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ブラジルでサッカーW杯が開催されている。日本チームは1次リーグで敗退してしまったが、マスコミの報道ぶりは、まことに盛んだった。
新聞では朝日新聞の報道が突出しており、スポーツ面の外にわざわざ「サッカー」面を設けている。
しかも、サッカー面はオールカラーで、朝刊のみならず夕刊まで3ページ以上もスペースを割いている日もあった。
ところで、朝日新聞は、かつての本物の戦争の際においても、その報道ぶりは真に熱心だった。戦争こそ最大のイベントなのである。
朝日新聞OBの今西光男氏による『新聞 資本と経営の昭和史』(2007年6月、朝日新聞社)によると、「満州事変が勃発してからの、
朝日新聞の販売部数の増加はすさまじかった」「翌三二年には、(中略)全社計一八二万四三六九部(三八万八七四一部増)という
驚異的な部数増を実現したのである」(119ページ)とある。
単なるイベント以上に、読者には切実な問題があった。同書は「従軍している兵士の留守宅では、新聞は不可欠の情報源になった。
肉親の安否を知るには現地の特報が載る新聞しかなかった。競うように新聞購読の申し込みが殺到した。
まさに戦争は新聞にとって神風だった」(120ページ)と記している。
サッカーW杯の大報道が、戦争ほど部数拡大につながるとも思われないから、その理由はさらに別にあるのではないか。
それはナショナリズムでも「スポーツだけナショナリズム」であることがポイントだ。
つまり、日本人の国家意識・民族意識をスポーツだけに吸収して、
日本が直面している本当の危機である軍事的危機から目をそらす役割を果たしているように思えてならない。
中華民族主義という中国の侵略的ナショナリズムや、韓国のゆがんだ怨念ナショナリズムには、驚くほど寛容な朝日新聞は、
わが国のささやかな防衛的ナショナリズムに対しては、これを危険視して積極的に非難する。
日本の若者も、渋谷のスクランブル交差点で大騒ぎをするエネルギーがあるなら、
もっとまともな政治的行動の場でこそ、本物の大和魂を発揮してもらいたい。
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