唯「何これ? えーと、デスノート?」at NEWS4VIP
唯「何これ? えーと、デスノート?」 - 暇つぶし2ch2:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:37:30.83 npLaDR1a0.net
さよならアジ=フライ

3:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:37:47.86 Ypu+wJas0.net
「律ちゃんもあんなことで怒ることないのになぁ」

家に帰り、自室に戻ってもまだ怒りが収まらない。

「割り箸でドラムセット叩いただけなのに」

唯はドサリ、とベッドに身を投げた。
しばらくボーっと横になっていると、
自然と怒りはため息に溶けていった。

「明日、ちゃんと謝らないとな」

明日のことを考えていたら、
数学の宿題のことを思い出した。
プリントを出そうとカバンを開く。

「あ」

交番に届けようと思っていたのに、
今の今まですっかり失念していた。
カバンの一番奥から黒いノートが出てきた。

4:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:39:33.13 Ypu+wJas0.net
「これは死のノートです」

唯は数学の宿題をやろうと机に向かっていたが、
やはりノートが気になるので、
好奇心に負けて説明書きを読み始めたのだった。

「デスノートに名前を書かれた人間は死ぬ」

唯は「ふふっ」と吹き出した。
下まで読み進めると、細かいルールまで記載されている。

「これ作った人は、よっぽどの暇人なんだろうねぇ」

唯は途中までルールを読むと、ノートをカバンにしまった。

「まぁ作った人にとっては、大事なものかもしれないし」

そうだよね。明日交番に届けよう。
そう思っていると。

「よぉ」

背後からしゃがれた声がした。

5:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:41:25.67 Ypu+wJas0.net
「きゃっ……!」

唯は叫び声を上げようとしたが、それはかなわなかった。
しゃがれた声の主が、ゴツゴツした手で唯の口をふさいだからだ。

「まぁ、落ち着けよ」

その怪物はそう言うと、クックックッと笑った。
身長は軽く2mを超すだろう。3mはあるかも知れない。
手足はひょろ長く、見開いた目はガラス玉のように丸い。
真っ白の顔に耳まで裂けた真っ黒の口。
まさに異形だ。

「俺のためにじゃないぞ。お前のためにだ」

怪物は不気味に口を歪ませた。

「隔離病棟なんかに収容されたら、退屈しちまうからな」

唯はその腕から逃れようともがいたが、
その抵抗は何の効果ももたらさなかった。

6:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:42:44.40 YLhKRXHG0.net
また旬を過ぎたもの同士の組み合わせだな
続けたまえ

7:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:43:25.76 Ypu+wJas0.net
「落ち着いたか?」

怪物がそう問いかけたが、唯は無言で首を振った。
耳まで裂けた真っ黒の口から、ため息が漏れる。

「まぁいいや。
 とりあえず叫んでも無駄なのは理解したみたいだからな」

クックック、と笑う。

「俺の名前はリューク」

窓からバサリと飛び立つと、目の前の電線にとまった。

「姿が見えるのは、ノートに触ったお前だけだ」

唯は呆然と、その光景を見つめていた。

数学の宿題、やらないとな。
なぜかそんなことを考えていた。

8:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:43:54.05 fIbdAhO40.net
キラ化するゴキブリ期待

9:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:45:28.01 VEgAbqXN0.net
支援

10:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:45:31.53 Ypu+wJas0.net
翌日。唯は家に帰ると、自室に駆け込みドアの鍵をかけた。
はぁはぁと荒い息をつく。

「どうしたんだ、そんなに焦って」

リュークがのんきな声を出したので、唯は睨み付けた。

「外では話しかけるなって、さんざん言ったよね」

言葉の節々に明らかに怒気が混じっている。
リュークはポリポリと頭を掻いた。

「ああ、すまん」

バァン!と音がする。
唯が壁に向けてカバンを投げつけた音だ。

「あんまりイライラさせないでよ」

しばらくリュークを睨み付けていたが、
くるりと反転し、机に向かう。

「昨日はあんなにかわいらしかったのになぁ」

リュークがぼそりと独りごちた。

11:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:47:10.58 Ypu+wJas0.net
「僕以外にも所有者がいる?」

夜神月は椅子に座ったまま、体ごと後ろに向き直った。

「ああ」リュークが言う。
「余ってたノートがあったから、適当に落としておいたんだ」

月は組んだ手を膝に乗せ、体を深く沈みこませた。

「リューク。お前は何を言ってるんだ。
 しばらく家を空けていたと思ったら、
 そんなくだらないことをやっていたとはな」

その目には怒りの炎が容易に見て取れる。
リュークは頭を傾けた。

「僕が新世界の神になるのに、障害にしかならないだろう。
 先日のLとかいうやつだけですら、鬱陶しいのに」

「まぁ、そうなるかな」

月は上体を起こすと「ふん」と鼻を鳴らした。
「まぁいい。そいつも殺しておくか」

12:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:47:30.90 fIbdAhO40.net
リューくん、唯の風呂や着替え見放題なのか羨ましい

13:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:49:10.04 Ypu+wJas0.net
「リューク。その所有者の名前は」

両手を広げながら言う。
リュークは首を傾げた。

「はて、なんだったかな」

「おい」月は苛立ちを露わにした。
「いい加減にしろよ、リューク」

お互い睨み合う。
しばし部屋が静寂に包まれた。

「いい加減にするのは」

先にそれを破ったのはリュークだった。

「お前の方だ、月」

「何?」ピクリと頬をひきつらせる。

「俺は、お前に協力しないと言ったはずだ」

クックック。と笑った。
月は深くため息をつく。

「全く、この死神は」

14:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:51:07.79 Ypu+wJas0.net
「おいおい、ちょっと書きすぎじゃないのか」

自室の机に向かっている唯は、
一心不乱にノートに文字を書き込み続けていた。

「うるさいよ、リューク。少し黙ってて」

そう言っている間も手は休まらない。

ククク。リュークは笑った。
なんだ、こっちにいる方が面白いじゃないか。
こいつには月の名前を教えておいてもいいかもしれない。

「唯、ちょっといいか」

リュークは、月の家と唯の家を往復するのに少し疲れていた。

「うるさいって言ってるでしょ」

唯は視線すら送らずに言う。

「お前以外にも、ノートの所有者がいるんだ」

ゆっくりとした動作で、唯が振り返った。

15:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:52:14.64 Ypu+wJas0.net
「リューク。いったい何を言っているの」

鋭い目つきで睨み付けた。
月と同じ反応だな。
リュークは頭を掻いた。

「実は唯の前にノートを拾った人間がいる。
 どちらかと言えば、お前の方が後発なんだ」

唯はため息をついた。

「だから。何を言っているのかな」

「だから、お前より先に」

バン! 唯が机に手のひらを叩きつけた。

「噂のキラ様でしょ?
 このノートの存在を知れば、そのくらい理解できるよ。
 馬鹿にしないで」

そう言って机に向き直ると、唯は作業に戻った。

16:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:53:26.81 YLhKRXHG0.net
唯さんキャラ変わりすぎじゃないですかね

17:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:53:54.50 Ypu+wJas0.net
「知りたくないか。名前を」

唯はその言葉を無視して、ノートに文字を刻んでいる。
リュークは少々驚いた。
少しくらいは興味を示すと思っていたんだが。

「まぁ、知りたくないならいいよ」

そう言って月の家に戻ろうとした。

「待って」

それを唯が引き止めるが、手の動きは止まらない。

「おいおい、なんだよ」

しばらくガリガリとやっていた唯だったが、
「ふぅ」と息をついて振り返った。

「こっちは6分40秒以内に死因を書かなきゃいけないの。
 少しは気ぃ使ってよ」

言って、あーあ、と背伸びをした。

18:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:56:08.23 Ypu+wJas0.net
なんで俺の憑く人間はこうも不遜なんだろうか。
リュークは辟易としていた。

「それで、何?」

唯が言葉を投げつける。
リュークはため息をついた。

「ところで、お前性格変わりすぎじゃないか。
 最初会ったときはそんなじゃなかっただろ」

唯がジロリと睨み付ける。
が、少し寂しげな目をして俯いた。

「人を殺したら、誰だってこうなるよ」

そのまま黙り込んでしまう。
リュークがククク、と笑った。

「まぁ人間のことは俺にはよく分からん。
 ”キラ様”の名前は夜神月って言うんだ。
 覚えておくといい」

メモ帳にサラサラと月の名前を書くと、
まぁ向こうはお前の名前を知らないがな、と付け加えて、
リュークは夜の闇に飛び立っていった。

19:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:58:08.24 Ypu+wJas0.net
「夜神……、あった! 夜神月!」

ネット検索で調べるとすぐにヒットした。
模試で常にトップを取っているようだ。

「さすがキラ様。頭いいんだなぁ」

唯は椅子の背もたれに身を預け、うーんと伸びをした。

「まぁ今のところは別に、殺す気はないんだけど」

キョロキョロと部屋を見渡す。
リュークは月の方へ行ってくれているようだ。

「人殺しの演技するのも、疲れちゃったよぉ」

そのまま机に突っ伏した。
びっしりと文字が書き込まれたノートが目に入る。
死因だけは細かく書いてあるが、
名前は全てデタラメだった。

「使ってるふりしてないと、
 何されるか分からないからなぁ」

唯はまだ、リュークに怯えていたのだった。

20:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:58:43.55 fIbdAhO40.net
ご飯をオカズで食えないくらいシリアスになってしまわれたのか

21:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 13:59:28.48 Ypu+wJas0.net
私立大国学園高等学校。
夜神月の通う高校である。

月の名前を聞いてから数日後。
唯は憂とともに、この高校の門をくぐった。

「付き合ってくれてありがとね。お姉ちゃん」

憂がニコニコとしながら言う。

「いいよぉ、どうせ暇だし」

唯はそう答えた。
今年受験の憂が、どうしても名門であるこの高校を見たいというので、
それに付き添うという形を取って月を見に来たのだ。
もともと一人で来る予定だったので、
憂の申し出は願ったりかなったりだった。
ネットで検索した結果によると、
在校生代表として夜神月が受験生に向けて挨拶をするらしい。

「どんな、人なのかな」

唯が呟いた。

「ん、何か言った? お姉ちゃん」

憂の言葉に「ううん」と首を振った。

22:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:00:47.80 Ypu+wJas0.net
「それでは在校生代表による、激励のメッセージです」

広い体育館に司会の声がよく響く。
この場にいる、およそ300人ほどであろうか、
全員が黙り込んで主役の登場を待った。

来た!

いったい、どんな人なのだろう。
唯はわくわくと胸をときめかせた。

ステージの裾から、長身ですらっとした体型の男性が現れた。
マイクの前に立つと、ニコリと笑顔を作る。

「どうも、みなさん。夜神月です」

うわ、かっこいい人。モデルさんみたい。
唯がそう思った時だった。

「ふざけんじゃねぇぞ! てめぇ!」

すぐ後ろで怒声が響いた。

23:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:01:57.36 fIbdAhO40.net
やべえ月に唯が食われる

24:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:02:28.29 Ypu+wJas0.net
「きゃっ!」

悲鳴が聞こえた。憂の声だ。
ざざざっ、とまわりから人が引いた。

「おねえ、ちゃん」

唯が横を見ると、憂がすがるような目で見てくる。
後ろにはナイフを持った男がいて、
憂の首筋に這わせるようにして腕を回しているのだった。

憂を中心にして円を描くように人垣ができていた。
最初はただざわついていただけだったが、
途端に悲鳴や怒号が混じり合って、大混乱に陥った。

男は憂を盾のようにしながらナイフを振り回し、
歩を進めると、ステージ上へ上がっていった。

「どけ!」と月を突き飛ばすと、マイクの前に立った。

25:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:04:14.27 Ypu+wJas0.net
「お前ら! 外に出るんじゃねぇぞ!」

男がマイクに向かって絶叫する。
しかし扉に向かって押し合いへし合いしている人たちの動きは止まらない。

「外に出たらこいつを殺す!」

首筋にナイフを押し当てた。
憂はきつく目を閉じて、身を固めた。

「出るなって言ってるだろう!」

誰も男の言葉に耳を傾けない。
我先にと外へ飛び出していく。
唯はその現実感のない光景をただ茫然と眺めていた。

「お前らみたいにお勉強ばかりできる馬鹿どもが、
 俺は一番嫌いなんだよぉ!!!」

男がナイフを大仰に振り回す。

まずい。
憂が殺される。
唯はカバンからデスノートを取り出した。

26:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:04:33.08 OlwnscRx0.net
これはシブタク

27:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:05:26.76 Ypu+wJas0.net
名前を書こうとして気付く。
そうだ。
あの男の名前なんて知らない。
唯は愕然とした。
こうしている間にも。
憂は。

「は、離せ!」

男の狼狽する声が唯の耳に届いた。
ノートから顔を上げると、月が男を取り押さえている。

「誰か! 警察に連絡を!」

月が叫ぶ。
唯は慌ててケータイを取り出した。

28:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:06:09.65 lCSsG1Ic0.net
「直訳でデスノート」

29:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:06:52.89 DC2njHYw0.net
ひえぇぇぇ

30:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:11:08.58 Ypu+wJas0.net
警察が来ると、その男はすぐに連行されていった。
「お勉強ばかりできる馬鹿どもが」と喚き続けながら。
唯はそれを黙って見送っていた。

「大丈夫? 怪我はない?」

月が憂に向けて言った。

「は、はい! 大丈夫です、ありがとうございました」
「妹を助けてくれて、ありがとうございます」

憂と唯は口々にお礼を言った。
月は笑顔で頷く。

「僕は夜神月。”月”って書いてライトって読むんだ。
 さっき紹介されたから知ってるかもしれないけど。変わってるでしょ」

そう言うと、はははと笑った。

「私は平沢憂です。本当にありがとうございました」

憂は深々と頭を下げた。

31:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:12:29.31 Ypu+wJas0.net
「いや。女性を助けるのは、当然のことだからね」

笑顔を崩さずに言う。
そして唯の方へ向き直った。

「君は?」

「え」突然言葉を投げられて、唯は固まってしまう。

「ああ、ごめんごめん」

月は大げさに両手を広げて謝った。

「名前だよ。平沢、なんていうのかな」

「あ、唯。平沢唯です」

唯はどぎまぎとして言った。

「なるほど。平沢、唯さんね」

月は言葉をかみしめるようにして頷いた。

32:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:12:44.48 CB5ejQ2r0.net
つーかこいつら両方高校生だっけ
頭身とかいろいろ違いすぎて忘れてた

33:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:12:46.04 fIbdAhO40.net
姉妹丼期待

34:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:14:10.56 AKFOiw5F0.net
リュークって感じがしない

35:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:14:44.11 Ypu+wJas0.net
「しかし、ついてたな」

帰り道、リュークがそう言った。

「ついてた?」

月が怪訝な顔をする。

「ああ」リュークが頷いた。
「まさか偶然唯の名前を聞けるなんてな。
 月。お前はラッキーだった」

「ふぅん」月が思案するような声を出す。
「つまり、僕以外の所有者ってのは、彼女なわけだ」

「あ」リュークがしまったという顔をした。
「いや、そこまでは言ってないけど」

顔に冷汗が浮かんでいる。
それを見て月は満足げな顔を浮かべた。

「死神でも焦ることがあるんだな」

36:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:16:24.11 Ypu+wJas0.net
「リュークは本気で偶然だと思っているのか?」

自室に戻ると月は問いかけた。
足を組んで偉そうに椅子に腰かけている。

「え」リュークが固まる。
「偶然じゃないのか」

月はため息をつきながら肩をすくめた。

「そんなわけはないだろ」

手に持ったデスノートを示す。

「こいつを使ったのさ」

そしてそのまま呆けた顔をしているリュークに放り投げた。

「説明するのも面倒だから自分で読んでくれよ」

月は呆れたように言う。
リュークは何か言い返そうと思ったが、黙ってページをめくった。

37:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:18:32.39 Ypu+wJas0.net
佐茂田 金吾  心臓麻痺

私立大国学園高等学校にて行われている式に刃物を持って出席。
在校生代表の挨拶が始まると日頃の鬱憤が爆発し、
参加者の一人を人質に取り、ステージ上で演説を行う。
別の参加者の一人がデスノートに名前を書こうとするが、
それが書き込まれる前に制圧され、警察に引き渡されたのち、
取り調べ中に死亡する。

38:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:20:30.74 Ypu+wJas0.net
「こんなことが可能なのか?」

読み終わったリュークが疑問をぶつけた。
月は鼻で笑うと、椅子に深く座りなおした。

「実際にそうなったじゃないか」

そして口元を歪めた。
「でもなぁ」と言いかけたリュークを月が手で制した。

「恐田奇一郎を覚えているか?」

リュークは少し考え込んだ。

「確か、バスジャックのやつだっけ」

自信なさげに首を傾げる。

「そうだ」と月。
「あいつはバスから降りた直後に車にはねられて死んだが、
 はねた車の運転手はその後どうなったんだろうな」

リュークはさらに首を傾げた。
頭が半回転している。

「さぁ、分からん」

39:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:22:43.69 Ypu+wJas0.net
「そこに過失があろうと無かろうと、
 人が人を殺すってのは重大なことなんだ。
 社会的な信用はもちろん、
 精神的、肉体的にも悪影響を及ぼす」

月がしたり顔で言った。

「お前が言うと、ギャグにしか聞こえないな」

頭を半回転させたままのリュークが言うと、
月はジロリと睨み付けた。

「まぁいい。調べたら、はねた車の運転手のその後はひどいものだったよ。
 精神を病んで勤めていた会社を退職。
 嫁子供にも逃げられて、貯金を切り崩しながら一人で暮らしているそうだ」

リュークが頭をグルグルと回している。

「それが、どうしたんだ」

月は深いため息をついた。

40:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:24:04.04 Ypu+wJas0.net
「さすがに物分かりが悪くてイライラしてきたな。
 ここまで言っても分からないのか。
 デスノートに名前を書かなくても、
 ある程度は他者の人生を操れるってことだよ。
 それがごく自然な形ならね」

「ほうほう」とリュークは頷いた。

「あの場でデスノートを持っている人間は、
 唯ひとりだけだったからね。
 ああ記述しておけば自然と唯が書くことになる。
 ただ犯人の名前が分からないわけだから、
 書き込まれる前に、としておくのがポイントなんだ。
 そうしないと不可能な行動になってしまって、
 ノートを取り出すことすらしなくなるかも知れないから。
 唯が名前を書こうとする状況になるならば、
 人質は関係者の可能性が高い。
 そうなれば唯の名前を知る機会は増えるからね」

「ふーむ」リュークは唸った。
イライラすると言った割には、丁寧に説明してくれてるな。
とりあえず月の語るに任せていたが、ふと疑問に思うことがあった。

「どうして唯があの場に来ると踏んだんだ」

月は口元を歪めた。

「聞きたいか? リューク」

41:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:27:39.02 Ypu+wJas0.net
いや、別に。

そう答えてやりたかったが、
悔しいことに気になって仕方がない。
リュークは渋々「聞きたい」と答えた。
月は深く椅子に座りなおした。

「僕の名前を教えたと言っていたな、リューク」

「ああ」リュークは頷いた。

「試しに自分の名前でネット検索してみたんだ。
 そうしたら在校生代表で挨拶するという記述がヒットした」

そう言って背もたれに身を預ける。
リュークは次の言葉を待ったが、
月はそれっきり黙ってしまった。

「え。まさか、それだけ?」

「他に何か必要か?」

月はリュークの疑問に質問で返した。

42:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:29:00.72 CB5ejQ2r0.net
映画版で彼女射殺させてたの思い出したわ

43:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:29:40.03 Ypu+wJas0.net
「よぉ」

「うわ!」

唯が部屋でボケっとしていると、リュークがやってきた。
突然の訪問に驚いてしまう。

「なんだ、今日はデスノート使ってないのか」

クックック。と笑った。

「え、ああ」

わたわたと慌てる。

「きょ、今日はいいんだよ。月さんにも会えたし」

「なるほどな」リュークがまた笑った。
「でもいいのか。名前を知られちまったぞ」

「え」唯はきょとんとした顔をした。
「月さんは私が所有者だって知らないでしょ?」

困ったな。リュークはどう説明しようか考えていた。

44:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:31:24.65 Ypu+wJas0.net
「ええっ、もうバレてるの?」

唯は驚いた。

「ああ」リュークが答える。
「あいつは頭良いから」

「そっかぁ。月さん頭良いもんなぁ」

唯はうっとりとした表情で言った。
リュークは胸を撫で下ろした。
よし、なんとかうまくごまかせたな。
さすがに人にさっきの説明をうまくする自信はなかった。

「じゃあ、これから会いに行くよ」

唯が突然言った。

「え」リュークは固まった。
「誰に」

「月さんに」

唯はリュークをまっすぐに見据えた。

45:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:32:37.34 Ypu+wJas0.net
「ごめん、月。連れてきちゃった」

「こんばんは。月さん」

唯はニコニコとして言った。
あれからほどなくして、唯は月の家にいた。

「リューク」月は頭を抱えている。
「俺が唯のことを所有者だって分かっていることを、
 本人に言ってどうするんだ」

「あれ」リュークが驚いたように声を上げた。
「言っちゃダメだったのか、あれ」

「はぁ」月がため息をつく。
「当たり前だろ」

唯は困ったような笑みを浮かべている。

「私、月さんの邪魔はしないよ。
 むしろお手伝いしたい」

「へぇ」月は品定めするような目でジロジロと唯を見る。
「じゃあ、これから僕が言うことをよく聞いて欲しい」

真剣な目つきでそう言った。

46:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:34:41.00 Ypu+wJas0.net
「全く、また練り直しだよ」

唯が帰った後も、月はずっと文句を言っていた。

「悪かったって、月。
 名前を知れたのにすぐ殺そうとしないから、
 仲良くやっていくもんだと思ってたよ」

リュークがそう言うと、月は両手を広げて天を仰いだ。

「リューク、君は僕が100まで説明しないと話を理解できないのか。
 せめてもう少し言外の意図を汲んでほしいものだよ」

大げさに手を振りながら言った。
そのたびに座っている椅子がギシギシと軋む。
そして背もたれに身を預け腕を組むと、
目を閉じて何やら考え込み始めた。

「悪かったよ、月」

こういう時は放っておいた方がいいな。
リュークは唯の家に行くことにする。
バサリと窓から飛び立った。

47:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:36:26.88 Ypu+wJas0.net
唯は机の上のデスノートとずっとにらめっこをしていた。

「あー、やっぱ無理だよぉ」

ボスン、とベッドに身を投げる。
月さんは私にも犯罪者を裁けと言った。
できる限り殺せ、と。

手を広げて目の前にかざすと、指先が少し震えていた。

「たくさん人を殺すなんてなぁ」

「無理か」

「うわあああ!!!」

驚いた唯はベッドから転げ落ちた。

「リューク! いきなり話しかけるの、やめてよね!」

上半身だけ起こして言う。
リュークは、クックックと笑った。

「どうした、名前を書く演技はもうやめたのか」

「ああっ!」唯が声を上げた。

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14/06/10 14:37:47.12 ZsV3aOjW0.net
いいね

49:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:39:00.30 Ypu+wJas0.net
「知ってたの?」

唯が上目づかいで聞いた。

「ああ」リュークは答える。
「名前を書かれた人間が死んだかどうか、すぐ分かるんだ。
 よくあれだけ無意味な文字の羅列を書けるもんだと、感心していたよ」

「そうかぁ」唯はベッドによじ登りながら言った。
「人殺しの気持ちになってたけど、
 やっぱ難しいね。私には無理無理」

そのままゴロンと横になる。
リュークがその顔をまじまじと見た。

「唯、お前。やっぱりそっちの性格の方がかわいいと思うぞ」

「え」唯が顔を上げる。
「死神もお世辞を言うんだね」

あはは、と笑った。

「いや、お世辞じゃないんだけど」

まぁいいか、とリュークは思った。

50:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:39:59.10 Ypu+wJas0.net
翌日の夜。
唯が部屋でゴロゴロしていると、電話が鳴った。

「はい。あ、月さん」

月は一方的に話すと電話を切った。
唯はしばらく画面を眺めていたが、ポイっと放り投げる。

「やっぱ、殺せだって」

唯は俯いてしまった。
少し頬がやつれているように見える。
リュークは心配した。

「別に無理にやることないんじゃないか。
 なんだったら、ノートの所有権を放棄しても構わない」

そう提案する。

「そう、だね」唯は俯いたまま答えた。
「少し、考えてみるよ」

しばらく一人にしてあげた方がいいな。
リュークは唯に別れを告げて、月の家に行くことにした。

51:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:42:20.48 Ypu+wJas0.net
「おい、月。あんまり唯ちゃんをいじめるなよ」

月がリュークの顔をまじまじと見た。

「”唯ちゃん”だと?」ふん、と鼻を鳴らす。
「なんだ、リューク。人間の女に恋でもしたか」

そう言って口元を歪めた。

「いいか。唯は僕に生かされている立場なんだぞ。
 少しくらい言うことを聞かせたって構わないだろう」

大仰に腕を振り回す。

「全く」リュークは呆れた。
「こんなやつがモテるのが理解できないな」

月は顎に手を当て少し考え込んでいたが、
「ふむ。ちょっと強引に行くか」
そう言ってケータイに手を伸ばした。

「ああ、僕だ」

どうやら唯に電話をかけているようだ。
リュークには嫌な予感しかしなかった。

52:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:43:58.45 Ypu+wJas0.net
「すぐ来い、と言ったのになんで来なかった?」

月が椅子に座りなおすとギシリと音が鳴った。

「あ、あのごめんなさい。
 昨日は夜も遅かったし、今日も学校があったから」

唯は俯き加減で言い訳をした。

「だからあまりいじめるなって。
 せっかく家まで来てくれたのに」

リュークがフォローする。

月は「はぁ」とため息をついた。
「新世界の”女神”がそんなことじゃ困るな」

そう言うと、月はやおら立ち上がり、唯に近づいた。
そのまま抱きしめる。

「ちょ、ちょ。月さん」

唯は顔が真っ赤になった。

53:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:44:34.59 fIbdAhO40.net
月氏ね

54:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:45:39.35 YLhKRXHG0.net
流石月さん人間のクズ

55:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:46:20.78 Ypu+wJas0.net
「め、女神って、なんのことでしょう」

唯は月に抱きしめられ、棒立ちのまま質問した。
月は体を離し、唯の両肩に手を置いてまっすぐに目を見つめた。

「そのままの意味さ。君には期待しているよ。
 一緒に作っていこうじゃないか。新しい世界を」

二人はしばし見つめ合った。
唯は頬を紅潮させて呆然と月を見ていたが、
やがて目線をやや下げて目を逸らした。

「ダメです、私」

月にその両肩を抱かれたまま、俯いてしまう。

「いくら凶悪な犯罪者とはいえ、裁くなんてできません」

体を震わせながら言った。
月は、そんな唯をまっすぐに見据えている。

「じゃあ、二日前のことはどう説明する?」

「二日前?」

唯と月はまた見つめ合った。

56:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:48:38.63 Ypu+wJas0.net
「ああ」月は唯から離れ、椅子に腰かけた。
「君も適当に座るといい」

唯は床にぺたんと腰を下ろした。

「僕の高校で君の妹、憂ちゃんって言ったかな。
 彼女が人質にされたとき、君はデスノートを取り出したよね」

唯は黙って頷いた。

「あれは、名前を書いて殺そうとしたんじゃないのか」

月が両手を広げて言った。
唯は俯いたまま、口元に手をやる。
その指先が少し震えていた。

「分かり、ません。ただ、憂が殺されるから、
 なんとかしないと、と思って」

「それは殺そうとしたってことだね」

月は立ち上がった。

57:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:51:45.71 Ypu+wJas0.net
リュークはそのやり取りを笑いながら見ていた。
お前がデスノートにそう書いたからだろ。
クックックと笑う。
月がそれを睨み付けて咎めた。
今は大事なところなんだ。邪魔をするな。

「僕は別に責めているわけじゃないよ」

腰をかがめて唯の両肩を抱く。

「最愛の人が危険に晒されたら、誰だってそうするさ。
 でも、ノートを持たない人間にはそれができない」

唯が顔を上げた。月と目が合う。

「悔しい思いをしながら、何もできない人たちがいる。
 彼ら彼女らのために、僕達二人が手を汚そうじゃないか」

数秒間見つめ合ったのち、唯が頷いた。

「はい」

「ありがとう」月は唯を力強く抱きしめた。
自分の背中に、腕が回される感触がある。
ふん、ちょろいな。
その口元が醜く歪んだ。

58:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:52:47.38 YLhKRXHG0.net
きたない、さすが月きたない

59:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:53:40.82 Ypu+wJas0.net
ガリガリガリガリ。

紙の上をペンが走る音が響く。

唯は一心不乱にノートに名前を書き続けていた。
ここ数日、ずっとこの調子だ。
話しかけると怒られるので、
リュークはそれを黙って見ていた。

ガリガリガリガリ。

「退屈だな」

ぽつりとそう言うと、月の家に戻ることにした。
やっぱり、前の唯ちゃんの方がかわいかったな。
リュークはそんなことを考えていた。

60:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:53:49.92 kwI06KC/0.net
唯が英語読めるとは意外とやるな

61:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:55:14.36 UmxhUsPV0.net
       

62:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:55:25.84 Ypu+wJas0.net
「唯ちゃんやばいぞ、あれ。顔もやつれてきたし」

リュークは月にそう報告した。

「何の問題があるんだ。
 寿命までは死なないんだろ?」

月はため息をついた。

「リューク」そう言って椅子ごと向き直る。
「僕が報告を頼んだのはそういうことじゃない。
 彼女が変な気を起こさないかどうかだ」

「変な気?」リュークは首を傾げる。

「ああ」

月は立ち上がると両腕を広げ、部屋を歩きながら続けた。

「突然裁きをやめるとか言い出しかねないだろう。
 そうなったら、また僕が背中を押してやらないとならない」

こいつの演劇調の喋り方はどうにかならないもんかな。
リュークは黙ってそれを見ていた。

63:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:56:45.73 Ypu+wJas0.net
「よく、やってくれているみたいだな」

月は唯をねぎらった。

「ところで。なんだ、話って言うのは。
 わざわざ家に来るほどのことか」

だいぶ頬のやつれた唯がそこにいた。
やや焦点の合っていない目を月に向ける。

「裁く犯罪者を、もう少し広げた方が良いと思う」

「何?」月は前に乗り出した。
「急いで変える必要はない。このままでいい」


64: 唯は首を振る。 「今裁いているのは死刑になるような重犯罪者だけでしょ?  殺人犯と性犯罪者も含めようよ」 「馬鹿な」月はその提案を一笑に付した。 「殺人犯はまだ分かるが、性犯罪者ってのはなんなんだ」 「レイプって殺人と一緒なんだよ」 唯は月の目をまっすぐ見つめて言った。



65:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:58:31.92 ocBOOvpMO.net
月は自分が殺される危機意識はないのか

66:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:58:32.38 YLhKRXHG0.net
男女の価値観の差ですね

67:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 14:58:46.41 Ypu+wJas0.net
月は大きく息を吐いた。

「何を言っている?」

そう言って肩をすくめる。

「犯されても死ぬわけじゃないだろ。
 レイプ被害者も、そのあと普通に生活している」

唯はかぶりを振った。

「普通に生活なんてしてないよ。
 だって、心が死んでるもの」

真面目な顔でそう言い切った。
月は思案するように俯いた。
なんなんだこいつは。めんどくさい女だな。
多少苛立ちながらも、顔を上げて言う。

「いずれ裁く対象に入れるつもりだが、まだ早い」

唯は立ち上がった。

「むしろ遅いくらいだよ。
 こうしている間にも被害者は苦しんでいるんだ。
 ずっと心を殺され続けているんだから」

お互い一歩も引かなかった。

68:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:00:14.69 Ypu+wJas0.net
月は考え込んだ。
対応を間違えると面倒なことになりそうだな。

「君の友人知人にいるのか?
 性犯罪の犠牲になった人間が」

「いいえ」唯は言った。
「でもこれから被害者になる可能性は誰にでもあるし」

月は頭を抱えた。
だから女は嫌いなんだ。
論理的な思考ができない馬鹿ばかり。

「ふう」と息を吐く。
「わかったよ」月は両手を広げた。
「検討しておこう。ただ、裁く対象は僕が判断するから、
 一日時間をくれないか。また連絡する」

唯は「わかった」とだけ言って帰っていった。

69:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:00:23.77 kOu8BSEQ0.net
ー-rクフ   ./jハ',.k'_0_ヾlヒミ、イ_0_ン`j.‐、... ‐v7   !'イ jハ',.k'_0_ヾlヒミ、イ_0_ン`j.‐、... ‐v7   !'イ
ー-‐'"   ,ィi  トヾ:t `´ jr 、、  `´ イハー-rクフ   ./jハ  トヾ:t `´ jr 、、  `´ イハー-rクフ   ./jハ
jj=_\.lト\ヘ,,_ミ|ミヾ   '`、'`_'     ハ|-‐'"   ,ィi/ j,!ヘ,,ミ|ミヾ   '`、'`_'     ハ|-‐'"   ,ィi/ j,!
k'_0_ヾlヒミ、イ_0_ヽ γ_,.二二..ヽ.  トミ'-、ヽ,jlヽt ヽγ ヘ,,  γ_,.二二..ヽ.  トミ'-、ヽ,jlヽt ヽγ
:t `´ jr 、、  ` ミ  '、v‐、... ‐v7  .lト\ヘ,,_ミ|ミ !ハヽlト   、v‐、... ‐v7  .lト \ヘ,,_ミ|ミ !ハヽ
ヾ   '`、'`_'   ハ  ぃー-rクフ _ヾlヒミ、イ_0_ン`j、}l| :t ` ミ   ぃー-rクフ _ヾlヒミ、イ_0_ン`j、}l|
ヽ γ_,.二二..ヽ. 、:ヽ `'ー-‐'" ´ ィjr 、、  `´ イハ∧! 、:  ヽ  `'ー-‐'" ´ ィjr 、、  `´ イハ∧!
ミ. '、v‐、... ‐v7   ヾ \   ̄  ,.イ:/'`、'`_'     ハ|V   ヾ \   ̄  ,.イ:/'`、'`_'     ハ|V
r 、、  `´ イハ∧  '`、'`_'     ハ_ヾlヒミ、イ_0_ン`j、} ∧  '`、'`_'     ハ_ヾlヒミ、イ_0_ン`j、}
`、'`_'     ハ| γ_,.二二..ヽ.   j'´ jr 、、  `´ イハ/ γ_,.二二..ヽ.   j'´ jr 、、  `´ イハ/
二二..ヽ.   jjリ;|,/!ム\|トミ'-、ヽ,jヾ  `、'`_'     ハ| リ;|,/!ム\|トミ'-、ヽ,jヾ  `、'`_'     ハ|
‐、...‐v7   !'イヘ jj=_\.lト\ヘ,,_ミ|γ_,.二二..ヽ.   jjリ ヘ jj=_\.lト\ヘ,,_ミ|γ_,.二二..ヽ.   jjリ
ー-rクフ   ./jハ',.k'_0_ヾlヒミ、イ_0_ン`j.‐、... ‐v7   !'イjハ',.k'_0_ヾlヒミ、イ_0_ン`j.‐、... ‐v7   !'イ
ー-‐'"   ,ィi  トヾ:t `´ jr 、、  `´ イハー-rクフ   ./jハ トヾ:t `´ jr 、、  `´ イハー-rクフ   ./jハ
jj=_\.lト\ヘ,,_ミ|ミヾ   '`、'`_'     ハ|-‐'"   ,ィi/ j,! ミ|ミヾ   '`、'`_'     ハ|-‐'"   ,ィi/ j,!
k'_0_ヾlヒミ、イ_0_ヽ γ_,.二二..ヽ.  トミ'-、ヽ,jlヽt ヽγ


70:  ヽ γ_,.二二..ヽ.  トミ'-、ヽ,jlヽt ヽγ :t `´ jr 、、  ` ミ  '、v‐、... ‐v7  .lト\ヘ,,_ミ|ミ !ハヽ_0_   '、v‐、... ‐v7  .lト\ヘ,,_ミ|ミ !ハヽ ヾ   '`、'`_'   ハ  ぃー-rクフ _ヾlヒミ、イ_0_ン`j、}l|   ハ  ぃー-rクフ _ヾlヒミ、イ_0_ン`j、}l|



71:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:02:44.60 Ypu+wJas0.net
唯が帰ると、月は苛立ちを露わにした。

「リューク。君はとんでもないやつにノートを拾われたもんだな」

強い口調でそう言う。

「全く。ただでさえ忙しいのに、余計な手間を増やさないでくれよ」

机に犯罪者の資料をほっぽりなげた。
そうして頭を抱える。

「とんでもないやつ、って言うなら、お前もそうだけどな。月」

クックック。リュークは深く笑う。
月がそんなリュークをジロリと睨んだ。

「まぁ、いいか」

言うと頭の後ろで手を組み、背もたれに身を預ける。

「どうせ新世界に神は二人と必要ない。
 あいつは消しておこう」

月はノートを開いた。

72:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:03:49.22 ZsV3aOjW0.net
期待

73:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:05:52.40 Ypu+wJas0.net
「外では会わないという約束だっただろ」

翌日。月と唯は駅前のオープンテラスのカフェにいた。

「ごめんなさい」唯は素直に謝る。
「たまには女の子らしく、普通にデートがしたくて」

上目づかいで窺うように月を見る。
月はコーヒーをすすった。
昨日の今日で何を考えているんだこいつは。
まぁ、関係を悪化させたままよりはいいだろう。

「数か月に一度くらいならいいが」

どうせ近いうちに殺すんだから、サービスしておいてやるか。
まだノートに名前を書いていないが、
すぐにでも書く準備はある。

「あの、昨日はごめんなさい」

唯はおずおずと言った。

「ちょっとしつこくし過ぎたよね」

俯いたままそう続けた。

74:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:06:47.44 Ypu+wJas0.net
月はたっぷりと間を取ってから言う。

「そんなことはないさ」

大仰に手を広げる。

「むしろ感心したよ。
 新しい世界に神として二人で君臨するんだ。
 ただの僕の傀儡はいらないからね」

月は口元に笑みを浮かべていた。

「月さん……」

唯はうっとりとした表情で見つめる。

そのとき。

「きゃあああああああ!!!!!」

割れるような悲鳴が、二人の時間の終わりを告げた。

75:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:08:43.28 Ypu+wJas0.net
声がした方を見ると、少し離れたところに女性がうずくまっていた。
その傍らにナイフを持った若い男がいる。

「ちっ」月は舌打ちをした。
ノートに名前を書いた犯罪者ならばこちらに危害を加えることは無いが、
あいつはそうではないから自分も巻き込まれる可能性がある。

「唯、逃げるぞ」

耳元でそう囁いた。

「えっ」唯は驚いた。
「逃げるって、犯罪者を前にして?」

純粋な目で月を見つめる。
月は焦った。

「名前が分かればどうとでもなるが、
 分からないんじゃどうしようもない」

そう言ってナイフ男の方にチラリと視線を送る。
あれ、あいつどこかで。
月は記憶をたどった。

76:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:10:41.80 Ypu+wJas0.net
邪義地 園。
思い出した。あいつの名前だ。
児童連続殺傷事件の容疑者だったはずだ。
月はノートの切れ端を取り出すとすぐに名前を書いた。

「さすが、月さんだね」

きっちり40秒後。
心臓麻痺であっけなくナイフ男は死んだ。

「じゃあ、行こうか」

月が立ち上がるが、唯は座ったままだった。
唯、どうした。
月がそう言いかけたとき。

「実際に見るまで、信じられませんでした。
 ……いえ。今でもにわかには信じられません」

背後から声がした。

「誰だ。お前は」

振り返ると、ひょろっとした体躯の、長髪の男が立っていた。

「私ですか。私は」

ポリポリと足の先でふくらはぎのあたりを掻いている。

「Lです」

77:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:13:42.43 Ypu+wJas0.net
「では、確保します」

Lがそう言うと、がっしりとした体格の男たちが陰から飛び出してきた。
月は数人がかりで押さえこまれる。

「ノート、紙切れには気を付けてください。
 まだ隠し持っている可能性があります」

「やめろ! 離せ!」

月は抵抗したが、地面に押さえつけられ身動きが取れない。

「唯! なんとかしろ!」

唯は虚ろな目でしばらく月を見下ろしていたが、黙って首を振った。

78:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:15:26.21 LgtW7poG0.net
支援

79:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:15:40.47 Ypu+wJas0.net
「ご協力感謝します」

Lは唯に握手を求めた。
唯はしばらく無言で俯いていたが、ぎこちなくそれに応えた。

「私も、罪に問われるんでしょうか」

俯いたまま言う。

「うーん、そうですね」Lは唸った。
確証はできませんが、と前置きをして続ける。
「キラに脅されていたということと、
 今回の捜査協力の件がありますので、
 それほど重い罪にはならないでしょう」

「そう、ですか」

唯は俯いたままだった。

「とにかく、裁判を待ってください」

その数日後、月が死んだ。
いや。
私が殺したんだ。

80:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:17:32.90 LgtW7poG0.net
支援

81:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:17:35.55 Ypu+wJas0.net
「どうした、さすがに邪魔になったのか」

ククク、とリュークは笑った。

「リューク」唯が顔を上げる。
「いつ殺されるか分からないスリルを楽しむ勇気なんて、
 私には無かったからね」

そう言って肩をすくめた。

「ん?」リュークが首を傾げた。
「何を言ってるんだ。
 さすがに獄中じゃ、ノートを使えないだろ」

唯は首を振る。

「そうじゃないよ。
 私は月さんに会ったその日に、
 ノートにその名前を記したんだよ。
 自分の名前を知られてしまったからね」

「えっ、そうなのか」
リュークは驚いた。

82:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:19:18.01 YLhKRXHG0.net
この月きたないけど頭悪いな

83:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:19:26.50 Ypu+wJas0.net
「そうじゃなかったら、とっくに私は殺されてる。
 月さんはLの偽物を躊躇なく殺したんだよ?
 デスノートを持ってる人間が他にいるとなったら、
 すぐに殺すに決まってるよ。
 だからリュークが現れてから、
 月さんが私の名前を知らないと告げるまで、
 ずっと気が気じゃなかったの」

確かに。
リュークは唯を殺さない月の行動に、多少なり違和感を覚えていた。

「なるほどな。ノートで行動を制限されていたわけか」

頷きながら言う。

「いったい、どこまでのことをノートに書いていたんだ?」

リュークの言葉に、唯がスッと無表情の顔を上げた。
そしてノートを差し出してくる。

「見たい? リューク」

いや、別に。
リュークはそう言いたかったが、黙ってノートを受け取った。

84:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:20:46.46 LgtW7poG0.net
支援

85:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:22:54.16 LgtW7poG0.net
支援

86:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:22:54.85 Ypu+wJas0.net
夜神 月 過酷な取り調べにより死亡

数日間から十数日間、いつも通りの日常を平穏にすごしたのち、
パートナーの謝罪を受けるため外出した先で事件に巻き込まれる。
その犯人の名前をデスノートに書くところを警察関係者に目撃され、
現行犯逮捕される。その後上記の理由により死亡。

邪義地 園 心臓麻痺

指定の日時・場所にて通り魔事件を起こすが、
現場に居合わせた人間にデスノートに名前を書かれる。
その40秒後に上記理由により死亡。

87:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:23:47.30 Ypu+wJas0.net
「なるほど、なるほどな」
クックック。リュークは笑った。

「あの天才との知恵比べはお前の勝ちみたいだ。
 おめでとう」

「そう、だね」

リュークが賛辞の言葉をかけても、
唯はどことなく浮かない顔をしていた。

「どうしたんだ」

リュークは心配した。
ここ数日でかなりやつれたように見える。

「最初は、キラ事件の犯人を暴く、
 ヒーロー気取りだったの」

唯はそう言って俯くと、涙をボロボロとこぼした。

「私、取り返しのつかないことしちゃった」

88:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:25:01.10 LgtW7poG0.net
支援

89:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:25:41.69 Ypu+wJas0.net
「月さんに抱きしめられて。
 月さんに見つめられて。
 月さんに褒められて。
 私、すぐに月さんのことが好きになったの」

唯は涙を流しながら言った。

「でも」

嗚咽が漏れる。

「その時にはもう、ノートに名前を書いちゃってた」

唯の独白は悲鳴に近い。

「残された限りある時間を、少しでも楽しもうと、
 月さんのために、月さんに気に入られようと、必死に頑張ったの」

リュークはそれを黙って聞いている。
しばらく部屋に嗚咽だけが響いていた。

「やっぱり」

喘ぐようにして言った。

「月さんの居ない世界は、私には耐えられない」

90:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:27:13.31 LgtW7poG0.net
支援

91:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:27:48.27 Ypu+wJas0.net
「いいのか? 本当に」

リュークは改めて確認した。
唯は黙って頷く。

「はいよ」
リュークは自分のデスノートに平沢唯と記した。

これで良かったんだよ。
唯は思う。
人殺しなんてもうしなくてもいい、そっちの世界に今行くからね。
そうしたら一緒に二人で作ろう。
新しい世界を。

ドクン。

唯の胸に、激痛が走った。

「人間ってのはよく分からんな」

バサバサと羽をはばたかせながらリュークは呟く。
死ぬ前に笑うなんて信じられない。
死ぬことの何がそんなに楽しいのだろうか。
死神には、理解できない領域だった。

「やっぱり。人間って、面白!!」

終わり

92:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:28:50.77 YLhKRXHG0.net
う、うーん‥‥


93:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:29:13.86 CB5ejQ2r0.net
非常に読み応えがあって面白かった
SSとは思えないような完成度
随所に張り巡らされた伏線とその鮮やかな回収の仕方
登場人物たちの事細かな心理描写、それによって成せるリアリティある会話
特に終盤の山場では凄く感情移入しちゃって見てるこっちがハラハラしちゃったよ
そして飽きのこないストーリー展開、王道でありながら新しいストーリーは
この作者独特のレトリックによって成せる新ジャンル
間違いなくこの作者はいずれプロの作家として大成するんだろう
こんな素晴らしいSSに出会えてよかった
次回作も期待してるから頑張ってくれ

94:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:30:24.73 Ypu+wJas0.net
ここまで読んでくれた方、レスくれた方、ありがとうございました

95:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:31:11.66 V8EeNb1H0.net
追いついたと思ったら終わってた
デスノートの範疇を超えてるような気もしたが
まあ乙

96:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:32:12.09 LgtW7poG0.net
>>92
消しゴム飛ばしの人?

97:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:33:45.14 Ypu+wJas0.net
>>94
うんそう

98:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:36:56.98 k/p+/rCb0.net
面白かった

99:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:37:31.21 UmxhUsPV0.net


100:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:39:15.12 LgtW7poG0.net
>>95
久しぶりのクロスだったですね。

この唯は憂なみの知性だったな
まあ姉妹だから底力は持っているからなあ

お疲れさんでした乙。

101:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:43:14.36 eUSCYgDv0.net
まあ唯である必要性は皆無だったな
ギミックは面白かった

102:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:44:27.76 Ypu+wJas0.net
>>98
いつも支援してくれてる人かな?
多分この二つ見てないでしょ

唯「これっくらっいの♪」 梓「おべんっとばっこに♪」
スレリンク(news4vip板)

梓「1対1で勝てる動物ですか?」
スレリンク(news4vip板)

103:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/06/10 15:48:27.37 LgtW7poG0.net
>>100
あたり

以前のを聞こうかなと思っていたんだけど
まあ他の人が聞いた時でいいやと思ってた。

ログ速でチェックしてるんだけどなあ……
早速読んでみます、ありがとさん。

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