13/05/22 15:38:00.07 dEG1bLg80
女性客の傲慢な態度に少々ムッときたが、お客として来訪して頂いたからには公平に対応するのがこの店のスタイルだ。
なるべく平穏で丁寧な言葉を選んで説得を試みたがヒスを起こしているのか言う事を聞けの一点張りでまったく話にならない。
客足が収まっているからまだいいが、このままでは店内の他のお客に迷惑がかかる。
仕方が無いので下に降りて男性客の方に話をつけようと考えた。
降りてまず驚いたのは「車椅子」が予想していた物より二周り三周りも巨大だった事。
客足が収まっていたんじゃない、こいつが入り口に蓋をしていたせいで誰も店に入れなかったのだ。
そしてその「車椅子」に鎮座しているのは、あれはあの乙武某というアレじゃないか。 テレビで見た事がある。
驚きはさらに続く。 あれだけ傲慢に振舞っていた女性客が突然泣き出したのだ。
かなり支離滅裂な事を喚いていたが要は「差別された」と言いたいらしい。 してねぇっつーの。
一通り泣き喚いた後、女と目があった。
「どう?私は天下の乙武様のツレなのよ。 今までの態度を後悔するがいいわ」そう女の目は語っていた。
乙武氏が口を開いた。
「階段、運んでいってくれませんかね。 それだけでいいんですよ」
いやあんたにとっては「それだけ」だろうけど、こっちはそうはいかない。
急な階段で資格も無い人間が介助して何か間違いがあったらどうするのか。
たった二人で切り盛りしているこの店、その間注文や会計は誰が担当するのか。
介助なんて激しい行為をしたら、厨房も配膳もスタッフは衛生上の問題もある。
そしてあんたが飯食ってる間、その戦車椅子で店の入り口塞がれる訳だ。
乙武氏はどうした早くしろよ?という表情でこちらのYes, sirを待っている。
だが相手が有名人だろうがなんだろうが決まり事は守ってもらう。 それがこの店のスタイルだ。
「予約の時点で車椅子って言っとくのが常識ではないですか?」