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社会がしぼんでいる。
憲法が悪い。ネトウヨが悪い。中韓が悪い。そうやって次々と「あいつが悪い(自分は悪くない)」で物事を単純化して批判すると、スッキリする。
しかしみんながスッキリしていても、誰もが生きやすい、豊かな社会は成り立たない。批判を恐れ、人々は萎縮するばかりだ。
「表現の自由」をめぐる現状を例に、考えてみたい。
NHK経営委員という公人が、都知事選の応援演説で他候補を「人間のくず」とののしっても、「表現の自由だ」として許される。
一方、東京都美術館は今月、展示されていた作品の一部、「現政権の右傾化を阻止」などと書かれた紙を撤去させた。
昨年7月の参院選前には、東京都千代田区立の図書館で開催が決まっていた映画「選挙」の上映会が、内容に懸念があるとして中止されそうになった。
いずれも苦情があったわけではない。館の自己規制だ。
美術館や図書館といった公共施設は、表現の自由が最も守られる場所であらねばならない。
多様な価値観を擁護し、新たな価値観を創出するという社会的使命を忘れ、安易な自己規制に走る。それがどれだけ社会を萎縮させるか、自覚すべきだ。
その上でもう一歩分け入ってみる。そもそも、このような「べき」論を支える社会的基盤が弱っているのではないか。
>>2に続く
2014年2月28日(金)朝日新聞
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