14/07/13 03:55:06.17
検証実験52日目。
捏造常習の未熟な研究者がベテランにたずねる。「捏造の極意は何ですか」と。
ベテランは答えて言う。捏造の極意は「緻密なデータ管理」にある、と。
ある日、未熟者は、ベテランと鶏と七三を相手に検証実験をすることになる。
未熟者は再現しない論文を多数発表している七三を意識してたずねる。「イカサマは禁止ですか?」
「きみが捏造したければしたまえ。ただし、発覚したら過去の研究費を全て返却してもらった上で、即解雇、刑事告発だ」
未熟者は、かつてのように密かに握りこんだ偽物とスリかえることで、ポジティブな結果を何度も披露する。
「なんとか、ペースにさせてもらっているようですね」と言う未熟者の言葉に、3人の態度は氷のように冷たい。
そうだ。3人が成功しなくては検証は終わらないのだ。
いくら未熟者だけが成功させても、血に染まったマウスの屍骸の山が無駄に増えるだけだった。
鶏が手洗いに立ったとき、未熟者が後を追って、こう耳打ちする。
「先生の実験台に細工します。私、自信があります。先生には2番目の成功者の名誉。悪い話ではないと思います」
鶏が答える。「大学時代から剽窃や捏造を繰り返し、その証拠を山のように残している奴と組もうという者はいないよ」
地獄のような実験の日々が続く。
実験開始52日目。鶏は言う。「今日の夜は大事なお客さんの接待だ。今日の私の実験は中止だ」
これを千載一遇のチャンスととらえた未熟者は、深夜、鶏の実験室に忍び込む。
真っ暗な廊下。付近の研究室のメンバーも、その来客のために早く帰宅したのか、物音ひとつしない深夜の研究棟。
どこからか、悲しそうなマウスの泣き声だけが漏れてくる。そんな中、コツコツコツと、未熟者の靴音が鋭く響き渡る。
実験台に静かに近づく。そして、ポケットに忍ばせた細胞とスリ変えようとしたその瞬間。
闇から出てきた手に手首を激しくつかまれた。
同時に、眩いばかりの強力な懐中電灯の光。
そして、部屋の照明が一気に点灯。なだれ込むTVカメラ陣。手首をねじ伏せながら、野太い声で男が怒鳴る。
「それを、待ってたんだ!」