カレル・ヴァン・ウォルフレンの日本分析 2.0at SOC
カレル・ヴァン・ウォルフレンの日本分析 2.0 - 暇つぶし2ch400: ◆JeacknUANQ
12/07/12 21:43:41.94 pcaqnbXX

/// 国民の監護者 37 ////////////////

    何世紀にもわたる恩恵

 警察の慈悲の論理は、少なくとも一八七〇年代以来、日本の権力者がたゆみなく推進した
権力観と軌を一にしている。今日、個人のレベルでは、あなたの上位者がいちばん良いよう
計らうから、それを信じなさいと言われる。地域集団のレベルでは、自民党と官僚が、同様の
心がまえで恩恵を施すことになっている。従属者から上位者への変わらぬ感謝は、無条件の
忠誠についで、日本の社会・政治上の主要な統制力であった。そして、これは、現行の政治的
秩序が究極的な恩恵と美徳であるという当局推進の信念と結びついているのである。

////// 「日本権力構造の謎」<上> ///



401: ◆JeacknUANQ
12/07/14 21:04:25.35 DBBCMApl

/// 国民の監護者 38 /////////////////

 伝統的に、中国では恩恵が統治の一条件とみなされていたのに対し、日本ではそれは条件
ではなく統治者の恩情から人びとに施される例外的なものと考えられてきた。上位者から
特権や物品を分け与えられるのは、その上位者が人間味のある人物だからであって、従属者の
当然の権利ではなかったのである。中国の皇帝は、"天命"に従い恩恵を施し正義を守ると
されたが、天照大神の直系の子孫として日本の天皇はそうした天の裏付けは必要とせず、
永遠の慈悲の持主とされたのである。この完全に利他的な慈悲というものが、広く信じられた
という確かな証しはない。

//////////////// 原書1989年刊 ///




402: ◆JeacknUANQ
12/07/15 19:33:29.64 MlrIToN4

/// 国民の監護者 39 /////////////////

 日本は一九世紀なかばに国際社会に復帰したが、この思想はそこなわれなかった。明治憲法と
もっとも関わりの深い寡頭政治家伊藤博文は、後年はっきりとこう述べている―「他国のように、
人民が憲法上の特権を王から力づくで奪ったのではなく、新政権は自発的な贈り物として人民の
上に授けられた」。天皇の計り知れない慈悲は、主として二〇世紀直前から一九四五年まで続いた
"家族国家"および"国体の本義"の思想(10章を参照)に具体化された。西欧に向けての日本の
解説者の草分けの一人、新渡戸稲造は、日本には、「西洋の歴史に見られる独裁君主}がいなかった
と書いた。さらに、少なくとも一人の天皇が殺害され、暗殺未遂が多々あったことは忘れて、
日本の年代記には「チャールズ一世やルイ一六世の死のような汚点はひとつもない」と主張した。
他国の臣民とは異なり、日本人は当然のこととして歴代の天皇を敬愛してきたと断言している。

////////////////////// 早川書房 ///



403: ◆JeacknUANQ
12/07/16 22:30:09.40 X8YHhGV1

/// 国民の監護者 40 ////////////////

一九一〇年に、日本の政治的発展について論文を書き、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスで
博士号を授与された植原(ジョージ)悦次郎は、日本人の天皇崇拝の気持ちをこう説明した。

   思慮のある日本人にとっては、母国へのもっとも快い思いに結びつくもの、彼の父祖が享受し、
  そして今彼自身が享受している平和、静穏、幸福、繁栄に結びつくもの、かつ、彼がはっきりと
  自覚している国の安定、威厳、調和、国力の基盤を、非難することは至難のわざである。

 日本の仏教の教えは、恩恵の返礼に主君への義務があるという、日本土着と、移入した儒教の概念を、
形而上学に高めて支持した。もう一人の初期の日本文化の解説者、里見岸雄は、ヨーロッパの聴衆に
こう説明した。

////////////// 篠原 勝 (翻訳) ///





404: ◆JeacknUANQ
12/07/17 21:33:32.83 00n3juNQ

/// 国民の監護者 41 ////////////////

   宇宙そのものが厚情、すなわち恵み、すなわち恩恵の顕示である。太陽が輝く。雨が畑を肥やす。
  花が咲く。すべてが恩恵の顕示である。われわれ人類は、宇宙の偉大な恵みを受けている。
  われわれは親から生まれ、大地に住んでいる。われわれは、さまざまな聖人賢者によって明らかに
  された教えによって教養を身につける。アメリカ人は日本で作られた絹の服を若る。英国で発明
  された汽車が、今や世界中で使用されている。われわれは、大工が建てた家に住む。生産者や
  商人の労働のおかけで、われわれは特別の労働をせずともなんでも買える。さすれば、この世の
  ものはすべて、まさしく恩恵の現われではなかろうか?

 それ自体は賞賛すべきこの倫理的な心情が、政治的な目的のために簡単に歪められた。

//////////////// 945円(税込) ///




405: ◆JeacknUANQ
12/07/18 21:41:39.14 I9EtTr9T

/// 国民の監護者 42 ///////////////

 日本人の基本的な行動様式を研究した人類学者、ルース・ベネディクトは今や古典となった代表作
『菊と刀』で、日本人を「年月と世間に恩義を負う人びと」だと表現している。一九四五年まで、
日本の子供たちは、先祖、先生など上位者がこの世を人の住めるものにしてくれた、だから恩を
忘れるなと教えられた。今もすべての日本人が、ある程度この負い目をひきずっているし、かつては
それが最大限の自己犠牲を正当化した。恩は、完全には返すことのできないという点で、ありふれた
社会的義務である義理とは違う。権力関係においては、恩は"恩恵"を受けた者が慈悲深い上位者に
永遠に従属することを正当化する。

////////////// K.V.ウォルフレン著 ///




406: ◆JeacknUANQ
12/07/19 22:05:09.23 22JFFMaB

/// 国民の監護者 43 ////////////////

 <システム>は戦前の天皇を家長とする"家族国家"ほど、すべての恵みの源であるとはされない
ものの、今でも暗黙のうちに日本人は<システム>は当然に恩恵を与えるものであると考えることを
期待されている。実際の揚でぱ、上にいる者が施す恩恵とされるものについて、人びとはかなり
冷笑的である。選挙民が国会に送った議員は、約束どおり橋や道路その他の利益を選挙区に
もってこられるかどうかで評価される。村の人たちは、何世紀もの間できるかぎり自活して
きたから、生活を快適にするものを要求する権利については、確たる感覚を持っている。また、
酒をくみ交わすサラリーマンの会話を盗み聞きすると、上役の不平をならべたてるのが、
彼らの楽しみのひとつであるとわかる。しかし、このような皮肉な態度も、ひたすら謝ったり、
恩恵を施すとされる者に対し感謝を示す習癖を変えるまでにはいたっていない。そして、
官界と大企業が慈悲を旨とするのは当然と、これらの組織の指導者は考えている。

////// 「日本権力構造の謎」<上> ///




407: ◆JeacknUANQ
12/07/20 21:54:57.61 UScyK4in

/// 国民の監護者 44 ////////////////////

    安全な社会

 工業化と都市化と人口過密にもかかわらず、国民の養護者と自己監視する国民によって、
ほぼ過去のどの時代、現代のどの国よりも安全な社会が作り出された。東京のせまい路地でも、
ひったくりの心配はないし、殺人など論外である。夜でも、たいていの道を恐がらずに歩ける。
貿易の成功についで、日本の犯罪率の低さが世界の羨望の的になっている。一九八四年の
殺人者は、一〇万人当たりわずか一.四七人で、これに比べ、アメリカ七.九二人、英国
三.二四人、西ドイツ四.五一人であった。夜盗やこそ泥は普通だが、強盗となると、
欧米諸国に比べてさらに少ない。日本は一〇万人当たり一.八二件、アメリカ二○五.三八件、
英国五〇.〇二件、西ドイツは四五.七七件たった。

////////////////// 原書1989年刊 ///



408: ◆JeacknUANQ
12/07/21 19:46:08.06 ycgrRa9P

/// 国民の監護者 45 /////////////////

 このような大差の理由は、警察への情報提供者や一般市民の防犯ネットワークに加え、
日本の警察と犯罪組織が共生関係にあるためであろう。一般人は拳銃を入手できないし、
拳銃の日本国内への持ち込みチェックが厳重にされているほか、犯罪を生む麻薬問題がない
ことも大きな理由である。ヘロイン中毒はめずらしく、ヘロインの売買および使用に対しては
容赦ない処置が取られる。中毒者の苦しみには同情が示されないし、代替薬物を利用した
"乳離れ"もない。麻薬中毒者が捕まれば、禁断症状の苦しみを味わうしかない。主婦や
会社員やティーンエイジャーがメタアンフェタミン(通称スピード)などの覚醒剤を使う
問題はある。だが病的な窃盗狂が横行するにはいたっていない。マリファナは危険な習慣性の
ある麻薬として扱われており、使用容疑者―主に西欧の若者文化に浸った人びとであり、
とくに芸能界に多い―は、夜明け前の手入れを覚悟したほうがよい。捕まれば刑務所行きで、
外国人は国外追放に処されることもある。

////////////////////// 早川書房 ///



409: ◆JeacknUANQ
12/07/22 18:57:11.33 n8gI94cN

/// 国民の監護者 46 ////////////////

    保護されない人びと

 <システム>は、社会のトップから底辺ちかくまで、広範にわたる社会階層を保護し、
いろいろなニーズに応えている。明らかに、<システム>は、ナチズムやレーニン主義に
もとづいて二〇世紀が生みだした全体主義的社会制度よりはるかに優れている。
 問題が残るのは、大半の人にとってよい仕組みであってもそれが少数者(マイノリティ)を
適正に保護しているかどうかという点である。<システム>は恩恵を与えるのに選択的だと
いわざるをえない。

////////////// 篠原 勝 (翻訳) ///




410:名無しさんの主張
12/07/22 19:39:31.20
最近、橋本知事が浮気でスキャンダルになってるけど
これもウォルフレンさん的には非公式権力の陰謀ですか?

411: ◆JeacknUANQ
12/07/23 21:43:53.91 1I749Pll

/// 国民の監護者 47 ////////////////////

すでに見たように、犯罪容疑者は充分に保護されない。在日韓国人などの少数者やかつての
被差別部落出身者のような社会的な少数者も保護されていない。これらの少数者は、教育や
就職の面で体系的に一貫した差別に直面する。警察や公立の学校など、本来模範とされる
べき機関も差別をしなくはない。戸籍および興信所の調査をもとに、雇用主や親が
就職希望者や結婚相手として、少数グループの人びとを考慮の対象から外すこともできる。
警察もまた、彼らにはあまり慈悲を示さず、問題の多い別の集団として扱っている。

/////////////////// 945円(税込) ///




412: ◆JeacknUANQ
12/07/24 23:04:01.43 dh8h1GWG

/// 国民の監護者 48 //////////////////

    自らの意志によらない非順応者

 精神病者の扱い方をよく見ると、日本社会は、意識的ではないが慣習に順応しない人々に
対しても頑固な態度をとるのが判る。もちろん、どこの国でも、社会が精神病者とみなす
者が最悪の場合、本人の意思に反して閉じ込められることはよくある。しかし、立憲主義の
政治制度下では、危険かどうかを判断する規準と、施設に収容された者の安全と個人の威厳を
守る保証という、二つの保障があってしかるべきだとされている。

////////////// K.V.ウォルフレン著 ///



413: ◆JeacknUANQ
12/07/25 21:30:58.60 8ZMWncES

/// 国民の監護者 49 //////////////////

 一九八五年七月、国際法曹委員会(ICJ)が、日本の精神病患者の扱い方を、日本の
憲法にも、日本が批准した市民的および政治的自由に関する国際規約にも違反するとして
厳しく批判した。同委員会は、監禁されている患者の死亡率が異常に高いことを発見した
のである。施設内容はひどく、収容定員を上まわっており、不必要な暴力がふるわれ、食事は
粗末で、みじめな状況の下におかれた患者が食いものにされていると断定した。また、適正な
理由なしに監禁されている患者が多いとも結論した。その前年には、ニューヨークに本部を
おく国際人権連盟が、日本では精神障害者も異常にたくさん監禁されていると主張した。
同連盟はまた、通常の日本の精神病者の扱い方は人権無視だとも述べた。

////// 「日本権力構造の謎」<上> ///




414: ◆JeacknUANQ
12/07/26 21:33:19.57 VfTXk8Oq

/// 国民の監護者 50 //////////////////

 日本では約三四万人が精神病院に入院している。その施設の八七パーセントは私営である。
収容者の五分の四が本人の同意なしに監禁されたもので、英国の場合にはこの数字がわずか
二〇分の一である。患者の三分の二が鍵つきの部屋に閉じ込められており、大半が外の世界との
連絡を断たれている。推定二〇万人が正当な期間よりはるかに長く収容されている。日本の
法律では、精神病とみなされる者の保護義務者が、その人を精神病院に入れるかどうかを
最終的に決定できる。そして、精神病院が入院期間を決定できるのである。

////////////////// 原書1989年刊 ///




415: ◆JeacknUANQ
12/07/29 21:38:12.34 2KxhgAon

/// 国民の監護者 51 //////////////////

 身体的あるいは精神的ハンディのある日本人は、親族によって慣習的に社会から隠されてきた。
多くの人が、ハンディは恥ずべきこととみなすからである。最近は、自宅の奥の部屋に留めおかれずに、
施設に送られる精神障害者の数が増えてきた。各種の精神病院に勤める医療関係者で、調査に
協力的な人々が語ったところによると、もし差別がなければ、患者のおよそ七〇パーセントが
在宅療養ですむ。医学上の精神病患者や精神薄弱者のほかに、年老いた親が、ボケ症状とよくある
嫁とのもめごととが重なって精神病施設に送られるケースも非常に多い。時には手に負えない
若者への対策として、施設への監禁が利用される。

//////////////////// 早川書房 ///



416: ◆JeacknUANQ
12/07/30 22:13:09.78 Tc3nKRZ5

/// 国民の監護者 52 //////////////////

 詰め込み主義の私立の精神病院は大きな利益をあげることができる。国民健康保険制度には
悪用の余地が多く、平均して患者六八人に対し医者はわずか一人だけ(普通の病院だと患者
一四.三人に対し医者一人)だから経費も少なくてすむ。
 一九八四年に、ある精神病院で不審な死亡者が一九人出た事件があり、日本の報道界もこの
問題に注意を向けた。マスコミの調査で日本のさまざまの地域でも強制監禁、虐待、死亡の
ケースが多いことが判明した。だが、精神医療人権基金事務局長、戸塚悦朗弁護士は、官僚が
実効ある措置を取る望みはあまりないとしている。一九八七年現在おこなわれようとしている
精神衛生法の改正も、単に表面をつくろうだけとみられている。国際法曹委員会(在ジュネーブ)や
国際人権連盟(在ニューヨーク)の非難に対する厚生省の反応は、日本には欧米諸国とは異なる
独自の文化がある、よって日本は独自の方法で精神障害者を扱う権利があるというものだった。

//////////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



417: ◆JeacknUANQ
12/08/01 22:40:49.81 Pf4olRBv

/// 国民の監護者 53 //////////////////

    <システム>の敵

 日本の<システム>が一貫して苛烈に攻撃してきた非順応者は、左翼主義者である。マルクス
主義に感化された日教組と文部省との闘いの足跡や、強硬作戦に負けた戦後の労働運動の組識者に
ついては、すでにくわしく見てきた。もうひとつ明白なのは、警察と検察が、思想的な動機を
持つと考えられる紛争の関係者をかなり激しく差別することである。「収入ではなく、思想が、
権威の誤用を引き起こす」。警察は一般の激しい喧嘩はふつう気軽に扱い、やがて忘れてしまう。
ところが、職場での工場労働者の闘争は、厳しく追及され原則的に起訴される。最高裁も検察も
警察もこの偏向を支持しており、たいていの場合、下級審の判決を覆してでも労働側に不利な
判決を下す。

/////////////////// 945円(税込) ///



418: ◆JeacknUANQ
12/08/02 21:11:22.63 MOIphGxt

/// 国民の監護者 54 //////////////////

 <システム>のやり方に反対し、不満を政治的行動に移す日本人は、体制破壊者で、爆弾を
投げる可能性のある人物とみなされる。警察と検察は過激派の学生を、他の検挙者に比べて、
かなり苛酷に扱う。左翼に対する警察の反感は「ほとんど本能的」である。あるアメリカの
学者が要約したように、「警察は、共産主義者や左翼的な労働組合についての話になると、
電気が通じたように気色ばむ。彼らは、そういう人びとは日本社会と警察体制に対する脅威と
考えていると、幾度となく私に語った」。警察官志望で左翼的傾向をつい見せてしまう者は、
この仕事には不向きだとみなされ、選から除外される。兵庫県警に一〇年動めた後、本を書いた
松本均は、警察のやり方や優先事項に疑問を出せば、外部の者でも警察内部の者でも、警察の
上司は自動的に「アカ(共産主義者)!」と言い返すと述べている。

////////////// K.V.ウォルフレン著 ///



419: ◆JeacknUANQ
12/08/03 22:14:57.71 f3AL9zK4

/// 国民の監護者 55 ////////////////

 警察は活動的左翼団体をたゆまず抑えつけるが、右翼活動家に対しては野放しで自由に
振る舞わせるのも、日本の現実の一部である。世界でもっとも人出の多い場所のひとつである
東京の銀座で毎日、旗やのぼりをはためかせ拡声器をつけたトラックが戦略的な地点に陣取る。
有名な戦前の極右の国粋主義者で、自分のことを「日本のヒットラー」と称したこともある
赤尾敏のトラックである。筆者が一九六二年に初めてそこを通った時にも、彼はいつもの
場所で声を嗄らして叫んでいた。一九九〇年二月に亡くなるまで彼は、言論の自由の名の下に、
群衆の耳をつんざかんばかりに音量をあげて、左翼と世界共産主義の恐ろしさについて訓戒した。
銀座の買い物客はこの老衰気味の右翼古老を無視したが、警察が何年も続けて通行者に演説する
これと同等な機会を、左翼の活動家にも与えるとは、とても考えられない。

////// 「日本権力構造の謎」<上> ///




420: ◆JeacknUANQ
12/08/04 20:08:14.98 xvmznRON

/// 国民の監護者 56 /////////////////

 右翼には大いに自由が与えられていて、拡声器から騒音をまきちらしながらトラックで公道を
巡回し、はたまた混雑した路上で耳をつんざくような演説をする。実際、右翼は、警察が見て
見ないふりをするので、社会党主催の会合の邪魔をしたり妨害するのも許されている。また、
すでに見たように、右翼の威嚇は、日教組の大会会場さがしを困難にさせている。
 左翼の活動家が信念を撤回しないと、警察と検察官の怒りが増す。警察にとって、彼らの犯罪
そのものはその"誤った態度"ほど重要ではない。彼らが謝ろうとしないのは、警察から見れば、
"日本人にもとる"態度となる。単に予謀、犯罪行為の準備あるいは共同謀議の嫌疑で投獄された
過激派は、犯罪が立証され有罪と決まった一般囚人よりはるかに苛酷に扱われる。待遇を改善
してもらうには、戦前のマルクス主義者や知識人が"間違った思想"を放棄して帝国主義秩序の
良さを認めた転向のように、誓って思想上の信念を否定しなくてはならない。今日では、
証明ずみの過激派活動家だけがこのような圧力を受けるが、人の信条を強引に変えさせるのは
憲法違反であることに変わりはない。

////////////////// 原書1989年刊 ///



421: ◆JeacknUANQ
12/08/05 21:47:41.90 4PZVqVKy

/// 国民の監護者 57 ////////////////

 警察および法務当局の寛大さへ恩義を感じる容疑者や有罪者が日本に数多いことは想像がつく。
一方、政治活動をする若者が差別的な扱いを体験し、社会の改善は暴力革命によってのみ可能
だという"証拠"をつかんだといって、苦もなく過激化する過程を想像するのも難しくない。
活動家の学生に残されている道は基本的に二つしかない。政治的なことに関わるのをやめるか、
過激派に加わって非合法手段に訴えるかである。したがって、権力者が、日本の過激派を
生み出すのに直接手を貨してきているのである。

////////////////// 早川書房 ///




422: ◆JeacknUANQ
12/08/07 21:11:02.54 u5jql0pi

/// 国民の監護者 58 //////////////

   <システム>の最強メンバー

 転向の強要に代表されるような権力の濫用を防ぐために、米占領当局は内務省を解体し
警察権力の中央集権を改めて、各都道府県の公安委員会の管轄下にそれをおいた。だが、
まもなく、この改正措置(地方自治体警察制度)は先の見込みのないことが明らかになった。
一九五〇年代には、解体された内務省出身の有力な官僚が、社会統制に関わる政官界の
重要な地位におさまり始めたのである。左翼の脅威が労働運動に表われているという
脅威論が彼らの権力拡大を助けた。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



423: ◆JeacknUANQ
12/08/08 23:17:48.45 EoRUrZaQ

/// 国民の監護者 59 //////////////////

「彼らは政治家として、左翼の脅威から現存する秩序を守ることにかけては旧内務省の
官僚のように振る舞いつづけた。一九五〇年代前半、国の警察組織の再中央集権化ほど
元官僚たちが重要視した問題はない。」この動きは成功した。先頭に立ったのは、元内務官僚で、
後に日教組のもっとも手強い敵となった(3章に登場)灘尾弘吉であった。国家公安委員会、
警察庁、および自治、労働、厚生、文部省のいずれの最高ポストにも"中立公平派"あるいは
"穏健派"は長く留まれず、左翼の野党反対勢力が社会政策の調整に影響を与える機会はなかった。

/////////////////// 945円(税込) ///



424: ◆JeacknUANQ
12/08/11 11:44:26.22 N6B1hpXU

/// 国民の監護者 60 ///////////////

 一九五四年の警察法改正では、知識人や左翼が大騒ぎした。左翼はこの法律を(不適切に)
一九二五年制定の治安維持法に相当するものだとした。かつて、この治安維持法の名の下に、
内務省は"危険思想"を抱く多数の日本人を投獄したのである。一九五四年の法律は、官僚が
望んでいたほどの社会統制はできなかったが、彼らが"やり過ぎ"だと考えた占領軍の改革の多くを
旧に復すには充分だった。同法の前には、すでに公安条例が存在していた。まず福井市で
一九四八年の地震の後、デモを抑制・規制する条例が制定され、続いて神戸、大阪、東京が、
それに倣った。最高裁は、三つの別個の訴訟で、これら条例は憲法違反にはあたらないとの
判断を示し、一九六〇年には、デモは本質的に"暴動"であると宣言した。公共秩序の維持は
最高裁の最優先事項であり、このことは秩序を乱す恐れのありそうな者に対して厳しい裁決を
下すことに反映される。東京高裁が公安条例違反の容疑で告発された被告に無罪判決を出した
上告審で、最高裁は同じケースを二度までもさし戻して再々審理を求めた。

///////// K.V.ウォルフレン著 ///




425: ◆JeacknUANQ
12/08/12 19:49:45.46 0ILYNY02

/// 早川書房 //////////////////////

 カレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel Van Wolferen) (著)、篠原 勝 (翻訳)、
 原著1989年発行、邦訳 早川書房1990年発行
 「日本/権力構造の謎」 The Enigma of Japanese Power  日本 権力構造の謎〈上〉

単行本: ¥ 2,447(税込) ISBN-10: 4152034475 ISBN-13: 978-4152034472
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426: ◆JeacknUANQ
12/08/13 20:30:11.26 TGIsppMT

/// 国民の監護者 61 /////////////////

 岸首相の日米安保条約延長の取扱いに反対して多くの左翼グループが連帯した一九六〇年の
大"安保闘争"で、日本の反体制運動は最高潮に達したことは、当局が警察権力を拡大させる
立派な口実になった。とくに目立つようになったのは機動隊の力の誇示である。国の安全を
守るという使命感において、これらの徹底的に鍛えられた機動隊は、帝国陸軍のエリート部隊の
いちばん近い後継者である。概して警官は特殊な集団意識が強いが、隊長と隊員間の使命感が
機動隊の場合とくに強くなりがちである。
 組織の面で機動隊と同じ類型に入るのは公安警察で、左翼の組合運動家や共産党員を合む、
問題を起こす可能性があると当局がみなす人びとの情報を収集する。公安警察は、憲法が
禁じる盗聴装置を使用しないと主張するが、問題に詳しい人びとは逆だと信じている。

////// 「日本権力構造の謎」<上> ///




427: ◆JeacknUANQ
12/08/14 22:48:59.26 jhhs0XBW

/// 国民の監護者 62 /////////////

このような疑いが現実だと証明されたのは、一九八六年一一月に、日本奄々公社(当時)の
職員が、共産党の緒方靖夫国際部長宅の電話が盗聴用の線につながれているのを発見した
というニュースが出た時であった。盗聴用回線は、ある警官の息子が借りているアパートに
引き込まれ、アパートの契約書には公安部の元警官が保証人として連署していた。それは
前にも、共産党幹部の電話が盗聴されたケースが多々あったが、同党は一度も検察官を満足
させるに充分な証拠を集められなかった。このケースも、警察当局が(検察に)遺憾の意を表し、
検察は、警官が上役の命令に従って盗聴しただけだとして不起訴にした。というわけで、
盗聴は憲法に違反することだが、警察幹部は盗聴しても罰を逃れられるということである。

//////////// 原書1989年刊 ///




428: ◆JeacknUANQ
12/08/16 22:13:16.96 kBh3+y96

/// 国民の監護者 63 ////////

 一九七〇年代から八〇年代にかけては、米国大統領、英国女王、韓国大統領の訪日、さらに
二回の西側先進国首脳会議と、日本の国際的な評判をかけた行事があり、一般市民や報道機関の
反対なしに機動隊と公安警察がその通常の権力を拡大できた。またさらに、日本人の過激派による
海外でのテロ行為や、犯人未逮捕の、過激派が未熟な手製ロケット弾を東京で発射した事件が、
警察力強化を容認する雰囲気をつくる一助になった。機動隊は、戦街上の制約に関しては
お手のもので、犠牲者を出しては世論が自分たちに敵対するので、そのようなことがないよう
特に注意する。

//////////// 早川書房 ///



429: ◆JeacknUANQ
12/08/17 21:12:22.70 oypSUIfI

/// 国民の監護者 64 //////////////

 あいつぐ国賓の訪日や首脳会談を機に、警察は記録を破るほど装備に金をかけ、一般市民の
生活にいっそう立ち入るようになった。一九八四年の韓国の全斗煥大統領来日に際しては、
訪日の一カ月前に東京の高速道路で警察が車を止めて"予行演習"をおこない、外務省を訪れる
外国の外交官は警備員に止められ質問された。このような保安措置も、一九八六年に東京で
先進国首脳会議が開かれた時の警備に比べれば、大したことはなかった。五万余りのビルと
小さなアパートの検査と立入り捜査がおこなわれた。左翼活動家およそ九〇〇人が明確な理由
なしに逮捕された。一方毎日、下水溝が検査され封印された。サミット中には、会場と首脳の
宿泊施設から半径一.五~ニキロ以内の東京の中心部の大部分が特別警備隊によって封鎖され、
通行が許されたのはごく少数の会議関係者の車と特別許可証を持つ人物だけであった。首脳たちの
護衛には三万人の警官が動員され、都内全域で車が止められ検査されたのである。機動隊は、
四〇〇〇万ドル相当の新装備を使用できたが、それを除いて、保安措置にかかった費用は、
推定一七〇〇万ドルにも達した。

/////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



430: ◆JeacknUANQ
12/08/18 19:43:01.47 K5+nRc10

/// 国民の監護者 65 //////////////////

 国民の監護者についてのもっとも重要な一側面は、彼らを制御しているのは彼ら自身だけだ
ということである。したがって、彼らは<システム>を構成するものの中でも異例の位置にある。
理論上は今なお地方公安委員会が統制力を行使する。だが、これら委員会の構成員が右よりの
経歴のある昔風の保守派だという事実はさておいても、警察は極度に中央集権化されている。
二五万人の警官とその仕事を助ける事務官が、わずか四五〇人のキャリア官僚によって統制
されている。<システム>の主流の構成員と同様、警察の最高幹部は、一八八〇年代以来ずっと
東大法学部出が占めている。これらの管理者は必要な時には、自分たちの独立性をはっきりと示す。
たとえば、一九八四年に警察がからむ汚職事件後、自治大臣で国家公安委員長だった田川誠一が、
関西地域の警官に正式に訓話したいと希望したが、警察庁は、関係官僚の慣行にそぐわないとの
言い訳で要望を言下に拒絶したことがある。

/////////////////// 945円(税込) ///



431: ◆JeacknUANQ
12/08/19 20:18:30.87 +t3uR0gL

/// 国民の監護者 66 //////////

 最重要ポストである警察庁長官と警視総監の任命は、退任していく警察庁長官がおこなう。
警視総監の任命には首相の正式承認が必要だが、警察庁は、「公的には、他のすべての
政府官庁や行政の部門から完全に独立している」。
 報道に反映されると言われる世論以外には、警察を抑制するものがない。その世論も、
近年の警察権力の増大を抑制するほどの効力に欠けてきている。警察は、県警本部や主要署に
付随する記者クラブを通して、報道機関と円滑な関係を保っている。記者たちは手厚く扱われ、
報道関係施設の一部費用を警察が負担するところもある。そして通常、報道担当の専門警察
係官が解説し発表したニュースがそのまま流れることになる。

/////// K.V.ウォルフレン著 ///



432: ◆JeacknUANQ
12/08/20 21:25:21.71 l19Jmb1u

/// 国民の監護者 67 ////////////////

 朝日新聞のような新聞は通常、権威主義的な行為に眉をしかめるのだが(たとえば"予行演習"で
車を検問するなど)、警察が職務に熱心すぎるとは非難できない。いわゆる過激派による国民への
脅威を前に警備の過剰を非難しては無責任のそしりをうけかねないからだ。
 戦前の警察には、同じ内務省内部にあった他の局や、強大な陸軍や海軍という対抗勢力があった。
今日では、<システム>の誰とも張り合わなくてよい。自衛隊と婉曲に名づけられた今の日本の
軍隊は、現状では競争相手でない。事実、省と同格の地位にある防衛庁の"文官"の多くが、
警察官僚出身である。

////// 「日本権力構造の謎」<上> ///




433: ◆JeacknUANQ
12/08/22 20:44:33.29 GgbZeEPJ

/// 国民の監護者 68 ////////////////////

 緊急事態への対処力からいえば、警察は、日本の<システム>の中の最強部門である。もし
野心を抱く一派が警察を支配すれば、彼らは、クーデターさえ成功させられるだけの力を
もっている。ある面では彼らの有能さは頼りになるが、また別の綿では、民主的な原理と
法律の概念に対するあいまいな態度が心配になる。平時において警察は安全な<システム>を
保証するが、それは必ずしも法にのっとった<システム>ではないのである。

・・・・

////////////////// 原書1989年刊 ///



434: ◆JeacknUANQ
12/08/23 22:10:41.30 Gr9O6h5T

/// 早川書房 //////////////////////

 カレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel Van Wolferen) (著)、篠原 勝 (翻訳)、
 原著1989年発行、邦訳 早川書房1990年発行
 「日本/権力構造の謎」 The Enigma of Japanese Power  日本 権力構造の謎〈上〉

ハヤカワ文庫NF、945円(税込) ISBN-10: 4150501777  ISBN-13: 978-4150501778
 URLリンク(bookweb.kinokuniya.co.jp)
 URLリンク(www.7andy.jp)
 URLリンク(www.amazon.co.jp)
 URLリンク(www.bk1.jp)
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 URLリンク(www.junkudo.co.jp)
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////////////////// 絶賛発売中!///



435: ◆JeacknUANQ
12/08/31 22:46:50.33 MxPI/mqh

/// 法を支配下におく 1 ///////////

 カレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel Van Wolferen)著
 原著1989年、邦訳 早川書房/篠原 勝 (翻訳)1990年発行
 「日本/権力構造の謎」 The Enigma of Japanese Powerより

・・・・
 8章 法を支配下におく

 <システム>は"ビッグ・ブラザー"ではないだろう。だが、日本人は、社会的な服従に甘んずる
ことのみかえりに、<システム>からの愛を受け入れるように要請される。これはつまり、日本人は
政治制度について―少なくとも持続的で組織的には―疑問を抱いてはいけないということを
意味する。彼らは自分たちのことを権利をもった市民と考えるのではなく、管理者が寛大な心を
持っていると信じるよう求められているのである。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///



436: ◆JeacknUANQ
12/09/01 19:27:17.36 eRjA9Oh3

/// 法を支配下におく 2 /////////////

分かりやすくいえば、西欧の権力は原理という幻想の仮面をかぶっているが、日本の権力は恩恵
という幻想の仮面をかぶっている。西欧の伝統においては、社会・政治的な状況を知的に審査解明
することが許されているし、場合によっては、奨励されることもある。ところが日本の伝統に
おいては、心情的な信頼を要請される。

/////////////// 原書1989年刊 ///



437: ◆JeacknUANQ
12/09/02 20:44:21.46 9KOx4hVm

/// 法を支配下におく 3 /////////////

 日本人は、社会的に上位にある者との不平等な結びつかをあたりまえのこととして受け入れる
よう条件づけられており、そのような結びつきを心理的に必要とするものも多い。このことは、
儒教から派生した理論によって全面的に正当化される。しかし中国では、哲学の伝統によって、
この不平等さを理論的に正当化する努力が払われた。中国の儒教は、(歴史的経験から引き出された
ものとしての)階級的社会の必要性と、このように不平等な社会秩序につきものの不公平さを
緩和する必要性との間の、基本的な対立を解決しようと試みた。インドでも、権力の行使と権カヘの
服従との関係についての知的課題が呈示され、宗教による権力の是認によってそれが解決された。
日本では、この不平等な関係に関しては宗教にも依らず、その他の合理的な政治権力理論に訴える
こともなく、ただ固有の恩恵があるという一方的主張によって認めさせてきた。

/////////////////// 早川書房 ///



438: ◆JeacknUANQ
12/09/03 23:12:16.21 r9024kJH

/// 法を支配下におく 4 ///////////

 きわだって対照的なのは、不平等と、服従の必要性という現実に対処する際の、日本と西欧との
知的伝統の達いである。この決定的な違いをよりよく理解するには、日本の社会・政治的な世界の
知的支柱を解明する必要がある。それにはまず、基本的な宗教思想と法思想から検討しはじめるのが
いちばんよい。宗教と法律は、どちらも究極の信念に関わるものだから、発達の初期には、ほぼ
例外なく互いに密接に結びついていた。宗教と法律について、人間文明という全体像の中で見た場合、
日本と西欧諸国とは両極端というほど達う。したがって、この両者の伝統を対比させて考察するのが、
有益だろう。これから見ていくように、西欧では、権力者はみずからの支配がおよばない法典に
次第に縛られるようになり、日本では、すくなくとも江戸時代の終わりまでは、権力者は真理と徳の
究極の具現者として描かれてきた。

/////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



439: ◆JeacknUANQ
12/09/05 20:53:31.23 he73M4u4

/// 法を支配下におく 5 /////////////

   権力者の上と下の法

 ヨーロッパでは、個人と政治的支配者との間には緊張関係が生じて当然とする考え方は、
すくなくとも、ソクラテスの時代まで遡ることができる。ソクラテスは、社会のそれよりも
個々の人間の理性のほうが重要だと強く主張したため、アテネの若者を"堕落させる"として
毒薬を飲まされた。
 ソクラテスのもっとも高名な弟子だったプラトンは、権力を求める人間の衝動が諸悪の
根源であることを知っていた。彼の考えでは、都市国家が果たすべきもっとも崇高な務めは、
むき出しのままの権力に正義のだがをはめることだった。この考え方は、ローマ帝国崩壊後も
生きつづけたが、当時のヨーロッパの政治状況は、中世日本とあまり変わらないほど、混沌と
邪悪にあふれた内乱が相ついでいる状態だった。

//////////// 945円(税込) ///




440: ◆JeacknUANQ
12/09/06 22:16:15.25 +Pr1xaCx

/// 法を支配下におく 6 /////////////

 カール大帝(七六八~八一四)以前の時代は、野蛮な成り上がり者や強奪者が人命をあまり
尊重せず、支配をほしいままにしていた。そのころでも、各地の大諸侯のあくなき権力欲と
気まぐれを越えたところに、漠然とではあるが、少なくともひとつの現実があるという認識が
生きつづけていた。中世初期のヨーロッパの僧院が、政治的枠組みに対立するものがありうる
とする地中海の哲学思想を死に絶えないように守り、超越的な信念の存在をかすかに思い出させる
役目を果たしたのである。ローマ帝国―その後のどの帝国よりも長くヨーロッパの秩序維持を
果たした―の法律は、その残された記録のひとつだった。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///



441: ◆JeacknUANQ
12/09/07 21:25:08.51 50hqkDrM

/// 法を支配下におく 7 /////////////

 古代日本の場合は、世界の他の地域でもよく見られた基本的なパターンだが、大和の族長たちが、
祖霊および自然霊という神道の神霊の神託をうけたとして、権力を権利に変え、同様に服従を
義務に変じさせた。"王国"と呼べるほどに領土を拡大支配した四世紀には、彼らは血族的および
擬制親族的つながりの網を通して権力を拡大し、王家の祖霊を祀る神社を建立し、彼統治者
みんなが崇めるようにした。こうして、天皇は「天下を統一するよう聖なる神託を得た者」
という称号を持つこととなった。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///



442: ◆JeacknUANQ
12/09/08 16:53:57.78 wYF54JTj

/// 法を支配下におく 8 /////////////

重要な点は、悪事その他神に隠しておきたいことは儀式による清めが必要とされたことだ。
このようにして、日本の法律も他の数多くの文化と同様土着宗教の儀式と全面的にからみ合った
一体をなしていたのである。五世紀以降は、神道の伝統に初期儒教の要素が付加されていった。
厳格な階層・階級的社会秩序を肯定する儒教の教理が、土着の慣習と混ぜ合わされて政治制度を
正当化するものとして用いられたのである。朝鮮を経て伝来した儒教の世俗的な道徳規範に
日本が慣れ親しむにつれて、独自の簡単な刑法も作り出されていく。

///////////// 原書1989年刊 ///



443: ◆JeacknUANQ
12/09/09 11:01:00.45 L2XFXc0D

/// 法を支配下におく 9 /////////////

 六世紀なかばに朝鮮から仏教が伝来すると、日本の支配貴族は民衆をさらに服従させるための
手段便法としてその教義にとびついた。日本最初の"立法者"聖徳太子は、その"憲法"の中で
この新しい宗教に高い地位を与えた。中国を手本にして作られたこの文書は、今なお日本の
小学校では歴史上の重要な出来事として強調されており、統治者と披統治者間の好ましい関係に
ついての理想的文句を集めて構成されている。しかし、この"憲法"では、統治者の行為に法的な
規制が設けられていない。儒教も仏教も、日本の権力者が権力を行使するにあたって、なんら
抑制する規定をもたらしはしなかったのである。

/////////////////// 早川書房 ///



444:名無しさんの主張
12/09/09 15:49:04.11
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445: ◆JeacknUANQ
12/09/10 21:25:33.73 U37pjlS9

/// 法を支配下におく 10 /////////////

 西欧古代の哲学訓話は、道徳や行動の正当性を述べるに際し、その論拠を現実の社会的状況を
超越する至高の原理に依っていた。中世の僧侶やルネッサンスの思想家が採用した抽象概念は、
俗世界の利害を超越するものであるがゆえに、真理であると考えられたのであった。このように
いつの時代にも、世俗の権力には限界があるという概念が、確固として存在していたのである。
日本の儒学者や仏教の僧侶は、これとは対照的に、現実を抽象化する場合でさえ、時の世俗統治者の
権威に全面的に依存していた。武士も平民も、当時の政治的要請に合致するかぎりにおいてのみ、
儒教や仏教の教えに従うよう命じられた。西欧の王侯貴族とは違い、日本の権力者は自分の行為に
対し、道徳的な責任を果たす義務はなかった。彼らは、みずからつくりあげた規範以外のいかなる
規範によっても、とやかく言われることはなかったのである。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



446: ◆JeacknUANQ
12/09/11 21:07:15.82 B2xd1yM6

/// 法を支配下におく 11 /////////////

 仏教の普及が公に推進された結果、個人がその教義の命ずるままに従うと、外からの指導に
ではなく、内心の光明によって導かれる悟りの道に頼りたがる危険性が生じた。しかしこの
個人主義的な傾向も、同時に諦めの精神を説くことによって薄められてしまう。仏教研究家・
森岡清美が言うように、日本の仏教はひとつの独立した倫理体系を発展させず、「人びとを社会の
圧力や伝統から解き放つという仏教のもっとも重要な力はほとんど完全に失われてしまった」。
 聖徳太子にしても、彼の後継者にしても、神道、儒教、仏教の併存には教義が根本的に相容れない
ところがあっても、それらの教義が自分たちの政治目的に役立つかぎり、いっこうに気にしなかった。
この点は、仏教が伝来してから約一五〇年後に催された宗教的な祭儀にもよく表わされている。

//////////////// 945円(税込) ///



447: ◆JeacknUANQ
12/09/12 21:57:15.12 HASyLu8e

/// 法を支配下におく 12 ///////////

七四九年、宮廷内の新神殿に宇佐八幡宮を遷宮したのを祝って、五〇〇〇人の仏教僧が読経した
という。神仏習合は、明らかに、これら二つの宗教によって世俗支配の強化をめざす国家の政策
だったのだ。この後に続く数世紀の大部分を通じて、神道と仏教とは仲良く並存しつづけた。
一部の仏教寺院の近くに神が祀られて神道による寺の守護神となり、ギリシャの神々がローマ神話に
突然、名を変えて再登場したかのように、神道の神々がいとも容易に菩薩の姿をして現われた。
 被統治者の活動を制御・抑制するための法律とはっきり区別した形で、統治者の権力を抑制する
ための法律を発達させるのに不可欠な条件は、反対意見の存在を合法的で正当なこととして認める
概念である。だが、統治者に対する抵抗をよしとする概念は、日本の伝統にはたえてなかった。

//////// K.V.ウォルフレン著 ///



448: ◆JeacknUANQ
12/09/13 22:27:32.32 2owZZs8T

/// 法を支配下におく 13 /////////////

 上位者の下位者に対する取扱い方は、日本最初の法典である二つの律令制度によって、ある程度は
整えられた。つまり七〇一年制定の大宝律令と、その一七年後に改訂された養老律令がそれである。
どちらの律令も、唐の法律文書を模して作られた。律とは罪人の刑罰を定めたもので、罰(笞刑、
杖刑、徒刑=強制労働、流刑=追放、死刑の五等級)をやや軽くした点以外は、法文は実質的に
唐のものと同じだった。令は行政法の体系で、日本に合うよう修正されたり、新しい規定条項が
加えられて拡充された。慣例が令に違反する場合にはいつでも、"慣行法"という名目のもとに慣例が
維持された。部分的にだけ外国の制度を取り入れ、不都合な部分は婉曲に覆い隠してしまうという、
長く続いてきた日本の習慣の、初期の一例である。現代日本でも、この種の例は数多くあるが、
そのひとつが独占禁止法である。独禁法は一九四五年以降の"自由市場"制の一環として制定された
ものだが、実はあらゆる形態のカルテルとまるで双子の兄弟のように仲良く調和を保っている。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///




449: ◆JeacknUANQ
12/09/25 22:14:00.89 kj7t9yfp

/// 法を支配下におく 14 /////////////

 日本の政治的権力が完全に武士階級―後に鎌倉時代(一一八五~一三三三年)として知られる
時代までには、武士か確固とした権力を掌握していた―の手に渡った頃には、日本には少なくとも
三つの法体系が存在していた。一つは皇室に適用されるもの、二つめは日太め初期封建制度を構成
していた土地所有者荘園主に適用されるもの、そして三つめは、正式の武家政権である幕府に
適用するものだった。ただし、ここでいう法とは、時の統治者の気の向くままに発令した布告を
すべて含んでいた。このような布告は概して自由裁量で発令されたものであり、総合的な法の
正義の概念とはまったく関係がなかった。一五世紀末に、日本の後期封建制の立役者・大名が
台頭する頃には、どの行為が合法でどの行為が違法かは場所によってさまざまに異なり、正式な
法典がまるで存在しない領地も多かった。

/////////////// 原書1989年刊 ///



450: ◆JeacknUANQ
12/09/26 21:29:15.62 jpmd3CAy

/// 法を支配下におく 15 /////////////

    ヨーロッパの政教分離

 権力の座にある者が、気を配るべき上位者とか共存勢力があることを認識していれば、自分たちも
法に従わなければならないという考えを受け入れやすい。この考えは、擬人化された神の形で
表わされることもあるし、司法という抽象的な概念、あるいは国家・政府という形をとることも
あるだろう。
 ヨーロッパの法思想の初期段階で主要な要素として考えられたのは、宗教と国家の分離であった。
五世紀末に、ローマ法王ゲラシウス一世が、旧来のさまざまな考え方を再定義し、人間の営みは
二つの秩序体系に分けられるとした。宗教界の権威によって統制される秩序と、世俗の統治者による
秩序である。ヨーロッパには、ローマ帝国のかすかな記憶の一部として、政治は封建的な権威の
自由裁量を超越する正義を維持しうるという考えが生き残っていた。その後は、修道僧に大学の
学者が加わって究極的な意味で有効で、いつ、いかなる状況の下でも、すべての人間に適用できる
理論や道徳規範を体系化する知的伝統を支持・推進した。このような理論や道徳規範は、法の概念と
複雑で不可分にからみ合っていた。

/////////////////// 早川書房 ///



451: ◆JeacknUANQ
12/09/27 21:19:06.78 69oP5tV8

/// 法を支配下におく 16 /////////////

 日本で(鎌倉)幕府政治体制が成立する約三〇年前、ヨーロッパでは一一五九年に、ローマ時代
以降最初の重要な政治理論に関する研究書が、王も法(=正義)に、そして究極的には神に従わ
なければならないと明確に述べている。ジョン・オブ・ソールズベリーは著書『ポリクラチクス
(政治家の書)』の中で、「すべからく下位者は上位者に堅く結ばれるべし、四肢五体すべて
順に従ふべし。ただし、何時といへど、信仰を侵すべからざること必須なり」と論じた。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///




452: ◆JeacknUANQ
12/09/28 21:19:10.79 JSX2gGZP

/// 法を支配下におく 17 /////////////

 ソールズベリーは、法(=正義)をないがしろにする君主の態度があまりにもひどすぎる場合には、
殺害しても名分が立つとさえ主張した。ただ、これは理論上のことだった。実際には、殺害された
多くのヨーロッパの君主たちは、主として権力を奪おうとする敵の強欲の犠牲になったのである。
日本でも、殺害されかけた天皇が何人かいた。一三世紀に高僧・慈円が著した史論書『愚管抄』にも、
天皇殺害と暗殺未遂の例がいくつか載っている。通常、皇太子が両親の住む御所外で育てられたのは、
廷内で陰謀を企む者に命を奪われる危険性があったからである。しかし、日本の歴史を通して神々の
子孫を殺害することを理論的に正当化するなどということは、まったく想像もできないことだった。

//////////////// 945円(税込) ///



453: ◆JeacknUANQ
12/09/29 10:21:51.87 ZOtjmpDh

/// 法を支配下におく 18 /////////////

 一三世紀のヨーロッパでは、中世の偉大な政治理論家の一人である聖トマス・アクィナスが、
国政は市民のためにあると明確に追べた。彼の著書は、「キリストの法」に従わなければならないと
国王たちに認識させる強力な警告の書のひとつになった。中世後期のヨーロッパの思想は、
法(=正義)を守ることが国政の第一の、しかももっとも重要な仕事だという考えを発展させた。
「法国家というプラトン流の考えが現実にも作用するとわかった。すなわち、それは人びとの思想に
影響を与えた偉大なエネルギーであるばかりか、人間に行動を起こさせる力強い衝動になった」。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///




454: ◆JeacknUANQ
12/09/30 11:41:14.38 rthdF2pL

/// 法を支配下におく 19 /////////////

 世俗の統治者は宗門による後楯を欲したため、キリスト教の権威が支配者に正統性を与える
強い力になった。カール大帝も、神によって王位をさずかったと民衆に信じさせたかった。
その後、一一世紀から一四世紀にかけては、ローマの貴族も神聖ローマ帝国の皇帝も、他の
ヨーロッパの君主と同様、おそらく法王をたいして崇敬していなかっただろうし、政治目的を
遂行するため以外に法王の祝福を利用することはなかったが、彼らは教会の支持を必要として
いたので、異端の絡印を押されないよう極力気をつけなければならなかった。この間の政治的
文献を見ると、教会権力と世俗国家権力との相互関係について、あるいは両者間の緊張関係
について書いたものが多い。

///// 「日本権力構造の謎」<上> ///



455: ◆JeacknUANQ
12/10/01 22:02:46.31 MRy4Tayq

/// 法を支配下におく 20 /////////////

 たしかに知的構築物である概念が、本来、それが反映しているはずの現実からかけ離れている
場合は多い。そして、歴史の見方には現実に対する思想の影響力を過小評価し、原理を幻想と
みなし、支配階層の既得の利権によって被統治者は冷やかに操られていたにすぎないとする
ものもある。しかし、このアプローチでは、日本の歴史との比較において注意を払わなければ
ならないヨーロッパの歴史の側面は、なにも見えてこない。西欧の理論はしばしば政治的現実の
上に強烈に反映されてきた。ハインリッヒ四世は、恭順の意を表すため、カノッサの教皇庁外の
雪道にひざまずいて破門の赦免を請うたが、この屈辱の見せしめはそれ以来、今日まで忘れられる
ことはなかったのである。フリードリヒニ世は、教皇権とも他国との戦争のように戦ったのだろうが、
そういう彼にしても法王の権威に公然と疑問を投げかけることはできなかったのである。

/////////////// 原書1989年刊 ///




456: ◆JeacknUANQ
12/10/02 23:37:08.43 5HOppzDH

/// 法を支配下におく 21 /////////////

   普遍的な法の前での平等

 北ヨーロッパのゲルマン語族が採用していた一種の直接民主主義による民衆の政治参加は、
古い時代から政治的平等の概念を政治に持ち込んでいた例だが、それが法による統治権に関する
体系的な中世の理論と混じり合うこととなった。ローマ後期の哲学者キケロの著作を通して
中世ヨーロッパで知られるようになったストア学派の哲学者は、すべての人間は基本的に平等
であると論じている。彼らの影響を受けた中世の学者は、法律をでプラトンが示唆したものより
さらに普遍的な存在と見なしはじめた。

/////////////////// 早川書房 ///



457: ◆JeacknUANQ
12/10/04 22:00:33.64 Vv1Mnm15

/// 法を支配下におく 22 /////////////

 ヨーロッパの"絶対"君主たちは、国家権力の構造をさらに進化・洗練させたにもかかわらず、
この伝統をつき崩すことはできなかった。彼らが主張した王権神授説に依る神聖な統治権はまた、
王は神に対して責任を負うという、束縛でしかなかった。宗教的・哲学的な伝統の重さの前には、
事実上、どのような政治権力も絶対的なものとは見なされなくなったのである。権力者たちは、
「法は神の摂理そのものであり、至高の立法者(神)の意思を表わすものであるから、不可避
かつ不可侵である」原理の権威の前に屈したのだった。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///




458: ◆JeacknUANQ
12/10/06 00:20:03.71 Vzy/vCeK

/// 法を支配下におく 23 /////////////

 権力は倫理的な目的に従うべきだというこの考えが、ヨーロッパの歴史においては、後に、
主権在民という概念に発展する。ルネッサンス期および宗教改革期までには政治的・宗教的な
衝突によって大学が分裂し、もはや人は神が支配する宇宙の中心に立たなくなった。普遍的な
法と、普遍的な善の倫理的概念を支持するために、もはやキリスト教の教義を必要としなくなった
ヨーロッパの思想家は、ストア哲学を解釈し直すことによってみずからの立場を強めた。
オランダの法学者で国際法の創始者であるユーゴ・グロティウスは、全能なる神の意思に
よっても、道徳の原理を変えることはできないし、自然法によって保証される基本的な権利を
廃することはできない、と主張した。

//////////////// 945円(税込) ///



459: ◆JeacknUANQ
12/10/06 19:44:46.73 Vzy/vCeK

/// 法を支配下におく 24 /////////////

 法に対する現代の世界の考え方は、根源において、この論議にもとづいている。これが
社会契約説の概念を通して、国家に法的な基盤を与えたのである。ここから直接的に、自由主義の
合理的な論拠として"生取権"が存在すると断定したイマニュエル・カント、ジョン・ロック、
モンテスキュー、そしてスピノーザの倫理哲学が導き出され、それを経てさらに、現代の国際法や
人権の概念、そして一般的な"正義"の概念へと発展しているのだ。
 日本の歴史をたどって見て判るのは、これと対照的に、統治者を倫理の体現者として描き出す
思想が強化されつづけたということだけである。一七世紀後半から広まりはじめた新儒教派の
教義の本質は、武家独裁制には倫理的な完全さが本来的に備わっていると主張するための、手の
こんだ学問的弁明にすぎなかった。このことについては、11章でさらに詳しく見ることにする。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///



460: ◆JeacknUANQ
12/10/10 21:24:16.16 DItdgHhJ

/// 法を支配下におく 25 /////////////

    明治の借りものの法制度

 一九世紀なかば、開港を強いられた頃の日本の法律は、基本的に、政府専断の社会的な行動や
身分関係についての厳格で細かい諸規定を実施するための手段であった。そのため、有罪判決に
必須とされる自白を引き出すために広く実行された拷問も含め、日本の法慣行が西洋人と衝突する
最初の主な原因になった。一八五八年の条約以降に、欧米諸国が、自国民に対して治外法権を
適用するよう主張したのも、このためである。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///




461:名無しさんの主張
12/10/11 13:03:01.03 sHihcq4l
ネット支持率調査結果

830件(76.6%) 国民の生活   (小沢一郎)

   V
   V
   V

159件(14.7%) 自民党      (安倍晋三)
13件(1.2%)  大阪維新の会  (橋下徹)
11件(1.0%)  減税日本・平安 (河村たかし)
5件(0.5%)   新党大地・真民主(鈴木宗男)
3件(0.3%)   民主党       (野田佳彦)

スレリンク(asia板:5番)

462: ◆JeacknUANQ
12/10/11 22:26:56.38 5NgAXAYC

/// 法を支配下におく 26 /////////////

 明治の寡頭政権が、西洋に追いつくための過重な近代化計画の中に、憲法と法典の整備を
入れた主な誘因は、条約港で外国人が日本の司法権に従うのを拒否したためだった。西洋人が
あからさまに日本の法慣行を侮蔑したことで、明治の指導層の劣等感とひけめは強められた。
そこで、明治の官僚は、近代的な法律を導入しつつあると西洋の列強に納得させることに
躍起になった。外務大臣・青木周蔵は、一八九〇年、治外法権廃止のための新条約を提案するに
当たって、西欧諸国に対し、日本政府はそれまで六年近くにわたって信頼できる裁判官の養成に
努めてぎたと述べ、さらに六年後に新条約が効力を発する頃には、外国人は不適格の裁判官に
よって裁かれるという心配はなくなるであろうと宣言した。

/////////////// 原書1989年刊 ///




463: ◆JeacknUANQ
12/10/13 19:01:11.70 CoVqS2QK

/// 法を支配下におく 27 /////////////

 維新の指導者たちは、一一五〇年前に制定された年代ものの養老律令の考えをもとに、なんとか
急場しのぎの法律をでっちあげていた。養老律令は徳川幕府の時代になっても、正式には時の法律に
切りかえられぬままに放置されていたのだった。そこで、日本の法的慣行を近代化するため、まず
フランスの民法典全体とナポレオンー世時代の法規をすべて翻訳する必要があるということになった。
このとてつもない大仕事を、明治政権成立の一年後に任されたのは、精魂を打ち込んで西洋思想を
研究していた二三歳の役人・箕作麟祥だった。高名な法学者・野印良之は、箕作を、まずレンガ作り
から始めなければならなかった建築家になぞらえている。それというのも、彼は、辞書にも
法律注釈書や外国の法律家にも相談できぬまま、日本の思想とはまったく性質を異にする概念を
表現するための用語を、独自に作り出さなければならなかったからである。この献身的な役人は
五年のうちに仕事を完成した。

/////////////////// 早川書房 ///



464: ◆JeacknUANQ
12/10/14 23:27:41.44 sNxLjwBe

/// 法を支配下におく 28 /////////////

 そしてフランス人の政府顧問、エミール・ボワソナード・ドゥ・フォンタラビーが日本最初の
近代刑法の草案を作り、一八八〇年に発布された。ボワソナード個人は拷問に強く反対した
ことからも、一刻もはやく仕事を完成したいと思っていたことは明らかである。同じ敷地内から
草案作成の仕事部屋まで悲鳴が聞こえてきたのは、相変わらず拷問がおこなわれている明白な
証拠だった。その後に、フランス法を採用すべきだと考える者と、イギリス法の方がよりふさわしい
と考える者との間で争いが生じた。しかし結局は、政権の足場固めを終えた政府が採用することに
決めたのは、フランス法でもイギリス法でもなく、プロシア法典とドイツの国家の原理だった。
ひとつには、ドイツ人の法律顧問だったヘルマン・レスラーの影響力がボワソナードの影響力を
上回っていたこともある。そして、一八九八年に日本初の完全な民法が発布される頃には、より
自由主義的なイギリス法やフランス法への当初の興味が、ドイツ法の影響の前に敗退したことは
明白となった。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



465: ◆JeacknUANQ
12/10/17 21:43:54.16 3kK/CsOn

/// 早川書房 //////////////////////

 カレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel Van Wolferen) (著)、篠原 勝 (翻訳)、
 原著1989年発行、邦訳 早川書房1990年発行
 「日本/権力構造の謎」 The Enigma of Japanese Power  日本 権力構造の謎〈上〉

単行本: ¥ 2,447(税込) ISBN-10: 4152034475 ISBN-13: 978-4152034472
 URLリンク(www.amazon.co.jp)
 URLリンク(bookweb.kinokuniya.co.jp)
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////////////////// 絶賛発売中!///



466: ◆JeacknUANQ
12/10/18 22:59:21.06 oOr+Q08u

/// 法を支配下におく 29 /////////////

    法の庇護を受けない国民

 以上ですでに明らかなように、日本の歴史のどこを見ても、日本の一般市民に法律が自分たちを
護るためにあるという考え方はなかった。伝統的な日本の法律は、合理的で哲学的な正義の原理を
積み上げて法体系を作り上げたのではなく、民衆を盲従させるための命令を一覧表にしたとしか
いえないものであった。このような法律が実際にどのように適用されたかは、時代によって違いが
ある。平安時代にはかなり寛大だったようだ。だが室町時代(一三三三~一五六八年)になると、
非常に残酷な処置が当たり前となり、日本が開国してからもそれは続いた。徳川支配下の二世紀半の
間は、法律が社会的地位に応じて適用された。つまり、武士は町人や農民がが無礼あるいは、身分を
わきまえないと思えば、その場で一刀のもとに切り捨ててもよかったのである。一説によれば、
新しい刀の試し切りをしても差し支えなかったという。

//////////////// 945円(税込) ///



467: ◆JeacknUANQ
12/10/19 22:05:33.06 APNiP+1K

/// 法を支配下におく 30 /////////////

 明治の改革によって外国から移入した成文法典は、その精神の大部分が欠落してはいたものの、
徳川時代に比べれば大幅な救済と多くの自由をもたらした。一八八九年の明治憲法発布は、
打ち上げ花火と、祝賀パーティ、新聞の大賛辞に迎えられた。しかしこの"天皇の賜物"も、
西洋に範を求めたその他の法律も、専断的な権力から日本人を護ってくれるものという意識を
与えなかった。明治憲法制定に先立ち、一八八八年には、「臣民」の"権利"と"義務"について
意見が戦わされ、結局、日本人にもやっと権利と自由が与えられることになった。しかし、
それは決して社会の「安寧秩序を妨げず、臣民たるの義務に背かざる限りにおいて、(彼らの
権利と自由に制限を加える)法律の範囲内において」という条件のもとにおいてのみであった。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///




468:名無しさんの主張
12/10/20 12:51:57.26 X7UWMUZq
もうちょっと簡単に解りやすく説明したのはないかね。


469: ◆JeacknUANQ
12/10/21 10:06:27.39 icPIRHzs

/// 法を支配下におく 31 /////////////

 日本の権力者は、みずからが西洋から法律を導入した必然的結果として発生した問題に直面
することになった。しかし、いちはやく大衆や知識人が"悪い思想"を抱かないよう措置を講じた。
山県有朋は、法律にあまり頼りすぎるといろいろ問題が生じるとして、法に頼ることを痛烈に
非難した。その一方で、山県自身は法律を"政治に対する防御物"として自在に活用することに
なんのためらいも感じなかった。ここで彼が言う"政治"とは、民主的な議会制の、反対党のある
政治という意味だった。法律は急速に管理者の有力な道具へと変質させられていったのである。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///



470:名無しさんの主張
12/10/21 15:46:15.86 hfkjOKRp
山県有朋ってwwwいつの時代の話やねんwwwww

471: ◆JeacknUANQ
12/10/22 21:53:08.27 vdf7xy69

/// 法を支配下におく 32 /////////////

 このような状況全般を総括して、マルクス主義理論を日本に紹介した経済学者、河上肇は、
二〇世紀初頭に次のように書いた―

   個人を以て自存の価値あり自己目的性を有すと看做す能はず、独り自存の価値を有し
  自己目的性を有する者は只だ国家あるのみと為す。故に日本人には天賦人権の思想なくして
  天賦国権の思想あり。個人の権利は只だ国家の承認を経て始めて存在す。国家は只だ其の
  自存の目的を達するの手段として、個人に一定の権利を認む。個人の有する権利は、本来
  自己目的の為めに非ずして、只だ国家の道具として役立つが為めのもの也。故に西洋に
  在りては人権が天賦にして……人命を重んじ人格を尊ぶことが日本人の想像の外に在るが如く、
  日本に在っては国権を重んじ国家を尊ぶことが又た西洋人の想像の外に在り。

/////////////// 原書1989年刊 ///



472: ◆JeacknUANQ
12/10/23 22:42:13.62 bpjN7Q5S

/// 法を支配下におく 33 /////////////

 だが、一部の日本人は頑強に西洋の法概念を収り入れようとした。一九三七年、日中戦争
勃発の直後、矢内原忠雄はこう主張した―

   正義は國家に基底を與へつつ國家を越えて存在する客観精神である。換言すれば正義は、
  國家の製造したる原理ではなく、反対にに正義が国家をして存在せしむる根本原理である。
  國家が正義を指定するのではなく、正義が国家を指導すべきである。

 この文の掲載された『中央公論』はたちまちにして発禁になった。

/////////////////// 早川書房 ///




473: ◆JeacknUANQ
12/10/24 21:49:32.77 ZQvtuYTN

/// 法を支配下におく 35 /////////////

 今世紀前半の四五年間には、ほかにもいろいろなこと―忌わしい一九二五年の治安維持法と
一九二八年の改正治安維持法、"思想警察"、裁判官、警察、検察官の不公正さなど―があったが、
これらの経験が日本人に政治的権利という概念を身近に感じさせるにはいたらなかった。
このような考えに人びとがなじむようになるのは一九四五年の敗戦後、日本を"民主化"する
計画が実施されてからのことだった。当時なされたもっとも重要な努力は、一般国民に自分たちの
法的権利を認識させることであった。だが、一般に考えられているように、実際にこの時期が
日本の法の歴史上の大分水嶺だったのだろうか?

//////////////// 945円(税込) ///



474:名無しさんの主張
12/10/25 19:42:30.62 efaiDsc1
ウォルフレンよ、お前のいう事はだいたい当たっている。

その批判精神と分析力をもって支那朝鮮へ行け。

お前の謎を更に深めてもらえるぞ。




475: ◆JeacknUANQ
12/10/27 10:21:35.34 fikd++1D

/// 法を支配下におく 35 /////////////

    かけ声だけの「分水嶺」

 アメリカ占領軍当局の介入によって、多くの変化がもたらされたことは疑う余地はない。
今日、自分の考えを述べるのに躊躇する日本人はほとんどいない。それに政府には最低限、
国民を親身にとり扱う義務があるという考え方も、かなり一般的になった。もはや恩恵は、
天皇が随意に国民に与えるものではなくなったのである。
 それにもかかわらず、総体的な法の見方は、一九四五年以前とあまり変わっていない。
概して日本人は、法律というものは政府がその意思に従うよう国民に強いるための強制手段だと
いまだに考えている。日本の役人は、多くの法律の中から随意に都合のよいものだけを選んで、
自分たちの目的に利用する。

//////////////// 945円(税込) ///




476:名無しさんの主張
12/10/28 23:03:14.59
★前時代的な刑事司法制度を根本から改めよ  1

 videonews.com ニュース・コメンタリー (2012年10月27日) 誤認逮捕の教訓:

 遠隔操作ウィルスによる犯行予告書き込み事件で4人が誤認逮捕された問題は、かねてから
指摘されてきた日本の刑事司法の問題点を、あますところなく露わにしている。これが今回の
本質であることに疑いの余地はない。しかし警察を始めマスメディアは、今回の誤認逮捕の原因が、
警察のサイバー犯罪の捜査能力にあるかのような言説を垂れ流し、問題の本質を歪めている。
そのために、議論はサイバー捜査強化のための人員や予算の拡大と、まさに焼け太りを許しかねない
方向に向かっている。
 確かに警察のサイバー犯罪対応能力は低かった。いや、実際にはある程度の捜査能力あるが、
今回の事件は無差別殺人の予告などが含まれていたためにいわゆる殺人事件や凶悪事件を担当する
「捜査一課」が出てきたことで、警察内のサイバー犯罪の担当部署が捜査の主流から排除された
ことが、誤認逮捕に至った一因との指摘もある。
 しかし、それらはいずれも副次的な問題だ。今回の事件では、理由が何であろうと、どのような
背景があろうと、実際には無実の人間が逮捕され、20日以上も勾留された上に、うち2人は犯行を
自白し、動機まで詳細に供述している。
 今回はたまたま4人目の被疑者のPCから遠隔操作ウィルスが発見されために、他の被疑者も
すべて誤認逮捕だったことが明らかになったが、それも警察の捜査の賜物というよりも、かなり
偶然の巡り合わせの結果だった。それがなければ誤認逮捕された人たちがそのまま裁判に掛けられ、
有罪になっていた可能性も十分にあるという、非常に恐ろしい事件だった。  やってもいない
犯罪を自白させ、動機まで語らせてしまう刑事捜査、ひいてはそれを許してしまう刑事司法とは
何なのか。今回はたまたま事件がサイバー犯罪だったために、警察のでっち上げとを否定する物証が
被疑者のPCから出てきた。しかし、これが他の種類の犯罪だったらどうなっていたか。警察は
東電OL殺人事件でもゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を誤認逮捕し、結果的に無実の人間を15年間も
服役させたてしまったことが明らかになったばかりだった。その反省はどこへいったのか。

477:名無しさんの主張
12/10/28 23:08:48.23
★前時代的な刑事司法制度を根本から改めよ  2

 これは捜査関係者一人ひとりが反省してどうこうなる次元の問題ではない。現在の刑事司法制度
そのものが、いやがおうにも誤認逮捕や冤罪を産む構造になっていることが問題なのだ。
 裁判官による安易な逮捕令状や勾留令状の交付、その結果認められる22日間の勾留と、その間、
警察署内の代用監獄の劣悪な環境の下に留め置かれ、記録(可視化)されていない密室の取調室で
弁護士の立ち会いも許されず、毎日続けられる捜査官による苛酷な取り調べとその中で繰り返される
締め上げや誘導尋問など違法捜査の数々、被疑者段階でも一方的な捜査情報のリークを事実関係の
確認もなく報道してしまうマスメディア、長期勾留下で極度に精神的に追い詰められた上での
自白でも、自白調書に署名があればほとんど無条件で有罪判決を出してしまう裁判所等々。
問題点をあげはじめれば枚挙に暇がない、このような欠陥だらけの刑事司法制度の下では、
誤認逮捕や冤罪が起きない方がおかしいといって過言ではないだろう。それほど現在の日本の
刑事司法制度は、透明度という意味においても、人権という意味においても、先進国として
恥ずかしいレベルにある。
 もう一つの大きな問題は、捜査官からのリーク獲得合戦にうつつを抜かしているマスメディアが、
その欠陥刑事システムの一部となってしまっているために、このような本質的な問題をほとんど
報じようとしないことだ。彼らはいまだに、他社より少しでも早く警察の捜査情報を獲得して
スクープをすることを、最大の目標にしている。そのため警察を批判することで捜査情報が
入りにくくなることを極度に恐れる傾向にある。
 メディアが問題を報じなければ、社会に大きな問題意識が醸成されず、結果的に法律を作る
権限を持つ政治も、制度変更を主張するのが難しくなる。そうでなくとも警察は誰にとっても
いろいろな意味で恐い存在なのだ。どんなに力のある政治家でも、世論の後押しなくして、警察の
制度に手を突っ込むことなどできるはずもない。


478:名無しさんの主張
12/10/28 23:11:10.29
★前時代的な刑事司法制度を根本から改めよ  3

 厚労省の村木厚子氏の冤罪事件で検察による証拠のねつ造などが明らかになったことを受けて、
検察はかなり遅いスピードながら改革に着手した。一般社会の常識では考えられないほどゆっくり
としたスピードではあるが、有識者会議を設置し、その提言を受けて、取り調べの「部分」可視化や
記者会見の「部分」オープン化などが始まっている。無論、まったく十分とは言えない改革だったが、
それでも一つの冤罪事件をきっかけに改革へ半歩踏み出したことは評価に値する。
 今回の誤認逮捕をきっかけに警察は改革へ最初の半歩を踏み出すことができるのか、また改革の
対象を警察や検察などの「部分」に限定せず、裁判所も含めた刑事司法全体の問題として捉える
ことができるかは、今後のメディア報道と市民一人ひとりの問題意識にかかっている。
 そろそろ先進国として恥ずかしくないレベルの刑事司法制度を整えるべき時が、来ている
のではないだろうか。
 誤認逮捕事件と刑事司法制度の問題点を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の
宮台真司が議論した。


 videonews.com ニュース・コメンタリー (2012年10月27日) 誤認逮捕の教訓:
URLリンク(www.videonews.com)


479: ◆znwiARPvOs
12/10/29 21:45:15.99 LPb0wwSY

/// 法を支配下におく 36 /////////////

このような便宜を容易にはかれるよう、多くの法律文が意図してあいまいな言葉で書かれている。
法学者・渡辺洋三は、国会で成立する多くの法律を、内容を十分に読みもしないで署名する
契約書にたとえているのだ。つまり「法律のことばの意味がほとんど国民に知らされないままで
成立している」。自民党の国会議員は自分たちの支持者に有利な利益誘導のための法律を作る
ことに一生懸命で、その法案が社会正義に貢献するものか否かを吟味しようともしない。
一九五八年には、教師の勤務評定に関係する法律に関して、文部大臣が「法解釈は誰がどう
考えようと勝手だが、この法律については文部大臣の見解を尊重してほしい」と発言した。
これが冗談ではないのである。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///




480: ◆znwiARPvOs
12/10/30 21:32:20.71 R1KWU9t5

/// 法を支配下におく 37 /////////////

 最上位管理者の養成所である東大法学部の教授たちは、法律は基本的に政府行政の補助と
考えているようだ。彼らは、政府はおのずから国民の上にあるという何世紀も前の旧態依然たる
前提を盲目的に受け入れ、「国民は所詮政治など判るものではなく、政府のすることに批判を
するのはけしがらん」と確信しているのである。逆に、国民大衆が法律を受け入れているのは、
法律がこれまでつねにそうする権利を与えられてきた階層の人びとによって管理運用されている
からにすぎないのであって、法律が国民大衆の正義の感覚に従っているからではない。一般大衆に
適用される時、法律はいまだに「苦痛あるいは罰の同義語」なのである。
 いうまでもなく、日本も正式に国際的な法と正義の概念を受け入れてはいる。だが日本の
政治的な慣習に妨げられて、それが真の活力になっていないのである。人権、民主主義的自由、
新しい理念である"平和を求める権利"などについても、大いに論じられてきたが、理念としては
いずれも漠然としていて明確に定義されないままだ。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///




481: ◆znwiARPvOs
12/10/31 22:43:31.20 NyWV8wCR

/// 法を支配下におく 38 /////////////

どの考えも、十分な確信を得ていないし、具体的な政策に折り込めるほど明確な理論を育成
しようとするだけの政治的意思も十分とは思えない。不利な立場におかれた集団の闘士たちが、
"権利"について激しい言葉で議論することはある。だが、これまでこのような運動を見てきて
筆者に判ったのは、彼らがなんらかの満足が得られたとしても、それは普遍的な法の正義の
概念によってではなく、威嚇や他の戦術的圧力の結果だということである。日本人の伝統的な
在り方が、現代の法律慣行によってさらに強化され、明確な"権利"の概念を確立する妨げに
なっている。この概念を表わす言葉として権利の用語が考案されたのであり、この語が持って
いる二つの意味のうちの一つは公平である。法学者・野田が言うように、「今日では、この
言葉が含蓄する公平の意味には注意を払うものはいない。平均的な日本人にとって、この言葉は
利己主義を想起させるものである」

/////////////// 原書1989年刊 ///



482:名無しさんの主張
12/11/01 21:10:49.49
■誤認逮捕の大学生、処分取り消し 父親「やりきれない」

 横浜市のホームページに小学校への襲撃予告を書き込んだとして男子大学生(19)が
誤認逮捕された事件で、静岡家裁は30日、保護観察処分の取り消しを決めた。大学生の父親は
30日、弁護士を通じて「息子の心情を思うとやりきれない」とコメントした。

 家裁は朝日新聞の取材に対し、保護観察処分を決めた当初の審判について「少年事件は
非公開なので答えられない」とした。

 決定を受けて大学生の父親が報道各社にコメントを寄せた。「息子は否認にもかかわらず、
警察・検察から不当な圧力を受け、理不尽な質問で繰り返し問い詰められ続けた」と捜査を批判。
「家族への配慮と自分の将来を考え、絶望の中で事実を曲げ『自分がやった』と自供した。
息子の心情を思うと、やりきれない」「最も悲しいのは、親が息子の無実を疑ってしまったこと」
と心情を吐露した。

URLリンク(www.asahi.com)

483: ◆znwiARPvOs
12/11/02 23:20:58.34 x/Pp7Dwr

/// 法を支配下におく 39 /////////////

 "権利"の観念がないことから、さまざまな間題が生じる。そのひとつは、よく外国人を
嘆かせることだが、日本人には公民としての勇気が欠けているということ、もう一点は、
真の国際主義を確立するうえで明らかに障害になっているという事実である。日本の教育に
しても、また<システム>内の他のどの構成員も、なんらかの主義主張をあえて貫くのは良いこと
だと、少しも人びとに教えようとはしない。このような態度は、サラリーマン社会の服従の
倫理にも、はっきりと反映されている。後に10章で、それがいかに"日本らしさ"という強力な
思想によって、より強化されるかを見る。

/////////////////// 早川書房 ///



484:名無しさんの主張
12/11/03 21:45:31.35
★あれこれ   弁護士 飯島奈絵

次に、感じたのはアメリカ人、そして、ここに住む日本人の方々の参政意識の高さ。
日本では、多くの国民が「政治は政治家が密室で利権がらみであれこれ決める何だか
よくわからないおどろおどろしいもの。」といった意識を持ち、政治に関わろうとしない。
露悪的にいえば、政治に関心があるのは権力意識がよほど強いか、妙に純粋で理想論
ばかりを述べる「青い」人か、宗教関係で動員がかけられた人といった意識がある。なぜ
このように違うのか。単なる「国民性」ではすまないであろう。日本人も米国の政治は
面白いと思っているのだから。違いは大統領選か?二大政党制か?

勤務先法律事務所で『民主主義』を感じたことがあった。クライアントの日本企業が
州法に抵触した。勤務先事務所は「州法の制定手続、規制方法に手続的瑕疵がある。
当該法の規制範囲は広範に過ぎる点でも問題がある。争おう。」という。しかし、
日本企業は煮え切らない。日本では訴訟を提起したということ自体、新聞沙汰になる。
人聞きが悪い。企業イメージが下がる。その上、監督官庁にたてついたら、どのような
不利益があるか。国にたてつくとの構図も企業イメージを下げる。日本企業のそんな
思考方法を説明したところ、米国人弁護士に呆れられた。「法律に瑕疵があれば、
その是正を求めることは、民主主義における市民の権利であり義務でないか。」と
言われた。やはり日本はムラ社会なのか、出る杭は打たれるのか。国は「お上」なのか。

URLリンク(www.wjwn.org)


485: ◆znwiARPvOs
12/11/04 18:29:01.28 gzFNbCqw

/// 法を支配下におく 40 /////////////

 ここまで著者が指摘してきた違いは、"西洋の個人主義"と、集団のためには個人の利益を
犠牲にするといわれるアジア人の態度に区別することによって、これまで簡単に説明されてきた。
しかし、このような見方だけでは、十分な全体図は得られない。法意識、政治的権利の観念や
公民としての勇気などに関して言えば、同じアジアでも韓国やフィリピンのようなアジア国民の
態度と日本人のそれとは、あまりにも大きく違う。一九七〇年代はじめのごく短期間、左翼系の
弁護士が被害者を代弁して提訴した四大公害裁判によって、革命的な変化が起こりそうだと
思わせたことがあった。裁判での勝利とそれに続いたはなばなしいマスコミ報道は、不満・
苦情をはっきりと提示するのに裁判所を使う手段があることを、一般日本人の多くにはじめて
気づかせた。<システム>内の有力な構成員と緊密なつながりをもたない団体や個人であっても、
利用できる公開の討論の場、すなわち裁判所があり、訴訟を通して重要な社会的決定に影響を
与えることができるということに、彼らは突然、気づいたのだった。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///



486: ◆znwiARPvOs
12/11/08 21:38:51.04 zEFeZFhT
/// 法を支配下におく 41 /////////////

 関係官僚の対応は早かった。管理者が社会の一領域で統制力を失いつつあると痛感し、
この傾向が他にも広がることを恐れた彼らは、この種の規模の訴訟を成功させるのは一回限りで
終わらせるべく決定的な措置を講じた。すなわち主導権を裁判官から官僚の手に戻すため、
各種の法律や行政指導をいちはやく導入したのである。公害の犠牲者は左翼の弁護士らによって
法廷に提訴するよう説得されたのであったから、左翼色の濃い弁護士と裁判官で構成される
法律家の組織(青法協=青年法律家協会)を攻撃するキャンペーンが激化した。そして、後で
詳しく見るが、裁判官には、間接的だが効果的な圧力がかけられ、公害の被害者の権利を
守るのにあまり熱心にならないようにとブレーキをかけられた。より小規模な訴訟が続いたが、
明らかに、勝利をおさめる途をきりひらく先例にはならなかった。

//////////////// 945円(税込) ///

487: ◆znwiARPvOs
12/11/10 19:30:04.16 Y5nakjUr
/// 法を支配下におく 42 /////////////

   法的脅威に対する<システム>の対処

 もし西欧の民主主義社会で日本ほど法律が軽視されれば、たえまない動揺が起こり、最終的には
権威構造が崩壌してしまうにちがいない。逆に、日本で、西欧の民主主義社会でのように、また
日本国憲法に記されている通りに法律が運用されれぱ、今の日本の権威構造は崩壊してしまうだろう。
日本の憲法は占領時代の遺産だが、これ以上に民主主義的な憲法はないといえる。そこには欧米の
憲法よりも明確に、国民を保護するための歯止めが盛り込まれている。しかし、だからといって、
この憲法が日本の政治的優先事項を反映していることにはたらない。日本国憲法が司法を他の
政府権能から独立させ、法律と行政の間に一線を画しているのは、過去の日本の全歴史を貫く
慣行に反することなのである。権力者に対して法的に挑戦できるという認識があれば、少なくとも
一五世紀間も、被統治者が超越的な真理に訴えて、権力者に有効な対抗手段をもたないように
徹底的に強いられてきたことに終止符をうてただろう。だが、そんなことは起こり得べくもなかった。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///

488: ◆znwiARPvOs
12/11/12 22:38:09.49 x5r5P+iz
/// 法を支配下におく 43 /////////

 戦後の正式の法規に定められた通り、真に独立し、政治に従属しない司法があり、人びとが
少しずつ訴訟になじんでくれぱ、戦後の<システム>が今日ある姿にまで強化されることは阻止
されていたはずである。独占禁止法が一貫して公平に適用されてきていれば、阻止できたはずだ。
公職選挙法を厳正に適用してもそうできただろうし、大企業と自民党との腐敗した関係、その他の
<システム>を存続させるさまざまな非公式の人間関係や慣例について司法の審査がおこなわれて
いれば、阻止できただろう。民衆が上手に訴訟戦術を展開すれば、今日、いろいろな活動を
制限しているあらゆる法制外の行政措置について、裁判所に訴えることができたにちがいない。
実際に企業家が官僚を裁判所に訴える可能性があれぱ、<システム>管理上の目的の多くが根底から
くつがえされていたはずである。さらに言えば、無数の人脈によって動かされている現在の
<システム>は、法的な手続きを一貫して適用することによって可能になる政治的な検分に耐えてまで、
存続することはできないだろう。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///

489: ◆znwiARPvOs
12/11/16 22:45:05.41 d5wKSh3E
/// 法を支配下におく 44 /////////////

 これまでのところ、<システム>は以上のような困難な事態に直面しないですんでいる。
その理由の一端は、こうした状況を官憲が助長したとはいかないまでも、大目に見たため
であり、意図的で明確な彼らの設計図があったおかげである。もっと官憲権力主義的だった
時代から受け継がれた国民大衆の態度に加えて、今日の制度的枠組みは、日本人が法的な
手段に訴えるのにブレーキをかけるようにできている。実際、このようなさまざまな慣行を
詳しく調べれば、法律をできるかぎり<システム>内に侵入させまいと意図しているとの結論を
出さざるを得ない。

/////////////// 原書1989年刊 ///

490: ◆znwiARPvOs
12/12/05 00:02:04.12 YR/SAdEr
/// 法を支配下におく 45 /////////////

    司法を最小限に抑えこむ

 弁護士や裁判官の数をごく少数にとどめることによって、もっとも効果的に<システム>内の
法律の役割が最小限に抑えられている。アメリカはいうまでもなく、ヨーロッパ諸国で普通に
おこなわれる訴訟のごく一部をもさばけないと思われるほど、日本の弁護士や裁判官の数は少ない。
したがって、権利を主張して裁判に訴えようと考えることは、決して日本人には勧められない
選択肢である。提訴された民事訴訟数を一人当たりで比べると、慣習法諸国の約二〇分の一から
一〇分の一である。実質的にすべての民事紛争提訴案件が、示談か、判決前におこなわれる調停に
よって決着がつけられる。この慣習は、すくなくとも、当局が和解によってことを決着するよう
民衆に強いた徳川時代にまでさかのぼる。今でも多くの日本人が示談で十分に満足するのだが、
より公平な裁決を裁判所から得るほうを望む者も、ほとんど示談・和解で済ますほかに選びようがない。

//////////////// 早川書房 ///

491:名無しさんの主張
12/12/10 11:21:54.52
幸福実現党、、、増税の流れを止めてくれ、、、、

492: ◆znwiARPvOs
12/12/14 21:22:36.25 El/MARut
 
/// 法を支配下におく 46 /////////////

 なぜこの解決方式が根強いかの説明としてよく言われるのは、調和維持を第一とする古くから
深く根づいた精神風土に合っているという点である。勝者と敗者とが明らかになる訴訟は、
この理想に反するわけである。現代日本の司法に対して批判的な弁護士や判事でさえ、先進工業社会
としてはあまりにも特殊なこの現象を、このような文化的な解釈だけで納得してしまうところがある。
 しかし、このような文化的な説明は認めず、かわりに、現代の司法の実態を日本人が和解によって
ことをおさめるよう強いられた時代からの政治的遺物として見たほうが良い理由がいくつかある。
<システム>が和解のほうを好み、それが訴訟にかわる好ましいやり方として残るよう方策を講じて
きたのである。日本の集団間の関係は、集団のメンバー間の内部的関係とはあきらかに異なり、
調和とはほど遠いのが普通である。

/////////// 篠原 勝 (翻訳) ///

493: ◆znwiARPvOs
12/12/15 20:41:18.60 Ea5vytVb
/// 法を支配下におく 47 //////////

だが、個人としては、同じ社交サークルの人でもなく、近所の人でもない別の個人との"調和"を
乱すとなぜいけないのか理解できない。鎌倉時代のように、人びとが代官の前で互いに問責し合う
機会が与えられていた時代には、躊躇なくそうしていたようだ。同様に、明治時代に近代的な
法体系が導入された後も、今日、訴訟を阻んでいるのは日本文化のせいだといわれているほどには、
当時の日本文化が裁判への障害になっていた様子もない。もうひとつ、<システム>が調停のほうを
好むことの政治的理由としては、日本の和解交渉では一般的によく知られていることだが、
ほとんどの場合、力の強い論争者が有利になるということである。こうして現状が維持される
のである。多数の訴訟が起こされ、もしそれらに対して論理的で公正な結論が出されれぱ、
<システム>はひとたまりもなく崩壊してしまうにちがいない。

///////////// 945円(税込) ///

494:名無しさんの主張
12/12/17 21:07:36.28
★裁判が機能せず、行政が国民の上に君臨する日本     上
 神戸大学大学院法学研究科教授 阿部泰隆氏

 諸外国に比べて、日本は行政訴訟が圧倒的に少ないという事実を、まず先に指摘しなければ
なりません。国民一人あたりの年間の行政訴訟の出訴数を比較すると、ドイツは日本の
250倍から500倍、韓国や台湾でも30倍から50倍です。日本では、なぜそれほど少ないのか。
その原因としてさまざまな障害物がありますが、行政指導や役所の事実上の優越力で
押さえ込まれていることや、裁判官の消極的な解釈のため、狭い訴訟要件が障害物となって、
本案になかなか入れず、入っても裁量と証拠の壁に遮られて、時間と費用がかかるのに、
勝訴率が低いので、「行政訴訟はやるだけムダ」と認識されて、悪循環に陥っていることが大
きな要因です。
 まず、費用について言えば、被告の行政側は親方日の丸で、強大な組織と国費を背景に
心おきなく最高裁まで徹底的に争うことができますが、一方、原告は金も組織もなく、まるで、
ネズミがライオンに挑むような覚悟をしなければなりません。
また、最高裁は原告の勝訴率を約10%としていますが、そこには一部勝訴が含まれており、
全面勝訴率となると、わずか数%でしかないと推測されます。

495:名無しさんの主張
12/12/17 21:08:59.64
★裁判が機能せず、行政が国民の上に君臨する日本     下

 1億円の課税処分の取消訴訟で、10万円分取り消されても一部勝訴ですが、それでは
弁護士費用や印紙代にすらなりません。その印紙代が極めて高額で、1億円の課税処分を
争えば、最高裁まで約188万円もかかります。今回、民事訴訟費用法が改正されましたが、
それでも約140万円です。全面勝訴すれば取り返せる建前ですが、現実性はありません。

 先日、土地収用され、6億円の補償金増額を求めて最高裁に上告された方が私のもとへ
相談に来られました。その方は、印紙代だけで400万円弱もかかるのに、上告するかどうかを
2週間以内に判断しなくてはならなかった(民訴法265条、313条)のです。
最高裁で判決を覆そうとすれば、憲法違反、重要な法律解釈の誤り、先例との不整合など
(民訴法312,318条)であることが厳しく求められるので、この短時間にこれだけの高額の
負担をする価値があるかどうかを判断するのはとても無理です。
しかも、上告理由は50日以内となっている(民訴規則194条)ので、大急ぎで書かなければ
なりません。
ところが、高裁から最高裁に書類が回るのに50日もかかっています。

496: ◆znwiARPvOs
12/12/18 21:12:58.30 N9FpB7I1
 
/// 法を支配下におく 48 /////////////

 法曹界への参入を厳しく制限することによって、裁判官や弁護士の数が人為的にきわめて
少数におさえられている。法務省が司法研修所の実質上の門番をつとめ、判事や検事、弁護士に
なりたいと志す者全員が、ここを通過しなければならない。司法試験に合格した志望者はここで
二年間にわたってそれほど難儀でもない研修を受け、政治的に健全であるとみなされた者は
全員ほとんど自動的に卒業できる。ところが、この司法修習生になるための、毎年おこなわれる
司法試験は、極端に合格率の低い難関なのである。合格率は約ニパーセントで、たとえば
一九八五年には受験者数二万三八五五人に対して合格者は四八六人だった。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///

497: ◆znwiARPvOs
12/12/19 21:34:21.62 ewZKE0TO
 
/// 法を支配下におく 49 /////////////

このような状況を正当化するなかば公式な説明は、司法に割り当てられる国家予算額が少ないから
だというものだ。日本人は法曹職に就きたがらないとの一般認識は、神話にすぎない。ある専門家が
指摘するように、一九七五年に司法試験を受けた日本人の数は、総人口比で見ると、司法試験を
受けたアメリカ人の数よりわずかながら多い。アメリカではその年の受験者の七四パーセントが
合格したのに対し、日本のほうの合格率が一.七パーセントだったから、実際には、法律家に
なりたい希望者は日本のほうがはるかに多いことになる。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///

498: ◆znwiARPvOs
12/12/20 21:56:52.95 fKLLAhaX
 
/// 法を支配下におく 50 /////////////

 一八九〇年以来人口は三倍に増えたが、裁判官の数は二倍にもなっていない。法務に携わる者への
需要があるのは確かである。日本の裁判所はあまりにも多くの事件をかかえすぎているため、簡単な
訴訟でも地方裁判所で判決が出るまでに二、三年かかることが多い。控訴も含む大きな訴訟になると
一〇年はかかるだろう。原告や被告人が裁判官の前に初めて立った日から二五年後に最終判決が
出ることも、めずらしくない。
 弁護士を見つけるのも簡単なことではない。弁護士不足から、弁護料も高くなる。一九八六年現在、
弁護士会に所属している者の数はわずか一万三一六一人である。言いかえれば、日本の弁護士の数は
人口九二九四人に対し一人ということになる。アメリカでは三六〇人に対し弁護士一人、英国では
八七二人、西ドイツでは一四八六人である。

///////////// 原書1989年刊 ///

499: ◆znwiARPvOs
12/12/21 21:44:26.09 8t2x7JmH
 
/// 法を支配下におく 51 //////

 訴訟手続きが開始されてからでも、原告は和解に切り換えるよう強い圧力をかけられる。
裁判官はほぼ例外なく、時間と費用の節約になるから、示談・和解にするようにと訴えつづける。
あえて、原告が法廷に明確な裁決を出すよう執拗に求めつづけると、裁判官に非協力的だから
不利な裁決を出されてもやむを得ないと思うように、と言われることにもなる。裁判に訴えて、
ことを解決しようとするのは、倫理的に劣る態度だとするところが、裁判官たち自身にもある。
このような状況だから、なぜ日本人が訴訟に持ち込まないか、裁決が出るまで頑張らないかを
理解するのは難しくない。いざ意を決して提訴しても、つのるのは裁判に対する不信感だけである。
日弁連の調査によれば、裁判を経験した人びとの大半が裁判官は「社会の実情を知らない」と
感じており、審理の過程で十分に訴訟事実を聞いてもらえたかったと述べている。

////////// 早川書房 ///

500: ◆znwiARPvOs
12/12/22 15:15:07.95 /8ZRSAud
 
/// 法を支配下におく 52 /////////

 日本国民から訴訟という手段をほぼ完全に取り上げてしまうほどの、凄まじい力が<システム>に
あるとすれば、政府に反対して私人としての個人が行動を起こすなどということは、実質的に
不可能だと考えても別に驚くには当たらない。最高裁には、戦後の憲法の定めによって、民主主義を
護る手段として違憲審査権が与えられているが、最高裁はその行使を拒んでいる。この事実に
相まって、政府機関が広範な社会政策を遂行する際の広範囲に及ぶ公権力(=行政権)があるため、
官僚の活動はこれまで司法の違憲審査の対象からほとんど完全にはずされてきた。活動家が行政の
決定に対し訴訟に持ち込んで対抗しようとすると、官僚たちはそれを"過激"な行動であり、国の
政策決定を妨害しようとする暴力的な行動だとみなすのである。

///////////// 篠原 勝 (翻訳) ///

501: ◆znwiARPvOs
12/12/23 16:33:53.56 JcQre1cQ
 
/// 法を支配下におく 53 /////////////

 官僚には、政府が運営する司法研修所入所試験、つまり司法試験と司法修習期間とを通して、
司法の人材を思うようにつくりあげる機会がたっぷりある。修習生は注意深く観察され、
検察官に向くとみなされた者は、弁護士や裁判官になる運命の仲間には知らされないで、
ひそかに特別教育を受けるのである。検察官候補生は幹部検察官の自宅に招かれ、自動的に
検察の特定の幹部人脈に組み込まれる。その結果のひとつとして、上から統制しやすい厳格な
検察のヒエラルキーができあがる。

///////////// 945円(税込) ///

502: ◆znwiARPvOs
12/12/24 16:08:07.85 UhEvoi4z
 
/// 法を支配下におく 54 /////////////

 裁判官候補生も政治的な傾向を勘案しながら入念に適性が審査され、現代の自由主義的な
傾向に共感を示す修習生は選り除かれる。さて弁護士はといえば、司法研修所は、あまり自信に
あふれる弁護士を作り出さない。前述の野田は、こう述べている。

  日本の弁護士は、裁判官の前でその仕事にふさわしい独立の気概をまったく示さない。
 日本の弁護士のおかれている環境は、だれもが政府は善だと考え、率先して個人的行動を
 起こすのは侮蔑すべきことだと考える人びとの住むところである。このため、公判中、
 つねに彼は劣等感に悩まされる。一部の弁護士は、まるで自分の側に好意的な裁決を出して
 くれるよう嘆願するがごとく、裁判官に対して非常なる敬意を示し、法廷外では、司法に
 対し根拠薄弱な不信感を示す。

 実際には、いささか不信感を抱いても当然といえそうな根拠もあるようだ。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///

503:名無しさんの主張
12/12/25 22:24:38.75
●鳩山邦夫法相「日本は和の文明」と法の範囲外での当事者による交渉解決を示唆
 2008/09/05 11:54
 新司法試験の導入などで今後増え続けると予測される弁護士人口について、
鳩山邦夫法相は4日の閣議後会見で「将来、国民700人に弁護士が1人いる
ことになるが、それだけ弁護士が必要な訴訟国家になったら日本の文明は
破滅する」と述べ、弁護士の急激な増加は望ましくないとの見解を示した。
 日本弁護士連合会が行った弁護士人口の将来予測によると、平成19年の
弁護士人口は2万4840人で弁護士1人当たりの国民数は5142人だが、49年後の
68年には弁護士人口は12万3484人となり、弁護士1人当たりの国民数は
772人になるとしている。
 鳩山法相は「わが国の文明は世界に誇る和を成す文明で、何でも訴訟でやればいい
というのは敵を作る文明だ」と述べた。さらに「そんな文明のまねをすれば、
弁護士は多ければ多いほどいいという議論になるが、私はそれにくみさない」と明言した。
 鳩山法相は8月31日の記者会見でも、司法試験の合格者を年間3000人程度
とする政府目標について「多すぎる。質的低下を招く恐れがある」との持論を
述べており、一連の発言は今後論議を呼びそうだ。
URLリンク(www.iza.ne.jp)

●鳩山邦夫法相 "取り調べの録音・録画義務付け"に反対 「日本、犯罪天国の道に入る」
 2008年6月3日
・鳩山邦夫法相は3日午前の記者会見で、取り調べの録音・録画を全面的に義務付ける
 民主党提出の刑事訴訟法改正案を強く批判し、「取調官と容疑者の心の通う会話の
 中から真実が解明されてきた。全面可視化すれば、真実の解明が難しくなり犯罪が
 立証できず、日本が犯罪天国の道に入る」と述べた。
URLリンク(www.nikkansports.com)

504:名無しさんの主張
12/12/26 04:40:15.39 1S4h8was
裁判官は憎しみのたいしでしかない。
心証なんかで判決を変えるのは公平な裁判じゃない。

505: ◆znwiARPvOs
12/12/26 20:55:14.18 FCy4LoHx
 
/// 法を支配下におく 55 /////////////

    従属する裁判官

 世の中を現状のままで受け入れることに徐々に慣らされてきたため、日本人は比較的、
司法当局のいいなりになりやすい。裁判官自身もほぼ同じように柔順で、みずからの権威が
侵されるままにしてきた。戦後の裁判官は、理論のうえでは、行政の統制から独立しており、
同僚の裁判官のみが彼らを裁けるとされている。ところが、米占領軍当局が慎重に引いた
司法と行政との間の境界線が、占領が終わったとたんに、注意深く取り除かれたのである。
それ以来、行政官僚が徐々に司法官を制御してきた。現在では、再任資格や昇進についての
官僚からの意見に対する恐れが、戦前と同じくらい重く裁判官にのしかかっている。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///

506: ◆znwiARPvOs
12/12/27 21:24:52.44 /Nlum58g
 
/// 法を支配下におく 56 /////////////

 官僚統制の中心は、本来、まったく別の目的のために設置された最高裁事務総局である。
戦後の制度では、すべての裁判所は自治・自律を原則にしており、これを保証するため各裁判所の
運営全般は判事の手に委ねられ、この自治性を守るため、それぞれの裁判所に事務局が設けられた。
最高裁事務総局も本来は同じ目的で設置された。一方、司法行政の最高主体は、最高裁の
裁判官会議にある。ところが、後者の権限はしだいに形式上だけのものとなり、実権力は
事務総局に移ってしまった。

/////////////// 原書1989年刊 ///

507: ◆znwiARPvOs
12/12/28 21:06:47.59 7Sz3YE7f
 
/// 法を支配下におく 57 /////////////

 一方、下級裁判所のレベルでは、裁判官が裁判実務に専念できるよう、司法行政の雑務は裁判所の
所長にまかせるよう奨励されてきた。一九五五年に、最高裁は全国の司法行政を一括統合するために、
下級裁判所事務処理規則を改正した。その結果、各裁判所行政の最終的な権限は、"所長"および
新しく考案された常置委員会に委ねられることになった。つまり、結局、これらは最高裁事務総局
によって制御されることになったのである。現在、最高裁事務総局の司法官僚群が日本の司法全体を
監督している。裁判実務に携わる裁判官ではないこうした官僚が、裁判官の任命、昇格人事、
給与の決定、解任を牛耳っているのである。最高裁事務総局は、下級裁判所に関するあらゆる情報や
資料を独占でき、規則制定権や裁判官人事政策などを通して、着実に司法への掌握を強めてきた。
事務総局はまた、司法研修所をも実質的に完全に掌握している。

////////////////// 早川書房 ///

508: ◆znwiARPvOs
12/12/29 21:03:01.72 yjX//oFi
 
/// 法を支配下におく 58 /////////

 この重大な権力の移行は、それほどの困難もなく成し遂げられた。法の番人としては最高の
地位にある判事も、官僚にはかなわない。最高裁の判事一五人のうち三分の二が生え抜きの
裁判官ではなく、多くが各省庁の官僚0Bである。彼らは短期問しか判事職を務めない。
(最高裁判事の三分の二は裁判官の経験者を充てるという法の規定は、実際には実行されていない。
九〇年三月現在、最高裁判事一五人中、公式には"裁判官出身者"と称せられる六人のなかの
たった二人が実質的に裁判官の実務経験者である。ほかの人たちは、実際には"司法官僚"である)。
言いかえれば最高裁判事は、司法行政に関してかなり知識不足の人物か、あるいは司法官僚
そのもの、のいずれかである。旧憲法下で教育を受けたキャリアの裁判官が多数、戦後考えを
変えることなく、ふたたび判事席に戻った。また一方、占領終了後の早い時期に最高裁事務総局の
要職を占めた大半が(戦前の思想が)骨の髄までしみこんだ旧司法省の著名な官僚だった。

/////////// 篠原 勝 (翻訳) ///

509: ◆znwiARPvOs
12/12/30 16:02:56.18 t+/xnXFv
 
/// 法を支配下におく 59 /////////////

これら旧官僚は、終戦に続く数年間、大規模な機構改革に頑強に抵抗したが、占領軍当局と、
戦前の大審院(最高裁に相当)出身の民主的裁判官との連携プレイによって制圧された。
その後何年か、改革派と伝統派の間に激しい衝突が続いたが、一九五〇年に、反左翼強硬派の
田中耕太郎が最高裁長官におさまった頃には、すでに戦後の司法は今日の様相を呈しはじめていた。
一九五四年には、戦前の"思想統制"措置や判決に強く共鳴し、長く思想検事を務めた池田克の
ような人物が、最高裁判事に任命されるところまでいっていた。池田はその後一〇年間在任した。
また、一九三〇年代末から四〇年代初頭に"思想犯"の告発に重要な役割を果たした戦前の
法律家・石田和外も、一九六九年に最高裁長官に就任している。

//////////////// 945円(税込) ///

510: ◆znwiARPvOs
12/12/31 21:30:29.22 daovV4d5
 
/// 法を支配下におく 60 /////////////

 最高裁事務総局は、司法官僚のいわゆる"エリート・コース"である。典型的な司法官僚の
キャリアは、この事務総局七局のうち、いずれかの局付判事補からはじまる。ほとんどきまって
東大か京大の卒業生であり、在学中に司法試験に合格しているのが理想的である。学閥に加えて、
姻戚関係―たとえば事務総局あるいは検察庁の高級官僚の娘と結婚を通して形成される閨閥に
つながっていることが多い。このような有利な地歩にある事務総局のキャリア官僚は、日本の
司法界の頂点にまで昇れる特権に恵まれている。

/////////// K.V.ウォルフレン著 ///

511:名無しさんの主張
13/01/01 05:26:10.47 JByKbZ+j
国家非常事態が進行中! 1216不正選挙によって日本の政治機能がハイジャックされています!
クーデターを黙認し有権者を欺き国会に居座っている過半数の議員を政治犯として糾弾すべきです!


国家非常事態が進行中! 1216不正選挙によって日本の政治機能がハイジャックされています!
クーデターを黙認し有権者を欺き国会に居座っている過半数の議員を政治犯として糾弾すべきです!


国家非常事態が進行中! 1216不正選挙によって日本の政治機能がハイジャックされています!
クーデターを黙認し有権者を欺き国会に居座っている過半数の議員を政治犯として糾弾すべきです!

512: ◆znwiARPvOs
13/01/01 10:20:00.26 NrMVnWKO
 
/// 法を支配下におく 61 /////////////

 戦前の司法省の役人にかわって、この種のエリートがしだいに地裁所長や高裁長官に任命
されている。最高裁の全判事の約三分の一がこれらの地位から上がったものである。このように、
日本の司法は、司法官僚の特権グループが裁判実務に携わる判事を支配するという、戦前の
体系にしだいに逆戻りしてきた。この特権グループは法廷実務の経験に欠けるという批判に
応えて、彼らが高い役職すべてを独占しないよう調整された。だが、最高裁判事の選任に
あたっては、いまだに事務局経験者のほうが裁判実務経験者よりはるかに多く任命されるのである。

/// 「日本権力構造の謎」<上> ///

513: ◆znwiARPvOs
13/01/03 10:40:29.06 F6mTphJZ
 
/// 法を支配下におく 62 /////////

 最高裁は、下級裁判所が出した政府に不利な判決を覆すという定評がある。また、左翼の
デモを規制する警察力を規制した判決、国鉄職員や郵便局員など現業公務員のスト権を認めた
判決なども、最高裁が破棄した。最高裁が極秘裡にやったことで露呈してしまった例もある。
たとえば労働や医療分野の裁判で、時として最高裁が下級裁判所に望ましい判決を指示する
ことがある。一九八三年一二月には最高裁の事務総局が全国約四〇件の水害訴訟担当裁判官を
召集し、国の河川管理の手落ちに関する判断規準などについて詳細な「民事局見解」を内示
していたことが、一九八七年に明るみに出た。
 最高裁は、一般的な刑事事件では人権擁護の理想にそった配慮を示したりもするが、行政訴訟や
政治的論争問題となると、きわめて消極的だという定評がある。

///////// 原書1989年刊 ///


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