人間を入れる
わけにもいかん」
(そんな・・・)
トーマスはますます落ち込んだ。そんな状態で、誰がどうやってここに近づき、自分を助けられるのだろう。
「ん・・・いや、待てよ」
ハット卿が何かをひらめいたようだ。
「ゴードンなら、お前を引っ張れるかな?」
確かに、彼ならば一人だけでトーマスを引っ張り上げるだけの腕力はあるのだが・・・
「ええ・・・多分・・・」
トーマスはゴードンに会いたくなかった。あれだけ散々からかっておいて、今更どんな顔をして
彼に救い上げてもらえというのだろうか。
しかし、ここはもう彼に縋るしか、トーマスの助かる途はなかった。
10:擬人化トーマス&ゴードン(2/5)
08/02/16 13:25:03 jMttm4HY0
「でーっへっへっへっへっ、トーマスが鉱山の穴に落っこちたって?ハハハハハ、面白い冗談だぜ」
ゴードンが大笑いしながら現場にやってきた。
(ああ・・・きっとゴードンは僕のことをここぞとばかりにいじめるんだろうな・・・
あんな酷いこと、言わなきゃよかった)
トーマスは穴の底で暗澹たる気分だった。
やがて上の方が騒がしくなった。ゴードンが到着したようだ。
おそるおそる穴の入り口を見上げると、ゴードンと応援の機関士たちがトーマスを見下ろしていた。
案の定ゴードンはニヤニヤ笑ってはいたが、それでも頼もしい声で呼びかけた。
「ちびのトーマス!すぐに助けてやるぞぉ!」
トーマスの前に、丈夫なロープがするすると下ろされた。
「そいつをしっかり、体に巻きつけろ!」
ハット卿が言った。
トーマスは急いで、ロープを自分の腰に巻きつけ、余った部分をぎゅっと握った。
引っ張られるとかなり痛むだろうが仕方がない。
11:擬人化トーマス&ゴードン(3/5)
08/02/16 13:25:57 jMttm4HY0
「用意はいいか?」
地上でも、ゴードンの方の準備が整ったようだ。
「それ、引っ張れ!」
ゴードンがロープを渾身の力で引き始める。
トーマスの体も、少しずつ、しかし確実に上に上がり出した。
(痛い・・・!)
引っ張られるたび、ロープが腰に食い込み、ズキズキと痛む。それでも、歯を食いしばって必死に耐えた。
やがてトーマスの体が地上に覗き始めた。
「それ、もう一息だ!」
ゴードンは最後の力を振り絞ってロープをぐい!と引き、トーマスの体が殆ど露になったことを確認すると、
彼をすかさず強く抱き寄せた。
「うわっ!」
弾みで二人はドサッ!と地面に折り重なって倒れた。
思ったよりも大変な作業だったが、トーマス救出作戦は見事に成功したのだった。
12:擬人化トーマス&ゴードン(4/5)
08/02/16 13:27:05 jMttm4HY0
「・・・ごめんなさい」
ゴードンの大きな胸の中にすっぽりと包み込まれたトーマスは、その広い肩口に顔を埋めながら
かすれた声で彼に謝った。
「僕は・・・生意気でした・・・」
本当はもっともっと、彼に言わなければならないことがあるのに、うまく言葉を紡ぐことができない。
無事に助かった安堵感と、散々からかった相手に助け出された気恥ずかしさとが入り混じり、
トーマスの目と鼻の奥がじんわり熱くなった。
「いいってことよ」
ゴードンはこの小さくて愛らしい後輩の頭や背中を、ポンポンと優しく叩いてやりながら言った。
トーマスはゆっくり頭を起こし、彼の顔をそっと見つめる。
「お陰で笑わせてもらったぜ。ま、俺も前にドジをやったがな」
そう言って、この大柄で気の良い力持ちは豪快に高笑いした。
トーマスもようやく笑顔になる。
「僕だって、そうです」
そう、誰にだって失敗やドジはある。いつ、誰の身に起きてもおかしくない。
だからこそ、皆がお互いに助け合わなくてはならないのだ。
13:擬人化トーマス&ゴードン(5/5)
08/02/16 13:28:19 jMttm4HY0
「なあ、トーマス。俺たちは手を組もうじゃないか。お前は俺を助け、俺はお前を助ける」
「それはいいね!」
トーマスは弾んだ声で答えた。
もう、いつもの無邪気で明るいトーマスに戻っている。
「よーしよしよし。これでよし!」
ゴードンも満足そうにそう言って立ち上がると、
「うわっ!」
トーマスは思わず声をあげた。ゴードンがトーマスを、いきなりその逞しい腕に抱き上げたのだ。
いわゆる「お姫様抱っこ」である。
「ちょ、ちょっと!ゴードン!何するのさ自分で歩けるって!」
「穴にはまった奴が無理言うんじゃねえ!車庫まで運んでってやる!」
「やめて!恥ずかしいよ!皆が見てるってば!」
「見たい奴には存分に見せてやるさ!このゴードン様が救出した可愛い可愛い姫君をな!がはははは!」
「誰が姫君なんだよ!もう!ゴードンのバカ!」
「あぁん?助けてもらった恩人に言う言葉かそれは?お前にはまだまだシツケってもんが必要なようだな。
まあいい、今夜一晩かけてたっぷり教え込んでやるぜ!」
「助けてえ~!」
トーマスの悲鳴と、ゴードンの笑い声、そしてハット卿や機関士達の苦笑いを包み込んで、
ソドー島の一日はゆっくりと暮れていった。
おしまい
以上です。SS初心者なもので、未熟な点も多々あると思いますが、
皆様のお気に召せば幸いです。
14:風と木の名無しさん
08/02/16 13:35:37 cFvoNQKcO
乙です!
エロくなくても、ほのぼのとした二人の関係に萌えさせて頂きましたo(^-^)o
また宜しくお願いします!
15:風と木の名無しさん
08/02/16 13:55:32 olRB4QNiO
乙!
擬人化ってバッチリ書いてあんのに途中まで機関車で想像してた
16:風と木の名無しさん
08/02/16 13:58:44 jMttm4HY0
>>14
ありがとうございます。この2人の関係大好きなので、
また新しい作品が投下できるようにしますね。
>>15
感想ありがとうございます。
擬人化初めてだったので、ちょっと不自然だったでしょうか?
これから精進して、もっと上手く書けるようにしていきます(^^)
17:風と木の名無しさん
08/02/16 21:30:29 f9OegxJ00
>>9-13
最高です。
18:風と木の名無しさん
08/02/17 01:12:57 VLStpWdM0
パーシーの天然っぷりが堪らないw
『ゴードンの窓』で、ゴードンがジェームズを「お前なんか窓に浮かぶ風船だ」
とけなしたとき、横から無邪気に
「え、風船ってどこにあるの?お空はからっぽだよ?」
と返したときはめっちゃ可愛くて和んだv
彼は絡むとしたら…いつも仲の良いトーマスかな?
19:風と木の名無しさん
08/02/17 11:39:00 QzAG85ssO
時々彼は無垢な天使キャラなのか、悪戯好きで皆を翻弄する小悪魔キャラなのか分からなくなるw
20:風と木の名無しさん
08/02/17 22:41:15 VLStpWdM0
この同人誌、読みたいのですが、
何という本か、ご存知の方がいらしたら教えて下さいm(_ _)m
URLリンク(image.blog.livedoor.jp)
21:エドワード&パーシー(1/8)
08/02/18 04:26:11 OcIcoG+30
深夜のティッドマウス機関庫。
僅かな外灯と、隣接する駅構内から煤けたランプの光が漏れる他は、辺り一面暗闇に覆われ、人っ子ひとりいない。
今夜はこの冬一番の冷え込みだとかで、海からの凍てつくような風が強く吹きつけ、島の木々を揺らした。
木々が風に煽られるたび、ひゅうひゅうと、えも言われぬ不気味な音が周囲に響く。
いつの間にか、どこか遠くから、梟の鳴き交わす声も聞こえてきた。
この機関庫の一員、エドワードは、自分の車庫で重たげに瞼を閉じ、すやすやと寝息を立てていた。
今日は一日中、他の機関車たちの起こした面倒事の尻拭いをさせられ、すっかり疲れてしまった。
大型の機関車たちは、自分で客車や貨車を集めるのが嫌だと言って駄々をこねるし、
小さな連中は連中で、先輩格にちょっかいを出したり自分の力を過信しすぎたりしては、何がしかの失敗をこさえてくるのだ。
そんな世話の焼ける同僚らの後始末を引き受けるのは、いつも年長者であるエドワードと決まっている。
支配人のトップハムハット卿も、彼ならば安心だろうと、問答無用で任せきりときた。
元来気立てが良く勤勉な彼は、命じられれば何でも、文句も言わずに素直にこなすのだが、
しかしやはり仕事を離れると、時折悩みと疑問の入り混じった思いに囚われてしまう。
いったい、自分は何のためにここにいるのだろう?
つい仏心を出して不始末をしでかした仲間を助けてしまうが、それは本当に彼ら自身のためになるのか?
自分はお人よしで甘すぎるのではないか?
けれど、いくら考えても答えは出てこず、やがて諦めて路線に舞い戻り、仕事に打ち込むことで心の中に
立ち込めた薄黒い霧を無理矢理払いのけるのが彼の常だった。
22:エドワード&パーシー(2/8)
08/02/18 04:27:15 OcIcoG+30
どのくらい眠っただろうか。
ふとエドワードは目覚めた。と、次の瞬間、ぴくりと体を震わせた。近くに誰かの気配を感じたのだ。
(誰だ?)
エドワードは眠気も吹き飛び、辺りをきょろきょろ見回した。
機関庫の中には彼以外誰もいない。と、いうことは・・・
(扉の外に誰かがいる!)
誰が来たのだろう?機関庫を訪れる相手といったら、機関士か整備員だろうか。
しかし、彼らがわざわざこんな時間にやってくることなど、まず考えられない。
(まさかトップハムハット卿?…でも、ないだろうなあ…)
彼はいつも数人の供を連れ、自動車でやって来るから、すぐにそれと分かるはずだ。
だが、扉の向こうには間違いなく誰かがいる。
エドワードは、その青い車体中に緊張感をみなぎらせ、おそるおそる小声で尋ねた。
「誰だ?そこにいるのは?」
「僕だよ、エドワード…」
幼さを残した声が、か細く返ってきた。
(その声は・・・パーシー!でも、なぜ?)
エドワードは急いで、でもそっと前に進み、機関庫の扉を押し開く。
(動いた!)
幸い扉に鍵はかかっておらず、鈍い音を立てて開いた。
23:エドワード&パーシー(3/8)
08/02/18 04:28:09 OcIcoG+30
外にいたのは、やはり小柄な緑色の機関車、パーシーだった。何かに怯えた表情で、全身をぶるぶる震わせている。
「パーシー!」
エドワードは小さく呼びかけた。
「一体どうしたんだ、こんな時間に外に出て?それに、こんなに怯えて…何かあったのかい?」
パーシーは相変わらず青ざめた顔で答える。
「お願い…僕も…君のところに入れて…」
唐突な申し出に少なからず驚いたが、これはただごとではないと、エドワードは承諾することにした。
「わかった。でも、そっと入っておいで。他の皆は寝ているからね」
そう言うと、自分は再び車庫の中に、ゆっくりゆっくり戻っていった。
パーシーも大人しく彼に従い、出来る限り音を立てないように注意して、エドワードの車庫に入る。
ここで同僚たちを起こそうものなら、大型の三台から何を言われるかわからない。
慎重に車輪を滑らせ、やがて無事にエドワードの車庫に入ると、風に揺れた扉がぱたん、と後ろで閉まった。
「どうしたんだい、パーシー?」
エドワードは深夜に突然押しかけてきた後輩にも、嫌な顔ひとつせず優しく尋ねた。
「怖い夢を見たのかい?それとも、何か悩み事でもできてしまったの?」
パーシーは、この穏やかで頼りがいのある年長者の傍に来たお陰か、少し落ち着きを取り戻したようだ。
しかし、その顔には相変わらずの怯えと、すまなそうな色が浮かんでいる。
「…ごめんなさい、エドワード…」
パーシーは彼に詫び、ぽつり、ぽつりと語りだした。
「怖かったの…怖くなったの…いろんなことが…」
「いろんなこと、って何だい?」
「最初は暗いのと、風の音が…そのうち、すごく不気味な声が聞こえてきて…寝られなくなったの…」
「なるほど、梟の声が怖かったんだね」
エドワードもパーシー達よりずっと前、初めてここに来た時は、夜に起こる何もかもが恐ろしくて震えてばかりいたから、
その気持ちは良く分かる。
海岸のすぐ近くに位置し、周辺に人家も殆どないこの機関庫にいると、たかが風、たかが鳥の声、ではないのだ。
24:エドワード&パーシー(4/8)
08/02/18 04:28:54 OcIcoG+30
「だけど…だけど…もっと怖かったのは…」
パーシーは必死に言葉を紡ぎ出す。
そして、意外なことを口にした。
「そのうち、僕たちも…あの暗い、暗い闇の中に放り込まれてしまうんじゃないか、ってことだったんだ…」
「え?」
エドワードはパーシーが言っている意味がよく分からなかった。暗闇の中に放り込まれる、だって?
パーシーは改めて恐怖が甦ってきたのか、急に涙声になる。
「ゴードンが…僕たちに話してくれたんだけど…ディーゼル、ディーゼルが…これからは、もうディーゼル機関車の時代だから…蒸気機関車なんかいらなくなるって…用のなくなった奴から…スクラップ工場に送られるんだぜって…」
エドワードも仰天した。
「何だって?彼がそんなことを言っていたのか?」
冗談ではない。機関車にとってスクラップ工場行きとは、完全な死を意味する。
もう二度と、明るい空の下で自由に走ることなどできなくなるのだ。
25:エドワード&パーシー(5/8)
08/02/18 04:30:30 OcIcoG+30
パーシーは喉の奥をヒク、ヒクと鳴らしてしゃくり上げながら、やっと言った。
「ゴードンは…すっごく…すっごくカンカンになって…いつかディーゼルの奴を
とっちめてやるんだって…言ってたけど…
ねえ、エドワード…スク、…スクラップ工場に…送られたら…
もう、もう二度と…走れないんでしょ?」
「…ああ、…」
「バラバラに…されて、…もう、戻って…来られないん…でしょ?」
「…ああ、そうだ…」
「やだよ、そんなの…!」
刹那、パーシーは堰を切ったように泣き出した。
「僕嫌だよ!そんなの!バラバラになって、
もう何もできないで、真っ暗な世界に行かなきゃいけないなんて!
聞いたことがあるもん、死んだら何もかもなくなって、
闇の中に一人ぼっちになっちゃうんでしょ!?
そんなの嫌だ、絶対に嫌だ!」
「………!」
「…トーマスにも…ヘンリーにも…ゴードンにも…
トビーにも…エドワードにも…ハット卿だって…皆がいないところに
行かなきゃいけないなんて嫌!!」
「…パーシー…!」
26:エドワード&パーシー(6/8)
08/02/18 04:31:20 OcIcoG+30
(僕は・・・バカだ)
エドワードは心の中で呟いた。
自分は一体、この後輩の何を見てきたのだろう。
やんちゃでわがままでいたずら好きで、世話が焼けて仕方がないけど、くるくると良く動き回って、何だか放っておけない
無邪気で愛らしい機関車。
だが、本当はいろんなことに、びくびくと怯えていたのだ。
彼は死ぬことを恐れていた。
そして、それ以上に、共に働く仲間たちと離れることが怖かったのだ。
日頃、何かといえば悪態をつき合い、時には周囲を巻き込んでの大喧嘩をし、ハット卿にみっちり大目玉を食らってばかりだが、
本当は一日たりとも別れることなど考えられない、大事な、愛すべき連中なのだ。
おそらく、まだ幼さを残したパーシーは自分の気持ちに気づいてなどいなかったのだろう。
そして、それはエドワードも同じ。
「すまなかった…」
エドワードはパーシーと寄り添うように並び、静かに語りかけた。
「…エドワード?」
しゅく、しゅくと鼻をすすっていたパーシーが泣くのを止め、驚いたように彼を見つめる。
「僕は今まで、君がそんなことを思っていたなんて、全然知らなかった。いや、気づいてあげられなかった。
仲間が不安を抱えていたら、お互いに支えあうのが本当なのに。
僕は皆より年上だから、自然と…皆の面倒を全部見ているつもりになっていたんだ。
だけど違った。いつの間にか、皆を…君のことだって、ただ失敗の後始末をしてあげる相手としか思わなくなっていた。
君が今、本当は何を考え、何を必要としているのか、ちっとも見ていなかった…見ようともしていなかったのかもしれない。」
27:エドワード&パーシー(7/8)
08/02/18 04:31:59 OcIcoG+30
エドワードの声は段々、自分に対する怒りを帯びたものに変わっていく。
「エドワード…」
「僕は…呆れた自惚れ屋だ。勝手に皆を分かった気になって、皆のフォローをちゃんとしているいい先輩だと思い込んでいた。
ゴードンやジェームズを笑えないよ。一番舞い上がっていたのは…他ならぬ僕だ」
パーシーはしばし言葉を失った。
どう声をかけていいか、わからなかったのだ。
「…ごめんなさい」
ようやく、それだけ言うことができた。
エドワードはゆっくりこちらに視線を向け、怒りと悲しみと、後輩への気遣いを湛えた瞳で彼を見つめる。
「エドワードのせいじゃないよ!エドワードは悪くなんかないよ!僕らが…いつも騒ぎを起こして、ヘマをやって、
エドワードに迷惑かけちゃってるから…」
「…パーシー…」
「皆、エドワードに甘えてた。僕も甘えてた。エドワードは優しくて、しっかりしてて、頼りになるから…
エドワードがいれば大丈夫だって、そう思ってるから…」
今度はエドワードが無言のままだった。
「だから、だから…その分僕達もエドワードのことを気遣わなくちゃいけないのに、全然なってなくてごめんなさい!」
28:エドワード&パーシー(8/8)
08/02/18 04:33:36 OcIcoG+30
結局、お互いに相手を十分に理解し、行動できていなかったのだ。
エドワードは、後輩が無意識のうちに抱いていた悩みを。
パーシーは、いつも笑顔で皆の世話をしてくれる先輩の心情や負担を。
「パーシー…!」
エドワードの柔和な顔に、ようやく微笑が戻ってくる。
それを見て、パーシーもここにきてやっと笑顔を浮かべた。
「ごめんなさい、エドワード。そして…」
今の彼が、一番言わなくてはいけない言葉。
「ありがとう」
やがてパーシーはエドワードに添われたまま、
彼の車体に寄りかかるようにして眠ってしまった。
(良かった。安心したようだ…)
エドワードはパーシーの寝顔をそっと見やった。慈しみに満ちた、
この上なく優しい表情で。
(感謝しなければいけないのは、僕も同じだよ。君のお陰で、今の自分が
やるべきことが見えたから)
彼は決めた。
明日にでも、トップハムハット卿に会って、事の真偽を明らかにしてもらおう。
そして、この大事な後輩を、果てしない苦悩の淵から救い出してやろう、と。
翌日、ゴードンが港へ子供達を乗せて行き、ハット卿から
嬉しい知らせを持って帰ってくるのだが、それはまた別の話である。
おしまい
29:エドワード&パーシー作者
08/02/18 04:37:36 OcIcoG+30
連投規制に引っかかるのが心配だったので、いきなり何の前触れもなく
投稿して失礼致しました。
書いているうちに、段々双方の苦悩にスポットが当たっていき、
あまり801っぽくないかもしれませんが、お気に召せば幸いです。
なお、話の時間帯は、『キーキー、ガタガタ、コンコン』の少し前辺りを
想定しています。
30:風と木の名無しさん
08/02/18 04:41:01 wmDz93mGO
29さん
とんでもないです!
素晴らしい作品をありがとうございます。
31:風と木の名無しさん
08/02/18 19:56:56 sSASfcBB0
>21-29
あんたはエラい!
32:エドワード&パーシー作者
08/02/18 21:52:43 OcIcoG+30
>>30
お褒め頂き恐縮です。
今度はもう少し、キャラクター同士の愛情を掘り下げて書けるといいな、と思います。
>>31
ありがとうございます!
アニメの本で、パーシーがソドー島の仲間では一番の怖がりだ、という設定と知ったので
活用させて頂きました。
物語の中ではいつも屈託なく明るい彼ですが、実は密かにいろいろなことを怖れているのかもしれませんね。
33:エドワード&パーシー作者
08/02/18 22:02:29 OcIcoG+30
連投失礼します。
今更ですが、>>25のパーシーの最後の台詞、「・・・ジェームズにも・・・」が抜けていました・・・。
ジェームズごめんね・・・仲間はずれにする気はなかったんだよ!
34:風と木の名無しさん
08/02/19 02:15:09 LUx+39My0
それではここで、私も新作をば。
35:ゴードンの客車 (1/8)
08/02/19 02:15:56 LUx+39My0
ソドー島の朝。
雲ひとつない、抜けるような青空の下、ゴードンに牽かれた急行列車が、颯爽と走りぬけていく。
ゴードンは自分の仕事をとても誇りにしていた。
ただでさえ大きく重量がある客車に、大勢のお客を乗せて高速で走るには、かなりの馬力と持久力、
そして技術がいる。
だから、急行列車を任されるということは、それだけその機関車に実力があると認められた証なのだ。
そして、この鉄道で、急行を牽くのは、余程のことがない限りゴードンだけである。
彼はそのことが嬉しくてたまらない。
「俺は、ソドー島一番の機関車だ!」
そんなゴードンに、密かに、けれど強く想いを寄せる者がいた。
誰あろう、毎日彼に牽かれている客車である。
別に、ゴードンが優れた急行列車として称賛を受ければ自分たちも鼻が高くなるから、というだけではない。
36:ゴードンの客車 (2/8)
08/02/19 02:16:19 LUx+39My0
彼は、毎日自分たちを引っ張って、島中を元気に駆け回るこの機関車を、心から慕っていた。
全身でエネルギーが弾けていそうな青く美しいボディーに見とれ、急な丘でも嵐の後でも疾駆し続ける
心身の強靭さにうっとりした。
そして何より、大柄な体と実力を傘に着た威張り屋ではあるが、ここぞというときには全力で仲間を助け守り抜く、
その溢れんばかりの男気に憧れる。
(自分は、ゴードンに牽かれて幸せだ)
彼と共に走るたび、客車は心からそう思う。
ゴードンの急行車両でいられることを、まずはハット卿に、そして神に感謝せずにはいられなかった。
(でも…)
ただ喜んでばかりではいられない。
もし、自分の気持ちをゴードンが知ったら、彼は何と言うだろうか。
(笑い飛ばされるだけならまだいい)
人並みはずれてプライドの高い彼のことだ。「客車なんか相手にできるか!」と一喝されて
終わりかもしれない。
そうなったら、自分はもう二度と、彼と一緒に走ることはかなわなくなるだろう。
(嫌だ…そんなことは。そうなるぐらいなら、いっそ一生胸に秘めていよう…!)
37:ゴードンの客車 (3/8)
08/02/19 02:17:03 LUx+39My0
ある朝のことだ。
昨夜はどしゃぶりの雨がソドー島全域に降り、おまけに強風も手伝って、線路がすっかりぬかるんでしまった。
幸い、機関車が通れないほどではないものの、通常に比べればかなり危険な状態である。
うっかりすれば大事故にもつながりかねない。
ハット卿は出発前の機関車たちを集め、「今日は慎重に走るように」と厳命した。
しかし、ゴードンは気が気でない。
「冗談じゃないぜ。ゆっくり走れだと?俺様が何のために急行を任されていると思ってるんだ」
これは決して、「自分の力を誇示さえできればいい」という意味ではない。
この小さな島では、ちょっと大雨や嵐が来ると、たちまち人々の生活――農業も漁業も、商人たちも――
に大きな影響が出てしまう。
悪天候がとりあえず収まったら、皆取るものもとりあえず、危険な地域に住んでいる家族や友人を
助けに飛んでいきたがるのだ。
そして、彼らをできるだけ速く目的地に連れて行くのが、急行列車の大切な仕事なのである。
ゴードンに客車が連結された。
「とにかく、お客をちゃんと送っていかなきゃならん。たとえ、何があっても、だ」
彼はそう自分に言い聞かせると、駅員の合図を確認した途端、弾丸のように飛び出した。
38:ゴードンの客車 (4/8)
08/02/19 02:17:49 LUx+39My0
線路は相変わらずぬかるみ、ヌルヌルと汚れて滑りやすくなっている。
それでもゴードンは構わず、全速力で飛ばし続ける。
客車は彼のことがだんだん心配になってきた。
(もし…途中で何かあったらどうしよう・・・)
曲がりくねった線路で、車輪が滑って脱線してしまったら?
かつてジェームズが味わった苦い経験のように、車輪に落ち葉や泥が挟まって動けなくなったら?
(ダメだ…そんなことになっちゃ!)
客車はたまらず、声を上げた。
「ゴードン!もう少しゆっくり走ってくれ!」
しかしゴードンの耳には届いていない。急行列車として、大勢のお客を早く連れて行くことで頭がいっぱいなのだ。
客車はもう一度叫ぶ。
「ゴードン!危ないからスピードを落としてくれ!お願いだ…!」
けれど相変わらず、何の反応もないままゴードンは走り続けるだけだった。
(こうなったらもう仕方がない…!)
客車は腹にぐっと力を込めると、車輪を線路に深く食い込ませるようにした。
これで、客車は思うように進まなくなる。
「・・・・・・・?」
客車の動きにつられて、ゴードンの走るスピードも、いきなりがくんと下がった。
「な、何だ?何が起こったんだ?」
ゴードンは慌てたが、いくら車輪をフル回転させても、さきほどのようには走れない。
やがて、列車全体の動きが、ゆっくりとしたものに変わった。
39:ゴードンの客車 (5/8)
08/02/19 02:18:26 LUx+39My0
「こら、お前!どういうつもりだ!」
どうやら原因は客車にあるらしいと突き止めたゴードンが、顔を真っ赤にして怒った。
「大事なお客をたくさん乗せてるんだぞ!何やってるんだ!」
普段なら、ゴードンに怒鳴られた客車は、彼に合わせて速度を上げるところだが、
今回ばかりはそうはいかなかった。
客車は、勇気を出して言った。
「だめだよ、ゴードン!頼むから速度を落としてよ!」
ゴードンは呆れたように叫ぶ。
「バカ言ってるんじゃない!のろのろしてたら遅れちまうだろうが!!」
「だけど急いだら危険だよ!」
客車も負けずに叫び返した。
「今日はいつもと違うんだ!線路はこの通りびっしょり濡れてるし、泥だらけだし、風でいろんなものが
飛ばされてきてるし!」
「・・・」
「もしここで車輪が引っかかって走れなくなったらどうするの?お客さんは雨上がりで寒い中立ち往生だし、
それに…君の事だって…」
「…俺のこと?」
「・・・・・・・・!」
客車はしまった、と思った。弾みでつい口にしてしまった。
「・・・俺が、どうかしたのか?」
ゴードンは彼の言葉を聞きとがめている。もう今更後に引ける状態ではない。
客車は覚悟を決めた。
40:ゴードンの客車 (6/8)
08/02/19 02:19:16 LUx+39My0
「ずっと・・・心配だったんだよ、ゴードンのことが・・・」
「俺が、心配だった・・・?」
意外な言葉にゴードンは後の言葉を失う。
「・・・もし、途中で事故が起きて、ゴードンが止まっちゃったらどうしよう・・・事故が起きて壊れちゃったら
どうしようって、すっごく怖かった・・・」
「・・・・・」
「そうしたら・・・ゴードンはバラバラになって二度と走れなくなるかもしれない・・・お客さんを危険な
目に合わせたって、ハット卿や皆から責められて、もう仕事ができなくなるかもしれない、って・・・」
心の防波堤が決壊したかのように、客車は言葉の飛礫を投げる。
「僕はそんなことになるのは絶対に嫌なんだ!僕は、ゴードンと一緒に走りたい!いつまでもゴードンに
引っ張られて、お客さんを乗せて島中を思い切り走りたいんだ!僕は…僕は…」
いつまでも君の急行列車でいたいんだ・・・!
41:ゴードンの客車 (7/8)
08/02/19 02:19:50 LUx+39My0
ゴードンはしばらく無言のまま走り続けた。
この客車が、まさか、自分のことをそんなに大切にし、思ってくれていたなんて。
自分に事故が起きないか、不名誉なことにならないか、いつも気にかけていてくれたなんて。
突然のことに頭が混乱し、ただ驚くばかりで、かけるべき言葉が見つからない。
(まったく、俺って奴はよ・・・)
自然と苦笑がこみ上げてくる。
(図体ばっかりでかいくせに、何も分かっちゃいなかった独活の大木だぜ。「走るソーセージ」なんて
可愛いもんじゃないな・・・)
「悪かったな」
ようやく、ゴードンが客車に言った。
先程とはうって変わって、穏やかな調子で。
客車は息を呑んで、その表情が分からないまま、自分の前を行く青い機関車を見つめる。
「お前の言う通りだ。いくら急いだって、途中でトラブルがあったら何の意味もないからな」
どこか照れくささと気恥ずかしさを含みながらそれだけ言うと、ゴードンはその何とも言えないくすぐったさを
全て弾き飛ばそうとするかのように、大声をあげた。
「さあ、行くぞ!もうすぐ駅だ!」
42:ゴードンの客車 (8/8)
08/02/19 02:20:34 LUx+39My0
(ゴードン・・・!)
客車は思わず、両の目に熱いものが浮かんできた。
ゴードンが、自分の言葉を聞き入れてくれたのだ。
この鈍い相手、一体どこまで自分の本当の気持ちに気づいてくれたのかまでは分からないが、
自分が彼のことを慕い、案じていたことはちゃんと伝わった。
今の客車には、それだけで十分幸せだった。
やがて、ゴードンの牽いた急行列車は、ゆっくりと目的地の駅に着いた。
人々はプラットホームに降り立ち、我先にと駅を飛び出していく。
「無事だといいな。あの人たちが、これから会いに行く人たち、みんな」
ゴードンは優しく呟いた。
「そうだね。みんな、みんな」
客車も笑顔で返す。
その夕方、トップハムハット卿が車庫を訪れ、ゴードンを褒めた。
「ゴードン、よくやったな。お客様はみなさん喜んでおられたぞ。
お前は本当に役に立つ機関車だ」
ゴードンは両の頬をほんのり染め、「ポッポー」と汽笛を鳴らして喜んだが、忘れずに言った。
「同じことを、俺の大事な客車にも言ってやって下さい。あいつのお陰で、俺は今日の路線を全部完璧に走れたんですから」
おわり
43:風と木の名無しさん
08/02/19 03:07:31 4ShSvP22O
>>35-42
乙です!
44:風と木の名無しさん
08/02/19 11:52:39 mv02NnZnO
イイハナシダナー
45:風と木の名無しさん
08/02/19 14:20:39 tyRfX0oY0
グッジョブ( ・∀・)b!
46:風と木の名無しさん
08/02/19 19:19:30 mv02NnZnO
トーマス関係だとどうしても濃厚Hが思い浮かばない・・・どなたか神降臨希望
47:風と木の名無しさん
08/02/19 20:18:13 /COuX8ke0
試しに、エロそうなキャラの名前を列挙してみようではないか。
48:風と木の名無しさん
08/02/19 22:49:11 mv02NnZnO
エロそうと言うか、そっちの知識が豊富そうなのは、やっぱり大型三人衆かな。エドワードはあまり興味
なさそう。色恋より仕事に燃えるタイプ。パーシーは天然魔性か?
トーマスやトビーは掴み所がない・・・。
49:風と木の名無しさん
08/02/20 00:59:27 DjdBEgW3O
トーマスはゴードンやジェームズが相手なら受け。
ヘンリーやパーシーが相手なら攻めかな。
でも意外とパーシーが攻めになるかも。
「な、何するんだパーシー!」
「ふふふ、トーマス。言わなくても分かってるくせに」
「や、やめろ。やめてくれ!」
「トーマス。嘘をつくのはいけないよ。ほら、もっと楽にして」
「あっ、あああ・・・!」
・・・ごめん、今の自分にはこれが精一杯でつ
50:風と木の名無しさん
08/02/20 22:44:58 nQMUu4i8O
>>49
乙すぎ。
51:ジェームズ→エドワード 1
08/02/20 23:59:04 +LyvS1+B0
最初彼に会ったとき、何て古びてみすぼらしい機関車だろうと呆れたことを覚えている。
聞けば、この男は僕や他の同僚たちよりも、ずっと年長だというではないか。
おまけに、自分たちと同じテンダー型機関車だというのに、ろくに力もスピードも出ない。
特にゴードンと比べると、体格の差を割り引いて考えても、その違いは歴然としている。
正直、何故彼を未だ現役にしておくのか、あの太っちょ経営者の頭を疑ったものだ。
だが、彼は僕たちに対し、とても優しく穏やかだった。
僕たちがいくら生意気を言おうが、仕事のえり好みをしようが、血相を変えるでもなく罵るでもなく、
ただ悲しげに目を伏せ、黙々と仕事をこなすだけだった。
反論しない意気地なしと嘲りたくなる反面、彼のそんな態度に接すると、自分たちがいかに子どもなのか
思い知らされたかのようで決まりが悪く、どこか彼を軽蔑しきれなかった。
これが年少の2人だったら、たちまち機関銃の撃ち合いのごとく口喧嘩が始まるところなのに。
52:ジェームズ→エドワード 2
08/02/20 23:59:31 +LyvS1+B0
あるとき、僕は彼に自分の引っ張る客車を用意してもらうことになった。
しかし、歳の所為なのか、彼はひどく仕事のスピードが遅い。
ただでさえ多忙な仕事のためにストレスが堪っていた僕は、彼のことを酷くなじった。
その怒りは転車台に乗るときでさえ一向に収まらず、このまま経営者のところへ飛んでいって
彼をお払い箱にして下さいと直談判しようかと考えた程である。
しかし、翌朝思いもかけないことが起きた。
僕はいたずらな男の子たちのせいで、勝手に発車させられ、そのまま線路を長々と
暴走させられるはめになってしまったのだ。
最初は思い切り風を切って走る心地よさに酔いしれていたのだが、ふと機関士も車掌もいないことに
気がついて愕然とする。
自力ではもう止まれないのだと気づいた時にはもう遅かった。
何とか自力で止まろうと思っても、勢いがついてしまった車体は頑として言うことを聞かない。
「助けて!」
情けないことだが、僕はただ悲鳴をあげながら、ただ闇雲に走り回るしかできなかった。
頭の中をいろいろな恐ろしい運命が駆け巡る。
このまま崖にでも衝突したら?他の列車とぶつかって大事故になったら?川にでも転落してしまったら?
踏み切りを渡ろうとしている誰かを犠牲にするという、最悪の結末になるかもしれない。
(ああ、神様・・・!)
53:ジェームズ→エドワード 3
08/02/20 23:59:54 +LyvS1+B0
そんな時、後ろから救いの声が響いた。
「ジェームズ!今助けてやるぞ!」
何と、自分が昨日、心の中で散々罵倒したばかりの相手ではないか。
驚くと同時に、それがどれだけ救いの声に思えたことか。
だが、助けが来てくれた喜び以上に、より強い不安の嵐が吹き荒れた。
彼はただでさえ古くて、仕事にも支障が出るほどの機関車だ。
ましてや、果てしない速度で走り続ける今の自分を止めるだけの力が、彼にあるのだろうか・・・。
けれども、それは杞憂に終わった。
彼は全力疾走して僕に追いつき、彼に乗った熟練の機関士がワイヤーロープを投げ、無事に停車させてくれたのだ。
そのときの安堵感と言ったら・・・!
「今まで、おんぼろなんて言ってごめんね。君は素晴らしい機関車だよ」
今は素直に、そう言うことができた。
54:ジェームズ→エドワード 4
08/02/21 00:00:35 +LyvS1+B0
しかし、悲しいかな自分は感謝や謝罪はできても、うまく他人を気遣えない性分らしいのだ。
ある休暇の一日、バーティに乗せられてきた観光客が、彼に乗って島を回ることになったのだが、
彼の車体は相当具合が悪いらしく、思うようにスタートできず苦しんでいた。
それを見て僕は思わず「痛ましいねえ」と口にしてしまった。
すると、それを嘲笑の言葉と受け取ったのか、ヘンリーとゴードンが口々に彼のことを馬鹿にし始める。
内心、「これはしまった」と思い、後の言葉が続かなかった。
別に僕はそんなつもりで言ったんじゃないのに・・・。
プライドが高いのはいいことだと、昔からよく言われたものだが、この時ばかりは自分のプライドの高さが
つくづく恨めしくなる。
表情でも、言葉でも、態度でも、僕の様子はただ彼をけなしているようにしか見えなかっただろう。
彼は僕がピンチの時、命を懸けて助けてくれたはずの恩人なのに・・・。
おかげですっかりダックとボコに叱られてしまった。
だが、その日彼は車両の故障というアクシデントがあったにも関わらず、長年の知恵と技術のお陰で、
ずいぶん遅くなったものの、無事に観光客を駅に送り届けたという。
夜になって、駅に居合わせたヘンリーからその話を聞き、僕はとてもほっとしたのだった。
55:ジェームズ→エドワード 4
08/02/21 00:01:01 +LyvS1+B0
それからしばらく経って、ソドー島に女王陛下がお越しになると、経営者から聞かされた。
女王陛下のために働けるのは誰なのか?
僕も同僚もわくわくしたが、彼は悲しそうに
「僕はもう、歳だからお呼びじゃないな・・・」と呟いている。
僕は一応仲間の手前、「女王陛下を乗せるのは、もちろんこの僕さ!」と気取って見せたが、
あることが閃いていた。
ヘンリーに「冗談じゃないぜ、君は坂を上れないじゃないか!」と混ぜっ返されたが、
そんなのはもうどうでも良くなっていた。
陛下がいらっしゃる当日、彼は陛下の客車を牽くゴードンの先導を任され、とても誇らしげに輝いていた。
(良かった・・・経営者が僕の願いを聞き入れてくれて)
そんな彼の様子を見て、僕は誰にも気づかれないよう嬉し涙を流した。
ちびのパーシーとトビーが、つい調子に乗って汽笛を鳴らすので冷や汗が流れたが、
女王陛下は嬉しげにお応えになり、陛下をここにご案内した彼にも、優しく声をかけられていたので安心した。
僕もやっと、君に恩返しが出来たね、エドワード!
56:風と木の名無しさん
08/02/21 00:37:12 CoAZPpIcO
新作乙です!
なかなか素直に恋人を気遣えない、不器用なジェームズが可愛いですね。
57:風と木の名無しさん
08/02/21 07:31:02 5jUhHL2BO
GJ!!
ここは神が多くて幸せだ
58:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (1/10)
08/02/21 15:46:47 TyYPWWXG0
――いつかあいつの全てを、この俺のものにしたい。
ゴードンはソドー島鉄道で最大・最速を誇る大型機関車である。
それ故か、非常に気の強い性分で、ともするとわがままで偉そうな奴だと思われがちなのだが、
根は真っ直ぐで頼もしく、同僚の機関車や客車には、密かに彼を尊敬する者も多かった。
そんなゴードンが今、人知れず想いを寄せる相手がいた。
同じ鉄道で働く小さな青い機関車、トーマスである。
熱心な仕事ぶりとその愛くるしい容姿ゆえ、乗客にはとても人気があり、機関車以外にもバスやヘリコプター
などの友人がいる。
初めて一緒に仕事をした頃は、ちびのくせに鼻っ柱が強く、何とも生意気な!と神経に触った存在だったのが、
鉱山の穴に嵌ったトーマスを救出したことをきっかけに、ゴードンと彼との間には少しずつ友情が生まれ、
やがてそれはゴードンの中で更なる熱い感覚へと昇華していったのだった。
59:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (2/10)
08/02/21 15:47:18 TyYPWWXG0
ある日のこと。
ソドー島に新たな鉄道路線が完成した。
今までの路線の一部がすっかり老朽化して危険になったとかで、ハット卿が少し位置のずれたところに、
山の頂上まで伸びる線路を作らせたのだ。
その路線は一本だけではなく、何本もの本線・支線が組み合わさった、客車・貨車双方の運行が
より効率良くできるように工夫した設計になっている。
新しい路線を目の前にしたトーマスは夢中になった。
「いつか、僕もここを走りたいなあ!」
しかし、今のところ新しい路線を走るのは、石切り場や鉱山から掘り出した石や鉄鉱石を運び出す貨車や
急行列車ばかり。
ビルやベン、そしてゴードンは当然のことながら何度も走る機会に恵まれたが、トーマスの出る幕はまだない。
彼はそのことが非常に不満で仕方がなかった。
「ちぇーっ、つまんないの・・・」
その様子を見たゴードンは、一つの作戦を考え出した。
60:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (3/10)
08/02/21 15:48:13 TyYPWWXG0
数日後のある夕方、ちょうど2台ともひととおりの仕事が片付いたのを幸いに、ゴードンはトーマスに持ちかけた。
「なあ、トーマス。あの新しい路線を走ってみないか」
突然の申し出に、トーマスは面食らった顔をする。
「そりゃあ・・・走っていいならだけど。でも、何で?」
よし、乗ってきたな。嬉しさを押し殺してゴードンは続ける。
「俺とお前とで、あの路線を競走するんだ。今日はビルもベンも港での仕事が入っているし、今あそこには
誰も入っていないはずだからな。
お前だって走りたいんだろう?このチャンスを逃したら、次はそうそうないぞ」
「そうだね、このまま次の仕事が入るまでのんべんだらりとしているのも勿体無い。よし、やろう!」
トーマスも頷いた。
まずは作戦第一段階成功!と腹の中でほくそ笑みながら、ゴードンは続けた。
「ルールは至って簡単だ。ここナップフォード駅待避線から同時にスタート、あの山の頂上まで先に着いた方が勝ちだ。
念のために言っとくが、あそこはかなり路線が複雑で地形も急峻だからな。俺でさえ未だに慣れないし、
下手をすると小回りの効く車体の方が走りやすいかもしれない。
だから、あそこを何度も走ったからといって、俺の方が有利だと決まったわけじゃない。そこを忘れないでくれよ」
「ああ、わかったよ。絶対に負けないからね!」
彼らしい勝気さと無邪気さが入り混じった笑顔でトーマスが返すと、2台は揃ってスタート地点に着いた。
Ready?...Go!!
トーマスとゴードンは一斉に全速力で飛び出した。
61:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (4/10)
08/02/21 15:48:43 TyYPWWXG0
一心不乱に丘を登ったり、谷を下ったりして疾駆する2台の青い機関車。
トーマスは必死に全車輪をフル回転させたが、意外か案の定か、ゴードンにどんどん差をつけられてしまい、
2台の間の距離は開いていくばかりになった。
それもそのはずで、こうした急斜面を高速で移動し、なおかつそのスピードを保ち続けて走るには、
小回りも大事だが、それ以上にかなりの馬力と持久力が必要とされるのである。
当然、それらはトーマスよりも、ゴードンの方が遥かに上である。
彼がふらふらしつつ何とか走り続ける前を、ゴードンが涼しい顔で颯爽と駆け抜けていった。
「はあ・・・はあ・・・ゴードンの奴・・・何が『俺が有利とは限らない』だよ・・・」
今にも上がりそうな息の中、トーマスは呟いた。
「どう考えたって、ゴードンの方が圧倒的にハンデが少ないじゃないか・・・騙したな!・・・ん?」
ふと前を見ると、目の前の崖に、小さなトンネルの穴が見つかった。
(これは!)
トーマスは心の中で大きくガッツポーズをした。
このトンネルを通り抜けた方が、このまままっすぐ路線を走っていくより、山の頂上まで近道になりそうだ。
しかも、ゴードンは車体が大きすぎて、ここをくぐれそうにない。
(よーし、このチャンス、逃がしてなるものか!)
元気を取り戻したトーマスは、思い切りピストンを上下させ、力をふり絞ってトンネルに飛び込んだ。
62:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (5/10)
08/02/21 15:49:17 TyYPWWXG0
トンネルを抜けた瞬間、トーマスは素早く辺りを見渡した。
自分よりも幾ばくか重たげな、ゴードンの車輪の音がすぐ近くで聞こえる。
しかも、彼の姿は前方・左右どちらを見渡しても視界に入ってこない。
ということは・・・。
(やった!)
遂に彼を追い抜いたのだ。
喜びの余り、トーマスは後方に向かって叫んだ。
「ゴードン!お先に~!」
ゴードンの表情は見えないが、あのプライドの高い彼のこと、自分から勝負を仕掛けた相手に追い抜かれて
さぞかし悔しがっているに違いない。
ちょっと可哀想かな、と元来優しく、また心の底ではゴードンを敬愛してもいる彼は思ったが、
いつもの悪い癖でつい、こう叫んでしまった。
「ゴードン!さあ、僕を捕まえてみろよ!」
しかし、彼よりもゴードンは更に上手だった。
63:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (6/10)
08/02/21 16:13:14 TyYPWWXG0
(かかったな、トーマス!)
トーマスがトンネルに向かった瞬間、ゴードンはにんまりした。
何度もこの路線を走っている彼は、線路のどこにどんな設備があるか、大体のことは頭に入れていた。
勿論、このトンネルの存在も確認済みである。
トーマスの性格上、力で勝てないと分かったら、すぐさま自分に有利な方法を見つけ出し、ここを利用して
自分を追い抜くだろうこと、更には追い抜いたときに口にしそうな言葉さえも、彼はとっくに計算していた。
(まさか、ここまで思い通りにいくとはな・・・)
そして、トーマスは知らないはずだ。
このすぐ先に、今2台がそれぞれ走っている路線が、一つに交わる地点があることを。
決してトーマスに本心を悟られぬよう細心の注意を払いながら、ゴードンは大きな声で返事をした。
「しっかり聞こえたぞ、トーマス!お望みどおりにしてやるぜ!」
言うなり彼はスピードを少し上げ、しかしまだトーマスにはぶつからない程度の距離を保ちつつ走り始めた。
64:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (7/10)
08/02/21 16:13:58 TyYPWWXG0
(やったぞ、やったぞ!もうすぐゴールだ!)
この島で最速の先輩を追い抜くことができた嬉しさに心弾ませながら、トーマスはぐんぐん山を登っていった。
ゴードンはまだ自分に追いついてきてはいない。
(ふふ、今頃火の玉みたいになってるかもしれない。でもしょうがないよね。まあ、明日辺り今度は僕から
何か面白いことに誘おうっと。そうすれば機嫌も直るだろうし)
ところが。
(あれ・・・?)
トーマスははっと気がついた。
今自分が走っている路線と、ゴードンが走っているだろう路線とが、目と鼻の先で一箇所に合流しているのだ。
とっさに線路脇の信号を見たが、相変わらず「進め」の合図になっている。
(おかしいな・・・ゴードンはこの後、どこの路線を走るつもりなんだろう・・・?)
何だか心配になり、トーマスは知らず知らずのうちに、少しずつ速度を下げていった。
65:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (8/10)
08/02/21 16:14:43 TyYPWWXG0
(やっと気づいたようだな、トーマス!)
持ち前の馬力で、難なく彼のすぐ後ろまで接近していたゴードンは、心の中で快哉を叫んでいた。
作戦通り、トーマスは合流地点に入ってくれた。
しかもご丁寧に、走るテンポまでずいぶんゆっくりとなっている。
これならば自分も割合静かに動くことができるので、さほど相手にダメージを与えずに済むはずだ。
(つくづく、天使みたいな子だぜ、可愛いトーマス・・・)
もう彼の表情は喜びの余りとろけそうになっていた。
やがてトーマスが合流地点に入り、急にぶつかっても安全な程度にスピードダウンしたことを確認すると、
ゴードンもゆっくりと彼に近づいた。
トーマスよりもずっと先に機関車として活躍し、他の車両の運搬作業や、ときには追突事故だって幾度も
経験してきたゴードンには、どの程度の力で相手に当たれば被害を与えるか与えないかも、十分に体得できている。
絶妙な感覚でスピードをコントロールしていき、
(ようし・・・今だ!)
ガシャン!
「うわっ!」
トーマスは突然、後ろから強い力で押され、その衝撃に悲鳴をあげた。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「ついに捕まえたぜ、トーマス!」
うまいこと念願を果たしたゴードンは笑いが止まらず、背後から彼を突き上げた。
66:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (9/10)
08/02/21 16:15:28 TyYPWWXG0
「な、何するんだよゴードン!」
ようやく自分がゴードンに連結されたことに気づいたトーマスが、今度は怒って声を荒げる。
「いきなりぶつかるなんて危ないじゃないか!玉突き事故にでもなったらどうするのさ!」
しかしゴードンは悪びれた様子もない。
「いけないのはお前の方だぞ、トーマス。お前が急にのろのろし出すから、俺がぶつかっちまったんだ。
ここは路線が一本だけになってるんだから、後続列車が閊えないように急がなきゃならないことぐらい、
お前だって分かってただろう?」
「う・・・」
そう言われるとトーマスも返す言葉がない。
いつも走る路線でさえ、そのことは基本中の基本として叩き込まれていたはずなのに・・・。
今日は浮かれていたのと、突然の状況変化に戸惑い、すっかり頭から脱け出ていたのだ。
67:“Catch Me!” “Yes, I Will !” (10/10)
08/02/21 16:16:07 TyYPWWXG0
「そ・れ・に」
ゴードンは意味ありげに含み笑いしながら、
「『僕を捕まえてみろ!』って言ったのはお前だろ?思い通りになって良かったじゃないか♪」
そう言うと、興奮に任せて一際熱い蒸気をシューッと吐き出した。
トーマスはただならぬゴードンの様子を察知し、慌てて声をあげる。
「ちょ、ちょっと待ってよゴードン!僕はそんな変なつもりじゃ・・・」
「この期に及んで自分の言ったことをあれこれ取り繕うのは見苦しいぞトーマス!今日はお前も仕事の後で
思い切り走りまくって疲れただろうから、誘った俺が責任もって世話してやるぜ!ありがたく思えよ!」
「わああ・・・ゴードン~~~~~~~~~~~!」
俺様の作戦、大成功!
End
68:“Catch Me!” “Yes, I Will !” 作者
08/02/21 16:27:27 TyYPWWXG0
“Catch Me!Catch Me!”というトーマスの英語絵本をヒントにさせて頂きました。
ゴードンがトーマスに競争をふっかけ、最後にはトーマスが知恵をきかせて勝つ、というお話です。
これの日本語訳&実写放映はまだされないのでしょうか…?
69:風と木の名無しさん
08/02/21 17:45:00 psQpMe0k0
正直この作品でこんなに投下ラッシュがくると思ってなかった
>>68GJ!
70:“Catch Me!” “Yes, I Will !” 作者
08/02/21 18:03:27 TyYPWWXG0
>>69さん
ありがとうございます。
貴殿の作品も、もし宜しければ投下して頂けると嬉しいです(^^)
71:風と木の名無しさん
08/02/21 23:13:46 mUw46OOx0
たしかに「僕を捕まえてみろよ!」
誘ってるとしか思えん・・・!
72:風と木の名無しさん
08/02/21 23:16:36 jNAVjX88O
>>71
誘ってねーよ
73:風と木の名無しさん
08/02/21 23:17:49 yA/mBM0n0
>>71
それはない
74:風と木の名無しさん
08/02/22 02:06:36 t9f1ZtEgO
この後トーマスがゴードンにどう「世話された」のか非常に気になるw
75:ヘンリー、せんせいになる(?) Part1
08/02/22 18:02:43 w/cZJYWK0
『ゴードン、せんせいになる』のラストシーンより~
夕方のティッドマウス機関庫。
パーシー「ねえ、僕のスムーズな動き、見てくれた?」
ゴードン「ああ、見ていたとも。お前はしっかり学習したな」
(パーシー、鼻高々)
ゴードン「それと言うのも、ひとえにこの俺様が優秀な教師だからだw」
ヘンリー(おのれ、あの見せびらかし屋の威張りん坊!よくも僕のパーシーを独り占めにしたな…!)
2台の下へヘンリーが近づく。
ヘンリー「ふん、笑わせるなよ。今日君は調子に乗って雪溜りに突っ込んだそうじゃないか。僕ならもっと上手く教えられるね!」
ゴードン「な、何だと!車輪が小さいくせに生意気な…むぐぐっ!?」
パーシー「(ゴードンの口を塞ぎながら)ええっ?それホントなの?ヘンリーも先生になってくれるの?」
ヘンリー「もっちろんさ!僕はいろんなことを知っているし、教えられることはあの星の数ほどあるのさ♪」
パーシー「(目を輝かせながら)じゃ、じゃあ、今晩君の車庫に行ってもいい?教えて欲しいことがあるんだ!」
ヘンリー「ま、まあいいけど・・・」
パーシー「嬉しいっ!じゃあ今夜行くからね!約束だよ!」
ゴードン&ヘンリー「?」
76:ヘンリー、せんせいになる(?) Part2
08/02/22 18:04:28 w/cZJYWK0
その夜。
パーシー「グッドイブニング、ヘンリー♪」
ヘンリー「(本当に来たのか…)や、やあパーシー。それで、聞きたいことって何?」
パーシー「(声を落として)あのね・・・いつも君とゴードンとジェームズの3人が話してること、
何なのか教えて欲しいんだ」
ヘンリー「(な、何かこう嫌な予感…)え・・・何だい、その『話してること』って?」
パーシー「夜になると僕らが休んでる時にいつも話してるじゃない!『かっこいい急接近』とか、『蒸気のあげ方』とか
『連結方法のABC』とか!」
ヘンリー(聞き耳を立てていたゴードン&ジェームズ)「!!!!!!」
まずい、あの秘密を聞かれていたのか・・・ちび達が寝ている隙にこっそり繰り広げていた大人の会話を・・・。
パーシー「ねえ、教えてよ?僕が生まれてからここにくるまで、そんなこと教えてくれる人誰もいなかったもん。
接近方法とか、蒸気のこととか、連結とか、みんな機関車にとっては大事なことでしょ?」
ヘンリー「う、うう・・・それはだね・・・」
ゴードン&ジェームズ「(このパーシーの純粋な瞳で見つめられちゃそうそう誤魔化しは効かんぞ。どうするヘンリー!)」
ややあって。
ヘンリー「ようし、わかった。これはみんな難しくてな。口で言われるだけじゃ、
初心者は何のことか分からないものなんだ。だから特別に、実地で教えてあげるよ!」
パーシー「(ぱっと明るい顔になって)本当!?」
ゴードン&ジェームズ「何だとぉ!」
パーシー「あれ?何か外で声がするよ?」
ヘンリー「(ギクリ!)・・・さ、さあ。夜回りじゃないのかな。
…そんなことより、そうと決まったら早速!じゃあまずはそこに立って大人しくして…」
77:ヘンリー、せんせいになる(?) Part3
08/02/22 18:06:18 w/cZJYWK0
数時間後…
ヘンリー「はあ・・・はあ・・どうだい・・・パーシー・・・分かったかい・・・」
パーシー「うん・・・んんっ・・・すごく・・・きつかったけど・・・でも・・・
気持ちよくて・・・素敵だったよ・・・」
ヘンリー「そっか・・・よかった・・・」
ゴードン&ジェームズ(まさか、本当にここまで強行突破するとは・・・)
ヘンリー「ねえ、パーシー。これがどんなに良いことか分かっただろう?だから、本当に好きな人としか
こういうことはやっちゃいけないんだよ?約束できるよね?」
パーシー「(無垢な笑顔で)うん!約束する。本当にこれ、大切なことだったんだね!」
しかし、「本当に好き」の意味を分かっていないパーシーは、誰彼構わず仲間にこの誘いをかけて皆を慌てさせ、
当のヘンリーを愕然とさせ、挙句にヘンリーはパーシーにいらんことを吹き込んだとして、トップハムハット卿
からこっぴどく叱られる羽目になったのであった。
勿論、夜毎一緒になって猥談に花を咲かせていた他の大型2台も、
しっかり巻き添えを食ったことは言うまでもない。
おしまい
78:風と木の名無しさん
08/02/22 20:16:37 t9f1ZtEgO
乙です!
ヘンリーがメインの話は初めてですね。
パーシーに振り回されるヘンリーの姿が可愛らしいです。
79:風と木の名無しさん
08/02/22 20:40:37 XfRrXhuL0
>>75-77
最高です!
80:ヘンリー、せんせいになる(?) 作者
08/02/22 22:21:53 w/cZJYWK0
>>78>>79
どうも、お褒め頂き光栄です。
ところで、皆様の一押しカップルは誰と誰でしょう?
81:風と木の名無しさん
08/02/23 14:23:02 ieKoQf7G0
自分の一押しカップルは、ゴードン×トーマスですかね。
テレビでも絵本でも、この2人はそっち関係を連想させる絡みが多い。
あとは親友同士ということで、パーシーとトーマス。攻守関係はどっちでもいい。
82:風と木の名無しさん
08/02/23 19:01:42 ieKoQf7G0
第9期放送キターーーーーーーーーーー(゜∀゜)ーーーーーーーーーーー!!!
URLリンク(jlic.sblo.jp)
83:風と木の名無しさん
08/02/24 10:03:45 OK2z+wP0O
攻守双方ありかなと個人的に思うのはヘンリーかな。ちび達相手なら攻め。大型三人衆の中では受け。
ゴードンは総攻めかな。でも意外と浮気はしない・させないタイプかも。
84:風と木の名無しさん
08/02/24 15:27:56 uvwQq82xO
>>82
すごく楽しみだ!
自分は後ろ向きのトードで必死に助けようと頑張るオリバーに萌えた。
スカーロイとレニアスはどちらが受けか攻か悩みます…
85:風と木の名無しさん
08/02/25 01:00:57 uf2+QsftO
個人的にはエドワードが好き過ぎる
空のヒーローのハロルドなんかも如何でしょう…
86:風と木の名無しさん
08/02/25 09:44:37 u20XfjXVO
ハロルドが絡むとしたらトーマスと、あと誰だろう。
ヘリコプターと機関車だから、擬人化しない限り性描写は無理だけど。
87:風と木の名無しさん
08/02/26 16:22:59 TOXkoE6mO
>>86
パーシーと競争するよね。
洪水の時は温かいココアを持って来てくれたし…
郵便列車でのエピソードもあります
88:風と木の名無しさん
08/02/26 20:25:57 tTUfsS9n0
ハロルドは最初気取り屋と思われたらしいが、実はあったかくて良いキャラ。
89:風と木の名無しさん
08/02/27 02:08:07 VFv79hs70
>>84
同じ顔したキャラって扱いに迷うよね
90:風と木の名無しさん
08/02/27 06:31:02 H2UJa5Gf0
今北
“Catch Me!” “Yes, I Will !” 良かったyo
連結エロスハァハァ
91:風と木の名無しさん
08/02/28 10:27:48 spOHaC/f0
>>90
作者です。ありがとうございます!(^^)
92:風と木の名無しさん
08/02/28 11:11:32 yMk0M4ii0
今まで誰にも言えなかったけど、
ヘンリー×ジェームズに萌えてました
93:風と木の名無しさん
08/02/29 00:39:07 9FO+wxPBO
それはどの話から思いつかれた絡みですか?
94:風と木の名無しさん
08/02/29 15:12:06 9FO+wxPBO
パーシーは誘い受けのイメージが・・・
95:風と木の名無しさん
08/03/02 13:39:57 3451GSua0
>>94
パーシーのあの可愛い声で囁かれたらたまりませんよね!
96:風と木の名無しさん
08/03/02 18:14:10 N4M/NrN7O
ハロルド×パーシーの小説を書きたいが、構想が・・・擬人化したらどんなイメージになるだろう?
97:風と木の名無しさん
08/03/02 20:14:59 oWvVy0I60
イラスト描ける人の為にお絵描き掲示板借りてみるとか・・
98:風と木の名無しさん
08/03/03 00:02:01 EoatKogoO
ハロルドは白いスーツの似合う、ちょっと気障だけど根は優しい青年・・・かな。
機関車達にはボディーと同じ色の制服を着てほしいな。デザイン思い浮かばないけど(;^_^A
99:風と木の名無しさん
08/03/03 21:55:48 EoatKogoO
あ、そうだ。トビーは型が違うから、服のデザインも別だな。あと彼とエドワードはどっちが年上だったっけ。
100:風と木の名無しさん
08/03/04 00:28:20 riQGwHrIO
エミリーとトーマスの組み合わせも大好きなのだが、・・・エミリーを男体化させるわけにもいかず・・・。
101:風と木の名無しさん
08/03/04 08:43:38 hOabpfEq0
>>99
トビー>>エドワード(112歳)だったハズ。
102:風と木の名無しさん
08/03/04 10:54:59 riQGwHrIO
ギョエ!もうそんな歳だったのか・・・。
103:風と木の名無しさん
08/03/04 16:03:59 3+71fMLfO
おまえら達人だな
104:風と木の名無しさん
08/03/05 02:26:27 M3QtLzq+O
トビーは絡むとしたら誰とかしら
一度ゴードンを助けたよね
本当は感謝してるのに素直になれないツンデレなゴードンと
素朴で優しい年長者トビーかな
105:風と木の名無しさん
08/03/05 14:08:10 pTRXt4qI0
「とこやにいったダック」見て以来、ダックとエドワードのカップリングに萌えているw
106:風と木の名無しさん
08/03/06 23:19:22 xZoSOODh0
ハロルドとパーシーのカップリングなら、思い浮かぶシチュエーションは・・・
ソドー島に大雪が降り、機関車が動くのは難しい状態。
そこで山の方の住民には、ヘリコプターが救援物資などを届けることに。
機関車より、翼でどこへでも飛んでいける自分らの方が遥かに役に立つと思っているハロルドは
喜び勇んで仕事に向かうが、山の頂上のあまりの寒さに震えてしまう。
そこへ、やっと鉄道も使えるようになり、パーシーも救援物資を積んで手助けにやってくる。
パーシー、「機関車は蒸気を起こす熱い釜を持っているから、自分と体を寄せ合えば温かくなる」
そこでパーシーに寄り添って暖を取らせてもらうハロルド。
機関車を馬鹿にして申し訳ないという気持ちと、それ以上に強いパーシーへの感謝。
…ごめん、あんまり801っぽくなかったな。
擬人化すればもっとアダルティーな絡みも書けそうなんだけど。
107:風と木の名無しさん
08/03/07 14:08:45 rKLLDoDpO
確かに、機関車は近くに寄るとかなり熱いからな。
それだけで色々と想像がw
108:風と木の名無しさん
08/03/08 22:39:28 +5z0C0/Y0
URLリンク(www.borujoa.org)
URLリンク(bull.s11.x-beat.com)
ちょwwwwwwwwコラなんだろうけどすごいやwwwwwwww
109:風と木の名無しさん
08/03/09 00:42:27 QgqVv07e0
第9期放送楽しみ!
110:風と木の名無しさん
08/03/09 10:15:12 3wORFBkh0
>>96
擬人化したら断然あたし!アタシよぅ!orz
姪っ子が「パーシー、○○ちゃんのおかおだよ」といっていると
姉に言われた…特にトーマスふりかけの袋にある写真が似てるって…
昔、クイックジャパンに「中央線きかんしゃトーマス化計画」って記事があったなあ
人身事故が多いから、中央線の電車をすべてトーマスにして(電車ダケド)
キョロッキョロッとホームに入ってくるといいよ!
構内放送はレオだ!
そうすればみんなだつりょくしてじこもへるさ!
111:風と木の名無しさん
08/03/09 13:27:21 Okcp4CYxO
おやおや(;^_^A確かにパーシーはとても可愛いが、似てるって言われると微妙な気持ちになるよね
112:風と木の名無しさん
08/03/09 22:49:18 CPvKBE4H0
事故はー起きるもーのーさー♪
トーマスの歌はどれもみな可愛い。中には凄い不協和音もあ……ゲフンゲフン
113:風と木の名無しさん
08/03/11 01:53:13 fTVKZirg0
「いつもきぼうを」聴きたいんだけど、近くのレンタルビデオ店にない><
114:風と木の名無しさん
08/03/11 20:00:00 qrrJzBexO
「じこはおこるさ」のゴードンは上手いのか下手なのか微妙
115:風と木の名無しさん
08/03/12 11:19:53 Cw1bEr1uO
私は内海賢二さんのお声が大好きだけどね。
あの声で総攻めゴードンを演じられたらたまらないv
116:風と木の名無しさん
08/03/13 12:21:57 DV0SvLPuO
ジェームズ役の森功至さんが、トーマスと同時期に見ていた
セーラームーンのネフライト役でもあったと知り
ちょっと驚き
ネフライト役としてのお声は絶対攻めだろうと思うけど
ジェームズ役のお声は受けもありかな
117:風と木の名無しさん
08/03/14 17:21:58 roy/JcoxO
擬人化ゴードン×トーマス小説を執筆中なのですが、かなりの長編になりそうな予感です
(舞台は「女王陛下がやってくる」から借りました)
もし、ある程度長くても宜しければ、完成次第投稿致しますが如何でしょうか。
118:風と木の名無しさん
08/03/14 20:11:31 jpi+1yJ2O
楽しみにしてます
頑張ってください
119:風と木の名無しさん
08/03/14 20:26:13 roy/JcoxO
118さん、ありがとうございます。
未熟な点も多々あるかとは思いますが頑張ります。
120:風と木の名無しさん
08/03/16 02:59:30 NXeZHRHA0
117=119です。
かなり長いのですが、取り合えず書き上がりましたので、今から投稿いたします。
>>9->>13と、>>51->>55の設定が気に入ったので、今回の作品でも生かすことにしました。
あと、連投規制にひっかかると思いますので、何時間か間を置いて投稿させていただきます。
どうか宜しくお願いしますm(_ _)m
121:FOR YOU Part 1
08/03/16 03:00:22 NXeZHRHA0
夕暮れのソドー島。
穏やかな茜色の空の下、ゴードンとトーマスはティッドマウス機関庫への帰りを急いでいた。
いろいろと忙しい一日だった。以前、ゴードンが転車台から溝にはまったことがあるのだが、
今日はそのことをからかっていたトーマスが鉱山の穴に転落して、ゴードンに助け出されたのだ。
ゴードンはトーマスを抱いたまま、腕の中の華奢な少年に語りかける。
先程彼に言ったばかりの言葉を、念を押すように繰り返した。
「覚えとけよ、トーマス。俺たちは転ぶ時も起き上がるときも一緒だ。お前が助け、俺が助ける」
「ああ、わかってるさ」
トーマスはわざと大きな声で返事をした。
抱きかかえられたまま帰るのはちょっぴり恥ずかしい。
けれどそれ以上に、何ともいえない不思議な温かさが、トーマスの心身を柔らかく包み込んでいる。
(何でだろうね・・・ずっと、こうしていたい気分だよ・・・)
ゴードンから伝わる体温だけではない、その温もりが何なのかよく分からないまま、
トーマスは彼の広い胸に身を預けた。
122:FOR YOU Part 2
08/03/16 03:01:02 NXeZHRHA0
やがて2人は機関庫に到着し、ゴードンはトーマスをゆっくりと腕から下ろした。
「ありがとう、ゴードン」
トーマスは名残惜しさを感じながらも、微笑んで礼を言った。
「いいってことよ。俺様に取っちゃわけないからな・・・おや?」
突然、ゴードンが他の同僚たちのいる機関庫の方に視線を向け、声をあげる。
つられてトーマスも振り向く。
「あれ?何だ?何が起きているんだ?」
機関庫の周辺に、大勢の人だかりができているではないか。
2人は急いで機関庫に入り、自分の担当する機関車の元へと走りこむ。
やって来ていたのは機関車を手入れする整備士や塗装職人の面々だった。
トーマスは隣の車庫を担当するパーシーに聞いた。
「ちょっと、これはどういうことだい?機関車の一斉検査でも入ったの?」
「しーっ、静かに!これからトップハムハット卿が説明してくれるよ!」
パーシーに言われ、トーマスは慌てて転車台の方向を直視する。
トーマスたちよりも先に機関庫にやって来ていたトップハムハット卿が、太っちょの体を揺すりつつ、
いつもより幾分もったいぶって台に乗り、話し出した。
「紳士淑女のみなさん。そして機関車の諸君。かの女王陛下が、ソドー島においで下さることになった」
123:FOR YOU Part 3
08/03/16 03:01:49 NXeZHRHA0
(え!?)
トーマスも同僚たちも、思わず声が出そうになるのをかろうじて呑み込んだ。
女王陛下が…この島にいらっしゃるだって?
イギリス国民なら誰もが敬愛してやまない、あの女王陛下が!?
皆、興奮と緊張とで心臓の鼓動が高まるのを抑えられない。
ハット卿は声の調子を一段とはっきりさせて命じた。
「いざ、準備に取り掛かれ!」
ハット卿が帰った後の機関庫は、不安交じりの期待感で一杯になった。女王陛下のお召し列車を引っ張るのは果たして誰なのか?
「あーあ、僕の列車はもう歳だから、お呼びじゃないな」ベテランのエドワードが悲しそうに呟く。
「ま、俺様はお仕置きの最中だから、牽かせては貰えんだろうな」ゴードンも、珍しく弱気な言葉を口にする。
それを聞いた瞬間、トーマスは心配になった。ハット卿は果たして自分たち2人を許してくれるのだろうか・・・。
(何とかしなくちゃ・・・これじゃ、ずっと大切な仕事ができないままだ!)
それぞれが失敗をしでかして以来、トーマスは自分の支線を走らせてもらえないし、
ゴードンはゴードンで、彼が今まで殆ど一手に取り仕切っていた急行列車の運行を禁止されているのだ。
すぐ傍でジェームスとヘンリーが憎まれ口を叩きあっているが、トーマスの耳には殆ど入らない。
(嫌だ・・・“役に立つ機関車”でいられなくなるなんて・・・ハット卿に見捨てられるかもしれないし、それに・・・)
尊敬する上司や同僚に自分の実力を認めてもらいたい欲求よりも、更に熱烈な思いがトーマスを突き動かす。
(ゴードンだって・・・働けないじゃないか・・・!)
そう心の中で叫んだ瞬間、彼はふと我に返った。
124:FOR YOU Part 4
08/03/16 03:02:36 NXeZHRHA0
(まただ。またゴードンのこと・・・夢中で考えてる・・・)
どうしてこんなにも、彼のことが気になるのだろう。
今日助けてもらったばかりの相手だから?
散々からかってしまった後なのに、彼が急いで救いに来てくれたことへのバツの悪さから?
いきなり抱き上げられてここまで運ばれ、動転しているだけだろうか?
(違う!違う・・・そんなんじゃない・・・!)
それだけではない、決まり悪さや感謝という言葉だけでは言い尽くせない、もっともっと激しい感情。
機関庫への帰り道で感じた、あの不思議な温もりは何だったのか。
抱きかかえられていることに恥ずかしさを覚えながらも、一方ではずっとこのままでいたいと、
矛盾した想いが広がっていたのは何故なのだろう。
(もういい、考えるのはやめよう!)
これ以上ここで悩んでいても仕方がない。トーマスは大きく頭を振ると、回れ右をして宿舎の方に歩き出した。
背後で、ゴードンがどこか暗さを秘めた、燃えるような強い視線を自分の方に投げかけていることには全く気づかずに。
125:FOR YOU Part 5
08/03/16 13:55:31 NXeZHRHA0
数日後。
結局、ハット卿がお召し列車担当に選んだのはヘンリーだった。
あれだけ彼と口喧嘩していた筈のジェームスは、選ばれなかったことについて、何故か不服そうな様子を全く見せず、
むしろ考えごとに耽っているように見えたが、その中身は他の連中の知るところではなかった。
それはともかく、ヘンリーの列車は、女王陛下をお迎えするために、整備士や塗装職人の手で徹底的に磨かれることになっていた。
ところが、塗装作業の最中に、職人の使っていたはしごが倒れて、ペンキ入りのバケツが車体の上にひっくり返ってしまう。
ヘンリーもハット卿も大慌てだ。
「ヘンリー、これじゃ機関車がデコレーションケーキのようじゃないか・・・なに、今からの塗り直しはとても無理だと?
・・・しょうがない、他を当たるとするか」
そう言ってハット卿は立ち去った。
せっかくの晴れ舞台を奪われた哀れなヘンリーに、後で何らかの埋め合わせをしてやろうと考えながら。
その頃、石炭を積んだ貨車を牽いて走り回っていたトーマスに、仲間の機関士が声をかけてきた。
「おい、トーマス聞いたか。ヘンリーの機関車がペンキを盛大に被ってしまって、お召し列車どころじゃなくなったらしいぞ」
「えぇ!じゃあ、代わりは誰がやるんだい?やっぱりジェームス辺り?」
「それが違うんだな」機関士は声を潜めて言う。
「ジェームスは自分から辞退したらしい。その代わりかどうか知らないが、ハット卿に何か頼んでいたようだぜ」
「へえ・・・何を頼んでいたんだろう?」
「さあ、そこまでは知らんな。だがとにかくハット卿はその願いを聞き入れたらしくて、今日の夕方はナップフォード駅の事務室で
計画立てるんだとさ」
126:FOR YOU Part 6
08/03/16 13:56:35 NXeZHRHA0
機関士と別れた後、トーマスはあれこれ考えを巡らせる。
(結局お召し列車は誰が牽くんだろう?大きくて立派な特別客車を何台も牽ける機関車っていったら、ヘンリーかジェームスか、
ゴードンの担当だよな?ヘンリーのはペンキ被っちゃってて、ジェームスでもない。じゃあ・・・ゴードンしかいない・・・
だけど僕もゴードンもまだ謹慎中だし・・・そうだ!)
突然、トーマスの頭に稲妻のようなひらめきが走った。
(ハット卿のところに行って、ゴードンに女王陛下のお召し列車を牽かせてあげて下さい、って頼もう!)
女王陛下のお召し列車を牽くこととは、単なる晴れの日の主役になることだけではない。
ゴードンが自動的に、彼の得意である急行列車の仕事に戻れることを意味する。
当然ながら、普段から客車、特に注意と技量を要する急行列車の運行を担当しない者に、女王陛下の旅を任せることなどありえないからだ。
とにかく早くゴードンをそのライフワークに復帰させ、彼らしい誇らしげな顔が見たい。
何故そんな気持ちになったのか、相変わらず説明をつけられないままだが、トーマスの頭はそのことで一杯になった。
夕方になり、全ての仕事を終えたトーマスは、ナップフォード駅待避線に自分の機関車を停めに向かった。
慎重に車体をカーブさせ、支線から待避線に入ると、
(あれっ!?)見ると、そこには既に先客がいた。自分のより遥かに大きな、ゴードンの青い機関車が停車しているではないか。
(まさか・・・ゴードンも来ているのか?・・・とにかく行ってみよう!)
急いで車体を止め、トーマスは走って駅事務室に向かった。
「すみません、ハット卿!」トーマスはノックもそこそこに、白い頬を紅潮させながら駅事務室に飛び込む。
案の定、そこにはハット卿と、仕事を終えたらしいゴードンがテーブルを挟んで座っていた。
「やあ、トーマス。君も来たのかね」
ハット卿は意外そうに、それでも思ったより穏やかな声でトーマスを出迎えてくれた。
127:FOR YOU Part 7
08/03/16 13:57:27 NXeZHRHA0
ゴードンもトーマスの姿を認め、こちらに視線を向ける。
その途端、トーマスは心臓が再びドキドキと鳴り出すのを覚えた。
(まただ・・・この間から、もう、どうしたんだろう・・・)何だか息苦しくさえなる。
(ええい、そんなこと考えてる場合じゃない!今日は大事な用事があって来たんじゃないか!)
トーマスは心の中のもやもやを追い出そうと、ゴードンから目を逸らし、ハット卿に向かい合って座った。
「それで、今日はどうしたのかね。2人揃ってわしに会いに来るとは珍しいじゃないか」
ハット卿は手の中の書類の束を整理すると、改めて2人をじっと見つめる。
トーマスは腹にぐっと力を込め、大きな声で切り出した。
「「お願いします!!」」
(え・・・?)トーマスは一瞬言葉を呑みこんだ。
部屋の中に、自分と、もう1人・・・ゴードンの声が同時に響き渡ったのだ。
(ゴードンも・・・頼みごとに来ていたの・・・?一体何を・・・?)
「まあ、まあ、落ち着いて1人ずつ話したまえ」
ハット卿が2人をなだめる。
「何だね、ゴードン?」
先を促されたゴードンが、ためらいがちに意外なことを口にした。
128:FOR YOU Part 7
08/03/16 13:58:09 NXeZHRHA0
「あのう・・・トーマスはまた、支線を走ってもいいですか?」
(何だって!?)
トーマスは思わず隣にいるゴードンの顔を見やる。
彼の顔には、ただ並々ならぬ真摯さのみが浮かんでいた。
(ゴードンが、僕のために・・・?どうして・・・?)
けれど、ゴードンはそれ以上何も言わず、硬く唇をつぐんで、ハット卿の返事を待つだけだった。
ただ驚くしかない展開に、トーマスは自分の願いも言い出せない。
しばし沈黙が支配する。
「ふーむ」
じっと考え込んでいたハット卿が口を開いた。
「よろしい」
そう言って顔を上げ、二人の顔を交互に見ながら、彼は言った。
「お前たちもこのところ反省しているようだし、ここらでご褒美をやるとしよう」
「本当ですか!」
トーマスは顔をパッと輝かせて叫んだ。
「ああ、本当だとも。女王陛下がいらっしゃる日には、まずエドワードが案内役を務める」
ハット卿は優しく続ける。
「トーマス、お前は客車の世話だ。そしてゴードン」
一旦言葉を切り、彼はゴードンの方に向き直る。大事な話をするときの癖で、一度ゆっくり手で彼を指してから、
「お前は、女王陛下のお召し列車を牽くのだ」
129:FOR YOU 作者
08/03/16 13:59:20 NXeZHRHA0
すみません、連投規制に引っかかる前に、一旦ここで切ります。
全部で30話くらいになりそうです・・・。
130:FOR YOU Part 8
08/03/16 14:43:48 NXeZHRHA0
トーマスは、耳にはとても自信がある。
また、普段から人の話はちゃんと聞いている方だとも―敢えて従わずに無茶をして事故を起こしたことはあるが―思っている。
けれど、今はどうしても、自分の聞いたことが信じられない。
(客車の世話・・・ということは、車体を整理しなきゃならない。整理する場所は支線・・・
じゃあ・・・僕は支線に戻っていいんだ!)
(それに・・・ゴードンもお召し列車を牽ける・・・僕が・・・頼もうとしていたことが叶うなんて・・・)
知らず知らずのうちに顔が綻ぶ。
「俺が・・・お召し列車を牽くんですね?」
ゴードンは半信半疑、しかし任されるなら全身全霊をかけてやり遂げる、という強い意思を感じさせる声でハット卿に確認した。
「そうだ。お前の仕事だ」ハット卿も繰り返す。「女王陛下をお乗せするのだからな。いつものように猛スピードで走るのではないぞ。
だが、まかり間違っても遅れてはならん。事故など問題外だ。良いな」
「「はい!」」
トーマスとゴードンは、再びそろって返事をした。今度は先程のような緊迫したものではない。
やっと、自分たちが許され、大役を任されることになった喜びの声だ。
「うむ、よしよし」ハット卿は満足そうに頷いた。
ちょうどそのとき、機関士の1人がハット卿を呼びに来た。何か急用ができたらしい。
「わかった、すぐに行く」
ハット卿は立ち上がって支度をしながら、2人を振り返り、
「そういうことだ。分かったな。今からしっかりと準備をしておくように」そう言い渡すと、機関士と共に忙しく去っていった。
後には、トーマスとゴードンの2人だけが残された。
131:FOR YOU Part 9
08/03/16 14:44:47 NXeZHRHA0
「わーい、やったやった!ついにお許しがもらえたぞ!」
トーマスは嬉しさのあまり、椅子から立ち上がってはしゃいだ。
「しかも女王陛下をお迎えできるなんて!こんな素晴らしいことってないよ!そうだろ、ゴードン!・・・あれ?ゴードン?」
しかし、少年らしく無邪気に騒いでいるトーマスとは対照的に、何故だかゴードンは俯いて黙りこくっている。
先程までの喜びと責任感が入り混じった表情が嘘のように、浮かない顔だ。
「どうしたの、ゴードン?」トーマスは彼の方に歩み寄り、声をかけた。
「良かったじゃないか、これで無事に急行列車の仕事に戻れるし、大切な役目だって任せてもらえたんだよ?
・・・そりゃあ・・・女王陛下のお召し列車を牽くなんて並大抵の仕事じゃないだろうけど、でも、ハット卿はゴードンなら
大丈夫だって思ったから君に頼んだんじゃないか?大丈夫だって、ちゃんとできるよ!僕もゴードンを信じてるからさ!」
きっと責任重大な仕事を前にして、プレッシャーが掛かっているのだろうと解釈したトーマスは、何とか彼を元気付けようと、
一生懸命慰めた。もっとも、普段に比べて饒舌になったのには、ここ数日ゴードンのことを考えると決まって浮かんでくる、
例のわけの分からない感情を吹き飛ばそうという狙いもあるのだが・・・。
それでも、ゴードンは長身を椅子に沈め、その精悍な美貌を強張らせたまま、何も言おうとしない。
トーマスはだんだん心配になってきた。
「ゴードン・・・?」
しばらくの間、駅事務室は無人のごとく、静まり返っていた。
132:FOR YOU Part 11
08/03/16 14:46:35 NXeZHRHA0
「・・・トーマス・・・」
ようやく、ゴードンが重々しく口を開いた。
いつもの彼には似つかわしくない、恐る恐るといった風情で。
「・・・うん」
苦しげな雰囲気に呑まれ、トーマスもそっと返事をする。
ゴードンはゆっくりと顔をこちらに向ける。
そして、何やら思いつめたような表情で、静かに尋ねてきた。
「トーマス・・・お前はさっき、俺と一緒に『お願いします』って言ったよな?」
「あ、ああ」
トーマスは殆ど機械のようになって、反射的に頷く。
「そのとき・・・お前は、一体何をハット卿に頼むつもりだったんだ?」
「え・・・っと、それは、その・・・」
こんなゴードンを目の当たりにするのは初めてのことだ。
胸の中に渦巻いている不思議な感情も、彼の只ならぬ威圧感に押し潰されるのではないかと思えるほど。
言いたいことがあるのに、言葉が喉につかえたようでうまく出てこない。
※(番号がPart 8から10まで一ずつずれていました)
133:FOR YOU Part 12
08/03/16 14:47:24 NXeZHRHA0
「答えろ!」
突然、ゴードンがガタン!と椅子を弾き飛ばして立ち上がり、トーマスの両の二の腕をがっちりと掴んだ。
「わあっ!な、何するんだ!」
いきなり捕まえられてパニックに陥ったトーマスは、悲鳴交じりの抗議を僅かにするのがやっとだった。
その言葉にゴードンも理性を少し取り戻したのか、腕の力を緩め、
「すまん、手荒なことをした・・・」
そう言って心なしか目を伏せたが、またすぐに顔を上げてトーマスの青い瞳をしっかりと見つめるや、
「だが、どうか教えてくれ。お前はハット卿に何を言おうとしたんだ」
再びそう尋ねた。
(ゴードン・・・!)
一体、今日の彼はどうしたというのだろう。
並々ならぬ自信に満ちた、ともすれば尊大とさえとられかねない普段の姿はどこかへ消え去り、
ただただ、強いけれども何かに怯えたような瞳で、じっとこちらを見据えるのみだ。
何を言えば良いか、何をしたら良いかと問われても、即座に答えがでてこない。
本当なら、この理不尽ではっきりしない態度に、声を荒げて罵ることさえしていたかもしれないが、
今のトーマスにはそんな気は微塵も起きなかった。
目の前のゴードンからは言葉に出来ない恐怖感さえ漂ってくる。
腕を振り解いて逃げようかと思ったが、体も心もすくんでしまって言うことを聞かない。
134:FOR YOU Part 13
08/03/16 15:14:48 NXeZHRHA0
「僕も・・・頼みたかったんだよ・・・ゴードンのために・・・」
トーマスはしばし迷った後、それだけを口にした。
彼はこうやって問い詰められたり、普段とは違う状況に置かれたりした時に、心にもないことを言ってその場を取り繕うという
器用な真似ができるタイプではない。
だとしたら、今はただ自分の思いを正直に話すことが最善策だと、そう考えたのだ。
「俺の、ために・・・?」
トーマスの腕を掴んだまま、今度はゴードンが驚きの表情を見せる。
「そうだよ・・・」
彼はまだ心臓が張り裂けそうだったが、それでも感情に背くことなく語りかけた。
「今日の昼間・・・仲間の機関士から聞いたんだ・・・ヘンリーの車両がペンキ被って使えなくなったって。
ジェームスも、自分から今回は表に出ないと言ったって・・・。だから・・・」
思うように舌が回らず何度もつっかえる上に、震えているのでゴードンから視線を逸らしがちになってしまうものの、
絶対に嘘などつくまい、という決意を言外に匂わせながら続ける。
「・・・だから・・・女王陛下のお召し列車を牽けるのは・・・他にゴードンしかいないと思ったから・・・
ハット卿に頼んで・・・ゴードンにまた客車を牽かせてあげて下さい、って言いたかった・・・
だけど言う前にハット卿が・・・ゴードンにさせてくれるって・・・だから・・・もう言わなかった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
135:FOR YOU Part 14
08/03/16 15:15:36 NXeZHRHA0
「それに・・・」
一旦言葉を切って気持ちを落ち着かせ、一番言いたかったことを伝える。
「特別な客車で・・・大事な人を運ぶのはいつも・・・ゴードンの仕事でしょ・・・。
だから・・・だからまた・・・ゴードンが自分の仕事・・・できるように・・・なってほしかったんだ・・・。
仕事させてもらえなくて・・・辛そうな顔してるところ・・・もう見たくなかったんだ・・・」
それだけ言うと、トーマスはふうっと息を吐き、かすかに俯いた。
別にやましいことなど何もないし、嘘も言っていない。
だが、何故ここまでゴードンに執着するのか、ずっと自分自身誰かに問いかけたいほど悩んでいるままだったし、
今の彼を直視するのも怖かったのだ。
(夢じゃなかろうか)
ゴードンは頭がぼうっとしたまま、何度も自分に問いかけた。
(トーマスも・・・俺が仕事に戻れるように・・・ハット卿に直訴しようとしていただと?)
(・・・じゃあ、トーマスは、俺が思っていたより遥かに、俺を案じてくれてたっていうこと・・・だよな?
俺の立場も・・・心も・・・)
トーマスはそっと顔を上げ、目の前の屈強な青年を見つめる。
彼は相変わらずトーマスの腕を掴んだまま、後輩の言葉が信じられないといった顔で立ち尽くしていた。
先程まで彼の全身から感じられた、あの凄まじい恐怖はだいぶ薄まっている。
それを察したトーマスは、気を取り直して言った。
「ゴードン、じゃあ・・・今度は僕が聞く番だよ。何で君は今日に限って、こんなに不安そうにしているの」
136:FOR YOU Part 15
08/03/16 16:47:03 NXeZHRHA0
「お前の気持ちが・・・知りたかった・・・」
ゴードンはそろそろとトーマスの腕を解放すると、喉の奥から搾り出すような、うめきにも似た調子で答えた。
彼のどこにこんな声があったのだろうかと、一瞬疑いたくなるような弱弱しさだ。
「僕の・・・気持ち・・・?」
思いもかけない言葉に、トーマスの全身が再び固くなる。
「実はな・・・ヘンリーの一件は俺も既に知っていた。ジェームスがハット卿に何か頼んだっていう話も」
ゴードンはまだ迷いを含んだ口調で、しかしトーマスの目をしっかりと見ながら語る。
何に迷っているのかトーマスにはまだ知る由もないが、視線を逸らそうとしないのは彼の気丈さ故だろう。
「ジェームスは・・・あいつとはしょっちゅう喧嘩ばかりだが、何だかんだでお互いに力を認め合ってる仲だ。
だから、さっきハット卿からお召し列車を牽けと言われたときも、きっとあいつが頼んでくれたんだろうと思いこんでな。
そんなに驚きはしなかった。
だが・・・お前が・・・俺のために、ハット卿に願い事をしようとしてくれていたなんて・・・」
(ゴードン・・・?)
相変わらず今日のゴードンは分からないことが多いままだ。
普段の彼なら、こんなに回りくどい言い方はまずしない。何を言おうとしているのだろうか。
けれども、ここは彼に話したいだけ話させるべきかもしれない。
「ジェームスが何を頼もうとしていたのか、僕は知らないよ」
トーマスはできるだけ落ち着いて言葉をかける。
「だけど・・・もしそうだったら悔しいな。僕が言いたかったこと、先に言われちゃったってことだもの」
137:FOR YOU Part 16
08/03/16 16:47:49 NXeZHRHA0
ゴードンは「そうだな」と、ごく僅かな微笑を浮かべてそっと頷く。
「だから・・・俺が心配していたのはトーマス、お前のことだけだった」そして彼は続けた。
「お前が自分の支線を大事にしていることは、俺もよく知っている。
だが、標識を無視した罰として、お前はずっと支線を走らせてもらえないままだっただろう?
自分の愛する仕事を取り上げられるのがどんなに辛いか、それは俺にも良く分かる。俺も立場は同じだから。
だから・・・今日は仕事が終わったら、ハット卿に、またお前が支線に戻れるように願おうと決めていたのだ」
「どうして・・・」トーマスは待ちきれなくなって尋ねた。今日のゴードンは何か訳がありそうだから、
決して急かすまいと最初に決めたはずなのだが、話を聞くうちにどうしても確かめておきたくなったのだ。
そして、今自分がゴードンに対して抱く訳の分からぬ気持ちにも、何だか答えが出そうな予感がした。
「どうして・・・君はこうまでして、僕を助けようとしてくれたの・・・?
・・・僕が何をハット卿に頼もうとしたのか、こんなにも気にしていたの・・・?」
「トーマス・・・!」
ゴードンの美しい鳶色の瞳も、健康的な浅黒い頬も、小刻みに震えているのは気のせいだろうか。
「君が頼んでくれたのは本当に嬉しいし、感謝しているよ。お陰で支線に戻って客車の世話ができることになったんだから。
だけど・・・何でそうやって・・・僕を守ってくれるの?それに・・・僕の気持ちが知りたいって・・・?」
トーマスの言葉が終わらないうちに、ゴードンの中で何かが弾け飛んだ。
次の瞬間、トーマスは恐ろしく強い力で引き寄せられる。
「!!」
とっさに言葉が出ない。
138:FOR YOU Part 17
08/03/16 16:49:17 NXeZHRHA0
「トーマス・・・」
トーマスの小柄な体をがっしりと捕らえたまま、ゴードンはトーマスを正面から見据えて言う。
ようやく、彼も自分の感情に正直になる覚悟ができたかのように。
「俺は・・・ずっと・・・お前のことが・・・」
トーマスは頭の整理がつかず、何も言えずにただただ全身を硬直させるしかなかった。
いつの間にかゴードンの息は激しく荒くなり、心臓も早鐘を打っているのが互いの制服越しに伝わる。
「お前が・・・好きだ・・・!」
そう言うとゴードンはいっそう強く、腕の中の少年を抱きすくめた。
「ゴードン・・・」トーマスが何とか口に出来たのは、相手の名だけだった。
それをどのような意思表示と解釈したのか読み取れないまま、ゴードンは続ける。
「いつからだったか思い出せないが・・・多分、この間お前を助けたときより、ずっと前から・・・
ふと気がついたら、お前のことが俺の頭を離れなくなっていたんだ」
139:FOR YOU Part 18
08/03/16 16:50:00 NXeZHRHA0
ずっと心に留まっていた相手の口から、思ってもみなかった言葉が、次々に流れ出る。
「最初は何故なのか分からなかった・・・いや、もしかしたら分かるのが怖かったのかもしれん。
何せ、俺達はいつもお前を散々ちびの役立たず呼ばわりしてきたんだから、今更どんな顔で・・・ってな。
自分の本当の想いと、きちんと向き合おうという気にはなかなかなれなかった。だが・・・」
一度大きく息を吸い込んでから、
「お前を穴から助け出したとき、やっと・・・やっと気づくことが出来た。
そして・・・さっき、お前の話を聞いて、はっきり言う決心もついたよ。」
ゴードンはこれまでになく真剣な眼差しでトーマスと視線を合わせ、静かに、けれど凛として告げる。
「俺は、お前を愛している」
140:FOR YOU 作者
08/03/16 16:56:37 NXeZHRHA0
すみません。当初は30話の予定でしたが、もう少し長くなりそうです。
これ以上書く時間が確保できるか怪しいので、今のところはこれまでにします。
また時間ができたら、今日中に続きをアップします。
141:FOR YOU Part 19
08/03/16 18:49:31 NXeZHRHA0
何もかもが遠い別世界の出来事のようだ。
衝撃的なゴードンの言葉も、表情も、強靭な腕と胸の感触も。
トーマスはしばらくの間、ぼんやりと彼の瞳を見返す。
ゴードンも心の内をさらけ出し終えて、身じろぎもせずトーマスを見下ろしたままだ。
(そう・・・か。そういうこと・・・だったんだな・・・)
あちこちに散乱していたパズルのピースが、一つずつあるべきところに納まっていく。
何故、ゴードンがこれほど自分のことを気に掛け、ハット卿の命令でもないのに守ろうとしてくれたのか。
2人揃って本来の仕事に戻ることを許され、大役まで任された後も自分の願いを口にしようとしなかった自分の心情が判りかねて、
不安になるほどだったのは何故なのか。
自分がゴードンを助けたがっていたと知ったとき、俄かには信じられないという様子を見せた理由は何だったのか。
(全部、一つのところで、繋がっていたんだね・・・)
そして、ここ数日間自分を捕まえて離さなかったあの想いにつけるべき名前も、トーマスはようやく
探り当てることができそうだった。
思いがけない告白をされて少なからず驚いたものの、全く嫌悪や拒絶の感情が生まれることなく、むしろどこかで
安堵している自分に気づいたから。
142:FOR YOU Part 20
08/03/16 18:50:41 NXeZHRHA0
「・・・ありがとう、ゴードン・・・」
ここにきてトーマスはやっと、愛らしい顔を緩め、ゴードンに微笑みかける。
自分の方もいつの間に、こんなに彼に魅かれていたのだろう。
気が強くてわがままで、大柄な体とスタミナと運転技術の高さを鼻にかけ、露骨に職務の選り好みはするし、
仕事ができるからと威張り散らして、ソドー鉄道のリーダー風を吹かしてばかり。
自分も彼としょっちゅうぶつかり合っていたし、小馬鹿にされたこともしたことも一度や二度ではない。
でも、本当はとても根が明るく純粋で、仲間を助けようという漢気は誰にも負けない、良くも悪くも一本気な青年。
いくら喧嘩したところで、彼を心から憎みきれる者など、そうそういないはずだ。
「嬉しいよ・・・僕だって、ゴードンのことが大好きなんだから・・・」
そう言うと、トーマスは彼の胸に顔をすり寄せた。彼に抱かれて帰って来たあの日と同じ、温かさを感じさせる胸に。
143:FOR YOU Part 21
08/03/16 18:51:34 NXeZHRHA0
「・・・あ、あのな・・・トーマス・・・」
頭上から、いささか戸惑いを含んだゴードンの声がする。
「お前・・・『大好き』の意味を・・・勘違いしないでくれよ・・・?」
「勘違い・・・?」
ゆっくりと頭を起こし、ゴードンの顔を見上げる。
そこに浮かんでいるのは、嬉しさ4割、不安6割といったところだろうか。
トーマスが予想外に良い反応を示したので、下手をすると自分の告白を単なる友情の証と取り違えられたとでも感じたのか。
(勘違いだって?そんなこと・・・)
するわけないのに、だって僕だって・・・と言おうとしたとき、
「・・・トーマス・・・」
ゴードンが急に、再び表情を引き締める。
「俺の・・・言ってるのはだな・・・」
そう言った途端。
144:FOR YOU Part 22
08/03/16 20:17:47 NXeZHRHA0
「・・・・・・・・・・・・・っ!?」
急に息ができなくなる。
一体、何が起きたのか分からなかった。
燃え盛るような熱さと、いささか湿り気を帯びた、優しく包み込む柔らかさ。
トーマスの唇は、その熱と感触に、深く、強く塞がれていた。
(ゴードンが・・・僕に・・・!)
目の前の出来事を、現実のものとして受け入れられるようになるまで暫く時間がかかった。
ゴードンは腕に込める力を強め、僅かずつ唇を動かしながら、トーマスの唇全体を余すところなく味わう。
触れ合うところから、甘く心地よい痺れがじわじわと生まれ、体中に広がりはじめた。
「んっ・・・!」
トーマスの全身から、だんだん力が抜けていく。
がくりと崩れそうになったところを、鍛え上げられた腕で素早く抱きとめた。
(トーマス・・・!)
何もかもが愛おしい。
その亜麻色の髪も、よく動く悪戯っぽい瞳も、少年らしいしなやかな色白の肢体も。
(お前は・・・俺のもの・・・俺だけのものだ!もう・・・絶対に離したりするものか!)
そう心の中で叫び、一旦僅かに唇を浮かせると、再び貪るような勢いで吸い付いた。
145:FOR YOU Part 23
08/03/16 20:19:14 NXeZHRHA0
(ゴードン・・・)
2度目の口吻を受け、トーマスはもう先程のように頭が真っ白になったりはしなかった。
自分も待ち望んでいた、と言いたげにゴードンと唇を重ね、
彼の逞しい背中にそっと腕を伸ばす。
(僕も・・・やっと分かったんだよ。こんなにも、君のことが好きだったって)
ゴードンも最早当惑したりはしない。不安にもならない。
もうトーマスの気持ちは十分すぎるほどに理解できたから。
やがてゴードンは名残惜しげにトーマスの唇を解放すると、穏やかに微笑んだ。
トーマスも愛のひたむきさだけを湛えた表情で、彼を見つめ返す。
「トーマス・・・俺と・・・付き合ってくれる・・・な?」
「ゴードン・・・!」
本当は大喜びで「もちろん!」と言うはずだったのに。
突然、何の前触れもなく下の方から激しい震えがこみ上げてきて、
笑顔と、泣き出しそうな表情が入り混じった顔になってしまう。
この期に及んでわけもなく照れくさくなり、それ以上言葉が出ない。
「・・・・・・・・!!」
答える代わりに、しゃにむに彼の胸に深く顔を埋め、幾度も大きく頷いた。
「トーマス・・・・・・・・・・・!」
ゴードンは歓喜のあまり、狂おしくトーマスを抱きしめる。
「ありがとう・・・ありがとう・・・!!俺のトーマス・・・!!」
何も言われなくても、ゴードンにはちゃんと、トーマスの返事が伝わったのだ。
146:FOR YOU Part 24
08/03/16 20:20:38 NXeZHRHA0
それから数日後、いよいよ女王陛下がソドー島にお越しになる日がやってきた。
ゴードンとエドワードはまだ暗いうちから車両を整備し、陛下をお出迎えするために港へ向かう。
残ったトーマスたちは明るくなってから、それぞれが担当する路線上の車両を整理するのだ。
トーマスは自分の支線を忙しく走り回り、まずは再会の喜びもそこそこに、アニーとクララベルをナップフォード駅のすぐ近く、
構内がよく見える位置に停めてやる。
それが済むと、いつも悪さばかりする貨車たちにも、今日ばかりは大人しくするように厳しく言いつけて、行儀良く並ばせた。
(戻ってきたんだ・・・僕の支線に・・・!)線路を行ったり来たりして作業していると、知らず知らずのうちに涙が浮かぶ。
久方ぶりに走る自分の支線。自分がいかにここを大切にしていたのか、しみじみと身にしみた。
全ての作業を終え、皆は揃って駅構内の持ち場について待機する。
正午頃、エドワードの車両が滑り込んできた。
「女王陛下が到着するぞ!」
トーマスも、同僚たちも、押さえ切れないほどの胸の高まりを覚えていた。
それから更に10分ほど経ち、荘重な車輪の音が耳に届く。
(ゴードンだ!)トーマスは叫びそうになるのをかろうじて堪える。
すぐに、大きなカーブを慎重に曲がりつつ、ゴードンの機関車が皆の前に現れた。
147:FOR YOU Part 25
08/03/16 20:22:20 NXeZHRHA0
ゴードンの車両は普段から称賛の的になることが多いが、これほど立派な姿は、島の誰も見たことがない。
車体は煌くばかりに磨かれ、真鍮も眩しい夏の日差しを存分に受けて光っている。
前面には豪華な花輪とイギリス国旗、王室旗が丁重に飾られ、
そして・・・運転席から覗くゴードンの表情も、これ以上ないほど誇らしげに輝いていた。
お馴染みの汽笛を大きく響かせながら、ゴードンの車両は駅構内にゆっくりと停車する。
後ろに牽かれた特別製の客車の扉が、静々と開かれた。
ハット卿がシルクハットを脱ぎ、厳かに出迎える。
「ようこそ、陛下!」
目の覚めるような緋色の絨毯が敷かれたホームに、女王陛下がゆっくりと降り立った。
ハット卿は陛下のもとに跪き、この鉄道の総責任者として、恭しくカートゥシーを捧げた。
やがて、パーシーとトビーが、興奮でいてもたってもいられなくなったらしい。
「こら!ちゃんとしてろ!」
傍らにいたヘンリーとジェームスが、慌てて小声で叱りつけたが、2人はお構いなしだ。
「女王陛下に、万歳三唱!」
パーシーの声を合図に、そこにいる皆が、一斉に陛下を讃える。
そんな彼ら一人ひとりに、陛下は手を振ってニコニコとお応えになった。
148:FOR YOU Part 26
08/03/16 21:33:33 NXeZHRHA0
それから、陛下は客車係りを務めたトーマス、案内役のエドワード、そして陛下をお連れしたゴードンに
順次御言葉をかけて下さった。
トーマスは喜びと緊張のあまり、何とか失礼のないようにお返事をするのが精一杯だったが、
とても光栄な気持ちだった。
存分にナップフォード駅を見学されてから、陛下は再度皆にお礼を述べ、
ゴードンとエドワードに伴われて帰って行かれた。
皆で陛下をお見送りした後も、トーマスは興奮がなかなか静まらない。
(ああ・・・これが夢ならどうか、永遠に醒めないで欲しい・・・)
自分は無事に支線の仕事に戻り、女王陛下をお迎えする準備を整えることが出来た。
陛下のお役に立ったことで、直々に御言葉を頂戴する機会にも恵まれた。
それもこれも・・・
(ありがとうございます、ハット卿。そして・・・)
トーマスは人知れず、この世にたった一人の、愛する恋人の名を呼んだ。
149:FOR YOU Part 27
08/03/16 21:34:13 NXeZHRHA0
夕方になり、陛下のご出発を無事に見届けたエドワードとゴードンが、港から戻ってきた。
2人が駅近くのホテル1階にある、洒落たレストランに姿を見せると、既にそこに集まっていた皆が大喜びで出迎えた。
「待っていたよ、2人とも!今日はどうもお疲れ様!」
お召し列車運行ができなくなった代わりに慰労パーティーの幹事役を任されたヘンリーが、上機嫌で2人を労う。
辺りは美しい花で飾られ、いつもより明るくライトアップされている。
テーブルの上には、おそらくこの日のためにハット卿が準備させたのであろう、年代物の高級ワインが並び、
出席している誰もが乾杯のときを今か今かと待ちこがれていた。
エドワードとゴードンは急いで、広々とした部屋の中央に設えられた大きなテーブルに歩み寄り、席についた。
「よし。これで皆揃ったな」
ハット卿が笑顔で確認した。
「今日は皆、女王陛下のために良く働いてくれた。お前たちは全員、わしとこの鉄道の誇りだよ」
そう言うと、後は目でヘンリーを促した。
ヘンリーは立ち上がると、軽く咳払いをして、
「それでは・・・女王陛下とハット卿、そしてソドー島鉄道の皆のために・・・」
乾杯!!
150:FOR YOU Part 28
08/03/16 21:35:46 NXeZHRHA0
一日の心地よい疲労を癒すべく、皆は勢い良く食事を進めた。
ワインのボトルは立て続けに何本も空き、乾杯の音頭を皮切りに運ばれてきた料理の皿も、次々ときれいになる。
普段なら、ハット卿と共に囲む宴席では、彼に気を遣って酒も食事も遠慮がちになってしまうのだが、今は誰も気にしない。
ハット卿も、今日は特別だと言わんばかりに、自分から進んで大いに飲み、舌鼓を打ち続けた。
やがて腹がくちくなると、一同はワイングラスを片手に、お喋りに興じ始めた。
「なあ・・・ジェームス・・・」
かなり酔いが回ったらしいゴードンが、隣の席のジェームスに話しかける。
「んん~~?何だい~~~~~~?」
ゴードンよりも更に酒が進み、彼の愛車と同じくらい真っ赤になったジェームスが、
いくぶん呂律の回らない口調で答える。
「お前・・・今日は無役でいいって代わりに、何かハット卿にお願いしたそうじゃないか」
その話に、皆が一斉に視線を向ける。
ジェームスの頼みごとの件は、そこにいる全員が聞いていたが、何を頼んだのかは誰も知らないので、興味津々なのだ。
「ああ~~~~あのことね」
ジェームスは突然振られた話にも全く動揺せず、むしろニヤリ・・・と意味ありげに笑う。
151:FOR YOU Part 29
08/03/16 21:36:26 NXeZHRHA0
「ねえ、ねえ、何なの。何を頼んだの?」
パーシーが目を輝かせながら聞く。
「う~~ん、どうしようかな・・・言っていいのかな・・・」
相変わらず、決して酒のせいだけとは思えない笑みを浮かべたまま、ジェームスはもったいぶって見せる。
「焦らさないで教えろよ。お前、もう言ったっていいだろう?」
ゴードンが急かす。
「ん~~~~君にはちょっと勿体無いかもよ」
「おいコラ!それはどういう意味だ!?」
「2人とも止めんか。せっかくのパーティーが台無しになるじゃないか」
ハット卿が窘める。あれだけのワインを飲んでいるのに平然としている辺り、やはり彼は只者ではない。
「まあ、お前の口からは言いづらいのかもしれん。ならば、わしが言うとしよう。良いな、ジェームス」
「はい、ハット卿」
ジェームスも嫌がる様子はなく、素直に答える。
ハット卿はグラスを置くと、両手をテーブルの上で組み、話し出した。
「ジェームスはな、エドワードを陛下の先導役にしてくれと願い出てきたのだ」
152:FOR YOU Part 30
08/03/16 22:09:46 NXeZHRHA0
「ええっ!?」
誰も想像していなかった答えに、ジェームス以外の全員が素っ頓狂な声をあげる。
当のエドワードも、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で、ぽかんとしていた。
確かにエドワードはこの鉄道では最古参格だが、堅実で有能な働き者であることを知らないものはいないから、
いくら事前に彼が悲観していようとも、何らかの仕事を任されるのは当然だと思っていたのだが・・・。
まさか・・・ジェームスがハット卿に頼んでいたとは・・・。
「まあ、エドワードは皆も知っての通り、礼儀作法も心得ておるし、仕事で失敗をすることもまずないからな。
わしとしても、彼には女王陛下のために、何か大事な役目を果たしてもらいたかったのだ。
だが、何を任せようかと悩んでおった丁度そのときに、ジェームスがわしのオフィスを尋ねてきてな、
どうかエドワードが陛下を駅までご案内できますように、と申し出てきたわけだ」
一同はとても信じられず、互いに顔を見合わせるばかりだった。
ジェームスだけはさっきよりも更に顔を赤く染め、照れくさそうに頬を掻く。
「ジェームスは普段よくエドワードをからかっておるようだが、本当はちゃんと彼のことを認めていたのだな。
最初は意外な申し出に驚いたが、わしはそれがとても嬉しくて、ジェームスの気持ちを大切にしてやろうと思ったのだ」
そこまで言うと、ハット卿はジェームスの方を向いてパチンと片目を瞑る。お前の本当の想いは内緒にしておく、と言うように。
ジェームスも白くきれいな歯をかすかに見せて頷いた。
そんな彼の様子に気づくと、ようやくエドワードは当惑していた表情を少しずつ綻ばせて、嬉しそうに微笑んだ。
ハット卿は優しく、そして満足そうに言った。
「それにしてもお前たちは、本当に心根の良い者ばかりだな。トーマスとゴードンもお互いに相手を助けようとしておったし・・・
善良な部下たちに恵まれて、わしは幸せだよ」
153:FOR YOU Part 31
08/03/16 22:10:59 NXeZHRHA0
「ちょ、ちょっと待ってください」
ゴードンはどうしても納得がいかず、食い下がる。
「じゃあ、この俺に女王陛下のお召し列車を牽かせる、って仰ったのはどうしてですか?」
「ああ、そのことか。何、理由は簡単だよ」
ハット卿はこともなげに答えた。
「ひとつは勿論、お召し列車を牽けそうなのはお前しかいなかったからだ。
ヘンリーはあの通りだったし、ジェームスも辞退したからな」
ヘンリーが情けなさそうに首をすくめ、苦笑いする。
「そして、もうひとつ」
ハット卿は、やにわにトーマスの方に目をやった。
「トーマスがきっと、そう言うだろうと思ったのだよ」
「ぼ、僕が!?」
トーマスは激しく動揺した。
何も言わずとも、ハット卿はトーマスの気持ちを見抜いていたというわけか。
「当たり前だ」
ハット卿は少し心外だと言わんばかりに続ける。
「わしが何年お前たちと付き合っていると思う。
これだけ一緒にいれば、何も言われなくてもそれぞれの望みそうなことは何なのか、
大体見当がつけられるようになるものさ」
154:FOR YOU Part 32
08/03/16 22:13:10 NXeZHRHA0
「あれ~?何をそんな狐につままれたような顔をしてるの、ゴードン?」
ジェームスがからかった。
その声にゴードンとトーマスはようやく我に返る。
「ひょっとして・・・君がお召し列車を牽けるように頼んだの・・・僕だと思ってたとか?」
「な!な!何で分かった!?」
ゴードンは大慌てでジェームスを振り返る。
その様子に仲間たちは揃って噴き出し、ジェームスに至っては爆笑しだした。
「ははははは・・・ばっかだなあ!僕がそんなこと、口が腐ったって頼むわけないでしょ?」
「ななななな、何だと!?」
ゴードンは機関車の釜のごとく燃え上がるが、ジェームスは平気の平左だ。
余裕綽々で彼をおちょくる。
「そうやって自分が選ばれて当然!なんて自惚れてると、まーた失敗するよ、ゴードン♪」
「~~~~~~~~~っ!!ジェームス~~~~~~~~~~~っ!!俺様に向かってよくもそんな口を!!」
「お前たち、喧嘩は止せと言っただろう!まったく仕方のない子だ」
半ば呆れ声を交え、ハット卿が再度2人を窘めた。
155:FOR YOU Part 33
08/03/16 22:14:13 NXeZHRHA0
やがて、楽しかった慰労パーティーもお開きとなった。
参加者の面々は次々と宿泊室に引き揚げていく。
ハット卿も今夜は遅くなったからと言って、最上階のスイートルームに悠々と入っていった。
(はぁ~~~~~~~あ、すっかり酔っちゃったよ)
普段はまず口にしない量のワインを飲んだトーマスは、とても休むどころではなく、部屋に直行する気になれないでいた。
頭がかなりふらふらする。どこかで酔いを醒まさなければ寝付けそうにない。
(とにかく水だ、水。・・・いや、それよりは外の空気を吸ってこよう)
トーマスはホテルのガーデンテラスに出た。
先程までの賑やかな騒ぎが嘘のようにしんと静まり返り、夜空に輝く月が、淡い銀の光で照らすだけだった。
誰もいない夜の庭に足を踏み入れ、小奇麗な白い椅子に腰掛けると、大きく伸びをして深呼吸する。
「ああ・・・・気持ちいい・・・!」
昼間ほどではないにしろ、外の空気は暑くてからりとしていたが、酔いの回った頭を癒すには十分だった。