14/10/31 01:21:00.27 JzGCC8G30.net
薄暗く、それでいて病的なほど清潔な部屋に少年の部屋が響き渡る。
子供のような不機嫌さと大人びた殺気の籠ったその声に
人生の先駆者として呆れたように怖がる老人の声が返された。
「君の能力を開発したのは私の孫だが、計画したのはこの私でねぇ。
他の六人の超能力者も手掛けたが、絶対となれるのは君だけだったんだなぁ」
「……俺の能力は自分の物だとも言いてェ台詞だな」
轟！！！ と窓から差し込まれる雷光が鬱蒼とした室内を照らし出す。
そして、その室内を彩るかのように佇む二人の人間が映し出された。
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14/10/31 01:21:27.96 JzGCC8G30.net
一人は、人間から最大限人間らしさを取り除いたような白に染まった少年。
もう一人は、一見温和そうに見えて、その裏に異常な狂気を秘めた老人。
ある意味、人間離れした二人は互いに背を向けて言葉を交わしていた。
「いいや、私には無理だ。君の能力を使いこなせるのは君だけだよ一方通行君。
理想や野心といった覚悟など当人の器量を超えた外圧に脆弱でねぇ。
君のような、世界の全てを対象とした最大限の憎悪こそ信用に足る」
「そォか、期待に応えられたよォで何よりだ」
少年は軽く笑うと老人に向き直り、ゆっくりと歩き出した。
ゆっくりと近づく足音に老人もまた微笑みながら向き直る。（
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14/10/31 01:22:25.12 hBtF6Y4W0.net
笑っていい？
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14/10/31 01:22:31.66 JzGCC8G30.net
「君を進化させる新しい実験、絶対能力進化計画というものがあってねぇ。
超電磁砲一二八人の代わりに、そのクローン二〇〇〇〇人を用意した。
気が滅入る作業だとは思うが、それでも二五〇年よりは短く済むだろう」
「それでいい、よくやった。礼を言う」
快諾するかのように笑みを深める少年に老人は握手を求める。
少年は、その赤い瞳に老人に対する敬意を込めながら手を出し
ドス！！！ と老人の腹に思いっきり突き刺した。
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14/10/31 01:23:37.17 JzGCC8G30.net
「あ……が……」
内臓を貫かれた老人が、唇からだらしなく血を垂れ流す。
対する少年は笑みを浮かべたまま、老人を見つめた。
「な、ぜ……」
震える唇を必死に動かし、少年に対して疑問を投げかけた。
老人は絶対能力者を生み出すために研究をしており
少年は絶対能力者になりたいために研究所に在籍している。
故に自分と少年の利害は一致しており、殺される理由など何一つない。
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14/10/31 01:24:42.63 JzGCC8G30.net
「オマエは本当によくやった、この俺でさえも開けなかった絶対への道を示してくれた」
老人の問いに答えるかのように少年は口を開くが、老人の疑問は深まるばかりだった。
それなりの経験は積んできたが今もまだ笑みを浮かべる少年の心がまるで理解できない。
「だが、オマエの役目はそこまでだ。生きる価値はもォ消えたンだよ」
老人がその言葉に何か考える前に、少年は思いっきり手を引っこ抜いた。
少年の手という蓋が無くなった事で老人の腹から血が一気に噴き出し
口からも血を流しながら、目を見開き力なく床に崩れ落ちた。
「信用に足る？ 笑わせンじゃねェよ、三下」
命の枯れた肉体を見下しながら少年は語りかける。
その目に尊敬などなく最早侮蔑しか無かった。
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14/10/31 01:25:16.76 Ou5Pedp70.net
しえん
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14/10/31 01:25:47.49 JzGCC8G30.net
「信用できるのは力だけだ、それが無ェ奴に生きる資格は無ェよ」
不意に脳裏に蘇った過去に苦笑しながら、一方通行は歩き出す。
彼の周りには夜を照らす月明かりを殺す黒い煙が立ち込めていたが
彼が手を軽く横に振ると、まるで画像を切り取ったかのように消滅した。
そして、その先で唇から血を流しながら使い物にならない足を必死に動かし
動かない体を引き摺るように一方通行から逃げる少女を容赦なく曝け出した。
「反射を破るのは諦めて、力の範囲外を見つよォっつゥ発想は悪くはねェ。
でも、一万回近く殺されてから思いつくってのは遅すぎンじゃねェか？」
その顔はどこまでも楽しげに笑っているようにしか思えないが
どこか失望したような怒気が含まれているように見えた。
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14/10/31 01:26:43.65 JzGCC8G30.net
人間らしい感情に彩られながらも人間とは思えない表情。
そんな不気味な顔をさらに歪ませながら一方通行は手を天に突き出した。
「俺を殺そォってンなら」
瞬間、空気を優しく撫でていた風が亡霊のように唸りを上げ
意思を持っているかのように一方通行の手に集められていく。
一点に凝縮された風は抵抗するかのように熱を発し始め
やがて、圧力に耐え切れなくなった原子が分解され
飛び出した電子が数十メートルものプラズマへと変貌した。
星の輝きにも負けない神々しさを持つ青白い光が少女を照らす。
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14/10/31 01:26:50.43 /iR72vmS0.net
前スレ
ｽﾚﾘﾝｸ(news4vip板)l50
11:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:27:11.60 j5scp74S0.net
詠夜空希の後釜狙ってるの？
12:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:27:45.79 JzGCC8G30.net
「これぐらいはやれ」
言葉と同時、形成されたプラズマが一方通行の手を離れ
轟！！！ と地面を這いつくばる少女目がけて放たれた。
それは最早、破壊というより消滅に近かった。
太陽の数倍もの熱をもつプラズマは周囲のあらゆるものを溶かしていく。
砂利も、レールも、列車も、コンテナも、少女の体でさえも
まるで最初から存在しなかったかのように塵ひとつ残さず
――ただ一つ、一方通行を除いて
「こンなモンか」
自らが作り出した惨劇から抜け出しながら一方通行は元いた場所を見た。
巨大隕石が降ってきたと言っても信じられるような巨大なクレーター。
隠蔽処理が大変だろうが、そんなものは彼の仕事ではない。
13:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:29:07.49 JzGCC8G30.net
「つまンね、帰ってコンビニでも……」
言葉は最後まで続かなかった。
バチッ！ と高圧電流が一方通行の体に直撃したからだ。
しかし、その端正な顔に苦悶や怒りの表情はない。
あるのは唯どこから来た攻撃かという疑問のみ。
攻撃の来た方向に目をやると一転、その顔が笑みへと変わる。
玩具屋に連れてこられた子供のような期待の笑みへと。
「やっと来たか、オリジナル！」
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14/10/31 01:29:56.70 JzGCC8G30.net
だれかみてる？
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14/10/31 01:31:00.59 JzGCC8G30.net
オリジナル――先ほど殺した妹達の元となった遺伝子の持ち主。
学園都市第三位、超電磁砲の異名を持つ超能力者、御坂美琴。
しかし、その声も聞こえていないか美琴は咆哮を上げ地面に拳を突き刺した。
瞬間、地面から砂鉄が吸い上げられ、剣へと形を変え一方通行へと斬りかかる。
だが、一方通行の体に当たった瞬間ガラスのように砕け散り
打ち上げられた砂鉄の欠片が雨のように操車場に降り注ぐ。
そんな中、一方通行の体は汚れることさえ無かった。
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14/10/31 01:32:05.56 JzGCC8G30.net
「同じ超能力者っつゥから期待したンだがなァ」
期待に染まっていた顔はいつしか元の失望へと戻っていた。
まるで好きだったゲームの続編にがっかりするかのように
「科学者は何考えてンだろォな、俺のクローンでも作ればいいのに」
「アンタは……何でこんな事をしてるの？」
「あァ？」
「それだけの力があって……無理矢理やらされてる訳じゃないでしょ！」
チャリ、と美琴は拳に添えたコインを拳銃のように突きつける。
まるで、返答次第では撃つと言わんばかりの殺気を込めながら
17:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:33:01.10 4R+4eY1g0.net
SS速報ってのがあってな
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14/10/31 01:33:08.76 fiPeo7su0.net
つった？
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14/10/31 01:33:22.99 JzGCC8G30.net
「何でって、そォする事でしか役に立たねェからだろ」
まるで質問をする意味が分からないと言うように一方通行はそう言い放つ。
あまりにも予想外な答えに絶句する美琴を他所に一方通行は言葉を続ける。
「オマエのクローンは俺を絶対能力にする為に生まれた個体だ。
だから殺す、それ以外にこいつらの存在価値などありはしない」
「そんな理由で……」
悪意すらなく話す一方通行に美琴は自分の中で何かが切られる音を聞いた。
ギリッ、と口の中で自分の中で驚く程大きな歯ぎしりがその場に響き渡る。
「そんな下らないモノの為に……」
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14/10/31 01:34:42.39 JzGCC8G30.net
ぐちゃり、と美琴の顔が怒りに歪められ他の感情が殺されていく。
頭がその体に下す命令はただ一つ、目の前の少年を殺せ！
「あの子を殺したのかあああああああああああ！！！」
轟！！！ と勢いよく放たれたコインは一気に音速の三倍まで加速し
周囲の空気を瞬間的に熱しあげ、マグマを思わせるプラズマへと変えていく。
一切の慈悲もなく、急所へと向けられた一撃に
一方通行は動かないままで直撃を受けた。
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14/10/31 01:35:59.66 JzGCC8G30.net
明らかに生存することなど不可能に等しい必殺の一撃。
しかし、その一撃は一方通行の体を撃ち抜く事無く
同じ力と速さで放った美琴へと跳ね返ってきた。
ブチブチ、と肉が引きちぎられる粘着質な音が木霊した。
それが自分の腕が取れた音だと気づくのに美琴は三秒の時間を要した。
「ァァァああああああああああああああ！！！！」
「人間はここまで進化した」
美琴が絶叫する中、一方通行は両手を横合いへと大きく広げる。
まるで操車場に降り注ぐ月明かりを全て自分に集めるかのように
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14/10/31 01:37:01.88 JzGCC8G30.net
「道具を覚え、言葉を覚え、火を覚え、計算を覚え、演算を覚え
時代を超え、自らの限界を超え、欲望と資質を糧に人間は進化してきた。
絶対能力進化計画もその一つだ、人間を今より進化する為の段階に過ぎねェ」
やがて、腕をしまうと一方通行は一歩一歩大地を踏みしめるように歩き出す。
その延長線上にいる美琴は、腕を抑えながらも逃げることさえ出来ずにいた。
「この世界は限界だ、進化を忘れたクズに生きる資格なンざねェンだよ。
無意味に存在してきた七十億の悲鳴と共に新たな時代が幕を開ける」
顔全体をナイフで引き裂いたかのような笑みを浮かべながら
ゆっくりと肉薄する一方通行に美琴は恐怖以上の何かを覚えた。
悪、そうとしか言い表せない目の前の少年の心に
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14/10/31 01:38:13.87 JzGCC8G30.net
「まだ実験は一万回以上ある、また止めに来いよ」
至近距離で気味の悪い笑みでそう語りかけると
一方通行は美琴を通り越して、そのまま立ち去っていく。
足音が聞こえなくなり、気配も消えてから美琴は地面から崩れ落ちた。
今頃になって、体は震え、目から涙がポロポロと流れ出した。
今日一日の出来事がフラッシュバックのように脳裏に蘇る。
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14/10/31 01:39:32.49 JzGCC8G30.net
自分のクローンと本物の姉妹のように過ごした時間。
だけど、もうそんな時間を覚えているのは自分一人だ。
時間を共有したはずの妹はもういない。
その事がまだ実感できないのに涙は止まらない。
生きていて嬉しいのか、それとも悔しいのか。
それすらも分からず、美琴はただ泣き続けた。
e n d ー
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14/10/31 01:40:00.10 JzGCC8G30.net
だれも見てないじゃん……心折れた
26:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:41:02.74 Fovpkm2G0.net
>>1
2行目の表現には？ってなったから読まない
死ね
27:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:42:14.83 JzGCC8G30.net
>>26
えぇ……こう表現した方が分かりやすいと思ったんだよぉ
28:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:42:52.75 Ou5Pedp70.net
おつ
29:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:43:25.49 fRmBfZGA0.net
以下、ラーメンスレ
30:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:49:42.46 JVeb2HMV0.net
まあ良かった
今後に期待
轟！
31:以下、＼(^o^)／でVIPがお送りします
14/10/31 01:52:15.71 GrWCYBfH0.net
お疲れ様
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