07/06/14 13:23:38.18 aVHO0qQ20
「本当に良いの? ミュウツーをナツメさんに預けて」
はい、とピジョットの背中に乗ったまま俺はジョーイさんに頷く。ポケモンタワーを見上げると、曇天
の空と一緒に悲しみに俯いているようにすら思える。いや、それはただ俺の気分なのかもしれない。
あの後、また暴れださないようにヤマブキジムのエスパーポケモンを総動員してさいみんじゅつをかけ
た。ただその時にはナツメさんのポケモンは出てこなかった。ナツメさんはミュウツーの精神攻撃から周
囲の人々を守るため、自分の精神防護そっちのけで力を使ってしまったからだ。まだ、病院で治療は続い
ている。
そしてミュウツーは眠りについた。今もジョーイさんが持っているボールの横でスリーパーがブツブツ
とさいみんじゅつを平行してかけている。
「ジムリーダーに事情を話して、一番に相手してくれるよう配慮してくれましたから」
ミュウツーをゲットした当初、俺がトキワバッチを持っていないことは界隈では問題視された。ただで
さえ高レベルのポケモンを完璧に扱えないことは法的にも一部制限がかかっているというのに、ミュウツ
ーという究極のポケモンを扱えないということは国家的な危険すら配慮される。噂では四天王が動くとま
で言われていたのだけれど、結局、ミュウツーがなぜか俺に従順ということで話は丸く収まってしまった。
これもまた噂で聞いたのだけれど、最後のバッチですら扱えないのでは、というのもこの話がうやむやに
なった一因であるそうだ。
「とにかく、トキワバッチを手に入れてミュウツーを完璧に扱えるようにしてきます」
「そう……」
正直、俺はミュウツーをゲットしてからというもの、彼女に頼りっぱなしだったかもしれない。もちろ
ん、他の手持ちのポケモンもなるべく育ているけれど、絶対に信用出来るポケモンがいるかといえば答え
に窮する。ミュウツーはもしかしたら信用という言葉すら使えないのかもしれない。
全ては俺の怠惰。怠慢。
「行ってきます」
ピジョットが勢い良く翼をはためかせる。分かれる間際、ジョーイさんが「貴方はもう一人前のポケモ
ントレーナーになったわ」という言葉に、少しだけ頬が熱くなった。