09/01/13 00:34:30 9ilAd+QE0
「……そうだね、放っとけば肺炎になってたね。本当は内科の病院にしばらく入院した方がいいんだが…」
「……先生、」
「仕事があるって言いたいんだろ。全く、あんたら弁護士の言うことはわからんよ」
「…いや、こいつの場合は、俺が寝てろって言っても聞いてくれないんだよ」
「はは、あんただって同じようなもんだろ。今まで大事になってない方が不思議なくらいだ」
…長年付き合いのある医者だから言いたいことを言ってるが、
何時も厄介事を持ち込んでしまって、本当に済まないと思っている。
いい医者だ。
「先生、いつもありがとう」
「そう思うんだったら、今度はもっと早めに連れて来るんだな。早期発見、早期治療だぞ」
そう言って、カラカラと笑いながら処置室を出て行ってしまった。
俺は頭を下げて見送ることしか出来なかった。
今はもう悪寒の治まっている末井は、熱にうなされながらベッドに寝かされていた。
時折聞こえるうわ言は、とにかく『ごめんなさい』の一言だった。
点滴の入っている左腕は、無意識に曲げたりしないように簡単に固定されている。
俺は、末井の右手をぎゅっと握り締めていた。
阿呆、どうしてお前はいつもこうなんだ。
どうして、俺を心配させることばかりする。
大分前に言ったな、『あなたが悪い、俺のすることを何にも言わないあなたが悪い』って。
じゃあ、俺が言えば、お前はもう無茶なことはしなくなるのか?
末井…俺は、お前が傷つくのを見たくないんだ。
俺にとってお前は特別な存在なんだ。
はっきり言うか。お前が好きだ。だから。
あり得ないくらい熱い身体のお前を抱いて、俺は泣いた。
狭い処置室の中で、声を忍ばせて泣いていた。