14/11/01 21:58:25.70 AgaPPVGc0.net
美しいから憧れた。
だが、その夢はセイギノミカタを欺き続けた。
本当に助けたい人を助けることはできず、あるのは掃除という後片付けのみ。
彼の騎士王との誓い。彼女がそうであったように、気高く、美しく、そして誰よりも優しく。
そうありたいと思っていた。摩耗する日々の中で、それだけが彼の望みであり彼が彼たる所以だった。
親友であり師匠である女性は幸せになれと言った。心優しき後輩は、彼の帰りを彼の姉代わりであった人と待っていた。
彼の妹であり、姉であった少女は涙を堪え、彼の無事を祈った。
それほどの繋がりを断ち切ってまでも彼はセイギのミカタであり続けた。
幼き日の養父との誓い、若き日の彼女との誓い。
全ての人を救うことなんてできやしない、ならば目に映る範囲でだけは誰にも泣いてもらいたくない。
みんなに笑っていてもらいたい。そう願い、走り続けた。
度重なる戦闘、幾度となく繰り広げられた死闘、絶体絶命の危機、その全てに彼は不敗を貫いた。
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14/11/01 22:00:13.07 AgaPPVGc0.net
しかし、救いたい人を救えたかとの問いには否と答えるしかなかった。
確かに、練鉄の魔術使いは不敗ではあった。
だが、ただ不敗だったというだけで、どこにも勝利なんてものはなかった。
それでも走り続ける。悲しんでいる暇なんて無い、悲しんでいる暇があれば出来る限りのことをやるべきである。
―体は剣で出来ている
折れることなど皆無。進むべき道は決まっている。
鍛えられた体は鋼を纏い、刃を携え。幸せであるために。
幸せにするために。ただそれだけのために。
想い馳せるは別れの刻。愛していると言ってくれた最愛の人のために彼は彼であり続ける。
勝利を導くは彼女の聖剣。誰かを守るためには遠き理想の名を冠する尊き聖剣と対を為す鞘。
彼の剣になることを誓った彼女のために彼は鞘であることを誓い、彼は生涯を懸けてその誓いを守り切った。
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14/11/01 22:05:42.08 AgaPPVGc0.net
しかし、彼の生涯は閉じても彼は終わらなかった。
抑止力として世界のバランスと安寧を保つ。そこに誓いは無かった。
称するなら地獄。誓いを果たす相手など何処にもいない。
守るべき相手など何処にもいない。煉獄の焔に身を焦がし、心を摩耗していった。
終には、彼は彼自信をも否定するようになってしまった。
彼を責めることはできないだろう。彼はあまりにも美しく、純粋であった。
しかし、それ故に彼の理想はどこまでも理想でしかなかった。
むしろ、空想とでさえ言えるだろう。そうでなければ、彼は守護者になんてならなかった。
目に映る範囲でだけ人を救おうとした結果、彼は守護者になることを選んだのだから。
そして、その空想に裏切られ、彼はユメを見限った。自分の存在を呪い、摩耗した日々を終わらせようと決めた。
かつて参加した聖杯戦争。そこで、当時の自分を殺すことが出来たなら、
矛盾を無くそうとする世界の修正力によって終わらすことが出来るかもしれない。
彼はそれを、摩耗した心の中で唯一の希望とした。
そして、永い年月をかけて、ようやく彼の願いが実現する。
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