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>>1より
そして、2度目の今回、外国人就業届の提出を再び求められると考えた2次業者が、「すぐ働きたい」という金さんのために
用意した手段が通名だった。面倒な手続きを省いて速やかに働けるようにしようと、一見しても“外国人”と分からない通名
での勤務にこだわったというわけだ。
さらに、その話を補強するのが、金さんの雇い主である2次業者の経営者が金さんと同じ在日韓国人という事実。1審判決に
よると、この経営者は金さんが同じ在日韓国人という理由から、「金さんにできるだけ就労の機会を与えてあげてほしい」と
部下に伝えていたという。
とはいえ、金さんの本名へのこだわりは並々ならぬものがあった。ここ10年近くは生活のすべてで通名使用を止め、
本名を名乗り続けてきたという。
金さんは神戸市内で生まれ育ち、小学校の同級生が在日を理由にいじめられるのを見てきた。しかし、大学でハングルを
学び、仲間と本名で呼び合うようになると、「本名で生活できることが当たり前の社会だ」と喜びを感じた。
「日本では通名が当たり前」と話す父親も、自分で建てた墓碑には本名を刻んだ。金さんは「死んでからしか本当の名前を
使えないのか。通名を強要する社会は間違っている」と常々考えてきた。
2審判決は結局、金さんが通名で働いていた期間中、ゼネコンや1次、2次業者に対し、通名使用の拒否や本名で働くことを
求めていなかったと認定。業者の対応について「金さんを速やかに仕事に従事させるためで、アイデンティティーを侵害する
などの悪意も認められない」と判断し、金さん側の請求を退けた。(抜粋)