13/07/23 23:13:21.96 Opo3NEgGO
…「軍勢」って言ってもよ、長州藩の兵隊なんて武士じゃないんよ。
のちの高杉晋作の「奇兵隊」と同じように、鬱憤の溜まったエッタだのゲニン(殺し稼業。伊藤博文らがこの出身。)だのの被差別民を寄せ集めて、「殺せ。好きなように犯せ。奪え。」のヤツらよ。
武装もしていない山伏の里なんて、なすすべもないんよ。イチコロよ。…ある意味、明治の廃仏毀釈だののほうは外国も含めた人の目(フェノロサとかね)があってブレーキがあったけど、
この時期の長州藩のもとでは、法度なんてあってないも同然、なんでもアリよ。犯され、なぶり殺しにされ、全て奪われ、あとは「火をつけられ」…。
そんな話、ここだけじゃない。山口県じゃ、ゴロゴロしてる。これが、後の明治「維新」とやらの核となったんだ。
ただ…金峰郷の場合、悲劇に輪をかけた、もう1つの要因があった。
…追い詰められた住民たちのうち、山伏組織や宿場に属さない農民たちが、長州藩の側に寝返って山伏や遊女たちの皆殺しに加担することで、自分たちだけ生き延びを謀ったんだ。
彼らを責めるのは酷だと思うよ。自分たちも、長州藩の殺し屋たちに追われて、生きるか死ぬかの瀬戸際で…そりゃあ、死にたくないよ。生きたいよ。
だけど味方だと思ってた人たちの手で殺されていった山伏や遊女たちの「なんでだぁあ!なんでなんだぁあ!!」って無念は、消えないよ。…ミタケ山中の隠れ谷の場所まで密告され、完全に逃げ場を失ったんだから。
…最後、追われた山伏たちは蔵王権現さまだけは守ろうとミタケに登り、御堂に籠城した。…女人結界の禁を犯してまで、遊女たちも一緒にかくまいながら。
…それを長州藩の殺し屋と裏切った農民たちは…御堂ごと火を付けて焼き殺した。
帰命本覚心法身 常住妙法心蓮台…
本来具足三身徳 三十七尊住心城…
普門塵数諸三昧 遠離因果法然具…
無辺徳海本円満 還我頂礼心諸仏…
シャン シャン シャン…
シャン シャン シャン…
シャン シャン シャーン…
ミタケゆくとよ、今も聞こえるんだわ。山伏たちの錫杖の鳴る声が。
誰も恨んじゃいけない…。
誰も責めちゃいけない…。
…ただ…ちょうしゅっぽはのぞく