07/06/13 18:46:00.33 jwkMo+6r0
>>279続き
が。
「……ッ!?」
箸に伸ばした手が、動かない。
動かないのは手だけではない。腕も、足も、座ったままの体も、目さえも。
まるで何かに固められたかのようだった。
おそらく、肺も動いていないのだろう。
無意識にしている呼吸すら止められ、目の前が段々暗くなっていくように感じた。
「貴様に、何が分かる」
冷徹な声が、脳内に響く。
「主は私を手放した。主の中から、私は外れてしまった」
ぎぃ、ぎし、と、フローリングの軋む音。
あいつが、こっちに近づいてくる。
「貴様如きには分からぬだろう。主がどれだけ素晴らしいお方か。あのお方に見捨てられるということが、どういう事か」
足音が、止まった。
目は動かせないが、すぐ後ろに、気配を感じる。
「最早私には生きている価値もない。だが私は、自分を殺せない。主が言ったのだ、殺す事だけはやめろと」
今、自分が死にそうなんですけど。と突っ込む空気ですらなかった。