14/04/30 20:58:49.69 KnJ3eMCri.net
ドラム走り過ぎのりっちゃんが唯にそんなこと言わない
言うとしたら澪だ
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14/04/30 20:59:34.52 KnJ3eMCri.net
あと使用人(執事)は斎藤な
セバスチャンなんていない
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14/04/30 20:59:39.20 nmbmsLX+0.net
「ですから、何度もおっしゃってる通り……」
「ワシントン条約は 聞 き 飽 き た わ よ ! 」
はぁ。
これさえなければなぁ。
使用人たちは一様にそう思っていた。
「じゃあ、期待してるわよ」
紬は、怖いほどの笑みを浮かべてそう言うと、
けたたましい音をたてて、扉から出て行った。
「もう、この使用人生活も、潮時かの」
セバスチャンは、シロナガスクジラにかけて、うまいことを言った。
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14/04/30 21:00:42.49 nmbmsLX+0.net
「澪ちゃん!」
紬は、登校中に澪を見つけた。後ろで叫ぶ運転手に手を振る。
「ムギ。おはよう」
「おはよう、澪ちゃん!」
紬はニッコリとほほ笑む。
先程まで、車内でシロナガスクジラのDVDを見ていたので、えらく上機嫌だ。
「ところで、澪ちゃん」
澪の顔を、下から覗き込むようにして、紬は顔を近づけた。
「ん、どうした?」
吐息がかかるほど、近い。
「澪ちゃんは、潮吹きって、どう思う?」
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14/04/30 21:01:28.30 nmbmsLX+0.net
「な、ななななな……」
澪は耳まで真っ赤になった。
「ムギ、朝っぱらから、何、言ってんだ」
顔が、熱くて、涙が出そうになる。
紬はキョトンとした顔をしていた。
「えーと?」
紬はしばらく考えていたが、思いついたように言った。
「もしかして、澪ちゃん。潮吹き見たことないの?」
澪は顔から、火を噴きそうだった。
潮は吹かなかったけど。
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14/04/30 21:04:15.04 saNTG5MH0.net
むぎたそ
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14/04/30 21:04:29.40 nmbmsLX+0.net
「あ、あああ、当たり前だろ。その……吹き、とか」
紬は、澪の様子を、不思議そうに見る。
「あら、そうなの。私は毎日見てるけど」
澪の顔に、どんどん血流が集まってくる。
「分かった、じゃあこうしましょう」
紬は、澪の耳元で、こう言った。
「今日の帰り、家にいらっしゃい。見せてあげるから」
澪の頭が、ボンッという音をたてて、爆発した。
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14/04/30 21:05:11.35 nmbmsLX+0.net
「澪、どうしたんだよ。お前らしくもない」
律が呆れたように言った。
「お前がペース乱してどうするんだ?唯もムギも何か言ってやれよ」
唯とムギは、微笑で返す。
「べ、別に、なんでも、ないよ」
大仰に手を振り、澪は慌てて言った。
それが、なんでもない人間の態度かね。律が悪態をつく。
「でも、澪ちゃん。朝からおかしいわよ。熱でもあるんじゃないの?」
言うと、紬が澪のオデコに、自分のオデコをくっつけた。
「ぎゃー!」という叫び声をあげて、澪は真っ赤な顔で、卒倒した。
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14/04/30 21:05:46.86 nmbmsLX+0.net
ひどく、冷静だった。
そう。怖いくらいに、冷静。
「どう?すごいでしょう!わぁ!すごいわぁ!」
大興奮する紬の横で、澪は冷め切っていた。
極寒の海を漂う、流氷のように。
肌を裂く、ナイフのように。
熟年離婚をする前の、夫婦のように。
澪は、冷め切っていた。
「わぁ!あんな高さまで!見てる?澪ちゃん!」
あぁ、見てるよ。
そう答える澪の目は鋭く、
今なら熊でも殺せそうだと、そう、思った。
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14/04/30 21:06:22.06 nmbmsLX+0.net
遠くの方から、呼ぶ声が聞こえた。
目の前の机に置いてある、錠剤に手を伸ばす。
慣れない手つきで数錠取り出すと、ヤク中患者のように、それを飲み下す。
「今のは、幻聴、なんだ」
医者に教わったとおりに、自分に言い聞かせた。
そう。幻聴さ。ただの、幻なんだ。
はるか遠くの海の、波の音を思い浮かべる。
そこにはたくさんの魚が泳いでいた。
マグロに、イワシ、タコ、イカ、サザエ。
イワナにコイにタラバにアンコウにグッピー。
淡水魚も海水魚も熱帯魚も深海魚も。
全て仲良く泳いでいた。みんな幸せそうだ。
それを破壊したのは巨大な魚。
いや。形は魚だけど、魚じゃない。
これは、いったい、なんだ。
その時、扉がけたたましく開いた。
「セバスチャン!シロナガスクジラは!」
セバスチャンは、発狂した。
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14/04/30 21:07:11.50 nmbmsLX+0.net
限定のケーキをみんなで頬張っている時も、紬はため息ばかりついていた。
「どうしたの?ムギちゃん。ため息ばっかついて」
唯が心配そうにのぞき込む。
「ちょっと、問題が、ね」
使用人に指示してから、もう数週間たつのに、
一向にシロナガスクジラに乗れる気配が無い。
紬の人生で、こんなことは初めてだった。
「そうなの?心配だよぉ」
紬にとって、唯は、心の底からそう言ってくれてるように思えた。
ちょっと、言ってみようかしら。
もしかしたら、私が思ってる以上に、簡単なことかもしれないわ。
紬はそう考え、唯たちに、自分の夢を話してみることにした。
「実はね……」
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14/04/30 21:07:47.32 nmbmsLX+0.net
唯、律、澪の3人は、紬の話を真剣に聞いてくれた。
「どう、かしら」
紬は尋ねる。
「うーん、ワシン」「ワシントン条約は、もう聞き飽きたのよ!」
律の発言にかぶせるように言った。
紬のあまりの剣幕に、椅子からずり落ちそうになる。
澪は、冷めた目で空を見つめていた。
「唯ちゃんは、どう思う?」
唯はかぶりを振った。
「ダメだよ。紬ちゃん」
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14/04/30 21:08:24.48 nmbmsLX+0.net
紬は、はぁ、とため息をついた。
みんな、結局これ。
「ワシントン条約って何?そんなに偉いの!?」
机の上の食器が、ガシャリ、と音をたてる。
「みんなすぐ口を開けばワシントン条約、ワシントン条約!」
紬のティーカップが、床に落ちて、かちゃり、と割れる。
「そんなにワシントン条約が好きなら、ワシントン条約と結婚すればいいんだわ!」
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14/04/30 21:09:12.89 nmbmsLX+0.net
こんなに激昂する紬を見るのは、3人とも初めてなので、部室に緊張が走る。
はぁはぁ、と肩で息する紬は、小さく、ごめんなさい、と謝った。
そして、床に落ちたティーカップを片付け始める。
「違うんだよ、ムギちゃん」
唯だ。
「何が、違うのよ、唯ちゃん」
落ち着きを取り戻したとはいえ、いつまたスイッチが入るか分からない。
唯は意を決して、言う。
「ワシントン条約はね、大した問題じゃないの」
部室に、静寂が、訪れた。
25:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/04/30 21:10:02.38 nmbmsLX+0.net
「何を、言っているの」
紬はわなわなと震えている。
これは、まずい。
律と澪は、ただの傍観者になる。
「もう一回言うよ。ワシントン条約はね、大した問題じゃないの」
唯は、ぴしゃりと言い放った。
「じゃあ、何が、問題、なの」
紬は、自分を必死に抑えつけながら言う。
唯は紬の目を、まっすぐに見据えた。
「クジラの背中にはね。乗れないんだよ」
26:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/04/30 21:10:42.20 nmbmsLX+0.net
「どういう、こと?」
紬も呆気にとられた。
あれだけ大きな動物の背中に、乗れないなんてことは考えられない。
「どうして!?馬にだって乗れるのに!ちいさな頃は犬にだって乗れたわ!」
唯は、紬の発言を遮るように手をかざすと、一度、大きな深呼吸をした。
「ムギちゃん」
ゴクリ。誰かが唾をのむ音が聞こえた。
「潮吹きって、知ってる?」
紬は「あっ!」と大きな声を出した。
そして澪は、頬を、赤らめた。
27:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/04/30 21:11:25.55 nmbmsLX+0.net
「私、小さいころに、見たことがあるの」
唯の語りを、遮るものはいない。
「クジラの背中に乗ってた人がね、潮吹きで飛ばされちゃうのを」
ガタン!と音がした。
紬が、椅子から転げ落ちている。
「あ、ああああ。ああああ……」
頭を抱え、呻く。
「ムギちゃん」
唯は、紬の方を見ないようにして、言う。
「これで、チェックメイト、だよ」
事件の終わりは、いつも悲しいものである。
それは、いつの時代も、変わらない。
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14/04/30 21:12:53.79 nmbmsLX+0.net
大人の男の人に付き添われ、車に乗り込む直前、
紬はこちらを振り向いて、悲しい笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、ね」
両手と頭に、ジャケットをかけられた紬が、唯に言う。
「いいよ、ムギちゃんが冷え性なの、知ってるから」
唯は表情を変えない。
「そう、ありがとう。こうしてないと、手と頭が寒くて」
紬は、ふふっ、と短く微笑む。
「それじゃあ、帰ろうかしら」
そう言って、紬は、車の中に、消えていった。
29:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします
14/04/30 21:13:31.59 nmbmsLX+0.net
ようやく、これで平穏が戻った。
セバスチャンは胸をなでおろしていた。
使用人最古参である威厳も、プライドも、ズタズタに切り裂かれたが。
と、
カチャリ。
扉が開いた。
「いかがなさいました。紬お嬢様」
紬は肩を上下させながら荒い呼吸をし、
目をランランと輝かせている。
「セバスチャン!次はジャイアントパンダよ!」
なるほど。それで目を……。
セバスチャンは、深い、深い眠りについた。
終わり
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14/04/30 21:18:31.84 GjYdPIe00.net
むぎ
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