07/06/14 12:03:33.23 TEXpdgNC0
>>721
ジムから出ると、途端に主と私の傍に人の波が押し寄せてきた。
次は僕と闘ってくれないか? サインしてください等、そこかしこから湧き出る言葉に主はただただ目
を丸くするしかない。ここ数ヶ月、主と出会ってからというものこういった状況に陥る事が多い。
確かに私は世界でただ一匹のポケモンだ。自覚はある、自身が最強であるという自覚も。
しかし、興味本位だけで見に来る輩から私を守るように人垣を掻き分け進む主を見るのは私にとって耐え難い事以外のなにものでもなかった
(大丈夫だから)(心配しなくてもお前は俺が守るから)主の目がそういってくれているように見える
しかし、それでも私には我慢が出来なかった。
事もあろうに『中には手持ちのポケモン全てを譲るから交換してくれ』などという輩があらわれたのだ
主は気にする風でもなく無視していたが私は自分の中に溜まる黒い感情の一部を抑え切れなかった
「消えろ。目障りだ」
よく考えれば。この感情を抑える必要はなかった。そうだ、私の主が困っている。
ここは主に仕えるものとして私が前に出ても支障はないだろう。自身を納得させる。
「去れ。主の邪魔だ」
ゆっくりと人々が道を開ける。
私が主を守るのだ。ポケモンからも人からも。そう思いながら開けた人の道を歩いていく。しかし主はなぜか周囲の人間に頭を下げながら私の後をついてくる
なぜ頭を下げるのだ、主よ。もっと胸を張り堂々とするべきだ。
何かあっても私があなたを護る。何かなどおきるはずも無い。もっと私を信じては貰えないだろうか。
しかし私はそれを口にだす事はできなかった