07/05/24 07:35:11.89 9fPq47Vz0
それっきり、ハルヒは黙ってしまった。
どれくらい無言だったのだろうか、ハルヒはぽつり、こう漏らした。
「…あたしは結構好きよ」
ほほう。それは初耳だ。どうしてだ。
「それはね…」
そう言うや否や、傘を奪い走り去って行く。おいおい。俺の傘だぞ。返せ。
しばらく走った後、ハルヒは足を止め俺を待っていた。
「それはね…教えてあげないわよ!」
といいつつ、あっかんべーをするハルヒ。
俺の頭に既視感がまた生じる。そう、さっきから前回と全く同じ事しやがる。
誰だ。ステレオタイプが嫌いだと言ったのは?
その後傘を取り返した俺はまたしても周囲の目を気にしつつ相合い傘で坂道を下っていた。
先ほど傘を取られた際に俺の顔は周囲の北高生に知られることとなり、しかもその中には俺のクラスの奴も混っていた気がする。
明日からクラスの奴のひそひそ話が一段と増えそうだ。
どうすっかなぁ、俺。
そんなことを考えているうちに坂の下にある駐輪場に到着した。
自転車で帰ればそれほど時間はかからないので傘はハルヒに貸し、じゃあなと声を掛けつつ俺は雨の中猛ダッシュして帰った。
やれやれ、風邪を引いたらハルヒのせいだからな。
自転車が見る見る遠ざかっていく。
彼には聞こただろうか?彼の傘を握り締め、彼が見えなくなるまで見守り続けた後、囁いた彼女の声が。
―あたしが好きな理由はね、あんたと二人っきりでいられるからよ―
―短い時間だけど、灰色の空は二人だけの時間を作ってくれる―
―さっきも、二回あった合宿の時も、そしてあの夢の中でも―
Fin.