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「そ、そ、そ、そうか、そうだったのか!そ、そ、そ、それじゃあ!…うーん…」
金田一耕助は爛々とした目でもじゃもじゃ頭を一通り掻き回し、ふーっと宙を見上げると、そこで瞳は力を失い陰鬱な色に変わった
そしておもむろに口を開くと、驚くべきことを、もごもごと呟くように語りだした
「この事件の発端はかつをなる青年がこの集落を出て神奈川にいた数十年にあると思われて仕方がない
かつをは一見性格破綻者のように見えるが、この禍々しい事件を起こすような人間であったのか?
僕はどうしてもそうは思えないんです…かつをの禍々しく、悲しい秘密が神奈川に隠されているんじゃないか
僕はそう思うんです、磯川さん、僕はこれから神奈川に行きます、何も分からないかも知れない
しかし僕はこの事件はまだ終わっていないんじゃないか、僕たちは大変な間違いを犯しているんじゃないか、そんな気がするのです
磯川さん、くれぐれも公民館の警備は厳重にお願いします、これ以上犠牲者を出しちゃいけない、出してはいけないのです」
磯川警部は目を見張ったまま何か言い返そうとした、しかしその言葉を言い出そうとする前に、金田一耕助はもう歩き出していた
その夜…人また人でごった返した東へ上る夜行列車の中に埋もれるようにして、金田一耕助の姿はあった
しかしもう一人…ああ、あとから思えばこの人物こそ、この一見馬鹿馬鹿しく、どこか調子の狂った、それでいて陰惨で禍々しい事件において、誠に重大な人物であったのだが…同じ車上の人であることを、金田一耕助は知るよしもなかった