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★発信箱:日常の中の「非日常」=大治朋子(外信部)
イスラエル東部の都市、エルサレムの街並みは美しい。
建造物はイスラエル石と呼ばれる肌色の石を外壁に使うよう法令で定められていて、コンクリートの壁に、薄く切った石板を張り付けている。
外観を重んじる街づくりのせいか、ネオンや看板の掲示は限られている。今の季節は、晴れ渡った青空とのコントラストも鮮やかだ。
毎日新聞のエルサレム支局も石造りのアパートの1階にある。
最近は初夏の陽気で、昼間の気温が30度を超す日もあるが、中に入るとひんやりとしていて涼しい。
石の家は、エルサレムの砂漠気候に暮らす人々の知恵でもある。
もう一つ、イスラエルの家には独特の構造がある。
民家の一角や地下には防空壕(ごう)を持ち、イスラエルの人口の約6割がシェルターを持つとのデータもある。
支局の入るアパートの階下にも地下室があり、すべての入居世帯が鍵を持つ。
中に入ってみると、カビ臭く、粗大ゴミのような家具や雑貨が散乱している。
物置同然の状態だが、それでも対立する周辺国からの「核」や「生物化学兵器」による攻撃に備える大切な施設だという。
イスラエルの学校では、子どもたちにガスマスクを装着して防空壕に逃げ込む訓練をさせているところもある。
穏やかな日常の中に垣間見える、殺伐とした光景。日本人の私には「非日常」的としか思えないものが、ごく自然に日常生活の中に存在している。
この土地は、ユダヤ人虐殺の歴史が生み出したという強烈な危機意識に、今もあふれているのだと実感する。
人事異動で、エルサレムに赴任した。外国人記者の目で、その日常の魅力と「非日常」が物語る現実を伝えたい。
毎日新聞 2013年03月19日 00時28分
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